説明

薬液塗布装置

【課題】角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な薬液層を形成する事の出来る薬液塗布装置を開発する事にある。
【解決手段】(1) 角形基板(1)が嵌め込まれる角形凹所(16)が形成され、該角形凹所(16)の外接円(G)外に面一にて平坦縁部(10b)が形成され、角形基板(1)が前記角形凹所(16)に面一に嵌め込まれた状態で回転する回転チャック(10)と、(2) 角形基板(1)上に薬液(2)を供給するための薬液供給部(11)と、(3) 回転チャック(10)に載置された角形基板(1)を覆うためのものであって、回転チャック(10)の直上に気体流入孔(12)が穿設されており、気体流入孔(12)から角形基板(1)側に導入された気体にて角形基板(1)の中心(P)側から周縁(S)方向に流れる気流(4)を作り出す円錐台状のフード(13)とを有する薬液塗布装置(A)であって、(a) フード(13)の気体流入孔(12)が角形基板(1)の内接円(N)に等しく、且つ、(b) フード(13)の裾縁(14a)が回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しく形成されている事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト或いはエッチング液など半導体素子製造プロセスで使用される薬液を最近の高微細化した特殊用途の超厚膜角形基板に対応可能にて均一に塗布することが出来るようにした薬液塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、フォトレジスト塗布工程或いはエッチング工程などの工程が組み込まれているが、この工程では処理基板が円形であり、回転中心から基板周縁までの距離は等距離で均一であるため、処理基板の表面全面に均一な薬液層を形成する事が出来る。この手法を角形基板(1)を使用する超厚膜半導体素子製造プロセスに適用しようとすると、以下のような問題が生じた。
【0003】
角形基板(1)より小径の回転チャック(120)に角形基板(1)を吸着セットして回転させ、その中心(P)にフォトレジスト液或いはエッチング液などの薬液(2)を必要量だけ供給し、遠心力を利用して薬液を回転している処理ガラス基板(1)の中心(P)から周縁(S)まで極く短時間で広がらせ、回転処理ガラス基板(1)の表面全面に薬液層(2a)を形成しようとした(先行技術文献1)。
【0004】
角形基板(1)は正方形で、辺(52)までの最短距離(=内接円(N))と角部分(5)の先端部(最長距離で、外接円(G))とでは中心からの距離(Dn)(Dg)が異なるため(図5参照)、角形基板(1)より小径の回転チャック(120)に角形基板(1)を吸着セットして回転させた場合、中心(P)から広がっていった薬液(2)は辺(52)の中央(52a)に最初に到達し、次第に角部分(5)の方向に広がっていくことになる。角部分(5)では両側の辺(52)上の点(52X)(52Y)を両端とし、角方向に曲った円弧状の薬液流(55)の先端部分(此処では便宜上、円弧状の太い二点鎖線で示しているが刻々角部分(5)の先端に向けて移動している。)が角部分(5)の先端方向に回転の遠心力の作用で流れていき、最終的に角部分(5)の先端に達する。
【0005】
処が角形基板(1)より小径の回転チャック(120)に角形基板(1)を吸着セットした場合、前記角部分(5)は角形基板(1)の内接円(N)から突き出した状態となっており、回転する角形基板(1)が風を切る状態となって乱流が生じ、これが角部分(35)の薬液層(2a)の表面を波立たせ、比較的優れた内接円(N)内の平面度に比べて内接円(N)外では大きく平面度が損なわれ、内接円(N)の内外で大きく表面状態が変化するという問題があった。
【0006】
そこで、先行技術文献1(図6,7)では、回転可能な円形の載置台本体(100)(本発明の回転チャック(10)に相当する。)に角形基板(1)を載置し、回転時、その遠心力を利用した「錘(105)を利用したてこ(104)」を用いて前記角形基板(1)の辺(52)…に当接する半月状の成形部材(103)…[停止時に離間可能]を配置したものである。加えて薬液塗布時における成形部材(103)と角形基板(1)との間に隙間が発生しないようにして薬液(2)が角形基板(1)から成形部材(103)へスムーズに流れるように配慮している。なお、角形基板(1)と成形部材(103)とは面一に形成されている。
【0007】
従って、先行技術文献1に記載の発明では、基本的に角形基板(1)の内接円(N)外の角部分(5)と成形部材(103)では基本的に同心円状に薬液(2)が拡大・塗布されていくことになり、或る程度フラットな薬液表面が全面に形成されることになり、先行技術文献2が出願された時代(昭和62年当時)の半導体製造レベルではこれで十分であった。
【0008】
しかしながら、現代では当時と比べて半導体素子の集積量は飛躍的に増大し、且つ半導体素子そのものも超微細化しているので、当時のフラット精度では到底対応する事ができない。何故ならば、前述のように角形基板(1)と面一な成形部材(103)を用いて角形基板(1)上に形成される薬液層(2a)の表面平面度を高いものにしようとしても、
・ ガラスである角形基板(1)と、金属である成形部材(103)との材質の相違や、
・ 成形部材(103)を角形基板(1)の辺(52)に押圧するようにしたとしてもこの部分(両者の接触ライン(LN))で抵抗が発生して乱れが生じ、内接円(N)外の角部分(5)の薬液(2)の流れに乱れが生じ、現状のような超微細な半導体素子を構成しなければならないような状況では、内接円(N)外での薬液層(2a)の平面性の精度が必要とされるレベルに達しなかった。
【0009】
加えて、図7からわかるように角形基板(1)の外接円(G)が成形部材(103)の角に一致するため、薬液(2)の表面張力によって成形部材(103)の外縁部分(角形基板(1)の外接円(G)に一致する。)に発生する薬液(2)の盛り上がり部分(M)が角形基板(1)に角部分(5)の先端に連なって発生し、角形基板(1)全体の平面度における均一性を損なうという欠点もあった。
【0010】
次に、先行技術文献2(図8、9)であるが、このものには角形基板(1)より小径のターンテーブル(110)(本発明の回転チャック(10)に相当する。)の上に飛散防止カバー(130)(本発明のフード(13)に相当する。)が設けられており、飛散防止カバー(130)の中央に設けられた孔(131)から飛散防止カバー(130)内に外気エアーが角形基板(1)に向かって流れ込み、次いで方向を変えて基板周縁(S)に向かって流れるようにしてある。従って、飛散防止カバー(130)内を流れる外気エアーの気流(4)によって、回転中にターンテーブル(110)の基板(1)上に発生する乱流はある程度抑制される事になるが、飛散防止カバー(130)の孔(131)に対応する範囲内(H1)では基板(1)の表面に向かうダウン方向の気流(4)によって基板(1)の表面の薬液層(2a)が押さえられ、遠心力との相乗効果により薬液層(2a)の平面度は高いが、該範囲外(H2)では前記範囲内(H1)の平面度より悪くなり、やはり現状のような超微細な半導体素子を構成しなければならないような状況では対応できなかった。
【0011】
なお、先行技術文献1を先行技術文献2に適応しても前述のように飛散防止カバー(130)の孔(131)に対応する範囲内(H1)では基板(1)表面の薬液層(2a)の平面度は高いが、該範囲外(H2)では前記範囲内(H1)の平面度より悪くなり、現状で要求されるような基板(1)の全面における平面度の超高均一性を担保する事は出来ない。
【0012】
【特許文献1】実開昭63−193572号公報
【特許文献2】特開平07−308625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の解決課題は、現状のような超微細な画素を角形基板全面において構成しなければならないような状況において、角形基板でもその角部分の先端まで超均一平面薬液層を形成する事の出来る薬液塗布装置を開発する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る薬液塗布装置(A)は、
(1) ガラス又はセラミックス製の角形基板(1)が嵌め込まれる角形凹所(16)が形成され、該角形凹所(16)の外接円(G)外に平坦縁部(10b)が形成され、角形基板(1)が前記角形凹所(16)に面一に嵌め込まれた状態で回転する回転チャック(10)と、
(2) 角形基板(1)上に薬液(2)を供給するための薬液供給部(11)と、
(3) 回転チャック(10)に載置された角形基板(1)を覆うためのものであって、回転チャック(10)の直上に気体流入孔(12)が穿設されており、気体流入孔(12)から角形基板(1)側に導入された気体にて角形基板(1)の中心(P)側から周縁(S)方向に流れる気流(4)を作り出す円錐台状のフード(13)とを有する薬液塗布装置(A)であって、
(a) フード(13)の気体流入孔(12)が角形基板(1)の内接円(N)に等しく、且つ、
(b) フード(13)の裾縁(14a)が回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しく形成されている事を特徴とする。ここで、気体流入孔(12)の直径を(X1)、裾縁(14a)の直径を(X2)とすると、直径(X1)は角形基板(1)の内接円(N)に等しく、直径(X2)が回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しくなる。
【0015】
請求項2の薬液塗布装置(A)は、請求項1の更なる限定で「角形基板(1)から回転チャック(10)の端縁までの平坦縁部(10b)の最短幅(L1)が回転チャック(10)の周端縁表面に形成される薬液盛り上がり部分(M)の幅(L2)より大きい」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前述のように角形基板(1)が嵌め込まれた回転チャック(10)を回転させるとその遠心力で薬液(2)はその表面を角形基板(1)の周縁(S)部分に向かい、且つ内接円(N)を超えた部分では角部分(5)以外の部分では回転チャック(10)の平坦縁部(10b)まで流れていく。ここで角形基板(1)は回転チャック(10)に形成された角形凹所(16)内で平坦縁部(10b)と面一に嵌め込まれているので、角形基板(1)は従来の円形基板とある程度同じ状態となり、薬液(2)が角形基板(1)から回転チャック(10)の平坦縁部(10b)までスムーズに広がって行く。
【0017】
しかしながら、角形基板(1)の角部分(5)の表面と、角形基板(1)を取り囲む回転チャック(10)の平坦縁部(10b)とは、面一であるとしても前述のようにガラス又はセラミックス製と金属製という材質上の相違や、角形基板(1)とこれが嵌め込まれた角形凹所(16)の内壁との間の極く細い溝(16a)の存在などで、「フード(13)なし」の状態では、角形凹所(16)の内接円(N)の内外でやはり薬液(2)の流れに前述のような若干の相違があり、内接円(N)の内外で表面状態が極く僅かではあるが相違する。換言すれば、内接円(N)外の角部分(5)の方が若干悪くなる。
【0018】
そこで、(a)フード(13)の気体流入孔(12)が角形基板(1)の内接円(N)に等しく、且つ、(b)フード(13)の裾縁(14a)が回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しく形成され、(c)フード(13)の裾縁(14a)と回転チャック(10)との間に排気用間隙(K)が形成されている円錐台状のフード(13)を使用すると、フード(13)の気体流入孔(12)から流入した空気のかなりの部分がダウンフローとなって角形基板(1)の内接円(N)内に相当する部分を均等に押圧し、回転チャック(10)の回転による遠心力と相俟って、この部分、即ち、内接円(N)内において極めてフラットな薬液層(2b)を形成する。
【0019】
一方、内接円(N)外にあっては前記流入空気が回転チャック(10)の外周縁(10c)向かって層流となって流れ、該外周縁(10c)近傍に発生しやすい乱流を抑制する。このとき角形基板(1)の内接円(N)外の角部分(5)では、角形基板(1)の内接円(N)内に比べて前述の理由(材質の相違や角部分(5)の辺(52)での薬液(2)のフローに対する抵抗)により、その平面度が若干落ちるが、この部分を流れる気流(4)が薬液(2)を上から押さえ込むと同時に押し流し、前記角形基板(1)の角部分(5)の平面度を角形基板(1)の内接円(N)内に相当する部分と同等の状態までにする。
【0020】
特に、ここで使用される角形基板(1)は前述のようにガラス或はセラミックスで、その厚みは1mm以上(最大は15mm〜20mm)と半導体基板に比べて厚く、それ故、回転チャック(10)の角形凹所(16)の底部に浅い真空路を形成するための切欠部を有する、角形基板(1)の裏面に接してこれを支持する、凸状で一部に真空引きのための切欠(ただし、最外周にはなし。)が設けられているリング状支持部(17)が形成されることになるため、角形凹所(16)の底部の底部に厚みとして5mmは必要となるため、回転チャック(10)もそれだけ厚くなる[5mm以上(最大は20mm〜25mm)]。それ故、ぶ厚い回転チャック(10)が高速回転するとその側面に接触している空気もそれに引っ張られて回転チャック(10)の周囲を回転し、それが原因となって回転チャック(10)の外周縁(10c)部分に乱流を発生させやすい。本発明では角形基板(1)の角部から更に面一にて外側に延びる平坦縁部(10b)の存在により回転チャック(10)の周縁部分にたとえ小さな乱流が発生したとしても外周縁(10c)近傍で収まり、角形基板(1)の角部分(5)まで影響を及ぼさない。
【0021】
加えて角形基板(1)から回転チャック(10)の端縁までの平坦縁部(10b)の最短幅(L1)が回転チャック(10)の周端縁表面に形成される薬液盛り上がり部分(M)の幅(L2)より大きいので、気流(4)の存在でその盛り上がりがある程度抑制されるとしても、どうしても遠心力と表面張力の協働作用によって発生する薬液盛り上がり部分(M)が外周縁(10c)近傍表面に限定され、角部分(5)に影響を及ぼさない。この状態で薬液層(2a)が乾燥或いは反応によって固化すると、角部分(5)まで略均一な薬液層(2a)を持つ角形基板(1)が得られる事になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。本装置(A)の回転チャック(10)は、下部ベース(15)の中央に回転自在に配設されており、その上面に角形基板(1)が嵌まり込む角形凹所(16)が形成されている。角形凹所(16)の底部には角形基板(1)の裏面に接してこれを支持する、凸状で一部に真空引きのための切欠(ただし、最外周にはなし。)が設けられている複数のリング状支持部(17)が同心円にて突設されており、その中心に真空吸着孔(18)が穿設されている。真空吸着孔(18)は、回転チャック(10)の回転軸(10k)を貫通して形成されており、図示しない例えば真空ポンプのような真空吸引源に接続されている。
【0023】
下部ベース(15)は、後述する液受けプレート(26)からこぼれた薬液(2)の受け皿部分を形成するもので、その周縁部分にはなだらかな傾斜面(19)を有するリング状の凹溝(20)がその周囲に形成されている。また、前記下部ベース(15)の側壁(21)の上端近傍には1乃至複数の排気孔(28)が形成されている。
【0024】
下部ベース(15)の側壁(21)の上端内周には、下方に行くに従って外方に拡径するリング状の第1カバー(22)及びその内側にリング状の第2カバー(23)がそれぞれ配設されている。第2カバー(23)には回転チャック(10)とほぼ同じか或いは若干大きめの直径の大径孔(24)が穿設されている。
【0025】
また、下部ベース(15)の上にはリング状の液溜り(25)を有する液受けプレート(26)が配設されており、回転チャック(10)の下方をカバーしている。液受けプレート(26)の外周側壁(27)は前記第1、2カバー(22)(23)との間に配設されており、液受けプレート(26)自体は支持脚(29)で下部ベース(15)に取り付けられている。
【0026】
下部ベース(15)の外部には装置ベース(30)上に複数の昇降シリンダ(31)が立設されており、その昇降ロッド(32)にリング状のフード取付プレート(33)が取り付けられている。そしてこのフード取付プレート(33)の大径通孔(34)にフード(13)が装着されている。フード取付プレート(33)とフード(13)とを一体成形する事は勿論可能である。
【0027】
前記フード(13)は、図のように中央の気体流入孔(12)から裾縁(14a)に向かって円錐台状に形成され、その頂部に気体流入孔(12)が形成されており、気体流入孔(12)から内部へ吸引或いは導入されたその大部分の気体にて、角形基板(1)側に角形基板(1)の中心(P)側から周縁(S)方向に流れる気流(4)を作り出す事が出来るようになっている。一部はフード(13)の傘部分に沿って流れる。そして該気流(4)は、フード(13)の裾縁(14a)と回転チャック(10)との間に排気用間隙(K)から排気されるようになっている。フード(13)は排気用間隙(K)に向かって角形基板(1)に次第に近接し、フード(13)と角形基板(1)との間を流れる気流(4)の流速を次第に速めるようになっている。前記フード(13)の気体流入孔(12)は角形基板(1)の内接円(N)に等しく、且つ、フード(13)の裾縁(14a)は回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しく形成されている。
【0028】
前記回転チャック(10)の回転軸(10k)の周囲にて下部ベース(15)には3乃至4本の基板昇降支持棒(35)が配設されており、その先端に支持先端が球状に形成された支持部(35a)が取り付けられている。そして、この基板昇降支持棒(35)は前記回転チャック(10)を突き抜けて昇降するため、回転チャック(10)に穿設された貫通孔(36)は回転チャック(10)の基板昇降支持棒(35)に一致した位置にて停止するようになっている。
【0029】
薬液供給部(11)は、薬液供給ノズル(37)、薬液供給ノズル(37)を支持するアーム(38)、アーム(38)を昇降させる昇降駆動部(図示せず。本実施例ではシリンダで構成されている)、アーム(38)を水平面内である角度を以て往復揺動運動させる揺動駆動部(図示せず。)、前記薬液供給ノズル(37)に接続しているチューブ(41)とで構成されている。前記薬液供給部(11)は下部ベース(15)外に配設されており、揺動駆動部と昇降駆動部とを作動させる事で薬液供給ノズル(37)が角形基板(1)の中心(P)側の直上で昇降し且つ角形基板(1)の中心(P)の直上の位置と下部ベース(15)外との間を往復するようになっている。
【0030】
本発明に使用される角形基板(1)は特殊用途のガラス基板或はセラミックス基板で、その厚さは1mm以上、最大は15mmの厚いものである。形は正方形が中心であるが、長方形のものも当然含まれる。辺の長さは100〜200mm(正方形の場合)、長方形の場合は長方形基板(図示せず。)の内接円(図示せず。)に気体流入孔(12)の直径(X1)に等しく、裾縁(14a)の直径(X2)を回転チャック(10)の外周縁(10c)に等しくなるようにする。長方形基板の内接円より外の部分は、角形基板(1)の内接円より外の部分と同様の挙動を示す。
【0031】
次に、本発明装置(A)の作用に付いて説明する。図1に示すようにロボットハンド(R)に吸着された角形基板(1)が装置(A)内に搬送されてくる。この時当然、薬液供給ノズル(37)は下部ベース(15)外に逃げており、フード(13)は第1,2カバー(22)(23)から上方に離間した状態となっている。角形基板(1)が回転チャック(10)の直上に来た時にロボットハンド(R)は停止し、その位置で待機する。
【0032】
すると、図示しないシリンダのような昇降駆動体の作用で、基板昇降支持棒(35)が一斉に上昇し、回転チャック(10)の貫通孔(36)を通ってロボットハンド(R)に保持されている角形基板(1)の直下の位置迄上昇しこの位置で待機する。するとロボットハンド(R)が角形基板(1)と共に降下し、基板昇降支持棒(35)の先端の支持部(35a)に角形基板(1)の下面が当接し、その時点で例えば、真空チャックのような拘束手段の場合、その真空が破れる事でロボットハンド(R)の拘束が解かれ、支持部(35a)上に角形基板(1)が載置される。ロボットハンド(R)は前記載置後、更に降下し、完全に角形基板(1)から外れた位置迄降下した後、後退して下部ベース(15)外に移動する。
【0033】
支持部(35a)上への角形基板(1)の移載が完了すると、角形基板(1)を保持した状態で基板昇降支持棒(35)が一斉に降下する。そして、角形基板(1)に合わせて正確に凹設された回転チャック(10)の角形凹所(16)内に角形基板(1)が面一にて嵌まり込む。基板昇降支持棒(35)は角形基板(1)が角形凹所(16)内に嵌まり込んだ後も降下し、貫通孔(36)から完全に離脱した時点で停止・待機する。
【0034】
角形基板(1)が角形凹所(16)内に嵌まり込んだ時点、或いはその後の基板昇降支持棒(35)の停止時点で真空吸着孔(18)に図示しない真空源が接続され、角形基板(1)を角形凹所(16)内に吸着固定する。前記吸着固定が完了したかどうかは、例えば図示しない圧力センサにて真空吸着孔(18)の減圧状態をチェックする事(即ち、真空状態になれば吸着完了)で判定する事が出来る。
【0035】
続いて、薬液供給部(11)の揺動駆動部を作動させて薬液供給ノズル(37)を角形基板(1)の中心(P)の直上迄移動させ、続いて昇降駆動部を作動させて薬液供給ノズル(37)を降下させ、ノズル先端を角形基板(1)の中心(P)に近接させる。ノズル先端が角形基板(1)の中心(P)に近接し、停止した所で、図示しない薬液供給源を作動させ、チューブ(41)を介して所定量の薬液(2)「例えばフォトレジストなど」を薬液供給ノズル(37)から角形基板(1)の中心(P)に向かって滴下させる。薬液(2)の供給後、昇降駆動部を逆作動させて薬液供給ノズル(37)を上昇させ、然る後揺動駆動部を逆作動させて薬液供給ノズル(37)を下部ベース(15)外のホームポジションに戻し、その位置で停止・待機させる。
【0036】
薬液供給ノズル(37)が下部ベース(15)外のホームポジションに戻った処で、昇降シリンダ(31)を作動させてフード(13)を降下させ、第1,2カバー(22)(23)にフード取付プレート(33)を密着させると共にフード(13)にて大径孔(24)を覆う。装置(A)内には無塵の超クリーンエアが常に上から下に流れており、フード(13)をする事で前記気流(4)は、フード(13)の気体流入孔(12)を通ってフード(13)内に流入する。流入気流(4)の大部分は角形基板(1)の内接円(N)全面に吹き当たり、続いて内接円(N)外方向、即ち、角形基板(1)の周縁(S)方向に流れ、第2カバー(23)の下縁を潜り、液受けプレート(26)の外周側壁(27)の上縁を越え、更に第1カバー(22)の下縁を潜って下部ベース(15)の側壁(21)に沿って上り、側壁(21)の排気孔(28)から外部に流出して行く。
【0037】
フード(13)が下がりきって停止すると、回転チャック(10)が回転を始める。すると、角形基板(1)の中心(P)に滴下された薬液(2)は回転を始めた角形基板(1)の遠心力と前記気流(4)によって周縁(S)に向かって同心円状にて均等に広がっていく。フード(13)の気体流入孔(12)が角形基板(1)の内接円(N)に一致しているので、フード(13)内に流入した大部分の気流(4)は角形基板(1)の内接円(N)全面に吹き当たり、回転時の遠心力と相俟って極めてフラットな超高平面度の薬液層(2a)を形成する。
【0038】
同心円状に拡散していった薬液(2)の一部は、角形基板(1)の側縁(1a)の中央に到達するが、角部分(5)に向かった薬液(2)はまだ角部分(5)の先端に到達していない。薬液(2)は次第に狭くなる角部分(5)の先端に向かって従来例で述べたように円弧を描きながら流れていくが、角形基板(1)の側縁(1a)に沿って存在する細い溝(16a)の存在により角部分(5)から平坦縁部(10b)への薬液(2)の移行が若干抵抗をもって行われる事になる(従って、若干円弧がきつくなる。)が、この場合は更に前記気流(4)の助けにより角部分(5)の先端まで過不足なく薬液(2)が流れ着く。そして過剰な薬液(2)は角形基板(1)を越えて平坦縁部(10b)へ流れ、回転チャック(10)の外周縁(10c)から振り切られて液受けプレート(26)の液溜り(25)に溜まる。そして前記気流(4)は、液溜り(25)側が負圧になっているため液溜り(25)側に引き込まれる事によって該気流(4)は方向を変え、螺旋状の層流になって周縁(S)に向かって流れていく。
【0039】
角形基板(1)では内接円(N)内と、外の角部分(5)との間でたとえ角形凹所(16)に面一にて嵌め込まれていたとしても薬液(2)の拡がり状況が異なるため、内接円(N)内外では同一の平面度状態にならないが、角部分(5)上を流れる気流(4)は角部分(5)上の薬液(2)を角部分(5)の先端方向に押しやると共に上から押さえつけて内接円(N)内とほぼ同様の平面度を高める。なお、フード(13)は円錐台状なので、周縁(S)に向かって角形基板(1)(或いは回転チャック(10))との間隙が次第に小さくなっていくため流速を早めていくことになり、回転チャック(10)の外周縁(10c)で発生する盛り上がり部分(M)を大幅に抑制することになる。
【0040】
ここで、フード(13)の気体流入孔(12)が角形基板(1)の内接円(N)に等しいので、「フード(13)なし」の場合に高い平面度を実現する内接円(N)内の平面度と同じ平面度を実現する。図8、9に示すようにフード(13)の気体流入口(12)が前記内接円より小さい場合には気体流入口(12)に対応する範囲(H1)内に集中的に気流(4)が吹き当たり、この部分の平面度は遠心力と相俟って高く保たれるが、範囲(H1)外と内接円(N)の間の範囲(H2)では同心円状に拡散しようとする薬液(2)に対して強い気流(4)が吹き当たるため却って平面度が損なわれる。そしてその乱れが角部分(5)にも引き継がれ、この部分の平面度も損なわれることになる。
【0041】
薬液(2)は回転チャック(10)の外周縁(10c)で、その表面張力と遠心力との協働作用によって盛り上がろうとするが、この盛り上がり部分(M)の幅(L2)が回転チャック(10)の平坦縁部(10b)の最短幅(L1)より狭いので、角形基板(1)に影響することはない。なお、平坦縁部(10b)の最短幅(L1)は4〜20mm程度(換言すれば、角形基板(1)の対角寸法+4〜20mm程度)である。
【0042】
薬液層(2a)が形成された処で、回転チャック(10)を所定位置で停止させ、真空吸着孔(18)を大気開放させて角形基板(1)の吸着を解除する。同時に或いはその前後において昇降シリンダ(31)を逆作動させてフード(13)を持ち上げ、回転チャック(10)上にスペースを確保する。
【0043】
続いて、再度基板昇降支持棒(35)を一斉に上昇させ、角形凹所(16)内の角形基板(1)を持ち上げ、所定の位置で停止し、ロボットハンド(R)を待つ。ロボットハンド(R)が下部ベース(15)の外から角形基板(1)の下方に移動してき、続いて上昇して角形基板(1)の一部を例えば吸着手段のような拘束手段で拘束し、基板昇降支持棒(35)から角形基板(1)を受取り、そのまま後退して角形基板(1)を下部ベース(15)外に取り出す。角形基板(1)が取り出された所で、基板昇降支持棒(35)は再び下降して元の位置に戻る。以上のようにして角形基板(1)の表面の全面に亘って略均一な厚さで、その表面がほぼ全面に亘って平坦な薬液層(2a)を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明装置に角形基板をロボットハンドで挿入した時の断面図
【図2】本発明装置の回転チャックに取り付けた角形基板に薬液を供給している時の断面図
【図3】本発明装置の回転チャックを回転させて角形基板上に薬液を拡散させている時の断面図
【図4】本発明装置で形成された角形基板の一部切欠斜視図
【図5】角形基板を小径の回転チャックに吸着させて回転させた場合の平面図
【図6】先行技術文献1に記載された角形基板を載置した回転チャックの断面図
【図7】図6の平面図
【図8】先行技術文献2に記載された角形基板を載置した回転チャックの断面図
【図9】図8の平面図
【符号の説明】
【0045】
(A) 薬液塗布装置
(1) 角形基板
(2) 薬液
(4) 気流
(10) 回転チャック
(10b) 平坦縁部
(10c) 外周縁
(11) 薬液供給部
(12) 気体流入孔
(13) フード
(14a) 裾縁
(16) 角形凹所
(G) 外接円
(N) 内接円
(P) 中心
(S) 周縁
(X1) 気体流入孔の直径
(X2) 裾縁の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) ガラス又はセラミックス製の角形基板が嵌め込まれる角形凹所が形成され、該角形凹所の外接円外に平坦縁部が形成され、角形基板が前記角形凹所に平坦縁部と面一に嵌め込まれた状態で回転する回転チャックと、
(2) 角形基板上に薬液を供給するための薬液供給部と、
(3) 回転チャックに載置された角形基板を覆うためのものであって、回転チャックの直上に気体流入孔が穿設されており、気体流入孔から角形基板側に導入された気体にて角形基板の中心側から回転チャックの周縁方向に流れる気流を作り出す円錐台状のフードとを有する薬液塗布装置であって、
(a) フードの気体流入孔が角形基板の内接円に等しく、且つ、
(b) フードの裾縁が回転チャックの外周縁に等しく形成されている事を特徴とする薬液塗布装置。
【請求項2】
角形基板から回転チャックの端縁までの平坦縁部の最短幅が回転チャックの周端縁表面に形成される薬液盛り上がり部分の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の薬液塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−43838(P2009−43838A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205625(P2007−205625)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(591153813)エム・セテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】