説明

薄膜光起電性適用向けの透明導電性酸化膜、及びその製造方法

本発明は、改良された光学的及び電気的特性の透明導電性酸化(TCO)薄膜を提供し、更にTCO薄膜の製造方法を提供する。特には、本発明はTCOの光学的特性の改善及び電気的特性の生産後の改良を可能にするTCO薄膜を製造するオンライン方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電(PV)装置に使用する透明導電性酸化(TCO)膜及びその製造方法に概して関する。特に、本発明は透明導電性酸化薄膜及びその製造方法における光学式及び電気的特性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2007年11月2日に出願された米国仮出願、出願番号60/996,144の利益を主張し、その仮出願の全体が本出願に援用される。
【0003】
本出願で参照されている全ての米国特許はその全体が本出願に援用される。不一致がある場合には、本明細書及び明細書中の定義が支配する。
【0004】
世界の人口が増加し続けるにつれて、エネルギー及びエネルギー源の需要も増えている。前世紀に化石燃料の消費の着実な増加が見られており、これはエネルギーを熱望している世界人口にとっては予想通りである。2004年には人間が作り出したエネルギー(human produced energy)の86%は化石燃料の燃焼から来ていると推定されている。化石燃料は再生不可能な資源であり、予備の化石燃料を置き換えるよりも速く使い尽くされている。その結果、エネルギーの更なる需要に対処する為に、再生可能なエネルギーの開発に向けた動きが始まっている。過去10年から20年間において、更なる世界的需要に対処するように、太陽、水素、及び風力エネルギーなどの代替エネルギー源からエネルギーを効率的に利用する技術の開発に更に焦点が当てられている。
【0005】
代替エネルギー源のうち、太陽が最も豊富な自然資源とされており、毎日地球にエネルギーを無限に供給している。太陽光を捕らえて電気に変換することに向けられている技術は多数ある。光起電性(PV)モジュールはその様な技術を示し、現在に至るまで、リモート電力系統、宇宙空間飛行体(space vehicles)、及びワイヤレス装置などの消費者製品などの分野で多数の適用例が見いだされている。
【0006】
PVモジュールが薄膜を内蔵していることは知られている。薄膜光起電装置は透明前面導体を必要とし、それは通常は薄膜である。使用される最も一般的な導電性薄膜は、フッ素添加酸化スズ(FTO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、及びインジウム酸化スズ(ITO)などの透明導電性酸化物(transparent conductive oxides)である。TCOの主な機能は二つある。まず、TCOはその下にあるアクティブ光吸収材料へと光を通させる。次に、TCOはオーム接点となり、光で生成された電荷を光吸収材料から離れるように伝送させる。このようなTCOは、全ての種類の光起電性及びソーラーのモジュールに好ましく、アモルファスシリコンに基づいた光起電性及びソーラーのモジュールに特に好ましい。
【0007】
TCO薄膜を内蔵しているPV装置の効率を改良することは、一般的に幾つかの要因により限られていた。この要因の一つにTCO薄膜導電率に固有の限定があり、それによって導電率を増加する試みはTCO薄膜を通る光透過率の同時に起こる減少により阻止されることが見つかり、それはひいてはPV装置の効率を減少させる。光起電性の効率における小さな改良の利益は、モジュールの寿命において増えることができ、経済的利益を強化する。TCOの光学式及び電気的特性の改良は、光起電性の効率を増加できる。
【0008】
光起電装置は多くの利用法があるが、光起電装置が従来の化石燃料と競い合うことができる前に、乗り越えなければならない幾つかの障害がまだある。上記に沿って、費用及び光から電気への変換効率(light-to-electricity conversion efficiency)は、光起電装置が化石燃料と競争することを阻止している二つの障害を示している。
【0009】
現在存在するほとんどのPVモジュールはシリコンに基づいている。ガラスは普及しており、これによりPVモジュールの展開に既存の基盤を提供している。上記に沿う一つの方法としては、後ほどPVモジュールへ内蔵するために確立されたガラス製造方法を採用することである。このようなガラス製造方法の一つは、フロート又は平板のガラスを製造するフロートライン方法(float-line method)である。
【0010】
ガラス上の薄膜は多数の理由により好ましい。例えば、低放射率塗装で塗装されている建築用ガラスは、塗装されていない建築用ガラスより絶縁性が良く、エネルギー効率が良い。ガラスに薄膜を使用することのこのような好ましさから、薄膜で表面を覆われたガラスを製造する方法が多数ある。これらの方法の一つは、熱分解化学蒸着法であり、その方法ではミクロン及び/又はサブミクロンの厚さを有する種(species)を含む金属がガラスの表面に直接付着される。このような金属を含む種は、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、及び金属オキシカーバイドを含むが、これらに限定されない。
【0011】
ガラスに薄膜を製造する方法は多数ある。このような方法の一つにはオンライン方法(online method)として知られている方法があり、ここでは概してガラスの製造の間ガラスリボン(glass ribbon)を覆うことと定義される。PVモジュールに内蔵されるガラス上のTCO薄膜について、これらの膜がガラス基材の上に付着される前、その間、及びその後の光学的及び電気的特性の改良を可能とする方法がまだ必要とされている。
【0012】
米国特許番号7、259、085は金属酸化薄膜の製造方法を開示しており、塩化水素(HCl)が金属酸化薄膜の付着に使用される出発原料のガスの流れに加えられる。出発原料のガスの流れに塩化水素を追加する理由は、出発原料がガラス基材の表面に着く前に、化学反応を起こすのを阻止するためである。これは、ひいては、広い領域に渡り比較的均一な膜の厚さを有する金属酸化薄膜の膜を、速い膜蒸着速度(約4500nm/min又はそれより速い)で長時間で製造する機能につながる。米国特許番号7、259、085の方法により製造された金属酸化薄膜がこのような光起電装置に内蔵されると、ピンホールなどの欠陥の可能性がこのような光起電装置の寿命に亘り減少し、光起電装置の変換効率を高く維持することができることが開示されている。しかしながら、出発材料のガスの流れにHClを追加することが、金属酸化薄膜の付着後に、金属酸化膜の導電率の改良につなげられるかについては開示されていない。
【0013】
米国特許番号5、698、262は、金属酸化薄膜の低く均一なシート抵抗を得るために、フッ素水素(HF)をドーパント源として使用して添加酸化スズ膜を製造する方法を開示している。その中の金属酸化薄膜層は、ジメチルスズジクロリド(dimethyltin dichloride)、酸素、水、フッ素水素、及びヘリウムの出発原料から製造されている。米国特許番号5、698、262では、その中で製造されているフッ素添加酸化スズ膜は、ガラスの被覆表面の上で低いシート抵抗及びシート抵抗が向上した均一性を示している。しかしながら、その中で開示されているフッ素添加酸化スズ膜はまだヘーズを欠点としてもつ。フッ素添加酸化スズ膜はわずか320nmの厚さであり、その中の結晶粒の大きさは限られており、そのために膜の表面の大きな不規則性を防止して、そしてそのことは高いヘーズ比率の実現を防止する。
【0014】
米国特許番号6、551、715は、透明な導電性の添加されている酸化スズ膜を有するガラス板を開示しており、酸化スズ膜の熱処理後に酸化スズ膜の導電率の減少が阻止されるように酸化スズ膜は処理されている。米国特許番号6、551、715には、ガラス基材に付着された約200nmの厚さの従来の透明導電性膜は、熱処理されると、通常かなりシート抵抗が増加することが開示されている。このシート抵抗の増加を最小にするために、酸化スズ膜の厚さは少なくとも約400nmに設定されている。酸化スズ膜の厚さの増加によりシート抵抗を減少させることは、空気での熱処理には影響を受けない傾向が見いだされた。
【0015】
従って、技術分野では、上記の従来技術の膜の問題を解決できる透明導電性酸化スズ膜層を必要としている。特に、向上した電気的及び光学的特性を有するTCO薄膜及びそれらを製造する方法の技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、TCO薄膜の光学的及び電気的特性の改良を提供し、更にそのような改良されたTCO薄膜の製造方法も提供する。
【0017】
本発明の一側面では、TCO薄膜の光学的及び電気的特性を改良する方法を提供する。
【0018】
本発明の一側面では、TCO薄膜の蒸着を行う間に、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加物(oxidizing chemical additive)を導入することによりTCO薄膜の特性を改良する方法を提供する。
【0019】
本発明の別の側面では、蒸着の工程の間に導入される酸化化学物質は、次亜塩素酸、硝酸、又は硫酸などの酸化酸でも良い。
【0020】
本発明の更に別の側面では、蒸着の工程の間導入される酸化化学物質は、過酸化水素、オゾン、純酸素、硝酸アンモニウム、及び他の酸化剤などの非酸性(non-acids)でも良い。
【0021】
本発明の更に別の側面では、蒸着させたTCO薄膜を非酸性又はわずかに還元性な雰囲気に高温で露出して、TCO薄膜の特性を改良する方法を提供する。
【0022】
本発明のまだ更に別の側面では、非酸化性雰囲気は不活性雰囲気である。
【0023】
本発明のまだ更に別の側面では、TCO薄膜を高温に露出することは約200℃から約800℃までの間の範囲内の温度で行われる。
【0024】
本発明のまだ更に別の側面では、本発明に基づく方法にて製造された向上した光学的及び電気的特性を有するTCO薄膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、070808の試料1−3の透過率、反射率、及び吸収率のデータを、標準の非酸性処理されたAFG1022及びAFG1119の試料と比べて示している。070622の試料4のデータも示されている。
【図2】図2は、070622の試料1−4の透過率、反射率、及び吸収率のデータを、標準の非酸性処理されたAFG1119の試料と比べて示している。070517の試料2のデータも示されている。
【図3】図3は、A)発明のシステムの070622の試料4、B)発明のシステムの070808の試料1、及びC)標準のシステムの1119の二次イオン質量分析のグラフを示している。図示されている全ての表では、約400秒にある縦線は酸化スズ薄膜と基礎とのインターフェースを表している。
【図4】図4は、窒素に冷却され、硝酸処理されたTCOの070808の試料1−3の電気的特性のデータを示している。A)は蒸着法で蒸着されて、375℃から窒素で冷却した後のシステムの抵抗値を示している。B)は蒸着法により蒸着されて、375℃から窒素で冷却された後のシステムの電子移動度の値(electron mobility values)を示している。C)は蒸着法により蒸着されて、375℃から窒素で冷却された後のシステムの担体密度の値(carrier density values)を示している。
【図5】図5は、窒素で冷却され、硝酸処理されたTCOの070622の試料1、2及び4の電気的特性データを示している。A)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの抵抗率の値を示す。B)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの電子移動度の値を示している。C)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの担体密度の値を示している。
【図6】図6は、窒素に冷却され、非硝酸で処理されたAFG1022及びAFG1119のシステムの電気的特性データを示している。A)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの抵抗率の値を示している。B)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの電子移動度の値を示している。C)は蒸着法により蒸着されて窒素により375℃から冷却された後のシステムの担体密度の値を示している。
【図7】図7は、本発明のオンラインで製造されたTCOのシステムの070808の試料1−3及び070622の試料1、2及び4の導電率データを、オンラインで製造された標準AFG1119及び1022に比べて、示している。発明のシステムは、窒素雰囲気で375℃から環境温度まで冷却されている。
【図8】図8は、本発明のTCOの070808及び070622のシステムと、標準AFG1119及び1022と、ならびにAsahiVU20のシステムとの短絡電流の比較データを示している。
【図9】図9は、本発明のTCOの070808及び070622のシステムと、標準AFG1119及び1022と、ならびにAsahiVU20のシステムとの開路電圧の比較データを示している。
【図10】図10は、本発明のTCOの070808及び070622のシステムと、標準AFG1119及び1022と、ならびにAsahiVU20のシステムとの効率の比較データを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は多くの異なる形で具体化しても良いが、本明細書には多数の例示的実施例が説明されており、本発明の開示は本発明の原理の例を提供するとみなされると理解されて、そのような例は本発明を本明細書に説明された及び/又は例示された好ましい実施例に限定するつもりはない。種々の実施例は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に開示されている。他の実施例も使用しても良く、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく構成的及び論理的な変更を加えても良いと理解されている。
【0027】
本発明に基づく方法は、一般的な構成のガラス基材/下塗り/SnO2:Fの光起電性の透明導電性酸化薄膜の成分を提供することができる。本発明に基づく方法は複数の下塗り層及び/又は核生成層に付着される導電層にも適用可能である。この様な代替の多層の構成は当業者には認識及び正当に評価されることだろう。
【0028】
本明細書で参照されている“AFG1119”は、“TCO1119”及び“1119”の両方に相当して、ガラス基材(GS)、下塗り層(UC)、SnO2:Fのシステムを表している。フッ素添加酸化スズ薄膜は、当業者に周知の熱分解化学蒸着法により、従来使用されている蒸気及び酸素以外の酸化化学添加物が欠如している状態で付着される。このようなシステムでは、薄膜の厚さが550nmから1000nmの範囲内であることが可能である。本明細書の目的のために、このシステムは薄膜の厚さが611nmである。
【0029】
“AFG1022”は、“TCO1022”及び“1022”の両方に相当して、ガラス基材(GS)、下塗り層(UC)/SnO2:Fのシステムを表している。フッ素添加酸化スズ薄膜は、当業者に周知の熱分解化学蒸着法により、従来使用されている蒸気及び酸素以外の酸化化学添加物が欠如している状態で付着される。このようなシステムでは、薄膜の厚さが550nmから1000nmの範囲内であることが可能である。本明細書の目的のために、このシステムでは薄膜の厚さが650nmである。
【0030】
“AFG070808”は、“070808”に相当して、ガラス基材(GS)、下塗り層(UC)/SnO2:Fのシステムを表している。フッ素添加酸化スズ薄膜は、当業者に周知の熱分解化学蒸着法により、酸化化学添加物がある状態で付着される。このシステムでは、HNO3が酸化化学添加物である。更に、AFG070808の三つの別々の試料は、それぞれ550nm、650nm、及び613nmの薄膜の厚さを有する試験試料1−3としてここに開示されている。
【0031】
“AFG070622”は、“070622”に相当して、ガラス基材(GS)、下塗り層(UC)/SnO2:Fのシステムを表している。フッ素添加酸化スズ薄膜は、当業者に周知の熱分解化学蒸着法により、酸化化学添加物がある状態で付着される。このシステムでは、HNOが酸化化学添加物である。更に、“AFG070622”の四つの別々の試料は、フッ素添加酸化スズ薄膜の厚さが504nm、539nm、563nm、及び601nm、を有する試験試料1−4としてここに開示されている。
【0032】
“下塗り層”又はUCは、約750オングストロームの厚さのオキシカーバイドシリコン層(silicon oxycarbide layer)である。UCは色の中和のために必要な屈折率を提供し、それによってPVTCO装置の透過率を改善することを助成する。更にUCは、ガラス基材からTCO薄膜へのナトリウムイオンの移動を抑制するバリアとして作用し、光起電装置の透過率を改良することを助成する。
【0033】
“フロートガラス”又は“板ガラス”とは、溶解グラスの連続的な流れを溶解スズ浴に浮遊させることによりフロートラインで製造されるガラスのことを言う。溶解ガラスは金属の表面に広がり、高質な、常に平坦なガラスのシートを製造する。この方法で製造されるガラスは、ガラス製造に用いられる標準の方法で製造されている。現に、板ガラスの世界の生産量の90%はフロートガラスである。特に特別に記載されていない限り、ここでガラスに言及するときは、ガラスはフロートライン方法により製造されていることを意味する。
【0034】
“オンライン方法”又は“オンライン”とは、ガラス被覆の技術の当業者には周知で理解されている定義であり、ここで目的とすることは、フロートラインでガラスを製造する間にガラスリボンを被覆することを言う。
【0035】
“オフライン方法”又は“オフライン”とは、ガラス被覆の技術の当業者には周知で理解されている定義であり、ここで目的とすることは、ガラスが製造されてフロートラインから移動された後に、ガラスを被覆することを言う。
【0036】
ここで目的とする“製造後”とは、ガラスに熱分解で蒸着されたTCO薄膜を意味する。
【0037】
ここで目的とする“製造前”とは、ガラスにまだ熱分解で蒸着されていないTCO薄膜を意味する。
【0038】
ここで使用される“上へ付着される(deposited onto)”又は“上に付着される(deposited on)”とは、物質が言及された層の上に直接的又は間接的に付けることを意味する。間接的に付ける場合には、一枚以上の層が間に介在してもよい。更に、他に特別に明記していない限り、本発明の被覆を“[物質1]/[物質2]/[物質3]…”などという形式を用いて説明する場合、それぞれの連続する物質は先行する物質に直接的又は間接的に付着されていることを意味する。
【0039】
ここで“ヘーズ(haze)”はASTM D 1003により定義されて、そしてそれは、ヘーズとは通過する光が入射ビームから平均して2.5°より大きく逸脱する光のパーセンテージと定義している。“ヘーズ”は、当業者により周知の方法により測定されても良い。ここで提示されるヘーズのデータは、Byk Gardner社のヘーズメーター(haze meter)により測定されている(ここの全てのヘーズの値(haze value)はこのようなヘーズメーターにより測定されて、散乱した入射の光のパーセンテージとして与えられている。)。
【0040】
“反射率”とは当該技術分野では周知の定義であり、その周知の意味に従ってここで使用されている。例えば、ここで使用されている“反射率”という定義は、可視の赤外線及び紫外線の光が当たる量に比べて表面で反射される量のことを言う。
【0041】
“吸収率”とは当該技術分野では周知の定義であり、その周知の意味に従ってここで使用されている。例えば、光起電装置で吸収率とは、吸収材により吸収される吸収材に当たる太陽エネルギーと、同じ温度で黒体(完璧な吸収体)に当たる太陽エネルギーとの比である。
【0042】
“放射率”(又はエミッタンス)(E)とは、任意の波長にての光の反射の目安、又は特徴であり、赤外線の波長は式:E=1−Reflectancefilmにより表される。このような放射率の値の測定のためのデータの実際の蓄積は従来から当業者には知られており、例えばBeckman Model 4260の分光光度計を“VW”付属物(Beckman Scientific Inst. Corp.)と共に使用して行っても良い。この分光光度計は、反射率対波長を測定して、これから当業者には知られている標準の式を用いて放射率を算出できる。
【0043】
“透過率”とは当該技術分野では良く理解されている定義であり、ここではその周知の意味に従って使用される。ここで透過率という定義は、可視の赤外線及び紫外線のエネルギー透過率からなるが、光電池の電力生産に特有の波長を意味しても良い。
【0044】
“シート抵抗”(Rs)とは当該技術分野では周知の定義であり、その周知の意味に従ってここで使用されている。ここではオーム毎平方単位(ohms per square units)と報告されている。一般的にこの定義は、ガラス基材上の層システムの任意の正方形を通過する電気電流に対するオームでの抵抗を言う。構造的な目的のために、シート抵抗とは層又は層システムがどれくらい十分に赤外線エネルギーを反射しているかを示すものであり、従ってこの特徴の目安として放射率と共に多くの場合使用される。光起電性の目的のため、シートの抵抗とは、生成されたエネルギーを捉えるために電位変化を伝送する被覆の機能を示している。シート抵抗は4点(4-point)プローブオーム計を使用して測定しても良く、オーム計とはカリフォルニア州、サンタクララのSignatone Corp.が製造したM−800型のMagnetron Instruments Corp.のヘッドを備えた4点抵抗性プローブなどである。4点プローブにより測定された電圧/電流比率をシート抵抗に変換するために通常幾何学的な補正係数(CF)が必要とされる。この補正因子は試料サイズ、形、及びプローブの間隔を考慮する。プローブにより測定されるシート抵抗は:
Rs=(V/I)CF
により特定され、ここでVとは二つの電圧プローブにわたる測定されたDC電圧であり、Iとは二つの電流プローブを通るDC電流である。種々のサイズ及び形の試料のCFの値は、参考図書で通常検索できる。
【0045】
“バルク抵抗(bulk resistivity)”又は電気抵抗(ρ)とは、電流の流れに材料がどれくらい強く対抗するかの目安であり、ここで10−4×Ωcmの単位で伝えられている。低抵抗率は、電荷の移動を容易に許容する材料を示している。逆に、高抵抗率は、電荷の移動を容易に許容しない材料を示している。
【0046】
“電荷担体密度(charge carrier density)”又は担体密度(n)とは、容積毎の電荷キャリアの数を表し、ここでは1020×cm−3として報告されている。
【0047】
ここで使用される“電荷キャリア移動度(charge carrier mobility)”又は移動度(μ)とは材料に加えた電界の電荷キャリアの移動速度に関する量と定義されて、cm/Vsの単位で報告されている。本発明のTCOの場合、電荷キャリア移動度は電子移動度に相当すると考えられている。
【0048】
“光起電性エネルギー変換効率”又は単に効率(η)とは、光電池が電気回路に接続されている場合、(吸収された光から電気エネルギーに)変換されて収集された電力のパーセンテージとして定義されている。効率はパーセンテージとして報告されて、最大電力(P)を「標準」試験条件下(W/mでE)で入射した光の放射度(light irradiance)及び太陽電池の表面積(mでA)により除算した比率を用いて算出され、式:η=P/(EAc)に従って、算出される。
【0049】
“短絡電流”(Jsc)とは、付加及び抵抗が無い外部回路を自由に流れている電流としてここで定義されており、ミリアンペア/平方センチ、mA/cmとして報告されている。
【0050】
“開路電圧”(Voc)とは、ここでは電池の端子間の電位差、つまり回路が開いている場合の電圧(負荷が無い状態)として定義されている。光電池の場合、開路電圧は電池にわたる最大可能電圧、つまり電流が流れていない場合の太陽光での電池にわたる電圧である。開路電圧はボルト、V、として報告されている。
【0051】
Asahiの“VU20”とは透明導電性酸化物であり、薄膜シリコン光起電性モジュール用に入手可能な最良のフッ素添加酸化スズTCOとしての業界の基準である。Asahiの“VU20”は、透過率が著しく変更することなく生産後に導電性を改良できるという特有の特徴を有する。VU20はオフライン蒸着塗工機で生産される。VU20は高温で希ガス又は還元ガスで蒸着後処理を受けることができ、それは透過率を実質的に変更することなく電子移動度を著しく改良することになる。VU20のTCOはチタニア/シリカ(TiO/SiO)の下塗りと、導電層としてのフッ素添加酸化スズとから構成されている。
【0052】
本発明の主題の発明者達は、以前にオンラインTCO膜蒸着を試み、そして以前から知られているTCO薄膜の導電率の生産後の増加を目標にしたことがある。このような方法は、オフラインの生産後の導電率を増加するために使用されている方法と類似している。しかしながら、このような試みは再現可能ではないとされていた。ガラスに蒸着されたTCO薄膜の電気的特性を生産後に改良する方法は、本発明まで達成されていない。
【0053】
ここで開示されている主題の発明者達は、ガラス上にTCO薄膜を熱分解で付着させる間に、水、空気又は酸素以外の酸化化学添加物を使用することは、TCO薄膜の蒸着後、つまり生産後に、TCO薄膜の導電率の増加を招くことができることを驚いたことに見いだした。従って、この特性を有するTCO薄膜はPVモジュールに内蔵するために好適である。本発明に基づいた方法により製造してもよいTCO薄膜の限定的でない例は、インジウム酸化スズ、酸化スズ、フッ素添加酸化スズ、アルミニウム添加酸化亜鉛、及び酸化スズ亜鉛である。ここで説明されている限定的でないシステムの例は、TCO薄膜としてフッ素添加酸化スズを使用している。
【0054】
もっと具体的に言えば、発明者達は、ガラス上にオンラインTCO薄膜を生成している場合に熱分解蒸着法の処理に水、空気又は酸素以外の酸化化学添加物を追加することは、TCO薄膜の導電率を生産後に増加することを許容することができると見いだした。ここで開示されているガラス上のTCO薄膜の生産後の改良の方法は、ガラス上にオフライン生産されたTCO薄膜にも適用できる。このようなオフライン方法への適用は当業者には理解されるだろう。
【0055】
適切な酸化化学添加物の限定的でない例は、酸素、オゾン、過酸化水素、及び他の過酸化物、硝酸、硝酸アンモニウム及び他の硝酸塩、亜硝酸塩、一酸化二窒素、硫酸、硫酸塩及び過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、及びホウ酸塩である。
【0056】
本発明の更なる一側面においては、ガラス基材/薄膜製造方法が提供されて、その方法ではTCO薄膜の透過率が実質的に低下することなく付着されたTCO薄膜の導電率の改良をオンラインで生産後に許容する。
【0057】
本発明の好ましい側面では、水、空気、又は酸素以外の酸化化学物質が熱分解蒸着法の間に加えられて、光の透過率に実質的な測定できる変化がなく電子移動度を改良することで、生産後の導電率の改良が可能なTCO薄膜塗装を生じる。光の透過率の変化は〜0.2%の測定精度の範囲内である。酸化化学添加物の存在下でTCO薄膜を蒸着することで、酸化スズ薄膜の光学的な特性も改良することがある。
【0058】
更に、酸化化学添加物は、TCOが高温で非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気に露出されて非酸化雰囲気で環境温度まで冷却が可能であると、生産後にTCOの導電率の改良を可能にする。適切な非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気の限定しない例は、アルコール、C−Cアルキル、一酸化炭素、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオン、キセノン、真空、還元プラズマ(reducing plasmas)、及びそれらの化合物の蒸気である。
【0059】
本発明の透明な導電性酸化物には、透明導電性酸化薄膜の下に下塗りを付着させて、下塗りが基材と透明導電性酸化薄膜との間に位置されるようにすることが好ましい。下塗り膜は多数の用途を担うことができる。下塗りは、基材、つまりガラス、に含まれているアルカリ成分が下塗りの上に付着されている薄膜へ熱拡散することを防止するように働くことができる。また、薄膜の特徴が簡単に劣化しないように、下塗りは十分な力で基材と薄膜との強度を強化するように働くことができる。更に、下塗りは所望の屈折率を提供するように働くことができ、薄膜又は基材から生じている干渉色を低減させるように色抑制層(color suppression layer)として作用する。
【0060】
本発明の下塗り層は、シリコンを含む薄膜を使用することが好ましい。更に好ましくは、下塗り薄膜は、シリコン及び酸素を含む。好ましい下塗り層は、限定されないが、シリコン酸化物(silicon oxide)、二酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン(silicon oxynitride)、炭化シリコン、オキシ炭化シリコン(silicon oxycarbide)、又はそれらの化合物でも良い。ここで例示される本発明の下塗りとは、オキシ炭化シリコン薄膜である。どのような見解にも縛られたくはないが、シリコンを含む下塗りは、酸化スズに基づく透明導電層の最適な結晶成長、つまり円柱(columnar)結晶成長、を導くと考えられている。色抑制を達成するには、SiO2層は高い屈折率の層(high index layer)と有利に混合されて、二重下塗りのSnO/SiO又はTiO/SiOを製造できる。
【0061】
薄膜被覆の技術分野では、オキシ炭化シリコン層の蒸着は良く知られている。本発明で使用されているオキシ炭化シリコンの下塗りは、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及び窒素(キャリアーガス)などの出発原料から、好ましくは400℃から800℃の範囲内の高温で、熱分解蒸着され得る。最も好ましくは、ガラス基材に関して高温とは、650℃から750℃の範囲内である。
【0062】
本発明の下塗り薄膜の厚さは特に限定されていない。好ましい厚さは、400Åから1000Åの厚さである。より好ましくは、下塗りの薄膜は600Åから900Åの厚さである。最も好ましくは、下塗りの薄膜は700Åから800Åの厚さである。上記の厚さの範囲内の本発明のオキシ炭化シリコン下塗りは、酸化スズの真珠光(tin oxide iridescence)から出来る色の色抑制を導くことができる。
【0063】
他のシリコンを含む出発原料も本発明の範囲内で使用可能である。他の周知のシリコンを含む出発原料は、ジシラン、トリシラン(trisilane)、モノクロロシラン(monochlorosilane)、ジクロロ−シラン(dichloro-silane)、1,2ジメチルシラン(dimethylsilane)、1,1,2−トリメチルジシラン(trimethyldisilane)、及び1,1,2,2−テトラメチルジシラン(tetramethyldisilane)を含むが、これらに限定されない。シランを出発原料として使用する場合、ガスの流れに酸化材料(oxidizing material)を含むことが一般的である。酸化材料としては、酸素、水蒸気、空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、及びオゾンがある。シランが出発材料として使用される場合、出発原料のシランが基材の表面に達する前に反応してしまうことを防止するように、エチレン、アセチレン、又はトルエン等の不飽和炭化水素ガスをガスの流れに加えても良い。
【0064】
本発明のフッ素添加酸化スズの透明導電性酸化膜は、薄膜の技術分野の当業者に周知の熱分解蒸着法により製造できる。この処理は多数の周知の出発原料及び前駆物質を使用して、最終の薄膜透明導電性酸化生成物に到達することができる。
【0065】
本発明の熱分解蒸着処理により製造される薄膜被膜のスズの前駆物質は、この技術分野では通常使用されており周知である。特に適切なスズの前駆物質は三塩化物モノブチルスズ二塩化物(monobutyltin-trichloride dichloride)である。この物質は、周知で簡単に入手可能であり、スズを含む薄膜の被膜を板ガラスに蒸着するためにスズの前駆物質として一般的に使用されている。本発明の範囲内では他のスズの前駆物質も使用可能である。他の周知のスズの前駆物質としては、ジメチルスズ二塩化物(dimethyltin dichloride)、ジブチルスズ二塩化物(dibutyltin dichloride)、テトラメチルスズ、テトラブチルスズ、ジオクシルスズ二塩化物(dioctyltin dichloride)、二酢酸ジブチルスズ(dibutyltin diacetate)、及び四塩化スズを含むが、これらに限定されない。
【0066】
酸化スズ薄膜にフッ素を添加することも、薄膜の技術分野の当業者には周知である。これを達成するためには、スズ含有の出発材料のガスの流れにフッ素含有の出発材料を加えても良い。フッ素含有の出発材料の限定されない例としては、フッ素ガス、フッ化水素、三フッ化窒素、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)、ブロモトリフルオロメタン(bromo-trifluoromethane)、ジフルオロエタン(difluoroethane)、及びクロロジフルオロメタン(chlorodifluoromethane)を含む。
【0067】
本発明のフッ素添加透明導電性酸化膜は、高温で、モノブチル三塩化スズ(monobutyl tin trichloride)(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、及び水、空気又は酸素以外の追加の酸化化学添加物などの出発原料から熱分解蒸着しても良い。好ましくは、熱分解蒸着の工程での高温は、400℃から800℃の範囲内である。最も好ましくは、高温は550℃から750℃の範囲内である。
【0068】
本発明の透明導電性酸化薄膜膜の厚さは好ましくは300nmから1300nmの厚さである。より好ましくは、透明導電性酸化薄膜膜の厚さは400nmから1100nmの厚さである。最も好ましくは、透明導電性酸化薄膜膜の厚さは500nmから1000nmの厚さである。
【0069】
下記の説明は本発明の下塗り及び透明導電性酸化薄膜を提供する一般的な方法を提供する。下記の説明に限定されるつもりはなく、一般に説明された方法の改良及び変更例を薄膜被膜の技術分野の当業者により適用及び変更して所望の最終生成物となるようにすることができ、そのような変更は本発明の範囲内である。
【0070】
周知のガラスバッチの組成物(glass batch compositions)からなるソーダ石灰シリカガラスは、ガラス溶解炉で熱することにより溶解できる。このようなガラスバッチ溶解に必要な温度は、典型的には約1500℃から1600℃までである。溶解して溶解ガラスを作ると、溶解ガラスは溶解したスズのフロート浴(float bath)に流し込まれて、そこからガラスを転がし広げてガラスリボン(glass ribbon)が製造される。ガラスリボンは、溶解したスズのフロート浴の中では典型的には約600℃から1100℃までの温度を有する。ガラスリボンは、ガラス溶解炉から離れるように移動させられながら冷却する。本発明の下塗りと透明導電性酸化薄膜とが熱分解蒸着されるフロートラインの領域では、ガラスリボンの温度は典型的には約500℃から800℃までの温度である。
【0071】
フロート浴に配置されている第一塗工機から、本発明の下塗りを熱分解蒸着することができる。オキシ炭化シリコン薄膜下塗りの製造及び付着のために、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及び窒素(キャリアーガス)を含む混合ガスの流れ(mixed gas stream)を、ガラスリボンの加熱した表面に向けることができる。前述のそれぞれの出発原料に含まれる混合ガスの流れのガスは、下記の比率の範囲で供給することができる。1)シラン(SiH)2.0−40.0g/min、2)二酸化炭素(CO)50.0−300.0g/min、3)エチレン(C)0.0−110.0g/min、及び4)窒素(キャリアーガス)0.0−200.0g/min。出発材料の供給の好ましい範囲は、1)シラン(SiH)15.0−25.0g/min、2)二酸化炭素(CO)150.0−200.0g/min、3)エチレン(C)6.8−88.0g/min、及び4)窒素(キャリアーガス)30.0−60.0g/minである。
【0072】
第一塗工機から下流に配置されている第二塗工機から、本発明の透明導電性酸化薄膜は熱分解蒸着され得る。フッ素添加酸化スズ透明導電性薄膜の製造及び付着のために、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、酸素、及び硝酸(HNO−酸化化学添加物)を含む混合ガスの流れを、下塗りの表面に向けることができる。当業者には理解されるであろうが、場合によっては溶剤を使用して、スズ含有の出発原料を溶解している状態に保つのを支援して、スズ含有の出発原料の揮発度を制御することに協力すると共に、混合ガスの出発原料が互いと反応してしまうことを防止する。上記を達成するために用いられる周知の溶剤は、アセトン、ジエチルケトン(diethyl ketone)、メチルイソブチルケトン、及びメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)等の低級(C−C)ジアルキルケトンである。本発明の好ましい低級ジアルキルケトンは、メチルイソブチルケトンである。ガスが単独に、又は別々に、加熱された表面に供される場合、そのような溶剤は必要ではないが、希望すれば使用できる。
【0073】
水、空気、又は酸素以外の酸化化学物質(oxidizing chemical)の導入は、当業者に知られている方法により行うことができる。酸化化学物質を導入することの限定されない例では、酸化化学物質の蒸気と熱分解の蒸気との混合を、TCO塗工機に露出する前に、行う。酸化化学物質の導入の別の限定されない例では、TCO塗工機の正面で酸化化学物質の蒸気を適用する。
【0074】
前述のそれぞれの出発原料に含まれる混合ガスの流れのガスは、下記の範囲で供給できる。1)モノブチル三塩化を70%−95%含む混合物の0.20−2.00kg/min、トリフルオロ酢酸を5%−20%、及びメチルイソブチルケトンを0%−15%、2)水蒸気を0.00−5.00kg/min、3)空気を0.00−2.00kg/min、及び4)60%−80%の硝酸の水溶液を0.20−1.50kg/min。出発原料の供給の好ましい範囲は、1)88%−92%のモノブチル三塩化スズを含む混合物を0.20−2.00kg/min、トリフルオロ酢酸を8%−12%、及びメチルイソブチルケトンを0%−15%、2)水蒸気を0.00−2.5kg/min、3)空気を0.00−2.00kg/min、及び4)60%−80%の硝酸の水溶液を0.60−0.80kg/min。
【0075】
本発明の下塗りと透明導電性酸化薄膜とをガラスリボンに付着させた後、ガラス/下塗り/TCOのシステムは高温から環境温度まで非酸化性又はわずかに還元性な雰囲気で冷却される。適切な非酸化性又はわずかに還元性な雰囲気の限定されない例では、アルコール、C−Cアルキル、一酸化炭素、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオン、キセノン、真空、還元性プラズマ、及びそれらの化合物の蒸気である。本発明の方法では、窒素雰囲気が使用されている。従って、ここで説明されているガラス/下塗り/TCOのシステムは窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却されて、それにより透明導電性酸化薄膜の少なくとも2%の導電率の増加を生産後に実現している。なお、導電率の改良は、シート抵抗の減少又は電子移動度の増加のどちらかで代替的に表現できる。少なくとも2%の導電率の増加は、下記の場合に確認できる。酸化化学添加物(水、空気、又は酸素以外)の存在下で蒸着されていないか、又は蒸着後に非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気の下で環境温度まで冷却されていないかのガラス/下塗り/TCOのシステムと比較した場合である。本発明のガラス/下塗り/TCOのシステムを環境温度まで冷却するための非酸化性、又はわずかに還元性の雰囲気の生成は、薄膜被膜の技術分野の当業者には周知だろう。
【0076】
非酸化性処理を実施する高温からは発明の被膜されたシステムが環境温度まで冷却され、そのような高温とは一般的には約200℃から約600℃の間である。好ましい温度範囲とは、約275℃から約450℃の間である。最も好ましい温度範囲とは、約350℃から約400℃の間である。冷却は、ベルト炉又は当業者に認識されている他の装置で行うことができる。発明のシステムは、ベルト炉を好ましくは約1メートル/分(m/min)から約35m/minの搬送速度で通過させられる。より好適な搬送速度は、約5m/minから約25m/minである。最も好ましい搬送速度は、約10m/minから約15m/minである。冷却時間は、好ましくは1分から10分の間である。より好ましくは、冷却時間は1分から5分の間である。最も好ましくは、冷却時間は3分から4分の間である。ここで説明されている冷却処理の他のパラメータの決定は、当業者には認識及び理解されるだろう。
【0077】
また、本発明の発明者達は、生産後に導電率を少なくとも2%の増加を実現するために、本発明のガラス/下塗り/TCOのシステムを、酸化化学添加物の存在下でTCO層の蒸着を行った直後に、非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気の下で環境温度まで冷却することを必ずしも行わなくても良いことを見いだした。例えば、本発明のシステムは、TCO層の蒸着後、環境条件の下で環境温度まで冷却することができる。しかしながら、このことはTCO層の好ましい少なくとも2%の生産後の導電率の増加を招かない。導電率の少なくとも2%の生産後の増加を実現するために、環境条件の下で環境温度まで冷却された本発明のシステムは高温まで再加熱されることができ、そして非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気の下で環境温度まで冷却することができる。そのような代替の処理を実施する方法は、当業者には周知であり認識されるだろう。
【0078】
実施例1
フロート浴内に配置されている第一塗工機から、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及び窒素(N−キャリアーガス)を含む混合ガスの流れがガラスリボンの加熱されている表面に向けられる。混合ガスの流れのガスは、下記の比率範囲で供給される出発原料を含む。比率範囲は、下記の通りである。1)シラン(SiH)13.5gm/min、2)二酸化炭素(CO)150.0gm/min、3)エチレン(C)6.0gm/min、及び4)窒素(キャリアーガス)38.0gm/min。
【0079】
第一塗工機の下流に配置されている第二塗工機からは、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、及び硝酸(HNO−酸化化学添加物)を含む混合ガスの流れが下塗りの表面に向けられている。混合ガスの流れのガスは、下記の比率範囲で供給される出発原料を含む。比率範囲は、1)モノブチル三塩化スズを93%含む混合物を0.98kg/min、トリフルオロ酢酸を5%及びメチルイソブチルケトンを2%含む混合物を0.98kg/min、2)水蒸気を0.85kg/min、3)空気を0.88kg/min、及び4)硝酸67.2%の水溶液を0.78kg/minである。
【0080】
下塗り及び透明導電性酸化薄膜の蒸着後、ガラス/下塗り/TCOのシステムは高温で窒素雰囲気に露出される。ガラス/下塗り/TCOのシステムの高温とは、ベルト炉に入るときには約375℃である。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、約10m/minから約15m/minの搬送速度で、4分間でベルト炉を通過させられる。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却されて、それにより改良された電気的及び光学的特性を有する透明導電性酸化物を生成する。
【0081】
実施例2
フロート浴内に配置されている第一塗工機から、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及び窒素(N−キャリアーガス)を含む混合ガスの流れがガラスリボンの加熱されている表面に向けられる。混合ガスの流れのガスは、下記の比率の範囲で供給される出発原料を含む。1)シラン(SiH)13.5gm/min、2)二酸化炭素(CO)150.0gm/min、3)エチレン(C)5.0gm/min、及び4)窒素(キャリアーガス)38.0gm/min。
【0082】
第一塗工機の下流に配置されている第二塗工機からは、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、及び硝酸(HNO−酸化化学添加物)を含む混合ガスの流れが下塗りの表面に向けられている。混合ガスのガスは、下記の比率範囲で供給される出発原料を含む。比率範囲は、1)モノブチル三塩化スズを81%含む混合物を1.00kg/min、トリフルオロ酢酸を15%及びメチルイソブチルケトンを4%含む混合物を0.98kg/min、2)水蒸気を0.85kg/min、3)空気を0.88kg/min、及び4)硝酸67.2%の水溶液を0.78kg/minである。
【0083】
下塗り及び透明導電性酸化薄膜の蒸着後、ガラス/下塗り/TCOのシステムは高温で窒素雰囲気に露出される。ガラス/下塗り/TCOのシステムの高温とは、ベルト炉に入るときには約375℃である。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、約10m/minから約15m/minの搬送速度で、4分間でベルト炉を通過する。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却されて、それにより改良された電気的及び光学的特性を有する透明導電性酸化物を生成する。
【0084】
実施例3
フロート浴内に配置されている第一塗工機から、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及び窒素(N−キャリアーガス)を含む混合ガスの流れがガラスリボンの加熱されている表面に向けられる。混合ガスの流れのガスは、下記の比率範囲で供給される出発原料を含む。1)シラン(SiH)15.0gm/min、2)二酸化炭素(CO)200.0gm/min、3)エチレン(C)13.3gm/min、及び4)窒素(キャリアーガス)33.3gm/min。
【0085】
第一塗工機の下流に配置されている第二塗工機からは、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)及びトリフルオロ酢酸(CFCOH)を含む混合ガスの流れが下塗りの表面に向けられている。更に、空気、蒸気、及び硝酸(HNO−酸化化学添加物)が上記の混合ガスの流れに加えられて混合されている。モノブチル三塩化スズ及びトリフルオロ酢酸は混合物として、91.9%のモノブチル三塩化スズ及び8.1%のトリフルオロ酢酸を含み1.8kg/minの比率で供給されている。空気、上記、及び硝酸はモノブチル三塩化スズ及びトリフルオロ酢酸のガスに加えられて下記の比率でF:SnO透明導電性酸化薄膜を製造する。比率は、1)2.31kg/minの水蒸気、2)3.4kg/minの空気、及び3)67%硝酸の水溶液を0.56kg/minである。
【0086】
下塗り及び透明導電性酸化薄膜の蒸着後、ガラス/下塗り/TCOのシステムは高温で窒素雰囲気に露出される。ガラス/下塗り/TCOのシステムの高温とは、ベルト炉に入るときには約375℃である。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、約10m/minから約15m/minの搬送速度で、4分間でベルト炉を通過させられる。ガラス/下塗り/TCOのシステムは、窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却されて、それにより改良された電気的及び光学的特性を有する透明導電性酸化物を生成する。
【0087】
本発明の方法により製造された透明導電性酸化薄膜は、硝酸等の酸化化学添加物のが欠如した状態で熱分解蒸着された透明導電性酸化薄膜に比べると、増加している導電率を実証する薄膜が製造されている。本発明の方法により製造されている透明導電性酸化薄膜の電気的及び光学的特性は、下記に図面及び表1を参照しながらより詳細に説明される。なお、上記に示されている代表的な発明の試料は、下記で説明される発明の試料を製造する一般的な方法の概略である。
【0088】
図1は本発明に基づいて提供されるオンライン製造されたTCO薄膜の透過率、反射率、及び吸収率を、標準の非酸化処理された試料のAFG1022及びAFG1119と比較しているデータを示している。表から解るように、基準に比べると、発明の試料1−3の透過率は増加して、吸収率は低下している。更に、非酸処理された(non-acid treated)AFG1022及びAFG1119の試料に比べて、070808の試料1−3の反射率の測定の精度以内、0.1%、では実質的に測定可能な変化は見られなかった。
【0089】
図2は、本発明の更なる側面に基づいて提供されるオンライン製造されたTCO薄膜(例えば、070622、試料1−4)の、AFG1119と参照されている標準の非酸化で処理された試料と比べた場合の、透過率、反射率、及び吸収率のデータを示している。表から解るように、標準と比べて発明の試料1−3では透過率、反射率、及び吸収率は減少した。更に標準と比べて発明の試料1−3の反射率は測定の精度以内、〜0.1%、では実質的に測定可能な変化はみられなかった。
【0090】
表1は、生産後の冷却処理が発見される前のオンライン製造されたTCO070808、試料1−3、070622、試料1−4、及び標準1119及び1022の光学的及び電気的特性のデータを示している。表から解るように、酸化処理されたTCO070808、試料1−3、及び070622、試料1−4は、標準の非酸化処理された1119及び1022のTCOに比べて、低下したヘーズパーセンテージを示している。これは酸化化学物質の添加ではなく、膜の厚さにほとんどよるものと考えられる。なお、図1及び図2の透過率のカーブは浸漬方法により生成されて、表1の透過率の値はヘーズメーターにより得られており、図1及び2の透過率のカーブで得られた透過率の値に直接的に比較できない。当業者には透過率の値の様々な測定方法が知られている。
【0091】

【0092】
また酸化処理された発明の試料は、非酸化処理された標準に比べると、少なくとも約2%の光透過率の増加が見られる。酸化処理された発明の試料の光透過率の増加は、複数の原因に起因すると考えられる。いかなる見解にも縛られないことを願うが、硝酸の存在は、初期の蒸着工程からあらゆる酸化されていないスズ原子を酸化することを促進すると考えられる。また、硝酸の存在はフッ素が粒界で溜まることを防止する可能性があると考えられる。更に、硝酸の存在はフッ素添加酸化スズ層に円柱結晶が形成されるのを促進すると考えられており、それにより硝酸の存在下で蒸着されていないフッ素添加酸化スズ層に比べると酸化スズ層の結晶の配列を変化させる。
【0093】
酸化処理されたTCOの電気的特性は、窒素雰囲気の下で冷却される前は、酸化処理とあらゆる傾向及び相関を示さない。例えば、070808のシステム(3つの試料全て)は、TCO1022と比べると、担体密度(carrier density)、n、の増加と電子移動度の低下とを示しており、070622のシステム(4つの試料全て)は、TCO1119に比べると、担体密度、n、及び電子移動度、μ、の増加を示している。TCO薄膜の蒸着を、酸化化学添加物のみの存在下で行うことは、全ての場合に所望の改良を実現するのに十分でないかもしれない。
【0094】
本発明のいくつかの実施例は二つの側面を有する。一つ目は、TCO薄膜被膜のオンライン製造の間に酸化化学物質を熱分解蒸着工程に追加して、それによりTCO薄膜に酸化化学物質を添加する。前述のように、この側面はTCO薄膜の所望の光学的特性を増加する可能性がある。
【0095】
いかなる特定の見解にも縛られないことを願うが、出願人は酸化化学添加物がTCO薄膜の構成組織(framework)に添加されて、酸化化学物質は下塗り層の表面の少なくとも一部を酸化すると考えている。図3は、発明のシステム070622、試料4及び070808、試料1の、標準システム1119に比べた場合の、二次イオン質量分析計(SIMS)の結果を示している。これらのシステムは、硝酸の存在下で付着されている。図から解るように、発明のシステムの070622の試料4及び070808の試料1は、標準1119より高い窒素濃度を有する。これは、酸化化学添加物がTCO薄膜に加入されているという出願人の見解と一致している。
【0096】
第二の側面は、ガラス/UC/TCOを、非酸化性又はわずかに還元性の雰囲気で、高温から冷却する工程である。当業者は、ガラス上のオンライン製造されたTCO薄膜は、焼きなまし(annealing)と通常言及されているガラス冷却工程を含むことが可能であることを認識するだろう。このガラス冷却、又は焼きなまし、とはここで説明されている発明の冷却工程と混乱されてはならなく、それによってガラス/UC/TCOのシステムは非酸化性の雰囲気で高温から環境温度まで冷却される。TCO薄膜の電気的特性に所望の変更が見られるのは、酸化化学物質の存在下で蒸着されたTCO薄膜が冷却される場合である。
【0097】
いかなる特定の見解にも縛られないことを願うが、出願人は実質的に変化のない光透過率とTCO薄膜の導電率の増加とは、非酸化性雰囲気で酸処理されて、蒸着されたTCO薄膜を冷却することによる電子移動度の増加によるものと考えている。更に、増加した電子移動度は、ほぼ同じレベルの導電率で低下した(reduced)担体密度を使用することを可能にする。従って、ほぼ同じレベルの導電率の低下した担体密度はより良いPV装置の性能及び効率につながると考えられる。
【0098】
いかなる特定の見解にも縛られないことを願うが、本発明に基づくTCO薄膜の製造方法は光の透過率を促進するように薄膜の表面形態学的変化(changes in surface morphology)(データは示されていない)を招くと考えられる。つまり、本発明のTCO薄膜製造方法によりひき起こる表面の形態学的変化は光起電装置には理想的である。
【0099】
図4は、非酸化性雰囲気において冷却した場合のオンライン製造されたTCO070808、試料1−3の電気的特性への影響を示している。このシステムには、非酸化性雰囲気とは窒素雰囲気であり、冷却処理は約375℃の開始温度から実行されている。図示されるように、窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却した後に070808システムの全ての3つの試料の抵抗率の値は減少し、全ての3つの試料の担体密度及び電子移動度は増加している。従って、このシステムのTCO薄膜の電気的特性に対する窒素冷却の影響は確認されている。
【0100】
図5はオンライン製造されたTCO070622、試料1、2、及び4の電気的特性に対する窒素冷却の影響を示している。更に、システム070517、試料2からのデータも含まれて示されている。冷却工程は、約375℃の開始温度から実行された。このシステムの窒素冷却のデータは、ベルト炉内において375℃で、約10m/minの搬送速度で実施された場合である。冷却時間は数分であり、残りの酸素濃度は10ppmより少ないと推測される。
【0101】
図示されているように、070622のシステムの全ての3つの試料は窒素雰囲気の下で環境温度まで冷却した後に抵抗率の値は減少して、そして全ての3つの試料で電子移動度の値は増加している。しかしながら、このシステムの担体密度はわずかな低下を示している。従って、このシステムのTCO薄膜の電気的特性に対する窒素冷却の影響は確認されている。
【0102】
図6はオンライン生産された標準AFG1022及びAFG1119の電気的特性に対する窒素冷却の影響を示している。更にシステム070320及び070413からのデータも含まれて示されている。このシステムの窒素冷却のデータは、ベルト炉内において375℃で、約10m/minの搬送速度で実施された場合である。冷却時間は数分であり、残りの酸素濃度は10ppmより少ないと推測される。
【0103】
図示されているように、TCO薄膜の標準の電気的特性は窒素雰囲気で冷却した後には概して変更されていない。なぜならば、この2つの標準の薄膜は、蒸着処理の間に発明の酸化処理の対象とならなかったからだと考えられる。このデータは、更にオンライン製造されたTCO薄膜をガラス上に蒸着する工程の間に酸化化学処理の有利な使用を更に支持する。なぜならば蒸着の間の酸化処理は、適切な温度で非酸化性雰囲気の下で冷却されることにより、導電率の生産後の改良を許可する。この導電率における生産後の改良は、本発明のTCO薄膜が蒸着工程の間に酸化化学添加物の対象になった場合に実現できる。
【0104】
図7は本発明のオンライン製造されたTCOシステム070808、試料1−3及び070622、試料1、2、及び4を、オンライン製造された標準AFG1119及び1022に比較した場合の導電率のデータを示している。更に、システム070320、070413、及び070517のデータが含まれて示されている。
【0105】
図示されているように、オンライン製造されたTCOの発明のシステム070808、試料1−3及び070622、試料1、2、及び4の導電率は、オンライン生産された標準AFG1119及び1022に比べて、高温から環境温度まで冷却した後に少なくとも約12%増加している。このデータの場合は、冷却は窒素雰囲気で実行されている。
【0106】
本発明の主題は、生産後に改良できる電気的特性を有するガラス上にオンライン製造されたTCO薄膜を初めて表している。
【0107】
当業者には、TCO薄膜を光起電装置に組み込むことは周知である。本発明のTCO薄膜が光起電装置に組み込まれると、これらの光起電装置はAsahiのオフライン製造されたVU20のシステムに近似する効率を有している。
【0108】
図8は本発明のオンライン製造されたTCO070808及び070622のシステムの短絡電流データを、オンライン製造された標準AFG1119及び1022とAsahiのオフラインで製造されたVU20のシステムと比べて示している。この図では、AsahiVU20のシステムのJscは1の値(value of unity)に正規化(normalized)されて、全て他のデータはVU20の値のパーセンテージとして解釈されている。更にシステムAFG070320、試料2及び4のデータも示されている。
【0109】
AsahiVU20のシステムが1に正規化されて、AFG標準1119及び1022はそれぞれVU20のシステムの約91%及び95%の短絡電流(short circuit current)のデータを示している。TCOシステム070622、試料1−4は、標準AFG1119と比べた場合、短絡電流の増加を示している。標準AFG1022と比べた場合、070808、試料2及び3のみが短絡電流に微々たる増加を示している。残りの070808の試料1の短絡電流データは、標準AFG1022と比べた場合、著しい又は少しもの増加を示さない。注目すると、短絡電流の増加はこれらのシステムの透過率の増加に帰する。TCOシステム070808、試料2及び3は、AsahiVU20のシステムの約96%及び97%の短絡電流を示している。
【0110】
図9は、本発明のオンライン製造されたTCO070808及び070622のシステムの開路電圧データを、オンライン製造された標準AFG1119及び1022及びAsahiのオフライン製造されたVU20のシステムに比べた場合を示している。この図では、AsahiのVU20のシステムのVocは1の値に正規化されて、全て他のデータはVU20の値のパーセンテージとして解釈される。更にシステムAFG070320の試料2及び4のデータも示されている。
【0111】
AsahiVU20のシステムが1に正規化されて、AFG標準1119及び1022は開路電圧データを示し、それらはそれぞれ良くてもVU20のシステムの約99.0%及び97.6%である。TCOシステム070622、試料1−4は、標準システムAFG1119と比べた場合、増加した開路電圧を示している。TCOシステム070808、試料1−3は、標準システムAFG1022と比べた場合、開路電圧の明確な増加を示している。開路電圧の増加は、TCO薄膜の表面の形態学的変化に帰する(データは示されていない)。TCO070622、試料1−3は、AsahiVU20のシステムの約99.6%の開路電圧を示している。
【0112】
図10は、本発明のオンライン製造された070808及び070622のシステムを組み込んだPV装置のPV装置効率を、オンライン製造された標準AFG1119及び1022とAsahiのオフライン製造されたVU20のシステムと比べて、示している。この図では、AsahiVU20のシステム効率、η、は1一の値に正規化されて、全て他のデータはVU20の値のパーセンテージとして解釈される。更にシステムAFG070320、試料2及び4のデータも示されている。このシステムはここでは詳細には説明しない。
【0113】
AsahiVU20のシステムが1に規格化され、AFG1119及び1022はそれぞれVU20のシステムの良くても約90%及び92%の効率を示している。TCOシステム070622、試料1−4及び070808、試料1−3の両方とも、標準システムAFG1119及び1022に比べると、増加した効率を示している。システムTCO070622、試料4は、AsahiVU20のシステムの約96%の最適な効率を示している。システムTCO070808、試料2は、AsahiVU20のシステムの約95%の最適な効率を示している。
【0114】
本発明のTCOは、透過率の低下もなく導電率の増加を示すガラス上のオンライン製造されたTCO薄膜を初めて実現している。本発明のTCO薄膜を製造することにより引き起こされる増加は約9%から多いと57%も観察でき、これは生産後の冷却により粒界を緩和させて電子移動のための粒界のバリアの高さ(barrier height)を低下させることに帰する。
【0115】
酸化化学添加物の存在下の酸化スズ薄膜の蒸着は、透過率などの光学的特性を生産後の段階で同時に保持しながら、この生産後の増加を実現するに向けての第一歩である。TCO薄膜がガラス基材に付着された後、高温で非酸化性又は還元性の条件に露出することでTCO薄膜の電気的特性の改良を可能にして、それがPVモジュールに組み込まれると、より効率的なPV装置になる。
【0116】
本発明のTCO薄膜を組み込むPVモジュールの製造方法は当業者に認識されるだろう。従来、減圧(reduced pressure)の下で加熱することはPVモジュールの製造方法の初めての工程である。当業者は、ここで開示されている冷却工程はPVモジュール製造の初めての工程として適用できることを認識及び理解できるだろう。従って、本発明の主題の発明者らは、PVモジュール部品の製造に既存のガラス製造技術を適用することが可能であることを実証した。
【0117】
TCO薄膜の電気的特性の改良を生産後に可能にするオンラインTCOシステムの発見は、オフライン生産されるTCO薄膜と比べて、オンラインTCO薄膜の生産に関連する時間を減少できる手段を表している。従って、本発明の主題は、ここで開示されているTCO薄膜を組み込んだPV装置が従来の化石燃料エネルギーともっと競争できるような実行可能な方法を表している。
【0118】
本発明は特定の実施例に関して説明されているが、ここに記載の特定の詳細に限定されておらず、当業者が連想できる種々の変更又は改良を含み、それらは全て下記の請求項により定義されている発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の製造方法であって、前記方法は、
a)基材を設けて、
b)前記基材の少なくとも一部に第一層を付着させて、
c)スズ酸化物又は亜鉛酸化物を備える前記第一層の少なくとも一部に第二層を付着させて、前記層は高温で酸化剤の存在下で付着されて、
d)前記基材、前記第一層、及び前記第二層を非酸化性雰囲気(non-oxidizing atmosphere)又は還元性雰囲気(reducing atmosphere)の一つの下で環境温度まで冷却して、それによって、環境雰囲気(ambient atmosphere)の下で前記基材、前記第一層、及び前記第二層を環境温度に冷却する場合に比べて、前記第二層の導電率は少なくとも約2%増加する、方法。
【請求項2】
前記基材はガラス基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二層は酸化スズ、インジウム酸化スズ、フッ素添加酸化スズ、アルミニウム添加酸化亜鉛、又は亜鉛酸化スズ、又はそれらの化合物を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第二層はフッ素添加酸化スズを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一層はシリコンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一層は酸化物、窒化物、又はカーバイド、又はそれらの化合物の状態のシリコンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一層はシリコン酸化物(silicon oxide)、二酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン(silicon oxynitride)、炭化シリコン、オキシ炭化シリコン(silicon oxycarbide)、又はそれらの化合物を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一層はオキシ炭化シリコンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、純酸素、オゾン、過酸化物、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、一酸化二窒素、硫酸、硫酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの化合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤は、硝酸、一酸化二窒素、次亜塩素酸、硫酸、及びそれらの化合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤は硝酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高温とは200℃から800℃の範囲内の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記高温とは450℃から750℃の範囲内の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記非酸化性雰囲気は、アルコール、C−Cアルキル、一酸化炭素、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオン、キセノン、真空、還元プラズマ(reducing plasmas)、及びそれらの化合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記非酸化性雰囲気は、窒素、アルゴン、及びそれらの化合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記非酸化性雰囲気は窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第一層は400Åから1000Åの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第一層は600Åから900Åの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第一層は700Åから800Åの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第二層は300Åから1200Åの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第二層は500Åから1000Åの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
環境雰囲気の下で前記基材、前記第一層、及び前記第二層を環境温度まで冷却する場合に比べて、前記基材、前記第一層、及び前記第二層の透過性(transmission)は少なくとも約2%増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
薄膜の製造方法であって、前記方法は、
a)基材を設けて、
b)前記基材の少なくとも一部に第一層を付着させて、
c)スズの酸化物又は亜鉛の酸化物の一つを備える前記第一層の少なくとも一部の上に第二層を付着させて、
前記第二層は高温で酸化剤の存在下で付着されて、
それにより酸化剤の存在下で前記第二層を付着させることは、酸化剤が欠如している下で付着される前記第二層と比べて、前記第二層の導電率が少なくとも約2%増加することを導く、方法。
【請求項24】
前記基材はガラス基材である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二層は酸化スズ、インジウム酸化スズ、フッ素添加酸化スズ、アルミニウム添加酸化亜鉛、又は亜鉛酸化スズ、又はそれらの化合物を備える、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第二層はフッ素添加酸化スズを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記第一層はシリコンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第一層は酸化物、窒化物、又はカーバイド、又はそれらの化合物の状態のシリコンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第一層はシリコン酸化物、二酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、炭化シリコン、オキシ炭化シリコン、又はそれらの化合物を備える、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記第一層は少なくともオキシ炭化シリコンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記酸化剤は、酸素、オゾン、過酸化物、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、一酸化二窒素、硫酸、硫酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの化合物から成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記酸化剤は、硝酸、一酸化二窒素、次亜塩素酸、及び硫酸から成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記酸化剤は硝酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記高温とは200℃から800℃の範囲内の温度である、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記高温とは450℃から750℃の範囲内の温度である、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記第一層は400Åから1000Åの厚さを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記第一層は600Åから900Åの厚さを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記第一層は700Åから800Åの厚さを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記第二層は300Åから1200Åの厚さを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記第二層は500Åから1000Åの厚さを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記第二層を酸化剤が欠如している下で付着させる場合に比べて、前記基材、前記第一層、及び前記第二層の透過性は少なくとも約2%増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法により製造される薄膜。
【請求項43】
請求項23に記載の方法により製造される薄膜。
【請求項44】
請求項1に記載の方法により製造される薄膜を備える光起電装置。
【請求項45】
請求項23に記載の方法により製造される薄膜を備える光起電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2011−504293(P2011−504293A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532067(P2010−532067)
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/012409
【国際公開番号】WO2009/058385
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【出願人】(508056523)エージーシー・フラット・グラス・ヨーロッパ・エスエー (4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】