説明

薄葉紙

【課題】肌への刺激を抑えつつも、滑らか感を向上させる。
【解決手段】有効成分を60〜100重量%含有し、かつ平均粒径3〜40μmのパウダーを有効成分中0.1〜30重量%、油性成分をパウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%、ならびにカチオン系界面活性剤をパウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%含有する薄葉紙処理剤を、基材紙に対して5〜35重量%含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性やしっとり感等を向上させるための処理剤を含有し、肌触りを向上させた薄葉紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、保湿剤等の薄葉紙処理剤を含有させることによりしっとり感を高め、肌触りを向上させた、いわゆる高級タイプのティシューペーパーが市販され、繰り返し鼻をかんでも肌がヒリヒリし難い、または鼻が赤くなり難いとして人気を呼んでいる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このようなティシューペーパーは柔らかく、滑らかなことから鼻かみだけでなく、化粧用途や乳幼児の口拭き用途などに使われている。
しかし、例えば化粧用途において目尻等の皮膚の薄く傷つき易い敏感な部分を擦る場合、より肌への刺激が少ないものが望まれ、また触感としても化粧用シートのようにさらさらした滑らかなものが求められている。
このような観点から、さらさらした滑らかな感触を向上させるために、薄葉紙処理剤中にパウダーを含有させることや、油性成分を含有させることが提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。
本発明者らによれば、パウダーと油性成分だけを組み合わせて用いると、パウダーに予め油性成分が付着していることにより、パウダーが肌表面と擦れた際に皮脂を奪い難くなる利点が期待された。また、油性成分の潤滑作用により滑らか感が向上することが期待された。
しかし、期待に反して、滑らか感は思いのほか向上しなかった。
【特許文献1】特開2003−164386号公報
【特許文献2】特表2004−513961号公報
【特許文献3】特許3450230号公報
【特許文献4】特開2001−29256号公報
【特許文献5】特開平5−156596号公報
【特許文献6】特開平7−82662号公報
【特許文献7】特開2006−118089号公報
【特許文献8】特開平9−296389号公報
【特許文献9】特表平8−511069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、肌への刺激を抑えながらも、滑らか感を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
基材紙に対して薄葉紙処理剤を5〜35重量%含有してなり、
前記薄葉紙処理剤は有効成分を60〜100重量%含有し、かつ
平均粒径3〜40μmのパウダーを前記有効成分中0.1〜30重量%、油性成分を前記パウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%、ならびにカチオン系界面活性剤を前記パウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%それぞれ含有する、
ことを特徴とする薄葉紙。
【0005】
(作用効果)
本発明の特徴は、単にパウダーと油性成分とを組み合わせるだけでなく、カチオン系界面活性剤を添加する。基材紙の繊維はアニオン系であるため、これに本発明の薄葉紙処理剤を含有させると、パウダーおよび油性成分がカチオン系界面活性剤を介して基材紙繊維に付着することになり、カチオン系界面活性剤の潤滑作用により、パウダーおよび油性成分の基材紙繊維に対する滑り性が向上し、肌に触れたときにさらさらした滑らか感が得られるようになる。しかも、パウダーに予め油性成分が付着していることにより、パウダーが肌表面と擦れた際に皮脂を奪い難くなる利点も維持される。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記パウダーがタルク粒子である、請求項1記載の薄葉紙。
【0007】
(作用効果)
本発明のパウダーとしては、滑らか感の向上という観点からタルクが特に好適である。すなわち、タルクのような板状結晶は使用した時に肌の上を滑ることにより滑らかな触感を与え、肌への刺激を減らす。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記薄葉紙処理剤は、前記パウダーを前記基材紙に定着させるための接着成分を含まない、請求項1または2記載の薄葉紙。
【0009】
(作用効果)
薄葉紙処理剤中にパウダーを含有させる場合、パウダーを基材紙に定着させるために接着成分を用いることができるが、接着成分はパウダーの移動を阻害するので、使用時に肌が接触した時パウダーにより肌を痛める恐れがある。それだけでなく、接着成分を含有することにより紙が硬くなるため、肌への刺激が増す。これに対して、本項記載の発明では、接着成分を含有しないことにより、パウダーが紙に対して強固に接着せず、使用時に添加されたパウダーが肌の上を転がる又は滑ることによって肌への刺激をへらすことができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記薄葉紙処理剤は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、(A)/(B)で表される前記(A)成分と(B)成分の質量比が0.1〜19.0のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄葉紙。
(A)エステル結合を有する第4級アンモニウム塩、
(B)炭素数8以上22以下の脂肪酸と、ポリエチレンオキシド付加ソルビタンのエステル、
(C)多価アルコール。
【0011】
(作用効果)
トイレットペーパーやティッシュ等の薄葉紙においては、よりソフトな使用感が求められる。薄葉紙にソフトな使用感を与えるため、前述したように、抄紙した薄葉紙の表面に、風合いを向上する処理剤を塗布等することが提案されている。例えば、グリセリンや糖類等の親水成分を薄葉紙に塗布することにより、毛羽立ちを抑制する手法が広く知られている。しかし、グリセリンや糖類などの親水成分の塗布による方法は、しっとり感ややわらかさが付与されザラツキ感は軽減されるものの、べたつき感が強まってしまうという欠点が生じる。
そこで、前記親水成分に、パラフィン等の鉱物油(特許文献5)や、動植物油(特許文献6)、ラノリンやひまし油のアルキレンオキシド付加物(特許文献7)等の親油性化合物を併用した薄葉紙処理剤を用いることにより、薄葉紙に滑らかさを付与して、べたつき感を抑える方法が提案されている。
さらに、両性界面活性剤やアミン化合物等の第三成分を併用した薄葉紙処理剤を用いて薄葉紙を処理することにより、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)をより向上させる方法も提案されている(特許文献8)。
また、柔軟化剤として生分解性の分子内にエステル結合を有する第4級アンモニウム塩を、保湿剤としてグリセリン等の多価アルコール化合物を使用することで、薄葉紙に柔軟性、吸水性を付与することができる薄葉紙処理剤が提案されている(特許文献9)。
しかしながら、これらの従来提案されている薄葉紙処理剤においても、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)の改善効果は十分とはいえない。
これに対して、本項記載の薄葉紙処理剤を用いると、ぬめり感、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が、より一層良好になる。その理由は定かではないが、(A)成分のエステル型第4級アンモニウム塩が薄葉紙の繊維表面に吸着し、疎水化することにより柔軟性や滑らかさが発現すると考えられる。また、(A)成分のエステル型第4級アンモニウム塩と(B)成分の脂肪酸のポリオキシエチレン付加ソルビタンエステルが(C)成分の多価アルコール中でゲル状の会合体を形成し、薄葉紙を指で触った際に、ゲルが崩れる感触がぬめり感やなめらかさを生じるとともに、会合体に閉じ込められた水分が放出されることでしっとり感が得られると考えられる。また、かかるゲル状態を形成することで液安定性が向上し、保存中の液分離が抑えられるとともに、タルクなどパウダーを添加した場合に沈降物の強い凝集(ハードパック)を防ぐ効果も得られると考えられる。このゲル状態の形成は薄葉紙処理剤の粘度の上昇によって把握することができる。また、タルクなどのパウダーを配合した場合にはパウダーの沈降時のハードパックを防止する薄葉紙処理剤を提供することができる。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記薄葉紙処理剤は、さらに、グリセリンのアルキレンオキシド付加物、及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれる1種以上の化合物(D)を含有するものである、請求項4に記載の薄葉紙。
【0013】
(作用効果)
(D)成分は、多価アルコール(C)中における(A)成分と(B)成分によるゲルの形成を促進し、更に保湿力が向上して、しっとり感及びぬめり感をより向上させる効果を有する。
【0014】
<請求項6記載の発明>
前記薄葉紙処理剤は、さらに、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル、及びパラフィンからなる群から選ばれる1種以上の油性成分(E)を含有するものである、請求項4または5に記載の薄葉紙。
【0015】
(作用効果)
(E)成分は、滑らかさを向上する。また、紙への塗布加工工程での泡立ち抑制にも効果がある。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり本発明によれば、肌への刺激を抑えつつも、滑らか感を向上させることができるようになる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳説する。
(基材紙について)
本発明の薄葉紙の基材紙としては、公知のものを限定無く用いることができるが、特にパルプ原料におけるNBKP配合率(JIS P 8120)が30.0〜80.0%、特に40.0〜70.0%であるものが好適である。米坪(JIS P 8124)は、1プライ当たり10.0〜35.0g/m2が望ましい。紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は2プライ(2枚重ね)で100〜300μm、特に130〜200μmであるのが好ましく、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。クレープ率(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)は15.0〜26.0が望ましい。
本発明の基材紙としては、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)が、2プライで縦方向130cN/25mm以上、より好ましくは150cN/25mm以上、特に280〜310cN/25mm、横方向40cN/25mm以上、より好ましくは60〜100cN/25mm、特に60〜80cN/25mmのものを用いるのが好ましく、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。基材紙の乾燥紙力が低過ぎると、製造時に破れや伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、紙力剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する、後述の薄葉紙処理剤に紙力剤を添加する等の手法を適宜数組み合わせることができる。
乾燥紙力剤としては、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、CMCを内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0018】
(薄葉紙処理剤について)
本発明では、基材紙中に薄葉紙処理剤が含有される。薄葉紙における薄葉紙処理剤含有量は、本発明では基材紙に対して5〜35重量%とされる。特に好ましい範囲は20〜30重量%である。薄葉紙処理剤含有量が少な過ぎると効果が乏しくなるだけでなく、基材紙に対する塗布量が安定しなくなり、多過ぎるとべとつくようになり、しっとり感や滑らか感が阻害される。薄葉紙処理剤を含有させるための方法としては、従来公知の方法、例えば、ロール転写法、スプレー塗布法、浸漬等の任意の方法を採用できる。
【0019】
本発明の薄葉紙処理剤は、60〜100重量%程度、特に80〜95重量%程度の有効成分と、0〜40重量%程度、特に5〜20重量%程度の水分等の非有効成分とで構成することができる。
本発明では、薄葉紙処理剤中に平均粒径3〜40μmのパウダーを含有させる。パウダーの粒径が小さ過ぎるとパウダーが毛穴に入り肌トラブルの原因となるおそれがある。すなわち、毛穴の大きさは個人差はあるが2〜5μm程度と言われており、毛穴に対してパウダーが小さすぎるとパウダーが毛穴に詰まり、肌荒れやニキビの原因となる。反対に粒径が大き過ぎると滑らか感の向上効果が乏しくなる。紙表面には深さ10μm程度の小さな溝が存在し、滑らか感はパルプ繊維の隙間にパウダーが入り込み空隙を埋めることで繊維の凹凸の差が少なくなり発生する。パウダーの粒径が大き過ぎると繊維の空隙に入り込むことができないため、滑らか感の向上に寄与しない。これに対して、パウダーの粒径を3μm以上とすると、目的の風合い向上効果が得られ、過度な増粘によるハンドリング性の低下を防止できる。また、40μm以下とすることで、ざらつきによる風合いの悪化を防ぎ、また薄葉紙処理剤として保存したときのパウダーの経日での沈降を防止することができる。特に好ましい平均粒径の範囲は5〜20μmである。
【0020】
パウダーの含有量は有効成分中0.1〜30重量%とされる。5〜20質量%であるとより好ましい。薄葉紙処理剤中のパウダー含有量が多過ぎると、薄葉紙処理剤の流動性が低下し、基材紙への浸透性・定着性が悪くなる。また、パウダー含有量が少な過ぎると、パウダー添加による効果が乏しくなる。特に好ましいパウダー含有量は、有効成分中5〜20重量%である。
パウダーとしては、クレーのような天然に存在する粘土鉱物に由来するもの(例えば、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等のカオリン群;アンティゴライト,アメサイト,クロンステダイト等のアンティゴライト群;パイロフィライト、タルク等のパイロフィライト群;イライト、海緑石、セラドナイト、セリサイト、白雲母等の雲母型粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトナイト等のスメクタイト群)、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機物粉体や、金属石鹸(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等)、コーンスターチ、小麦粉、米デンプン、馬鈴薯澱粉、小麦粉タンパク質等の有機物粉体を単独または複数種組み合わせて用いることができる。特に好ましいパウダーは吸油性を有するものであり、中でもタルクである。また、パウダーとしてスメクタイトなどのような、表面電荷付与可能な無機材料の粉体を用いると、薄葉紙における繊維同士の反撥力が付与され、これによって柔らかさが向上するため好ましい。
基材紙にパウダーを定着させるために接着成分を用いることもできるが、その場合、接着成分によりシートが硬くなるだけでなく、シートが肌に接触する際にパウダーの移動を阻害するため好ましくない。なお、このような接着成分としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉糊、ウレタン樹脂、ラテックス等を挙げることができる。
【0021】
また、本発明では、薄葉紙処理剤中に油性成分を含有させる。油性成分としては、例えば脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル、及びパラフィンからなる群から1種以上選択して用いることができる。脂肪酸は、炭素数8〜20の脂肪酸が好ましく、炭素数16〜18の脂肪酸がより好ましい。具体例としてはイソステアリン酸が挙げられる。脂肪族アルコールは、炭素数8〜20の直鎖又は分岐の高級アルコールが好ましく、炭素数16〜18の直鎖又は分岐の高級アルコールがより好ましい。具体例としてはイソステアリルアルコール、オレイルアルコールが挙げられる。脂肪酸と脂肪族アルコールのエステルは、炭素数8〜20の脂肪酸と炭素数1〜5の脂肪族アルコールのエステルが好ましく、具体例としてはオレイン酸メチルやステアリン酸メチルが挙げられる。パラフィンは平均分子量で200〜800の流動パラフィンが好ましく、より好ましくは250〜450で、具体的にはモレスコホワイト55、200(松村石油製)などが挙げられる。
より具体的には、ワセリン等の石油若しくは鉱物油由来成分、ミンク油やラノリン油、スクワラン等の動物油由来成分、オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボカド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油、ひまわり油等の植物油由来成分、アルキルメチルシリコーン等のシリコーン油を用いることができる。
中でも、素数16〜18の高級アルコールまたは炭素数16〜18の脂肪酸が好ましく、特にイソステアリルアルコール、オレイルアルコール、またはイソステアリン酸が好ましい。
油性成分はパウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%含有させる。油性成分が多過ぎるとべたつき感が増し、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがある。これに対して、油性成分が少な過ぎると、皮脂奪い取り防止効果や、滑らか感向上効果が乏しくなる。この観点から、油性成分は特に0.1〜5重量%含有させるのが好ましい。
【0022】
さらに、本発明では、滑らか感をより一層のものとするために、カチオン系界面活性剤を含有させる。
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、またはアミンなどをもちいることができる。例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、セトステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤は、前述した滑らか感向上効果の他、基材紙の柔軟性を向上させる柔軟剤としても機能するため、この効果も考慮して配合量を定めるのが好ましい。界面活性剤はパウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%含有させる。より好ましい含有量は0.1〜10重量%である。界面活性剤が多過ぎると泡立ち易くなるため、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがあり、反対に少な過ぎると滑らか感向上効果、柔軟効果が乏しくなる。
【0023】
また、任意ではあるが、油性成分およびカチオン系界面活性剤以外の成分からなる滑り向上成分を含有させることができる。この滑り向上成分としては、多価アルコールや高級アルコール、多価アルコールと高級アルコールとのエーテル結合物、脂肪酸とエチレンオキサイドとのエステル化合物、界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、および両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができる。
【0024】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等を用いることができる。
【0025】
多価アルコールとしては炭素数2〜10、好ましくは2〜6の1価アルコール、炭素数が好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8の鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の2〜3価のアルコールである多価アルコールなどが挙げられ、具体的には、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、トリメチルペンタンジオール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、2−フェノキシエタノール、2−フェニルエタノール等が用いられる。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール等も用いることができる。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系などを用いることができる。特にアルキル燐酸エステル塩が好ましい。
【0027】
非イオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレートなどの多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。
【0028】
また、両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、または複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
【0029】
これらの任意の滑り成分向上剤は、パウダーを除いた有効成分中0.1〜10重量%含有させるのが好ましく、特に0.1〜5重量%含有させるのが好ましい。これらの任意の滑り成分向上剤が多過ぎると、本発明のカチオン系界面活性剤の機能が阻害されるおそれがあり、反対に少な過ぎると滑らか感向上効果に乏しくなる。
上記以外の有効成分として、燐酸エステル等の可塑剤を柔軟剤として用いることもできる。
【0030】
また、他の有効成分としては、例えば保湿剤を含有させることができる。保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グルコール系薬剤およびその誘導体、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せで用いることができる。
保湿剤は、パウダーを除いた有効成分中50〜90重量%含有するのが好ましく、特に70〜85重量%含有するのが好ましい。保湿剤が多過ぎると、多過ぎるとべたつき感が増し、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがあり、少な過ぎるとしっとり感に乏しくなる。
【0031】
さらに別の有効成分としては、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチンなどのアミノ酸、アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキスなどの植物抽出エキス、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー等を用いることができる。また、MPCポリマー(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体)のような角質細胞類似成分を添加することもできる。
これらの各種ビタミンや植物抽出エキス等の含有量は、パウダーを除いた有効成分中0.001〜10重量%程度とするのが好ましい。
【0032】
(他の薄葉紙処理剤の例)
また、特に好ましい形態として、有効成分中に、下記(A)、(B)及び(C)成分を含有し、(A)/(B)で表される前記(A)成分と(B)成分の質量比が0.1〜19.0である薄葉紙処理剤を使用した薄葉紙も提案される。下記(D)成分及び(E)成分は任意成分である。
【0033】
「(A)成分」
(A)成分は、分子内にエステル結合を有する第4級アンモニウム塩(以下、エステル型第4級アンモニウム塩ということもある。)であり、具体的には下記一般式(I)で表されるトリエステル型第4級アンモニウム塩((a−1)成分)、一般式(II)で表されるジエステル型第4級アンモニウム塩((a−2)成分)、及び、一般式(III)で表されるモノエステル型第4級アンモニウム塩((a−3)成分)の混合物である。該混合物中における(a−1)、(a−2)(a−3)の各成分の割合は、後述のエステル型第4級アンモニウム塩の合成過程における長鎖脂肪酸類とトリアルカノールアミンの縮合反応における長鎖脂肪酸類のトリアルカノールアミンに対する反応モル比(長鎖脂肪酸類/トリアルカノールアミン)によって変化する。
(a−1)

(a−2)

(a−3)

【0034】
一般式(I)〜(III)中、R1〜R3及びR5〜R7は、それぞれ炭素数9〜23、好ましくは13〜19のアルキル又はアルケニル基である。9以上であることにより、薄葉紙に適用したときにソフトな風合いを付与でき、23以下であることにより、液安定性の高い薄葉紙処理剤とすることができる。
また、(a−1)〜(a−3)の各成分の分子内におけるR1〜R3及びR5〜R7は原料の長鎖脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基に相当する部分である。(A)成分中に存在する該「長鎖脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基」の合計のうちの50質量%以上が、炭素数17以上であることが風合い付与の観点から望ましい。該炭素数17以上の「長鎖脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基」の占める割合は65質量%以上がより好ましく、75質量%以上が特に好ましい。
【0035】
一分子中に存在するR1〜R3または一分子中に存在するR5〜R7はそれぞれ、飽和高級脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基(以下、飽和残基ということもある。)または不飽和高級脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基(以下、不飽和残基ということもある。)のいずれか一方のみであってもよく、両者が併存していてもよい。(A)成分中に存在する「長鎖脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基」のうち該飽和残基/不飽和残基の比率は、質量比で10/0〜1/9の範囲内であるのが望ましく、風合い付与の観点からは好ましくは10/0〜3/7、特に好ましくは10/0〜5/5である。不飽和残基が存在する場合、その立体異性体構造がシス体またはトランス体のいずれか一方のみであってもよく、あるいは両者が併存していてもよく特に限定はない。しかし、合成効率を鑑みた経済性の観点からは、不飽和残基におけるシス体/トランス体の比率は、質量比で25/75〜100/0の範囲内であるのが望ましい。
【0036】
一般式(I)〜(III)中、R4は、炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
一般式(I)〜(III)中、pは2〜4の整数であり、好ましくは2または3であって、特に2が好ましい。pが3の場合、−Cp2p−で表される基は、イソプロピレン基が望ましい。
一般式(I)〜(III)中、nは2〜4の整数であり、好ましくは2である。また、mは0〜3の整数であり、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。一分子中の各n、m及びpは、それぞれ互いに同一であってもよく、あるいは相互に異なっていてもよい。
-はアニオンを示し、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンやメチル硫酸、エチル硫酸等のアルキル硫酸イオン、メチル炭酸イオンが好ましく、塩素イオン、臭素イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンがより好ましく、さらにはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンが好ましい。特にメチル硫酸イオンが、設備の腐食性など、実用上の観点から好ましい。
【0037】
前記エステル型第4級アンモニウム塩は、例えば長鎖脂肪酸類(長鎖脂肪酸またはその低級アルコールエステル)とトリアルカノールアミンを縮合反応後、得られたエステルアミンをジアルキル硫酸などの4級化剤により4級化することにより得ることができる。長鎖脂肪酸類とトリアルカノールアミンの縮合反応においては、長鎖脂肪酸類のトリアルカノールアミンに対する反応モル比(長鎖脂肪酸類/トリアルカノールアミン)は1.3〜2.2の範囲が好ましく、1.5〜2.0が更に好ましい。必要に応じて、互いに異なる反応モル比で前記縮合反応を行って得られる複数種の組成物を混合して使用してもよい。該長鎖脂肪酸類のトリアルカノールアミンに対する反応モル比を1.3以上で行うと、エステル化における未反応のトリアルカノールアミンの量を低減できる。逆に2.2以下ではトリエステル型第4級アンモニウム塩の生成量を抑制でき、風合い及び安定性の観点で好ましい。
【0038】
エステル型第4級アンモニウム塩の合成に使用できる長鎖脂肪酸類は、具体的にはオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレイン酸などの不飽和高級脂肪酸;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の飽和高級脂肪酸;及びこれらの低級アルコールエステルである。特に牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油などの天然油脂を分解、精製して得られる脂肪酸などに代表される動植物油由来の脂肪酸、若しくはそのメチルエステルが好ましい。前記長鎖脂肪酸類は油脂の分解前又は分解後に水添を行ったものでもよい。
また、トリアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好ましく、これらは、単独でも組み合わせて用いてもよい。これらのうちトリエタノールアミンが更に好ましい。
なお、アンモニアにアルキレンオキシドを付加してトリアルカノールアミンを合成する際に、アルキレンオキシド−(Cn2nO)−が付加した付加体が生成する。該付加体を除去したトリアルカノールアミンを用いると、前記一般式(I)〜(III)におけるmが全て0となり、該付加体を除去せずに用いると該mが1以上のものが得られる。
【0039】
4級化反応は、無溶媒、もしくはエタノールなどの溶媒存在下の何れで行ってもよい。無溶媒で反応を行った場合は、反応後、溶媒を添加してもよい。4級化剤としては、塩化メチルなどのハロゲン化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などのジアルキル硫酸が好ましく、更には塩化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸が好ましく、反応性が高い点でジメチル硫酸、ジエチル硫酸が特に好ましい。エステルアミンに対する4級化剤のモル比(4級化剤/エステルアミン)は、0.90〜1.5が好ましく、0.95〜1.1が更に好ましいが、ジアルキル硫酸を使用する場合は安全性の観点から0.90〜1.0が好ましく、0.94〜0.99が更に好ましい。4級化反応の温度は40℃〜120℃が好ましく、60℃〜100℃がより好ましい。
【0040】
(A)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(A)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)成分の合計のうち0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、1.0〜5.0質量%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることにより、滑らかさや柔らかさなどの目的とする薄葉紙の風合い改善効果を得ることができ、上限値以下であると、粘度が高くなりすぎてハンドリングできなくなることや、表面の疎水性が強くなりすぎて、しっとり感が損なわれることを防ぐことができる。また、上記範囲の上限値より多く配合しても配合量に見合う効果の向上は見られず経済性の点でも好ましくない。
また薄葉紙処理剤中における(A)成分の配合量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。
【0041】
「(B)成分」
(B)成分は、炭素数8以上22以下の脂肪酸と、ポリエチレンオキシド付加ソルビタンのエステルである。脂肪酸とポリオキシエチレン付加ソルビタンのエステルの構造は、一般式(IV)で表され、別名ツィーン類、或いはポリソルベート類として知られる。
一般式(IV)中のRは、炭素数8以上22以下の脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基に相当し、炭素数7〜21のアルキル又はアルケニル基である。Rの炭素数が7より小さいと、目的とする風合い向上効果が得られず、液の安定性も低下する。Rの炭素数が21より大きいと、やはり目的とする風合い向上効果が得られず、液の安定性も低下する。風合い向上効果と、液の安定性の観点から、Rの炭素数は11〜19が好ましく、11〜17がより好ましい。Rは具体的には、例えばオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレイン酸などの不飽和高級脂肪酸に由来する残基、あるいはステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の飽和高級脂肪酸に由来する残基が好ましい。
一般式(IV)中のa、b、cはオキシエチレンの付加モル数を表す。一分子におけるa〜cの合計は5〜100であり、この範囲を逸脱すると、風合い向上効果が得られず、液安定性も損なわれる。両性能の観点から該a〜cの合計は、好ましくは10〜50、より好ましくは15〜30である。

【0042】
(B)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(B)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)成分の合計のうち0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上とすることにより目的とする風合い向上効果と液安定性が得られ、上限値以下とすることで、粘度が高くなりすぎてハンドリングが困難になることを防ぐことができる。また、上記範囲の上限値より多く配合しても、配合量に見合う効果の向上は見られないばかりか、泡立ちが強くなり、紙への塗布加工工程において泡立ちによる生産性の低下を招く。
また、薄葉紙処理剤中の(B)成分の配合量は0.1〜10質量が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が更に好ましい。
また、(A)成分と(B)成分の配合量の質量比((A)成分/(B)成分)を、0.1〜19.0の範囲内とすることで、エステル型第4級アンモニウム塩と脂肪酸のポリオキシエチレン付加ソルビタンエステルの併用効果によるゲル化、増粘が起こり、ぬめり感、しっとり感といった目的とする風合い向上効果が得られ、さらに液安定性が良好なものとなる。前記(A)成分と(B)成分の配合比は、0.25〜9.0であることが両者の併用効果がより高くなる点で好ましく、0.42〜4.0とすることが特に好ましい。
【0043】
「(C)成分」
(C)成分は多価アルコールである。(C)成分は親水性成分であり、主として基剤として機能する。また、(C)成分を配合することにより、薄葉紙の風合いも向上する。
(C)成分は、2価以上のアルコールであれば特に限定することなく用いることができる。中でも2〜3価のアルコールが好ましく、特に3価のアルコールが好ましい。また、炭素数は、適度な親水性の確保によって保水力が向上し、風合いも向上することから、2〜10であることが好ましい。
具体的には、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられ、中でもグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールが好ましく、特にグリセリンが好ましい。
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
特に保存安定性の点から、グリセリンと他の多価アルコールを併用すると好ましい。該他の多価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の2価のアルコール、またはソルビトールが好ましい。
併用する場合、グリセリンの配合量は、(C)成分中、40質量%以上であることが好ましく、特に60質量%以上であることが好ましい。40質量%以上にすることにより、薄葉紙の保湿性が向上し、しっとり感と柔らかさが向上する。
(C)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)成分の合計のうち50〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましく、65〜95質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上とすることにより保湿性が向上し、しっとり感が向上する。上限値以下であることにより、相対的に(A)成分、(B)成分の好ましい含有量を確保でき、柔軟性や滑らかさが向上する。
また、薄葉紙処理剤中の(C)成分の配合量は、好ましくは50〜99.0質量%であり、特に好ましくは60〜98質量%であり、さらに好ましくは65〜95質量%である。
【0044】
「(D)成分」
(D)成分は、グリセリンのアルキレンオキシド付加物(D1)、及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物(D2)からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。
(D)成分は、多価アルコール(C)中における(A)成分と(B)成分によるゲルの形成を促進し、更に保湿力が向上して、しっとり感及びぬめり感をより向上させる効果を有する。
(D2)成分は、グリセリンの2分子以上の縮合体(ポリグリセリン)にアルキレンオキシドが付加した化合物である。該ポリグリセリンにおける重合度(縮合体の1分子を構成しているグリセリンの分子数)は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
(D1)成分および(D2)成分におけるアルキレンオキシドの付加モル数は、グリセリンまたはポリグリセリンの1モルに対して5〜100モルが好ましく、10〜80モルがより好ましい。
具体的には、グリセリン、またはジグリセリン、トリグリセリンなどのポリグリセリンに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを単独或いは、混合(ブロック、ランダム)付加したものが挙げられる。付加するアルキレンオキシドは、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム、或いはブロック共重合物であることが、風合い向上効果がより高くなるため好ましい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合比(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)がモル数基準で5/95〜95/5の範囲内であるものが、風合い向上効果がより高くなる点で好ましく、10/90〜90/10の範囲内であるものが更に好ましい。
(D)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(D)成分の配合量は、(A)、(B)および(C)成分の合計に対して0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上とすることにより、目的とする風合い向上効果を得ることができ、上限値以下とすることにより過度なゲル形成を防ぎ、良好なハンドリング性を得ることができる。また、該上限値よりも多く配合してもそれ以上の添加に見合う風合い向上効果は得ることができない。
また、薄葉紙処理剤中の(D)成分の配合量は0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0045】
「(E)成分」
(E)成分は、前述した油性成分である。(E)成分は、滑らかさを向上する。また、紙への塗布加工工程での泡立ち抑制にも効果がある。(E)成分の配合量は(A)、(B)および(C)成分の合計に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上とすることにより、目的とする風合い向上効果と泡立ち抑制効果を得ることができ、上限値以下とすることにより(C)成分の多価アルコールの配合量とのバランスが良くなり、(C)成分と相溶性に乏しい(E)成分を配合しても液安定性を維持できる。また、該上限値よりも多く配合してもそれ以上の添加に見合う風合い向上効果は得ることができない。
また、薄葉紙処理剤中の(E)成分の配合量は0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0046】
「水」
薄葉紙処理剤においては、水を配合することが好ましい。水を配合することにより、さらに保存安定性が向上する。水は、例えばイオン交換水を使用することが望ましい。
水の配合量は、薄葉紙処理剤中、下限値については0.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。上限値については、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。下限値以上であることにより保存安定性が向上し、上限値以下であることにより、塗布工程において、泡立ちが生じて塗布直後の薄葉紙にシワが生じる現象を抑制することができる。
【0047】
「任意成分」
また、薄葉紙処理剤には、その他の任意成分を配合することができる。
例えば、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。特に本発明の組成物は、界面活性剤成分を含有しているため、加工時に泡立ちやすい。そこで、消泡剤を使用することが好ましい。
消泡剤としては、ポリシロキサン、無機フィラー複合コンパウンド型シリコーンまたはそれらのエマルション、POE(ポリオキシエチレン)変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エタノール、高級アルコールにPOE(ポリオキシエチレン)および/またはPOP(ポリオキシプロピレン)を付加した付加体等が使用できる。このうちポリシロキサンは、ジメチルシリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましく、これらは粘度が100〜100万cstものが好ましい。これらのポリシロキサンはそのまま用いてもよいが、水を用いてエマルション化したものが好適に用いられる。
防腐剤としては、例えば安息香酸塩、メチルパラベン、エチルパラベン等のオキシ安息香酸系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンに代表される有機窒素系防腐剤;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン、N−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等に代表される有機窒素硫黄系防腐剤;1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ビストリブロモメチルスルホンに代表されるような有機ブロム系防腐剤;4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンで代表されるような有機硫黄系防腐剤等が挙げられる。
防腐剤の配合量は、薄葉紙処理剤中、好ましくは0.005〜2質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。
その他の任意成分としては、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖等の糖類;ビタミンC、ビタミンE等の抗酸化剤;香料;消臭剤;色素;エキス類等が挙げられる。
【0048】
薄葉紙処理剤は、各配合成分を均一に混合することにより、得ることができる。
薄葉紙処理剤は、20℃におけるpHが2〜9の範囲であることが好ましく、3〜8の範囲がより好ましい。そのために、必要に応じて適当なpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、硫酸等)を添加することができる。pHが上記の範囲であると保存安定性が向上する。また、肌に対してよりやさしく低刺激性になり好ましい。
かくして得られる薄葉紙処理剤を基材紙に含有させることにより、ぬめり感、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が良好な薄葉紙が得られる。その理由は定かではないが、(A)成分のエステル型第4級アンモニウム塩が薄葉紙の繊維表面に吸着し、疎水化することにより柔軟性や滑らかさが発現すると考えられる。また、(A)成分のエステル型第4級アンモニウム塩と(B)成分の脂肪酸のポリオキシエチレン付加ソルビタンエステルが(C)成分の多価アルコール中でゲル状の会合体を形成し、薄葉紙を指で触った際に、ゲルが崩れる感触がぬめり感やなめらかさを生じるとともに、会合体に閉じ込められた水分が放出されることでしっとり感が得られると考えられる。また、かかるゲル状態を形成することで液安定性が向上し、保存中の液分離が抑えられると考えられる。このゲル状態の形成は薄葉紙処理剤の粘度の上昇によって把握することができる。
なお、前記(A)〜(C)成分が必須成分であり、(A)/(B)で表される前記(A)成分と(B)成分の質量比が0.1〜19.0であり、(D)及び(E)成分が任意成分である、薄葉紙処理剤の含有量としては、水を除いた有効成分換算質量で、基材紙の乾燥質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。下限値以上にすることにより、風合いが向上する。上限値以下にすることにより、シワ等が生じて薄葉紙の外観を損なう傾向を抑制でき、また、経済的にも有利である。
【0049】
(好ましい製造方法の例)
他方、本発明の薄葉紙は製造方法によって限定されるものではないが、折り畳んで積層する製品形態、例えば箱詰め型のティシューペーパーの場合、抄造した基材紙に薄葉紙処理剤を付与した後、インターフォルダ等の折り畳み装置で折り畳むよりも、折り畳み装置内で折り畳みのために基材紙を搬送する過程で薄葉紙処理剤を付与するようにすると、効率良く製造でき、また薄葉紙処理剤や水分の蒸発も少なく、品質の安定した製品を製造できるようになるため好ましい。なお、後者の方法としては、本出願人による特願2004−251874号を例示することができる。
【実施例1】
【0050】
表1に示す各種の2プライティシューペーパー(本発明に係る実施例1〜4および比較例1〜5)を製造し、官能評価および各種物性の測定を行った。
基材紙としては、米坪(1プライ)が19g/m2、縦方向乾燥紙力が298cN/25mm、横方向乾燥紙力が70cN/25mm、縦方向湿潤紙力が169cN/25mm、横方向湿潤紙力が50cN/25mmのものを使用した。
薄葉紙処理剤は、有効成分・非有効成分の配合を表1のとおりとし、非有効成分としては水を使用した。
パウダーとしては、タルク(粒子形状:板状、平均粒径:7,25,43μm)、ならびに米澱粉(粒子形状:球状、平均粒径:10,26,45μm)を使用した。
【0051】
官能評価については、被験者30名により、顔の中でも特に皮膚の薄い目もとをこすってもらった時の刺激のなさについて5点満点(5点:なめらかで心地よい、4点:痛くない、3点:特に何も感じない、2点:少し痛い若しくはややべたべたしている、1点:痛い)で点数をつけ、平均点を評価値とした。
物性の測定は、JIS P 8111に規定される条件下で、摩擦係数の平均偏差MMDならびにオイルMMDについて行った。摩擦係数の平均偏差MMDは、カトーテック株式会社製「摩擦感テスター KESSE」を用いて測定した。MMD値が大きいほど滑らかさに劣る又はざらざらしていることを意味する。
また、オイルMMDの測定は、例えば図1〜図3に示すように、上述のMMD試験機、の基台上に人工皮革(サプラーレ:出光テクノファイン社)を敷いて固定するとともに、測定端子Tを人工皮革(サプラーレ:出光テクノファイン社)にて被覆し、その測定端子の測定面の人工皮革で被覆された部分(接触平面)にオリーブオイル(BOSCOエクストラバージンオイル:日清精油)4mgを均一に塗布し、MMDの測定手順と同様にして行うことができる。より詳細には、人工皮革で構成される接触平面は、横断面直径0.5mmにピアノ線からなり、先端の曲率半径が0.25mmの単位膨出部が隣接して有し、全幅が10mmの連続した測定面を有し、その測定面の長さが10mmとされるほぼ10mm四方の測定面を有するMMD測定用端子を、人工皮革で被覆して形成することができる。人工皮革による端子の被覆は、10mm四方の接触平面が形成されるように端子の測定面に対して人工皮革がぴったりと接触するように、あるいは若干の張力をもたせてぴったりと被覆することにより達成できる。人工皮革を端子に固定するにあたっては、測定時、すなわち紙試料を移動させたときに人工皮革と内部の端子とがずれて人工皮革に接触平面に歪みなどが生じないようにしっかりと固定することが重要である。固定は例えば、接触平面が構成されるように端子を被覆したのち、接触平面を構成しない部位を輪ゴム等で装置の測定に影響が出ない部位、例えば端子の支持材等にしっかり固定する。また、MMD試験機の基台上には人工皮革を敷いて接着テープ等で固定する。このとき、測定時に歪まないように基台に人工皮革をしっかりと固定することが重要である。また、基台上に敷く人工皮革は、接触平面を構成する人工皮革と同じものを用いる。なお、紙試料は、10cm四方に裁断して用い、人工皮革を敷いた基台に固定する。測定に際しては、紙試料の上に試料押さえ用錘(約100g)で押さえる。また、試験機の測定端子への荷重を50gとして人工皮革で構成される接触平面全体が50gf/cm2の接触圧で紙試料に接触するようにするが、これは、MMD測定と同様に、円盤状の錘を端子上部に取り付けることで達成できる。もちろん、支持材の一方の端部(紙試料の移動方向と反対の端部)の固定の仕方はMMDの測定に準ずる。測定は、紙試料の縦方向について3回、横方向について3回の計6回を行い、測定値についてはその6回の平均値とする。
【0052】
【表1】

【0053】
表1からも判るように、本発明に係る実施例1〜4は、比較例1〜5と比べて滑らか感に優れ、肌への刺激性が少ないという結果が得られた。
【実施例2】
【0054】
以下に、他の実施例を示す。なお、配合組成の単位は、質量%(合計100質量%)である。
<合成例1:エステル型第4級アンモニウム塩(A−1)の合成>
−エステルアミンの調製−
長鎖脂肪酸類としてのパーム油脂肪酸740g(2.7モル)と、トリエタノールアミン250g(1.7モル)とを、攪拌器、分縮器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込んだ。次に、窒素を0.4L/minの速度で流入させて、副生する水を系外に留出させながら、1.5℃/minの速度で190℃まで昇温してから10時間反応させた後、反応を停止させた。以上により中間体であるエステルアミン(アルカノールアミンエステル)を調製した。
【0055】
−エステル型第4級アンモニウム塩の製造−
前記調製したエステルアミン300gを、温度計、滴下ロート及び冷却器を備えた1Lのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換した。その後、90℃に加熱し、4級化剤としてのジメチル硫酸55.8gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、更にそのままの状態で1時間攪拌した。次いで、約65gのエタノールを滴下しながら冷却し、固形分85質量%のエタノール溶液を調製した。以上によりエステル型第4級アンモニウム塩(A−1)を製造した。
【0056】
<合成例2:エステル型第4級アンモニウム塩(A−2)の合成>
−エステルアルカノールアミンエステルの調製−
パーム油由来の脂肪酸メチルエステル混合物(ライオンオレオケミカル社製、パステルM180、パステルM181、パステルM16の混合物)782g(2.7モル)と、トリエタノールアミン250g(1.7モル)とを、アルカリ触媒として48質量%NaOH水溶液2.2gを用いて、攪拌器、分縮器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込んだ。次に、窒素を0.4L/minの速度で流入させて、副生するメタノールを系外に留出させながら、1.5℃/minの速度で190℃まで昇温してから6時間反応させた後、反応を停止させた。以上により中間体であるエステルアミンを調製した。
【0057】
−エステル型第4級アンモニウム塩の製造−
前記調製したエステルアミン300gを、温度計、滴下ロート及び冷却器を備えた1Lのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換した。その後、90℃に加熱し、4級化剤としてのジメチル硫酸55.8gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、更にそのままの状態で1時間攪拌した。次いで、約65gのエタノールを滴下しながら冷却し、固形分85質量%のエタノール溶液を調製した。以上によりエステル型第4級アンモニウム塩(A−2)を製造した。
【0058】
合成例1,2で合成したエステル型第4級アンモニウム塩の性状を表2に示した。分析方法は以下の通りである。
<エステル型第4級アンモニウム塩におけるモノ、ジ、トリエステル組成比の測定>
前記中間体として得られたエステルアミンをイソプロパノール約10mLに希釈し、適度に加温して前記エステルアミンを完全に溶解させた。これを測定試料とし、以下の分析条件で液体クロマトグラフィにて分析し、モノ、ジ、トリ脂肪酸エステルの面積比から組成比を測定した。結果を表2に示す。表2において、組成比の測定結果は、トリエステル型第4級アンモニウム塩(a−1)、ジエステル型第4級アンモニウム塩(a−2)、及びモノエステル型第4級アンモニウム塩(a−3)の総質量を100質量%として、それぞれの割合を質量%で表す。
−分析条件−
カラム:Nucleosil 5SB 4.6φ×250mm、溶離液:0.3%−過塩素酸ナトリウム/0.175%モノクロロ酢酸−メタノール溶液、流速:1.0mL/min、検出器:RI(示差屈折計)、試料注入量:100μL。
【0059】
<アルキル分布の測定>
エステル型第4級アンモニウム塩のアルキル分布は、エステルアミンの原料として用いた長鎖脂肪酸類(合成例1では脂肪酸、合成例2では脂肪酸メチルエステル混合物)をイソプロパノールに溶解して約1%のサンプルを調製し、以下の分析条件でガスクロマトグラフフィーにて分析し、その面積比から求めた。なお、脂肪酸の測定の際にはシリル化剤BSTFAによりシリル化した後にイソプロパノールに溶解し、脂肪酸メチルエステルはそのままイソプロパノールに溶解してサンプルとした。
結果を表2に示す。表2において、アルキル分布の測定結果は、長鎖脂肪酸類の総質量を100質量%とし、そのうち「長鎖脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基」の炭素数が15である長鎖脂肪酸類(C15)、該炭素数が17で該残基中の不飽和結合が0個である長鎖脂肪酸類(C17F0)、該炭素数が17で前記不飽和結合が1個である長鎖脂肪酸類(C17F1)、該炭素数が17で前記不飽和結合が2個である長鎖脂肪酸類(C17F1)、および該炭素数が19である長鎖脂肪酸類の、それぞれの割合を質量%で示す。
−分析条件−
機種:Hitachi FID ガスクロG−3000、カラム:GLサイエンス TC−70(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)。
温度:カラム150℃から230℃まで昇温、昇温速度10℃/min、インジェクター及びディテクター240℃、カラム圧力:1.0kgf/cm2
【0060】
【表2】

【0061】
<合成例3:グリセリンアルキレンオキシド付加体(D)の合成>
グリセリン21.7gに対し所定量のプロピレンオキシド(PO)285gと水酸化カリウム触媒2gを加えて加圧付加し、分子量1300の中間体を得た。さらに、PO552gとエチレンオキシド(EO)140.6gを、最終的にグリセリン1モルに対する付加モル数が合計73.7モルで、付加したEO/POの比が13/61となるようにランダム付加した。最後に、ケイ酸塩(商品名:キョーワード600、協和化学製)1gを用いてカリウム分を除去した後、減圧脱水して「グリセリンEO/PO(13/61)付加体」を得た。
【0062】
[薄葉紙処理剤の配合例]
以下の配合例では、合成例1,2で得たエステル型第4級アンモニウム塩(A−1)、(A−2)、合成例3で得たグリセリンEO/PO(13/60)付加体、および下記の化合物を用いた。
・モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO20)ソルビタン:商品名ノニオンLT221、日本油脂社製。
・モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO10)ソルビタン:商品名ノニオンLT210、日本油脂社製。
・モノラウリン酸ポリオキシエチレン(EO80)ソルビタン:商品名ノニオンLT280、日本油脂社製。
・モノオレイン酸ポリオキシエチレン(EO20)ソルビタン:商品名ノニオンOT220、日本油脂社製。
・モノステアリン酸ポリオキシエチレン(EO20)ソルビタン:商品名ノニオンST220、日本油脂社製。
・グリセリン:コグニス社製、食品添加用グリセリン、25℃における粘度420mPa・s。
・ソルビトール:商品名ソルビットD−70、東和化成社製。
・イソステアリン酸:商品名イソステアリン酸EX、高級アルコール工業社製。
・イソステアリルアルコール:商品名イソステアリルアルコールEX、高級アルコール工業社製。
・オレイルアルコール:商品名オレイルアルコール、高級アルコール工業社製。
・ジ硬化牛脂メチルアンモニウムクロリド:商品名アーカード2HT、ライオン社製。
・ヒマシ油EO40モル付加体:商品名HCO−40、青木油脂社製。
・ジメチルシリコーン:商品名KF―70、信越化学社製。
【0063】
<薄葉紙処理剤の調製>
(例1〜8、例11〜14)
表3、4に示す配合で薄葉紙処理剤を調製した。
まず、200mLビーカーに、(C)成分、イオン交換水、(B)成分、(A)成分の順に所定量取り、油浴中で50℃まで加温し、攪拌・混合した。均一となった後、ジメチルシリコーンを加えて、さらに5分間、常温で撹拌・混合した。この後、グリセリンを所定量添加して、均一で透明な状態になるまでさらに撹拌した。この時、pHが5〜6の範囲外であった場合は、1N水酸化ナトリウム又は硫酸を用いてpHを5〜6に調整して、目的とする薄葉紙処理剤を得た。
pHは、ガラス電極pHメーター(堀場製作所製、商品名:F−21)を用い、25℃における薄葉紙処理剤のpHを測定した。
【0064】
(例9、10)
表4に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
すなわち、例1、2において、(B)成分の代わりに、従来の薄葉紙処理剤(例えば前記特許文献3)に用いられている親油性化合物である、ヒマシ油ポリオキシエチレン付加体を用いたことを除き、例1と同じ手順で目的とする薄葉紙処理剤を得た。
【0065】
(例15)
表4に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
すなわち、例1において(A)成分の代わりに、一般的なカチオン界面活性剤であって分子内にエステル結合を有しない第4級アンモニウム塩である、ジ硬化牛脂メチルアンモニウムクロリドを使用したことを除き、例1と同じ手順で目的とする薄葉紙処理剤を得た。
【0066】
(例16〜21)
表5に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
例1において、(A)成分の後に(D)成分および/又は(E)成分を加え、油浴中で50℃まで加温し、攪拌・混合した。均一となった後、ジメチルシリコーンを加えて5分間、常温で撹拌・混合した。その後は例1と同じ手順で目的とする薄葉紙処理剤を得た。
【0067】
(例22)
表6に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
すなわち、例18において(A)成分の代わりにジ硬化牛脂メチルアンモニウムクロリドを使用したことを除き例18と同様にして目的とする薄葉紙処理剤を得た。
【0068】
(例23)
表6に示した組成の薄葉紙処理剤を以下の様にして調製した。
すなわち、例18において(B)成分の代わりにヒマシ油ポリオキシエチレン付加体を用いたことを除き、例18と同様にして目的とする薄葉紙処理剤を得た。
【0069】
上記で得られた各薄葉紙処理剤について、以下の評価を行った。評価結果を表3〜6に示す。
「粘度」
100mLのサンプル瓶に前記調製した薄葉紙処理剤を100g入れ、25℃の恒温槽で2時間温度調整した。その後、B型粘度計(TOKIMEC製)により、1000mPa・s未満はNo.2ロータ、1000〜4000mPa・sはNo.3ロータを用い、30rpmで30秒後の値を読み取った。測定値(単位:mPa・s)を表に示す。
【0070】
「風合いの評価」
薄葉紙処理剤を用いて、下記に示す方法により処理した薄葉紙について、その風合いを以下のようにして評価した。
<薄葉紙の処理方法>
本試験ではスプレー塗布に適用するために、各例の薄葉紙処理剤を、有効成分(水を除いた成分)換算で20質量%となるようにイオン交換水でそれぞれ希釈した二次処理剤を用いた。
次に、この二次処理剤を未処理のティッシュペーパーに対して、乾燥処理後の塗布量が対ティッシュ25%となるように均一にスプレー塗布し、恒温恒湿室(温度25℃・湿度65%RH)内で24時間放置して乾燥処理した。このようにして得られた処理済みティッシュペーパーについて風合いを評価した。
風合いの評価は、処理後のティッシュペーパーのしっとり感、ふんわり感、ぬめり感、滑らかさの4項目について、専門パネラーにより、対象品と比較して官能評価する方法で行った。対象品としては、前記二次処理剤の代わりに、グリセリン(ライオン社製、食品添加用グリセリン)の濃度25質量%水溶液を用いたほかは同様に処理したティッシュペーパーを用いた。評価基準は以下の通りとした。
(評価基準)
対象品に比べ、極めて良好 : 4点
対象品に比べ、良好 : 3点
対象品に比べ、やや良好 : 2点
対象品と同等以下 : 1点
さらに、パネラー5名の合計点により、下記の通り判定した。
合計点66〜80 : ◎と判定
合計点51〜65 : ○と判定
合計点36〜50 : △と判定
合計点20〜35 : ×と判定
【0071】
「液分離性」
薄葉紙処理剤を25℃条件下で、2ヶ月保存し、分離の有無を目視で判定し、下記の基準で評価した。
◎:透明均一で分離なし。
○:微濁均一で分離なし。
△:僅かに分離が認められる。
×:完全に分離している。
【0072】
「泡立ち」
100mLのエプトン管に10mLの薄葉紙処理剤を入れ、40℃に加温した後、エプトン管を手に持ち、該手の肘の曲げ角度が90°から180°の間で往復するように10回振とうし、その泡立ち性を下記の基準で目視判定した。
10分放置後、立った泡が完全にない:◎。
僅かに泡が残る:○。
泡は減るが半分程度残る:△。
泡が振とう直後から全く消えない:×。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
表3〜6に示した結果より、例1〜8、16、及び17で得られた薄葉紙処理剤は、液が分離し難くて保存安定性に優れるとともに、該薄葉紙処理剤で処理した薄葉紙の風合いが良好であった。
これに対して、(B)成分の代わりにヒマシ油ポリオキシエチレン付加体を用いた例9、10は、例1、2とそれぞれ比べると、粘度が低く、処理した薄葉紙の風合い、液分離性、および泡立ちにおいて劣る。
(A)成分を用いなかった例11では粘度が低く、液は分離しにくいが、薄葉紙の良好な風合いが得られない。
(B)成分を用いなかった例12では粘度が低く、液が分離しやすく、薄葉紙の風合いも劣る。
(A)成分と(B)成分を含有するが、(A)/(B)の質量比が大きすぎる例13は、液分離性および薄葉紙の風合いが劣り、(A)/(B)の質量比が小さすぎる例14は、液は分離しにくいが薄葉紙の風合いが劣る。
(A)成分の代わりに、ジ硬化牛脂メチルアンモニウムクロリドを使用した例15は、例1、2と比べると粘度が低く、処理した薄葉紙の風合い、液分離性、および泡立ちにおいて劣る。
また、(A)成分の代わりにジ硬化牛脂メチルアンモニウムクロリドを用いた例22、および(B)成分の代わりにヒマシ油ポリオキシエチレン付加体を用いた例23は、いずれも、例18に比べて粘度が低く、処理した薄葉紙の風合い、液分離性および泡立ちにおいて劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、クレープ紙等の薄葉紙に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】オイルMMDの試験要領を示す図である。
【図2】オイルMMDの試験要領を示す図である。
【図3】オイルMMDの試験要領を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材紙に対して薄葉紙処理剤を5〜35重量%含有してなり、
前記薄葉紙処理剤は有効成分を60〜100重量%含有し、かつ
平均粒径3〜40μmのパウダーを前記有効成分中0.1〜30重量%、油性成分を前記パウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%、ならびにカチオン系界面活性剤を前記パウダーを除いた有効成分中0.1〜30重量%それぞれ含有する、
ことを特徴とする薄葉紙。
【請求項2】
前記パウダーがタルク粒子である、請求項1記載の薄葉紙。
【請求項3】
前記薄葉紙処理剤は、前記パウダーを前記基材紙に定着させるための接着成分を含まない、請求項1または2記載の薄葉紙。
【請求項4】
前記薄葉紙処理剤は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、(A)/(B)で表される前記(A)成分と(B)成分の質量比が0.1〜19.0のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄葉紙。
(A)エステル結合を有する第4級アンモニウム塩、
(B)炭素数8以上22以下の脂肪酸と、ポリエチレンオキシド付加ソルビタンのエステル、
(C)多価アルコール。
【請求項5】
前記薄葉紙処理剤は、さらに、グリセリンのアルキレンオキシド付加物、及びポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれる1種以上の化合物(D)を含有するものである、請求項4に記載の薄葉紙。
【請求項6】
前記薄葉紙処理剤は、さらに、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル、及びパラフィンからなる群から選ばれる1種以上の油性成分(E)を含有するものである、請求項4または5に記載の薄葉紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−6273(P2008−6273A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141348(P2007−141348)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】