説明

血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼのモジュレータの使用を含む、神経精神疾患を治療するためのグルタミン酸受容体の調節方法

グルタミン酸受容体活性を回復するための血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼ活性の調節。さらに、神経精神疾患を発見および治療するのに有用な方法および化合物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
グルココルチコイド誘導性キナーゼを調節する物質に、血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼSGK1、SGK2またはSGK3発現細胞を接触させることを含む、グルタミン酸受容体活性を変化させる方法。さらに、本発明は、グルタミン酸受容体のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関連する疾患の診断および治療に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ニューロンは、神経伝達を維持し微調整するため、関係する神経伝達物質受容体の発現や機能、細胞内局在性を絶えず修飾している。修飾された興奮性受容体系のなかには、GluR1からGluR4のサブユニットを含むイオンチャネル型グルタミン酸受容体のAMPAファミリーの仲間がある。AMPA受容体は、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびラスムッセン脳炎など、さまざまな疾患に関与している。ラスムッセン脳炎は、重篤なてんかん、片麻痺、痴呆および脳の炎症を特徴とする進行性疾患である。患者がGluR3に対する抗体を惹起している場合、ラスムッセン脳炎を来たすことが認められている。GluR3抗体は、皮質ニューロンのAMPA受容体を活性化することができること、自己抗体と相互作用するGluR3領域は、アゴニスト結合部位内にあることが証明されている(Twymanら、1995年)。したがって、受容体の活性により誘発された神経興奮は、この疾患の特徴であるてんかん発作を引き起こすかもしれない。しかし、神経精神疾患を引き起こす機構を理解するには、解決されていない問題も多い。
【0003】
グルタミン酸受容体は、中枢神経系における興奮性シグナル伝達の最も重要な伝達物質である(M Sheng、T.Nakagawa、Nature 417、601、2002年)。グルタミン酸受容体は、後シナプスニューロンの複数の生化学的経路を活性化し、最終的に後シナプス神経の可塑性を引き起こす。シナプス強度の変化は、後シナプスAMPA受容体の活性および/または存在量を変えることで発生させることができる。海馬ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3−K)は、長期増強作用中に活性化され、シナプスのAMPA受容体と複合体を形成する(P.P.Sannaら、J.Neurosci、22、3359頁、2002年;M.Passafaro、V.PiechおよびM.Sheng、Nat.Neurosci、4、917頁、2001年;H.Y.Manら、Neuron39、611頁、2003年)。しかし、細胞膜におけるPI3−KからAMPA受容体が豊富な部位に至るシグナル経路についてはよくわかっていない。PI3−Kの下流シグナル伝達分子のなかには、プロテインキナーゼBと、血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼファミリーの、SGK1、SGK2およびSGK3の3つのメンバーすべてをリン酸化することにより活性化させる3−ホスホイノシチド依存性キナーゼ(PDK)がある(F.Lang、P.Cohen、Sci.STKE.108、RE17、2001年)。SGK1、SGK2およびSGK3は3つとも、細胞膜のチャネルタンパク質の存在量を増加させることにより、腎上皮型Na+チャネルENaCを調節することが示されている(F.Langら、Cell.Physiol.Biochem.13、41頁、2003年;D.Pearce、Cell.Physiol.Biochem.13、13〜20頁、2003年;F.Verry、J.Loffing、M.Zecevic、D.Heitzmann、O.Staub、Cell.Physiol.Biochem.13、21頁、2003年)。3つのキナーゼはすべて、脳に多量に発現するため(T.Kobayashi、P.Cohen、Biochem J.339、319頁、1999年;S.Waldegger、P.Barth、J.N.Jr.Forrest、R.Greger、F.Lang、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 94、440頁、1997年)、本発明者らはそれらがAMPA受容体の調節に関与しているのではないかと仮説を立てた。
【0004】
SGK1は、インスリン様成長因子IGF1、インスリン、およびホスホイノシトール−3−キナーゼ(PI3キナーゼ)ならびにホスホイノシトール依存性キナーゼPDK1が関与するシグナルカスケードによる酸化ストレスを介して調節されることが示されている(Kobayashi&Cohen 1999年、Parkら 1999年、Kobayashiら 1999年)。PDK1によるSGK1の活性化は、セリン422のリン酸化反応が関係している。さらに、ser422からアスパラギン酸塩への変異(S422DSGK1)は、キナーゼの継続的活性をもたらすことが示されている(Kobayashiら 1999年)。
【0005】
グルココルチコイド誘導性キナーゼSGK1活性を測定するには、さまざまなアッセイ法が利用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorgら、J.of.Biomolecular Screening、2002年、7、11〜19頁)やフラッシュプレートアッセイでは、γATPを用いて基質であるタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化反応が測定されるであろう。阻害化合物の存在下では、放射性シグナルは検出されないか、検出量は低下する。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)、および蛍光偏光(FP)法は、複数の検定法に有用である(Sillsら、J.of.Biomolecular Screening、2002年、191〜214頁)。他の非放射性ELISAによる検定法は、特異的リン抗体(AB)を用いる。リン抗体は、リン酸化基質にのみ結合する。この結合は、ペルオキシダーゼ結合型抗ヒツジ二次抗体を用いた化学発光により検出可能である(Rossら、2002年、Biochem.J.、immediate publication、マニュスクリプトBJ20020786)。
【0006】
先行研究の結果、SGK1は、腎上皮型Na+チャネルの強力な刺激物質であることが明らかになった(De La Rosaら 1999年、Boehmerら 2000年、Chenら 1999年、Naray−Fejes−Tothら 1999年、Langら 2000年、Shigaevら 2000年、Wagnerら 2001年)。
【0007】
SGK1に関連する別の所見は、ヌクレオチドの組み合わせが(CC/CT)であるエクソン8の一塩基多型(SNP)、およびイントロン6の別の多型(CC)は、血圧上昇に関係しているというものであり(Busjahnら 2002年)、この所見から、SGK1は血圧調節および高血圧に重要であると考えられるという結論が示された。
【0008】
SGK1活性の増加は、腎臓におけるナトリウム吸収の増加により高血圧をもたらす腎上皮型Na+チャネル活性と相関しているため(Lifton 1996年;Staessenら、2003年;Warnock 2001年)、SGK1対立遺伝子多型の組み合わせによっては、腎臓におけるNa+吸収の増加を来たす可能性があり、それが血圧を上昇させることになると結論された(Busjahnら、2002年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
本出願は、血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼの複数のアイソフォームが、グルタミン酸受容体の強力なモジュレータであることを図らずも示すものである。
【0010】
グルタミン酸受容体の調節についてはほとんどわかっておらず、この発明は、血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼファミリーの、SGK1、SGK2およびSGK3の3つのメンバーはすべて、グルタミン酸受容体調節に関与しているという予想外の結果について述べる。グルタミン酸受容体は、神経系における興奮性シグナル伝達の最も重要なメディエーターであるため、そのアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは、数多くの神経精神疾患で考察されてきた。したがって、本発明は、グルタミン酸受容体活性状態に関連して、組織標本および検体でのアップレギュレートされたSGK1、SGK2またはSGK3発現を測定することによる、神経精神疾患の進行、退行または発症の判定方法について述べる。
【0011】
SGKは、輸送、シナプス可塑性および記憶の固定を与えることで知られるAMPA受容体のPI3−K依存性調節に関与していることが初めて示された。
【0012】
SGK3は、GluR1の強力な調節因子であるのに対し、SKG1は、GluR6活性に関与している。SGK3は、細胞膜のGluR1の存在量を高め、GluR1によるグルタミン酸誘発電流を増加させる。GluR6は、SGK1認識部位のRXRXXS/Tを介してSGK1と相互作用しないため、未知のアミノ酸配列に影響する新たな機構が関与している可能性がある。
【0013】
本発明の別の所見は、GluR6はカイニン酸受容体の必須サブユニットであること、およびSGK1によるGluR6の調節は、カイニン酸受容体の輸送、シナプス可塑性および神経細胞の興奮性の調節に関与していることである。
【0014】
したがって、SGK1の調節により、グルタミン酸受容体サブユニットGluR6の活性に影響を与えることは、海馬など学習と記憶に関与する脳の領域のほか、基底核や小脳など行動の運動的側面および動機付け側面に関与する領域で多量に発現するKARを標的とする方法となりうる。
【0015】
さらに、程度は少ないながら、SGK1ではなくSGK2は、ラットのGluR1を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜で、AMPAサブユニットのGluR1タンパク質存在量を増大させることにより、グルタミン酸誘発電流を増加させることが示されている。
【0016】
SGK1の調節は、SGK1遺伝子の一塩基多型により定義される、臨床的に関連のある表現型または遺伝子型に適用した場合、特に有用である。したがって、治療を必要としている個体由来の標本における多型SGK1 SNP変異体を分析することは、別の適用となりうる。さらに、本発明は、SGK1発現を測定することで、疾患の進行、退行または発症を判定する方法について述べる。疾患を有する個体由来の標本は、選択されたSGK1 SNP変異体、および疾患の素因とのその相関を分析することをさらに可能にする。
【0017】
別の態様は、SGK1、SGK2またはSGK3の関連疾患を調節する新薬候補を同定するためのスクリーニング法に関する。特に有用なモジュレータは、SGK1機能に干渉することにより、グルタミン酸受容体活性のダウンレギュレーションを引き起こす化合物である。SGK1阻害因子は、てんかん、卒中、外傷後行動障害、不安、統合失調症、双極性障害、うつ病、肝性脳症、新生児溶血性疾患、中毒、アルコール依存症、HIV脳症、神経変性障害、錐体外路運動障害、運動失調、筋萎縮性側策硬化症、M.アルツハイマー、黄斑変性、難聴の群から選択される疾患症状を来たした被験者の治療に、特に有用である。この発明に従って行われた薬剤スクリーニング法は、SGK1、SGK2またはSGK3をターゲットにする治療化合物の発見につながった。
【0018】
2つの異なるクラスの化合物、アシルヒドラゾン誘導体クラスに属するものと、もう1つのピリドピリミジン誘導体に属するものが同定された。薬剤として有効なキャリア、賦形剤または希釈剤を含む医薬品組成物中の選択されたSGK1阻害化合物は、前述した疾患の治療に有用である。所望の治療プロファイルを有する新薬の同定に有用なスクリーニング法は、この出願で開示された化合物に限らないことが、この発明の要となる。さらに、SGK1、SGK2、SGK3調節化合物をスクリーニングするには、一段階方式または二段階方式を適用することが有用であることは、専門家にとって明らかである。そのようなスクリーニングの第一段階には、SGKキナーゼ活性に干渉する化合物の同定がある。さまざまなアッセイ形式が利用可能であり、好ましいアッセイは、γATP存在下での、基質であるタンパク質またはペプチドのSGKにより触媒される放射性リン酸化の測定を用いる。SGK阻害化合物の存在下では、放射性シグナルは検出されないか、検出量は低下する。第2の読み出し法では、SGK1阻害化合物は、そのグルタミン酸受容体活性回復能をモニターされるが、他の読み出し活性の測定も同様に有用である可能性がある。
【0019】
発明の詳細な説明
グルタミン酸受容体は、後シナプスニューロンの複数の生化学的経路を活性化し、最終的に後シナプス神経の可塑性を引き起こす。したがって、本発明の重要な態様は、どのようにグルタミン酸受容体が調節されるかを教示することである。
【0020】
GluR1調節の研究は、さまざまなSGKアイソフォームとの共発現を必要とする。試験では、SGK1、SGK2またはSGK3を、AMPA受容体サブユニットのGluR1と共にアフリカツメガエル卵母細胞で発現させた。非脱感作GluR1変異体であるGluR1(L479Y)(Y.Stern−Bach、S.Russo、M.Neumann、C.Rosenmund、Neuron21、907頁、1988年)が実験で用いられた。
【0021】
図1に示した通り、タンパク質膜のGluR1存在量は、GluR1のみを発現している卵母細胞のGluR1タンパク質の存在量に比べ、SGK3と共にGluR1を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞では大幅に増加する。GluR1タンパク質の存在量は、SGK2を共発現した後に上昇する傾向が認められたのに対し、SGK1の共発現では影響は見られなかった。タンパク質の存在量は、グルタミン酸誘発電流に対する同様の影響と対応していた(図2)。グルタミン酸誘発電流は、GluR1のみを発現しているアフリカツメガエル卵母細胞に比べ、SGK3と共にGluR1を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞で有意に大きかった。SGK2を共発現しているアフリカツメガエル卵母細胞のグルタミン酸誘発電流は、SGK3発現卵母細胞のそれに比べて有意に小さかったが、GluR1のみを発現しているアフリカツメガエル卵母細胞の電流に比べて有意に大きかった。SGK1の共発現は、GluR1誘発電流を有意に変更することはなかった。
【0022】
本観察は、AMPA受容体のGluR1サブユニットの調節における新たな機構を明らかにした。GluR1の神経細胞表面への伝達は、NMDA受容体活性により調節され、Ca2+流入を導き(M.Sheng、M.J.Kim、Science 298、776頁、2002年)、それに続いてPI3−キナーゼが活性化される(M.S.Perkinton、J.K.Ip、G.L.Wood、A.J.Crossthwaite、R.J.Williams、J.Neurochem.80、239頁、2002年)。PI3−キナーゼの活性化は、シグナリングカスケードを誘発し、最終的にSGK3活性を引き起こし、その結果、細胞膜のGluR1タンパク質存在量を増大させる。SGK3は、膜のGluR1の安定化をもたらすため、その回収とその後の分解を防止し、および/またはタンパク質の細胞膜への輸送を増大させる。したがって、本観察は、SGK2およびSGK3が実質的にGluR1存在量の微調整に寄与していることを初めて記述するものである。
【0023】
本所見によれば、SGK3は、GluR1依存性神経機能に関与していると予測される。GluR1は、ヘテロ二量体のGluR1−GluR2受容体では、GluR2より優位であり(Y.Hayashi、ら、Science 287、2262頁、2000年;S.Shi、Y.Hayashi、J.A.Esteban、R.Malinow、Cell 105、331頁、2001年)、海馬CA1の長期増強に必要とされ(D.Zamanillo、ら、Science 284、1805頁、1999年)、空間記憶の発生に関与している(H.K.Lee、ら、Cell 112、631頁、2003年;D.Reisel、ら、Nat.Neurosci.5、868頁、2002年)。
【0024】
GluR3の調節をSGKアイソフォームにより試験するため、AMPA受容体サブユニットGluR3を、SGK1、SGK2またはSGK3のいずれか1つを共発現している、またはしていないアフリカツメガエル卵母細胞において発現させた。グルタミン酸誘発電流は、GluR3のみを発現しているアフリカツメガエル卵母細胞に比べ、SGK2と共にGluR3を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞で有意に小さかった(図5)のに対し、関連するプロテインキナーゼB(PKB)との共発現は、有意な影響は認められなかった。SGK1およびSGK3は、同様に電流振幅を減少させるが、SGK2に比べ影響は小さかった。
【0025】
既知のSGK活性化モジュレータであるデキサメタゾンを8日間または20日間投与した結果、GluR6ポリクローナル抗体で染色した脳切片で見られた通り、マウス海馬CA3ニューロンのGluR6タンパク質存在量に有意な増加が見られた(図6)。海馬CA3ニューロンを、シナプス部位のマーカーであるMAP2抗体で染色し、シナプスにおいて染色されている増加したGluR6を同定した。
【0026】
したがって、GluR6存在量は、海馬CA3ニューロンのシナプス部位で、デキサメタゾンにより増大される。しかし、GluR6の前シナプスまたは後シナプスの発現を区別することはできない。星状細胞を特異的に染色するGFAPは、デキサメタゾンで処置された動物のGluR6存在量は、対照動物に比べて星状細胞では増大しないことを明らかにした(図6)。この結果は、SGK1が星状細胞では発現されないことを示したin situのハイブリダイゼーション試験(Waerntgesら)に基づく予測と一致する。
【0027】
SGK1とGluR6の機能的関連を試験するため、ラットKA受容体サブユニットGluR6を、SGK1、SGK2またはSGK3のいずれかを共発現している、またはしていないアフリカツメガエル卵母細胞において発現させた。図4に示した通り、GluR6のタンパク質存在量は、GluR6のみを発現している卵母細胞のGluR6タンパク質存在量に比べ、SGK1と共にGluR6を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞で有意に増大する。GluR6タンパク質存在量に対する、小さいが統計的に有意な影響は、SGK2またはSGK3の共発現の後に観察されたのに対し、関連するプロテインキナーゼB(PKB)による共発現は、有意な影響は見られなかった。タンパク質存在量と同様に、グルタミン酸誘発電流は、図3で示した通り、GluR6のみを発現しているアフリカツメガエル卵母細胞に比べ、SGK1と共にGluR6を発現しているアフリカツメガエル卵母細胞で有意に大きかった。さらに、同様に、SGK2およびSGK3は電流を刺激するが、SGK1に比べ影響は有意に低かった。
【0028】
本観察は、KA受容体のGluR6サブユニットの調節における新たな機構を明らかにする。GluR6サブユニットが組み合わされたカイニン酸受容体は、CA3およびCA1錐体神経のカイニン酸およびドーモイ酸に対する感受性にとって重要である(Bureauら 653〜63)。GluR6は、SGK1認識部位のRXRXXS/Tを含んでいないため、GluR6がSGK1の直接の標的タンパク質であるとは考えにくい。しかし、SGK1が、この既知のアミノ酸配列以外の部位を認識していることを除外することはできない。膜タンパク質であるスタルガジンは、AMPA受容体を細胞表面へ誘導し、後シナプス部位を特異的に標的にさせるうえで不可欠であることが示されている。スタルガジンは、SGK1認識部位を含んでいる。しかし、KARは、スタルガジンにより調節されないことが最近発表された(Chen 2003年)。したがって、SGK1は、スタルガジンを介してGluR6を調節しているとは考えられず、本発明者らは卵母細胞における混注実験によりそれを確認した(データは図示せず)。
【0029】
同定された新たなキナーゼに関連する本発明の調節機構は、GluR6の強力な調節因子である。SGK1は、細胞膜のGluR6存在量を増大させ、GluR6によるグルタミン酸誘発電流を増加させる。したがって、SGK1は、カイニン酸受容体の輸送、シナプス可塑性および神経細胞の興奮性の調節に関与している。
【0030】
図面の簡単な説明
図1:SGKを共発現しているアフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜におけるGluR1サブユニットのタンパク質存在量の増加。
【0031】
(A)代表的なウエスタンブロット法。GluR1の検出には、ウサギの免疫親和性精製された抗GluR1一次抗体(1μg/μl、Upstate)を用いた。βチューブリンの検出には、マウスモノクローナル抗βチューブリン一次抗体(1:250、Santa Cruz)を用いた。GluR1タンパク質の見かけの分子量は、〜105kDaである。(B)棒グラフは、GluR1細胞膜タンパク質の相対存在量を示している。バンド強度は、ソフトウェアScion画像を用いて演算解析により定量化した。異なるバッチの3つの異なるブロットの値は、統計分析に用いた。有意な変化(p<0.05)はIで示されている。
【0032】
図2:SGK1およびPKBではなく、SGK2およびSGK3のアイソフォームによるGluR1電流の増加。
【0033】
(A)300μMグルタミン酸のND96リンゲル溶液の灌流に対する反応における、アフリカツメガエル卵母細胞で測定された代表的な電流トレース。卵母細胞に、GluR1 cRNA(4ng/卵母細胞)を注入、またはSGK cRNA(6ng/卵母細胞)と併せて注入した。(B)GluR1(L479Y)+DEPC−H2O、GluR1(L479Y)+SGK1、GluR1(L479Y)+SGK2、GluR1(L479Y)+SGK3およびGluR1(L479Y)+PKBを発現している卵母細胞のGluR1電流振幅を、GluR1+DEPC−H2O電流に対して正規化した。横軸目盛は5秒を、縦軸目盛は1μAを示す。卵母細胞数は括弧内に、有意な変化(p<0.001)は***で示されている。
【0034】
図3:PKBではなく、SGKアイソフォームによるGluR6電流の増加。
【0035】
(a)300μMグルタミン酸を用いた灌流に対する反応における、アフリカツメガエル卵母細胞で測定された代表的な電流トレース。電流はすべて、ConAで卵母細胞を前処置し脱感作を最少化した後、70mVで測定した。(b)GluR6+DEPC−H2O(n=20)、GluR6+SGK1(n=12)、GluR6+SGK2(n=10)、GluR6+SGK3(n=9)およびGluR6+SGK1(n=7)を発現している卵母細胞のGluR6電流振幅を測定し、GluR6+DEPC−H2O電流に対して正規化したものを示している。有意水準p=0.001(***)、p=0.01(**)およびp=0.05(*)における有意な変化が示されている。
【0036】
図4:SGKにより調節されたGluR6サブユニットのタンパク質発現を示すウエスタンブロット。
【0037】
細胞膜タンパク質をビオチニルConAにより標識し、可溶化した後、ストレプトアビジンにより沈殿させた。未注入の卵母細胞からなる対照群を含む標本は、SDSゲル上で単離し、ウエスタンブロットを行い、免疫親和性精製されたGluR6のC末端の16アミノ酸フラグメントに対する抗体で検出した(Upstate)。GluR6タンパク質の見かけの分子量は、〜119kDaである(I)。
【0038】
図5:SGK2の共発現による、GluR3が媒介した電流の阻害。
【0039】
(A)300μMグルタミン酸を用いた灌流に対する反応における、アフリカツメガエル卵母細胞で測定された代表的な電流トレース。電流はすべて、ConAで卵母細胞を前処置し脱感作を最少化した後、70mVで測定した。(B)GluR3+DEPC−H2O(n=20)、GluR3+SGK1(n=12)、GluR3+SGK3(n=10)、GluR3+SGK1(n=9)、GluR3+SGK3(n=9)およびGluR3+SGK1(n=7)を発現している卵母細胞のGluR3電流振幅を測定し、GluR3+DEPC−H2O電流に対して正規化したものを示している。有意水準p=0.001(***)、p=0.01(**)およびp=0.05(*)における有意な変化が示されている。
【0040】
図6:デキサメタゾンで処置されたマウスおよび対照マウスの海馬におけるGluR6の発現。
【0041】
(A)マウスの海馬、腎臓および心臓におけるGluR6発現。デキサメタゾンを8日間または20日間投与した結果、GluR6ポリクローナル抗体で染色した脳切片で見られた通り、マウス海馬CA3ニューロンのGluR6タンパク質存在量に有意な増加が見られた。(B)海馬CA3ニューロンを、シナプス部位のマーカーであるMAP2抗体で染色し、シナプスにおいて染色されている増加したGluR6を同定した。
【0042】
さらなる方法および材料
実施例1:アフリカツメガエル卵母細胞における電気生理学的測定
他の文献に記載されている通り、ステージV〜VI期の卵母細胞を、アフリカツメガエルの卵巣より外科的に除去した(Seebohm、Sanguinetti、Pusch、2003年)。卵母細胞は、Nanoliter 2000注射器(WPI inc.、フロリダ、米国)を用いて、4ngのGluR1、GluR3もしくはGluR6のcRNAのいずれかを、6ngのSGK1、SGK2、SGK3もしくはPKBのcRNAのいずれかと共に注入するか、または単独で注入した。cRNA注入後5〜8日目に、Turbo Tec 03増幅器(npi、Tamm、ドイツ)およびAxon InstrumentsのインターフェースDIGIDATA 1322Aで標準的な2電極の電圧クランプ法を行った。データ分析は、pClamp 9.0/clampfit 9.0ソフトウェア(Axon inc.)、およびOrigin 6.0ソフトウェア(Microcal)を用いて行った。アゴニスト溶液は、ND−96緩衝液で調製した(単位mM、NaCl、96;CaCl2、1,8;KCl、2,0;MgCl2、1,0およびHEPES−NaOH、5、NaOHによりpH7.2)。電流および電圧電極は、3M KClで充填し、抵抗を0.5〜1.5MΩにした。卵母細胞は−70mVで保持し、アゴニスト(グルタミン酸300μM)は〜10秒間、流速10〜14ml/分の灌流により作用させた。脱感作を防止するため、アゴニストの適用前に卵母細胞をコンカナバリンAで8分間培養した。
【0043】
実施例2:ビオチニル化ConAによる細胞表面のタンパク質の標識
細胞膜に挿入された受容体タンパク質画分を同定するため、表面タンパク質をビオチニル化ConAで標識し、ビオチニル−ConA/タンパク質複合体のストレプトアビジン/セファロースによる沈殿物として単離した。簡単には、無処置の卵母細胞を、10μMのビオチニル−ConA(Sigma、ミュンヘン、ドイツ)中で30分間、室温にてインキュベートした。通常のカエルリンゲル液で10分間の洗浄を5回行った後、無処置の卵母細胞を、H緩衝液中でテフロンペストルによりホモジナイズし(20μl/卵母細胞;100mMNaCl、20mMトリス塩酸、pH7.4、1%トリトンX−100、1mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド+プロテイナーゼ阻害剤の混合物(Complete(商標)錠、Boehringer))、回転子で1時間、4℃にて保管した。16000×gで60秒間遠心分離した後、洗浄されたストレプトアビジン−セファロースビーズ20μl(Sigma、ミュンヘン、ドイツ)を上清に追加し、回転子で3時間、4℃にてインキュベートした。次に、ストレプトアビジン−セファロースビーズを、1600×gで120秒間スピンしてペレット化し、H緩衝液で3回洗浄した。最終ペレットは、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)ローディングバッファー(0.8Mβメルカプトエタノール、6%SDS、20%グリセロール、25mMトリス塩酸、pH6.8、0.1%ブロモフェノールブルー)40μlで煮沸し、Elisaキット(Mercodia、ウプサラ、スウェーデン)を用いて測定した。
【0044】
実施例3:ゲル電気泳動とウエスタンブロット
ホモジナイズされた卵母細胞のタンパク質をSDS電気泳動により単離し、ニトロセルロースフィルターに移した。ブロットを、5%粉ミルクを含有する1×PBSで少なくとも1時間室温にてブロックした。GluR1、GluR3またはGluR6の検出には、ウサギの免疫親和性精製されたGluR1、GluR3またはGluR6一次抗体(1μg/μl、Upstate)、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型ロバ抗ウサギ二次抗体(1:1000希釈、Amersham Bioscience)を用いた。タンパク質レベルの検証には、ポンソーレッド染色を行った。
【0045】
実施例4:SGK1調節化合物
4.1.一般式Iの化合物および医薬用の有用なその誘導体、塩、溶液および立体異性体(混合物を含む)
【0046】
【化1】

【0047】
式中、
1、R5は、H、OH、OA、OAcまたはメチルのいずれかであり、
2、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R10は、H、OH、OA、OAc、OCF3、Hal、NO2、CF3、A、CN、OSO2CH3、SO2CH3、NH2またはCOOHのいずれかであり、
11は、HまたはCH3であり、
Aは、1、2、3または4個のC原子を有するアルキルであり、
Xは、CH2、CH2CH2、OCH2または−CH(OH)−であり、
Halは、F、Cl、BrまたはIである。
【0048】
以下の化合物の群から選択された式Iによる化合物
(3−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−[1−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−フェニル)−エチリデン]−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド。
フェニル酸性酸−(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(4−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3,4−ジクロロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
m−トリル−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
o−トリル−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(2−クロロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−クロロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(4−フルオロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(2−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−フルオロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−[1−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−フェニル)−エチリデン]−ヒドラジド、
(3−メチルスルホニルオキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3,5−ジヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−フルオロ−フェニル)−酸性酸−(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(4−アセトキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−トリフルオロメチル−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
3−(3−メトキシ−フェニル)−プロピオン酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(2,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェノキシ)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ニトロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(2−ヒドロキシ−5−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
2−ヒドロキシ−2−フェニル−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−(2−エトキシ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ブロモ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−メトキシ−フェニル)−酸性酸−[1−(4−ヒドロキシ−フェニル)−エチリデン]−ヒドラジド、
(3,5−ジフルオロ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(4−ヒドロキシ−2−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(2−エトキシ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(3−ヒドロキシ−フェニル)−酸性酸−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−6−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジド、
(2−フルオロ−フェニル)−酸性酸−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド
4.2.一般式IIの化合物および医薬用の有用なその誘導体、塩、溶液、および立体異性体(混合物を含む)
【0049】
【化2】

【0050】
式中、
1、R2、R3、R4、R5は、H、A、OH、OA、アルケニル、アルキニル、NO2、NH2、NHA、NA2、Hal、CN、COOH、COOA、
−OHet、−O−アルキレン−Het、−O−アルキレン−NR89またはCONR89
1、R2、R3、R4、R5から選択される2個の基、
−O−CH2−CH2−、−O−CH2−O−または−O−CH2−CH2−O−、のいずれかであり、
6、R7は、H、A、Hal、OH、OAまたはCNのいずれかであり、
8、R9は、HまたはAのいずれかであり、
Hetは、1から4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和または不飽和複素環であり、1つまたは複数のHal、A、OA、COOA、CNまたはカルボニル酸素(=O)で置換され、
Aは、1〜7個のH原子がFおよび/または塩素で置換されてもよい、1から10個のC原子を有するアルキルであり、
X、X’は、NHかまたは欠落しており、
Halは、F、Cl、BrまたはIである。
【0051】
以下の化合物の群から選択された式IIによる化合物
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(4−クロロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(3−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(4−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(4−メチル−5−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2,4−ジブロモ−6−フルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2−フルオロ−6−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2−フルオロ−5−メチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2,3,4−トリフルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル)−3−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロ−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[2−(1−tert.−ブチルオキシカルボニル−ピペリジン−4−イル)−フェニル]−尿素、
N−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−2,4−ジクロロベンズアミド、
N−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−4−クロロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
N−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−(ピペリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[(2−フルオロ−5−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[5−フルオロ−2−(ピペリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[4−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−(ピペリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[2−(ピペリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[2−フルオロ−5−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[2−フルオロ−5−[2−(ピペリジン−1−イル)−エトキシ]−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[4−フルオロ−2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[4−フルオロ−2−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[3−クロロ−4−[2−(モルホリン−4−イル)−エトキシ]−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[4−フルオロ−2−[2−(モルホリン−4−イル)−エトキシ]−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[3−クロロ−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[3−クロロ−4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[4−クロロ−2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素、
1−[4−(4−アミノ−5−オキソ−5H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−8−イル)−フェニル]−3−[2−クロロ−5−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−尿素
実施例5:SGK1の塩基多型
任意の高血圧患者のイントロン6を規定するヌクレオチド配列は、...aattacattCgcaacccag..であるのに対し、健常集団を代表するヌクレオチド配列は、....aattacattTgcaacccag...である。この配列は、アクセッション番号Gl 2463200ポジション2071より入手可能である。
【0052】
任意の高血圧患者のエクソン8の配列は、ホモ接合性の..tactgaCttcggact..または....tactgaTttcggact....またはヘテロ接合性の.tactgaCttcggact....および...tactgaTttcggact.のいずれかである。この配列は、アクセッション番号NM_005627.2、ポジション777より入手可能である。
【0053】
ヌクレオチドの組み合わせTTを有するホモ接合性の個体は、CCの一塩基多型が同時にイントロン6に存在しても保護される。
【0054】
実施例6:デキサメタゾンで処置されたマウスおよび対照マウスの海馬におけるGluR6発現
年齢と性別をマッチさせた同胞のSv129Jマウスを、この試験では用いた。2〜3月齢のマウスに、あらかじめケタミン(100mg/kg BW、Sigma)およびキシラジン(4mg/kg BW、Sigma)で麻酔して、プラセボまたはデキサメタゾンペレット(いずれもInnovative Reserach of America製、サラソタ、米国)を皮下移植した。デキサメタゾンペレットは、1日あたりデキサメタゾン238μgを持続放出および線形放出するもので、8日間または20日間のいずれかにわたり用いた。脳を得るため、上述の混合物で麻酔したマウスを胸腔内出血により失血死させ、氷上に置いた後、脳を頭蓋から取り出して液体窒素で直ちに冷凍した。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】SGKを共発現しているアフリカツメガエル卵母細胞の細胞膜におけるGluR1サブユニットのタンパク質存在量の増加を示す図である。
【図2】SGK1およびPKBではなく、SGK2およびSGK3のアイソフォームによるGluR1電流の増加を示す図である。
【図3】PKBではなく、SGKアイソフォームによるGluR6電流の増加を示す図である。
【図4】SGKにより調節されたGluR6サブユニットのタンパク質発現を示すウエスタンブロットの結果を示す図である。
【図5】SGK2の共発現による、GluR3が媒介した電流の阻害を示す図である。
【図6】デキサメタゾンで処置されたマウスおよび対照マウスの海馬におけるGluR6の発現を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SGK1、SGK2またはSGK3を発現する細胞を血清・グルココルチコイド誘導性キナーゼを調節する物質に接触させることを含む、グルタミン酸受容体活性を変化させる方法。
【請求項2】
グルタミン酸受容体のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関連する疾患を治療するための薬を調製するための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項3】
前記疾患が、てんかん、卒中、外傷後行動障害、不安、統合失調症、双極性障害、うつ病、肝性脳症、新生児溶血性疾患、中毒、アルコール依存症、HIV脳症、神経変性障害、錐体外路運動障害、運動失調、筋萎縮性側策硬化症、M.アルツハイマー、黄斑変性、難聴の群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組織検体および標本における、アップレギュレートされたSGK1、SGK2またはSGK3の発現を測定することによる、神経精神疾患の進行、退行または発症の判定方法。
【請求項5】
前記SGK1が、選択された一塩基多型変異を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が、てんかん、不安、統合失調症、双極性障害、精神的抑うつ、中毒、アルコール依存症、神経変性、錐体外路運動障害、神経変性障害、運動失調、M.アルツハイマー、黄斑変性、難聴の群から選択される、疾患診断のための請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
グルタミン酸受容体の調節障害により起こる障害を治療するための薬を製造するための、一般式IまたはIIを有する列挙された化合物から選択されるSGK1阻害剤の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−529423(P2007−529423A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502211(P2007−502211)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001245
【国際公開番号】WO2005/094829
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】