説明

血液サンプル分析のための小型の乾式生化学分析器

【課題】ロータ分析器の長所をもち、その短所を備えない分析器を提供する。
【解決手段】血液サンプルの分析用の小型乾式生化学分析器であって、同一フレーム11に、乾式試薬を入れた微小容器13A、13Bを含む使い捨てロータ13を受容するように構成された測定室20と、分析サンプルの種に応じて決定される固定または可変比率のデジタル希釈モジュール21と、測定室の内部で前記ロータの遠心と角方向の位置決めとを行うように構成されたサンプルの遠心モジュール12と、ロータの微小容器に光束を当てるように構成され、フラッシュランプ型の光源14と基準光センサ16とを含む、光学モジュールと、少なくとも使用中の使い捨てロータの特徴を示す情報を少なくとも含む携帯可能な外部メモリ27を読み込むように構成された、外部メモリ読取装置26を備えた、電子処理および制御システム23、24、25とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプル、特に血漿サンプルを分析するための小型の乾式生化学分析器(analyseur compact de biochimie seche)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、これらの分析器の市場には、次の二つの原理がある。
【0003】
VETTEST社の商品IDEXX、J&J社の商品VITROS DT60、ARKRAY社の商品SPOTCHEM、またはFUJI社の商品FUJI3000として販売されている装置で特に実施されている、テスト単位原理(le principe du test par test)。
【0004】
ABAXIS社の商品VETSCAN & PICCOLO、またはHEMAGEN社の商品ANALYSTIIとして販売されているような、ロータ分析器(analyseur a rotor)により実施される全体検査原理(le principe des bilans complets)(事例に応じて、一般に4個から16個のパラメータ(parametre))。
【0005】
実際には、意味のある一つの検査(bilon)を構成するテスト群を選択可能な場合、全体検査(bilans complets)を実施するために、一定のテスト単位原理の分析器を用いることができる。
【0006】
「テスト単位」原理による分析器には、次のような長所がある。
1)基本テスト(test elementaire)(テスト時の作業)を選択できるので、費用が、患者の診断のための装置(unite)に削減される。
2)所望の特別に調べられる検査を構成する所望の基本テストを適切に選択することにより、「自由選択(a la carte)」検査を構成することができる。
【0007】
それに対して、これらの分析器には、次のような短所がある。
3)考えられる様々な任意選択を可能にするために、機器の製造が複雑である。
4)テストボックス(boite de test)の管理が難しい(監視、テストボックス単位、有効期限または再補給状況)。
5)単位となるテストボックスを個々に操作し、複数の検査を編成できるようにしなければならない。
6)考えられる検査が、基本テスト数に制限される(何故なら、単位となる基本テスト要素が大型であるからである)。
7)大抵の場合、個々に較正が必要である。
8)獣医学的な結果の信頼性は、(人間の領域は含まれない)動物界のパラメータの血漿濃度への適合性がないために、相対的なものでしかない。
9)これらの分析器は、基準のないフラッシュランプまたはタングステンランプによる照明システムを用いているので、T4(すなわち一定の免疫テスト)および電解質テスト(Na、K、Cl)のような一定のパラメータでは、高精度の測定を行えない。
【0008】
ARKRAY社の分析器SPOTCHEM EZのような機器は、テスト単位方式または全体検査方式を直ちに選択可能であるが、全体検査方式は、9個のパラメータに制限される。ところで、1回の検査におけるこのパラメータ数量(9個のテスト)は、意味のある診断を可能にするには不十分である場合が多々ある。
【0009】
「全体検査」タイプのためのロータ分析器は、「テスト単位」タイプの分析器に比べて多数の長所を有する。
1)原則として、装置がずっと簡単である。
2)必要な操作が少ない。
3)ロータを容易に管理できる(小型で、有効期限(peremption)の管理がしやすい)。
4)可能な検査がさらに多く揃っている(実際には16個のパラメータに及ぶ)。
5)検査は、「既に準備のできた(deja prets)」状態であり、すなわち、予め決められているので、これらの検査を編成する作業はない。
【0010】
それに対して、これらのロータ分析器には、次のような短所がある。
6)必要な較正が高価であり(ABAXIS社のVETSCAN & PICCOLO分析器のように、標準器を搭載して自動較正を実施する場合)、または面倒である(HEMAGEN社のANALYSTII分析器のようなマニュアル較正の場合)。
7)必ず行わなければならない血漿の希釈は、ロータ内部に搭載された高価な固定比率の自動希釈装置(ABAXIS社の分析器の場合)、または作業台で大きい容積を取るのが難点である外部マニュアル希釈装置(作業スペースが限られた診療所を主な顧客とするいわゆる小型機器にとって、これは重大な欠陥となる)を用いて行われる。
8)獣医学的な結果の信頼性は、同様に、動物界のパラメータの血漿濃度に対する適合性がないので、相対的なものでしかない。
9)フラッシュランプは、基準の光センサを持たず、すなわちタングステンランプによる照明システムであるので、T4および電解質テスト(Na、K、Cl)のような一定のパラメータでは、高精度の測定を行えない。
10)基本テストの管理がないので、顧客が、検査で顧客に提案される全てのテストではなく幾つかのテストだけを望む場合、全体検査の作成はコスト高になる。
【特許文献1】米国特許第5478750号明細書
【特許文献2】米国特許第4515889号明細書
【特許文献3】米国特許第5149501号明細書
【非特許文献1】SCHEMBRI C T ET AL.「CENTRIFUGATION AND CAPILLARITY INTEGRATED INTO A MULTIPLE ANALYTE WHOLE BLOOD ANALYSER」、JOURNAL OF AUTOMATIC CHEMISTRY、TAYLOR & FRANCIS LTD、GB、第17巻第3号、1995年5月、頁99−104
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ロータ分析器の長所をもち、その短所を備えない分析器を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、血液サンプルのための小型の乾式生化学分析器を提案し、同一フレームに、
使い捨て(consommable)ロータを受容するように構成された測定室であって、希釈サンプルを受容する少なくとも一つの中央室(chambre centrale)と、この中央室の周囲に、乾式試薬を入れた複数の微小容器(micro−cuve)とを含み、この微小容器が、ロータの遠心(centrifugation)時に前記中央室からの流体を受容するように構成された、測定室と、
分析サンプルの種に応じて決定される固定または可変比率のデジタル希釈モジュールであって、所与の種の血液サンプルからロータの中央室に希釈サンプルを準備する(disposer)ように構成された、デジタル希釈モジュールと、
測定室の内部で前記ロータの遠心と、複数の角位置における角方向の位置決めとを行うように構成された、サンプルの遠心モジュールと、
測定室の内部で、ロータの微小容器が占有可能な領域で少なくともロータの角位置の幾つかに、光束を当てるように構成され、かつフラッシュランプ型の光源と基準光センサとを含む、光学モジュールと、
希釈モジュール、光学モジュール、および遠心モジュールを制御し、前記測定室の領域により遮断された(interceptes)光束から測定値を収集し、これらの測定値を処理して結果を導き出す電子処理および制御システムであって、少なくとも使用中の使い捨てロータの特徴を示す情報を少なくとも含む携帯可能な外部メモリを読み込むように構成された外部メモリ読取装置を備えた、電子処理および制御システムとを含む。
【0013】
場合によっては組み合わされる、本発明による分析器の有利な特徴によれば、次の通りである。
【0014】
外部メモリは、ロータの較正と、ロータに含まれる乾式試薬の有効期限とに関する情報を含む。
【0015】
外部メモリは、さらに、使用中のロータの使用について、電子処理システムにより更新された情報を含み、これにより、所定のロータの使用を継続管理することができる。
【0016】
外部メモリは、個々の乾式試薬で実施されるテスト数について、電子処理システムにより更新された情報を含み、これにより、場合によっては、考えられる残りのテストと、既に全体として終わったテストとを継続管理できる。また、ロータで行われた利用に応じて課金を実施できる。
【0017】
外部メモリは、乾式試薬でさらに実施可能なテスト数について、電子処理システムにより更新された情報を含む。従って、ロータの交換を管理できる。
【0018】
変形実施形態では、外部メモリが、要求されて実施されたテストと、要求されていないが実施されたテストとについて、電子処理システムにより更新された情報を含む。これにより、人間または動物の患者についてサンプルの採取をやり直したり、あるいはテストをやり直したりする必要性がなくなる。従って、このようにすれば、幾つかのテストロット(さらには、考えられるテスト全体)を常に実施する一方で、要求されたテストに応じてのみ結果を入手できるようにする(その場合には課金する)ことが可能であり、その結果、後でテストが要求された場合でも、新たに要求された(そのため追加課金される)テスト結果を単に利用提供するだけで処理される。
【0019】
外部メモリは、使い捨てロータのロットの特徴を示す情報を含む。従って、ロータは、一般に、ロットごとに製造されかつ購入される。
【0020】
外部メモリは、チップカード(carte a puce)であるので、これは、製造および管理が容易なメモリタイプである。変形実施形態では、この外部メモリが、コンパクトフラッシュ(登録商標)カードまたはUSBキー(cle)であり、これは、同様に、性能がよく知られているメモリである。
【0021】
デジタル希釈モジュールが、モータにより作動されるピストンを含み、前記ピストンおよびモータが、フレームに取り付けられ、また、採取注入口を備えた操作ハンドルを含み、それによって、分析サンプルの種に応じて決定される比率で、分析サンプルを希釈可能である。
【0022】
遠心モジュールが、偏心ステッピングモータと、このモータのシャフトと使用中のロータを支持する駆動シャフトとに固定されるピニオンと、前記ピニオンと協働するベルトとを含み、それによって、モータのピッチごとにロータが回転する角方向ピッチに柔軟性を持たせることができる。
【0023】
基準光センサは、光学モジュール内部で、ビームスプリッタに取り付けられる。
【0024】
光学モジュールが、さらに、フィルタホイール(roue a filtre)等のモノクロメータ(monochromateur)を含む。
【0025】
電子制御システムは、血液サンプルが属する種を入力し、この入力に応じて希釈手段を作動させる入力手段を含む。
【0026】
電子制御システムは、使用中のロータで実施される基本テストを入力するための入力手段を含む。
【0027】
送り出されるエア(air pulse)およびペルチエ(Peltier)システムにより、測定室の温度を正確な安定温度にする調整モジュールを含む。
【0028】
本発明は、有利には、HEMAGEN分析器(上記参照)により使用されるタイプのロータを使用する。
【0029】
本発明による分析装置は、上記の技術的な問題に対応する。特に、ロータ分析器に関する上記の欠点に関して、以下の点に留意することができる。
・ 欠点6。チップカードタイプの外部メモリシステムには、使用準備のできたロータに関して工場で行われた較正値が予め保存されているので、高価または面倒な較正が回避される。こうした外部メモリシステムは、使用準備のできたロータパックと共に配送可能であり、第一のロータの使用時に挿入されるので、分析器は、当該ロータに関する較正値全体を記憶可能である。その結果、コスト、時間、およびこれらの較正の信頼性において有意義な長所が得られる。
・ 欠点7(第二の部分)。小型希釈装置が、器具のフレームに組み込まれているので、作業台(paillasse)では全く追加スペースをとらない。
・ 欠点7(第一の部分)および欠点8。組み込まれた希釈装置は、デジタル式であり、分析される(人類を含めた)動物の種に応じて正確な「自由選択」希釈を行える。こうした希釈の選択は、問題とされる生物学的な種の選択時に分析器で自動的に行われ、器具における線形の測定範囲で血漿濃度を適合させることができる。
・ 欠点9。基準光センサの使用により、T4または電解質のような難しいパラメータの測定に対する精度を著しく上げられる。
・ 欠点10。外部記憶システムの使用(一般にはチップカードタイプ)により、内部減算によって、テストごとにロータの管理を行える。
【0030】
本発明による目的、特徴、および長所は、添付図面に関して限定的ではなく例として挙げられた以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図は、本発明による小型の乾式生化学分析器(ロータを備えるタイプの分析器)10を示す。この分析器は、同一フレーム11に、
・ それぞれ乾式反応調合薬(preparation seche reactionnelle)を入れた微小測定容器13A、13Bなどを含む、ロータ13を受容し(そのため、ロータは、特にABAXIS社またはHEMAGEN社の分析器からそれ自体知られているように、プラスチックのセル(alveole)構造と前記セル内の乾式試薬とからなる全体である)、かつこれらの微小容器の分配と均質な充填とを行うように構成された、サンプルの遠心センタ(centre)12と、
・ (i)フラッシュランプからなる光源14と、(ii)光源から放出される光束を送るように構成され、かつビームスプリッタ17に取り付けられる基準光センサ16を備えた光路15と、(iii)波長を選択するように構成されたフィルタホイールまたはモノクロメータ18とを含む、分光測光を行うように構成された光学モジュールと、
・ ロータを収容する測定/遠心室20を、約37℃の正確な温度に調整するシステム19と、
・ サンプルを調製するために、一回または二回の希釈を行うように構成された、デジタル式の希釈モジュールまたは希釈装置21(分析される血漿のサンプル22をマニュアルまたは自動で希釈する)と、
・ (i)機械機能(希釈、遠心、恒温調整、フラッシュランプ)の制御全体を行う処理モジュール23と、(ii)測定用の各々の微小容器を介して伝えられる単色フラッシュ光を含む測定を実施し、測定値および補正値を計算する収集モジュール24と(注意、この測定機能は、変形実施形態では処理モジュールにより行われる)、(iii)結果を示す(選択、表示、印刷)ためのデータ入力およびディスプレイモジュール25、ならびにユーザインターフェースのアセンブリとを含む、電子制御アセンブリと、
・ ロータとロータの使用とに関する情報を保存する、携帯情報保存要素27の内容を読み込むために、実際に処理モジュールに接続された読取装置26(図1は、考えられる様々な保存要素(チップカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、メモリ、USBキーなど)を参照符号27で示している)。
【0032】
本発明の特徴によれば、ロータ分析器は、このようにして、分析サンプルが採取される種に関連する「デジタル式」定量式(dosage)の統合希釈装置21を含む。この希釈装置は、ここでは単一ピストン型であり、マニュアルまたは自動式に、サンプル(血漿)を1回または2回の連続希釈で調製可能にする。従って、本発明によれば、この希釈が、定量(すなわち分析)される種の血漿パラメータの特定濃度に適合される。いわゆる「デジタル式」のこのような統合希釈装置は、プログラムされた量および/またはプログラム可能な量の血漿を採取可能であり、その後、この血漿を、プログラムされた量および/またはプログラム可能な量の希釈剤で希釈するという特性を有する。プログラミングされた希釈値(血漿採取および希釈液の添加)は、分析される(人類、従ってヒトを含む)動物の種に関連するので、これらのプログラミング値は、後述するように分析器に入力される。
【0033】
本発明の他の特徴によれば、分析器は、以下のような情報を保存可能な外部メモリ媒体(チップカード、SDカードなど)を介して、それぞれのタイプの試薬(ロータ)に関連するデータを管理できる。
a)ロータのセルに含まれる試薬、ロータの型式、ならびにロット番号と整理番号とを決定するパラメータ/分析(プロフィール)タイプ
b)試薬、従ってロータの製造日を起点とするロータの有効期限日で、有利には、輸送および保管時の熱に関する履歴を含むもの
c)ロータの各ロットに関連する各パラメータの固有の較正値および修正値
d)顧客が購入したロータ全体により、要求に応じて実施または少なくともアクセス可能にされるパラメータ/テスト数(たとえばテレフォンカードの単位と同じ原理による)。実際、この外部メモリ媒体は、いわゆる「選択的な」モードで構成されたロータの「テスト時の」使用および課金を同様に可能にし(ロータのいわゆる「プロフィール」パネルの全体についてテスト単位で選択する)、それによって、器具を使用する操作者が作成する特別な検査に応じて、課金の負担をより軽くし、および/または適合させたものにする。
【0034】
図示された分析器の構成要素について、次のような様々な説明を実施できる。
【0035】
1)ロータ。本発明による分析器で使用されるロータの外観は、何年も前から知られているタイプである。これは、円形のプラスチック構造13であり、そのセンタに、(自動またはマニュアルで)希釈された血漿のサンプルを収容する一つまたは複数の室13’を含み、その周辺に、「パラメータ」を決定する乾式生化学試薬を入れた微小容器13Aの集合を含む。これらのロータは、数個から24個(またはそれ以上)までの微小測定容器を収容可能である。ロータが回転すると、遠心により、(遠心力によって)、中央位置に配置された希釈サンプルが、均質かつ同時に周辺の微小容器に向かって分配される。その後、この方法では、割り当てられた各微小容器で、光学モジュールを用いた分光測光方法により、各パラメータ/テスト(いずれにしても要求があった各パラメータ/テスト)の特別な比色分析化学反応を読み取る。
【0036】
2)光学システム。光学システム(図2参照)は、それ自体既知の方法で、(i)フラッシュタイプの光源14と、(ii)支持管15Aから構成されて、測定サンプルまで光線を搬送する光学レンズを含む光路15と、(iii)化学反応の測定のために使用される特別な波長選択システム(フィルタホイールまたはモノクロメータ)(図2では示さず)とを含む。ここで考慮されている例では、光源が、キセノンランプであり、非球面コンデンサ14Aと干渉フィルタ14Bとに続いている。光路は、ここでは、入射ひとみ15Bと、視野レンズ15Cと、射出ひとみ15Dとを含む。この光学システムは、ここでは、この種の超小型分析器において、光学軸のビームスプリッタ17の後方に基準光センサ16を組み込むことからなる革新技術によって識別される。この技術によって、(i)各フラッシュによるフラッシュ照明(あらゆる状況でいつも均質であるとは限らない)と、(ii)一定の出力を下回るともはや不能になる、フラッシュの全体的な残存出力とを、継続管理できる。図2では、光束が、その後、微小容器13Aを通って、収集モジュールの一部をなす測定フォトダイオード24Aに達することが分かる。
【0037】
3)遠心システム。遠心システム12は、(i)ステッピングモータ12Aと、(ii)ロータを支持し、光学基準となる(図2のホイール12Bを参照)遠心駆動シャフト12Eと、(iii)モータ軸および遠心シャフト12Eに取り付けられる歯付きピニオン12C、12Dと、(iv)この2個のピニオンを結合する歯付きリング12Fとを含む、機械組立品から構成される。この遠心システムは、このようにして、(a)高速回転によるサンプルの遠心と、次いで(b)測定される反応サンプルを含む微小測定容器の各々を、光束の前に正確に位置決めする(モータピッチの精度)ことを可能にする。この組立の特徴は、(i)24個の微小容器を含むロータの場合、光束の軸への微小容器の位置決めが、ここで実施可能な「モータピッチ」の精度により得られることにある。さもなければ、一回転で24個または48個のピッチを備えたモータで行われるが、これはもはや存在しない。(ii)多かれ少なかれ微小測定容器を有するロータの場合、単に歯車を適切に選択するだけで(ピニオンの双方における歯数)、この種の器具で分析されるいかなるタイプのロータの取付も十分適切に行える。
【0038】
4)搭載(統合)希釈システム21。単一ピストン搭載タイプのデジタル希釈装置により、血漿サンプルを、一つまたは複数のステップでマニュアルまたは自動で希釈できる。この希釈装置は、(i)ステッピングモータと、(ii)ステッピングモータが接続された、血漿採取とその希釈との2つの機能を持つ単一ピストンと、(iii)一組のピニオンおよび歯付きベルトと、(iv)ピニオンと歯付きベルトとの全体を作動し、採取口28Aを有する外部操作ハンドル28とからなる。本発明の有利な特徴によれば、以下の通りである。
【0039】
この単一ピストン希釈装置は、特に小型の生化学分析装置として、器具の他の機能の装置と同じフレームに統合される。実際、現在のところ、希釈装置を要する小型の生化学分析器の大部分が、このような外部希釈装置(HEMAGEN)、またはロータに組み込まれた希釈装置(ABAXIS)を備えている。そうでない場合、発明の「小型」という概念に入らないずっと大型の生化学分析器となる(実際、これらの大型分析器は、一般に、採取および希釈を行う専用の複数のピストンを中心とする複数の希釈装置構成を有する)。
【0040】
希釈は、分析される動物の種(人類を含む)に適合可能である。この適合性は、選択された種の血漿のプログラムされた希釈値から、単一ピストン希釈装置のデジタル制御により行われる。こうした希釈の適合性により、種の血漿パラメータの通常濃度を、パラメータの光学測定範囲で調節するという大きな長所が得られる。
【0041】
5)測定室システム。一般に上部カバーからアクセス可能な測定室が、準備されたロータ(希釈および分配された血漿)を収容する。本発明の有利な特徴によれば、測定室では、(i)測定室にロータを加えた全体を37℃に恒温保持し、(ii)希釈された一つまたは複数のサンプルを遠心し、最後に、希釈サンプルを受容する微小容器の光学測定を行う。サンプルの恒温保持は、有利には、高温で送り出されるエアにより行われる。送り出されるエアは、フィラメントを備える加熱ブロックと、ペルチエ効果による冷却システムとを制御する電子センサにより調整される。こうした全体により、測定室の内部温度を正確に安定して約37℃にすることができる。これは、希釈された血漿の遠心プロセス中、その後はパラメータの測定プロセス中、ずっと行われる。
【0042】
6)外部メモリ媒体によるロータ(試薬)管理システム。「チップカード」(またはその他)のタイプの外部メモリ媒体は、各試薬(ロータ)ボックスと一緒に配送される。このメモリ媒体は、工場で準備され、この媒体に接続されるロータに関する情報を搭載している。情報は、(i)ロータの識別(型式とロット番号)、(ii)ロータの有効性(従って有効期限)、(iii)ロータのパラメータの較正および/または修正に関するデータ、(iv)要求された結果と、実施されたテスト等とに応じた、テスト価格の「自由選択による」管理(前述のように、要求されたテストよりも多くのテストを実施することができる)とを含む。試薬(ロータ)を受け取ると、あるいは分析の直前に、顧客(操作者)は、分析器にメモリ媒体を挿入し、それによって、受け取ったロータに関するデータを装置にロードする。これらのデータは、もちろん、第一にそれらロータ自体の識別と関連したものでなくてはならず、有利には、次のような管理を行える。
a)有効期限日。製造日を起点とするロータの使用期限日である。
b)ロータの熱に関する履歴。熱に関する履歴により、輸送中および保存中に、ロータが被った熱による「危険性(alea)」に応じて有効期限日を短縮し、それによって、使用の制限時間を修正可能である。
c)ロータの各パラメータの較正データ。試薬の成分の変動により必要となるロータの較正は、工場で実施されるので、ロータに搭載された較正要素を備えたり(ABAXIS)、またはロータの新しいロットごとに分析器を較正したりする(HEMAGEN)、競争相手に比べて、著しくコストを節約できる。
d)ロータの各パラメータの修正データ。プラスチックおよびその他の成分の変動により必要となるロータの修正は、工場で行われる。これらのデータは、より優れた測定品質を提供する。
e)いわゆる「選択的な」プロフィール。記憶媒体は、最終的な顧客が、「選択的な」モードとも呼ばれる「自由選択」モードを随意に管理できるパラメータ数を、前払い(prepayer)により搭載している。こうした有利なロータの使用管理モードにより、所望の検査を「パラメータ単位」で選択することによって、ロータの部分使用が可能になる。選択された(行われる、すなわち操作者がアクセスできるようにされた)パラメータだけが、(テレフォンカードのような)メモリ媒体で可能な最大テスト数から減算する方式で考慮される。この管理方式の大きな長所は、好ましくは、(i)「プロフィール」と呼ばれる全体使用に向けられた試薬から、一つ一つパラメータに課金する。これは、この分野のどの分析器でも行われていない。(ii)実施された選択的な検査を補完するパラメータを即座に得られる。何故なら、「最後に(in fine)」ロータの全てのパラメータが、実施され(すなわち全てのテストが実施された後で読み込まれ)るからであり、これは、前払いされたパラメータ数を単に減分しながら行われる。実際、有利には、全てのテストの実施、光学的な読み込み、および記憶を実施できるが、操作者が選択するテスト結果だけが、操作者に利用提供される。従って、たとえば最初に選択されたテストの分析でその必要があれば、後でサンプルの結果全体に戻って、補完的なテスト結果にアクセスすることが可能である。第一のプロフィールに従って、最初に有効に選択された以外のテスト結果をこのように記憶していることによって(有利には、所定のロータで可能なテスト結果全体が、記憶されている)、この第一のプロフィールの実行後、数日間たってからでも「自由選択で」呼び出すことができるので、(i)病院(または保健所)にもはや行けない患者を呼び戻し、(ii)新たに患者の血液を採取し(これは、一定の重大な状況では困難な行為となることがある)、(iii)新しいロータを使って(コストが高くなるかもしれない)、新しい検査を新規に操作および準備することが回避される。
【0043】
操作サイクル
1)血液採取、遠心。動物種(人類を含む)の血液サンプル22を、個体から採取し、特別な血液凝固阻止薬を入れてから遠心する(図示せず)。
2)調製、希釈。分析される動物種を、分析器のデータバンクで選択し(インターフェースモジュール25への作用、または読取装置26にメモリ27を挿入することによる作用)、血漿(遠心された血液の上部)を、希釈装置21の操作ハンドル28の採取口28Aに入れる。分析装置の内部バンクから選択された所定の希釈比率で、ロータにより調製するための血漿の希釈は、このように操作者により行われる。
3)ロータの導入。一回または複数回の希釈が行われ、測定室の上部カバーをあけてから、分析装置のチャンバにロータを導入する。その場合、ロータを特徴づけるデータが、工場で予め登録されたバーコードによりその上部で読み込まれ、外部メモリ媒体27から提供されるロータのパラメータの識別データ、較正データ、修正データ、管理データと関連付けられる。
4)選択的なモードの場合のテストの選択。この選択は、任意にすぎず(プロフィールモードでは、いかなる選択も不要であり、ロータは、微小容器ごとに順次、完全に読み込まれる)、実際には、これが、インターフェースモジュール25により行われる。
5)分析の開始。測定室の上部カバーを閉め、「測定開始」ボタンを作動する(インターフェースモジュール25)。
6)ロータの恒温保持。温度制御要素19により、測定室の温度、従ってロータと、その中央チャンバ13’の中身の温度は、送り出されるエアにより所定の時間中37℃にされ、温度は、ペルチエ効果により制御される。
7)遠心、血漿分配。ロータの中心で希釈された血漿は、遠心により各々の微小測定容器に分配される。この遠心は、また、正確な遠心速度で正確な時間中行われる。
8)サンプルの測定。遠心が行われると、微小測定容器は、微小測定容器に含まれる各パラメータ(試薬)に関連する特定波長の光束に一つずつ導かれる(ホイール18を作動するだけでよい)。このようにして様々な測定が行われ(収集モジュール24)、「最終地点」(均衡後)で測定されるパラメータもあれば、(時間に応じた)「反応速度(cinetique)」で測定されるパラメータもある。
9)結果の較正、修正。分析の終わりに、各測定結果が、ロータに結合される外部メモリ媒体に搭載されたデータに応じて、(処理モジュール26を用いて)較正および/または補正される。
10)結果報告。期待される結果を得るために選択されたモード、すなわち全体的または選択的なプロフィールモードに従って結果を示し、すなわち、表示および/または印刷し、および/または情報処理インターフェース(モジュール25による)で送る。
【0044】
実際的な観点から、サンプルの採取および分析は、アシスタントまたは介護者により実施可能であり、一方で、こうした瞬間には、しばしば多忙な主治医または獣医師(外部で緊急に呼ばれた医師、または朝(matin)に外科手術のある獣医)は、後になってから分析を「読み込んで」解釈するだけでよい。これは特に、患者の緊急診察が不要な日常的な検査に対して特に価値がある。
【0045】
以下の例により、メモリ媒体(チップカードまたは他のあらゆる電子記憶媒体)が、最初に要求された以上のテスト結果を記憶している場合、本発明による分析装置が提供する柔軟な用途を評価することができる。
【0046】
患者(人間または動物)の血液サンプルを、(1)グルコース、(2)尿素等のパラメータの検証が必要な血液分析のために、朝に採取した(「preprendial」)。こうした「2個のパラメータ」の検査は、確かに、日常的な検査で実施できる最も小規模な検査のうちの一つである(一般医の通常の態度を見ると、日常検査にあまり時間をかけたがらない)。医師(場合に応じて獣医師)は、一つのパラメータに著しい異常を見出し、(3)コレステロール、(4)トリグリセリドのような幾つかの補完的なパラメータを調べたいと思うかもしれない。その場合、新たな採取のために患者を呼び戻したり(特に採取がもはやできない場合)、あるいは、新しいロータにより再度分析するために利用可能な残りのサンプルを別に取り出して操作したりする必要は全くない。この医師または獣医師は、分析器のスクリーンに、当該患者で既に実施されて記憶されている検査をもう一度映し出して、利用できる表示可能な実施テストのリスト全体から、(3)コレステロール、(4)トリグリセリドのテストだけを開けばよい。この二つの最新テストが、表示、印刷され、チップカードから減算される。このような操作は、患者が医師のもとに履歴を有する場合も同様に有効であるので、時間「t」における患者の状態のより広範な「視覚化」により、経時的にいつでも過去に遡って患者の継続管理を補完できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による分析器の構造を示す図である。
【図2】この分析器の光学ブロックの詳細図である。
【図3】この分析器の分解組立斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
11 同一フレーム
12 遠心センタ
12A ステッピングモータ
12B ホイール
12C、12D 歯付きピニオン
12E 遠心駆動シャフト
12F 歯付きリング
13 ロータ
13A、13B 微小測定容器
14 光源
14A 非球面コンデンサ
14B 干渉フィルタ
15 光路
15A 支持管
15B 入射ひとみ
15C 視野レンズ
15D 射出ひとみ
16 基準光センサ
17 ビームスプリッタ
18 モノクロメータ
19 温度制御要素
20 測定/遠心室
21 希釈装置
22 血漿のサンプル
23 処理モジュール
24 収集モジュール
24A 測定フォトダイオード
25 データ入力ディスプレイモジュール
26 読取装置
27 携帯情報保存要素
28 外部操作ハンドル
28A 採取口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルのための小型の乾式生化学分析器であって、同一フレーム(11)に、
使い捨てロータ(13)を受容するように構成された測定室(20)を含み、該測定室(20)が、希釈サンプルを受容する少なくとも一つの中央室(13’)と、該中央室の周囲に、乾式試薬を入れた複数の微小容器(13A、13B)とを含み、前記微小容器が、ロータの遠心時に前記中央室からの流体を受容するように構成され、同一フレーム(11)にさらに、
分析サンプルの種に応じて決定される固定または可変比率のデジタル希釈モジュール(21)を含み、該デジタル希釈モジュール(21)が、所与の種の血液サンプル(22)からロータの中央室に希釈サンプルを準備するように構成され、同一フレーム(11)にさらに、
測定室の内部で前記ロータの遠心と、複数の角位置における角方向の位置決めとを行うように構成された、サンプルの遠心モジュール(12)と、
測定室の内部で、ロータの微小容器が占有可能な領域の少なくともロータの前記角位置の幾つかに、光束を当てるように構成され、かつフラッシュランプ型の光源(14)と基準光センサ(16)とを含む、光学モジュールと、
デジタル希釈モジュール、光学モジュール、および遠心モジュールを制御し、前記測定室の領域により遮断された光束から測定値を収集し、該測定値を処理して結果を導き出す電子処理および制御システム(23、24、25)とを含み、該電子処理および制御システム(23、24、25)が、少なくとも使用中の使い捨てロータの特徴を示す情報を少なくとも含む携帯可能な外部メモリ(27)を読み込むように構成された、外部メモリ読取装置(26)を備える、分析器。
【請求項2】
外部メモリが、ロータの較正と、該ロータに含まれる乾式試薬の有効期限とに関する情報を含むことを特徴とする、請求項1に記載の分析器。
【請求項3】
外部メモリが、さらに、使用中のロータの使用について、電子処理システムにより更新された情報を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の分析器。
【請求項4】
外部メモリが、個々の乾式試薬で実施されるテスト数について、電子処理システムにより更新された情報を含むことを特徴とする、請求項3に記載の分析器。
【請求項5】
外部メモリが、乾式試薬でさらに実施可能なテスト数について、電子処理システムにより更新された情報を含むことを特徴とする、請求項4に記載の分析器。
【請求項6】
外部メモリが、要求されて実施されたテストと、要求されていないが実施されたテストとについて、電子処理システムにより更新された情報を含むことを特徴とする、請求項3に記載の分析器。
【請求項7】
外部メモリが、使い捨てロータのロットの特徴を示す情報を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項8】
外部メモリが、チップカードであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項9】
外部メモリが、コンパクトフラッシュ(登録商標)カードであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項10】
外部メモリが、USBキーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項11】
デジタル希釈モジュールが、モータにより作動されるピストンを含み、前記ピストンおよびモータが、フレームに取り付けられ、また採取注入口を備えた操作ハンドルを含み、それによって、分析サンプルの種に応じて決定される比率で分析サンプルを希釈可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項12】
遠心モジュールが、偏心ステッピングモータと、該偏心ステッピングモータのシャフトと使用中のロータを支持する駆動シャフトとに固定されるピニオンと、前記ピニオンに協働するベルトとを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項13】
基準光センサ(16)が、光学モジュール内部で、ビームスプリッタ(17)に取り付けられることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項14】
光学モジュールが、フィルタホイール(18)等のモノクロメータを含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項15】
電子制御システムが、血液サンプルが属する種を入力し、該入力に応じて希釈手段を作動させる入力手段を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項16】
電子制御システムが、使用中のロータで実施される基本テストを入力するための入力手段を含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項17】
送り出されるエアおよびペルチエシステムにより、測定室(20)の温度を正確な安定温度にする調整モジュール(19)を含むことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の分析器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−101543(P2007−101543A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263829(P2006−263829)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506328000)
【Fターム(参考)】