説明

衝撃波発生装置、表面処理方法、非破壊検査方法および治療方法

【課題】位相が揃いレーザ光源の強度変化に応じて強度が変化する衝撃波を得る。
【解決手段】衝撃波発生装置は、レーザ光を発生するレーザ光源10と、このレーザ光源10の内部又は外部に設けられレーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるレーザビーム強度変化手段22と、この時間的に変化するレーザ光を伝送する光伝送装置20と、容器31の外壁に設けられ光伝送装置20を経由して伝送されたレーザ光に対して透明な透過窓40と、容器31に貯溜された衝撃波発生媒体30と、を備え、レーザ光を透過窓40を介して衝撃波発生媒体30に吸収させ透過窓40の表面形状に沿って位相が揃いレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波を発生させ又は発生した衝撃波を利用する衝撃波発生装置、表面処理方法、非破壊検査方法および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、衝撃波は各種の用途で利用されている。この衝撃波の発生装置として、爆薬等を用いた方法がある。また、レーザを物体表面に集光して照射すると、衝撃波が発生する。このレーザを照射する方法は、医用、分子導入、生体除去、結石破砕、洗浄、記録、液体噴射、駆動、応力改善又は欠陥検査等に幅広く利用されている。
【0003】
例えば、レーザビームの照射により、被クリーニング物の表面を変質させたり磨滅することなく、付着物を確実に剥離除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここでは、レーザー発振ユニットから出力される連続性の短パルスレーザービームは、光伝送チューブを介してレーザー照射器に供給され。そして、この照射器から被クリーニング物の表面に短パルスレーザービームが照射される。このクリーニング物の表面に短パルスレーザービームが照射されることにより、上記の表面には断続的に熱衝撃波が生ずる。この熱衝撃波が微少共鳴を生起し、この共鳴作用により被クリーニング物の表面から付着物が剥離除去される。
【0005】
また、この上記のレーザを利用するときには、対象物表面へ直接レーザを照射する、表面に薄い膜を貼付する等の方法があり、発生側には面性状や発生側形状に関する技術がある。
【0006】
例えば、レーザビームを直接照射することにより、ターゲットの表面に残留圧縮応力を生み出すレーザ衝撃ピーニング方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。 ここでは、ターゲット上の削摩性被膜に対しレーザ・ビーム・パルスを照射する工程を有する。このパルスが被膜のアブレーションを行ってその中にプラズマ及び衝撃波を生成させるのに有効なフルエンス、持続時間及び対応したピーク・パワーを有している工程と、ターゲットに隣接した位置に前記プラズマを閉込めてターゲットを衝撃波により塑性変形させ、それによってターゲット中に残留圧縮応力を生み出す工程とを含む。上記のパルスは、パルスとプラズマとの間の結合効率を高めるために10ナノ秒未満の持続時間及び対応したピーク・パワーを有するものである。
【0007】
また、レーザビームを薄い膜を介して照射することにより、ガスタービンエンジンのチタン合金製部品のような硬質金属製部品をレーザ衝撃ピーニングする方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
ここでは、比較的一定の期間相互間に繰返しパルス化する3〜10ジュール程度の低出力静止レーザ・ビームを物体の一部分に連続的に発射して、表面の材料を蒸発させる。この表面にレーザ・ビームにより形成される直径1mm程度の複数のレーザ・ビーム・スポットの辺りのパルスで表面材料を蒸発させて、被レーザ衝撃ピーニング表面から物体内に延在する深い圧縮残留応力を有する区域を形成する。物体を動かしながら、レーザ・ビームを受ける表面上に水をカーテン状に流し、これを被レーザ衝撃ピーニング表面が少なくとも1回レーザ・ビーム・スポットによって完全に覆われるまで行う。表面はプラズマ発生に適した融蝕性被覆で覆ってもよい。
【特許文献1】特開平9−122939号公報
【特許文献2】特開2000−246468号公報
【特許文献3】特開平11−254156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の衝撃波発生装置は、レーザを物体表面に集光して照射して発生する衝撃波を利用するものである。
【0010】
しかし、上述したようなレーザを用いた衝撃波発生装置においては、発生する衝撃波の収束と方向の制御が困難である、という課題があった。
【0011】
また、この上記のレーザを利用するときには、対象物表面へ直接レーザを照射する手法や物体表面に薄い膜を介して照射する等の手法がある。
【0012】
しかしながら、短時間に発生するプラズマに依存した等方性波面を利用せざるを得ず、任意対象へ集中させることに難点がある、という課題があった。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、任意対象の希望する部分に、処理に必要な衝撃波を適切に照射することが可能である衝撃波発生装置、表面処理方法、非破壊検査方法および治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の衝撃波発生装置においては、レーザ光を発生するレーザ光源と、このレーザ光源の内部又は外部に設けられ前記レーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるレーザビーム強度変化手段と、この時間的に変化するレーザ光を伝送する光伝送装置と、容器の外壁に設けられ前記光伝送装置を経由して伝送された前記レーザ光に対して透明な透過窓と、前記容器に貯溜された衝撃波発生媒体と、を備え、前記レーザ光を前記透過窓を介して衝撃波発生媒体に吸収させこの透過窓の表面形状に沿って位相が揃い更にレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させるように構成されていること、を特徴とするものである。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の衝撃波発生装置においては、レーザ光を発生するレーザ光源と、このレーザ光源の内部又は外部に設けられ前記レーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるレーザビーム強度変化手段と、この時間的に変化するレーザ光を伝送する光伝送装置と、容器の外壁に設けられ前記光伝送装置を経由して伝送された前記レーザ光に対して透明な透過窓と、前記容器に貯溜され前記レーザ光に対して透明な液体と、を備え、前記レーザ光に対して不透明な材料より形成され前記レーザ光を吸収すると共に表面形状に沿って位相が揃い更にレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させる固体衝撃波発生媒体を具備すること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の衝撃波発生装置、表面処理方法、非破壊検査方法および治療方法によれば、レーザ光源から発生したレーザ光を透明な窓を介して吸収する衝撃波発生媒体を設けることにより、位相が揃い更にレーザ光源の強度変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させ、利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る衝撃波発生装置、表面処理方法、非破壊検査方法および治療方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。
【0019】
本図に示すように、衝撃波発生装置は、レーザ光を発生するレーザ光源10を備えている。このレーザ光源10の内部又は外部にはレーザビーム強度変化手段22が設けられている。このレーザビーム強度変化手段は、非線形素子を用いたもの、Qスイッチを利用したもの等があるが、上記レーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるものであれば何れも利用可能である。
【0020】
この時間的にレーザビーム強度が変化するレーザ光は光伝送装置20を介して伝送される。この光伝送装置20を経由して伝送されたレーザ光は、容器31に取り付けられた透過窓40に伝達される。この透過窓40は、上記レーザ光に対して透明又は半透明な材料より形成されている。このため、この伝送されたレーザ光は透過窓40を通過することができる。
【0021】
このレーザ光に対して透明な透過窓40を通過したレーザ光は、容器31内に貯溜された衝撃波発生媒体30に吸収されて、この透過窓40の表面形状に沿って位相が揃いレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させる。
【0022】
この衝撃波発生媒体30として、例えば、水、常温で液体の炭化水素又はアルコールのいずれか、あるいはこれらのうち1つを含む水溶液媒体、アルコール溶液等を使用することができる。また、この衝撃波発生媒体30は、液体に墨汁等の墨を含入させたものを用いてもよい。
【0023】
なお、上記レーザは、液体により発生するので、液体レーザとも言われている。この液体レーザは、ローダミン等の有機色素の溶液を使う場合が主で、これは色素レーザとも呼ばれている。フラッシュランプからの光や他のレーザの発振光を当てて励起することができる。この色素レーザは、可視部付近の広い波長で発振波長を連続的に変えられる(このようなレーザは波長可変レーザと呼ばれている)ほか、モード周期により時間幅のきわめて狭いパルス発振を行わせることができるという特徴をもつ。
【0024】
このように構成された本実施の形態において、レーザ光源10から発生したレーザ光はレーザビーム強度変化手段22に伝送される。このレーザビーム強度変化手段22を介してレーザ光のレーザビーム強度が時間的に変化する。このレーザビーム強度が時間的に変化するレーザ光は、光伝送装置20を経由して衝撃波発生媒体30側の面に任意の表面形状を持った透過窓40に到達する。ここで、レーザ光は、このレーザ光に対して透明な透過窓40を介して衝撃波発生媒体30に吸収され、透過窓40表面形状に沿って位相が揃いレーザ光源の強度変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させることができる。
【0025】
本実施形態によれば、透過窓40の衝撃波発生媒体30側の形状に対応し、またレーザ光源10から発生する強度変化に対応して、任意の衝撃波を生成して利用することができる。さらに、透過窓40の衝撃波発生媒体30側の面形状を平面または球面にすることにより、指向性の高い平面または球面の波面を持った衝撃波を発生させることが可能となる。かくして、透過窓40の表面形状に沿って位相が揃い更にレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を得ることができる。
【0026】
図2は、本発明の第2の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の平面形状の透過窓40の代わりに凹球面形状の透過窓41を設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0027】
本図に示すように、凹球面形状の透過窓41は、容器31の側面に、凹球面が容器31の内側となるように取り付けられている。この透過窓41は、上記レーザ光に対して透明な材料より形成されている。
【0028】
このレーザ光に対して透明な透過窓41を通過したレーザ光は、容器31内に貯溜された衝撃波発生媒体30に吸収されて、この透過窓41の表面形状に沿って位相が揃いレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させる。この透過窓41は、衝撃波発生媒体30側の面形状を凹球面としている。
【0029】
本実施の形態によれば、透過窓41の凹球面を利用することにより、球中心に向かって指向性が高く集積された衝撃波を発生させることができる。なお、この透過窓41は、衝撃波発生媒体30側の面形状を球面としても用いることもできる。
【0030】
図3は、本発明の第3の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の衝撃波発生媒体30内の伝播経路中に凹面音響反射鏡50を設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0031】
本図に示すように、容器31に貯溜された衝撃波発生媒体30内の平面衝撃波の伝播経路中に凹面音響反射鏡50が設けられ、凹面音響反射鏡50の凹面が受光面として透過窓40と対向するように配置されている。この凹面音響反射鏡50は、上記レーザ光に対して不透明な材料より形成されている。例えば、ステンレス鋼より製造され、レーザ光を受ける面は鏡面仕上げされている。
【0032】
本実施の形態によれば、透過窓40を通過した後の平面衝撃波伝播経路中に凹面音響反射鏡50を設けることにより、凹面反射を伴い、結果として一点に集合した衝撃波を得ることができる。
【0033】
図4は、本発明の第4の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の衝撃波発生媒体30内の伝播経路中に音響レンズ51を設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。なお、本図では音響レンズとして、アクリル樹脂の両凹面音響レンズを用いた場合を、一例として示している。
【0034】
本図に示すように、容器31に貯溜された衝撃波発生媒体30内の平面衝撃波の伝播経路中に音響レンズ51が設けられている。この音響レンズ51は、上記レーザ光に対して透明な材料より形成されている。
【0035】
本実施の形態によれば、透過窓40を通過した後の平面衝撃波伝播経路中に音響レンズ51を設けることにより、一点に集合した衝撃波を得ることができる。
【0036】
図5は、本発明の第5の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の衝撃波発生装置にビーム空間変調装置25を追加して設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0037】
本図に示すように、光伝送装置20の端部又は中間には、ビーム空間変調装置25が設けられている。このビーム空間変調装置25は、透過窓40に照射されるレーザ強度の空間分布を中心対称に時間的に変化させる又はビーム断面の一軸方向に変化させることが可能なものである。
【0038】
本実施の形態によれば、ビーム空間変調装置25を設けることにより、透過窓40の形状に加えて、さらに任意の曲率半径を持った衝撃波又は任意の伝播方向を持った衝撃波を発生させることができる。
【0039】
図6は、本発明の第6の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の透明な液体32の中に固体衝撃波発生媒体60を追加して設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0040】
本図に示すように、容器31にはレーザ光に対して透明な液体32が貯溜されている。この透明な液体32の中にレーザ光を吸収して衝撃波を発生させる固体衝撃波発生伝播媒体60が設けられている。
【0041】
この液体32は、例えば、水、常温で液体の炭化水素又はアルコールのいずれか、あるいはこれらのうち1つを含む水溶液媒体、アルコール溶液等が用いられる。また、固体衝撃波発生伝播媒体60は、上記レーザ光に対して不透明な材料より形成されている。金属、セラミックス又は黒鉛等が用いられる。例えば、墨棒等から製造されている。ここでの固体衝撃波発生媒体60の受光面は、任意の表面形状を有する。
【0042】
このように構成された形態において、上記レーザ光源10から光伝送装置20を経由してレーザ強度を時間的に変化するレーザ光が透過窓40に伝達される。このレーザ光に対して透明な透過窓40を通過したレーザ光は、容器31内に貯溜されたレーザ光に対して透明な液体32中を通過し、固体衝撃波発生媒体60の表面に伝達される。
【0043】
本実施の形態によれば、透明な液体32中に固体衝撃波発生媒体60を設けることにより、透過窓40を通過したレーザ光は、レーザ光に対して透明な液体32中を通過し、固体衝撃波発生媒体60の表面で吸収される。同時に、この衝撃波発生媒体60の表面形状に沿って位相が揃い、さらにレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させることができる。
【0044】
また、固体衝撃波発生媒体60の面形状を平面または球面とすることにより、さらに指向性の高い平面または球面の波面を持った衝撃波を発生させることができる。
【0045】
図7は、本発明の第7の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図1の衝撃波発生媒体30内に凹球面状固体衝撃波発生媒体62を追加して設けたものであり、図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0046】
本図に示すように、容器31に貯溜された透明な液体32内に凹球面状固体衝撃波発生媒体62が設けられ、凹球面状固体衝撃波発生媒体62の凹面が受光面として透過窓40と対向するように配置されている。この凹球面状固体衝撃波発生媒体62は、上記レーザ光に対して不透明な材料より形成されている。例えば、墨棒等から製造される。また、この固体衝撃波発生媒体62の受光面は、上記レーザ光に対して不透明でかつ凹球面状の表面形状を有する。
【0047】
本実施の形態によれば、透明な液体32中に凹球面状固体衝撃波発生媒体62を設けることにより、透過窓40を通過したレーザ光は、透明な液体32中を通過し、凹球面状固体衝撃波発生媒体62の表面で吸収される。同時に、この凹球面の球中心に向かって指向性が高く集積された衝撃波を発生させることができる。
【0048】
図8は、本発明の第8の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図6の衝撃波発生装置にビーム空間変調装置25を追加して設けたものであり、図6と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0049】
本図に示すように、光伝送装置20の端部又は中間には、ビーム空間変調装置25が設けられている。このビーム空間変調装置25は、透過窓40に照射されるレーザ強度の空間分布を中心対称に時間的に変化させる又はビーム断面の一軸方向に変化させることが可能なものである。
【0050】
本実施の形態によれば、ビーム空間変調装置25を設けることにより、固体衝撃波発生媒体62の性状に加えて、さらに任意の曲率半径を持った衝撃波又は任意の伝播方向を持った衝撃波を発生させることができる。
【0051】
図9は、本発明の第9の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図である。本図は、図8の衝撃波発生装置に固体衝撃波発生伝播媒体62の代わりにレーザ光を吸収して衝撃波を発生させる固体衝撃波発生伝播媒体63を設けたものであり、図8と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0052】
本図に示すように、容器31にはレーザ光に対して透明な液体32が貯溜されている。この透明な液体32の中にレーザ光を吸収して衝撃波を発生させる固体衝撃波発生伝播媒体63が設けられている。この固体衝撃波発生伝播媒体63は、上記レーザ光に対して不透明な材料より形成されている。例えば、墨棒等から製造される。
【0053】
ここでの固体衝撃波発生伝播媒体63のレーザ照射面の表面形状を平面状または球面状とし、さらにレーザ照射面で発生する衝撃波が衝撃波発生伝播媒体内部を伝播する方向の反対側端面を平面状または球面状を形成している。
【0054】
さらに、レーザ光源10から発生するレーザビーム強度を時間的に変化させる装置(図示せず)がレーザ光源10の内部または外部に設けられている。また、衝撃波発生媒体の照射面におけるレーザ強度の空間分布を中心対称に時間的に変化させる又はビーム断面の一軸方向に変化させるビーム空間変調装置25が設けられている。
【0055】
本実施の形態によれば、透明な液体32中に固体衝撃波発生伝播媒体63を設けることにより、透過窓40を通過したレーザ光は、透明な液体32中を通過し、固体衝撃波発生伝播媒体63で吸収される。同時に、位相の揃った任意の曲面を有する衝撃波を固体衝撃波発生媒体63の内部を伝播させ反対側端面より外部に伝播させることが可能となる。
【0056】
ここで、衝撃波発生装置の他の実施の形態及び発生した衝撃波の利用方法について述べる。
【0057】
まず、上記衝撃波発生装置において、このレーザ光源10から発生するレーザ光をパルスレーザ光として使用することもできる。本実施の形態によれば、パルス波形に応じた衝撃波を発生させることにより、上述と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記衝撃波発生装置において、ここでのパルスレーザのパルス時間幅を200ピコ秒以上10マイクロ秒以下の範囲で発生させることもできる。本実施の形態によれば、100KHzから500MHzの範囲の周波数成分に最大値が存在する衝撃波を発生させることができる。
【0059】
さらに、上記衝撃波発生装置において、上記レーザ光源10として、1μmから20μmの波長範囲又は190nmから450nmの波長範囲にある出力波長を持つレーザ光を使用することができる。
【0060】
また、上記衝撃波発生装置において、上記レーザ光源10として、300nmから1.3μmの範囲にある出力波長を持つレーザレーザ光を使用することができる。
【0061】
本実施の形態によれば、上記発生した衝撃波を金属材料表面に照射して衝撃加工を行うことができる。また、発生した衝撃波を除去が必要な物質が付着した材料表面に照射して表面の付着物質を除去することができる。さらに、上記発生した衝撃波を固体材料に照射し、この固体材料内部に衝撃波を伝播させ、この反射衝撃波又は透過衝撃波を超音波検出装置で捕捉することにより前記固体材料内部の欠陥を検知することも可能である。
【0062】
なお、上記衝撃波発生装置において、上記レーザ光として、出力されるレーザ光の波長が主波長である1μmから20μmの波長範囲又は190nmから450nmの波長範囲の主のレーザ光成分の他に、衝撃波発生媒体にとって透明である300nmから1.3μmの範囲にある別の波長を持つ副のレーザ光成分をも発生させるレーザ光源10を使用することができる。さらに、透過窓40の直前に、副のレーザ光を衝撃波発生媒体30中で集光させることのできるレンズ系を設けることができる。
【0063】
本実施の形態によれば、衝撃波発生装置および主のレーザ光成分によって衝撃波発生媒体で発生した衝撃波と、副のレーザ光成分が衝撃波発生媒体中に設置した衝撃波照射対象の表面に集光照射されて発生する衝撃波の二つの衝撃波をほぼ同時に発生させることができる。この二つの衝撃波をほぼ同時に発生させることにより、この発生した衝撃波を金属材料表面に照射して衝撃加工を行うことができる。この衝撃加工により、対象物表面に形成された応力を圧縮残留応力とすることができ、対象物表面のき裂の進展を防止又は抑制することができる。
【0064】
また、上記衝撃波発生装置において、衝撃波発生媒体又は衝撃波発生伝播媒体に照射するレーザビームを均質化する均質化光学装置を設けることができる。本実施の形態によれば、上記均質化光学装置を設けることにより、レーザビームの更なる均質化の向上を図ることができる。
【0065】
また、上記衝撃波発生装置において、上記均質化光学装置として、光ファイバ、レンズアレイホモジナイザー又はカライドスコープを設けることができる。本実施の形態によれば、上記光ファイバ等を設けることにより、上述と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、上述の衝撃波は、医用、分子導入、生体除去、結石破砕、洗浄、記録、液体噴射、駆動、応力改善又は欠陥検査等の用途に利用することができる。例えば、発生した衝撃波を人体内部に存在しかつ水と音響インピーダンスが大幅に異なる物質に照射して、この物質を破砕、変形又は加工する等の治療方法にも適用が可能である。
【0067】
さらに、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の各実施例を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図6】本発明の第6の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図8】本発明の第8の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【図9】本発明の第9の実施の形態の衝撃波発生装置の概略構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0069】
10…レーザ光源、20…光伝送装置、22…レーザビーム強度変化手段、25…ビーム空間変調装置、30…衝撃波発生媒体、31…容器、32…透明な液体、40…透過窓、50…凹面音響反射鏡、51…音響レンズ、60,62,63…固体衝撃波発生媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光源と、
このレーザ光源の内部又は外部に設けられ前記レーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるレーザビーム強度変化手段と、
この時間的に強度が変化するレーザ光を伝送する光伝送装置と、
容器の外壁に設けられ前記光伝送装置を経由して伝送された前記レーザ光に対して透明な透過窓と、
前記容器に貯溜された衝撃波発生媒体と、
を備え、
前記レーザ光を前記透過窓を介してこの衝撃波発生媒体に吸収させこの透過窓の表面形状に沿って位相が揃い更にレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させるように構成されていること、
を特徴とする衝撃波発生装置。
【請求項2】
前記透過窓は、前記衝撃波発生媒体側の面形状を平面、球面又は凹球面として形成されていること、を特徴とする請求項1記載の衝撃波発生装置。
【請求項3】
前記衝撃波発生媒体は、水、水溶液、常温で液体の炭化水素又はアルコールを含むこと、を特徴とする請求項1記載の衝撃波発生装置。
【請求項4】
前記衝撃波発生媒体内の平面衝撃波の伝播経路中に設けられた音響レンズ又は凹面音響反射鏡をさらに具備すること、を特徴とする請求項1記載の衝撃波発生装置。
【請求項5】
前記透過窓に照射されるレーザビームをこの透過窓の照射面におけるレーザ強度の空間分布を中心対称に時間的に変化させる又はビーム断面の一軸方向に変化させるビーム空間変調装置をさらに具備すること、を特徴とする請求項1記載の衝撃波発生装置。
【請求項6】
レーザ光を発生するレーザ光源と、
このレーザ光源の内部又は外部に設けられ前記レーザ光のレーザビーム強度を時間的に変化させるレーザビーム強度変化手段と、
この時間的に強度が変化するレーザ光を伝送する光伝送装置と、
容器の外壁に設けられ前記光伝送装置を経由して伝送された前記レーザ光に対して透明な透過窓と、
前記容器に貯溜され前記レーザ光に対して透明な液体と、
を備え、
前記レーザ光に対して不透明な材料より形成され前記レーザ光を吸収すると共にこの表面形状に沿って位相が揃い更にレーザビーム強度の変化に応じて強度が変化する衝撃波を発生させる固体衝撃波発生媒体を具備すること、
を特徴とする衝撃波発生装置。
【請求項7】
前記透明な液体は、水、水溶液、常温で液体の炭化水素又はアルコールを含み、さらに前記固体衝撃波発生伝播媒体は、金属、セラミックス又は黒鉛より形成されていること、を特徴とする請求項6記載の衝撃波発生装置。
【請求項8】
前記固体衝撃波発生媒体の面形状を平面、球面又は凹球面として形成されていること、を特徴とする請求項6記載の衝撃波発生装置。
【請求項9】
前記固体衝撃波発生媒体は、レーザ照射面の表面形状を平面又は球面とし、このレーザ照射面で発生する衝撃波が内部を伝播する方向の反対側端面より外部に衝撃波を伝播させるように形成されていること、を特徴とする請求項6又は8記載の衝撃波発生装置。
【請求項10】
前記透過窓に照射されるレーザビームをこの透過窓の照射面におけるレーザ強度の空間分布を中心対称に時間的に変化させる又はビーム断面の一軸方向に変化させるビーム空間変調装置をさらに具備すること、を特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の衝撃波発生装置。
【請求項11】
前記レーザ光源は、パルスレーザを発生させる光源を具備すること、を特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の衝撃波発生装置。
【請求項12】
前記衝撃波発生媒体又はこの衝撃波発生伝播媒体に照射するレーザビームを均質化する均質化光学装置をさらに備えていること、を特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の衝撃波発生装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の衝撃波発生装置を用いた金属材料の表面処理方法であって、前記発生した衝撃波を金属材料表面に照射して衝撃加工を行うこと、を特徴とする表面処理方法。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれかに記載の衝撃波発生装置を用いた非破壊検査方法であって、前記発生した衝撃波を固体材料に照射し、この固体材料内部に衝撃波を伝播させ、この反射衝撃波又は透過衝撃波を超音波検出装置で捕捉することにより前記固体材料内部の欠陥を検知すること、を特徴とする非破壊検査方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれかに記載の衝撃波発生装置を用いた治療方法であって、前記発生した衝撃波を人体内部に存在しかつ水と音響インピーダンスが異なる物質に照射して、この物質を破砕、変形又は加工すること、を特徴とする治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−313549(P2007−313549A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147582(P2006−147582)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】