説明

蛍光体及び蛍光体含有組成物、並びに、それを用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置

【課題】発光ピークの半値幅が広く、発光装置の色再現性の向上に有効な、青色〜黄緑色に発光する新規アルミノシリケート系蛍光体を提供する。
【解決の手段】下記式(I)で表されることを特徴とする蛍光体。
M1(1−a)AlSiM2 (I)
(式中、Rは少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有する付活元素を示し、M1はアルカリ金属元素を示し、M2は少なくとも酸素を含有する、酸素及び窒素からなる群より選ばれる元素を示し、aは、0<a<0.5を満たす数値を示し、xは、0.5≦x≦1.5を満たす数値を示し、yは、0.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、zは、3≦z≦7を満たす数値を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルミノシリケート系蛍光体及び蛍光体含有組成物、並びに、それを用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、第1の発光体である半導体発光素子等の励起光源からの光の照射によって青色〜黄緑色の領域に発光を有するアルカリ金属アルミノシリケート蛍光体及びこの蛍光体を含む蛍光体含有組成物、並びに、この蛍光体を用いた発光装置、照明装置及び画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、青色LED又は近紫外LEDと蛍光体とを組み合わせてディスプレイ用や照明用の発光装置として用いることが知られている。照明及びディスプレイ用途においてしばしば用いられる白色光は、光の加算混合原理により、青色、緑色及び赤色の発光を組み合わせることによって得るのが一般的である。
【0003】
このうち、該発光装置に用いられる青色蛍光体としては、BaMgAl1017:EuやSr10(POCl等の蛍光体がよく知られている(特許文献1参照)。これらの蛍光体の発光ピークの半値幅は通常60nm以下である。
【0004】
また、公知のアルミノシリケート系蛍光体としては、Eu付活アルカリ土類金属アルミノシリケートとして、メリライト構造を有する酸化物蛍光体であるCa2(1−X)Sr2XAlSiO:Eu2+(0≦X≦1)が知られている。この蛍光体は、アルカリ土類金属元素であるCa及びSrの量により、青緑〜黄緑の範囲で発光を変化させることができる蛍光体である(非特許文献1)。
【特許文献1】特表2000−509912号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.vol.B92,pp.195-198(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような青色LED又は近紫外LEDと蛍光体とを組み合わせてなるディスプレイ用や照明用の発光装置では、常により高い性能を有する蛍光体の要望があるため、既存の青色蛍光体とは異なる組成の新規蛍光体の出現が望まれている。また、発光装置を照明用として用いる場合には、より発光ピークの半値幅の広い蛍光体を用いることが、高い色再現性を示す一因となるため、半値幅の広い発光スペクトルを示す新規蛍光体の出現が望まれていた。
【0006】
従って、本発明は、発光ピークの半値幅が広く、発光装置の色再現性の向上に有効な、青色〜黄緑色に発光する新規アルミノシリケート系蛍光体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、アルカリ金属アルミノシリケートに着目して、鋭意検討した結果、発光スペクトルの半値幅が広い、これまでに知られていない全く新しいアルカリ金属アルミノシリケート系蛍光体を見出した。また、特にこの蛍光体を部分窒化すると、もとの酸化物蛍光体よりも短波長域に波長がシフトし、青色蛍光体として使用可能であることも見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
【0009】
(1) 下記式(I)で表されることを特徴とする蛍光体。
M1(1−a)AlSiM2 (I)
(式中、Rは少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有する付活元素を示し、
M1はアルカリ金属元素を示し、
M2は少なくとも酸素を含有する、酸素及び窒素からなる群より選ばれる元素を示し、
aは、0<a<0.5を満たす数値を示し、
xは、0.5≦x≦1.5を満たす数値を示し、
yは、0.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、
zは、3≦z≦7を満たす数値を示す。)
【0010】
(2) M2が酸素及び窒素からなることを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
【0011】
(3) M2が酸素からなることを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
【0012】
(4) yが1.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、zが5≦z≦7を満たす数値を示すことを特徴とする(2)又は(3)に記載の蛍光体。
【0013】
(5) (1)ないし(4)の何れかに記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【0014】
(6) 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置であって、該第2の発光体として、(1)ないし(4)の何れかに記載の蛍光体の1種以上を含む第1の蛍光体を含有することを特徴とする発光装置。
【0015】
(7) 前記第2の発光体として、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる1種以上の蛍光体を含む第2の蛍光体を含有することを特徴とする(6)に記載の発光装置。
【0016】
(8) 前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする(7)に記載の発光装置。
【0017】
(9) 前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、500nm以上570nm未満の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする(7)に記載の発光装置。
【0018】
(10) (6)ないし(9)の何れかに記載の発光装置を備えることを特徴とする照明装置。
【0019】
(11) (6)ないし(9)の何れかに記載の発光装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蛍光体は、近紫外発光の半導体発光素子で励起され、青色〜黄緑色の範囲で発光する。特にアニオン元素であるM2が酸素である場合には、発光ピークの半値幅が100nm以上と非常に広い値を有する蛍光体であり、照明用途に好ましい。また、アニオン元素であるM2が酸素及び窒素である場合には、ディスプレイ用及び照明用の青色蛍光体として使用できるが、従来ディスプレイ用及び照明用に使用されている青色蛍光体に比べて、その発光ピークの半値幅が広いことから、照明用途として特に好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
なお、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110及びZ8701)。
【0023】
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表す。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−αSrαAl:Eu」と、「Sr1−αBaαAl:Eu」と、「Ca1−αBaαAl:Eu」と、「Ca1−α−βSrαBaβAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<α<1、0<β<1、0<α+β<1)。
【0024】
[1.蛍光体]
[1−1.蛍光体の組成]
本発明の蛍光体は、下記式(I)で表される化学組成を有することを特徴とする。
【0025】
M1(1−a)AlSiM2 (I)
(式中、Rは少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有する付活元素を示し、
M1はアルカリ金属元素を示し、
M2は少なくとも酸素を含有する、酸素及び窒素からなる群より選ばれる元素を示し、
aは、0<a<0.5を満たす数値を示し、
xは、0.5≦x≦1.5を満たす数値を示し、
yは、0.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、
zは、3≦z≦7を満たす数値を示す。)
【0026】
上記式(I)において、Rは少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有する付活元素である。
【0027】
上記Rとしては、少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有していれば特に限定されないが、Eu、Ce、Tb及びMn以外にRとして含まれ得る元素として、好ましくは、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er及びTmからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素が挙げられる。このうち好ましくは、Pr、Sm又はTmが挙げられる。なお、Rとしては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
【0028】
中でも、Rは、少なくともEu、Ce及びTbからなる群より選ばれる元素を含有していることが好ましく、さらに発光量子効率及び半値幅の点で少なくともEu又はCeを含有していることが好ましく、特には発光ピーク波長の点で少なくともEuを含有していることが好ましい。
【0029】
また、R中におけるEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素の含有量としては、通常50モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは95%以上であり、特にはRは実質的にEuのみからなることが好ましい。
【0030】
Rはカチオンとして複数の価数を有し得るが、実際に発光に寄与するのはそのうちの1つであることが多い。例えば、Euの場合には、本発明の蛍光体中において、2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在することになるが、このうち2価のカチオンが発光に寄与している。従って、2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。RがEuである場合、具体的には、全Eu量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0031】
なお、本発明の蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Eu原子のL3吸収端を測定すると、Eu2+とEu3+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、本発明の蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。
【0032】
上記式(I)において、M1はLi、Na、K、Rb及びCs等からなる群より選ばれるアルカリ金属元素であり、このうち安定性及び反応性の点からNa、K、Rb及びCsからなる群より選ばれるアルカリ金属元素が好ましく、より好ましくはRb及び/又はCsである。
【0033】
上記M1としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよいが、このうち少なくともCsを含有するのが好ましい。
このとき、M1として、Csのような原子量の大きい元素が多く存在することにより、結晶中の格子振動が抑えられ、発光ピーク強度が大きくなるものと考えられる。従って、M1中のCsの存在割合としては、50モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは実質的にMIの全てがCsである場合である。
【0034】
上記式(I)において、M2は少なくとも酸素を含有する酸素及び窒素からなる群より選ばれる元素である。
【0035】
上記M2が酸素及び窒素を含有する場合、式(I)で表される蛍光体は酸窒化物蛍光体となり、M2が酸素からなる場合、式(I)で表される蛍光体は酸化物蛍光体となる。
M2中の窒素原子の存在割合としては、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0036】
また、上記式(I)で表される蛍光体において、aは、付活元素Rの含有割合を示し、0<a<0.5の数値である。aはこのうち好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.005以上である。一方、付活元素Rの含有割合が大きすぎると濃度消光が生じる場合もあるため、aは好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。
【0037】
ここで、本発明の蛍光体の基本的な組成としては、RM1(1−a)AlSiO及びRM1(1−a)AlSiが挙げられる。
本発明の蛍光体は、1価のカチオンであるアルカリ金属元素M1が、2価又は3価の付活元素Rと置換するものであり、その価数バランスは、SiとAlとの置換及び/又は酸素と窒素との置換により調整されるものと考えられる。また、蛍光体中の結晶欠陥による価数バランスの変化も上記と同様にして調整されるものと考えられる。
従って、上記式(I)において、xは0.5≦x≦1.5を満たす数値である。xは、このうち、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、また、1.3以下、より好ましくは1.1以下である。
【0038】
また、上記式(I)において、yは0.5≦y≦2.5を満たす数値であり、zは3≦z≦7を満たす数値である。
ここで、yが0.5≦y≦1.5を満たす数値の場合には、zは3≦z≦5を満たす数値となり、yが1.5≦y≦2.5を満たす数値の場合には、zは5≦z≦7を満たす数値となる。
このうち、yとして好ましくは、0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、また、1.2以下、より好ましくは1.1以下であるか、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上であり、また、2.3以下、より好ましくは2.1以下である。
【0039】
ここで、RM1(1−a)AlSiO及びその部分窒化物の結晶型は立方晶又は斜方晶であり、RM1(1−a)AlSi及びその部分窒化物の結晶型はPollucite構造を有する斜方晶である。
【0040】
なお、上記式(I)においては、蛍光体の結晶の電荷バランスの点で当該蛍光体の性能に悪影響を与えない限りにおいて、AlやSiの一部にTi、Ge等の4価カチオンとなりうる金属元素やB、Ga等の3価のカチオンとなりうる金属元素が混入していても良い。また、同様にM2の一部にS又はCl、F等のハロゲン原子等の1価又は2価のアニオンとなりうる元素が混入していても良い。その混入量としては、Al、Si、M2に対して、それぞれ通常10原子%以下、好ましくは5原子%以下である。
【0041】
[1−2.蛍光体の特性]
上述の組成で表される本発明の蛍光体は、以下に説明する特性を有する。
【0042】
[1−2−1.発光スペクトルに関する特性]
本発明の蛍光体は、近紫外領域の波長の光(具体的には、波長365nm)を照射して、後述の方法で発光スペクトルを測定した場合に、以下の特性を有することが好ましい。
【0043】
まず、本発明の蛍光体は、M2が酸素のみからなる場合には、当該発光スペクトルにおけるピーク波長λ(nm)が、通常450nm以上、好ましくは470nm以上で、通常600nm以下の範囲に存在する。
また、M2が酸素及び窒素からなる場合には、酸素のみからなる場合に比べてその発光波長が短波長側にシフトする。また、発光強度も増加する傾向にある。この場合の発光ピーク波長は、NによるOのサイトの置換量にもよるが、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下で、通常420nm以上の青色蛍光体となる。
上記酸窒化物蛍光体を青色蛍光体として用いる場合には、M2中の窒素原子の存在割合としては、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下であり、通常0.01モル%以上である。
【0044】
また、本発明の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する。)が、通常80nm以上、中でも100nm以上、更には120nm以上、また、通常220nm以下である。本発明の蛍光体は、このように半値幅FWHMが広いため、照明用として使用する場合により好ましい。特にM2中における酸素の含有量が多い程、半値幅が大きくなる傾向がある。従って、照明用蛍光体として用いる場合には、通常、M2中の酸素原子の存在割合としては、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上である。通常、M2が全て酸素の場合に最も半値幅が広くなる。
【0045】
(発光スペクトルの測定方法)
本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及び発光ピークの半値幅の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、受光素子として光電子増倍管を備える蛍光分光光度計F−4500型((株)日立製作所製)を用いて行うことができる。
【0046】
[1−2−2.励起スペクトルの特性]
本発明の蛍光体の励起波長は特に限定されないが、通常250nm以上、中でも300nm以上、また、通常430nm以下、中でも410nm以下、更には400nm以下の波長範囲の光で励起可能であることが好ましい。例えば、近紫外領域の光(波長範囲:300nm以上420nm以下)で励起可能であれば、半導体発光素子等を第1の発光体とする発光装置に好適に使用することができる。
【0047】
(励起スペクトルの測定方法)
励起スペクトルの測定は、室温、例えば25℃において、蛍光分光光度計F−4500型((株)日立製作所製)を用いて測定することができる。具体的には、発光スペクトルのピーク波長をモニター波長とし、200nm以上500nm以下の波長範囲の励起スペクトルを測定する。
【0048】
[1−2−3.発光色]
本発明の蛍光体の発光色は、JIS Z8701に基づく色度座標値に基づくJISZ8110上の色度座標図において、xとして通常0.1以上0.35以下、yが通常0.1以上0.5以下の範囲における白、緑、青緑及び青の領域の発光色を示す。中でも好ましくは、白、緑味の白、うすい緑、うすい青緑、うすい青及び青の領域の発光色を示す。
【0049】
[1−2−4.温度特性]
本発明の蛍光体は、通常、温度特性にも優れ、昇温時の発光ピーク強度維持率にも優れるものである。具体的には、405nmの波長の光を照射した場合の、20℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する、120℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合で表される発光ピーク強度維持率が、通常60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上である。
なお、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を超えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
【0050】
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度維持率に関してだけでなく、昇温時の輝度維持率の点からも優れたものである。具体的には、405nmの波長の光を照射した場合の、20℃での輝度に対する120℃での輝度の割合で表される輝度維持率が、通常60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上である。
【0051】
(温度特性の測定方法)
上記の温度特性は、例えば、発光スペクトル装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。
ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。このとき蛍光体の表面温度が各測定温度で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した波長405nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度、輝度及び色度座標値を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
【0052】
[1−2−5.耐水性]
本発明の蛍光体は、好ましくは水に12時間程度浸漬しても構造が壊れることはない優れた耐水性を示す。
【0053】
[1−2−6.重量メジアン径D50
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集する傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0054】
なお、本発明の蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定して得られる、重量基準粒度分布曲線から求められる値である。具体的には、分散剤を含む水溶液中に蛍光体を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−300」)により、粒径範囲0.1μm以上600μm以下にて測定して得られる値である。
重量メジアン径D50とは、この重量基準粒度分布曲線において、積算値が50%のときの粒径値を意味する。
【0055】
上述したような重量メジアン径D50を有する蛍光体は、後述の[1−3−6.後処理]の項に記載の粉砕及び分級処理を行ない、必要に応じて洗浄、乾燥、表面処理等を行うことにより、得ることができるものである。
【0056】
[1−2−7.内部量子効率等]
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。ここで、内部量子効率とは、蛍光体が吸収した励起光の光子数に対する発光した光子数の比率を意味する。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にある。
【0057】
本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。吸収効率が低いと発光効率が低下する傾向にある。
【0058】
また、本発明の蛍光体の外部量子効率としては、通常0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。外部量子効率が小さすぎると、高発光強度の発光素子を設計することが困難になる可能性がある。
【0059】
(吸収効率、内部量子効率、及び外部量子効率の測定方法)
以下に、蛍光体の吸収効率αq、内部量子効率ηi、及び、外部量子効率ηo、を求める方法を説明する。
【0060】
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などの集光装置に取り付ける。積分球などの集光装置を用いるのは、蛍光体サンプルで反射したフォトン、及び蛍光体サンプルから蛍光現象により放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0061】
この積分球などの集光装置に蛍光体を励起するための発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が例えば波長が405nmや455nmの単色光となるようにフィルターやモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整がなされる。この発光ピーク波長が調整された発光源からの光を、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、発光(蛍光)及び反射光を含むスペクトルを分光測定装置、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000、MCPD7000などを用いて測定する。ここで測定されるスペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す。)のうち、蛍光体に吸収されなかった反射光と、蛍光体が励起光を吸収して蛍光現象により発する別の波長の光(蛍光)が含まれる。すなわち、励起光近傍領域は反射スペクトルに相当し、それよりも長波長領域は蛍光スペクトル(ここでは、発光スペクトルと呼ぶ場合もある)に相当する。
【0062】
吸収効率αqは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0063】
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(波長450nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ。)等の反射板を、測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の積分球などの集光装置に取り付け、該分光測定装置を用いて反射スペクトルIref(λ)を測定する。この反射スペクトルIref(λ)から求めた下記(式4)の数値は、Nに比例する。
【0064】
【数1】

【0065】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよい。
蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式5)で求められる量に比例する。
【0066】
【数2】

【0067】
ここで、I(λ)は、吸収効率αqを求める対象としている蛍光体サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式5)の積分区間は(式4)で定めた積分区間と同じにする。このように積分区間を限定することで、(式5)の第二項は、測定対象としている蛍光体サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、測定対象としている蛍光体サンプルから生ずる全フォトンのうち蛍光現象に由来するフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式4)及び(式5)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
以上より、αq=Nabs/N=(式5)/(式4)と求められる。
【0068】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式6)で求められる量に比例する。
【0069】
【数3】

【0070】
この時、積分区間は、蛍光体サンプルの蛍光現象に由来するフォトンの有する波長範囲に限定する。蛍光体サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式6)の積分区間の下限は、(式4)の積分区間の上端を取り、上限は、蛍光に由来のフォトンを含むのに必要十分な範囲とする。
以上により、内部量子効率ηiは、ηi=(式6)/(式5)と求められる。
【0071】
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、吸収効率αqを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで外部量子効率ηoを求める。あるいは、ηo=(式6)/(式4)の関係から求めることもできる。ηoは、蛍光に由来するフォトンの数NPLを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0072】
[1−3.蛍光体の製造方法]
以下に本発明の蛍光体を得るための、原料及び製造法等について説明する。
【0073】
本発明の蛍光体の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記式(I)における、Rの原料(以下適宜「R源」という。)、M1の原料(以下適宜「M1源」という。)、金属元素M2の原料(以下適宜「M2源」という。)、及び、Alの原料(以下適宜「Al源」という。)及びSiの原料(以下適宜「Si源」という。)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
【0074】
[1−3−1.蛍光体原料]
本発明の蛍光体の製造に使用される蛍光体原料(即ち、R源、M1源、M2源、Al源及びSi源)としては、R、M1、M2、Al及びSiの各元素の金属、合金、イミド化合物、酸窒化物、窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。蛍光体原料は、これらの化合物の中から、本発明のアルミノシリケートへの反応性や、焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0075】
上記R源のうち、Eu源の具体例は、Eu、Eu(SO・8HO、Eu(C・10HO、EuCl、EuCl・6HO、Eu(NO・6HO、EuN、EuNH、EuF等が挙げられる。中でもEu、EuFが好ましく、特に好ましいのはEu2O3である。
【0076】
また、Ce源の具体例としては、CeO、Ce、Ce(SO・8HO、Ce(SO・4HO、Ce(C・10HO、CeCl・7HO、Ce(NO・6HO、Ce(OH)・nHO、Ce(CO・8HO、CeF等が挙げられる。中でもCeO、Ce(C・9HO、CeFが好ましく、特に好ましいのはCeOである。
Tb源の具体例としては、Tb、Tb(SO・8HO、Tb(C・10HO、TbCl・6HO、Tb(NO・6HO、TbF等が挙げられる。中でもTb、TbFが好ましく、特に好ましいのはTbである。
Mn源としては、MnO、Mn、Mn、MnCO、MnC・2HO、MnFが挙げられる。中でもMnO、Mn、MnCOが好ましく、特に好ましくはMnCO、MnOである。
【0077】
上記M1源の具体例としては、CsO、CsOH・HO、CsCO、CsHCO、CsNO、CsSO、Cs(OCOCH)、CsF、CsCl、CsBr、CsI等が挙げられる。このうち好ましくは、炭酸塩や炭酸水素塩である。
【0078】
また、Li源、Na源、K源、Rb源等のその他のM1源の具体例としては、Cs源の具体例として挙げた各化合物において、CsをそれぞれLi、Na、K、Rb等の各元素に置き換えた化合物が挙げられる。
【0079】
Al源の具体例としては、Al、Al(NO・9HO、Al(OH)、Al(SO・9HO、AlNなどが挙げられる。このうち、Alは、α型又はγ型のいずれであっても良い。この中で好ましいのは、反応性が高いという観点でγ型のAlやAl(OH)である。
【0080】
上記Si源の具体例としては、SiO又はSiを用いることが好ましい。また、焼成工程でSiOとなる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、SiO、HSiO、Si(OCOCH等が挙げられる。
また、上記原料は、反応性の点から、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。
【0081】
なお、上述したR源、M1源、M2源、Al及びSi源は、それぞれ、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0082】
また、M2源としては、上記R源、M1源、M2源、Al及びSi源となる原料化合物中に含まれる酸素原子や窒素原子及び/又は焼成雰囲気中に存在する酸素原子や窒素原子が挙げられる。
【0083】
[1−3−2.蛍光体の製造方法:混合工程]
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、これらを混合してから焼成することにより、本発明の蛍光体が得られる。なお、この際、混合はボールミル等を用いて十分に混合することが好ましい。
【0084】
上記混合手法としては、特に限定はされず、具体的には、下記(A)及び(B)として挙げる方法等の公知の手法を任意に用いることができる。また、これらの各種条件については、例えば、ボールミルにおいて二種の粒径の異なるボールを混合して用いる等、公知の条件が適宜選択可能である。
【0085】
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に水、エタノール等の溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
【0086】
また、上記混合・粉砕時には、必要に応じて、蛍光体原料を篩いにかけても良い。この場合、各種市販の篩いを用いることが可能であるが、金属メッシュ等の金属製のものよりもナイロンメッシュ等の樹脂製のものを用いる方が、不純物混入防止の点で好ましい。
【0087】
蛍光体原料の混合は、蛍光体原料の物性に応じて、上記湿式又は乾式のいずれかを任意に選択すればよい。例えば窒化物原料を用いる場合、窒化物原料が水分により劣化しない
ように、水分管理されたNグローブボックスでミキサー混合することが好ましい。
特に、蛍光体原料が潮解性を有するものの場合には、混合を行う際、その雰囲気中の水分は、10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、10ppm以下が更に好ましく、1ppm以下が特に好ましい。また、酸素は、1体積%以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
【0088】
[1−3−3.蛍光体の製造方法:焼成工程]
蛍光体原料を混合して得られた原料混合物を焼成することにより、蛍光体を得る。この焼成は、蛍光体原料混合物をるつぼ等の容器に充填して、所定温度及び所定雰囲気下で行うことが好ましい。
【0089】
焼成容器としては、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなるるつぼ又はトレイ等の耐熱容器を用いる。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシア、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。ここで、石英製の耐熱容器は、比較的低温、すなわち、1200℃以下での熱処理に使用することができ、好ましい使用温度範囲は1000℃以下である。
【0090】
このような耐熱容器のうち、好ましくは窒化ホウ素製、アルミナ製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられる。
【0091】
またここで、蛍光体原料として金属炭酸塩を用いている場合には、脱離する二酸化炭素により焼成炉が傷まないよう、多段焼成の形式で焼成を行い、一次焼成工程で少なくとも金属炭酸塩の一部を金属酸化物に変換することが好ましい。
【0092】
このような蛍光体原料混合物を焼成する場合、通常1800℃を超える焼成温度では焼成粉が焼結してしまい発光強度が低くなる場合があるが、1400℃前後の焼成温度では結晶性の良好な粉体が得られる。したがって、本発明の蛍光体を製造するための焼成温度としては、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、より好ましくは1200℃以上の温度であり、また、通常1800℃以下、好ましくは1600℃以下、より好ましくは1500℃以下の温度である。
【0093】
焼成雰囲気としては特に制限されないが、通常、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気下で行われる。ここで、前述の通り、付活元素RとしてEuを含有する場合、その価数としては、2価のものが多い方が好ましいため、還元雰囲気であるのが好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0094】
不活性ガス及び還元性ガスとしては、例えば、一酸化炭素、水素、アンモニア、窒素、アルゴン等が挙げられる。このうち、製造コストの点からは、窒素ガス雰囲気下であることが好ましく、より好ましくは水素ガス含有窒素ガス雰囲気下である。上記窒素(N)ガスとしては、純度99.9%以上を使用することが好ましい。水素含有窒素を用いる場合、電気炉内の酸素濃度を20ppm以下に下げることが好ましい。さらに、雰囲気中の水素含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、また、5体積%以下が好ましい。雰囲気中の水素の含有量は、高すぎると安全性が低下する可能性があり、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できない可能性があるからである。
【0095】
また、本発明の蛍光体が酸窒化物蛍光体の場合には、アンモニア含有雰囲気下で焼成を行う工程を有することが好ましい。このときにアンモニアガスを単独で用いても良いが、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素ガスと共に用いても良い。
本発明の蛍光体が酸窒化物蛍光体である場合に、窒素と水素の混合ガスや、アルゴンと水素の混合ガスのような還元雰囲気を用いることもできる。この中では窒素と水素の混合ガスがより好ましい。この場合、原料に窒化珪素や窒化アルミニウムのような窒化物原料を含むことが好ましい。
【0096】
また、焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。また、焼成時間は長い方が好ましいが、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0097】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるため特に限定されないが、通常1×10−5Pa以上、好ましくは1×10−3Pa以上、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、また、上限としては、通常5GPa以下、好ましくは1Gpa以下、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。このうち、工業的には大気圧〜1MPa程度、特には大気圧下であるとコスト及び手間の点で簡便であり好ましい。
【0098】
[1−3−4.フラックス]
本発明の蛍光体は、その焼成工程において、反応系にフラックスを共存させても良い。フラックスの種類は特に制限されないが、例としては、NHCl、NHF・HF等のハロゲン化アンモニウム;LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、LiF、NaF、KF、RbF、CsF等のアルカリ金属ハロゲン化物;CaCl、BaCl、SrCl、CaF、BaF、SrF等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物;B、HBO、NaB等のホウ素酸化物、ホウ酸及びホウ酸塩化合物;LiPO、NHPO等のリン酸塩化合物;AlF等のハロゲン化アルミニウム;ZnCl、ZnFといったハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の亜鉛化合物;Bi等の周期表第15族元素化合物などが挙げられる。このうち好ましくはハロゲン化物であり、この中でも、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、Znのハロゲン化物が好ましい。また、これらのハロゲン化物の中でも、フッ化物、塩化物が好ましい。
【0099】
フラックスの使用量は、蛍光体原料の種類やフラックスの種類等によっても異なるが、蛍光体原料に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、また、通常20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の範囲である。フラックスの使用量が少な過ぎるとフラックスの効果が現れない可能性があり、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こしたりする可能性がある。
【0100】
なお、フラックスは一種のみを使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、フラックスのうち潮解性のあるものについては無水物を用いることが好ましく、蛍光体を多段焼成により製造する場合にはより後段の焼成時にフラックスを用いることが好ましい。
【0101】
[1−3−5.多段焼成]
前述の如く、蛍光体原料混合物の焼成工程は一段ではなく多段に分割して行なってもよい。例えば、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから、二次焼成、三次焼成といった後段の焼成工程に導入してもよいし、前述の蛍光体原料の一部を混合焼成したものを粉砕し、そこに残りの蛍光体原料を混合して焼成するという態様をとることもできる。
【0102】
一次焼成の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上であり、また、通常1600℃以下、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下の範囲である。
【0103】
ここで、粒度の揃った蛍光体を得るためには、一次焼成温度を低く設定して粉体状態で固相反応を進めることが好ましい。一方、高輝度の蛍光体を得るためには、一次焼成温度を高く設定して溶融状態で原料が十分に混合して反応した後に二次焼成で結晶成長させることが好ましい。
【0104】
一次焼成の時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0105】
二次焼成以降の焼成における温度、時間等の条件は、基本的に上述の[1−3−3.蛍光体の製造方法:焼成工程]の項に記載した条件と同様である。ここで特に酸窒化物蛍光体の焼成の場合には、より後段の工程でアンモニア含有雰囲気での焼成を行うことが好ましい。
なお、フラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成以降の焼成前に混合してもよい。また、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成以降とで変更してもよい。
【0106】
[1−3−6.後処理]
上述の焼成工程の加熱処理後は、必要に応じて、粉砕、洗浄、乾燥、分級処理等の後処理がなされる。
【0107】
〔粉砕処理〕
粉砕処理は、例えば、得られた蛍光体が所望の粒径になっていない場合に、焼成物に対して行うことが好ましい。粉砕処理手法としては、特に限定されないが、例えば、原料の混合工程の説明の項に記載した乾式粉砕方法及び湿式粉砕方法が使用できる。
【0108】
〔洗浄処理〕
洗浄処理は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などで行うことができる。また、使用されたフラックス等の蛍光体表面に付着した不純物相を除去し発光特性を改善するなどの目的のために、酸性水溶液、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、又は酢酸などの有機酸の水溶液を使用することもできる。この場合、酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
【0109】
洗浄の程度としては、洗浄後の蛍光体を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液のpHが中性(pH7〜9程度)であることが好ましい。この上澄み液が塩基性又は酸性に偏っていると、後述の液体媒体等と混合するときに液体媒体等に悪影響を与えてしまう可能性があるためである。
【0110】
また、上記洗浄の程度は、洗浄後の蛍光体を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液の電気伝導度でも表すことができる。前記電気伝導度は、発光特性の観点からは低いほど好ましいが、生産性も考慮すると通常10mS/m以下、好ましくは5mS/m以下、より好ましくは4mS/m以下となるまで洗浄処理を繰り返し行なうことが好ましい。
【0111】
ここで、電気伝導度の測定方法としては、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させ、このときの上澄み液の電気伝導度を東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」等を用いて測定する方法が挙げられる。
【0112】
上記の洗浄処理、及び電気伝導度の測定に用いる水としては、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。中でも特に電気伝導度が低いものが好ましく、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下のものを用いる。
なお、電気伝導度の測定は、通常、室温(25℃程度)にて行なう。
【0113】
〔分級処理〕
分級処理は、例えば、水篩や水簸処理を行うか、あるいは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径D5020μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
【0114】
〔表面処理〕
得られた本発明の蛍光体を用いて、後述の方法で発光装置を製造する際には、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は後述する発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために、必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行っても良い。
【0115】
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下、任意に「表面処理物質」と称する。)としては、例えば、有機化合物、無機化合物、及びガラス材料などを挙げることができる。
【0116】
有機化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
無機化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩、燐酸ナトリウムと硝酸カルシウムとの組合せ、等が挙げられる。
ガラス材料としては、例えばホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。
これらの表面処理物質は、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0117】
前記の表面処理により得られる本発明の蛍光体は、表面処理物質の存在が前提であるが、その態様は、例えば下記のものが挙げられる。
(i)前記表面処理物質が連続膜を構成して蛍光体表面を被覆する態様。
(ii)前記表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより蛍光体表面を被覆する態様。
【0118】
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量ないし被覆量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、蛍光体の重量に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。蛍光体に対する表面処理物質量が多すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、少なすぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0119】
また、表面処理により形成される表面処理物質の膜厚(層厚)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下である。この膜厚が厚すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、薄すぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0120】
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば下記のような金属酸化物(酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
即ち、本発明の蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、さらにアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を3分間〜60分間静置した後、スポイト等により蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、120℃〜150℃で10分〜5時間、例えば2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
【0121】
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特開平2−209989号公報、特開平2−233794号公報)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特開平3−231987号公報)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特開平6−314593号公報)、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特開2002−223008号公報)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特開2005−82788号公報)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特開2006−28458号公報)等の公知の方法を用いることができる。
【0122】
また、上記処理の他、公知の蛍光体、例えば、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル、蛍光ランプ、蛍光表示管、X線増感紙等に用いられる蛍光体に関して一般的に知られている技術を利用することができ、目的、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0123】
[1−4.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、蛍光体を使用する任意の用途に用いることができるが、特に、青色光又は近紫外光で励起可能であるという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができ、この場合において、組み合わせる蛍光体の種類や使用割合を調整することで、様々な発光色の発光装置を製造することができる。特に、本発明の蛍光体が青色〜黄緑色蛍光体であることから、例えば、近紫外光を発する励起光源に、本発明の蛍光体と、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)及び/又は橙色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「橙色蛍光体」という)ないしは赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)を組み合わせて、或いは、本発明の蛍光体と、緑色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「緑色蛍光体」という)及び赤色蛍光体を組み合わせて、白色発光装置を製造することができる。
【0124】
発光装置の発光色としては白色に制限されず、必要に応じて、黄色蛍光体、緑色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、他種の青色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整することにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライト等)や照明装置として使用することができる。
【0125】
[2.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
【0126】
本発明の蛍光体含有組成物によれば、本発明の蛍光体を所望の位置に容易に固定することができる。例えば、本発明の蛍光体含有組成物を発光装置の製造に用いる場合、本発明の蛍光体含有組成物を所望の位置に成形し、液体媒体を硬化させれば、当該液体媒体で本発明の蛍光体を封止することができ、所望の位置に本発明の蛍光体を容易に固定することが可能となる。
【0127】
[2−1.蛍光体]
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、一種のみであってもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させても良い。
【0128】
[2−2.液体媒体]
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/または有機系材料が使用できる。
【0129】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0130】
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0131】
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、通常、バインダーである液体媒体全量に対して25重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0132】
[2−3.蛍光体及び液体媒体の含有率]
本発明の蛍光体含有組成物中の蛍光体及び液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。また、蛍光体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少なすぎると流動性がなく取り扱いにくくなる可能性がある。
【0133】
[2−4.その他の成分]
本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させても良い。その成分としては、後述の[3−2.発光装置の構成(封止材料)]の項で封止材料や液体媒体に含有させることができるものとして例示したものが挙げられる。その他の成分は、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0134】
[3.発光装置]
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として前述の[1.蛍光体]の項で記載した本発明の蛍光体の1種以上を含む第1の蛍光体を含有するものである。
【0135】
本発明の蛍光体は、通常は、励起光源からの光の照射下において、青色〜黄緑色領域の蛍光を発する蛍光体である。本発明の蛍光体が青色領域の蛍光を発する蛍光体(以下「本発明の青色蛍光体」と言う場合がある。)の場合には、420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
また、本発明の蛍光体が青緑色から黄緑色領域の蛍光を発する蛍光体の場合には、470nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
第1の蛍光体としての本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0136】
本発明の蛍光体を使用することにより、近紫外領域の発光を有する励起光源(第1の発光体)と組み合わせて色再現性の高い発光装置を得ることができ、更には、照明装置、液晶ディスプレイ用光源等の白色発光装置に使用した場合に優れた発光装置となる。
【0137】
また、本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の[1.蛍光体]の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。
【0138】
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体の第1の蛍光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
【0139】
なお、発光装置の発光スペクトルの測定は、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器(積分球仕様)を用いて20mAの電流を通電して行なうことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
【0140】
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、上述のような本発明の蛍光体の他、後述するような赤色の蛍光を発する蛍光体(赤色蛍光体)、緑色の蛍光を発する蛍光体(緑色蛍光体)、黄色の蛍光を発する蛍光体(黄色蛍光体)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
【0141】
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0142】
[3−1.発光装置の構成(発光体)]
[3−1−1.第1の発光体]
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
【0143】
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
【0144】
第1の発光体の発光波長の具体的数値としては、通常200nm以上である。このうち、近紫外光を励起光として用いる場合には、通常300nm以上、より好ましくは330nm以上、さらに好ましくは360nm以上であり、また、通常420nm以下、好ましくは410nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。発光装置の色純度の観点からである。
【0145】
この第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
【0146】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記本発明の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInGaN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度は非常に強いので特に好ましい。
【0147】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0148】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高いため、より好ましい。
【0149】
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0150】
[3−1−2.第2の発光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(赤〜橙色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
【0151】
なお、第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はない。その例を挙げると、結晶母体となる、Y、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
【0152】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物;YS等の酸硫化物;(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩;YSiO、ZnSiO等の珪酸塩;SnO、Y等の酸化物;GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩;Ca10(PO(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl等のハロリン酸塩;Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0153】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素や元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0154】
具体的には、蛍光体として後述するものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、後述する例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0155】
[3−1−2−1.第1の蛍光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0156】
また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。通常、本発明の蛍光体が青色蛍光体の場合には、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の青色蛍光体を併用することができる。
【0157】
なお、以降本発明の蛍光体が青色蛍光体の場合を代表例として、本発明の発光装置における第2の発光体についての説明を記載するが、当然のことながら、本発明の蛍光体が青緑〜黄緑色の場合には、緑色を同色併用蛍光体とし、また組み合わせる第2の蛍光体としては、その用途に応じてではあるが、蛍光体も青色蛍光体及び/又は橙色〜赤色系光体を用いることとなる。
【0158】
同色併用蛍光体としての青色蛍光体としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、さらに好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0159】
このような青色蛍光体としては、例えば、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行うBaMgAl1017:Euで表されるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表されるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行う(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0160】
また、そのほか、青色蛍光体としては、例えば、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSiAl19ON31:Eu、EuSiAl19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0161】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0162】
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu及び(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Euからなる群より選ばれる少なくとも1種類の蛍光体を含有することが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO(Cl,F):Eu又はBaMgSi:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途としては(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Euが好ましく、ディスプレイ用途としては、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Euが好ましい。
【0163】
以上例示した青色蛍光体は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0164】
この同色併用蛍光体の重量メジアン径D50は、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集する傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0165】
[3−1−2−2.第2の蛍光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。上記のように、通常は第1の蛍光体として青色蛍光体を使用するので、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の青色蛍光体以外の蛍光体を用いる。
【0166】
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径D50は、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集する傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0167】
[3−1−2−2−1.橙色ないし赤色蛍光体]
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0168】
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0169】
さらに、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0170】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Eu、LiY(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu等のEu付活窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce等のCe付活窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、e、f、gは、1以上の整数を表す。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−h−iScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSi2−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0171】
赤色蛍光体としては、例えば、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を用いることも可能である。
【0172】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu及びEu錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種類の蛍光体を含有することが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)S:Eu、もしくは、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu又は(La,Y)S:Euが特に好ましい。
【0173】
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
【0174】
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0175】
[3−1−2−2−2.緑色蛍光体]
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、該緑色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、好ましくは510nm以上、更に好ましくは515nm以上、また、通常570nm未満、好ましくは560nm以下、より好ましくは550nm以下、さらに好ましくは540nm以下、特に好ましくは535nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0176】
該緑色蛍光体の具体例を挙げると、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)Si12:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0177】
また、その他の緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr・Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Mg,Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi:Eu、MSi10:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表す。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0178】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0179】
なお、以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0180】
[3−1−2−2−3.黄色蛍光体]
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0181】
このような黄色蛍光体としては、例えば、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Gは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0182】
また、その他、黄色蛍光体としては、例えば、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0183】
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine
FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0184】
以上例示した黄色蛍光体は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0185】
[3−1−2−2−4.第2の蛍光体に関するその他の事項]
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、二種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率などは、発光装置の用途などに応じて任意に設定すればよい。
【0186】
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を青色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体(青色蛍光体)のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
【0187】
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第1の蛍光体(青色蛍光体)と、第2の蛍光体を適切に組み合わせればよい。
【0188】
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類や、その割合に特に制限はない。
【0189】
特に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合、第1の発光体、第2の発光体の第1の蛍光体及び第2の蛍光体として次のような組み合わせ例(A),(B)で用いることが好ましい。
【0190】
<組み合わせ例(A)>
第1の発光体:波長300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有する
半導体発光素子
第1の蛍光体:波長470nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有する本 発明の青緑、緑又は黄緑色蛍光体
第2の蛍光体:420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する青色
蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを
有する赤色蛍光体
【0191】
<組み合わせ例(B)>
第1の発光体:波長300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有する
半導体発光素子
第1の蛍光体:波長420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する本 発明の青色蛍光体
第2の蛍光体:500nm以上570nm未満の波長範囲に発光ピークを有する緑色
蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを
有する赤色蛍光体
【0192】
[3−2.発光装置の構成(封止材料)]
本発明の発光装置において、用いられる各蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の[2−2.液体媒体]の項で記載したものと同様のものが挙げられる。
【0193】
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となりうる金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、二種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0194】
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
【0195】
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
なお、これらの添加剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0196】
[3−3.発光装置の構成(その他)]
本発明の発光装置は、上述の励起光源(第1の発光体)及び蛍光体(第2の発光体)を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の励起光源(第1の発光体)及び蛍光体(第2の発光体)を配置してなる。この際、励起光源(第1の発光体)の発光によって蛍光体(第2の発光体)が励起されて発光を生じ、且つ、この励起光源(第1の発光体)の発光及び/又は蛍光体(第2の発光体)の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。ここで、蛍光体を複数種使用する場合に、各蛍光体は必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
【0197】
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
【0198】
[3−4.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0199】
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させても良い。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
【0200】
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0201】
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤー、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
【0202】
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤー、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
【0203】
[3−5.発光装置に関するその他の事項]
上述した本発明の発光装置は、いずれも、励起光源(第1の発光体)として上述したような励起光源を用い、且つ、上述のような本発明の蛍光体と、赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の公知の蛍光体とを任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより、白色発光装置として構成することができる。ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0204】
[3−6.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【0205】
[4.照明装置]
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
【0206】
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
【0207】
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0208】
[5.画像表示装置]
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0209】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0210】
[蛍光体の測定評価方法]
後述の各実施例において、蛍光体粒子の各種の評価は、以下の手法で行った。
【0211】
<発光スペクトルの測定方法>
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、受光素子として光電子増倍管を備える蛍光分光光度計F−4500型((株)日立製作所製)用いて、励起波長365nmで測定した。
また、発光ピーク波長と半値幅は、得られた発光スペクトルから読み取った。
【0212】
<色度座標の測定方法>
励起波長365nmにおける発光スペクトルの400nm〜700nmの波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。
【0213】
<励起スペクトルの測定方法>
(株)日立製作所製蛍光分光光度計F−4500型を使用して上記発光スペクトルの発光ピーク波長をモニター波長として250nm〜500nmの波長範囲内の励起スペクトルを得た。
【0214】
<温度特性>
発光スペクトル測定装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、ペルチエ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ、及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を使用して、以下の方法で測定した。
ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から200℃の範囲で変化させた。すなわち、測定装置中の熱電対の温度が20℃、25℃、50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、175℃又は200℃で一定となったことを確認してから、各温度において、光源から回折格子で分光して取り出した波長405nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトルを測定した。測定された発光スペクトルの420〜800nmの波長領域のデータから発光ピーク強度、輝度及び色度座標値を求めた。また、発光ピーク強度維持率及び輝度維持率は、各温度における該ピーク強度値及び輝度値を20℃におけるピーク強度値又は輝度値を100とした場合の割合で計算した。
なお、蛍光体の表面温度は、あらかじめ測定した放射温度計と熱電対による温度測定値により作成した補正関数を利用して補正した値を用いた。
【0215】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折はPANalytical製粉末X線回折装置X'Pert MPDにて精密測定した。測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=45KV,40mA
発散スリット=可変発散スリット,照射幅=10mm
検出器=半導体アレイ検出器X'Celerator使用、Niフィルター使用
走査範囲 2θ=10〜65度
読み込み幅=0.0167度
計数時間=10秒
【0216】
<酸素・窒素分析>
蛍光体中の酸素及び窒素の量は、無機物中の窒素及び酸素分析装置であるTC−600(LECO社製)を用いて行った。
【0217】
[実施例1:CsAlSiO:Eu(立方晶)]
CsCO、Al、SiO、Euを以下の比率になるようにそれぞれ秤量し、メノウ乳鉢でアセトンと共に湿式混合した後、乾燥した。
Cs:0.99モル
Al:1モル
Si:1モル
Eu:0.01モル
【0218】
これをアルミナるつぼに入れ、空気中1400℃にて6時間加熱した。これを粉砕した後、H(5体積%)+Ar(95体積%)混合ガス雰囲気下、大気圧下で1400℃にて6時間加熱した。これにより実施例1の蛍光体を得た。
【0219】
この蛍光体の発光特性を表1に示す。
また、得られた蛍光体の励起スペクトル及び励起波長365nmにおける発光スペクトルを図4に示す。得られた蛍光体は紫外線励起により良好な緑色発光を示した。
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図6に示す。得られた蛍光体の回折パターンは、ICDD粉末X線回折データベースの47−741番に示される立方晶のCsAlSiOの回折パターンとほぼ同じであることから、Eu2+が付活された立方晶のCsAlSiO:Eu蛍光体が得られたことが確認された。
この蛍光体の温度特性を図9のa)〜c)に示す。図9a)に示されるように、この蛍光体は、120℃における発光ピーク強度が室温(25℃)における発光ピーク強度の95%以上あり温度消光の小さい蛍光体であることが確認された。
【0220】
[実施例2:CsAlSi:Eu]
CsCO、Al、SiO、Euを表1に示す比率(原料組成)になるようそれぞれ秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例2の蛍光体を得た。
【0221】
この蛍光体の発光特性を表1に示す。
また、得られた蛍光体の励起スペクトル及び励起波長365nmにおける発光スペクトルを図4に示す。得られた蛍光体は紫外線励起により良好な青緑色発光を示した。
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図6に示す。得られた蛍光体の回折パターンは、ICDD粉末X線回折データベースの29−407番に示されるCsAlSiの回折パターンとほぼ同じであることから、Eu2+が付活されたCsAlSi:Eu蛍光体が得られたことが確認された。
この蛍光体の温度特性を図9のa)〜c)に示す。図9a)に示されるように、この蛍光体は、120℃における発光ピーク強度が室温(25℃)における発光ピーク強度の約85%あり温度消光の小さい蛍光体であることが確認された。また、図9b)、c)よりCsAlSiO:Euに比較して温度変化による色ずれの小さい蛍光体であることもわかった。
【0222】
[実施例3:CsAlSi(O,N)4−δ:Eu]
CsCO、Al、SiO、Euを表1に示す比率(原料組成)になるようそれぞれ秤量し、メノウ乳鉢でアセトンと共に湿式混合した後乾燥した。
これをアルミナるつぼに入れ、空気中1400℃にて6時間加熱した。これを粉砕した後、アンモニア雰囲気下、大気圧下で1400℃にて6時間加熱した。これにより実施例3の蛍光体を得た。
【0223】
この蛍光体の発光特性を表1に示す。
また、得られた蛍光体の励起スペクトル及び励起波長365nmにおける発光スペクトルを図5に示す。得られた蛍光体は紫外線励起により良好な青色発光を示した。この蛍光体の粉末X線回折パターンを図6に示す。得られた蛍光体の回折パターンは、ICDD粉末X線回折データベースの47−741番に示されるCsAlSiOの回折パターンとほぼ同じだった。また、酸素及び窒素の定量分析の結果、蛍光体全重量に対して0.08重量%(M2中の窒素の割合としては0.3モル%)の窒素を含むことが確認されたことから、酸素の一部が窒素に置換されたCsAlSi(O,N)4−δ:Eu蛍光体が得られたことが確認された。
この蛍光体の温度消光特性を図6のa)〜c)に示す。100℃における発光ピーク強度が室温(25℃)における発光ピーク強度の80%以上あり温度消光の小さい蛍光体であることがわかった。
【0224】
[実施例4:CsAlSi(O,N)6−δ:Eu]
CsCO、Al、SiO、Euを表1に示す比率(原料組成)になるようそれぞれ秤量した以外は実施例3と同様にして実施例4の蛍光体を得た。
【0225】
この蛍光体の発光特性を表1に示す。
また、得られた蛍光体の励起スペクトル及び励起波長365nmにおける発光スペクトルを図5に示す。
得られた蛍光体は紫外線励起により良好な青色発光を示した。
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図6に示す。得られた蛍光体の回折パターンは、ICDD粉末X線回折データベースの29−407番に示されるCsAlSiの回折パターンとほぼ同じだった。また、酸素及び窒素の定量分析の結果、蛍光体全重量に対して1.3重量%(M2中の窒素の割合としては3.6モル%)の窒素を含むことが確認されたことから、酸素の一部が窒素に置換されたCsAlSi(O,N)6−δ:Eu蛍光体が得られたことが確認された。
この蛍光体の温度消光特性を図9a)〜c)に示す。図9a)に示されるように、この蛍光体は、120℃における発光ピーク強度が室温(25℃)における発光ピーク強度の85%以上あり温度消光の小さい蛍光体であることが確認された。また、CsAlSi(O,N)4−δ:Euに比較して、励起スペクトルの強度値及び発光スペクトルのピーク強度値が高く、かつ、発光強度維持率も高いことが確認された。
【0226】
[実施例5:CsAlSiO:Eu(斜方晶)]
CsCO、Al、SiO、Euを実施例1と同様の比率で秤量してアセトンと共に湿式混合、乾燥して得られた原料混合物を、アルミナるつぼに入れ、空気中、900℃にて6時間加熱した。これを粉砕した後、H(4体積%)+N(96体積%)混合ガス雰囲気下、大気圧下で1400℃にて6時間加熱した。これにより実施例5の蛍光体を得た。
【0227】
この蛍光体の発光特性を表1に示す。
また、得られた蛍光体の励起スペクトル及び励起波長365nmにおける発光スペクトルを図8に示す。得られた蛍光体は紫外線励起により良好な緑色発光を示した。
この蛍光体の粉末X線回折パターンを図7に示す。得られた蛍光体の回折パターンは、ICDD粉末X線回折データベースの31−346番に示される斜方晶のCsAlSiOの回折パターンとほぼ同じであることから、Eu2+が付活された斜方晶のCsAlSiO:Eu蛍光体が得られたことが確認された。
この蛍光体は実施例1の蛍光体と組成は同じだが、実施例1の蛍光体は立方晶の結晶が母体であるのに対し、実施例5の蛍光体は斜方晶の結晶が母体であり、結晶型の異なる結晶が母体となっていた。
【0228】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明は産業上の任意の分野で使用可能であり、特に、照明、画像表示装置等の光を使用する用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の発光装置の一例における、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)との位置関係を示す模式的斜視図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、いずれも、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例1及び実施例2の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルのチャートである。
【図5】実施例3及び実施例4の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルのチャートである。
【図6】実施例1ないし実施例4の蛍光体の粉末X線回折パターンのチャートである。
【図7】実施例5の蛍光体の粉末X線回折パターンのチャートである。
【図8】実施例5の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルのチャートである。
【図9】実施例1ないし実施例4の蛍光体の温度特性(昇温時の発光ピーク強度、輝度、色度座標(x、y)の維持率)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0231】
1:蛍光体含有部(第2の発光体)
2:励起光源(第1の発光体)(面発光型GaN系LD)
3:基板
4:発光装置
5:マウントリード
6:インナーリード
7:励起光源(第1の発光体)
8:蛍光体含有樹脂部(第2の発光体)
9:導電性ワイヤー
10:モールド部材
11:面発光照明装置
12:保持ケース
13:発光装置
14:拡散板
22:励起光源(第1の発光体)
23:蛍光体含有樹脂部(第2の発光体)
24:フレーム
25:導電性ワイヤー
26:電極
27:電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されることを特徴とする蛍光体。
M1(1−a)AlSiM2 (I)
(式中、Rは少なくともEu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる元素を含有する付活元素を示し、
M1はアルカリ金属元素を示し、
M2は少なくとも酸素を含有する、酸素及び窒素からなる群より選ばれる元素を示し、
aは、0<a<0.5を満たす数値を示し、
xは、0.5≦x≦1.5を満たす数値を示し、
yは、0.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、
zは、3≦z≦7を満たす数値を示す。)
【請求項2】
M2が酸素及び窒素からなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
M2が酸素からなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
yが1.5≦y≦2.5を満たす数値を示し、zが5≦z≦7を満たす数値を示すことを特徴とする請求項2又は3に記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項6】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置であって、
該第2の発光体として、請求項1ないし4の何れか一項に記載の蛍光体の1種以上を含む第1の蛍光体を含有することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
前記第2の発光体として、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる1種以上の蛍光体を含む第2の蛍光体を含有することを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、500nm以上570nm未満の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項6ないし9の何れか1項に記載の発光装置を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項6ないし9の何れか1項に記載の発光装置を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−121068(P2010−121068A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296931(P2008−296931)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月22日 日本希土類学会発行の「希土類 No.52「第25回希土類討論会要旨集」」に発表
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】