説明

融液原料供給装置および多結晶体または単結晶体製造装置

【課題】多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に融液原料を供給するに際し、特別な加熱手段を設けることなく、また融液原料の液温が該原料の融点付近の比較的低い温度でも、融液原料の凝固を防止し、融液原料を少量ずつ連続的に供給することができる融液原料供給装置を提供する。
【解決手段】融解槽を有する副坩堝2と、副坩堝2の周囲に設けられる加熱手段8と、副坩堝2の融解槽に固体原料を供給する原料供給手段9とを含む融液原料供給装置1において、副坩堝2の融解槽と加熱手段8との間に空隙部3を形成し、この空隙部3を介して融解槽から溢れ出る融液原料5を多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融液原料供給装置および多結晶体または単結晶体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン、GaAsといった半導体の単結晶体は、IC、LSIなどの集積回路の基板材料として広く用いられる。また、半導体の多結晶体は、太陽電池などの基板材料として広く用いられる。そして、単結晶体製造装置および多結晶体製造装置については、種々のものが提案されている。
【0003】
半導体の単結晶体製造装置には、たとえば、単結晶の核になる種結晶を単結晶の融液原料に浸漬し、種結晶を該融液原料中から引き上げることによって、棒状単結晶体(単結晶棒)を製造する単結晶引上げ装置が知られている。その具体例としては、たとえば、気密炉と、気密炉内に設けられる主坩堝、主坩堝加熱用ヒータ、副坩堝、副坩堝加熱用ヒータ、引上軸および吊下軸とを含む単結晶引き上げ装置が提案される(たとえば、特許文献1参照)。この装置において、主坩堝は、単結晶原料の融液を貯留する石英製坩堝である。副坩堝も単結晶原料の融液を貯留する石英製坩堝であり、主坩堝近傍において融液の液面が主坩堝の融液の液面よりも高くなる位置に設けられる。副坩堝の主坩堝を臨む外壁の上部には注液樋が設けられ、副坩堝から溢れ出す融液を注液樋から主坩堝に供給する。引上軸は、主坩堝の鉛直方向上方において昇降可能にかつ軸線回りに回転可能に設けられ、その鉛直方向下端には種結晶が取り付けられる。吊下軸は、副坩堝の鉛直方向上方において昇降可能に設けられ、単結晶原料を鉛直方向下方に吊り下げるように支持する。特許文献1の単結晶引き上げ装置によれば、引上軸を下降させて引上軸の下端に取り付けられた種結晶を主坩堝の融液中に浸漬させ、続いて引上軸を上昇させ、棒状単結晶体を育成しながら引き上げる。吊下軸は棒状単結晶体の引き上げ具合に応じて下降し、単結晶素材を副坩堝に供給して融解させるとともに、副坩堝から溢れ出る融液が注液樋から主坩堝に連続的にかつ少量ずつ供給される。その結果、坩堝材料である石英中の酸素の融液中への溶出、ひいては主坩堝中に貯留される融液の酸素濃度の上昇が防止され、長さ方向において酸素濃度がほぼ一定の棒状単結晶体が得られる。しかしながら、特許文献1の単結晶引き上げ装置は、注液桶部分での輻射放熱が大きいので、シリコンなどの融点の非常に高い材料が単結晶原料であると、注液桶内で融液が凝固する。凝固の防止には、注液樋の外周にヒータなどの加熱手段を設ける必要があるけれども、そのような部分にまでヒータを設けると電力消費量が増大するので好ましくない。また、注液筒を加熱するヒータの設置場所を確保しなければならず、さらに装置構成が複雑になることから、トラブルの原因になることも懸念される。
【0004】
また、単結晶引上げ装置に融液原料を供給するための融液原料供給装置であって、石英製副坩堝(補助坩堝)と、副坩堝に固体原料を供給するフィーダとを含み、副坩堝の下面中央にパイプ状の供給管が鉛直方向に挿通された融液原料供給装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2の融液原料供給装置においては、供給管の副坩堝下面から副坩堝内に突出する部分の端部(上端部)は副坩堝の底面からの高さの1/2程度の位置にある。また、供給管の副坩堝下面から鉛直方向下方に突出する部分の端部(下端部)が単結晶製造装置の石英製主坩堝の鉛直方向上方に位置するように副坩堝およびフィーダが配置される。副坩堝内の原料融液の液面高さが供給管の上端部よりも高くなると、融液原料が供給管内に溢れ出し、供給管内を流過して主坩堝に供給される。特許文献2の融液原料供給装置によれば、フィーダによって所定量の固体原料を間欠的に副坩堝に供給し、融液原料を供給管内に溢れ出させて単結晶製造装置の主坩堝に供給する。主坩堝には、まとまった量の融液原料が間欠的に供給される。すなわち、一度に供給される融液原料の量が比較的多いので、供給管内で融液原料が凝固するのをある程度防止できる。
【0005】
特許文献2の融液原料供給装置は、前述のように比較的多量の融液原料を一度に供給する構成を採るので、主坩堝に融液原料を供給する際に、主坩堝内の融液原料の液面が揺れる点が問題になる。たとえば、主坩堝内の融液原料に種結晶を浸漬し、この種結晶から成長する棒状単結晶体を引き上げる際に、融液原料の液面が揺れると棒状単結晶体の結晶品質が劣化する。さらに、パイプ状供給管のうち、副坩堝下面から鉛直方向下方に突出する部分は輻射放熱が大きいため、供給管の上端部から下端部にかけて大きな温度勾配が生じる。一方、パイプ状供給管の周囲には加熱手段または断熱手段は設けられない。したがって、比較的多量の融液原料が供給管内を流過する構成であっても、融液原料の液温が該原料の融点付近である場合には、供給管の副坩堝下面から鉛直方向下方に突出する部分において凝固することがある。
【0006】
また、半導体の多結晶体製造装置としては、たとえば、融液原料を貯留する主坩堝中に下地基板を浸漬させ、下地基板の表面に半導体の薄板状多結晶体を製造する装置が知られている。このような装置においても、融液原料を主坩堝に補給する際の液面揺れは、得られる薄板状多結晶体の結晶品質を低下させる原因になる場合がある。したがって、主坩堝に融液原料を補給する際に、液面揺れを起こすことがなく、また融液原料の供給路で融液原料の凝固が起こらない融液原料供給装置が求められる。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−217694号公報
【特許文献2】特開平11−255588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、融液原料を多結晶または単結晶製造装置の主坩堝に少量ずつ連続的に供給することによって供給時の液面揺れを防止し、かつ固体原料を溶融して融液原料とするための加熱手段を供給路の近傍に配置することによって供給路における融液原料の良好な融解状態を保持できる融液原料供給装置、および該融液原料供給装置を備え、高い結晶品質を有する多結晶体または単結晶体を製造できる多結晶体または単結晶体製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に融液原料を供給する融液原料供給装置であって、
融液原料または融液原料と固体原料とを貯留する凹所である融解槽を有する副坩堝と、
副坩堝の周囲に設けられる加熱手段と、
副坩堝の融解槽と加熱手段との間に形成される空隙部と、
副坩堝の融解槽に固体原料を供給する原料供給手段とを含み、
原料供給手段による副坩堝の融解槽への固体原料の供給によって融解槽から溢れ出る融液原料を、空隙部を介して多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給することを特徴とする融液原料供給装置である。
【0010】
また本発明の融液原料供給装置は、
前述の空隙部が、
副坩堝の外壁を鉛直方向に貫通するように形成され、副坩堝から溢れ出る融液原料が鉛直方向下方に流過または落下するように設けられることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の副坩堝が、
空隙部に隣接する副坩堝の外壁上面に、空隙部に向けて下降勾配になるように形成され、副坩堝の融解槽と空隙部とを連通させる溝形状の注液手段を含むことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の注液手段が、
融液原料の流過方向に垂直な方向の断面幅が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有することを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の副坩堝が、
空隙部に隣接する副坩堝の外壁上部に該外壁を空隙部に向けて下降勾配になるように挿通し、副坩堝の外壁側面から空隙部に向けて突出するように設けられ、副坩堝の融解槽から溢れ出る融液原料を流過させる注液筒と、
注液筒に対してほぼ垂直になるように注液筒の空隙部側端部またはその近傍に接続され、副坩堝の融解槽から注液筒を介して流過する融液原料を鉛直方向下方に滴下させる滴下部とを備え、副坩堝の融解槽と空隙部とを連通させる注液手段を含むことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の注液筒が、
融液原料の流過方向に垂直な方向の断面径が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有することを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の副坩堝が、
その外壁上面および内壁面に開口部を有する2つの凹所であって、この2つの凹所を結ぶ仮想線が、原料供給手段による固体原料供給位置と注液手段とを結ぶ仮想線と交差する2つの凹所が形成され、
融解槽における融液原料の液面から鉛直方向上方に突出し、固体原料が供給される側の融液原料の液面と融液原料を注液手段内に流入させる側の融液原料の液面とを仕切るように設けられ、両端部が副坩堝に形成される2つの凹所に嵌入されて副坩堝に支持される仕切り板をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の副坩堝が下面を有し、
副坩堝の下面には、融液原料が空隙部に隣接する副坩堝外壁から下面の中心および/または周縁部に向けて下面を伝って流れるのを防止するための凹所である液切り溝が、
空隙部に隣接する副坩堝外壁から下面の中心および/または周縁部に向う方向にほぼ直交する方向に延びるように形成されることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
前述の加熱手段が、
誘導加熱コイルと、
誘導加熱コイルに電力を供給する電源とを含むことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
誘導加熱コイルに供給される電力値(W)を誘導加熱コイルの軸線方向に垂直な方向の断面積(cm)で除した値が、20W/cm以上であることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明の融液原料供給装置は、
誘導加熱コイルに供給される電力の周波数が100〜50000Hzであり、かつ副坩堝および融液原料の体積抵抗率がそれぞれ5〜5000μΩ・cmであることを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の融液原料供給装置は、固体原料がシリコンを含むことを特徴とする。
また本発明は、
融液原料を貯留する凹所である融液貯留槽を有する主坩堝と、
主坩堝の融液貯留槽に貯留される融液原料を加熱して融液状態を保持する加熱手段と、
主坩堝の融液貯留槽に融液原料を供給する前述のいずれか1つの融液原料供給装置と、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体と、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体を主坩堝の融液貯留槽に浸漬させて引き上げる浸漬引上げ手段とを含むことを特徴とする多結晶体または単結晶体製造装置である。
【0021】
さらに本発明の多結晶体または単結晶体製造装置は、
前述のいずれか1つの融液原料供給装置が、
その空隙部が主坩堝の鉛直方向上方に位置し、空隙部内を流過または落下する融液原料が主坩堝に供給されるように設けられることを特徴とする。
【0022】
さらに本発明の多結晶体または単結晶体製造装置は、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体が下地基板であり、
主坩堝に貯留される融液原料に下地基板を浸漬させて引き上げることによって、下地基板表面に原料の薄板状多結晶体を成長させることを特徴とする。
【0023】
さらに本発明の多結晶体または単結晶体製造装置は、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体が単結晶の種結晶であり、
主坩堝に貯留される融液原料に単結晶の種結晶を鉛直方向に浸漬させて引き上げることによって、単結晶の種結晶を起点にして原料の棒状単結晶体を成長させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、融液原料などを貯留する融解槽を有する副坩堝と、副坩堝の周囲に設けられる加熱手段と、副坩堝の融解槽と加熱手段との間に形成される空隙部と、原料供給手段とを含み、副坩堝の融解槽から溢れ出る融液原料を空隙部から多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給する融液原料供給装置が提供される。この融液原料供給装置によれば、副坩堝の融解槽に原料供給手段により固体原料を一定量ずつ供給することによって、融解槽中の融液原料が比較的少量ずつ融解槽から溢れ出し、空隙部を介して少量ずつ連続的に多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給される。一方、空隙部は、加熱手段と加熱手段によって加熱されて高温化した副坩堝の外壁面とに挟まれ、常時高温下にある。したがって、空隙部を流過する融液原料は、その液温が原料の融点付近であっても、空隙部において冷却されて凝固することがない。すなわち、融液原料を空隙部内で少量ずつ連続的に流過させても凝固が起こらない。したがって、本発明の融液原料供給装置によれば、融液原料の供給路である空隙部において融液原料の凝固を起こすことなく、融液原料を少量ずつ連続的に多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給でき、主坩堝内の融液原料の液面を揺らすことがない。その結果、結晶品質の高い多結晶体または単結晶体が得られる。
【0025】
本発明によれば、空隙部が副坩堝外壁を鉛直方向に貫通するように空隙部を形成し、副坩堝の融解槽から溢れ出る融液原料が空隙部内を鉛直方向下方に流過するように構成することによって、融液原料供給装置の多結晶体または単結晶体製造装置に対する配置が容易になり、融液原料供給装置を含む多結晶体または単結晶体製造装置の設計自由度が大幅に向上するとともに、融液原料を効率的に主坩堝に供給できる。
【0026】
本発明によれば、空隙部に隣接する副坩堝の外壁上面に、空隙部に向けて下降勾配になるように溝形状の注液手段を形成し、副坩堝の融液原料を貯留する凹所と空隙部とを連通させることによって、副坩堝の融解槽から溢れ出る融液原料が空隙部のみに選択的に供給され、融液原料が空隙部以外の部分に溢れ出すことが防止できる。したがって、融液原料を歩留り良く主坩堝に供給できる。溢れ出す高温の融液原料によって装置内の部材が損傷するかまたは汚染されることがない。
【0027】
本発明によれば、溝形状の注液手段が、融液原料の流過方向に垂直な方向の断面幅が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有することによって、未融解の固体原料が空隙部を介して主坩堝に供給されるのを防止できる。
【0028】
本発明によれば、空隙部に隣接する副坩堝の外壁上部に該外壁を空隙部に向けて下降勾配になるように挿通し、副坩堝の外壁側面から空隙部に向けて突出する注液筒と、注液筒の空隙部側端部などに接続されて融液原料を鉛直方向下方に滴下する滴下部とを備え、副坩堝の凹所と空隙部とを連通させる注液手段を設けることによって、外壁上面に注液溝を形成するのと同様の効果が得られる。さらに、注液溝を形成する場合には、融液原料が空隙部に隣接する外壁面を流過し、外壁面に液状のまま付着してわずかに残留することがあるのに対し、この構成では融液原料を鉛直方向に落下させるので、融液原料の余分な消費が一層なくなり、融液原料の歩留りがさらに向上する。
【0029】
本発明によれば、注液部材における注液筒が、融液原料の流過方向に垂直な方向の断面径が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所、有することによって、未融解の固体原料が空隙部を介して主坩堝に供給されるのを防止できる。
【0030】
本発明によれば、副坩堝の外壁上面および内壁面に開口部を有する2つの凹所を、この2つの凹所を結ぶ仮想線が、原料供給手段による固体原料供給位置と注液手段とを結ぶ仮想線とが交差するように副坩堝に形成し、この2つの凹所に、副坩堝の融解槽に貯留される融液原料の液面から鉛直方向上方に突出するように設けられる仕切り板の両端部を嵌入し、この仕切り板にて固体原料が供給される側の融液原料の液面と融液原料を注液手段内に流入させる側の融液原料の液面とを仕切ることによって、融解槽に供給される固体原料が融液原料の液面を浮遊し、注液溝、注液筒などの注液手段近傍に至り、注液手段の融液原料流入口を部分的に閉塞させて融液原料の注液手段への円滑な流入を阻害するのを防止できる。これによって、融液原料を主坩堝に一層確実に供給できる。
【0031】
本発明によれば、副坩堝が下面を有する形状である場合、副坩堝の下面に、空隙部に隣接する外壁面から下面の中心および/または周縁部に向う方向にほぼ直交する方向に延びるように凹所(液切り溝)を形成することによって、融液原料が下面を伝って下面の中心に向けて流過するのを防止でき、融液原料の無駄な消費を一層防止できる。
【0032】
本発明によれば、誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに電力を供給する電源とを含む加熱手段を用いると、誘導加熱コイルから発生する磁束が空隙部、空隙部を流過する融液原料および副坩堝を効率良く加熱し、誘導加熱コイルからの磁束と副坩堝外壁からの輻射熱との協働によって、空隙部における融液原料の凝固が一層確実に防止される。
【0033】
本発明によれば、誘導加熱コイルを含む加熱手段を用いる場合には、誘導加熱コイルへの供給電力値(W)を、誘導加熱コイルを構成する電熱線の軸線方向に垂直な方向の断面積(cm)で除した値が、20W/cm以上になるように設定することによって、融液原料の良好な融解状態が保持される。
【0034】
本発明によれば、誘導加熱コイルを含む加熱手段を用いる場合には、誘導加熱コイルへの供給電力の周波数を100〜50000Hzの範囲に設定し、かつ副坩堝および融液原料の体積抵抗値をそれぞれ5〜5000μΩ・cmの範囲に設定することによって、空隙部内において融液原料の良好な融解状態が保持され、融液原料の主坩堝への供給の際に、主坩堝における融液原料の液面揺れが一層防止される。また、副坩堝外壁への磁束の輻射を受けて副坩堝が加熱され、副坩堝の融解槽内の融液原料の融解状態が保持されるとともに、新たに供給される固体原料が速やかに融解される。
【0035】
本発明によれば、固体原料がシリコンのような高融点材料を含む場合でも、本発明の融液原料供給装置を用いれば、空隙部において融液原料を凝固させることなく、薄板製造装置の主坩堝に効率良く連続的に融液原料を供給できる。すなわち、本発明の融液原料供給装置によれば、固体原料の融点が高くても、融液原料の供給を容易に実施できる。
【0036】
本発明によれば、融液貯留槽を有する主坩堝と、主坩堝用加熱手段と、前述のいずれか1つの融液原料供給装置と、多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体と、該結晶体を融液貯留槽の融液原料に浸漬させて引き上げる浸漬引上げ装置とを含む多結晶体または単結晶体製造装置が提供される。この多結晶体または単結晶体製造装置においては、好ましくは、空隙部が主坩堝の融液貯留槽の鉛直方向上方に位置するように融液原料供給装置が配置され、空隙部内を流過する融液原料が自然落下などによって少量ずつ連続的に主坩堝に供給される。そして、空隙部内を流過する融液原料には充分な加熱および保温が施されるので、融液原料の液温が原料の融点に近い温度であっても凝固することがない。さらに、融液原料の主坩堝への供給の際には、融液原料が少量ずつ連続的に供給されることによって、主坩堝内の融液原料の液面が、得られる多結晶体または単結晶体の結晶品質を損なうほど揺れることがない。したがって、本発明の多結晶体または単結晶体製造装置によれば、融液原料を原料の融点に近い温度で凝固させることなく供給できるので、融液原料の無駄な消費がほとんどなく、しかも高い結晶品質を有する多結晶体または単結晶体が得られる。本発明の製造装置において、多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体として下地基板を用いる場合は、薄板状多結晶体を製造する薄板製造装置になる。また、多結晶体または単結晶体を成長させる結晶体として単結晶の種結晶を用いる場合は、単結晶引上げ装置になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の第1形態である多結晶体製造装置100の構成を模式的に示す断面図である。多結晶体製造装置100は、主坩堝101と、主坩堝用加熱手段102と、下地基板103と、図示しない浸漬引上げ手段と、図示しない搬送手段と、融液原料供給装置1とを含む。多結晶体製造装置100は、たとえば、シリコンなどの半導体の薄板状多結晶体(以後特に断らない限り「結晶薄板」と称す)を製造するために用いられる。
【0038】
主坩堝101は円柱状部材であり、その上面の少なくとも一部には、上面から鉛直方向下方に向けて円柱状の凹所である融液貯留槽101aが形成される。本実施の形態では、主坩堝101はグラファイト製であり、融液貯留槽101aの直径は700mmである。主坩堝101の鉛直方向側面には、該側面の全面を覆うように図示しない断熱層および/または絶縁層が形成される。断熱層は、たとえば、カーボンフェルトなどの断熱材料によって形成される。絶縁層は、たとえば、アルミナ繊維などの絶縁材料によって形成される。
【0039】
主坩堝用加熱手段102は、主坩堝用誘導加熱コイル102aと、図示しない電源とを含む。主坩堝用誘導加熱コイル102aは、主坩堝101の周囲に設けられる図示しない断熱層および/または絶縁層の周りを囲むように設けられる。本実施の形態では、主坩堝誘導加熱コイル102aは、その内径が800mmになるように構成される。図示しない電源は、多結晶製造装置100の外部に設けられて主坩堝用誘導加熱コイル102aに電気的に接続され、主坩堝用誘導加熱コイル102aに発熱のための電力を供給する。主坩堝加熱手段102によれば、多結晶製造装置100の起動時には、融液貯留槽101aを満たすように充填される固体原料10を融解させて溶融原料5とする。また、融液貯留槽101aに溶融原料5が貯留される場合には、溶融原料5が凝固を起こさないように、溶融原料5の液温を一定の温度に保持する。融液原料5の温度制御は、たとえば、主坩堝101の下面に設けられる図示しない熱電対を用いて行われる。熱電対による計測温度は多結晶製造装置100の全動作を制御する図示しないCPUに送付される。CPUは記憶部と演算部と制御部とを含む。記憶部には融液原料5の液温の設定温度が予め入力され、さらに熱電対による計測結果が入力される。演算部は記憶部から融液原料の設定温度および計測結果を取り出し、計測結果が設定温度より低いか否かを判定する。そして、演算部が設定温度よりも低いかまたは数分程度の短時間で設定温度よりも低くなると判断した場合には、制御部は主坩堝誘導加熱コイル102aに発熱用の電力を供給する図示しない電源に制御信号を送付し、該電源から主坩堝誘導加熱コイル102aへの電力供給を制御する。これによって、融液原料5の液温が設定温度に保持される。融液原料5の液温は、結晶薄板を製造する際の諸条件に応じて適宜選択されるけれども、通常は1410℃〜1500℃の範囲に設定される。
【0040】
下地基板103は、その表面にシリコンなどの結晶薄板を成長させるための基板であり、図示しない浸漬引上げ手段によって支持される。融液原料5の液温が安定したことが確認された上で、下地基板103は浸漬引上げ手段によって、たとえば、矢符105の方向すなわち円軌道または楕円軌道で融液貯留槽101a内の融液原料5に浸漬される。下地基板103の表面には図示しないピラミッド状突起が規則的に形成されており、下地基板103が融液原料5に浸漬されるとピラミッド状突起の頂点から結晶が成長し、下地基板103の表面に結晶薄板104が形成される。下地基板103は結晶薄板104が成長した後に引き上げられる。浸漬引上げ手段は、たとえば、図示しない基板固定部材と、水平方向移動手段と、鉛直方向移動手段と、スライド機構とを含む。基板固定部材は、凹凸形状によって下地基板103と相互に嵌合する機構によって、下地基板103を支持する。下地基板103の結晶薄板成長面とは反対側の面(以後「反対側面」と称す)には、反対側面の短手方向において下地基板103の一端部から他端部に延びる凸部が該反対側面、好ましくは該反対側面の長手方向の中央部近傍に形成される。凸部の形状は、下地基板103を凸部が延びる方向に垂直な方向に切断した時の断面が台形状、より詳しくは反対側面に接する凸部の上辺が、反対側面から離隔する凸部の下辺よりも小さい台形状である。一方、基板固定部材の厚み方向における一方の面には、下地基板103の凸部に対応する凹所が形成される。基板固定部材の凹所は、下地基板103の凸部と同じ寸法に形成するのが好ましい。基板固定部材の凹所は、該凹所が延びる方向に垂直な方向の断面が凸部に対応する台形状であり、凹所の底辺が台形の上辺になり、凹所開口部の凹所が延びる方向に垂直な方向の寸法が台形の下辺になり、上辺の寸法よりも下辺の寸法の方が長い台形状である。基材固定部材はその凹所と下地基板103の凸部とを嵌合させることによって、下地基板103を支持する。水平方向移動手段は、基材固定部材を水平方向に移動可能に支持する。鉛直方向移動手段は、基材固定部材を鉛直方向に移動可能に支持する。水平方向移動手段および鉛直方向移動手段には、たとえば、モータが用いられる。また、水平方向移動手段および鉛直方向移動手段には、2軸ロボット、3軸ロボットなども使用できる。スライド機構は、下地基板103をその凸部が延びる方向またはその逆方向にスライドさせる。これによって、下地基板103が基材固定部材から脱着される。このような浸漬引上げ手段は、たとえば、特開2003−59849号公報、特開2003−183015号公報、特開2003−277187号公報などに記載される。
【0041】
図示しない搬送手段は、下地基板103を外部から多結晶製造装置100の内部へ搬入して浸漬引上げ手段に受け渡し、結晶薄板104が形成された下地基板103を浸漬引上げ手段から受け取って多結晶製造装置100の外部に搬出する。搬送手段には、たとえば、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられる回転ローラと、回転ローラの回転駆動に従動回転可能に設けられ、回転ローラと同じ径を有する複数の従動ローラとを含み、回転ローラおよび複数の従動ローラが、それぞれの軸心が1つの水平面内に含まれるように配置されてなる搬送手段が挙げられる。搬送手段は、下地基板103を載置して多結晶製造装置100の図示しない下地基板受入口に搬送する。下地基板103は、そこで浸漬引上げ手段のスライド機構によって基材固定部材に嵌合され、浸漬・引上げの後、多結晶製造装置100の図示しない下地基板受渡口に搬送され、スライド機構によって基材固定部材から離脱され、再度搬送手段に載置され、次工程に搬送される。
【0042】
融液原料供給装置1は、多結晶製造装置100において結晶薄板104を順次製造すると、主坩堝101の融液貯留槽101aに貯留される融液原料5が減少するので、融液貯留槽101aに融液原料5を補充する装置である。融液原料供給装置1は、後述する空隙部3が主坩堝101の融液貯留槽101aの鉛直方向上方に位置し、空隙部3を通過する融液原料5が融液貯留槽101aに貯留される融液原料5に落下するように設けられる。好ましくは、融液原料供給装置1は、融液貯留槽101aの中心から可能な限り円周側に離れた位置に融液原料5が落下するように配置される。これによって、融液原料5を補充する際に、融液貯留槽101aにおける液面揺れを極力少なくし、製造される結晶薄板104を高品質に保持するとともに、浸漬引上げ手段との干渉が起こらない。図2は、本発明の実施の第1形態である融液原料供給装置1の構成を模式的に示す断面図である。図3は、図2に示す融液原料供給装置1の要部の上面図である。図4は、図2に示す融液原料供給装置1の要部を拡大して示す断面図である。図5は、図2に示す融液原料供給装置1の要部の下面図である。
【0043】
融液原料供給装置1は、副坩堝2と、空隙部3と、断熱部材6と、穴付き断熱部材7と、加熱手段8と、原料供給手段9とを含む。副坩堝2は円柱状部材であり、その上面の少なくとも一部には、その上面から鉛直方向下方に向けて凹所2aが形成される。副坩堝2における凹所2a以外の部分が外壁になる。凹所2aは副坩堝2の上面中心から円周方向に偏心する位置を中心として形成される。副坩堝2の中心と凹所2aの中心とを結ぶ直径方向において、凹所2aの偏心方向とは反対側の外壁2bの厚みは、凹所2aの偏心方向とは同じ側の外壁2cの厚みよりも大きくなり、さらにこの分野での一般的な副坩堝の外壁厚みより大きくなるように構成される。これによって、外壁2b中に後述する空隙部3を容易に形成できる。この凹所2aは、融液原料5または融液原料5と固体原料10とを貯留する融解槽2aである。本実施の形態では、副坩堝2は、高純度化処理を施したグラファイトによって形成される径300mm、高さ300mmの円柱状部材である。また、融解槽2aは、副坩堝2の上面中心から円周側に70mm偏心した位置を中心に、径200mm、深さ250mmの円筒状凹所として形成される。その結果、融解槽2aの偏心方向とは反対方向における、外壁2bの直径方向厚みは、一般的な副坩堝の外壁厚みより大きい120mmになる。
【0044】
副坩堝2の外壁2bには、外壁2bの上面から下面にわたって鉛直方向に貫通して四角柱状の形状を有する貫通孔である空隙部3が形成される。空隙部3の断熱部材6側は、外壁2bが取り除かれ、副坩堝2単体で見ると、空隙部3は副坩堝2の外周面から軸心に向けて形成される凹所になっている。この凹所と断熱部材6の鉛直方向側面とによって、鉛直方向に延びる四角柱状の空間である空隙部3が形成される。副坩堝2の融解槽2aから溢れ出る融液原料5は、空隙部3に隣接する外壁2bの鉛直方向側面を流過するかまたは空隙部3内の四角柱状空間を落下することによって、空隙部3の鉛直方向下部に配置される多結晶製造装置100の主坩堝101内の融液貯留槽101aに供給される。
【0045】
外壁2bの上面において、空隙部3と融解槽2aとの最近接部分には、注液手段として注液溝4が形成される。注液溝4は、融解槽2aから空隙部3に向う方向において、空隙部3に向けて下降勾配となるように形成される溝であり、融解槽2aと空隙部3とを連通させる。融解槽2aの融液原料5は注液溝4を流過することによって、空隙部3に供給される。なお、固体原料10の密度は融液原料5の密度よりも小さいため、固体原料10は融解槽2aに貯留される融液原料5中を浮遊しながら融解する。したがって、固体原料10が融解されない状態で注液溝4を通過し、空隙部3を介して多結晶製造装置100における主坩堝101の融液貯留槽101aに供給する可能性がある。これを防止するために、注液溝4は、融液原料5の流過方向に垂直な方向の断面幅(以後特に断らない限り単に「断面幅」と称す)が、固体原料10の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有するように構成するのが好ましい。さらに好ましくは、注液溝4の断面幅が注液溝4の全長にわたって同じ寸法であり、かつ固体原料10の外形寸法の最小値よりも小さくなるように構成するのがよい。本実施の形態では、注液溝4の断面幅をその全長にわたって15mmとする。これは、本実施の形態で用いる固体原料10の平均外形寸法が40mm、最小外形寸法が20mmであることによる。
【0046】
副坩堝2の下面2dには、液切り溝2eが形成される。液切り溝2eは、副坩堝2の下面2dから鉛直方向上方に向けて形成される凹所であり、空隙部3に隣接する副坩堝2の外壁2bから下面2dを伝って、融液原料5が下面2dの中心および/または周縁部に流過するのを防止するために設けられる。液切り溝2eは、下面2dにおける空隙部3の近傍から下面2dの中心および/または周縁部に向う方向にほぼ直交するように設けられる。本実施の形態では、下面2dにおける空隙部3の近傍を取り囲むように形成される。液切り溝2eの溝幅および溝深さは、融液原料5の粘性、表面張力などの物性を考慮して適宜変更することができる。本実施の形態では、溝幅および溝深さともに5mmとする。
【0047】
断熱部材6は、断熱層6aと、図示しない絶縁層とを含む。断熱層6aは副坩堝2の外壁の周囲に該外壁全体に接するように設けられる。絶縁層は断熱層6aの外側の周囲に断熱層6a全体に接するように設けられる。本実施の形態では、断熱層6aはカーボンフェルトから形成された断熱材によって形成される。また、絶縁層はアルミナ繊維から形成された絶縁材によって形成される。
【0048】
孔付き断熱部材7は、副坩堝2および副坩堝2の外壁の周囲に設けられる断熱層6aの下面を保護するために設けられる。より詳しくは、孔付き断熱部材7は、副坩堝2下面からの熱の輻射を遮断することで、副坩堝2の下面側から副坩堝2を保温し、孔付き断熱部材7の下方に設けられる支持体11が加熱されるのを防止するために設けられる。孔付き断熱部材7には、副坩堝2の外壁2bに形成される鉛直方向の空隙部3に対応する位置に、鉛直方向(または厚み方向)の貫通孔7aが形成され、空隙部3と連通する。本実施の形態では、孔付き断熱部材7には、カーボンフェルトから形成される孔付き断熱材を用いる。
【0049】
副坩堝2は、多結晶製造装置100内において支持体11によって支持される。支持体11は、多結晶製造装置100の側面内壁100aから多結晶製造装置100の内部に向けて水平方向に延びるように設けられる板状部材である。支持体11には、孔付き断熱部材7に形成される貫通孔7aに対応する位置に、鉛直方向(または厚み方向)の貫通孔11aが形成され、空隙部3および貫通孔7aと連通する。これによって、空隙部3を流過または落下する融液原料5が、融液原料供給装置1の鉛直方向下方に配置される主坩堝101の融液貯留槽101aに供給される。本実施の形態では、支持体11は耐火煉瓦によって形成される。
【0050】
副坩堝2の融解槽2a内で固体原料10が融解して生成する融液原料5は、固体原料10の融解槽2aへのさらなる供給に伴って融解槽2aから溢れ出し、注液溝4を流過し、副坩堝2の外壁2bの部分に形成される空隙部3に供給され、空隙部3に隣接する外壁2bの鉛直方向側面および空隙部3内の四角柱状空間を鉛直方向下方に流過し、主坩堝101の融液貯留槽101aに供給される。
【0051】
加熱手段8は、誘導加熱コイル8aと、誘導加熱コイル8aに電力を供給する図示しない電源とを含む。誘導加熱コイル8aは、副坩堝2の周囲に、副坩堝2の全側面すなわち断熱部材6の全側面を囲むように設けられる。誘導加熱コイル8aの内寸は、径400mm、高さ500mmである。図示しない電源は多結晶製造装置100の外部に設けられ、多結晶製造装置100の外壁に設けられる図示しないフランジを介して、誘導加熱コイル8aの両末端の図示しない銅線に接続される。電源の最大出力は、副坩堝2の大きさによって適宜選択できるけれども、本実施の形態では、100kWの電源を用いる。電源から誘導加熱コイル8aに供給される電力値(W)は、該電力値(W)を、誘導加熱コイル8aを構成する電熱線(銅線)の軸線方向に鉛直な方向の断面積(cm)で除した値が20W/cm以上になるように選択するのが好ましく、50W/cm以上になるように選択するのがさらに好ましい。これによって、空隙部3内を通過(流過または落下)する融液原料5が効率的に加熱され、融液原料5の凝固が防止される。また、電源から誘導加熱コイル8aに供給される電力の周波数は、副坩堝2の材質への磁束の浸透深さおよび融液原料5への磁束の浸透深さを考慮して決定される。副坩堝2および融液原料5への磁束の浸透深さは、下記式(1)から求められる。式(1)によれば、誘導加熱コイル8aに供給される電力の周波数を100〜50000Hzの範囲とし、かつ副坩堝2および融解槽2a中に貯留される融液原料5の体積抵抗率をそれぞれ5〜5000μΩ・cmの範囲とすることによって、副坩堝2を効率的に加熱および保温でき、副坩堝2の融解槽2aに貯留される融液原料5を良好な融解状態に保ち、新たに供給される固体原料10を円滑に融解できる。それとともに、空隙部3を流過または落下中の融液原料5が加熱され、融液原料5の凝固を防止できる。副坩堝2および融液原料5を効率的に加熱できる。本実施の形態では、電力の周波数を8500Hz、副坩堝1の抵抗率を1000μΩ・cm、シリコンの融液原料5の抵抗率を70μΩ・cmとする。
δ=5.03×[(ρ/μf)1/2] …(1)
〔式中、δは磁束の浸透深さ(cm)、ρは抵抗率(Ωμ・cm)、μは比透磁率、fは周波数(Hz)をそれぞれ示す。〕
【0052】
加熱手段8は副坩堝2を加熱して融解槽2a内に供給される固体原料10を融解させ、また加熱手段8は、副坩堝2を加熱することによって、副坩堝2の外壁2bから空隙部3に向けて輻射熱を発生させるとともに、空隙部3を加熱することによって、空隙部3内を設定温度に保持し、空隙部3内を通過(流過または落下)する融液原料5が凝固するのを確実に防止する。
【0053】
原料供給手段9には、たとえば、シュータを使用できる。シュータは、鉛直方向上部が多結晶製造装置100の上部外壁に挿通され、該外壁から鉛直方向上方に向けて突出し、鉛直方向下部が多結晶製造装置100の内部において、鉛直方向に対して角度を有して傾斜するように設けられる中空状部材である。シュータの鉛直方向上部の上端部には、図示しないゲートバルブが接続され、ゲートバルブを介してシュータに供給される固体原料10は、シュータ内面を滑り落ちて、シュータの鉛直方向下端部の開口から排出される。シュータの鉛直方向下端部は、融解槽2aの円周近傍部分の鉛直方向上方に位置し、該下端部から排出される固体原料10が融解槽2aに確実に供給されるように配置される。融解槽2aに固体原料10が供給されると、融解槽2a内の融液原料5の液面高さが固体原料10の容積分上昇し、融解槽2aから融液原料5が溢れ出す。ここで、固体原料10とは、半導体材料、金属材料などである。本実施の形態では、シリコンを用いる。
【0054】
融液原料供給装置1によれば、原料供給手段9から副坩堝2の融解槽2aに供給される固体原料10が加熱手段8による加熱を受けて融液原料5となり、さらに固体原料10が供給されると、融解槽2aから融液原料5が溢れ出して注液溝5を流過して空隙部3に供給され、空隙部3さらには貫通孔7a,11aを通過し、主坩堝101の融液貯留槽101aに供給される。
【0055】
融液原料供給装置1による融液原料5の補充は、結晶薄板104の製造中の場合には、補充によって融液原料5の液面揺れなどが起こるのを考慮して、下地基板103が融液原料5から引き上げられた直後から、次の下地基板103が融液原料5中に浸漬される直前までに行うのが好ましく、引き上げられた直後に行うのがさらに好ましい。引き上げられた直後に補充を行うと、次の下地基板103を浸漬するまでに、補充による液面揺れを緩和する時間を最も長く取ることができる。なお、融液原料9の補充時期は、下地基板103の引上げから次の下地基板103の浸漬までに限定されず、たとえば、結晶薄板104を100枚製造して下地基板103の浸漬を一旦停止して融液原料5を補充し、その後に結晶薄板104の製造を再開するといった間欠的な補充を行っても良い。また、多結晶製造装置100の起動時に、主坩堝101の融液貯留槽101aに固体原料10を充填して融解させ、全ての固体原料10が融液原料5になると、融液原料5の液面が低下する。したがって、固体原料10を融解させる場合には、液面低下量を勘案して融液原料5を補充しておく。この操作も融液原料供給装置1によって行われる。本実施の形態では、融液貯留槽101aに設定される最高液面高さから10mm低い位置まで、融液原料5が補充され、固体原料10とともに加熱される。
【0056】
本実施の形態では、外壁2bの上面に注液溝4を形成し、融解槽2aから溢れ出る融液原料5を空隙部3に供給するけれども、それに限定されず、たとえば、注液手段として図6に示す注液孔15を形成しても良い。図6は、別形態の注液手段である注液孔15の構成を模式的に示す断面図である。注液孔15は、融解槽2aと空隙部3との間の外壁2bにおける上面近傍に、融解槽2aから空隙部3に向けての下降勾配を有する貫通孔として形成され、融解槽2aと空隙部3とを連通させる。注液孔15の孔径は、固体原料10の外形寸法の最小値よりも小さく構成するのが好ましい。注液孔15は、融解槽2aから溢れ出る融液原料5を空隙部3に向けて流過させ、空隙部3に供給する。また本実施の形態では、注液手段は注液溝4および注液孔15に限定されず、注液手段として図7に示す注液溝16を形成しても良い。図7は、別形態の注液手段である注液溝16の構成を模式的に示す断面図である。注液溝16は、貫通孔16aと溝部分16bとからなる。貫通孔16aは、融解槽2aと空隙部3との間の外壁2bにおける上面近傍において、融解槽2a側に形成される。貫通孔16aの孔径は、固体原料10の外形寸法の最小値よりも小さく構成するのが好ましい。溝部分16bは貫通孔16aの空隙部3側の端部に連続し、融解槽2a側から空隙部3に向けての下降勾配を有するように形成される溝である。このような構成によっても、融解槽2aから溢れ出る融液原料5が注液溝16を介して空隙部3に供給される。
【0057】
多結晶製造装置100によれば、主坩堝101の融液貯留槽101aに充填される融液原料5に下地基板103を浸漬させることによってその表面に結晶薄板104が形成され、それに伴って減少する融液貯留槽101a内の融液原料5を、融液原料供給装置1によって補充する。結晶薄板104が形成された下地基板103は、多結晶製造装置100の外部に搬出され、下地基板103から結晶薄板104が剥離され、結晶薄板104が得られる。
【0058】
図8は、本発明の実施の第2形態である融液原料供給装置20の構成を模式的に示す断面図である。図9は、図8に示す融液原料供給装置20における注液部材21の構成を拡大して示す断面図である。図10は、図8に示す融液原料供給装置20の要部の上面図である。融液原料供給装置20は融液原料供給装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。融液原料供給装置20は、注液手段として、融液原料供給装置1の注液溝4に代えて、注液部材21を有することを特徴とする。
【0059】
注液部材21は、注液筒22と、滴下部23とを含み、副坩堝2の融解槽2aと空隙部3とを連通させる部材である。注液筒22はパイプ状部材であり、融解槽2aと空隙部3との間の外壁2bにおける上面近傍に、融解槽2aから空隙部3に向けての下降勾配を有するように形成される貫通孔2fに挿通され、係止される。注液筒22の融解槽2a側端部側面には雄ねじ部24が形成され、貫通孔2fの内面には雄ねじ部24に螺合する図示しない雌ねじ部が形成される。注液筒22は、雄ねじ部24を貫通孔2fの図示しない雌ねじ部に羅合させることによって、貫通孔2fに係止される。注液筒22の融解槽2a側端部と、貫通孔2fの融解槽2a側端部とが同じ位置になるように、注液筒22を貫通孔2f内に嵌込または挿入するのがよい。一方、注液筒22の空隙部3側部分は、外壁2bの鉛直方向側面から空隙部3の内部空間に向けて突出し、かつ断熱層6の鉛直方向側面に接触しないように設けられる。融解槽2aから溢れ出ようとする融液原料5は、注液筒22の内部空間を融解槽2aから空隙部3に向けて流過する。なお、注液筒22の孔径は、固体原料10の外形寸法の最小値よりも小さくなるように構成するのが好ましい。
【0060】
滴下部23は、注液筒22に対してほぼ垂直になるように注液筒22の空隙部3側の端部に接続される円筒状部材であり、滴下口25と、液切り部26と、液切り溝27とを含む。滴下口25は、滴下部23の空隙部3側の端部下面に形成され、注液筒22内を流過する融液原料5を、空隙部3内の鉛直方向下方に滴下または落下させる。液切り部26は、滴下部23における円通筒22に対して垂直方向側壁の外側面の鉛直方向下端部近傍から下端部にかけてテーパ形状に形成され、滴下口25での融液原料5の液切れを向上させる。液切り溝27は、滴下部23下面の、滴下口25の注液筒22側の近傍において、空隙部3から融解槽2aに向う方向にほぼ直交する方向に延びるように形成される凹所であり、融液原料5が滴下部23および注液筒22の下面を伝って、空隙部3に隣接する外壁2bの鉛直方向側面などに付着するのを防止する。このように、滴下口25を鉛直方向下方に向けた開口として形成することによって、融液原料5が融解槽2aから勢い良く溢れ出しても、融液原料5が断熱部材6に付着するかまたは断熱部材6の近傍を通過し、融液原料5から蒸発する高温蒸気に晒されるのを防止できる。その結果、断熱部材6が侵食され、その耐用寿命が低下するのを防止できる。なお、注液筒22と滴下部23とは一体成形することが可能である。
【0061】
注液部材21によれば、融液原料5が融解槽2aから溢れ出る勢いに関係なく、融液原料5を、空隙部3に隣接する外壁2bおよび断熱部材6の鉛直方向側面に近付けることなく、鉛直方向下方に滴下または落下させ得るとともに、融液原料5の不要な消費を抑制できる。融液原料供給装置20によれば、注液手段として注液部材21を用いることによって、空隙部3に隣接する外壁2bおよび断熱部材6の損傷を防止し、融液原料5の不要な消費を抑制できるので、耐用寿命の一層の長期化およびランニングコストの一層の低下を図り得る。
【0062】
図11は、本発明の実施の第3形態である融液原料供給装置30の構成を模式的に示す上面図である。融液原料供給装置30は、融液原料供給装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付すかまたは図示そのものを省略し、説明を省略する。融液原料供給装置30は、融解槽2aと断熱部材6との間の外壁2bにおいて、円筒状中空部である空隙部31が形成され、空隙部31の直径が外壁2bの副坩堝2の直径方向における厚みよりも小さくなるように形成されることを特徴とする。本実施の形態では、外壁2bの部分に、外壁2bの外周面端部から直径方向に20mmの位置を中心として、直径20mmの円筒状中空部である空隙部31を設ける。このように構成すると、空隙部31の加熱手段8側に副坩堝2の外壁2bが存在するため、誘導加熱コイル8aから発生する磁束のうち、副坩堝2の外壁2bを透過した分のみが融液原料5の加熱に寄与するので、空隙部31と断熱部材6との間に外壁2bを存在させない場合より、誘導加熱コイル8aの加熱効果は弱くなる。しかしながら、外壁2における空隙部31と断熱部材6との間の部分は、誘導加熱され易くなる。すなわち、空隙部31内を通過する融液原料5に対する誘導加熱効果は低下するけれども、空隙部31と断熱部材6との間の外壁2bの部分から発生する輻射熱が増大する。したがって、融液原料5に対する誘導加熱効果の低下は、輻射熱の増大によって相殺され、空隙部31内において融液原料供給装置1における空隙部3内と同程度の加熱が行われ、融液原料5の凝固が確実に防止される。
【0063】
図12は本発明の実施の第4形態である融液原料供給装置35の構成を模式的に示す上面図である。図13は、図12に示す融液原料供給装置35の要部の上面図である。融液原料供給装置35は、融液原料供給装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。融液原料供給装置35は、仕切り板36を有しかつ仕切り板36を支持する凹所37が副坩堝2に形成される以外は、融液原料供給装置1と同様の構成を有する。仕切り板36は、融解槽2aにおける融液原料5の液面から鉛直方向上方に突出し、融液槽2aにおいて、固体原料10が供給される側の融液原料5の液面と、融液原料5を注液溝4に流入させる側の融液原料5の液面とを仕切るように設けられる板状部材である。仕切り板36は、その両端部が副坩堝2に形成される2つの凹所37a,37bに嵌合され、副坩堝2によって支持される。2つの凹所37a,37bは、それぞれ、副坩堝2の外壁2bの上面に鉛直方向上方に開放される開口部および副坩堝2の融解槽2aを臨む内壁面に融解槽2aに向けて開放される開口部を有し、融解槽2aを介して対向するように設けられる。また、凹所37a,37bを結ぶ仮想線が、融解槽2aに貯留される融液原料液面における原料供給手段9による固体原料10の供給位置と、注液溝4の融液原料流入口4aとを結ぶ仮想線と交差するように、凹所37a,37bが設けられる。このように構成すると、原料供給手段9から供給される固体原料10が、融解槽2aに貯留される融液原料の液面を浮遊して注液溝4の融液原料流入口4aに至り、融液原料流入口4aを部分的に閉塞して、融液原料5が注液溝4内に流入するのを妨げることなどが防止され、融液原料5の主坩堝への連続的な供給が一層確実に実行される。
【0064】
図14は、本発明の実施の別形態である単結晶引上げ装置110の構成を模式的に示す断面図である。単結晶引上げ装置110は、主坩堝101と、主坩堝加熱手段102と、引上げ軸111と、融液原料供給装置1とを含む。主坩堝101および主坩堝加熱手段102は、多結晶製造装置100におけるのと同様の構成を有する。引上げ軸111は、図示しない駆動手段によって鉛直方向に昇降可能に設けられ、その鉛直方向下端部には種結晶112が取り付けられ、種結晶112を支持する部分は図示しない駆動手段によって回転可能に設けられる。したがって、種結晶112自体も回転可能である。融液原料供給装置は、多結晶製造装置100におけるのと同様の構成を有する。単結晶引上げ装置110によれば、主坩堝101の融液貯留槽101aに融液原料5が満たされ、引上げ軸111を下降させることによってその下端部に取り付けられる種結晶112を融液原料5中に浸漬させ、主坩堝101と種結晶112とを回転させながら、引上げ軸111を上昇させることによって、単結晶棒113が製造される。単結晶棒113の製造が進行するにつれて、融液貯留槽101a内の融液原料5が消費されて貯留量が減るので、融液原料供給装置1によって消費量に見合う量の融液原料5を融液貯留槽101aに供給する。単結晶引上げ装置110においても、融液原料5を少量ずつ連続的に補充すれば、単結晶棒113の結晶品質を低下させること無く、融液原料5の余分な消費を抑制しつつ、単結晶棒113を生産性良く製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の融液原料供給装置は、単結晶引上げ装置、薄板製造装置などにおける融液原料貯留用坩堝に、融液原料を補充追加する装置として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の別形態である薄板製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の第1形態である融液原料供給装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示す融液原料供給装置の要部の上面図である。
【図4】図2に示す融液原料供給装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】図2に示す融液原料供給装置の要部の下面図である。
【図6】別形態の注液手段である注液孔の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】別形態の注液手段である注液溝の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の第2形態である融液原料供給装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図8に示す融液原料供給装置における注液部材の構成を拡大して示す断面図である。
【図10】図8に示す融液原料供給装置の要部の上面図である。
【図11】本発明の実施の第3形態である融液原料供給装置の構成を模式的に示す上面図である。
【図12】本発明の実施の第4形態である融液原料供給装置の構成を模式的に示す上面図である。
【図13】図12に示す融液原料供給装置の要部の上面図である。
【図14】本発明の実施の別形態である単結晶引上げ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1,20,30,35 融液原料供給装置
2 副坩堝
3 空隙部
4,16 注液溝
5 融液原料
6 断熱部材
7 穴付き断熱部材
8 加熱手段
9 原料供給手段
10 固体原料
11 支持体
15 注液孔
21 注液部材
22 注液筒
23 滴下部
36 仕切り板
100 多結晶体製造装置
101 主坩堝
102 主坩堝用加熱手段
103 下地基板
104 結晶薄板
110 単結晶引上げ装置
112 種結晶
113 棒状単結晶体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に融液原料を供給する融液原料供給装置であって、
融液原料または融液原料と固体原料とを貯留する凹所である融解槽を有する副坩堝と、
副坩堝の周囲に設けられる加熱手段と、
副坩堝の融解槽と加熱手段との間に形成される空隙部と、
副坩堝の融解槽に固体原料を供給する原料供給手段とを含み、
原料供給手段による副坩堝の融解槽への固体原料の供給によって融解槽から溢れ出る融液原料を、空隙部を介して多結晶体または単結晶体製造装置の主坩堝に供給することを特徴とする融液原料供給装置。
【請求項2】
空隙部は、
副坩堝の外壁を鉛直方向に貫通するように形成され、副坩堝から溢れ出る融液原料が鉛直方向下方に流過または落下するように設けられることを特徴とする請求項1記載の融液原料供給装置。
【請求項3】
副坩堝は、
空隙部に隣接する副坩堝の外壁上面に、空隙部に向けて下降勾配になるように形成され、副坩堝の融解槽と空隙部とを連通させる溝形状の注液手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の融液原料供給装置。
【請求項4】
注液手段は、
融液原料の流過方向に垂直な方向の断面幅が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有することを特徴とする請求項3記載の融液原料供給装置。
【請求項5】
副坩堝は、
空隙部に隣接する副坩堝の外壁上部に該外壁を空隙部に向けて下降勾配になるように挿通し、副坩堝の外壁側面から空隙部に向けて突出するように設けられ、副坩堝の融解槽から溢れ出る融液原料を流過させる注液筒と、
注液筒に対してほぼ垂直になるように注液筒の空隙部側端部またはその近傍に接続され、副坩堝の融解槽から注液筒を介して流過する融液原料を鉛直方向下方に滴下させる滴下部とを備え、副坩堝の融解槽と空隙部とを連通させる注液手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の融液原料供給装置。
【請求項6】
注液筒は、
融液原料の流過方向に垂直な方向の断面径が固体原料の外形寸法の最小値よりも小さい部分を少なくとも1箇所有することを特徴とする請求項5記載の融液原料供給装置。
【請求項7】
副坩堝は、
その外壁上面および内壁面に開口部を有する2つの凹所であって、この2つの凹所を結ぶ仮想線が、原料供給手段による固体原料供給位置と注液手段とを結ぶ仮想線と交差する2つの凹所が形成され、
融解槽における融液原料の液面から鉛直方向上方に突出し、固体原料が供給される側の融液原料の液面と融液原料を注液手段内に流入させる側の融液原料の液面とを仕切るように設けられ、両端部が副坩堝に形成される2つの凹所に嵌入されて副坩堝に支持される仕切り板をさらに含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項8】
副坩堝は下面を有し、
副坩堝の下面には、融液原料が空隙部に隣接する副坩堝外壁から下面の中心および/または周縁部に向けて下面を伝って流れるのを防止するための凹所である液切り溝が、
空隙部に隣接する副坩堝外壁から下面の中心および/または周縁部に向う方向にほぼ直交する方向に延びるように形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項9】
加熱手段は、
誘導加熱コイルと、
誘導加熱コイルに電力を供給する電源とを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項10】
誘導加熱コイルに供給される電力値(W)を誘導加熱コイルの軸線方向に垂直な方向の断面積(cm)で除した値が、20W/cm以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項11】
誘導加熱コイルに供給される電力の周波数が100〜50000Hzであり、かつ副坩堝および融液原料の体積抵抗率がそれぞれ5〜5000μΩ・cmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項12】
固体原料がシリコンを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の融液原料供給装置。
【請求項13】
融液原料を貯留する凹所である融液貯留槽を有する主坩堝と、
主坩堝の融液貯留槽に貯留される融液原料を加熱して融液状態を保持する加熱手段と、
主坩堝の融液貯留槽に融液原料を供給する請求項1〜12のいずれか1つの融液原料供給装置と、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体と、
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体を主坩堝の融液貯留槽に浸漬させて引き上げる浸漬引上げ手段とを含むことを特徴とする多結晶体または単結晶体製造装置。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1つの融液原料供給装置は、
その空隙部が主坩堝の鉛直方向上方に位置し、空隙部内を流過または落下する融液原料が主坩堝に供給されるように設けられることを特徴とする請求項13記載の多結晶体または単結晶体製造装置。
【請求項15】
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体が下地基板であり、
主坩堝に貯留される融液原料に下地基板を浸漬させて引き上げることによって、下地基板表面に原料の薄板状多結晶体を成長させることを特徴とする請求項13または14記載の多結晶体または単結晶体製造装置。
【請求項16】
多結晶体または単結晶体を成長させるための結晶体が単結晶の種結晶であり、
主坩堝に貯留される融液原料に単結晶の種結晶を鉛直方向に浸漬させて引き上げることによって、単結晶の種結晶を起点にして原料の棒状単結晶体を成長させることを特徴とする請求項13または14記載の多結晶体または単結晶体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−290914(P2007−290914A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121296(P2006−121296)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】