説明

薬剤用パッケージ上への高分子抑止表面の作製方法

【課題】薬剤用パッケージ上への高分子抑止表面の作製方法。
【解決手段】含有されるタンパク質溶液の活性に影響することなく、薬剤用パッケージ上へのタンパク質の吸着を低減させる1つ又は複数のコーティングを直接、薬剤用パッケージング上に施すことにより、薬剤用パッケージ上にタンパク質抑止表面を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤用パッケージ上への高分子(例えば、タンパク質)抑止表面の作製の改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子(例えば、タンパク質)の吸着を抑止するコーティングは、プラズマ化学気相蒸着によって薬剤用パッケージング材料に施されている。製薬業界における重要な成長分野の1つは、増大しつつあるタンパク質系薬物処方の普及である。タンパク質は、そのままのパッケージング材料(例えば、ガラス、ポリマー)の表面に対して強い親和性を有するため、このことは、永久的な固定化及び/又は変性につながる表面に対するタンパク質の相互作用によって、活性な薬剤成分の減少をもたらす。大量に製造されるインスリンなどのタンパク質系薬物では、表面を不動態化しなお且つ必要とされる投与量を維持するに十分なだけの製品を提供するよう、認定されている溶液は、過剰に充填することすなわち必要な濃度及び/又は液量よりも多く用いることにより、タンパク質の損失を補うことになっている。より特殊化された(高価な)タンパク質系薬物の出現により、パッケージング容器に過剰に充填するためのコストの増大は、製造業者及び消費者の両方に対して望ましくないことである。
【0003】
表面への高分子特にタンパク質の吸着は、多様な要素、すなわち:基材の表面化学(そのままの表面上又はそのコーティング上に存在する官能基)、表面形状(平坦さ、粗さ)、タンパク質の構造(分子量、アミノ酸の分布、等電点)、及びタンパク質処方中に存在する賦形剤(結合剤、崩壊剤、希釈剤、懸濁剤及び分散剤)に依存する。タンパク質の化学的に不均質な構造は、水素結合及び多様な相互作用機序(イオン力、疎水性の力、ファンデルワールス力、からみ合いなど)による表面相互作用を可能にする。これらの機序による結合を弱める目的で、タンパク質薬物を処方する者の殆どは、例えば炭水化物(例えば、トレハロース、ショ糖)、緩衝剤系(例えば、リン酸塩、トリス、クエン酸塩)並びに界面活性剤(例えば、ポリソルベート−80又はポリソルベート−20)などの種々の賦形剤に依存している。これらのアプローチは、良好に確立されたものであるかも知れないが、活性が賦形剤の添加によって変更され得る種々のタンパク質に対して、常に可能であるとは限らず、各処方を、パッケージ内に含有されるタンパク質薬物の安定性を試験し且つタンパク質及びタンパク質活性の損失に関してタンパク質の吸着の影響を定量する必要性が生じる。
【0004】
パッケージの表面に対するタンパク質結合を抑止するための別のアプローチは、薬剤用パッケージングの筋書き(低コスト、高圧蒸気殺菌法/EtO曝露/γ線照射/電子線照射という許容された方法の1つ以上によって滅菌可能である、無毒性、2〜3年の安定性、100%コーティングが沈着しているのが検証可能であるなど)において実現可能であるという条件で、パッケージ表面にコーティングを施すことである。大量の一群の文献により、表面がタンパク質の吸着を抑止しそうか否かを判定する一般的に許容された一組の理論的パラメータが確立されている(Ostuni E., Chapman R.G., Holmin R.E., Takayama S., Whitesides G.M. Langmuir 2001,17,5605-5620)。一般に、非イオン性、親水性且つ水素結合受容性である表面が、液体/固体界面においてタンパク質の吸着を拒絶する理想的な表面であると考えられている。コーティングはまた、吸着だけでなく変性も回避するよう、薬剤用パッケージ及び/又は部品表面(ガラス、ポリマー、コポリマー、金属、合金)とのタンパク質の相互作用に対して立体障害性のものであるべきである。ある種のコーティングがタンパク質の吸着を低減する能力を説明する他の理論が、文献において提案されている。例えば、Gombotzら(Gombotz W.R., Wang G.H., Horbeti T.A., Hoffinann A.S. J. Biomed. Mater. Res. 1991,12,1547-1562)(彼らは、コーティング/水界面領域において水を構造化するコーティング(この場合、ポリエチレンオキシド)の有効性が、タンパク質の吸着を低減するコーティングの能力に影響するということを前提としている)を参照のこと。
【0005】
タンパク質の吸着に抵抗性である表面及び/又はコーティングに関する一般知識は、豊富にある。非網羅的なリストとしては、プラズマ支援化学気相蒸着によって堆積されたタンパク質の吸着を抑止するポリエチレンオキシド/グリコール様コーティングその他のコーティングが挙げられる。例えば、Erika E.Johnston E.E., Bryers J.D., Ratner B.D. Langmuir 2005,21,870-881; Sardella E., Gristina R., Senesi G.S., d'Agostino R.,Favia P. Plasma Process. Polym. 2004,1,63-72; Shen.M., Martinson L., Wagner M.S., Castner D.G., Ratner B.D., Horbett T.A. J. Biomater. Sci. Polymer Edn. 2002,13,367-390; Shen M., Pan Y.V., Wagner M.S., Hauch K.D., Castner D.G., Ratner B.D., Horbett T.A. J. Biomater. Sci. Polymer Edn. 2001,12,961-978; Ratner B.D., Lopez G.P.の米国特許第5,153,072号(1992);Lopez G.P., Ratner B.D., J. Polym. Sci. A-Polym. Chem. 1992,30,2415-2425; Ratner B.D., Lopez G.P.の米国特許第5,002,794号(1991)を参照のこと。タンパク質の吸着を抑止する堆積された(誘導体化)アルカンチオールコーティングについては、例えば、Li L.Y., Chen S.F., Ratner B.D., Jiang S.Y. J. Phys. Chem. B 2005,104,2934-2941; Chirakul P., Perez-Luna V.H., Owen H., Lopez G.P. Langmuir 2002,18,4324-4330; Prime K.L., Whitesides G.M. J. Am. Chem. Soc. 1993,115,10714-10721; Pale-Grosdemange C., Simon E.S., Prime K.L., Whitesides G.M. J. Am. Chem. Soc. 1991,113,12-20を参照のこと。タンパク質の吸着を抑止するオルガノシランコーティングについては、例えば、Seigers C., Biesalski M., Haag R. Chem. Eur. J. 2004,10,2831-2838; Sunder A., Mulhaupt R.の米国特許出願第2003/0092879号(2003); Yang Z., Galloway J.A., Yu H.Langmuir 1999,15,8405-8411; Lee S.W., Laibinis P.E. Biotnaterials 1998,19,1660-1675; Lee S.W., Laibinis P.E.の米国特許第6,235,340号(2001)を参照のこと。タンパク質に吸着を抑止するヒドロゲル(H)コーティングについては、例えば、Mao G., Metzger S.W., Lochhead M.J.の米国特許第6,844,028号(2005)を参照のこと。タンパク質の吸着を抑止するポリ−L−リシン/ポリエチレングリコールコーティングについては、例えば、Hubbel J.A., Textor M., Elbert D.L., Finken S., Hofer R., Spencer N.D., Ruiz-Taylor L.の米国特許出願第2002/0128234号(2002); Huang N.P., Michel R., Voros J., Textor M., Hofer R., Rossi A., Elbert D.L., Hubbell J.A., Spencer N.D. Langmuir 2001,17,489-498; Kenausis G.L. Voros J., Elbert D.L., Huang N., Hofer R., Ruiz-Taylor L., Textor M., Hubbell J.A., Spencer N.D. J. Phys. Chem.B 2000,104,3298-3309を参照のこと。ポリエチレンオキシドグラフトコーティングについては、例えば、Sofia S.J., Premnath.V., Merrill E.W. Macromolecules 1998,31,5059-5070を参照のこと。これらの例は、多数の利用可能な表面処理及び/又はコーティングの可能性の代表であるが、網羅的な編成ではない。
【0006】
現在、市販の薬剤用パッケージ(そのまま、又はコートされたもの)で、上記の好ましい特性のすべてを含むものはなく、好ましい特性のいくつかを有する傾向はあるが、なお、タンパク質の吸着を促進するいくつかの特性を有している。ガラス(ホウケイ酸塩、ソーダ石灰など)は親水性で水素結合受容性である一方、イオン性が高く、タンパク質結合を抑止するための立体障害性を有しない。液体処方条件(pH5〜9)下における表面の高密度の負電荷が、タンパク質(すなわち、リシン、ヒスチジン及びアミノ末端)上の正に荷電した残基のイオン性結合を促進する。表面を不動態化するため及びシリンジ内に潤滑性を提供するためのガラスのシリコーン処理は、立体的にブロックされた相対的に非イオン性の表面をもたらすが、シリコーン油は、表面の水素結合受容能力を減少させつつ表面を非常に疎水性にしてしまう。疎水性表面は、水を排除してタンパク質の吸着を助長する傾向がある。タンパク質が直面する環境の疎水性はまた、タンパク質の疎水性コアが、最小の自由エネルギーコンホメーションを得るために表面と相互作用して天然の構造を解こうとするため、タンパク質変性をもたらし得る。医薬関連粒子/凝集体を含有する溶液/懸濁液のために、非付着性を有するフッ素含有疎水性コーティングが、以前にプラズマ増速化学気相蒸着によって作製されている。例えば、Walther M., Geiger A., Auchter-Krummel P., Spalleck M.の米国特許第6,599,594号(2003)を参照のこと。
【0007】
従って、ガラス及びポリマー系表面は、望ましい特性のすべてを含みかつ高分子特にタンパク質の結合を抑止することになるコーティングから、確実に恩恵を受けるであろう。高分子(例えば、タンパク質)の吸着を受けやすい表面としては、薬剤用パッケージング構成要素(例えば、ガラスバイアル、アンプル、栓、キャップ、充填準備済みのガラス及びプラスチックシリンジ、カートリッジ系シリンジ、精製シリカ表面バイアル、プラスチックコートガラスバイアル、プラスチック及びガラス保存ボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器ならびにあらゆる型の薬剤用容器)及び医療器具(例えば、カテーテル、ステント、インプラント、シリンジなど)が挙げられる。タンパク質との接触が考慮され、かつタンパク質の吸着を受けやすい如何なる候補表面も、結合タンパク質の量を低減するためにコートされることができる。多くのポリマーコーティングが、上記の理論的考慮事項を念頭において設計されてきたが、薬剤用パッケージの問題に対するそしてコーティングをタンパク質薬物とともに用いるために満たされるべき厳格性に対する解決には、なっていない。自己組織化単分子膜コーティングを施した金コートされた基材(Ostuni E.,Yan L., Whitesides G.M. Colloids Surfaces B: Biointerfaces 1999,15,3-30)での結果は、コーティングをタンパク質の吸着の低減に効果的なものにする特性を明らかにしつつも(Pertsin A.J., Grunze M., Garbuzova I.A. J. Phys. Chem B 1998,102,4918-4926; Seigel R.R., Harder P., Dahint R., Grunze M., Josse F., Mrksich M., Whitesides G.M. Anal. Chem. 1997,69,3321-3328)、そのような表面のコストのため、薬剤用パッケージの実現に対して実用的な適用性をほとんど有しない。現実の適用は、コートされ(例えば、ガラス、ゴム、エラストマー、プラスチック、及び他のポリマー)次いで可能性のある薬物候補又は既に確立された薬物(例えば、免疫グロブリン、インスリン、エリスロポエチンなど)であるタンパク質への曝露/充填により試験される薬剤に適した表面を用いるものである。
【0008】
図1a、lb、1c、及び2は、本発明の方法を示す。各国内の規制当局による規定(FDA、USP、EP、JP)のもとで認可され得るコーティングを作製するには、品質に関して100%検証できるコーティングを製造することという要件がある。バッチ反応器によるプラズマ支援化学気相蒸着コーティングの現行の方法では、まだ、必要とされるコーティング再現性をコスト効率よく達成ことができず、コスト効率よく検証することもできない。基材と溶液間のイオン交換を低減するための、及び種々のガスへのパッケージされた溶液の曝露を低減するためのSiO2などのようなバリアコーティングが、プラズマ増速化学気相蒸着法によって、薬剤用パッケージング管理当局に求められる標準規格に成功裡に適用されている。例えば、(DE 196 29 877 M. Waltherら; EP 08 210 79 M Waltherら; DE 44 38 359 M. Waltherら; EP 07 094 85 M. Waltherら; DE 296 09 958 M. Waltherら)を参照のこと。米国特許第6,599,594号には、Si、O、C及びHを含むコーティング;Si、O、C、H、Fを含むコーティング;HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)コーティング;C610(CF32コーティング;及びC66コーティングが開示されている。これらのコーティングは、文献から、ある種のタンパク質の吸着を僅かに低減させるが、完全にはタンパク質の吸着を抑止又はタンパク質の変性を抑制しないことが知られている。例えば、Fang F., Szleifer I. Biophys J 2001 80 2568-2589(血清からのアルブミン及びIgGの吸着)を参照のこと。米国特許第5,900,285号には、バリアコーティングとしての使用のための、HMDSO(Si、C、H、O含有);ポリエチレン、パリレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリスチレン(C、H含有);フタロシアニン(C、H、N含有)、及び主に炭化水素を含有する種々の分子が開示されている。バリアコーティングは、薬剤用パッケージ内部の製剤を水蒸気、二酸化炭素、酸素などの拡散性の種に対して保護し、またパッケージング材料とのイオン交換から保護する機能を果たすが、一般的に、タンパク質の吸着の抑止又はタンパク質の変性の抑止において有効ではない。
【0009】
しかしながら、前述の特性を有するタンパク質の吸着を低減するコーティング前駆物質、具体的には、有機(エーテル、エステル)前駆物質は、プラズマ支援化学気相蒸着によって堆積されるコーティングとして用いた場合、その堆積に伴う技術的な課題(前駆物質の化学安定性及び温度安定性、低電力堆積、コーティング特性の再現性、コーティングの均一性など)のため、薬剤用パッケージに成功裡には適用されてこなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プラズマ化学気相蒸着によって、高分子の吸着を抑止するコーティングを直接、薬剤用パッケージの表面上に堆積させることによる、薬剤用パッケージ(又は、同義的に薬剤用容器)上への高分子抑止表面の作製方法に関する。薬剤用パッケージは反応チャンバーとして働き、従って、均一なコーティングが創出される。種々の薬剤用パッケージ及びその構成要素、例えば、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、ステント、蓋、針、カテーテル又はインプラントなどが、本発明の方法に従ってコートできる。薬剤学的若しくは生物工学による物質又は処方と接触する如何なる薬剤用パッケージも、想定されている。ガラス(例えば、1型、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、リン酸塩、ソーダ石灰ケイ酸塩、2型、3型、及び処方を種々の形態の電磁放射線から保護するためのその着色型)、化学的に処理されたガラス(例えば、表面及び表面付近のアルカリ含量を減少させるため、又はガラスの強度を増大させるため)、アクリル系、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー(例えば、Topas(登録商標)−COC)、ゴム、エラストマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、金属、又は合金で作られているものである薬剤用パッケージング基材が想定されている。特に、シリコーン処理又はシラン処理された表面を有する薬剤用パッケージング材料は、非コート薬剤用パッケージと比べて表面エネルギーを5ダイン/cm以上低下させるコーティングを有する薬剤用パッケージング材料(例えば、シリコーン油、及び容器を空にするのを補助する疎水性コーティング)と同様に有用である。イオン交換、浸出性、抽出性、酸素透過、酸素移動、水移動、水透過、二酸化炭素透過、及び電磁放射線透過性を低減するバリアコーティングを有する薬剤用パッケージング材料もまた、有用である。
【0011】
非コート薬剤用パッケージ基材と比べ、本発明の方法によって作製される基材は、表面に対する高分子の吸着を25%を超えて低減する。好ましいコーティングは、表面に対する高分子の吸着を50%を超えて低減し、特に好ましいコーティングは、表面に対する高分子の吸着を75%を超えて低減する。抑止される高分子としては、溶液又は固体状態の、天然に存在するか又は合成により調製された生体分子又はその誘導体(例えば、核酸、ポリヌクレオチド、タンパク質、炭水化物、又はタンパク質/核酸複合体)が挙げられる。
【0012】
コーティング前駆物質は、如何なる化学物質ファミリーに由来するものであることもできる。好ましいファミリーは、エーテル、エステル、シラン、酸化物及びその官能化誘導体である。最も好ましくは、本発明において有用なコーティングは、1種又は2種以上の化学的前駆体、例えば、エーテルモノマー若しくはエステルモノマー又はその官能化誘導体(これは、1種又は2種以上のハロゲン、アルキル、ビニル、アルキニル、芳香族、ヒドロキシル、酸、カルボニル、アルデヒド、ケトン、アミン、アミノ、アミド、ニトロもしくはスルホニル誘導体化官能基を含有するものである)などから作製してよい。特に好ましいコーティング前駆物質は、ポリエーテル(例えば、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ペンタグリム、ヘキサグリム、又はその官能化誘導体)である。薬剤用パッケージに対する高分子の吸着の優れた低減が、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TG)を用いて達成できる。適当な前駆物質を、同時又は順次のいずれかで堆積してよい。更に、これらは、既存のコーティング、例えば、第1の無機酸化物層(例えば、SiO2、TiO2、ZrO2又はA123)、第1の接着層、又はバリア層などの上に施してもよい。好適な前駆物質は、DE 196 29 877; EP 08 210 79; DE 44 38 359; EP 07 094 85及びDE 296 09 958(これらは、引用により本明細書に組み込まれる)に開示されている化合物である。
【0013】
本発明の種々の特徴及び付随する利点は、添付の図面と関連させて考察するとき、より良好に理解されるため、より十分に認識されよう。図面において、同様の参照符号は、これらの図面全体を通して同じ又は同様の部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
用語「薬剤用パッケージ」は、本明細書で用いる場合、溶液又は固体状態の、薬剤学的、生物学的若しくは生物工学による物質又は処方と接触する如何なる容器又は医療器具若しくはその構成要素をも意味する。例としては、高分子と接触するバイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、カテーテル、ステント、インプラント、及びその構成要素が挙げられる。
【0015】
用語「高分子」は、本明細書で用いる場合、天然に存在するか又は合成により製造された、溶液又は固体状態の生体分子又はその誘導体、例えば、核酸、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、抗体、炭水化物、タンパク質/核酸複合体などを意味する。
【0016】
用語「タンパク質溶液」は、種々の添加剤(表面へのタンパク質の吸着に対する効果を有することもある)を含有していてよい(典型的には)水溶液の存在下でのその特定のタンパク質をいう。試験対象の典型的なタンパク質溶液は、薬剤学的に関連のある部分、例えば、細胞、組織、及びその誘導体などを含む。タンパク質には、天然に又は組換えにより産生される任意のポリアミノ酸鎖、ペプチド、タンパク質断片及び種々の型のタンパク質(例えば、構造的、膜、酵素、抗原、モノクローナル抗体;ポリクローナル抗体、リガンド、レセプター)、ならびにこれらの化合物の誘導体などが包含される。具体的なタンパク質薬物としては、抗体(例えば、Remicade及びReoPro (Centocor製); Herceptin (Genentech製); Mylotarg (Wyeth製)、Synagis (Medlmmune製))、酵素(例えば、Pulmozyme (Genentech製); Cerezyme (Genzyme製))、組換えホルモン (例えば、Protropin (Genentech製)、Novolin (Zymogenetics製)、Humulin(Lilly製))、組換えインターフェロン(例えば、Actimmune (InterMune Pharmaceutical製); Avonex (Biogenldec製)、Betaseron (Chiron製); Infergen (Arngen製); Intron A (Schering-Plough製); Roferon (Hoffman-La Roche製))、組換え血液凝固カスケード因子(例えば、TNKase (Genentech製); Retavase (Centocor製); Refacto (Genetics Institute製); Kogenate (Bayer製))及び組換えエリスロポエチン(例えば、Epogen (Amgen製); Procrit(J&J製))、ならびにワクチン(例えば、Engerix-B (GSK製); Recombivax HB (Merck & Co.製))が挙げられる。
【0017】
用語「プラズマ化学気相蒸着」は、本明細書で用いる場合、支援型、増速型、インパルス型又は連続型の化学気相蒸着及びその変形法(文献では、支援型及び増速型は、互換的に使用されている場合もある)を包含する。支援型プラズマCVDは、所望のコーティングが、そのCVD生成相対物に関して所望の特性又は加工の考慮事項を達成するのにプラズマを必要とすることを意味する。コーティングは、CVDによって堆積さることができるが、コーティングプロセス(速度、均一性、厚さなど)及び又は特性(形態学、高分子抑止など)は、プラズマを用いることで向上される。プラズマは、荷電した反応性の種の生成、及びコーティング形成への関与のための基材へのそれらの移行が重要なパラメータである場合、コーティングプロセスに有用である。インパルスプラズマCVDでは、エネルギーは非連続的な様式で供給され、一方、連続的プラズマCVDでは、エネルギーは連続的である。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「反応チャンバー」は、上記のように薬剤用パッケージを意味し、コーティングチャンバーとして働く。前駆物質ガスを直接薬剤用容器内に適用し、電磁放射線を印荷してプラズマを発生させる。生じる反応により、高分子と接触する薬剤用パッケージの表面上にコーティングが創出される。例えば、図1a〜1c及び2を参照のこと。
【0019】
本発明は、プラズマ化学気相蒸着による、薬剤用パッケージング材料への高分子(例えば、タンパク質)吸着を抑止するためのコーティングの製造及び堆積の改善された方法に関する。タンパク質の吸着を低減するコーティングをプラズマ支援化学気相蒸着によって堆積させる技術分野の現在の技術水準は、バレル型設計(Ratner B.D.ら USP5,002,794; Ratner B.D.ら USP5,153,072)及び平行板設計(Sardella E.ら Plasma Process. Polym. 2004,1,63-72)を用いる無線周波数電源に関して記載されている。これらの反応器は、限られた基材サイズでの少量バッチ生産及びコーティング均一性の制御を可能にする。薬剤用パッケージング産業における適用のためには、製品は、高度に制御され、実証可能に再現可能なプロセスで製造されなければならない。薬剤用パッケージング製品は、典型的には、それぞれの国の薬局方(USP/EP/JP)及び/又は医薬製造業者により、パッケージング容器製造プロセスの100%品質管理に合格することが必要とされる。現行の設計及び結果としてのコーティングプロセス方法論は、コートされた物品を、これらの基準に対して再現可能に製造する一方で、多様な基材寸法のより大きな容積での製造が可能となるように改善される必要がある。
【0020】
本発明は、反応器設計及びプロセス方法論における、当該技術分野の現在の技術水準に対する根本的な変更である。本発明は、薬剤用パッケージ及び/又はその構成要素(例えば、バイアル、シリンジ、アンプル、ボトル、ピストン、針、キャップなど)を反応チャンバーとして利用する。基材を反応チャンバーとして用いることにより、大型の反応チャンバーを利用するバッチ型プロセスと比べ、施されるコーティングに対してより高度な制御が達成できる。このような型のシステムは成功裡に構築されており、食品業界及び医薬品業界において、SiO2バリアコーティング(酸素バリア)を堆積させるために使用されている。好ましい実施形態の図示による説明を図1a〜1cに示す。薬剤用パッケージ(及び/又はその構成要素)を、構造体(好ましい一実施形態では、該構造体は、平底U字形構造体である;図1a参照)と接触させる。パッケージをこの平底U字形構造体に密封し、真空ポンプシステムによって密封する。第1の工程では、パッケージの内部のみを真空ポンプによって真空にする。次の工程では、バルブを開放した後、1種又は2種以上の前駆物質を含有するプロセスガスを、ガスチャネル(例えば、ガスランス)を介してチャンバー内に流動させ、真空ポンプによって連続的にポンプ移動させる。高周波エネルギー(例えば、パルス化エネルギーを有する無線周波数、マイクロ波周波数)をパッケージ内へとカップルさせ、容器内部でプラズマを点火させるために使用する。プラズマコーティングプロセス中、プラズマの発光、及び他のプロセスパラメータ(圧力、ガス流及び温度など)をモニターする。容器内部表面上へのコーティング層の堆積後、真空ポンプへの接続及びガス供給源への接続をバルブによって遮断し、高周波エネルギーの入力を停止させる。パッケージを雰囲気圧へと通気し、後に構造体を残す。好ましい一方法は、プロセスガスを導入する前に、1つ又は2つ以上の更なる工程を含む。これらの更なる工程としては、キャリアガス(すなわち、アルゴン、窒素、酸素、ヘリウム、ネオンなど)のチャンバーへの導入、及び表面化学修飾、汚染物質(すなわち、外来の炭素)の除去、チャンバーの滅菌及び/又は加熱のためのプラズマの点火が挙げられる。好ましい実施形態では、多数の個々の物品を同時にコートするために多数のステーションが使用される(図3)。
【0021】
バッチ型反応器の場合に比べ、基材を反応チャンバーとして用いて得られる改善点がいくつかある。コート対象の領域(基材1つ対多数)が小さくなり、必要とされる前駆物質の体積が少なくなることから、プロセスの時間が短縮できる。コーティングの均一性が、コーティング領域を覆って安定で再現可能なプラズマ場を有することにより改善される。多くの基材を同時にコートする一層大きな領域に必要とされるプラズマ場に比して、1つの基材に必要とされるプラズマ場は小さく(すなわち、作り出すのがより容易になり、より均一で安定になる)、作り出すためのコスト効率がよりよくなる。良好なコーティング均一性が、特に3次元的基材において、プラズマ点火の中断中に良好なガス交換をもたらすパルスプラズマプロセスを用いることにより、実現できる。基材を反応チャンバーとして用いて得られるコーティング堆積の100%検証は、プラズマ支援化学気相蒸着バッチプロセスで作製される基材と比べ、達成がより容易で、よりコスト効率がよい。この100%品質検査のために、各コート容器について、プラズマの光放射、プロセス圧、コーティング温度及びガス流が制御でき、検証できる。更にまた、薬剤用パッケージをコーティング反応器として使用する別の重要な一利点は、多くのバッチ反応器では微粒状物質由来の汚染が起きるのに対し、表面の汚染が起きないことである。こうして、本発明の方法は、パッケージ内に粒子が落ち込むという問題を回避して、反応器チャンバーを洗浄することを目的としたメンテナンス作業をなくす。この方法の更なる利点は、正の温度勾配の使用であり、これは、物品表面上へのコーティングの凝縮の制限及び/又は回避を助ける。
【0022】
この方法は、あらゆる電磁エネルギー供給源に適用可能である。好ましい周波数は、高周波数(主に、40kHz、13.56MHz、2.45GHz)である。この方法は、あらゆる薬剤用パッケージングの構成要素(例えば、バイアル、シリンジ、アンプル、プランジャー、栓、針、ガスケットなど)及びその材料(例えば、ガラス、エラストマー、ポリマー、金属、合金など)に適用可能である。薬剤用パッケージ材料は、如何なるガラス、ポリマー、コポリマー、金属、又は合金であってもよい。好ましい材料は、ホウケイ酸塩(FIOLAX(登録商標)、SUPRAX(登録商標)及びDURAN(登録商標))ならびにソーダ石灰ガラス、Topas COC(登録商標)樹脂(エチレン及びノルボレンから作られる環状オレフィンコポリマー)、鉄/チタン/アルミニウム及びその合金、ゴム、シリコーン、並びにシラン処理又はシリコーン処理されたそれらコート材料である。ホウケイ酸塩ガラス組成の例が、W. Kieferの米国特許第4,870,034号(1989)及びE. Watzkeらの米国特許第5,599,753号(1997)に開示されている。好ましい材料の別の形態は、上記の容器材料の、熱可塑性ポリマーでコートされたタイプのもの(PURGARD(登録商標))である。
【0023】
コーティング前駆物質は、如何なる化学物質ファミリーに由来するものであってもよい。好ましくは、コーティングは普遍的であり、そのようなものとしてあらゆる可能性あるタンパク質処方の吸着を抑止する。場合によっては、これは、そうならないこともあり、タンパク質特性の幾つか{例えば、pI、荷電した残基、修飾(グリコシル化)、疎水性/親水性}についての最初の解析により、コーティング処方に含めるべき具体的な特性へと導かれることもあろう。種々のパッケージング構成要素の表面の解析(例えば、エネルギー、粗さ、電荷及び官能基)もまた、タンパク質の吸着を低減するためのコーィング処方の具体的な特性及び/又は修飾へと導き得る。これを念頭に置いて、好ましいコーティングファミリーは、グリコール、エーテル、エステル、アルコール、メタクリレート、シラン及びその構成員の誘導体である。本発明における使用に特に好ましいコーティング前駆物質としては、炭素−酸素結合を含んだ化合物が挙げられる。特に好ましいコーティング前駆物質としては、元素C、H及びOを有する化合物;ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、一般にグリムとして知られるもの(例えば、モノグリム、エチルグリム、ジグリム、エチルジグリム、トリグリム、ブチルジグリム、テトラグリム、ペンタグリム、ヘキサグリム及びそれらのそれぞれの対応モノアルキルエーテル)並びに官能化誘導体、例えば、末端官能化シランを有するポリエチレングリコールなどが挙げられる。この方法によって施されるコーティングは、既に存在するコーティング、例えば、バリアコーティング(例えば、SiO2などの酸化物)や、表面上に噴霧又は浸漬し焼付けたシリコーン処方(すなわち、シリンジに潤滑性を提供するために使用される)上に堆積させてもよい。
【0024】
この出願は、タンパク質に関して好ましく記載されているが、直接的な拡張により、液体(「溶液」)又は固体状態(「凍結乾燥」)などの他の高分子又は生体分子、例えば、核酸、ペプチド、抗体、ポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、pDNAなど、オリゴヌクレオチド)、タンパク質/核酸複合体(例えば、遺伝子療法のためのウイルス粒子)にも適用できる。本発明の方法に対してある特定のアプローチが好ましい。例えば、コーティングは、パルス化電磁放射線により、好ましくは、40〜100kHz、13.56MHz又は2.45GHzの低又は高周波数エネルギーで施してよい。コーティングを、プラズマ化学気相蒸着(CVD)によって薬剤用パッケージの表面上に堆積させてもよく、該コーティングは、1種又は2種以上の化学的前駆体と更なるキャリアガス(不活性ガスなど)との混合物から作製される。好ましいガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン又は窒素が挙げられる。前駆物質濃度は、全前駆物質流量/(全担体ガス流量+全前駆物質流量)比と定義されるが、一般的には、5%〜95%、好ましくは10%〜90%、最も好ましくは30%〜50%である。コーティングの堆積前に、加熱又はプラズマ処理プロセスによって基材を予備調整することが望ましい。基材温度が、反応チャンバー内に導入されるプロセスガスの温度にほぼ等しい場合、コーティングプロセス前、該プロセス中及びその後における、基材上でのプロセスガスの凝縮が回避できる。このように、基材とコーティング系の他の部分との温度差がないか又はこれを正に維持した状態で、コーティングを堆積させることが好ましい。典型的には、0.05W/cm3〜50W/cm3の平均電力密度(平均電力/プラズマ容量比で定義する)を用いることによりコーティングを堆積させる。好ましくは、電力密度は、0.08W/cm3〜10W/cm3、最も好ましくは0.1W/cm3〜5W/cm3である。コートされた基材表面は、(10μg/ml以下のフィブリノーゲン溶液で72時間のインキュベーション期間について)コートされた基材の500ng/cm2未満、好ましくは200ng/cm2未満、最も好ましくは150ng/cm2未満というフィブリノーゲン吸着によって、規定してよい。コーティング時間は、薬剤用パッケージングに応じて異なるであろう。一般的には、薬剤の表面への高分子の吸着を抑止する機能性コーティングは、10分間以下、好ましくは3分間以下、最も好ましくは1分以下で堆積される。また、コーティング厚さも異なるであろう。一般的には、薬剤用パッケージの表面への高分子の吸着を抑止する機能性コーティングは、0.3nm〜500nm、好ましくは0.5nm〜200nm、最も好ましくは1nm〜50nmのコーティング層厚を有する。
【0025】
更なる苦労なしで、当業者は上の記載内容を用いて本発明を最大限に利用することができるものと信ずる。従って、前述の好ましい具体的な実施形態は、単なる例示であって、本開示の残り部分をなんら制限しないと解釈しなければならない。本明細書で引用したすべての特許出願、特許及び論文の全開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0026】
1)タンパク質の結合を低減させるコーティングの一般的に認められている原理についての試験。
正に帯電したタンパク質の結合の抑止。
ヒストン及びリゾチームなどのタンパク質は、生理学的pH(およそ7.4)で正に帯電しており、そして正に帯電した表面は、タンパク質の正電荷が豊富な領域を拒絶し、吸着されるタンパク質の量の全体的な減少をもたらすはずであることが当然の前提とされる。蛍光標識したヒストン、ヒト血清アルブミン、及びリゾチームを、アミノシランでコートしておいた表面上でインキュベートする(C.G. Panto, E. Metwalli, S. Conzone, D. Hainesの米国特許第6,916,541 B2)。これらのタンパク質を、異なるpH値でインキュベートする。また、対照のウシ血清アルブミン(BSA)も含める。このタンパク質は酸性pI(5.2)を有し、大部分が、試験したpH値で負に帯電したものとなろう。
【0027】
図3に示す結果は、正に帯電した表面の効果を示し、ここに、正に帯電したタンパク質(すなわち、ヒストン及びリゾチーム)は、正味負電荷を有する非コートガラススライドと比べた場合、2〜4倍の吸着の減少を示している{アミノシランのpIは、およそpH9である(E. Metwalli, D. Haines, O. Becker, S. Conzone, C. Pantano J Colloid Interfac. Sci. 2006,298,825-831; U.Jonas, A. del Campo, C. Kruger, G. Glasser, D. Boos PNAS 2002,99,5034-5039}。また、BSAの挙動は、アミノコート表面に対する負に帯電したタンパク質のイオン性吸引により表面に対する吸着の増大がもたらされるという理論的考察と一致している。
【0028】
2)タンパク質の結合を低減させるコーティングの一般的に認められている原理について試験。
種々のコーティングによるタンパク質の吸着の抑止。
タンパク質及び処方のマトリックスを用いて、種々のコート表面を試験する。これらの試験は、1枚のコート表面を多数のタンパク質に、異なる条件で同時に曝露するものである、「マルチプレックス式タンパク質吸着アッセイ」と題された米国特許出願第60/617,192号に開示されているマルチプレックススライド(コートされた及び非コートのガラスならびにCOCポリマー材料)形式で行なう。インキュベーション後、表面に対するタンパク質の吸着を種々の条件及びタンパク質で、且つ種々の表面について、比較する。次いで、結果を、それら種々のコーティングでコートした最終薬剤用パッケージにおいて確認する。
【0029】
蛍光標識したフィブリノーゲン、インスリン、ヒストン、免疫グロブリンγ、及び炭酸脱水酵素を、3つの異なるpH値(5、7及び9)にて100mMリン酸塩中に処方化する。これらのタンパク質溶液を、コートされた及び非コートのホウケイ酸塩ガラススライド上の異なったウェル内で3日の期間インキュベートする。インキュベーション期間後、ウェルを洗浄し、レーザー蛍光分析装置を用いてスライドをスキャンし、吸着されたタンパク質の量を定量する。結果を、非コートのFiolax対照スライド(薬剤用パッケージを作製するのにSchottが用いているホウケイ酸塩1型ガラス)に吸着されたタンパク質の量と比較する。
【0030】
図4の結果は、コートされたスライド表面の性能を対照スライド表面と比較したときの、試験したすべてのタンパク質についてのタンパク質の吸着の平均低減を示す。更に示されているのは、コーティングが少なくとも50%タンパク質の吸着の低減をもたらした周波数である。各コーティングは、各場合につき3回の反復を伴って5回以上試験した。図5のデータを取得するために用いたコーティング及び表面を以下に示す。
【0031】
1.Fiolax:SCHOTT Forma Vitrum製の1型ガラス組成で作製されたガラススライド
2.TG:バッチ反応器プロセスにおいて無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着法によって施したテトラグリム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)コーティング。試料は、University of Washington Bioengineered Materials Consortiumより購入する。コーティングは、US5,002,794及びUS5,153,072に開示されたようにして施される。
3.H:アミノシランと1種類のNHS−エステルでキャップされたPEGポリマーとを主成分とする処方(スピンコーティングにより塗布)。コートされたスライドは、Accelr8 Corporationから購入したものであり、以前に開示されたG. Mao, S.W. Metzger, M.J. Lochheadの米国特許第6,844,028号の方法に従って同社が製造したものである。
4.SS:最初にポリ−L−リシンを表面上に堆積させ、次いで、このポリマー性の表面をPEG基で修飾することにより調製した処方(ディップコーティングにより塗布)。コーティングの結合は、静電気的相互作用によるものである。コートされたスライド及びバイアルは、Surface Solutions, GmbH(チューリッヒ,スイス)から購入したものであり、同社が製造したものである。
5.AMC:金属酸化物をフッ素化部分と組み合わせた多層コーティング。スライドコーティング(AMC148-18)は試供品として提供されており、Advanced Materials Components Express LLC (Lamont, PA)によって製造されたものである。
6.TBF:Tribofilm Research, Inc. (Raleigh,NC)から購入したものであり、以前に開示された方法(V.G. Sakhrani, J.L. Williams, C. Tomasino, P.M. Vernon Jr.−米国特許出願第2004/0231926号)に従って同社が製造したものであるパーフルオロポリエーテルコーティング。
【0032】
結果は、1つ又は2つ以上のタンパク質抑止特性(非イオン性、立体的遮蔽性、親水性、水素結合供与性でなく水素結合受容性)を有するコーティングは、タンパク質の吸着を種々の程度まで低減させることを実証している。すべてのタンパク質抑止特性を有するコーティングは、タンパク質の吸着の最大の低減を実証しており、試験したタンパク質の組のうちでテトラグリムが最大の低減をもたらした。
【0033】
3)薬剤用パッケージング内でのタンパク質の吸着。
図4に示すスライドに基づく結果を確証するため、薬剤用パッケージングの表面に吸着されたタンパク質の量を定量する方法を開発する。図5に示す方法は、吸着されたタンパク質の除去に基づいている。要するに、蛍光標識したタンパク質溶液を薬剤用パッケージ(PP)内で3日間インキュベートする。過剰分を除去し、PPを注射用水で3回洗浄する。次いで、PPを0.5%SDSを加えた50mM NaOHとともに1時間の期間インキュベートし、吸着されたタンパク質を表面から除去する。インキュベーション後、部分量を取り出し、マルチプレックススライドのウェル内で乾燥させる。次いで、ウェルをスキャンし、蛍光シグナルを用いて吸着されたタンパク質の量を計算する。これらの結果を外挿し、全体でどれだけ量のタンパク質が吸着されるかを測定できる。
【0034】
a)TG及びSSでコートされたバイアル。FiolaxバイアルをTG(バッチプロセスから)及びSSでコートし、これらのPPにおけるインスリンの吸着を、Fiolaxガラスバイアル(対照)と比較する。図6の結果は、Fiolaxに対して標準化してあり、スライドアッセイで見られた結果(図4)がPPアッセイで見られるものと相関することを実証している。テトラグリムコーティングは、PPにおけるインスリンの吸着を90%を超えて低減させ、一方、SSコーティングは吸着をおよそ80%低減させる。
【0035】
b)Hコートされたシリンジ。シリンジをHコーティング溶液でコートし、インスリンの吸着について試験する。この場合、コーティングはガラス及びポリマー(COCコポリマー)シリンジの両方に適用し、吸着を非コートポリマーシリンジと比較する。用いた方法は、上記及び図5に示したものと同じである。図7に示す結果は、非コート対照と比べた場合、コートされたシリンジにおいておよそ90%のタンパク質の吸着の低減があることを実証している。
【0036】
4)無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着テトラグリムコーティングの均一性におけるばらつき。
実施例2に記載の方法を用い、スピンコーティングによって作製したヒドロゲルコートスライド、及び無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着によってバッチプロセスにおいて作製したテトラグリムコートスライドを、タンパク質の吸着及びコーティング均一性について比較する。図8は、ヒドロゲル及びテトラグリムコーティングについての相対的なタンパク質の吸着を示し、テトラグリムコート基材は、4つのすべての試験においてタンパク質の吸着が少なく、これら2種のコーティング間で統計学的な差を有した。図9は、ヒドロゲルコーティングと比べ、テトラグリムコーティングの高分子吸収抑止均一性の高い変動性を示す。変動係数は、標準偏差をシグナル強度で除算することにより得られる。
【0037】
5)容器が反応チャンバーの機能を果たす場合におけるタンパク質抑止コーティングの堆積
2つのFiolaxバイアル(全容積10ml)を、ダブルチャンバー反応器内に入れ、0.1ミリバール未満のベース圧まで同時に真空にする。バイアルの排気後、アルゴンを反応器内に、質量流速50sccm、圧力0.2ミリバールで流入する。この全質量流を、各バイアル用にほぼ同一の2つの別々の質量流に分ける。マイクロ波周波数2.45GHz及び平均電力500ワットのパルスマイクロ波電源のエネルギーをこれら2つの別々のチャンバーに分け、カップルさせる。パルスマイクロ波プラズマを2つのバイアル内部で点火させ、容器を、プラズマによって前処理し、120℃の処理温度まで加熱する。ガス交換の時間中、テトラエチレングリコールジメチルエーテルガス(「テトラグリム」)とアルゴンキャリアガス(テトラグリム濃度35%)の混合物を、反応器内に0.2ミリバールの圧力で流入させ、2つのチャンバー内に分配する。周波数2.45GHz及び平均電力5.2ワットのパルスマイクロ波電源のエネルギーをこの分けて、これら2つの別々のチャンバー内にカップルさせる。パルスマイクロ波プラズマを2つのバイアル内部で300秒間点火させ、約50nmの厚さを有する有機コーティングを、バイアルの内側表面上のみに堆積させる。コーティング前駆ガスに加えてキャリアガスを用いると、コーティング前駆ガスのみを用いる堆積プロセスと比べ、凝縮が低減又は回避される。
【0038】
コートされたバイアル及び非コートFiolax参照バイアルのフィブリノーゲン吸着を、図5に示す方法に従って試験する。バイアルを、5μg/mlのフィブリノーゲン濃度を有し、pH7のリン酸塩緩衝溶液を含有する2mlのフィブリノーゲン溶液とともにインキュベートする。非コート参照試料と比べ、コートされたバイアルの吸着フィブリノーゲンの量は76%低減されている。
【0039】
6)無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着(バレル型反応器、バッチプロセス)と、マイクロ波周波数プラズマ支援化学気相蒸着(反応器としての物品、個別的プロセス)とで作製されたコーティングの比較
テトラグリムコートされたバイアルを、無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着によりバレル型反応器内において、バッチプロセスにより、及び、図1a〜1c及び2に示すようにバイアルを反応チャンバーとして用いてマイクロ波周波数プラズマ支援化学気相蒸着により、作製し、光電子分光分析によってコーティング均一性について比較する。特に、バッチ及び個々に作製したテトラグリムコートされたバイアルについてのC1s高分解能スペクトルを比較すると、物品を反応器として用いることにより、より高度なコーティング均一性の制御が可能であることが示される。図10は、管状形態において、2つの同一のバッチ運転のバッチプロセスに対しチャンバーとして物品を用いる3つの試料に由来する、C1sデコンボルーションピークに対する炭素/酸素寄与を示す。これらの結果は、物品を反応器とする方法により、より再現可能な様式でより多くの量の炭素/酸素寄与が得られることを明白に示す。デコンボルーションスペクトルの286.5ピークの高割合の寄与は、バッチ方法と比べ、物品を反応器とする方法によるテトラグリムモノマーの高割合の保持を示す。
【0040】
7)非コート対照ガラス、プラズマインパルス化学気相蒸着によって作製されたSiO2バリアコーティング、対照ガラス上に施されたシリコーン処理コーティング、及びSiO2バリアコーティング、並びにプラズマ支援化学気相蒸着によって作製されたテトラグリムコーティング間の、タンパク質の吸着の抑止の差
実施例2に記載し、図5に図示により図示した方法を用い、数種類の異なるコーティングを、バイアルにおいてヒストン−cy3及びインスリン−cy3の結合を低減する能力について評価する。図11に示す結果は、以下のことを実証している:1)対照非コートガラス試料は、ヒストン−cy3及びインスリン−cy3を強力に吸着する;2)SiO2バリアコーティング(「1+型」)は、ヒストン−cy3及びフィブリノーゲン−cy3を、非コート対照ガラスよりもさらにより強力に吸着する;3)Topasバイアルは、ヒストン−cy3及びインスリン−cy3を、非コート対照ガラスよりもやや上回る程度に吸着する;4)対照ガラスのシリコーン処理及びSiO2コーティングは、非シリコーン処理試料と比べ、ヒストン−cy3及びインスリン−cy3の吸着を低減しない;5)テトラグリムコートバイアルは、ヒストン−cy3及びインスリン−cy3の吸着を10倍低減する。
【0041】
8)コーティングによるタンパク質安定性
タンパク質に対するガラス表面の影響は、非常に有害であり得る。イオン性相互作用によるタンパク質の吸着は、タンパク質変性及び活性の低下をもたらし得る。また、一部のコーティングは、タンパク質より強力に結合することがあり(共有結合によるものさえある)、これは、タンパク質活性に対して直ちに影響を与え得る。コーティングの不活性さの重要性を示すため、アルデヒドシラン、エポキシシラン、及びHコートされた1型ガラススライド上に酵素を堆積させ、2時間固定化させる。この時間の後、酵素の活性を測定する。図12に観察できるように、アルデヒド又はエポキシコートされた表面上に固定化されたアルカリホスファターゼは、その活性をすべて失っているが、Hコートされた表面に固定化された酵素は、活性の殆どすべてを保持し、酵素が依然として活性であることを示している。
【0042】
9)タンパク質の吸着の抑止に必要なプラズマ堆積方法
環状オレフィンコポリマー顕微鏡スライドを、バレル型反応器系で無線周波数プラズマ支援化学気相蒸着バッチプロセスによりテトラグリムでコートし、フィブリノーゲン結合の抑止につき、非コート及びディップコーティング及び化学気相蒸着プロセスの両方によりテトラグリムでコートされた1型ホウケイ酸塩ガラス顕微鏡スライドと比較する。この実験の目的は、コーティング特性に対する堆積プロセスの重要性を判定することである。実施例2に開示した方法によって、5μg/mLフィブリノーゲン含有リン酸塩緩衝液(pH7)を用い、試料をフィブリノーゲン結合について評価する。結果を図13に示す。図13は、テトラグリムコーティングが、プラズマ支援プロセスによって堆積した場合は、フィブリノーゲンの吸着の低減に有効であるが、ディップコーティング又は化学気相蒸着法によって堆積した場合は有効でないことを、明白に実証している。
【0043】
上述の実施例は、上述の実施例に用いたものの代わりに、一般的又は具体的に記載した反応体及び/又は本発明の作業条件を代用することにより、同様に成功裏に反復できる。前述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の利用法及び条件に適合させるために、本発明の種々の変形及び修正を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1a】薬剤用物品(バイアル又はシリンジ)をコーティングチャンバーとして用いた、好ましいプラズマ支援化学気相蒸着システムの概要図。
【図1b】薬剤用物品(バイアル又はシリンジ)をコーティングチャンバーとして用いたダブルチャンバー反応器を使用する、好ましいプラズマ支援化学気相蒸着システムの一例の概要図である。高周波数エネルギー(好ましくは、2.45GHzのマイクロ波エネルギー)を、別々のアンテナによって2つの部分に分け、反応チャンバー内にカップルさせる。
【図1c】薬剤用物品(バイアル又はシリンジ)をコーティングチャンバーとして用いたダブルチャンバー反応器を使用する、好ましいプラズマ支援化学気相蒸着系の一例の概略図である。高周波数エネルギー(好ましくは、13.56MHzの無線周波数エネルギー)を、各チャンバーについて別々の外部電極及び内部電極を用いて2つの反応チャンバー内にカップルさせる。ガスランスを内部電極として用いる。
【図2】多数の個々の物品を同時にコーティングするための多数のステーションを有するプラズマ支援化学気相蒸着システムの概要図。
【図3】正及び負に帯電したタンパク質{ヒストン、リゾチーム(正)及びヒト血清アルブミン(HSA−負)}の結合に影響を及ぼすための、表面電荷を変化させることの効果。タンパク質を蛍光染料(シアニン−3)で標識し、次いで、非コート及びアミノシラン処理された1型処方になるガラススライド表面上でインキュベートする。シグナルは、表面に吸着されたタンパク質の量を直接に示すものである。
【図4】非コート及び種々のコートされた1型処方になるガラススライド上でのタンパク質の吸着の低減。表は、Fiolax対照に関する結果を示す。「Fiolaxに対する%減少」は、Fiolaxに対したときの、観察されたタンパク質の吸着の減少%を示す。「Fiolaxに対して50%を超える吸着減少に適合した%回数」で表示した欄は、タンパク質の吸着の低減がFiolaxに対して少なくとも50%低減された回の%を示す。これは、15個の試料(3種類の異なる処方で5種のタンパク質)のうちのパーセンテージである。
【図5】薬剤用パッケージング(PP)表面に対するタンパク質の吸着を解析するために使用される方法の記述。この方法は、50mM NaOH/0.5%SDSで洗浄することによる、表面に吸着されたタンパク質の除去に基づくものである。この溶液は、ガラススライド上に吸着されたタンパク質の90%より多くを除去する。
【図6】テトラグリム(TG)及びポリ−l−リシン/ポリエチレングリコール(SS)コートバイアルならびに及び非コートバイアル(Fiolax)に対するインスリンの吸着。バイアルを、タンパク質溶液とともにインキュベートし、吸着を、実施例1に記載の方法を用いて測定する。
【図7】ヒドロゲル(H)コートシリンジに対するインスリンの吸着。ガラス及びTopas(登録商標)ポリマーシリンジ(ノルボルネン及びエチレンで作製されたCOCコポリマー)をHコーティングでコートし、吸着されたタンパク質の量を、実施例1に記載の方法を用いて測定する。
【図8】H及びTGコート表面に対するpH5、7、9での蛍光標識したフィブリノーゲン、IgG、インスリン、ヒストン、及び炭酸脱水酵素の吸着の比較。
【図9】H及びTGコート表面に対するpH5、7、9での蛍光標識したフィブリノーゲン、IgG、インスリン、ヒストン、及び炭酸脱水酵素の変動係数の比較。
【図10】2つのバッチプロセス及び物品を反応器として用いた3つの個々のコーティングからのデコンボルーション光電子Clsスペクトル由来の%C/Oの表であり、物品を反応器として用いると、C/Oの一層高い寄与%及びばらつきの低減を示している。
【図11】種々の表面を有するバイアルに対するタンパク質(ヒストン及びインスリン)吸着を比較。1型+表面(バリアコーティングを有する1型ガラス)との比較からわかるように、TGは、タンパク質の吸着を90%低減させる。
【図12】種々のコートされた1型ガラススライドに対する吸着後のアルカリホスファターゼの活性を示す。
【図13】プラズマ支援プロセスによって堆積したテトラグリムでコートされたスライド対ディップコーティング又は化学気相蒸着法によって堆積したテトラグリムでコートされたスライド上のフィブリノーゲン吸着を比較している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤用パッケージ上に高分子抑止表面を作製する方法であって、
高分子の吸着を抑止するコーティングを薬剤用パッケージの表面にプラズマ化学気相蒸着(CVD)によって堆積させることを含み、
前記薬剤用パッケージがコーティングチャンバーとして働き、そして
前記コーティングが炭素−酸素結合を含んだ前駆体化合物から形成される
ものである方法。
【請求項2】
前記薬剤用パッケージが、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル又はインプラントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤用パッケージを薬剤学的若しくは生物工学による物質又は処方と接触させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤用パッケージが、非コート薬剤用パッケージと比べて表面エネルギーを5ダイン/cm以上低下させるためのコーティングを有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤用パッケージがバリアコーティングを有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤用パッケージがガラスで作られているものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラスが、1型、2型、3型、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、リン酸塩又はソーダ石灰ケイ酸塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ガラスが化学的に処理されているものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤用パッケージがポリマー材料で作られているものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、アクリル系、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィン樹脂、環状オレフィン−エチレンコポリマー、ゴム、エラストマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤用パッケージが金属又は合金で作られているものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが、前記表面に対する高分子の吸着を、非コート表面上の吸着と比べて25%以上低下させるものである、請求項1に記載の方法によって作製される薬剤用パッケージ。
【請求項13】
前記コーティングが電磁放射線源によって施されるものである、請求項1に記載の方法によって作製される薬剤用パッケージ。
【請求項14】
前記コーティングが1種又は2種以上の化学的前駆体から調製されるものである、請求項1に記載の方法によって作製される薬剤用パッケージ。
【請求項15】
前記前駆体の1種又は2種以上がエーテルである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項16】
前記前駆体の1種又は2種以上がエステルである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項17】
前記前駆体が、1種又は2種以上のハロゲン、アルキル、ビニル、アルキニル、芳香族、ヒドロキシル、酸、カルボニル、アルデヒド、ケトン、アミン、アミノ、アミド、ニトロ又はスルホニル誘導体化官能基を含むものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項18】
前記前駆体が、1種又は2種以上のハロゲン、アルキル、ビニル、アルキニル、芳香族、ヒドロキシル、酸、カルボニル、アルデヒド、ケトン、アミン、アミノ、アミド、ニトロ、スルホニル誘導体化官能基を含むものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項19】
前記前駆体がポリエーテルである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項20】
前記ポリエーテルが、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ペンタグリム、ヘキサグリム、又はその官能化誘導体である、請求項19に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項21】
前記前駆体がテトラエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項22】
多数の前駆体が同時に又は逐次的に堆積されているものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項23】
前記前駆体が第1の無機酸化物層コーティング上に適用されているものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項24】
前記無機酸化物がSiO2、TiO2、ZrO2又はA123である、請求項2に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項25】
前記前駆物質が第1の接着層上に適用されているものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項26】
前記前駆物質が第1のバリア層上に適用されているものである、請求項14に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項27】
前記高分子が、溶液又は固体状態の、天然に存在するか若しくは合成により調製された生体分子又はその誘導体である、請求項1に記載の薬剤用パッケージ。
【請求項28】
1種又は2種以上の高分子が、溶液又は固体状態の、核酸、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、炭水化物、タンパク質/核酸複合体、抗体、ワクチンである、請求項27に記載の薬剤用パッケージ又はその構成要素。
【請求項29】
前記コーティングの2種又は3種以上が逐次的に適用されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記プラズマCVDコーティングを既存のコーティング上に堆積させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
薬剤用パッケージ上にタンパク質抑止表面を作製する方法であって、
ポリエーテルコーティングを薬剤用パッケージの表面上にプラズマ化学気相蒸着によって堆積させることを含み、前記薬剤用パッケージがコーティングチャンバーとして働くものである、方法。
【請求項32】
前記コーティングが、40〜100kHz、13.56MHz又は2.45GHzの低又は高周波数エネルギーのパルス化電磁放射線により施されるものである、請求項1に記載の方法によって作製される薬剤用パッケージ。
【請求項33】
薬剤用パッケージ上に高分子抑止表面を作製する方法であって、
高分子の吸着を抑止するコーティングを薬剤用パッケージの表面にプラズマ化学気相蒸着(CVD)によって堆積させることを含み、前記コーティングが1種又は2種以上の化学的前駆体と更なるキャリアガスとの混合物から作製されるものである、方法。
【請求項34】
前記更なるキャリアガスが不活性ガスである、請求項33に記載の方法によって作製される薬剤用パッケージ。
【請求項35】
前駆体濃度が10%〜90%である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記コーティングの堆積前に、基材が加熱又はプラズマ処理プロセスによって前調整されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記基材の温度が、コーティングプロセス中及びその後に反応チャンバー内に導入されるプロセスガスの温度にほぼ等しいものである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記基材とコーティング系の他の部分との温度差がないか、正に維持した状態でコーティングを堆積させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
0.08W/cm3〜10W/cm3の電力密度を用いることによりコーティングを堆積させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
72時間のインキュベーション後のフィブリノーゲン吸着が200ng/cm2未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
薬剤用パッケージ上への高分子の吸着を抑止する機能性コーティングが、3分以内に堆積されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
薬剤の表面上への高分子の吸着を抑止する機能性コーティングが、0.5nm〜200nmの層厚を有するものである、請求項1に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−185515(P2007−185515A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−3229(P2007−3229)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】