説明

薬液移送装置

本発明は半導体製造工程で必要な薬液を供給する薬液移送装置に関するものであって、薬液が脈動なしで一定に供給されるように、互いに異なる吸入行程時点と排出行程時点を有する3つ以上のポンプを一列に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬液移送装置に関するものであって、さらに詳しくは、半導体製造工程において必要な薬液を脈動無しで一定に供給することができる薬液移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程は、ウエハー回路設計、ウエハー加工、及び組立/検査の3つの段階からなっている。このうち、ウエハー加工段階のエッチング工程と洗浄工程ではウエハーをエッチング又は洗浄するための化学的薬品(以下、略して「薬液」という)が使用される。
【0003】
公知のように、半導体製造工程は精密度の高い製品を生産する工程である。そのゆえに、このような半導体製造工程に使用される薬液の正確な混合比や薬液の一定した供給が非常に重要である。
【0004】
このうち、混合比の一定した供給は隔膜又はベローズポンプからなる移送装置によって行われる。図1乃至図3はこのような従来の移送装置を示したものであって、図1は従来の薬液移送装置の主要構成を示した平面図であり、図2は図1に示した薬液移送装置の作動装置を示した正面図であり、図3は図1に示した薬液移送装置の時間による吸入及び排出工程を示した図表である。
【0005】
図1に示したように、従来の移送装置200は2つのベローズポンプ 210,212からなっている。2つのベローズポンプ 210,212は移送装置200の胴体を挟んで互いに対向する形態で設けられ、各ポンプの吸入行程及び排出行程時点が互いに一致されないように作動する(図3参照)。従って、従来の移送装置200は図面符号210のポンプが薬液を吸入するときにも図面符号212のポンプが薬液を排出するため、薬液を一定に供給することができるという利点がある。
【0006】
しかし、このような従来の薬液移送装置200はポンプ210,212の設置構造上、次のような短所がある。
【0007】
第一、流量の増加に限界がある。
従来の薬液移送装置200は、対向する二つのベローズ又は隔膜(ダイアフラム)ポンプから構成される。従って、従来の薬液移送装置200は移送流量を増加させるためにはベローズ又は隔膜のサイズを大きくしなければならないが、構造上、又は費用上、実現することが難しい。
【0008】
第二、薬液によるポンプの洗浄が難しく、交換作業が難しく、かつ危険である。
従来の薬液移送装置200はベローズポンプ210,212が横たわった状態で設けられるため、ポンプ210,212の内部(特に、ベローズポンプで伸張及び圧縮されるシワ部分)に多量の薬液300が常に残るようになる。ところで、一般的に薬液300は人体に危険なものが殆どであり、ポンプの交換のために連結具を着脱する際に薬品漏れによる人体損傷の危険が大きい。また、半導体のウエハーを洗浄又は洗滌するための微細な研磨剤が含まれている場合、ポンプ210,212内に残存して、ポンプ210,212の主要部品(ベローズポンプのシワ部分や隔膜ポンプの隔膜)を磨耗させる可能性が大きい。
【0009】
そのため、従来の薬液移送装置200は、このような短所のため、ベローズポンプ210,212を本来の寿命だけ使用できず、長期間の使用による効率の低下現象が目立つといった問題が発生する。
【0010】
第三、薬液供給時に顕著な脈動現象が発生する。
従来の薬液移送装置200は、先に述べたように、2つのベローズポンプ210,212が互いに対称される吸入及び排出行程時点を有するように作動するため、大体均一に薬液を供給することができる。
【0011】
しかし、従来の薬液移送装置200は、図面符号210のポンプによる最大排出時点T1から図面符号212のポンプによる最大排出時点T3に切り換えられる区間が図3に示したように明確に区別され、かつ長いので、2つのポンプ210,212の吸入及び排出行程の繰り返しによる脈動現象の発生が非常に明らかで、T1からT3に切り換えられる時点T2での圧力差が著しく大きい。
【0012】
そのため、従来の薬液移送装置200は脈動現象によって薬液移送過程において多様な振動や消音を発生させる短所があり、排出行程の切換時点毎に発生する圧力減少によって薬液の最終排出圧力が不規則になる短所がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような点を解決するためのものであって、薬液を脈動現象無しで一定に供給することができ、かつ、大容量の移送装置の製作が容易であり、薬品の残存がなく、ポンプ交換時の人体に対する危険要因を最小化した薬液移送装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための本発明の一実施例によると、互いに異なる吸入行程時点と排出行程時点を有する3つ以上のポンプを一列に配置したことを特徴とする薬液移送装置が提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施例は、前記ポンプがベローズポンプであり、前記ポンプの吸入口を統合連結する吸入管と前記ポンプの排出口を統合連結する排出管とをさらに含むことが良い。
【0016】
また、本発明の好ましい実施例において、前記ポンプは、ポンプ内部を流動する全ての薬液を残留させることなく排出することができるように、ポンプの吸入口及び排出口が重力方向を向くように設けられることが良い。
【0017】
また、本発明の前述した実施例において、前記ポンプの吸入行程及び排出行程の順序は前記ポンプの配列順序と関係なくなされることが良い。
【0018】
また、本発明の前述した実施例において、前記ポンプの吸入行程及び排出行程の順序を制御する制御手段がさらに含まれることが良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明による薬液移送装置は、脈動現象無しで薬液を供給することができ、従来より一定した供給圧力で薬液を供給することができる。
【0020】
なお、本発明による薬液移送装置は、ポンプ内に薬液が残留しないため、薬液による管理者の安全事故、及びポンプの磨耗や損傷を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の薬液移送装置の主要構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した薬液移送装置の作動装置を示した正面図である。
【図3】図1に示した薬液移送装置の時間による吸入及び排出行程を示した図表である。
【図4】本発明の第1実施例による薬液移送装置の主要構成を示した部分断面図である。
【図5】図4に示した薬液移送装置の平面図である。
【図6】図4に示した薬液移送装置の作動状態を示した側面図である。
【図7】図4に示した薬液移送装置の時間による吸入及び排出行程を示した図表である。
【図8】図4に示した薬液移送装置の他の作動状態を示した側面図である。
【図9】本発明の第2実施例による薬液移送装置の主要構成を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を添付された例示図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
下記の本発明の説明において、本発明の構成要素を示す用語は各々の構成要素の機能を考慮して名づけられたものであるため、本発明の技術的構成要素を限定する意味として理解されてはいけない。
【0024】
図4は本発明の第1実施例による薬液移送装置の主要構成を示した部分断面図であり、図5は図4に示した薬液移送装置の平面図であり、図6は図4に示した薬液移送装置の作動状態を示した側面図であり、図7は図4に示した薬液移送装置の時間による吸入及び排出工程を示した図表である。
【0025】
図4及び図5に示したように、本発明による薬液移送装置100は、ハウジング102、多数のポンプ10,20,30,40、空圧機構70、制御装置60を含む。
【0026】
ハウジング102は多数のポンプ10,20,30,40が直列に設けられるように長く形成された枠であって、薬液が流入される吸入管104と薬液が排出される排出管106とを備える。吸入管104は各々のポンプ10,20,30,40に形成された吸入口12と連結され、排出管106は各々のポンプ10,20,30,40に形成された排出口14と連結される。
【0027】
多数のポンプ10,20,30,40はハウジング102の上方に一列に設けられる。 各々のポンプ10,20,30,40は薬液を吸入するための吸入口12と、薬液を排出するための排出口14とを有し、往復運動するベローズ又は隔膜を通じて薬液をポンプ10,20,30,40の内部に流入した後、一定した圧力で排出させる。吸入口12と排出口14には薬液が特定方向にのみ流れるように、それぞれ逆流防止弁50が設けられる。すなわち、吸入口12には吸入管104からポンプ10,20,30,40内部への流動のみなされるようにする逆流防止弁50が設けられ、排出口14にはポンプ10,20,30,40から排出管106への流動のみなされるようにする逆流防止弁50が設けられる。
【0028】
一方、本実施例にはポンプ10,20,30,40の数が4つと示されているが、本発明による薬液移送装置100が設けられる製造ラインの大きさ及び用途に応じてその数が増減され得る。なお、本実施例では吸入管104と排出管106の配置及び構成を簡素化するために、多数のポンプ10,20,30,40が一列に配置された形態で示されているが、ポンプ10,20,30,40に吸入された殆どの薬液が重力によって容易に抜け出るように、吸入口12と排出口14が重力方向(すなわち、下方)を向くようにする範疇内で、多数のポンプ10,20,30,40をジグザグ形態、又はポンプの設置効率を増大させることができる他の形態に変更して設けることができる。参考に、本発明の薬液移送装置100で構成される多数のポンプは、作動周期が同一であることが好ましい。
【0029】
空圧機構70はポンプ10,20,30,40にそれぞれ設けられる。空圧機構70は制御装置60の制御信号によって各々のポンプ10,20,30,40に空気を供給するか、ポンプ10,20,30,40から空気を排出させて、ポンプ10,20,30,40のベローズ又は隔膜を往復運動させる。参考に、本実施例では空圧機構70を使用すると説明したが、同一又は類似した機能を有する油圧機構を使用することもできる。
【0030】
制御装置60はハウジング102又は薬液移送装置100の一部分に設けられる。制御装置60はポンプ10,20,30,40の空圧機構70をそれぞれ制御し、ポンプ10,20,30,40のそれぞれの吸入及び排出行程時点を既設定された順序又は入力されたプログラムのとおりに調整する。参考に、本実施例による制御装置60はハウジング102に配置されたポンプ10,20,30,40の順序によって吸入行程及び排出行程が順次行われるように、空圧機構70及びポンプ10,20,30,40を制御する(図6参照)。
【0031】
次に、本発明による薬液移送装置100の作動状態を図6及び図7に基づいて説明する。
【0032】
本発明の薬液移送装置100は外部から作動開始信号を受信すると、制御装置60がこれを感知してポンプ10,20,30,40の作動時点を既設定されたプログラム又は既設定された論理演算によって決定する。すなわち、制御装置60は、ポンプ10,20,30,40の吸入及び排出行程周期を薬液移送装置100に構成されたポンプの数で割り、ここで得られた値をポンプ10,20,30,40の作動偏差値に設定して、ポンプ10,20,30,40を時差(すなわち、作動偏差値)を持たせて作動させる。
【0033】
そうすると、ポンプ10,20,30,40は制御装置60が設定した順序によって作動を開始する。すなわち、図6及び図7に示したように、制御装置60が1順位として設定したポンプ10の吸入行程が開始された以後、H1時点(ポンプ10開始時点から作動偏差値だけ過ぎた時点)でポンプ20の吸入行程が行われ、H2時点(ポンプ20開始時点から作動偏差値だけ過ぎた時点)でポンプ30の吸入行程が行われ、 H3時点(ポンプ30開始時点から作動偏差値だけ過ぎた時点)でポンプ40の吸入行程が行われるように作動する。
【0034】
これにより、ポンプ10,20,30,40の排出行程時点(H2,H3,H4,H5)は図7に示したように、作動偏差値だけ時差を持って発生する。ここで、ポンプ10の排出行程がなされた時点(H2)からポンプ10の次の排出行程がなされる時点(H6)までの間に、残り3つのポンプ20,30,40の排出行程時点(H3,H4,H5)が連続的に存在するため、排出行程時点(H2,H3,H4,H5)の間での排出圧力偏差が小さくなる。
【0035】
従って、本発明によると、多数のポンプを使用して薬液を移送するときに発生する脈動現象が顕著に少なくなる。
【0036】
なお、本発明の薬液移送装置100は、全てのポンプ10,20,30,40が吸入口12と排出口14が下方を向くように設けられているため、ポンプ内部に薬液が殆ど残留しない。
【0037】
従って、本発明によると、薬液のポンプ内残留によるポンプの寿命短縮や損傷を効果的に防止することができる。
【0038】
次に、第1実施例の他の作動方法を説明する。図8は図4に示された薬液移送装置の他の作動状態を示した側面図である。
【0039】
第1実施例の他の作動方法は、ポンプ10,20,30,40の作動順序において先に説明した作動方法と差異を有する。本作動方法は、隣接したポンプ10,20,30,40を連続して作動させる場合、吸入管104及び排出管106の流動が不安定になるか、ハウジング102の端部に位置したポンプ30,40に円滑な薬液供給がなされない点を考慮し、ポンプ10,20,30,40の作動順序を変更することによって、このような問題を解決しようとしたものである。従って、このような技術思想によると、ポンプ10,20,30,40が配置順序によって作動しない範疇内で、いかなる変形も可能である。
【0040】
次に、本発明の第2実施例を説明する。図9は本発明の第2実施例による薬液移送装置の主要構成を示した側面図である。参考に、本実施例の構成は先に説明された実施例の構成と同一であるため、それぞれの構成要素に対して同一な図面符号を使用し、これらの構成要素に対する詳細な説明は省略する。
【0041】
第2実施例はポンプ10,20,30,40のサイズにおいて差異を有する。第2実施例のポンプ10,20,30,40は互いに異なるサイズを有し、ハウジング102の先方から後方に行くほど、そのサイズ(すなわち、容量)が大きくなる。
【0042】
本発明の実施例のように多数のポンプ10,20,30,40を直列に設置する場合、先方に位置したポンプ10と後方に位置したポンプ40の吸入力が多少差異を有する。これは、ポンプの設置位置によって先方と後方に供給される薬液の実質的な量、及びポンプの吸入力負荷に多少差異があるためである。たとえ、このような現象は薬液の供給において小さいながらも偏差を発生させるが、精密な半導体製造工程において誤差発生の可能性を残すため、なるべく抑制又は最小化することが良い。
【0043】
本実施例はこのような点を鑑みて、ハウジング102の先方から後方に行くほどポンプ10,20,30,40の容量が大きくなるようにした。このような構成は最前方ポンプ10と最後方ポンプ40の実質的な薬液の吸入量及び排出量をほぼ同一にするため、先に言及した問題を最小化することができる。
【0044】
参考に、第2実施例は多数(好ましくは4つ以上)のポンプが直列形態に設けられる場合に適合したものであるため、ポンプの設置数が少なく、直列形態でない場合には適用しなくても良い。
【0045】
本発明は、以上で説明した実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者なら、添付の特許請求範囲に記載された本発明の技術的思想の要旨から逸脱しない範囲でいくらでも多様に変更して実施することができる。
【符合の説明】
【0046】
100 薬液移送装置
102 ハウジング
104 吸入管
106 排出管
10,20,30,40ポンプ
12 吸入口
14 排出口
50 逆流防止弁
60 制御装置
70 空圧又は油圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる吸入行程時点と排出行程時点を有する3つ以上のポンプを一列に配置したことを特徴とする薬液移送装置。
【請求項2】
前記ポンプはベローズポンプであり、
前記ポンプの吸入口を統合連結する吸入管と、前記ポンプの排出口を統合連結する排出管とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の薬液移送装置。
【請求項3】
前記ポンプは、ポンプ内部を流動する全ての薬液を残留させることなく排出できるよう、ポンプの吸入口及び排出口が重力方向を向くように設けられることを特徴とする請求項2に記載の薬液移送装置。
【請求項4】
前記ポンプの吸入行程及び排出行程の順序は、前記ポンプの配列順序と関係なくなされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬液移送装置。
【請求項5】
前記ポンプの吸入行程及び排出行程の順序を制御する制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の薬液移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−501399(P2012−501399A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524877(P2011−524877)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005329
【国際公開番号】WO2010/024488
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(506036389)シーアンドジーハイテク株式会社 (3)
【氏名又は名称原語表記】C & G HI TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】150−1 Seongju−ri, Wongok−myeon, Anseong−si, Gyeonggi−do, Korea
【Fターム(参考)】