説明

薬剤管理装置および薬剤管理方法

【課題】手術中に薬剤の紛失・混入が発生することは、激物にもなりえる薬剤の薬剤管理においては大きな問題である。また、病院経営を行う上でのキャッシュフローからも、薬剤の紛失は問題となっている。
【解決手段】薬剤管理装置14は、保持する薬剤の種別ごとの個数を検出する収納部20と、保持する薬剤の種別ごとの個数を検出する回収部21と、施術開始時の薬剤の種別ごとの個数を含む収納部初期情報、および、回収部初期情報を記録する初期情報記録部50と、収納部20で検出された薬剤の種別、個数を含む収納部管理情報と収納部初期情報の差分より収納部使用薬剤を算出し、回収部20で検出された薬剤の種別ごとの個数を含む回収部管理情報と収納部初期情報の差分より回収部使用薬剤を算出する算出部51と、算出部51より算出された収納部使用薬剤と回収部使用薬剤とが同一の薬剤種別、個数であるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を管理する薬剤管理装置および薬剤管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院では、様々な病気やけがを持つ患者に対し医師が診断を行い、治療のために調剤情報を作成している。そして、調剤情報を元に調剤局や調剤室等で、薬剤を取り揃えて患者へ提供をしている。
【0003】
また、手術室で利用する手術用の薬剤は、手術前の医師の診断(手術計画)に基づいて薬剤管理カートに準備される。しかし、手術計画で必要最低限とする薬剤のみの準備であると、手術中に医師の診断が変わった場合、薬剤が不足したり、慌ただしい手術の最中に薬剤が破損したりする場合があるので、手術用の薬剤は多めに取り揃えておく必要がある。
【0004】
よって、頻繁に行われる手術については、その手術用の薬剤を集めた薬剤管理カートを手術室に常駐させ、手術ごとに取り揃えるのではなく、特定の手術用の薬剤管理カートを準備して一定の薬剤を保持するようにしている。そして、手術前に薬剤が不足していれば補充する。このような薬剤管理カートの中には、取り出された薬剤を自動計数して薬剤管理を行うものとして、図27(a)、(b)に示す薬剤管理装置1がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図27(a)、(b)において、カセット保持部2には、薬剤3を整列収納するカセット4が多数設けられ、各カセット4には、薬剤3の出し入れ可能な出入口5が形成されると共にその出入口5に向けて薬剤3を付勢する付勢手段6が付設され、カセット保持部2のカセット載置棚7には、カセット4における薬剤3の収納数を計数する計数手段8a、8b、9が設けられる。これにより、カセット4への薬剤3の出し入れが同じ出入口から行われ、各カセット4内の薬剤が自動計数される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−199508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の薬剤管理装置の課題は、手術中の薬剤の紛失、混入を検出することができないことである。
【0008】
つまり、従来の薬剤管理装置では、薬剤管理装置1から取り出された薬剤3が手術で使用された薬剤と同一であるとは限らない。また、薬剤3を取り出した後に、施術者の不注意で手術室の棚に置かれて紛失してしまう場合もある。また、薬剤管理装置1以外から薬剤を持ち込んで使用する可能性もある。
【0009】
手術中に薬剤の紛失・混入が発生することは、激物にもなりえる薬剤の薬剤管理においては大きな問題となる可能性もある。また、高価な薬剤も多く、病院経営を行う上でのキャッシュフローの観点からも、薬剤の紛失は問題となる可能性がある。
【0010】
本発明は、これらの課題を解決し、薬剤の紛失・混入を検出する薬剤管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、この目的を達成するために本発明の薬剤管理装置は、収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、前記制御部は、施術開始時における前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部初期情報、施術開始時における前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部初期情報を記録する初期情報記録部と、前記収納部で検出された薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部管理情報と前記収納部初期情報との差分より収納部使用薬剤情報を算出し、前記回収部で検出された薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部管理情報と前記回収部初期情報との差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部と、前記算出部より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが一致した薬剤種別ごとの個数であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0012】
また、この目的を達成するための本発明の別の薬剤管理装置は、収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、前記制御部は、施術開始時における前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報と、施術開始時における前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報とを記録する初期情報記録部と、前記収納部で検出された薬剤のID番号を含む収納部管理情報と前記収納部初期情報との差分より収納部使用薬剤情報を算出し、前記回収部で検出された薬剤のID番号を含む回収部管理情報と前記回収部初期情報との差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部と、前記算出部より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報にあるID番号が一致するか否かを判定するID番号判定部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、この目的を達成するための本発明の別の形態の薬剤管理装置は、収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、前記制御部は、前記収納部で保持する薬剤のID番号および前記ID番号を検出した時刻を含む収納部管理情報と、前記回収部で薬剤のID番号および前記ID番号を検出した時刻を含む回収部管理情報とを記録する施術情報記録部と、前記施術情報記録部の収納部管理情報より収納部移動薬剤を算出し、且つ、前記施術情報記録部の回収部管理情報より回収部移動薬剤を算出する算出部と、前記算出部で算出された収納部移動薬剤と回収部移動薬剤とを比較して、施術薬剤が存在するか否かを判定する施術薬剤判定部と、前記施術薬剤判定部で施術薬剤の存在が判定された場合、前記施術薬剤の施術時間が許容時間以上であるか否かを判定する施術時間判定部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、この目的を達成するための本発明の薬剤管理方法は、薬剤管理装置の収納部および回収部で保持する薬剤を施術中に管理する薬剤管理方法であって、施術開始時において、前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部初期情報と、前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部初期情報との検出を行う初期情報検出工程と、施術終了後において、前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部管理情報と、前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部管理情報との検出を行う終了情報検出工程と、前記収納部初期情報と前記収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報と、前記回収部管理情報と前記回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出し、前記収納部使用薬剤情報と前記回収部使用薬剤情報とが同一の薬剤種別および個数であるか否かを判定する判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、この目的を達成するための本発明の薬剤管理方法は、薬剤管理装置の収納部および回収部で保持する薬剤を施術中に管理する薬剤管理方法であって、施術開始時において、前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報および前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報の検出を行う初期情報検出工程と、施術終了後において、前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部管理情報および前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部管理情報の検出を行う終了情報検出工程と、前記収納部初期情報と前記収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報と、前記回収部管理情報と前記回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出し、前記収納部使用薬剤情報と前記回収部使用薬剤情報とが同一の薬剤種別および個数であるか否かを判定する判定工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、薬剤の紛失・混入を検出することが可能な薬剤管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における手術室の正面図
【図2】本実施の形態1における薬剤管理装置の斜視図
【図3】本実施の形態1における収納部を引き出した薬剤管理装置の斜視図
【図4】本実施の形態1における収納部の斜視図
【図5】本実施の形態1における薬剤の分解図
【図6】本実施の形態1における薬剤のRFIDタグの下面図
【図7】本実施の形態1における薬剤管理装置の機能ブロック図
【図8】本実施の形態1における手術前の収納部の上面図
【図9】本実施の形態1における薬剤管理装置の動作を説明する第1のフローチャート
【図10】本実施の形態1における薬剤管理装置の動作を説明する第2のフローチャート
【図11】本実施の形態1における収納部使用薬剤情報および回収部使用薬剤情報の比較表を示す図
【図12】本実施の形態1における表示部の正常判定画面を示す図
【図13】本実施の形態1における表示部の混入判定画面を示す図
【図14】本実施の形態1における表示部の紛失判定画面を示す図
【図15】本発明の実施の形態2における薬剤管理装置の機能ブロック図
【図16】本実施の形態2における薬剤管理装置の動作を説明する第1のフローチャート
【図17】本実施の形態2における薬剤管理装置の動作を説明する第2のフローチャート
【図18】本実施の形態2における収納部使用薬剤情報および回収部使用薬剤情報の比較表を示す図
【図19】本実施の形態2における移動検出部の動作を説明するフローチャート
【図20】本実施の形態2における表示部の判定画面を示す図
【図21】本発明の実施の形態3における薬剤管理装置の機能ブロック図
【図22】本実施の形態3における薬剤管理装置のフローチャート
【図23】本実施の形態3における表示部の警報画面を示す図
【図24】本発明の実施の形態4における薬剤管理装置の機能ブロック図
【図25】本実施の形態4における表示部の警報画面を示す図
【図26】本発明の実施の形態5における表示部の警報画面を示す図
【図27】従来の薬剤管理装置を示す図であって、(a)正面図、(b)カセット周りの右側側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付けて、適宜、説明を省略している。
【0019】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における手術室10の正面図である。手術室10には、患者を寝かせる手術用のベッド11と、ベッド11の上方にあってベッド11上の患者の術部を照らす手術用のライト12と、手術で利用する患者の生態情報を測定する測定器具13と、手術用の薬剤を保管する薬剤管理装置14がある。このような手術室10にて、施術者(医師、看護師)が、手術道具(図示せず)、測定器具13、薬剤管理装置14を利用しながら手術を進める。
【0020】
図2は薬剤管理装置14の斜視図である。薬剤管理装置14は、薬剤を個別に保持する穴部16を複数備え上方が開口した収納部20と、使用済みの薬剤を投入する回収部21とを備える。回収部21は、3つの凹部17を備え、一番大きな凹部17へ薬液が残っていないアンプル(使用済みの薬剤)を入れ、小さな凹部17へ薬液が少し残っている使用済みの薬剤を入れる。
【0021】
さらに、タッチパネルによる入力機能を有する表示部22と、施術者の名札に取り付けられたICタグの個人識別情報を無線で読み取るICタグリーダ23と、薬剤管理装置14の周辺を撮影して、収納部20や回収部21の薬剤の取出し又は投入を記録するカメラ24と、小型パソコン等のデータ処理装置を保管する制御機器ケース部25とを備える。この薬剤管理装置14における種々の制御は、図示しない制御部で行われる。
【0022】
さらに、薬剤管理装置14の上部に、手術が始まったことを入力するための第1ボタン27と、手術が終了したことを入力するための第2ボタン28とを備える。
【0023】
また、この薬剤管理装置14は、薬剤管理装置14に保持する薬剤を取り出し易くするために、図3に示すように、薬剤管理装置14の正面(開口側)に向かって収納部20、回収部21を個別に引き出すことが可能である。
【0024】
次に、図4の収納部20の分解図を用いて、この収納部20の構造を詳細に説明する。
【0025】
収納部20は薬剤30を整然と並べるために一定の間隔で穴部16が形成された薬剤受け31と、薬剤受け31の下部にある収納部アンテナ32と、薬剤受け31と収納部アンテナ32を固定するアンテナ固定ガイド33と、アンテナ固定ガイド33の下方に蓋をする収納部底板34と、この収納部底板34の下面に取り付けられて収納部アンテナ32の下方への電波を遮断する遮蔽板35と、収納部アンテナ32と繋がったRFIDタグの検出部(図示せず)とを備える。
【0026】
また、収納部20は、薬剤管理装置14の一部である引出レール36をスライドして移動する。
【0027】
なお、図3の回収部21は、収納部20の下方に位置しているが、薬剤受け31に穴部16ではなく凹部17を設けている点が違うだけで収納部20とほぼ同じ構成である。
【0028】
ちなみに、本実施の形態1で用いる複数種類の薬剤の一つである薬剤30は、図5に示すように薬液をアンプル38に入れたものであり、アンプル38の下部にRFIDタグ39を備える。このRFIDタグ39は、13.56MHzのHF帯のRFIDタグ39が使用される。図6のRFIDタグ39の下面図に示すように、RFIDタグ39は、IC39aとコイル39bとによって構成される。
【0029】
図7は、薬剤管理装置14の機能ブロック図である。図7を用いて、薬剤管理装置14の詳細を説明する。
【0030】
薬剤管理装置14は、保持する薬剤の種別ごとの個数を検出可能な収納部20と、保持する薬剤の種別ごとの個数を検出可能な回収部21と、収納部初期情報、および、回収部初期情報を記録する初期情報記録部50とを備える。なお、収納部初期情報とは、施術開始時の収納部20で保持する薬剤の種別ごとの個数を含む情報である。また、回収部初期情報とは、施術開始時の回収部21で保持する薬剤の種別ごとの個数を含む情報である。さらに、薬剤管理装置14は、収納部20で検出された薬剤の種別ごとの個数を含む収納部管理情報と収納部初期情報の差分より収納部使用薬剤情報を算出し、回収部21で検出された薬剤の種別ごとの個数を含む回収部管理情報と回収部初期情報の差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部51を備える。また、この算出部51より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが一致するか否かを判定する種別・個数判定部52とを備える。
【0031】
手術中、施術者は、収納部20に準備した薬剤30を取り出して、薬剤30内の薬液を使った後に使用済みの薬剤30(アンプル)を回収部21へ投入する。つまり、収納部20から減った薬剤は回収部21へ投入された薬剤であり、回収部21で増えた薬剤は収納部20から取り出された薬剤である。
【0032】
よって、薬剤の紛失、混入がなければ収納部20から減った薬剤と回収部21で増えた薬剤は一致する。しかし、収納部20で減った薬剤が回収部21で増えた薬剤よりも多ければ、その薬剤が紛失したことを意味する。また、収納部20で減った薬剤が回収部21で増えた薬剤よりも少なければ、その薬剤が混入したことを意味する。
【0033】
このような薬剤管理装置14を用いることにより手術中の薬剤の紛失、混入を正確に検出することが可能となる。
【0034】
そして、施術者は薬剤管理装置14を用いて、下記の方法により、手術で取り扱う薬剤を管理する。
【0035】
施術開始時、収納部20で保持する薬剤の種別ごとの個数を含む収納部初期情報および回収部21で保持する薬剤の種別ごとの個数を含む回収部初期情報の検出を行う。
【0036】
施術終了時、収納部管理情報および回収部管理情報を検出した後、収納部初期情報と収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報、および、回収部管理情報と回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出し、収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが同一の薬剤種別ごとに一致するか否かを判定することで、薬剤30の紛失、混入を検出することができる。
【0037】
この薬剤管理装置14を用いた薬剤管理を詳細に説明すると、まず、収納部20に図8に示すように手術に必要な薬剤を準備する。
【0038】
例えば、図8では、収納部20は薬剤a61を12個、薬剤b62を9個、薬剤c63を6個、薬剤d64を12個、薬剤e65を9個、薬剤f66を6個保持されている。
【0039】
そして、薬剤管理装置14を作動させる。薬剤管理装置14の動作を図9、図10のフローチャートに記す。
【0040】
まず、ICタグリーダ23で、手術に参加するすべての施術者の名札に取り付けられたICタグの個人識別情報を読取らせて、施術者記録部54へ記録する(ステップS01)。
【0041】
手術を開始する時に、施術者は第1ボタン27を押す。薬剤管理装置14は、第1ボタン27が押されたか否かを検出する(ステップS02)。そして、第1ボタン27が押され(ONになる)ると、収納部20および、回収部21で保持する薬剤の種別ごとの個数を検出する。
【0042】
この時、施術開始時の収納部初期情報、回収部初期情報を取得する(ステップS03)。そして、収納部20で保持する薬剤の種別コードとその薬剤種別の個数とを、収納部初期情報として図7に示す初期情報記録部50へ記録する。さらに、回収部21で保持する薬剤の種別コードとその薬剤種別の個数とを、回収部初期情報とし初期情報記録部50に記録する。
【0043】
また、第1ボタン27が押された時、カメラ24も作動し始め、カメラ24で撮影された画像は撮影時刻と共に画像記録部55へ記録される。カメラ24の撮影は、収納部20と回収部21で保持する薬剤30の増減を検出する増減検出部56により、収納部20と回収部21の少なくとも一方で薬剤の増減が発生したことを検出した時に行われる。
【0044】
なお、薬剤の増減が発生するとは、収納部20、回収部21へ薬剤が投入されたこと、収納部20、回収部21から薬剤30が取出されたことを意味する。このように、薬剤の増減を検出することにより、薬剤の紛失、混入の画像を記録することができ、後で紛失、混入の時の状況を確認することが可能となる。
【0045】
手術中、収納部20から薬剤が取り出され、薬剤は使用される。手術で使用された空のアンプル38や、一部薬液の残ったアンプル38は使用済み薬剤として回収部21へ投入される。このようにして、使用済みの薬剤は収納部20から回収部21へ移動する。
【0046】
手術が終了すると施術者は第2ボタン28を押す。手術中、薬剤管理装置14は第2ボタン28が押されるか否かを検出する(ステップS04)。そして、第2ボタン28が押される(ONになる)と、収納部20および回収部21で保持する薬剤の種別ごとの個数を検出する。
【0047】
つまり、手術終了時の収納部管理情報、回収部管理情報を取得する(ステップS05)。この時、終了情報記録部53へ収納部20で保持する薬剤の種別コードと、その薬剤種別の個数を回収部管理情報として記録する。さらに、収納部20で保持する薬剤の種別コードと、その薬剤種別の個数を収納部管理情報として記録する。
【0048】
その後、算出部51は、終了情報記録部53の収納部管理情報と初期情報記録部50の収納部初期情報の差分より収納部使用薬剤情報となす種別ごとの個数Auを算出する。さらに、算出部51は、終了情報記録部53の回収部管理情報と初期情報記録部50の回収部初期情報の差分より回収部使用薬剤情報となす種別ごとの個数Buを算出する(ステップS06)。
【0049】
具体的には、収納部使用薬剤情報は、収納部初期情報の薬剤種別ごとの個数から収納部管理情報の薬剤種別ごとの個数を引いて算出される。また、回収部使用薬剤情報は、回収部初期情報の薬剤種別ごとの個数から回収部管理情報の薬剤種別ごとの個数を引いて算出される。
【0050】
そして、薬剤管理装置14の種別・個数判定部52は、算出部51より算出された収納部使用薬剤情報の個数Au、回収部使用薬剤情報の個数Buを用いて、手術中の薬剤の紛失、混入を判定する(ステップS07)。
【0051】
種別・個数判定部52は、収納部使用薬剤情報の種別ごとの個数Au、回収部使用薬剤情報の種別ごとの個数Buを比較して行われる。例えば、回収部使用薬剤情報および収納部使用薬剤情報が図11に示す比較表67のパターンAであれば、収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが同一(Au=Bu)であり、収納部20から取り出された薬剤はすべて回収部21へ投入されており、紛失、混入がないとして正常判定情報を作成する(ステップS08)。
【0052】
また、回収部使用薬剤情報および収納部使用薬剤情報が図11に示すパターンBであれば、収納部使用薬剤情報の薬剤個数より回収部使用薬剤情報の薬剤個数が多い(Au<Bu)であり、混入が発生しているので、混入判定情報を作成する(ステップS09)。
【0053】
また、回収部使用薬剤情報および収納部使用薬剤情報がパターンCであれば、回収部使用薬剤情報の薬剤個数より収納部使用薬剤情報の薬剤個数の方が多い(Au>Bu)であり、紛失が発生しているので、紛失判定情報を作成する(ステップS10)。
【0054】
そして、ステップS08、S09、S10で判定情報が作成された後、表示部22に判定情報を表示して判定情報の表示を行う(ステップS11)。
【0055】
判定結果が正常判定であった場合は、図12に示す正常判定画面68を表示する。混入判定であった場合は、図13に示す混入判定画面69を表示する。紛失判定であった場合は、図14に示す紛失判定画面70を表示する。
【0056】
このようにして、手術後に第2ボタン28を押すと薬剤の紛失、混入が発生したことを施術者へ伝えることができる。
【0057】
なお、種別・個数判定部52で紛失、混入が発生していないと判定した場合、収納部使用薬剤情報または回収部使用薬剤情報を用いて、手術で使用した使用薬剤として請求書を作成してもよい。また、種別・個数判定部52で混入が発生したと判定しても、収納部使用薬剤情報を手術で使用した使用薬剤として請求書を作成してもよい。さらに、種別・個数判定部52で紛失が発生したと判定しても、回収部使用薬剤情報を手術で使用した使用薬剤として請求書を作成してもよい。
【0058】
また、薬剤管理装置14に計量薬剤保持部(図示せず)を設け、使用された計量薬剤の使用分量も請求書に追加するようにしてもよい。計量薬剤とは、1回で使い切ることがなく、複数回に分けて使用する薬剤である。計量薬剤は薬剤の使用個数ではなく使用分量により請求書を作成する。
【0059】
計量薬剤保持部は、手術前と手術後の計量薬剤の重量を測定して、手術前と手術後の重量の差分を算出する。この差分より計量薬剤の使用分量を算出して、計量薬剤の使用分量も請求書に追加してもよい。
【0060】
なお、収納部20および回収部21はRFIDタグの検出部を有し、収納部20および回収部21は、薬剤のRFIDタグに記録された薬剤種別コードより、保持する薬剤の種別、個数を検出している。しかし、収納部20および回収部21で保持する薬剤種別、個数の検出は、RFIDタグを用いなくとも、バーコードを読み込ませる手間はかかるがバーコードで検出してもよいし、収納部20、回収部21の撮影画像を分析して検出してもよい。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態2の薬剤管理装置81は、収納部82、回収部83で各薬剤に付与されたユニークIDであるID番号を検出する。そして、そのID番号を利用して収納部82、回収部83で保持する薬剤を管理することで薬剤の紛失、混入を検出する。ユニークIDを用いることにより、薬剤一つ一つの紛失、混入を検出が可能となり、紛失、混入した薬剤の特定が可能となる。
【0062】
図15は、本実施の形態2の薬剤管理装置の機能ブロック図である。薬剤管理装置81は、保持する薬剤のユニークIDであるID番号を検出する収納部82と、保持する薬剤のID番号を検出する回収部83と、施術開始時の収納部82で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報、および、施術開始時の回収部83で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報を記録する初期情報記録部50と、を備える。
【0063】
さらに、収納部82で検出された薬剤のID番号を含む収納部管理情報と収納部初期情報の差分より収納部使用薬剤情報を算出し、回収部83で検出された薬剤のID番号を含む回収部管理情報と回収部初期情報の差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部84と、この算出部84より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報にある複数のID番号が一致するか否かを判定するID番号判定部85と、を備える。
【0064】
手術中、施術者は、収納部82に準備した薬剤30を取り出して、薬剤30内の薬液を使った後に使用済みの薬剤30(アンプル)を回収部83へ投入する。つまり、収納部82から取り出された薬剤30は回収部83へ投入された薬剤30であり、収納部使用薬剤情報のID番号と回収部使用薬剤情報のID番号とが一致するはずである。
【0065】
ここで、収納部使用薬剤情報に含まれていないID番号が、回収部使用薬剤情報に存在する場合は、薬剤を混入したことを意味する。また、回収部使用薬剤情報に含まれていないID番号が、収納部使用薬剤情報に存在する場合は、薬剤を紛失したことを意味する。
【0066】
このような薬剤管理装置81を用いることにより、手術中の薬剤の紛失、混入を正確に検出することが可能となる。
【0067】
そして、施術者は薬剤管理装置81を用いて、下記の方法により、手術で取り扱う薬剤を管理する。
【0068】
施術開始時、収納部82で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報および回収部83で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報の検出を行い、施術開始後、収納部82で保持する薬剤のID番号を含む収納部管理情報および回収部83で保持する薬剤のID番号を含む回収部管理情報の検出を行う。
【0069】
施術終了時、収納部管理情報および回収部管理情報を検出した後、収納部初期情報と収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報、および、回収部管理情報と回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出する。収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報にある複数のID番号が一致しているか否かを判定することで、薬剤30の紛失、混入を、更に精度良く検出することができる。
【0070】
この薬剤管理装置81を用いた薬剤管理を詳細に説明すると、まず、収納部82に手術に必要な薬剤を準備する。
【0071】
そして、薬剤管理装置81を作動させる。薬剤管理装置81の動作を図16、図17のフローチャートに記す。
【0072】
まず、ICタグリーダ23で、手術に参加するすべての施術者の名札に取り付けられたICタグの個人識別情報を読取らせて、施術者記録部54へ記録する(ステップS21)。
【0073】
手術を開始する時に、施術者は第1ボタン27を押す。薬剤管理装置81は、第1ボタン27が押されたか否かを検出する(ステップS22)。そして、第1ボタンが押される(ONになる)と、収納部82および、回収部83で保持する薬剤のID番号を検出する。
【0074】
この時、施術開始時の収納部初期情報、回収部初期情報を取得する(ステップS23)。そして、収納部82で保持する薬剤のID番号を、収納部初期情報として初期情報記録部50へ記録する。さらに、回収部83で保持する薬剤のID番号を、回収部初期情報として初期情報記録部50へ記録する。
【0075】
手術中、収納部82から薬剤が取り出され、薬剤は使用される。手術で使用された空の薬剤(アンプル)や、一部薬液の残った薬剤(アンプル)は使用済み薬剤として回収部83へ投入される。このようにして、使用済みの薬剤は収納部82から回収部83へ移動する。
【0076】
手術が終了すると施術者は第2ボタン28を押す。手術中、薬剤管理装置81は第2ボタン28が押されるか否かを検出する(ステップS24)。そして、第2ボタン28が押される(ONになる)と、収納部82および回収部83で保持する薬剤のID番号を検出する。
【0077】
つまり、手術終了時の収納部管理情報、回収部管理情報を取得する(ステップS25)。この時、終了情報記録部53へ収納部82で保持する薬剤のID番号を回収部管理情報として記録する。さらに、収納部82で保持する薬剤のID番号を収納部管理情報として終了情報記録部53へ記録する。
【0078】
その後、算出部84は、終了情報記録部53の収納部管理情報と初期情報記録部50の収納部初期情報の差分より収納部使用薬剤情報のID番号群Fuを算出する。さらに、算出部84は、終了情報記録部53の回収部管理情報と初期情報記録部50の回収部初期情報の差分より回収部使用薬剤情報のID番号群Guを算出する(ステップS26)。
【0079】
具体的には、収納部使用薬剤情報は、収納部初期情報のID番号群から収納部管理情報のID番号群を引いて算出される。また、回収部使用薬剤情報は、回収部管理情報のID番号群から回収部初期情報のID番号群を引いて算出される。
【0080】
そして、薬剤管理装置81のID番号判定部85は、算出部84より算出された収納部使用薬剤情報のID番号群Fu、回収部使用薬剤情報のID番号群Guを用いて、手術中の薬剤の紛失、混入を判定する(ステップS27)。
【0081】
ID番号判定部85において、収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報の判定は、収納部使用薬剤情報となすID番号群Fu、回収部使用薬剤となすID番号群Guを比較して行われる。例えば、回収部使用薬剤情報および収納部使用薬剤情報が図18に示す比較表86パターンD、すなわち、収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが同一(Gu=Fu)であれば、収納部82からとり出された薬剤はすべて回収部83へ投入されており、紛失、混入がないとして、正常判定情報を作成する(ステップS28)。
【0082】
また、回収部使用薬剤情報および収納部使用薬剤情報が図18に示すパターンF、すなわち、収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報が一致しない(Gu≠Fu)のであれば、混入または紛失が発生しているので混入、紛失判定情報を作成する(ステップS29)。
【0083】
そして、ステップS28、S29で判定情報が作成された後、表示部22に判定情報を表示して判定情報の表示を行う(ステップS30)。
【0084】
このように、薬剤管理装置81を用いることで、薬剤一つ一つの紛失、混入を検出が可能となり、紛失、混入した薬剤の特定が可能となる。
【0085】
なお、収納部82および回収部83はRFIDタグの検出部を有し、収納部82および回収部83は、薬剤のRFIDタグに記録されたユニークな薬剤のID番号を検出している。なお、バーコードを読取る手間はかかるが、収納部82および回収部83で保持する薬剤のID番号の検出はRFIDタグを用いる代わりに、バーコードで検出してもよい。
【0086】
なお、第1ボタン27が押された時、カメラ24も作動し始め、カメラ24で撮影された画像は撮影時刻と共に画像記録部55へ記録される。カメラ24の撮影は、収納部82と回収部83で保持する薬剤30の移動を検出する移動薬剤検出部87により、収納部82と回収部83の少なくとも一方で薬剤の取り出し、または、投入が発生したことを検出した時に行われる。
【0087】
このように、薬剤の取り出し、投入(移動)を検出することにより、薬剤の紛失、混入の画像を記録することができ、後で紛失、混入の時の状況を確認することが可能となる。
【0088】
図19は、移動薬剤検出部87の動作を示すフローチャートである。移動薬剤検出部87は、第1ボタン27が押されてから、第2ボタン28が押されるまで、つまり、手術開始から手術終了までの間、図19のフローチャートに示す動作を繰り返す。1回の動作に約0.1秒を必要とする。
【0089】
移動薬剤検出部87は、収納部82で保持する薬剤が移動するのを検出する(ステップS41)。移動薬剤検出部87は、収納部82を作動させて保持する薬剤のID番号を検出し、さらに、検出した薬剤のID番号群を記録する。そして、前回(0.1秒前)検出したID番号群と今回検出したID番号群とを比較して、同一であれば移動薬剤はないと判定し、不一致のID番号があると移動薬剤が存在したと判定する。
【0090】
ここで移動薬剤が検出されると、カメラ24へ写真撮影の指示を出す(ステップS42)。そして、カメラ24は、薬剤管理装置81の周辺を撮影し、画像記録部55に記録する。さらに、移動薬剤検出部87は、画像記録部55へ撮影した画像と関連づけて、移動を検出した薬剤のID番号と、移動を検出した時の時刻を記録する(ステップS43)。なお、ステップS42で移動薬剤が検出されなければ、ステップS44に進む。
【0091】
次に、移動薬剤検出部87は、回収部83で保持する薬剤が移動するのを検出する(ステップS44)。移動薬剤検出部87は、回収部83を作動させて保持する薬剤のID番号を検出し、さらに、検出した薬剤のID番号群を記録する。そして、前回(0.1秒前)検出したID番号群と今回検出したID番号群とを比較して、同一であれば移動薬剤は存在しないと判定し、不一致のID番号があると移動薬剤が存在したと判定する。
【0092】
ここで、移動薬剤が検出されると、カメラ24へ写真撮影の指示を出す(ステップS45)。そして、カメラ24は、薬剤管理装置81の周辺を撮影し、画像記録部55に記録する。さらに、移動薬剤検出部87は、画像記録部55へ撮影した画像と関連づけて、移動を検出した薬剤のID番号と、移動を検出した時の時刻を記録する。なお、ステップS45で移動薬剤が検出されなければ終了する。
【0093】
このように、移動薬剤検出部87は、図19に示すフローチャートの動作を繰り返し、移動薬剤が発生すると、カメラ24で薬剤管理装置81の周辺の写真撮影を行う。
【0094】
このように移動薬剤が発生した場合、写真撮影を行うことにより、手術の終了時、移動薬剤が紛失、混入であった場合、収納部82、回収部83での薬剤の取り出し、投入の時の写真撮影を行っているので、紛失、混入の原因解明のための手助けとなる。
【0095】
図20は、混入紛失判定画面88である。画像記録部55に移動薬剤のID番号、移動検出時刻を記録していることにより、紛失、混入薬剤のID番号とご画像記録部55の移動薬剤のID番号とを紐付けて取出時刻、投入時刻を示すことができる。
【0096】
さらに、薬剤の取出、投入時の薬剤管理装置81周辺の写真を見たい場合は、カーソル89を動かし、写真を見たい薬剤のところで、表示ボタン(図示せず)を押すと、表示部22には、画像記録部55に記録された画像を表示することで、より原因究明し易くできる。
【0097】
(実施の形態3)
本実施の形態3の薬剤管理装置は、収納部82、回収部83で保持する薬剤の検出を手術中に何度も行い、収納部から取出された薬剤がある一定の時間経過後に回収部へ投入されないと施術者へ紛失の警告を行う。
【0098】
このように、薬剤管理装置は、収納部で保持する薬剤のID番号と、このID番号を検出した時刻を含む収納部管理情報、および、回収部で薬剤のID番号と、このID番号を検出した時刻を含む回収部管理情報を記録する施術情報記録部と、この施術情報記録部の収納部管理情報より収納部移動薬剤を算出し、且つ、施術情報記録部の回収部管理情報より回収部移動薬剤を算出する算出部を備える。
【0099】
さらに、算出部で算出された収納部移動薬剤と回収部使用移動薬剤とを比較して施術薬剤が存在するか否かを算出する施術薬剤判定部と、この施術薬剤判定部で施術薬剤の存在が判定された場合、施術薬剤の施術時間が許容時間以上であるか否かを判定する施術時間判定部を備える。
【0100】
さらに、施術時間判定部で不一致のある薬剤が許容時間以上存在すると判定された場合、不一致のある薬剤の薬剤情報を表示部に表示することで、手術中に、薬剤の紛失が発生したことを施術者へ知らせることが可能となる。
【0101】
図21は、薬剤管理装置91の機能ブロック図である。図21を用いて、薬剤管理装置91の詳細を説明する。
【0102】
なお、施術情報記録部92は、収納部82、回収部83で保持する薬剤を検出した収納部管理情報と回収部管理情報とを記録する。そして、収納部管理情報は、収納部82で保持する薬剤のID番号とこの薬剤を収納部82で検出した時刻とを有する。また、回収部管理情報は、回収部83で保持する薬剤のID番号とこの薬剤を回収部83で検出した時刻とを有する。
【0103】
施術者が第1ボタン27を押すと、施術情報記録部92への収納部管理情報、回収部管理情報の記録が始まる。
【0104】
以下に、第1ボタン27が押された後の薬剤管理装置91の動作について、図22の薬剤管理装置91の動作のフローチャートを用いて説明する。
【0105】
まず、収納部82にて収納部管理情報となす収納部82のID番群を検出する(ステップS51)。次に、回収部83にて回収部管理情報となす回収部のID番号群を検出する(ステップS52)。なお、ステップS51で検出された収納部82のID番号群、回収部83のID番号群は、施術情報記録部92へ、検出時刻と共に記録される。
【0106】
そして、薬剤管理装置91は、算出部93にて、収納部82の移動薬剤、回収部83の移動薬剤を算出する(ステップS53)。
【0107】
算出部93は、施術情報記録部92に記録した前回検出した回収部83のID番号群から今回検出した回収部83のID番号群を引いて、回収部の移動薬剤を算出する。また、施術情報記録部92に記録した今回検出した収納部82のID番号群から前回検出した収納部82のID番号群を引いて、収納部82の移動薬剤を算出する。
【0108】
実施の形態3では、収納部82、回収部83で保持する薬剤のID番号の検出を繰り返し、且つ、検出した薬剤のID番号を施術情報記録部92へ記録しているので、前回行った検出結果と今回行った検出結果の比較が可能である。
【0109】
そして、施術薬剤判定部95では、収納部82の移動薬剤と回収部83の移動薬剤とを比較して、施術薬剤が存在するか否かを判定する(ステップS54)。
【0110】
ここで言う施術薬剤とは、収納部82から取出されているが、回収部83に投入されていない薬剤のことを言う。また、収納部82の移動薬剤と回収部83の移動薬剤が一致していれば、施術薬剤は存在しない。
【0111】
そして、施術薬剤が存在しなければ、第2ボタン28の検出を行う(ステップS55)。薬剤管理装置91の動作は、手術の終了である第2ボタン28が押されるまで繰り返される。
【0112】
一方、施術薬剤が存在すると、施術薬剤の施術時間と許容時間の比較を行う(ステップS56)。施術時間とは、回収部83から薬剤が取出されてから現時点までの時間である。また許容時間とは、回収部83から取出された薬剤が、紛失したのではなく手術に用いられていると考えられる時間である。
【0113】
施術薬剤が存在していた場合、施術時間判定部94は、施術薬剤のID番号より施術情報記録部92に記録されている収納部管理部で最後に検出された検出時間から現時点までの時間を施術時間として、許容時間と比較をする。
【0114】
許容時間を超えていなければ、薬剤管理装置91の動作は再度、ステップS55へ進む。
【0115】
許容時間を超えていると、施術時間判定部94は警告メッセージを作成する(ステップS57)。そして、警告メッセージを表示部22へ表示する(ステップS58)。
【0116】
図23に、警告メッセージを表示した警報画面96の1例を示す。このように施術薬剤が許容時間以上存在していると、警告メッセージを表示して施術者へ知らせる。警告メッセージの表示は、紛失した薬剤が回収部83へ投入されるまで行われる。
【0117】
なお、許容時間は薬剤の種類によって異なり、多くは8分から25分くらいの間に設定される。図23に示すように薬剤名Gg1、Gg3は許容時間が10分と設定されており、収納部82から取り出した薬剤を手術に利用して、使用済みの薬剤(空のアンプル)を10分以上回収部83へ投入しないと、表示部22には警告メッセージが表示する。10分経過するまでは、表示部22には警告メッセージを表示しない。
【0118】
また、許容時間が10分程度であれば、ステップS51からステップ55までの動作を約10秒以内で行えば、タイミング良く施術者への警報メッセージの表示が可能になる。
【0119】
薬剤管理装置81は、収納部82から取出された薬剤が施術時間を経過しても回収部83へ投入されない場合、警報メッセージを表示する。そして、施術者へ薬剤の紛失が発生したことを警告する。
【0120】
薬剤管理装置81を用いることで、薬剤の紛失が発生したことを早めに施術者へ知らせることができ、薬剤の紛失の原因究明が行い易くなる。
【0121】
(実施の形態4)
本実施の形態4の薬剤管理装置は、回収部へ1度投入した薬剤を取出して、収納部へ戻すのを防止するために、回収部から取出された薬剤が収納部へ投入されると、表示部に戻し薬剤警報メッセージを表示して、手術中の施術者の多数へ回収部から取出された薬剤が収納部へ投入されたことを警告する。
【0122】
回収部は、使用済みの薬剤が保持されているために、一部の薬液で濡れている可能性がある。よって、回収部へ投入した薬剤は汚れるため、そのような薬剤を収納部へ戻すのは好ましくない。
【0123】
手術中に収納部から取出した薬剤を収納部へ戻すことがある。この時、間違えて回収部へ戻し、そのことに気づいて回収部から取出して収納部へ投入しようとした場合に、本実施の形態4の薬剤管理装置は、回収部の薬剤が収納部へ投入されると警報を発信する。よって、収納部へ薬剤が投入されたことを、薬剤管理装置の周りにいる複数の施術者へ気づかせる。このことは、抑止力になり回収部から取出した薬剤を収納部へ戻すことを減らす。
【0124】
図24は薬剤管理装置101の機能ブロック図であり、薬剤管理装置101は、回収部83から取出された薬剤のID番号と収納部82に投入された薬剤のID番号とが一致した場合、戻し薬剤警報信号を発信する戻し薬剤検出部102を備える。
【0125】
収納部82および回収部83はRFIDタグの検出部(図示せず)を有し、収納部82および回収部83は、薬剤のRFIDタグに記録されたID番号より、保持するID番号を検出する。
【0126】
そして、薬剤管理装置101が備える移動薬剤検出部87により、収納部82で保持する薬剤、回収部83で保持する薬剤が移動する(取り出されたり、投入されたりする)のを検出する。ちなみに移動薬剤の検出は0.1秒で検出を行う。
【0127】
移動薬剤検出部87で検出される収納部82の移動薬剤のID番号と、回収部83の移動薬剤のID番号とを、戻し薬剤検出部102は監視している。そして、回収部83から取出された薬剤のID番号と収納部82に投入された薬剤のID番号とが一致した場合、戻し薬剤警報信号を発信する。
【0128】
そして、警報信号が発信されると警報メッセージを作成し、薬剤管理装置の表示部に警報メッセージを表示する。図25に、その時の戻し薬剤警告画面103を示す。
【0129】
このように回収部83から取出して収納部82へ投入した薬剤を収納部82へ投入した時に、戻し薬剤を検出した警報メッセージを表示することで、回収部から取出した薬剤を収納部へ戻すことを減らすことが可能となる。
【0130】
(実施の形態5)
本実施の形態5の薬剤管理装置は、回収部へ1度投入した薬剤を取出して、収納部へ戻したり、手術で利用したりするのを防止するために、回収部から薬剤が取出されると、表示部に取出し薬剤警告メッセージを表示して、手術中の多数の施術者へ回収部から薬剤が取出されたことを警告する。
【0131】
回収部に使用済みの薬剤が保持されているために一部の薬液で濡れている可能性がある。よって、回収部へ投入した薬剤は汚れるため、そのような薬剤を手術で使用するのは好ましくない。
【0132】
手術中に収納部から取出した薬剤を収納部へ戻すことがある。この時、間違えて回収部へ戻し、そのことに気づいて回収部から取出そうとした場合に、回収部からの薬剤の取出しが発生する。本実施の形態5の薬剤管理装置は警報を発生して、回収部から薬剤を取出すことを防止する。
【0133】
そのために、薬剤管理装置は、回収部から薬剤が取出されると警報信号を発信する取出し薬剤検出部を備える。そして、警報信号が発信されると警報メッセージを作成し、薬剤管理装置の表示部に警報メッセージを表示する。図26に、その時の取出し薬剤警告画面104を示す。
【0134】
このように回収部から取出した薬剤を表示することで、回収部からの薬剤の取出しを防止する。
【0135】
なお、回収部の取出し薬剤の検出は、回収部の薬剤のID番号を監視しておき、少なくとも一つのID番号がなくなると、回収部から薬剤が取出されたとすればよい。
【0136】
以上、本発明を実施するための種々の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限ることなく、実施の形態を種々の組合せたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の薬剤管理装置は、薬剤の紛失・混入を検出することができ、手術室等の薬剤管理装置に有用である。
【符号の説明】
【0138】
10 手術室
11 ベッド
12 ライト
13 測定器具
14、81、91、101 薬剤管理装置
16 穴部
17 凹部
20、82 収納部
21、83 回収部
22 表示部
23 ICタグリーダ
24 カメラ
25 制御機器ケース部
27 第1ボタン
28 第2ボタン
30 薬剤
31 薬剤受け
32 収納部アンテナ
33 アンテナ固定ガイド
34 収納部底板
35 遮蔽板
36 引出レール
38 アンプル
39 RFIDタグ
39a IC
39b コイル
50 初期情報記録部
51、84、93 算出部
52 種別・個数判定部
53 終了情報記録部
54 施術者記録部
55 画像記録部
56 増減検出部
61 薬剤a
62 薬剤b
63 薬剤c
64 薬剤d
65 薬剤e
66 薬剤f
67、86 比較表
68 正常判定画面
69 混入判定画面
70 紛失判定画面
85 ID番号判定部
87 移動薬剤検出部
88 混入紛失判定画面
89 カーソル
92 施術情報記録部
94 施術時間判定部
95 施術薬剤判定部
96 警報画面
102 戻し薬剤検出部
103 戻し薬剤警告画面
104 取出し薬剤警告画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、
前記制御部は、
施術開始時における前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部初期情報と、施術開始時における前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部初期情報とを記録する初期情報記録部と、
前記収納部で検出された薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部管理情報と前記収納部初期情報との差分より収納部使用薬剤情報を算出し、前記回収部で検出された薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部管理情報と前記回収部初期情報との差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部と、
前記算出部より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報とが一致した薬剤種別ごとの個数であるか否かを判定する判定部と、を備える
薬剤管理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記収容部使用薬剤情報と前記回収部使用薬剤情報が不一致であった場合、前記回収部使用薬剤情報と前記収容部使用薬剤情報のどちらの使用薬剤が多いかを判定し、判定結果に応じて正常または混入または紛失のいずれかの情報を作成するものである
請求項1に記載の薬剤管理装置。
【請求項3】
収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、
前記制御部は、
施術開始時における前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報と、施術開始時における前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報とを記録する初期情報記録部と、
前記収納部で検出された薬剤のID番号を含む収納部管理情報と前記収納部初期情報との差分より収納部使用薬剤情報を算出し、前記回収部で検出された薬剤のID番号を含む回収部管理情報と前記回収部初期情報との差分より回収部使用薬剤情報を算出する算出部と、
前記算出部より算出された収納部使用薬剤情報と回収部使用薬剤情報にあるID番号が一致するか否かを判定するID番号判定部と、を備える
薬剤管理装置。
【請求項4】
前記ID番号判定部は、前記収容部使用情報と前記回収部使用情報が不一致であった場合、前記回収部使用情報と前記収容部使用情報と比較して、前記収容部使用情報に存在するが前記回収部使用情報に不在のID番号を混入薬剤ID番号として検出し、前記回収部使用情報に存在するが前記収容部使用情報に不在のID番号を紛失薬剤ID番号として検出するものである
請求項3に記載の薬剤管理装置。
【請求項5】
収納部と回収部と制御部とを備えた薬剤管理装置であって、
前記制御部は、
前記収納部で保持する薬剤のID番号および前記ID番号を検出した時刻を含む収納部管理情報と、前記回収部で薬剤のID番号および前記ID番号を検出した時刻を含む回収部管理情報とを記録する施術情報記録部と、
前記施術情報記録部の収納部管理情報より収納部移動薬剤を算出し、且つ、前記施術情報記録部の回収部管理情報より回収部移動薬剤を算出する算出部と、
前記算出部で算出された収納部移動薬剤と回収部移動薬剤とを比較して、施術薬剤が存在するか否かを判定する施術薬剤判定部と、
前記施術薬剤判定部で施術薬剤の存在が判定された場合、前記施術薬剤の施術時間が許容時間以上であるか否かを判定する施術時間判定部と、を備える
薬剤管理装置。
【請求項6】
前記施術時間判定部で不一致のある薬剤が許容時間以上存在すると判定された場合、不一致のある薬剤の薬剤情報を表示する表示部を備える
請求項5に記載の薬剤管理装置。
【請求項7】
前記回収部から取出された薬剤のID番号と前記収納部に投入された薬剤のID番号とが一致した場合、一致した薬剤のID番号に基いて戻し薬剤警報信号を発信する戻し薬剤検出部を備える
請求項3〜6いずれか1項に記載の薬剤管理装置。
【請求項8】
自身の周辺を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影をした画像を撮影時刻と共に記録する画像記録部と、を備え、
前記制御部は、前記収納部と前記回収部の少なくとも一方で保持する薬剤に増減があると前記カメラで自身の周囲を撮影させるものである
請求項1〜7いずれか1項に記載の薬剤管理装置。
【請求項9】
前記収納部および前記回収部はRFIDタグのタグ検出部を有し、
前記制御部は、前記収納部および前記回収部において、前記タグ検出部で検出された薬剤のRFIDタグに記録された薬剤種別コードより、保持する薬剤の種別ごとの個数またはID番号を検出するものである
請求項1〜8いずれか1項に記載の薬剤管理装置。
【請求項10】
前記回収部から薬剤が取出されると、取出し薬剤警報信号を発信する取出し薬剤検出部を備える
請求項1〜9いずれか1項に記載の薬剤管理装置。
【請求項11】
薬剤管理装置の収納部および回収部で保持する薬剤を施術中に管理する薬剤管理方法であって、
施術開始時において、前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部初期情報と、前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部初期情報との検出を行う初期情報検出工程と、
施術終了後において、前記収納部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む収納部管理情報と、前記回収部で保持する薬剤の種別ごとの個数の情報を含む回収部管理情報との検出を行う終了情報検出工程と、
前記収納部初期情報と前記収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報と、前記回収部管理情報と前記回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出し、前記収納部使用薬剤情報と前記回収部使用薬剤情報とが同一の薬剤種別および個数であるか否かを判定する判定工程と、を備える
薬剤管理方法。
【請求項12】
薬剤管理装置の収納部および回収部で保持する薬剤を施術中に管理する薬剤管理方法であって、
施術開始時において、前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部初期情報および前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部初期情報の検出を行う初期情報検出工程と、
施術終了後において、前記収納部で保持する薬剤のID番号を含む収納部管理情報および前記回収部で保持する薬剤のID番号を含む回収部管理情報の検出を行う終了情報検出工程と、
前記収納部初期情報と前記収納部管理情報の差分である収納部使用薬剤情報と、前記回収部管理情報と前記回収部初期情報の差分である回収部使用薬剤情報を算出し、前記収納部使用薬剤情報と前記回収部使用薬剤情報とが同一の薬剤種別および個数であるか否かを判定する判定工程と、を備える
薬剤管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−148602(P2011−148602A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11607(P2010−11607)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】