説明

表示装置、投射型表示装置、光路シフト素子の制御回路および光路シフト素子

【課題】画素同士の隙間を目立たなくすることを低コストで実現する。
【解決手段】液晶ライトバルブ100R、100G、100Bは、それぞれデータ信号Rv、Gv、Bvに応じて入射光の偏光状態を変調する。これらの液晶ライトバルブを透過した光は、ダイクロイックプリズム212で合成されて、光路シフト素子10を介し、投射レンズ系214によってスクリーン300に拡大投射される。ここで光路シフト素子10は、 透光性基板に挟持された液晶が印加電界によって当該液晶分子の平均傾斜角が変化する液晶機能素子で構成され、液晶ライトバルブ100R、100G、100Bが同一または連続するフレームを表示する期間にわたって平均傾斜角を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示される画像の画素の隙間を目立たなくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、液晶素子のような空間光変調器を用いて縮小画像を形成するとともに、この縮小画像を光学系によって拡大投射する投射型表示装置(プロジェクタ)が普及しつつある。ただし、この種のプロジェクタを含めた表示装置の一般においては、画素同士の隙間(いわゆるブラックマトリクス)が目立ちやすい、という問題が指摘されている。
そこで、空間光変調器による変調光の出射側に、非旋光・90度旋光を制御する旋光制御液晶パネルと、無偏光の入射光線を常光線および異常光線に分岐させる複屈折性光学素子とを順次配置させることによって、常光線による表示画素に対して異常光線による表示画素を垂直、水平または斜め方向に偏位させて、ブラックマトリクスを目立たなくする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−167163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記技術では、画素のシフト量が固定である、という点が指摘されている。また、上記技術に適用される複屈折性光学素子は一般に高価であるため、装置全体の低コストを図ることが困難である、という点も指摘されている。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、画素同士の隙間を目立たなくすることを低コストで実現可能な表示装置、投射型表示装置および、これらの装置で適用される光路シフト素子の制御回路又は光路シフト素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置にあっては、画像入力信号に応じて光を変調する空間光変調器と、前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子と、を有し、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を表示する表示装置であって、前記光路シフト素子は、透光性基板に挟持された液晶が印加電界によって当該液晶分子の平均傾斜角が変化する液晶機能素子で構成され、前記空間変調器における同一または連続するフレームを表示する期間内に前記印加電界を変化させることを特徴とする。本発明によれば、複屈折性光学素子のような高価な素子を用いないで済むので、低コストを図った上で、画素同士の隙間を目立たなくすることが可能になる。
なお、ここでいう「フレーム」とは、空間光変調器により表示される完全な1枚分の画像をいい、例えば3つのフィールドを順次表示する方式(フィールド・シーケンシャル)であれば、3つにフィールドによるR(赤)、G(緑)、B(青)の原色画像を合成した画像をいい、また、インターレース方式であれば、奇数行目の走査画像と偶数行目の走査画像とを合成した画像をいい、ノンインターレース方式ではあれば、垂直走査による表示される画像をいう。
【0005】
本発明において、前記シフトの量を調整する調整手段を有する構成としても良い。この構成によれば、画素同士の隙間の目立ちにくさを適切に調整することが可能となる。
また、本発明において、前記画像入力信号に応じて前記シフトの量を切り替える手段を有する構成としても良い。この構成によれば、画素同士の隙間の目立ちにくさを、表示させる画像によって適切に切り替えることが可能となる。
本発明において、前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、前記光路シフト素子は、表示される画像が前記画素の一辺方向または前記一辺方向に対して垂直の方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる構成としても良いし、前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、前記光路シフト素子は、表示される画素が前記画素の一辺方向に対し斜め方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる構成としても良い。
【0006】
また、本発明において、前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、前記光路シフト素子は、表示される画素が前記画素の一辺方向に対して異なる2以上の方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる構成としても良い。このような構成において、光路のシフト方向が互いに異なる光路シフト素子を光路上に二つ直列に配列させた光路シフトデバイスを有する態様が好ましい。これにより、簡易な構成により、画素同士の隙間を目立たなくすることが可能となる。
【0007】
本発明において、前記光路シフト素子は、一対の透光性基板と、該一対の透光性基板の間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶と、該液晶に電界を作用させ電界印加手段と、を備える構成としても良い。この構成において、前記電界印加手段は、前記液晶に作用させる電界の強さを可変とするのが好ましい。
また、本発明において、前記空間光変調器は、透過型液晶表示素子である構成が好ましい。
一方、本発明において、前記画像入力信号で規定される画像の画素数を前記空間光変調器の表示画像の画素数に変換する解像度変換手段を備え、前記空間光変調器は、前記解像度変換手段により画素数が変換された画像を表示する構成としても良い。
さらに、上記表示装置と、可視光を放出する光源と、前記光源から放出された光を前記空間光変調器に照射する照明光学系と、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を拡大投射する投射手段と、を備えても良い。
また、本発明は、前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子と、を有し、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を表示する表示装置であって、前記光路シフト素子は、前記空間変調器が同一または連続するフレームを表示する期間内に前記シフトの量を変化させることを特徴とする。この構成によっても、複屈折性光学素子のような高価な素子を用いないで済むので、低コストを図った上で、画素同士の隙間を目立たなくすることすることができる。なお、ここでいう「シフト」には、偏光を用いた光路のシフトのほか、反射や屈折を用いた光路のシフトも含まれる。
また、本発明は、表示装置や投射型表示装置のみならず、光路シフト素子の制御回路及び光路シフト素子としても概念することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0009】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタ(投射型表示装置)について説明する。このプロジェクタは、液晶ライトバルブに表示された画像を拡大投射するものであり、図1は、その光学的な構成を示す平面図である。
この図に示されるように、プロジェクタ1の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット202が設けられている。このランプユニット202から射出された白色光(可視光)は、内部に配置された3枚のミラー206およびダイクロイックミラー208a、208bによってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応する液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。
詳細には、ダイクロイックミラー208aは、白色光のうち、Rの波長域の光を透過し、G、Bの波長域の光を反射し、ダイクロイックミラー208bは、ダイクロイックミラー208aによって反射したG、Bの波長域の光のうち、Bの波長域の光を透過し、G波長域の光を反射する。なお、Bの光路長は、他のRおよびGの光路長と比較して長くなっているので、Bの光路の途中には光路長を補正するために、リレーレンズ223を配置している。
【0010】
ここで、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、本実施形態においてそれぞれ空間光変調器として用いられる。液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、それぞれR、GおよびBの原色に対応する透過型の液晶表示素子であり、本実施形態では縦1080行×横1920列のマトリクス状に配列する画素を有し、各画素において、入射光に対する出射(透過)光の偏光状態が階調に応じて制御される。
詳細については省略するが、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、1080行の走査線と1920列のデータ線とを有し、これらの走査線とデータ線との交差に対応して略正方形の形状をした画素電極と、これらの画素電極に対向するとともに各画素にわたって共通の対向電極との間に、例えばTN型の液晶が挟持されている。このような構成において、ある走査線が選択されると、当該選択された走査線に位置する画素電極に、当該画素電極に対応するデータ線の電圧が印加されるとともに、選択が解除されても、印加された電圧が容量性によって保持される構成となっている。
ここで、構成において、画素電極と対向電極とにより保持される電圧がゼロ(または近傍)であれば、入射光が液晶層によって偏光されるので、その出射(透過)光は、入射光の偏光成分とほぼ90度ずれた偏光成分の光がほとんどとなる。一方、保持電圧が徐々に高まるにつれて、液晶分子の配列角度が変化し、これにより、出射光は、入射光の偏光成分とほぼ90度ずれた偏光成分の光が徐々に少なくなる反面、入射光の偏光成分と同じ方向の偏光成分の光が徐々に多く含まれるようになる。
このため、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの入射側および出射側に、互いに透過軸が90度ずれた偏光板(図示省略)を配置すると、液晶層で保持される電圧が高くなるにつれて、偏光板を通過する光量が少なくなる(ノーマリーホワイトモード)。
【0011】
液晶ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム212に対し3方向から入射する。このダイクロイックプリズム212において、RおよびBの光は90度で屈折する一方、Gの光は直進するので、RおよびBの各原色の画像が合成される。
ダイクロイックプリズム212の出射側には、光路シフト素子10および投射レンズ系214が順番に配置する。ここで、光路シフト素子10は、詳細については後述するが、入射光に対して出射光を所定の方向にシフトするものであり、投射レンズ系214は、光路シフト素子10を介した合成像をスクリーン300に拡大投射するものである。
なお、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー208a、208bによって、それぞれに対応するR、G、Bの原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
また、液晶ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム212により反射した後に投射されるのに対し、液晶ライトバルブ100Gの透過像は、ダイクロイックプリズム212を直進して投射されるので、液晶ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、液晶ライトバルブ100Gにより形成される画像とは、左右反転の関係にある。
【0012】
次に、プロジェクタ1の電気的な構成について図2を参照して説明する。
この図において、制御回路50は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bに対するデータ信号の書込動作や、光路シフト素子10における光路シフトの動作、さらには画像信号処理回路60におけるデータ信号の供給を制御するものである。
ここで、制御回路50は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bに対しては、最初の1行目から最終の1080行目までの走査線を1行ずつ順番に選択するとともに、選択した走査線に位置する1列目から1920列目までの画素の液晶層に、データ信号Rv、Gv、Bvが書き込まれるよう制御する。
また、制御回路50は、次のような駆動信号Asを光路シフト素子10に供給する。すなわち、本実施形態において、制御回路50は、図6に示されるように、電圧+Va、−Vaのいずれかを半周期Ts/2毎に交互にとるパルス信号を、駆動信号Asとして光路シフト素子10に供給する。
ここで、本実施形態において半周期Ts/2は、液晶ライトバルブ100、100Gおよび100Bにおけるフレームの周期Tf(16.7ミリ秒)よりも短く設定されている。このため、本実施形態では、1フレーム分の画像を表示している期間の途中で、必ず駆動信号Asの電圧が切り替わることになる。
画像信号処理回路60は、図示省略した外部装置から供給される画像信号Vidを、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色成分に分離するとともに、それぞれ液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100の駆動に適したデータ信号Rv、Gv、Bvに変換して供給するものである。本実施形態では、上述したようにノーマリーホワイトモードとしているので、階調が暗くなるにつれて液晶層への印加電圧が高くなるような電圧のデータ信号に変換する。
【0013】
次に、光路シフト素子10の詳細について説明する。図3は、光路シフト素子10の構成を示す図である。
この図に示されるように光路シフト素子10は、一対の透明な基板12a、12bを一定の間隙を保って対向配置させるとともに、この間隙に液晶16が充填された構成となっている。詳細には、光路シフト素子10は、基板12a、12bのうち、少なくとも一方に、この例では、基板12aにおける基板12bと対向する面に配向膜14が形成されており、この配向膜14と基板12bとの間に、ホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相からなり、自発分極が正である液晶16が充填された構成となっている。
光路シフト素子10では、さらに、目的とする光偏向方向に対応させた一対の電極18a、18bが配置される。このうち、電極18aには、駆動信号Asが供給される一方、電極18bは、電圧ゼロの電位Gndに接地されている。
なお、電極18a、18bは、液晶16の回転軸に対して垂直方向の電界を印加する電界印加手段として機能する。また、図3は、電極18a、18bを、基板12a、12bと一体化した構成を示しているが、基板12a、12bに対して分離させて設けても良い。さらにまた、電極18a、18bを、基板12a、12bのセルギャップを規定するためのスペーサと兼用させても良い。
【0014】
ここで、光路シフト素子10による光路シフトの原理について説明しておく。
便宜的に、図3において、電極18a、18bによる電界印加方向をX軸(電極18a→18bの方向を正)、紙面垂直方向をY軸(紙面奥側から手前側を正)、基板12a、12bの基板面法線方向をZ軸(基板12a→12bを正)とした直交座標系を規定する。
このように規定した直交座標系において、ダイクロイックプリズム212の出射光は、Z軸方向に沿って入射するように、光路シフト素子10が配置する。また、光路シフト素子10は、電界印加方向に直交するY軸が液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの出射側に設けられる偏光板の透過軸と一致するように、光路シフト素子10が配置する。
【0015】
図4(a)および(b)は、図3に示した光路シフト素子10をZ軸正方向(すなわち出射側)からみて90度時計回りに回転させた構成の端面をそれぞれ示している。このため、図4(a)および(b)において電極18aが紙面奥側に位置し、電極18bが紙面手前に位置している。
電極18aには、上述したように駆動信号Asが供給されるが、その印加電圧は、本実施形態では電圧+Vaまたは−Vaのいずれか一方である。ここで、駆動信号Asの電圧が+Vaであるとき、電界印加方向は、X軸正方向、すなわち、図4(a)において紙面奥から手前方向となるので、自発分極が正である液晶16のダイレクタ(巨視的な分子)16cは、同図に示されるような第1配向状態で分布する。一方、駆動信号Asの電圧が−Vaであるとき、電界印加方向は、X軸負方向、すなわち、図4(b)において紙面手前から奥側方向となるので、ダイレクタ16cは、同図に示されるような第2配向状態で分布する。すなわち、ダイレクタ16cは、いずれにしても、それぞれY−Z平面に沿って傾斜する。
【0016】
ダイレクタ16cが、第1または第2配向状態になると、Z軸方向に沿った入射光は、ダイレクタ16cを通過する際の複屈折により、Y軸に沿った方向にシフトすることになる。
いま、光路シフト素子10における光の入射・出射方向であるZ軸に対して、ダイレクタ16cの傾斜角をθ、ダイレクタ16cの長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとする。
光路シフト素子10に入射する光は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの出射側に設けられた偏光板を透過したものであるから、その偏光方向は、図4におけるY軸方向である。ここで、Y軸方向の直線偏光が、光路シフト素子10に入射したときにおける入射方向の屈折率は、屈折率no、neを主軸に有する屈折率楕円体において当該楕円体中心を通過する光の関係から、ダイレクタ16cの傾斜角θ、屈折率no、neから求められるが、詳細については省略する。ただし、当該入射光は、その屈折率に応じた偏向を受けて、第1配向状態であれば図4(a)に示されるようにY軸正方向に、第2配向状態であれば図4(b)に示されるようにY軸負方向に、それぞれ基板法線方向である入射光の直進方向に対してシフト量Saだけシフトする。
ここで、基板12a(配向膜14)と基板12bとのセルギャップ(液晶層の厚み)をdとするとき、シフト量Saは、次式で表される。
Sa={(1/no)−(1/ne)}2cos2θ・d
÷[2{(1/ne)2sin2θ+(1/no)2cos2θ・d}]…(1)
【0017】
このように、光路シフト素子10では、電極18aに印加する駆動信号Asの電圧を+Vaまたは−Vaの一方から他方へ切り替えることによって、入射光の直進方向に対し出射光が2Saだけ光路がシフトすることになる。
【0018】
続いて、光路シフト素子10の光路シフトによって、スクリーン300に投射される画像にどのような変化を与えるか、という点について説明する。図5は、投射画像が光路シフトによって偏位した(ずれた)様子を示す図である。この図において、実線は、光路シフト素子10において液晶が第1配向状態となっている場合の光路を示し、破線は、光路シフト素子10において液晶が第2配向状態となっている場合の光路を示す。そして、液晶ライトバルブ100R(100G、100B)の出射光が光路シフト素子10によってシフト量2Saだけシフトされたとき、当該シフトは、スクリーン300上の投射画像において拡大されて、2Sbの偏位として現れる。
なお、実際には、図1に示されるように、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの透過したことによる3色の画像がダイクロイックプリズム212によって合成され、その合成光が、光路シフト素子10によって光路シフトされることになるが、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、光路シフト素子10からみると、互いに光路長が等しい位置関係にあるので、図5では、液晶ライトバルブ100Rのみを示している。また、投射レンズ系214については、図1と比較して簡易的に示している。
【0019】
さて、図6は、液晶ライトバルブによる画像の更新と光路シフト素子10への駆動信号Asとの関係を示す図である。
上述したように液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bでは、1行目から1080行目までの走査線が順番に選択されて、選択された走査線に位置する画素に対してデータ信号が供給される。ここで、図6において、記号■は、走査線1行分の選択を示しており、これがフレームの周期Tfにわたって1行目から1080行目まで順番に選択されている状態を示している。ここで、記号■の右側に位置する領域は、当該記号■の選択によって書き込まれたデータ信号の電圧に対応する階調で保持された期間を示している。したがって、図6では、フレームの画像がフレームの周期Tf(16.7ミリ秒)毎に順次更新される様子が示されている。
ここで、本実施形態では、半周期Ts/2は、フレームの周期Tf(16.7ミリ秒)よりも短く設定されているので、同一フレームの画像を表示している期間においては、駆動信号Asの電圧が+Vaとなっている状態と、−Vaとなっている状態との2状態が存在する。
このため、本実施形態において、同一フレームの画像は、駆動信号Asが電圧+Vaとなって光路シフト素子10の液晶が第1配向状態となったときに投射される期間と、駆動信号Asが電圧−Vaとなって光路シフト素子10の液晶が第2配向状態となったときに投射される期間とに分かれる。
なお、光路シフト素子10に用いられる液晶16の光学的応答速度は1ミリ秒未満であり、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの光学的応答速度と比較して十分に高速である。このため、Ts/2<Tfと設定することは可能である。
【0020】
図7の(b)は、スクリーン300上の投射画像の部分拡大図である。この図に示されるように、本実施形態では、第2配向状態となっているときの光路によって投射される画像は、第1配向状態となっているときの光路によって投射される画像に対して、画素配列に対して斜め方向に、距離2Sbだけ偏位している。
なお、光路シフト素子10において入射光の直線偏光方向と電界印加方向とは直交し(図4参照)、当該直線偏光方向は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの出射側に配置する偏光板の透過軸と一致する。このため、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Gの出射側偏光板の透過軸を、画素配列に対して斜め方向とし、この斜め方向に光路シフト素子のY軸が一致するように設定すればよい。また、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの入射側の偏光板は、出射側の透過軸に対して直交する方向に合わせれば良い(液晶ライトバルブ100R、100G、100Bにおける液晶の配向方向もこれらの透過軸方向に合わせることは言うまでもない)。
【0021】
さて、図7(b)に示されるように、画素の形状は略正方形であり、この正方形同士の隙間がブラックマトリクスである。
ここで、光路シフト素子が存在しなければ、投射画像において画素の偏位は発生しないので、ブラックマトリクスに相当する部分は、図7(a)に示されるように、常に暗状態(図面ではハッチングが付されていない白色部分)となり、格子状パターンが目立ってしまう。これに対し、本実施形態によれば、図7(b)に示されるように、光路シフトにより投射される画像が偏位するので、ブラックマトリクスに相当する部分も偏位する結果、光路シフト素子の液晶が第1配向状態であったときに表示されたブラックマトリクスには、液晶が第2配向状態となったときに表示される画素が重ねられる。このため、本実施形態では、格子状のパターンが視認されにくくなるのである。
【0022】
この例では、光路シフト素子10による光路シフト方向を画素配列に対して斜め方向としているが、図8に示されるように画素配列の一方方向、すなわち、画素の形状の上下方向としても良い。このように、上下方向にシフトさせると、上下方向のストライプ状に形成されたブラックマトリクスを効果的に目立たなくすることが可能となる。なお、このようにシフトさせるには、光路シフト素子のY軸方向を、画素配列の上下方向に一致させれば良い。
なお、この例では、画素の形状については略正方形としているが、例えば平行四辺形や、台形、五角形、六角形、八角形などであって良い。
また、光路シフト方向を画素配列の他方方向、すなわち、画素形状の左右方向としても良い。左右方向にシフトさせた場合については特に図示していないが、左右方向のストライプ状に形成されたブラックマトリクスを効果的に目立たなくすることが可能となる。なお、このようにシフトさせるには、光路シフト素子のY軸方向を、画素配列の左右方向に一致させれば良い。
【0023】
本実施形態では、光路シフト素子10が、液晶16の複屈折を用いて、ライトバルブの出射光を光路シフトしているので、複屈折性を有する非線形光学結晶を用いた方式と比較して低コストを図ることができる。
また、この実施形態では、後述する第2および第3実施形態と比較すると、用いる光路シフト素子が1つで済み、また、二分の一波長板も不要であるので、構成の簡易化を図ることができる。
なお、本実施形態において、光路シフト素子10では、第1および第2配向状態のときの出射光が入射光の直進方向に対して対称であるとして説明したが、ブラックマトリクスを目立たなくする効果は、シフト量がゼロでなければ良い。このため、液晶の平均傾斜角が印加電圧によって異なりさえすれば良い。
ここで、本発明で述べる液晶分子の傾斜角とは、液晶の光軸(液晶分子の長軸)方向と、基板法線方向となす角度θであり、液晶の屈折率no、neを予め測定しておくことにより、コノスコープ像の観察を通して用意に求めることができる。また、平均傾斜角の「平均」とは、液晶分子が複数であることに起因するが、コノスコープ像における十字線の位置の変化は、複数の液晶分子の平均傾斜角が変化したことに他ならない。
【0024】
この例では、駆動信号Asを光路シフト素子10に供給する制御回路50を、別体として取り扱っているが、光路シフト素子10に制御回路50を内蔵したり一体化したりするなどにより、光路シフト素子について、制御回路を含めて概念することも可能である。このため、光路シフトの動作を制御するために、液晶ライトバルブ100、100Gおよび100Bにおけるフレームの期間内に光路シフト素子の印加電界を変化させる様に制御する制御回路50を、光路シフト素子10に含めても良い。
【0025】
また、光路シフト素子10では、電極18a、18bの印加電圧に応じて、シフト量を調整することができる。このため、図9に示されるように、ボリュームのような操作子52を設けるとともに、この操作子10による操作量に応じて、制御回路50が、図10に示されるように電圧+Va、−Vaの振幅を調整すると、ユーザは、投射された画像を見ながら最も適切な(ブラックマトリクスが最も目立たなくなる)シフト量を設定することが可能となる。なお、この構成において制御回路50および操作子52が、シフトの量を調整する調整手段として機能する。
また、ここでいう調整において、駆動電圧Asの振幅値をゼロに設定できるようにしても良い。振幅値がゼロに設定されると、光路シフト素子10において光路シフトが発生しなくなるが、ユーザが光路シフトを望まない場合にその意図を反映することができる。
【0026】
一方、適切なシフト量は、表示される画像の種別、例えば、動画、静止画の区別のほか、シネマ、OA、ゲーム、テレビションなどの映像ソースの種類などによっても異なる場合がある。このため、これらの種別に応じて、駆動信号Asの電圧振幅をプリセットしておくとともに、入力した画像信号Vidの種別をユーザが指定して、指定された画像信号Vidの種別に応じて駆動信号Asの電圧振幅を制御回路50が設定して、入力した画像信号Vidに応じた適切なシフト量を設定する構成としても良い。
あるいは、図11に示されるように、判別回路54が入力画像信号Vidの種別を判別して、その判別結果に応じた駆動信号Asの電圧振幅を制御回路50が設定する構成としても良い。この構成において制御回路50および判別回路54が、入力した画像信号に応じてシフトの量を切り替える手段として機能する。
【0027】
<第1実施形態の変形例:その1>
次に、第1実施形態において、駆動信号Asの半周期Ts/2とフレームの周期Tfとの関係を変更した変形例(その1)について説明する。
第1実施形態では、駆動信号Asの半周期Ts/2をフレームの周期Tfよりも短くして、Ts/2<Tfとしたが、この変形例では、図12に示されるように、Ts/2=Tfとしたものである。
同図に示されるように、電圧+Va、−Vaの切替タイミングについては、フレームと一致させなければ、同一のフレームを表示している期間において光路シフトが発生することになる。
なお、あるフレームの期間のうち、駆動信号Asが電圧+Vaとなる期間をTfaとし、駆動信号Asが電圧−Vaとなる期間をTfbとしたとき、走査線の位置に応じて期間Tfa、Tfbとなる割合が異なる。すなわち、第1配向状態に対応してシフトされた位置で表示される期間Tfaと、第2配向状態に対応してシフトされた位置で表示される期間Tfbとの割合が、走査線の位置に応じて異なる。ただし、ブラックマトリクスを目立たなくすることができる点においてかわりはない。このようにTs/2=Tfに設定すると、光路シフト素子の駆動周期を、図6と比較して低く抑えることができる、という利点がある。
【0028】
<第1実施形態の変形例:その2>
続いて、第1実施形態において、駆動信号Asの半周期Ts/2とフレームの周期Tfとの関係を変更した変形例(その2)について説明する。
この変形例では、図13に示されるように、フレームの周期Tfを16.7ミリ秒よりも短くして、Ts/2>Tfとしたものである。
このため、液晶ライトバルブによる画像が複数回更新されてから、光路シフト素子10による光路シフトが発生する。すなわち、連続する2以上のフレームを表示している期間において光路シフトが発生することになる。
このように、Ts/2>Tfに設定する理由は、静止画や比較的動きが遅い動画を表示する場合であれば、1フレーム内においてシフト位置を切り替える必要がないためである。ただし、光路シフト素子による光路シフトに起因したフリッカが認識されないように、光路シフト素子の駆動周波数を30Hz以上として、投射される画素が第1または第2配向状態に対応する位置を保つ時間を、16.7ミリ秒以下となるようにすることが望ましい。また、適用する液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、高速応答性を有するものが好ましい。
【0029】
<第1実施形態の変形例:その他>
上述したように、光路シフト素子10では、電極18a、18bの印加電圧に応じて、シフト量が調整されるので、駆動信号Asについては、電圧+Va、−Vaのいずれかとなるパルス信号ではなく、電圧+Va、−Vaをピーク値とする正弦波や三角波のようなアナログ信号としても良い。
このように、駆動信号Asを電圧+Va、−Vaをピーク値とするアナログ信号としたとき、投射される画像の画素は、図6(b)において、第1配向状態に対応する位置から第2配向状態に対応する位置まで、または、その逆方向に、連続的に移動するので、ブラックマトリクスを、より目立たなくすることができるとともに、画素配置の2箇所のいずれかにとどまることによって投射される画素が局所的に明るくなる弊害を是正することも可能となる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るプロジェクタについて説明する。図14は、その光学的な構成を示す平面図である。
この図に示されるように、第2実施形態に係るプロジェクタ2は、第1実施形態(図1参照)における光路シフト素子10に代えて、光路シフトデバイス30を用いたものである。
【0031】
図16は、光路シフトデバイス30の構成を示す斜視図である。この図に示されるように、光路シフトデバイス30は、第1実施形態と同様な光路シフト素子10と、当該光路シフト素子10と同構成の光路シフト素子20と、光路シフト素子10、20の間に介挿された二分の一波長板15とにより構成される。ここで、光路シフト素子20は、光路シフト素子10の出射側であって、当該光路シフト素子10をZ軸正方向からみたときに時計回り90度回転させた位置関係にある。すなわち、光路シフト素子10、20は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bによる出射光の経路において2個直列に、光路のシフト方向が互いに直交するように配列させた関係にある。
なお、光路シフト素子10における電極18a、18bがそれぞれX軸負側、X軸正側に位置するとき、光路シフト素子20における電極28a、28bがそれぞれY軸負側、Y軸正側に位置することになる。
また、光路シフト素子20における電極28aには駆動信号Bsが供給され、電極28bは電位Gndに接地されている。
【0032】
光路シフト素子10の出射光の偏光方向は、Y軸方向にあるので、この出射光が二分の一波長板15を通過したときに、その偏光方向はX軸方向に変換されて、光路シフト素子20に入射する。このため、光路シフト素子10の基板面に沿って90度回転した位置関係にある光路シフト素子20の光路シフト方向は、光路シフト素子10による光路シフト方向と直交するX軸方向となる。
なお、第2実施形態において、光路シフト素子10による光路シフト方向であるY軸方向は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの画素配列の斜め方向ではなく、図8と同様に上下方向に揃うように設定されている。したがって、光路シフト素子20による光路シフト方向であるX軸方向は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの画素配列の左右方向となる。
【0033】
図15は、プロジェクタ2の電気的な構成を示すブロック図である。この図に示される構成が、第1実施形態(図2参照)と相違する点は、制御回路50が光路シフト素子10に駆動信号Asを供給するとともに、光路シフト素子20に駆動信号Bsを供給する点にある。
第2実施形態において、制御回路50が供給する駆動信号As、Bsは、図17に示される通りである。すなわち、第2実施形態では、駆動信号As、Bsは、いずれも電圧+Va、−Vaのいずれかを半周期Ts/2毎に交互にとる同一周波数のパルス信号であるが、駆動信号Asに対して駆動信号Bsの位相が90度遅延した関係にある。
また、本実施形態において、駆動信号As、Bsの周期Tsは、フレームの周期Tfと同じに設定され、さらに、駆動信号Bsが電圧+Vaから電圧−Vaに切り替わるタイミングと、フレームの開始(1行目の走査線が選択されるタイミング)とが一致するように設定されている。
このため、第2実施形態において、フレームの期間については、駆動信号As、Bsにおける電圧に応じて次のような4状態に分類することができる。すなわち、フレームの期間については、駆動信号As、Bsの電圧が、(−Va、−Va)となるA状態、(+Va、−Va)となるB状態、(+Va、+Va)となるC状態、および、(−Va、+Va)となるD状態に、それぞれ時系列的に分類することができる。
【0034】
図18は、第2実施形態に係るプロジェクタ2によってスクリーン300上に投射される画像の部分拡大図である。ある1フレームの表示期間においては、A状態、B状態、C状態、D状態という順番で進行し、このうち、B状態では、直前のA状態と比較して駆動信号Asの電圧が+Vaに切り替わるので、投射される画像は上方向に2Sbだけ偏位する。次に、C状態では、直前のB状態と比較して駆動信号Bsの電圧が+Vaに切り替わるので、投射される画像は左方向に2Sbだけ偏位する。さらに、D状態では、直前のC状態と比較して駆動信号Asの電圧が−Vaに切り替わるので、投射される画像は下方向に2Sbだけ偏位する。なお、次のフレームに移行すると、再びA状態になる。A状態では、直前のD状態と比較して駆動信号Bsの電圧が−Vaに切り替わるので、投射される画像は右方向に2Sbだけ偏位して元の位置に戻ることになる。
このため、本実施形態によれば、上下左右に偏位した4状態に相当する位置に画素がそれぞれ順番に投射されるので、第1実施形態と比較して、さらにブラックマトリクスを目立たなくすることが可能となる。
なお、第2実施形態においても、駆動信号As(Bs)について、第1実施形態と同様に、半周期Ts/2とフレームの周期Tfとの関係を変更する点や、電圧振幅を調整可能とする点、さらに、アナログ信号とする点などの適用が可能である。
【0035】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るプロジェクタについて説明する。
この第3実施形態では、縦1080行×横1920列の解像度で表示を行う液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bを用いて、投射画像のサイズを変更せずに、実質的に縦720行×横1280列の解像度に落とした画像を表示するものである。
ここで、縦1080行×横1920列の解像度を、縦720行×横1280列の解像度に落とすということは、縦1080行×横1920列の解像度を2/3に落とすということであるから、縦3行×横3列の画素配列により、縦2行×横2列に相当する表示をすれば良いことになる。
しかしながら、液晶ライトバルブにおける縦1080行×横1920列の画素配列は物理的に固定であるので、補間処理等をしない場合には端数の画素が生じて2/3の解像度に落とすことができない。
そこで、第3実施形態では、図19に示されるように、ある1フレームを第1〜第4サブフィールドに分割し、各サブフィールドにおいてそれぞれ後述する表示を行うとともに、第1〜第4サブフィールドに対して光路シフトデバイス30のA、B、CおよびD状態をそれぞれ順番に割り当てる。
【0036】
なお、第3実施形態に係るプロジェクタの構成は、光路シフトデバイス30を用いた第2実施形態(図14および図15)とほぼ同等である。ただし、第3実施形態では、1フレームが第1〜第4サブフィールドに分割されるので、制御回路50が、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bに対して、各サブフィードに応じた画像を形成するように制御するとともに、画像信号処理回路60に対して、各サブフィールドに対応した画像に対応したデータ信号Rv、Gv、Bvを出力するように制御する。
ここで、画像信号処理回路60は、液晶ライトバルブ100R、100G、100Bのそれぞれに対して、後述するように縦1080行×横1920列の画素につき各サブフィールドに対応した表示をさせるようなデータ信号Rv、Gv、Bvを供給する。
【0037】
次に、第1〜第4サブフィールドで表示される画像について図20および図21を参照して説明する。
第3実施形態においては、液晶ライトバルブにおける縦1080行×横1920列の画素配列が縦3行×横3列の配列でグループ化されて、これらの縦3行×横3列の画素によって実質的に縦2行×横2列の表示を行われる。
なお、縦3行×横3列の9個の画素は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bに対応して実在するものであるから、実画素と呼ぶ場合がある。これに対して、解像度変換した縦2行×横2列の4個の画素は、液晶ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの画素配列に対応していないので、虚画素と呼ぶ場合がある。
説明の便宜的のために、ある1つのグループに属する縦3行×横3列の実画素を、p行、(p+1)行、(p+2)行の3行と、q列、(q+1)列、(q+2)列の3列との交差に対応するものとし、これらの9個の実画素によって、解像度を落としたi行j列、i行(j+1)列、(i+1)行j列、(i+1)行(j+1)列の4個の虚画素に相当する表示を行うとする。
【0038】
9個の実画素による表示を、それぞれ図20および図21に示す。詳細には、図20(1)はA状態、図20(2)はC状態、図21(3)はC状態、図21(4)はD状態の表示を示す図である。これらの図に示されるように、縦3行×横3列の実画素のうち、四隅に相当するp行q列、p行(q+2)列、(p+2)行q列、(p+2)行(q+2)列の画素は、第1〜第4サブフィールドにわたって、それぞれ解像度を落とした場合のi行j列、i行j列、(i+1)行j列、(i+1)行(j+1)列の虚画素と同じ表示内容(階調)とさせる。
【0039】
一方、四隅以外の5つの実画素のうち、中心に位置する(p+1)行(q+1)列の実画素は 偏位方向側に位置する実画素と同じ階調とさせる。また、上下端のp行(q+1)列および(p+2)行(q+1)列の実画素は、右下または右上方向に偏位すれば、それぞれ右方向で隣接する実画素と同じ階調とさせる一方、左下または左上方向に偏位すれば、それぞれ左方向で隣接する実画素と同じ階調とさせ、さらに、左右端の(p+1)行q列および(p+1)行(q+2)列の実画素は、右下または左下方向に偏位すれば、それぞれ下方向で隣接する実画素と同じ階調とさせる一方、右上または左上方向に偏位すれば、それぞれ上方向で隣接する実画素と同じ階調とさせる。
すなわち、4状態のうち、スクリーン300に投射されたときに、プロジェクタからみて左下方向に偏位した位置となるA状態では、図20(1)に示されるように、
p 行(q+1)列の実画素は i 行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+1)行 q 列の実画素は(i+1)行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+1)列の実画素は(i+1)行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+2)列の実画素は(i+1)行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+2)行(q+1)列の実画素は(i+1)行(j+1)列の虚画素の階調となる。
【0040】
また、4状態のうち、投射画像において左上側に偏位した位置となるB状態では、図20(2)に示されるように、
p 行(q+1)列の実画素は i 行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+1)行 q 列の実画素は i 行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+1)列の実画素は i 行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+2)列の実画素は i 行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+2)行(q+1)列の実画素は(i+1)行(j+1)列の虚画素の階調となる。
【0041】
また、4状態のうち、投射画像において右上側に偏位した位置となるC状態では、図21(3)に示されるように、
p 行(q+1)列の実画素は i 行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行 q 列の実画素は i 行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+1)列の実画素は i 行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+2)列の実画素は i 行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+2)行(q+1)列の実画素は(i+1)行 j 列の虚画素の階調となる。
【0042】
そして、4状態のうち、投射画像において右下側に偏位した位置となるD状態では、図21(4)に示されるように、
p 行(q+1)列の実画素は i 行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行 q 列の実画素は(i+1)行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+1)列の実画素は(i+1)行 j 列の虚画素の階調となり、
(p+1)行(q+2)列の実画素は(i+1)行(j+1)列の虚画素の階調となり、
(p+2)行(q+1)列の実画素は(i+1)行 j 列の虚画素の階調となる。
【0043】
第3実施形態では、ある1フレームの期間においては、第1サブフィールのA状態、第2サブフィールドのB状態、第3サブフィールドのC状態、第4サブフィールドのD状態いう順番で進行するので、B状態ではA状態から上方向に2Sbだけ偏位し、C状態ではB状態から左方向に2Sbだけ偏位し、さらに、D状態ではC状態から下方向に2Sbだけ偏位し、次のフレームに移行して再びA状態になると、D状態から右方向に2Sbだけ偏位して元の位置に戻る。
このため、1フレームを通してみたときに投射される画像は、図22に示されるようなものとなり、縦3行×横3列の9個の実画素によって、実質的に縦2行×横2列の4個の虚画素がブラックマトリクスを目立たなくした上で表示されることになる。
なお、ここでは、液晶ライトバルブにおける縦1080行×横1920列の画素配列では、縦3行×横3列のグループ配列が360×640個できる。そして、これらのグループの配列が、それぞれ虚画素に相当する縦2行×横2列の表示を行うので、実質的に縦720行×横1280列の解像度に落とした表示が可能となる。
【0044】
<応用・変形例>
上述した第1〜第3実施形態では、光路シフト素子10(20)においては、液晶の複屈折性を用いて光路シフトする構成としたが、単なる屈折や反射によって光路シフトすることも可能である。
図23に示されるように、透明性を有するとともに所定の屈折率を有するガラス等の基板35を、光軸に対して垂直方向の軸を中心にしてアクチュエータ(図示略)等で回動させる構成によって、光路シフトさせることも可能である。この構成では、基板35の傾きを調整すれば、シフト量を調整することができる。例えばシフト量2Saとして7μmを得るためには、基板35の厚さを2mm、その屈折率が1.52であれば、回動軸に対し基板35の傾きを±0.29度で切り替えれば良い。
【0045】
また、図24に示されるように、反射板37の反射角度をアクチュエータ(図示略)等で変更することによって、光路シフトさせることも可能である。この構成では、反射板37の反射角度を調整すれば、シフト量を調整することができる。例えばシフト量2Saとして7μmを得るためには、液晶ライトバルブ100Rと反射板37との距離が15mmであれば、回転軸に対する反射板37の角度を±0.0067度で切り替えれば良い。
なお、光路シフト方向を画素配列に対して斜め方向とする場合(図7(b)参照)、図25に示されるように、反射板37の回転軸37aを、投射レンズ系214からみて斜め方向とすれば良い。
【0046】
なお、上述した第1〜第3実施形態は、投射レンズ系214によってスクリーン300に画像を投射するプロジェクタとして説明したが、反射を組み合わせた、いわゆるリアプロジェクションテレビにも適用可能であるし、これらの拡大投射ではなく、いわゆる直視型の表示装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの光学的構成を示す平面図である。
【図2】同プロジェクタの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】同プロジェクタにおける光路シフト素子の構成を示す図である。
【図4】同光路シフト素子における光路シフトの動作を示す図である。
【図5】光路シフトによる光路変化を示す図である。
【図6】同光路シフト素子の駆動信号を形成画像との関係において示す図である。
【図7】光路シフトによる投射画像の部分拡大図である。
【図8】光路シフトによる投射画像の部分拡大図である。
【図9】光路シフト量を調整可能とする場合の構成を示す図である。
【図10】光路シフト量を調整可能とする場合の駆動信号の波形を示す図である。
【図11】光路シフト量を画像信号の種別に応じて設定する場合の構成を示す図である。
【図12】同光路シフト素子の駆動信号の別例(その1)を示す図である。
【図13】同光路シフト素子の駆動信号の別例(その2)を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの光学的構成を示す平面図である。
【図15】同プロジェクタの電気的構成を示すブロック図である。
【図16】同プロジェクタにおける光路シフトデバイスの構成を示す図である。
【図17】同光路シフトデバイスの駆動信号を形成画像との関係において示す図である。
【図18】光路シフトによる投射画像の部分拡大図である。
【図19】第3実施形態における光路シフトデバイスの駆動信号を示す図である。
【図20】同プロジェクタにおける投射画像の部分拡大図である。
【図21】同プロジェクタにおける投射画像の部分拡大図である。
【図22】同プロジェクタにおける投射画像の部分拡大図である。
【図23】光路シフト素子として屈折を用いた場合の例を示す図である。
【図24】光路シフト素子として反射を用いた場合の例を示す図である。
【図25】反射板の回転軸を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1(2)…プロジェクタ、10(20)…光路シフト素子、16…液晶、18a、18b(28a、28b)…電極、30…光路シフトデバイス、50…制御回路、52…操作子、54…判別回路、100R、100G、100B…液晶ライトバルブ、202…ランプユニット、214…投射レンズ系、300…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力信号に応じて光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子と、
を有し、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を表示する表示装置であって、
前記光路シフト素子は、
透光性基板に挟持された液晶が印加電界によって当該液晶分子の平均傾斜角が変化する液晶機能素子で構成され、前記空間変調器が同一または連続するフレームを表示する期間内に前記印加電界を変化させる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記シフトの量を調整する調整手段を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示装置において、
前記画像入力信号に応じて前記シフトの量を切り替える手段を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置において、
前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、
前記光路シフト素子は、表示される画像が前記画素の一辺方向または前記一辺方向に対して垂直の方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置において、
前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、
前記光路シフト素子は、表示される画素が前記画素の一辺方向に対し斜め方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置において、
前記空間光変調器は、少なくとも一辺を有する形状の画素を複数有し、
前記光路シフト素子は、表示される画素が前記画素の一辺方向に対して異なる2以上の方向に偏位するように、前記変調光の光路をシフトさせる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置において、
光路のシフト方向が互いに異なる光路シフト素子を光路上に二つ直列に配列させた光路シフトデバイスを有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置において、前記光路シフト素子は、
一対の透光性基板と、
該一対の透光性基板の間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶と、
該液晶に電界を作用させる電界印加手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置において、
前記電界印加手段は、前記液晶に作用させる電界の強さを可変とする
ことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示装置において、
前記空間光変調器は、透過型液晶表示素子である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示装置において、
前記画像入力信号で規定される画像の画素数を前記空間光変調器の表示画像の画素数に変換する解像度変換手段を備え、
前記空間光変調器は、前記解像度変換手段により画素数が変換された画像を表示する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の表示装置と、
可視光を放出する光源と、
前記光源から放出された光を前記空間光変調器に照射する照明光学系と、
前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を拡大投射する投射手段と、
を備えることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項13】
画像入力信号に応じて光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子と、
を有し、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を表示する表示装置であって、
前記光路シフト素子は、
前記空間変調器が同一または連続するフレームを表示する期間内に前記シフトの量を変化させる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項14】
画像入力信号に応じて光を変調する空間光変調器と、
透光性基板に挟持された液晶が印加電界によって当該液晶分子の平均傾斜角が変化する液晶機能素子で構成され、前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子と、
を有し、前記光路シフト素子によりシフトされた変調光に基づいて画像を表示する表示装置において、前記光路シフト素子によるシフトを制御する制御回路であって、
前記空間変調器における同一または連続するフレームの期間内に前記印加電界を変化させる
ことを特徴とする光路シフト素子の制御回路。
【請求項15】
画像入力信号に応じて光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器による変調光の光路をシフトさせる光路シフト素子とを有する表示装置に用いられる光路シフト素子であって、
前記光路シフト素子は、透光性基板に挟持された液晶が印加電界によって当該液晶分子の平均傾斜角が変化する液晶機能素子で構成されると共に、前記空間変調器における同一または連続するフレームの期間内に前記印加電界を変化させる様に制御する制御手段を有する
ことを特徴とする光路シフト素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−203626(P2008−203626A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40847(P2007−40847)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】