説明

表示装置及びそれを備えたカメラ

【課題】被写体が動体であっても、ファインダ内において測距エリア表示を見失いにくい表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置は、複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラ(100)におけるファインダ(57)の視野(57a)内に、該選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示(200a)を被写体像に重ねて表示する測距エリア表示手段(72,111)と、該測距エリア表示手段(72,111)によって表示される前記選択測距エリア表示(200a)の輝度を、被写体の移動速度に応じて変更する輝度調整手段(74,111)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された測距エリアを被写体像に重ねて表示することが可能な表示装置及びそれを備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラが存在する。そのようなカメラにおいては、ファインダ視野内に選択された測距エリアの位置を示す測距エリア表示を被写体像に重ねて表示するスーパーインポーズ方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスーパーインポーズ方式では、測距エリア表示と重なる被写体像の明るさの影響で測距エリア表示が見えなくなることを防止するために、ファインダ視野内の領域を複数に分割し、選択された測距エリア表示を含む領域内の被写体輝度を検出し、その被写体輝度に応じて測距エリア表示の表示輝度を制御している。
【特許文献1】特開平3−65939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、スポーツ写真、車、電車や飛行機の写真のような被写体が動体の場合において被写体の動きが速くなると、撮影者の注意は被写体が静止している場合よりも被写体に集中する。この場合、上記従来技術のように背景輝度に応じて測距エリア表示の明るさが制御されていても、測距エリア表示を見失う場合がある。
【0004】
本発明の課題は、被写体が動体であっても、ファインダ内において測距エリア表示を見失いにくい表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラ(100)におけるファインダ(57)の視野(57a)内に、該選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示(200a)を被写体像に重ねて表示する測距エリア表示手段(72,111)と、該測距エリア表示手段(72,111)によって表示される前記選択測距エリア表示(200a)の輝度を、被写体の移動速度に応じて変更する輝度調整手段(74,111)と、を備えることを特徴とする表示装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラ(100)におけるファインダ(57)の視野(57a)内に、該選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示(200a)を被写体像に重ねて表示する測距エリア表示手段(72,111)と、該測距エリア表示手段(72,111)によって表示される前記選択測距エリア表示(200a)の輝度を、前記カメラ(100)の移動速度に応じて変更する輝度調整手段(74,111)と、を備えることを特徴とする表示装置(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の表示装置(1)であって、前記輝度調整手段(74,111)は、測距エリア表示の輝度を、被写体の移動速度に応じて変更することを特徴とする表示装置(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置(1)であって、前記輝度調整手段(74,111)は、前記選択測距エリア表示(200a)の輝度を、前記移動速度が閾値より小さい場合は第1の輝度とし、前記移動速度が閾値以上の場合は、前記第1の輝度よりも大きい第2の輝度にすることを特徴とする表示装置(1)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置(1)であって、前記移動速度は、前記カメラ(100)に加わる角速度を測定する角速度センサ(14,36)により検出された角速度成分を含むことを特徴とする表示装置(1)である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の表示装置(1)であって、前記角速度センサ(14)が、撮影時の手ブレによる像ブレを補正するブレ補正機構(13)に含まれることを特徴とする表示装置(1)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置(1)であって、前記移動速度は、前記カメラ(100)の傾斜を測定する傾斜センサ(36)により検出された傾斜角度を単位時間で割った角速度成分を含むことを特徴とする表示装置(1)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示装置(1)を備えたカメラ(100)である。
【0007】
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連写撮影時において、ファインダ内における測距エリア表示を見やすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は一実施形態の表示装置1を含むカメラ100の概略図である。なお、図1においては、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Lを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ100の位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0010】
本実施形態のカメラ100は、レンズ交換式のデジタルカメラであり、光軸Lに沿って、撮影レンズ10、ミラー部20、撮像部30を備える。さらに、撮影レンズ10に入射した光のうちの、ミラー部20によって図中下方に向けられた光が入射する焦点検出部40と、ミラー部20によって図中上方に向けられた光が入射するファインダ部50と、を備える。
【0011】
撮影レンズ10は、カメラ本体100aに対して交換可能なレンズである。撮影レンズ10内には、複数のレンズ群11、光の量を調整する絞り12、及び手振れ補正装置13が内蔵されている。手振れ補正装置13は角速度センサ14を備え、角速度センサ14により手振れにより生じた撮影レンズ10の角速度を検出し、その角速度に基づいてレンズ群11の中のブレ補正レンズを移動させ、手振れにより生じる像ブレを補正する装置である。
【0012】
ミラー部20は、撮影レンズ10の射光側に配置され、メインミラー21及びサブミラー22を備える。メインミラー21は、撮影レンズ10を通過した光をファインダ部50に向けて反射する。メインミラー21は、その一部がハーフミラーとなっており、光の一部を透過させる。また、メインミラー21は、撮影時にレリーズボタン(図示せず)が押されると、反射面が光軸Lに対して略平行となるミラーアップ位置に退避する。サブミラー22は、メインミラー21のハーフミラー部分を透過した光の進路を屈曲させて焦点検出部40に反射させる。
【0013】
撮像部30は、シャッター31、LPF(Low−Pass Filter)32及び撮像素子33を備える。シャッター31は、後述するMCU101からの信号によりシャッタースピードが制御される。撮像素子33は、撮影レンズ10が結像した像を電気信号に変換するCCDやCMOS等である。
【0014】
また、撮像素子33の後部には基板34が配置されている。基板34には、カメラ100の全体制御を行うMCU101及び後述する各種回路が配置されている。基板34には、さらに傾斜センサ36が実装されている。傾斜センサ36は、カメラ本体100aの傾斜を測定するセンサであり、測定された傾斜角は、カメラ100本体の撮影者側背面に配置された背面液晶モニタ35に表示される。これにより撮影者は、背面液晶モニタ35の表示を観察しながらカメラ100を水平に維持することが可能となる。
【0015】
焦点検出部40には、焦点検出用センサ41が配置され、メインミラー21から分岐された光は、サブミラー22によって反射されて焦点検出用センサ41に入射される。焦点検出用センサ41の前方にはモータ及び連結ギア、カップリングで構成されるレンズ駆動装置42が配置されている。
【0016】
ファインダ部50は、フォーカシングスクリーン51、拡散型液晶52、ペンタプリズム53、第1ダイクロイックプリズム54、第2ダイクロイックプリズム55及び接眼レンズ56を備える。
【0017】
撮影レンズ10を通過した被写体光は、メインミラー21によって図1のYプラス方向に反射され、フォーカシングスクリーン51上に一旦結像される。フォーカシングスクリーン51上で結像された被写体光は、高速撮影時のクロップを行うための拡散型液晶52を透過し、ペンタプリズム53、及びペンタプリズム53に接着された第1ダイクロイックプリズム54及び該第1ダイクロイックプリズム54に接着された第2ダイクロイックプリズム55を通り、さらに複数のレンズより構成される接眼レンズ56を経てファインダ57に導かれる。
【0018】
第1ダイクロイックプリズム54の射出面上部には被写体光の輝度を測定するための公知のプリズム60、測光レンズ61、及び測光センサ62が配置されており、測光センサ62はフレキシブルプリント基板(図示せず)により基板34に設けられた後述する測光回路112に接続されている。測光センサ62は、撮影画面を分割されたブロックごとに測光可能となっている。
【0019】
第1ダイクロイックプリズム54の上部(Yプラス側)には投影レンズ70、方向を変えるための折り返しミラー71、後述する測距エリア表示200が形成された透過型液晶72、照明レンズ73、及び透過型液晶72の光源であるLED74が配置されている。透過型液晶72は電気シャッターの機能も有しており、後述する51個の測距エリア表示200の中から、選択された選択測距エリア表示200aのみ、LED74からの光を透過させ、その光は投影レンズ70で拡大され、第1ダイクロイックプリズム54に入射する。
【0020】
ペンタプリズム53の下部には、ファインダ内表示液晶80及びファインダバックライト81が配置されている。ファインダ内表示液晶80はファインダ57内における後述するファインダ視野57aの下部に、撮影に関する露出制御値、露出モード、露出補正値等のさまざまな情報を表示する。ファインダバックライト81は、ファインダ内表示液晶80を照明するためのものである。
【0021】
図2は本発明のカメラ100のシステム構成を示すブロック図である。MCU101は、カメラ100の全体的な制御を行うものであり、以下に述べる各種制御回路が接続されている。
【0022】
A/D変換回路103は、撮影レンズ10より入射して撮像素子33から出力された電気信号をA/D変換する。タイミング回路104は、撮像素子33及びA/D変換回路103を所定の動作タイミングで駆動する。画像処理制御回路105は、A/D変換回路103から出力された画像データに対して各種画像補正及び各色の画像データに対して補間処理を行う。SDRAM106は、この補間処理されたデータを一時的に記憶するメモリである。画像用記録媒体107は、インターフェース(図示せず)を介して画像処理制御回路105に接続されており、撮影データと画像データとを記録する。背面液晶モニタ制御回路108は、背面液晶モニタ35を制御する。
【0023】
クロップ表示回路109は、拡散型液晶52を制御する回路である。露出制御回路113は、測光回路112から得られた被写体の輝度及び撮像感度からシャッタースピードと撮影レンズ10の絞り値を演算してシャッター制御部114と絞り制御部115を制御する。シャッター制御部114は、シャッター31を制御し、また絞り制御部115は撮影レンズ10の絞り12を制御する。レンズ情報入力部116は、装着された撮影レンズ10から開放絞り値、焦点距離、射出瞳等の情報をカメラ本体100aへ通信する。
【0024】
焦点検出回路117は、図1のカメラ100の底部にあるオートフォーカスのための焦点検出用センサ41から得られた出力をA/D変換してMCU101に出力する。レンズ駆動回路118は、レンズ情報入力部116と焦点検出回路117により得られえた制御結果を基に撮影レンズ10を駆動してオートフォーカスさせるための回路である。モード設定回路119は、露出、オートフォーカス、画像等のさまざまなモードを設定する。設定操作部材120は、カメラ100に対する設定操作を行うスイッチであり、設定操作に応じた操作信号をMCU101へ出力する。SW1は、レリーズボタンの第1ストロークに連動する半押しスイッチであり、SW2は、レリーズボタンの第2ストロークに連動する全押しスイッチである。
【0025】
傾斜センサ36は、図1の座標軸に示すように、正位置を基準として、XYZ軸を中心として時計方向に回転した場合を正方向としたカメラ本体100aの所定時間(例えば10ms)の回転角度をθx,θy,θzを検出する。傾斜センサ36は、この測定した回転角度の値をMCU101に出力する。MCU101は、カメラ100の合成傾斜角度θを計算する。ここで、Z軸方向の角度は、ファインダ内の被写体像の移動には直接寄与しないため、合成傾斜角度θは、Z軸以外の2軸の回転角度θx,θyを使用して以下のように算出される。

θ=√{(θx)2+(θy)2} (1)

この合成傾斜角度θよりカメラ100の移動角速度ωcamは以下のように算出される。

ωcam=θ/tsamp (2)

【0026】
手振れ検出回路121は、角速度センサ14の出力により撮影レンズ10に手振れが生じているかを検出するための回路である。手振れ補正検出回路121は角速度センサ14により検出された角速度ωx、ωyをMCU101に出力する。MCU101は、Z軸以外の2軸の角速度ωx,ωyを用い、撮影レンズ10の移動角速度ωVRを以下のように算出する。

ωVR=√{(ωx)2+(ωy)2} (3)

【0027】
図3はファインダ57内の画像を示した図である。図示するように、ファインダ57内には、被写体像を写すファインダ視野57aとその外周部に設けられた撮影に関する露出制御値、露出モード、露出補正値等のさまざまな情報を表示するためのファインダ内表示部57bとが設けられている。図2のファインダ内表示制御回路110は、ファインダ内表示部57bにこれらの情報を表示するファインダ内表示液晶80とファインダバックライト81を制御する回路である。
【0028】
また、本実施形態でカメラ100は、51個の測距エリアを有している。図4はファインダ視野57a内に51個の全測距エリア表示200を示した図である。なお、図4においては、51個の測距エリア表示200を全て示すが、ファインダ視野57a内において実際に全ての測距エリア表示200が点灯することはなく、選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示200aのみが図3に示すように点灯する。なお、選択測距エリア表示200aは、レリーズボタン(図示せず)を押したときに一瞬点灯するのではなく、一旦選択されると、変更されるまでその位置で点灯し続ける。また、選択測距エリア表示200aは、被写体がその選択測距エリア表示200aから外れると、自動的に撮影者が捕らえた被写体を追尾して移動する。そして、この移動量はMCU101に出力される。
【0029】
図2に戻り、スーパーインポーズ表示制御回路111は、選択測距エリア表示200aをファインダ視野57aにおいて被写体像と重ねて(スーパーインポーズ)表示する際の制御を行う回路である。スーパーインポーズ表示制御回路111はファインダ視野57a内に選択測距エリア表示200aを表示する上述の透過型液晶72を制御して選択測距エリア表示200aを移動させ、また、上述のカメラ100の移動角速度ωcam、撮影レンズ10の移動角速度ωVR、選択測距エリア表示200aの移動量を基に、LED74の輝度を変更して選択測距エリア表示200aのEV値を、LED74を流れる電流のデューティー比を調整することにより補正する。
【0030】
この、スーパーインポーズ表示制御回路111による選択測距エリア表示200aのEV値の制御についてさらに詳細に説明する。まず、スーパーインポーズ表示制御回路111は、選択測距エリア表示200aのEV値の初期値を、測光センサ62によって測定された選択測距エリア表示200aと重なる領域の被写体像の輝度情報をもとに算出した最適なEV値であるEVに設定する。
【0031】
次に、カメラ100の移動角速度ωcam、撮影レンズ10の移動角速度ωVR、選択測距エリア表示200aの移動量を基に選択測距エリア表示200aのEV値を以下の表1に示すように補正する。
【表1】

表1において、Thθはカメラ100の合成傾斜角度θの閾値、Thcamはωcamの閾値、ThVRはωVRの閾値である。また、EVcorは補正後の選択測距エリア表示200aのEV値、EVは補正前の選択測距エリア表示200aのEV値、ΔEVは選択測距エリア表示200aの補正量であり、ΔEVpur>ΔEVmoveである。
【0032】
図5は表1の補正を達成するためのスーパーインポーズ表示制御回路111における補正量決定処理を示すフローチャートである。
上述のように、選択測距エリア表示200aは、被写体が外れると自動的に撮影者が捕らえた被写体を追尾して移動し、その移動はMCU101に出力される。まず、スーパーインポーズ表示制御回路111は、MCU101からの信号により、選択測距エリア表示200aがファインダ内で移動したかどうかを判断する(S201)。
選択測距エリア表示200aが移動している場合(S201,Yes)、式(1)で計算したカメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθ以上かどうかを判断する(S202)。
カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθ以上の場合(S202,Yes)、式(2)で計算したωcamが閾値Thcam以上かどうかを判断する(S203)。
ωcamが閾値Thcam以上の場合(S203,Yes)、選択測距エリア表示200aのEV値をEVより明るくする補正を行う(S204)。このときの補正値はΔEVpurである。この補正により、選択測距エリア表示200aは被写体が移動していない通常の場合よりも明るくなり、被写体が移動していても選択測距エリア表示200aを見失いにくくなる。
【0033】
また、S203において、ωcamが閾値Thcamより小さい場合(S203,No)、式(3)で計算したωVRが閾値ThVR以上かどうか判断する(S205)。
ωVRが閾値ThVR以上の場合(S205,Yes)、ΔEVpurだけ補正を行う(S204)。この場合も、選択測距エリア表示200aは被写体が移動していない通常の場合よりも明るくなり、被写体が移動していても選択測距エリア表示200aを見失いにくくなる。
【0034】
カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθより小さい場合(S202,No)、ΔEVmoveだけ補正を行う(S206)。
また、S202において、カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθより小さい場合(S202,No)も、ΔEVmoveだけ補正を行う(S206)。
更に、S205においてωVRが閾値ThVRより小さい場合(S205,No)もΔEVmoveだけ補正を行う(S206)。
これらの場合も、選択測距エリア表示200aは被写体が移動していない通常の場合よりも明るくなり、被写体が移動していても選択測距エリア表示200aを見失いにくくなる。なお、ここで、ΔEVmoveは、ΔEVpurより小さい値である。これは、この場合、カメラ100は移動しているがその移動量である合成傾斜角度θが所定の閾値Thθより小さいため、補正量をθが閾値Thθ以上の場合のΔEVpurより小さいΔEVmoveにしても選択測距エリア表示200aを見失わないと考えられるからでる。このように必要量だけ明るくすることで、選択測距エリア表示200aが明るすぎることによる不快感を低減させ、また、消費電力を低減することができる、
【0035】
S201で、選択測距エリア表示200aが移動していない場合(S201,No)、カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθ以上かどうか判断する(S207)。
カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθ以上の場合(S207,Yes)、ωcamが閾値Thcam以上かどうかを判断する(S208)。
ωcamが閾値Thcam以上の場合(S208,Yes)、補正を行う(S206)。このときの補正値はΔEVmoveである。この場合も、選択測距エリア表示200aは被写体が移動していない通常の場合よりも明るくなり、被写体が移動していても選択測距エリア表示200aを見失いにくくなる。
【0036】
S208でωcamが閾値Thcamより小さい場合(S208,No)、ωVRが閾値ThVR以上かどうか判断する(S209)。
ωVRが閾値ThVR以上の場合(S209,Yes)、ΔEVmoveだけ補正を行う(S206)。これにより、選択測距エリア表示200aは被写体が移動していない通常の場合よりも明るくなり、被写体が移動していても選択測距エリア表示200aを見失いにくい。
【0037】
カメラ100の合成傾斜角度θが所定の閾値Thθより小さい場合(S207,No)又はωVRが閾値ThcamおよびThVRよりも小さい場合(S209,No)、被写体の移動量は選択測距エリア表示200aを見失うほどではないと考えられるため補正は行わない(S210)。
【0038】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)被写体の移動によりカメラ100や撮影レンズ10を移動させる場合、選択測距エリア表示200aは被写体が静止している場合よりも見にくい。しかし、本実施形態によると、カメラ100や撮影レンズ10が移動している場合は、選択測距エリア表示200aを明るく表示する。したがって選択測距エリア表示200aを見失いにくい。
(2)カメラ100や撮影レンズ10の移動に加え、さらに選択測距エリア表示200aがファインダ視野57a内で移動している場合は、選択測距エリア表示200aがより見にくい。しかし、本実施形態によると、選択測距エリア表示200aが移動しているかどうかを判断し、移動している場合は、移動していない場合よりも全体的に補正量を大きくしている。このため、選択測距エリア表示200aが移動している場合、選択測距エリア表示200aを見失いにくい。
(3)速度だけでなく、カメラの移動量θによっても、選択測距エリア表示200aを見失う可能性が異なる。このため、まず、θを閾値Thθにより場合分けし、θが大きい場合には、より補正量を大きくしているので、選択測距エリア表示200aをより見失いにくい。
(4)カメラの移動速度ωcam、及びレンズ鏡筒の移動速度ωVRにそれぞれ閾値を設け、それらの閾値以上の場合に補正量を大きくすることで、選択測距エリア表示200aをより見失いにくい。
【0039】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では選択測距エリア表示200aの移動の有無、カメラ100の移動、撮影レンズ10の移動の全てを考慮して補正量を決定した。しかし、本発明はこれに限定されない。選択測距エリア表示200aのファインダ視野57a内の移動の有無のみ検出し、その結果により補正を行うか否かを決定してもよい。また、カメラ100の移動の有無のみ検出し、その結果により補正を行うか否かを決定してもよい。撮影レンズ10の移動有無のみ検出し、その結果により補正を行うか否かを決定してもよい。さらには、これらのうちの2つの組み合わせであってもよい。
【0040】
(2)本実施形態では、被写体が動体であることを判断する手段として、手振れ補正装置13の角速度センサ14及びカメラ100に内蔵された傾斜センサ36を用いた。しかし本発明はこれに限定されず、他の手段により被写体が動体か否かを判断してもよい。例えば、別途加速度センサ等をカメラ100に設けてもよい。また、例えば、3Dトラッキング、ダイナミックAF、顔認識センサ等に設けられた合焦エリアの移動を検出するものであってもよい。さらに、レリーズによりフォーカスを固定するモードではなく、被写体を追う間、合焦し続けるモードが選定された場合に、補正するようにしてもよい。
【0041】
(3)本実施形態では、EV値をベースに補正量を決めているが、処理結果が同じになることが明確になっていれば、別の値(例えばBV値)を使用してもよい。
【0042】
(4)本実施形態では、測距エリアの画面上での移動、及びカメラやレンズ鏡筒の移動量に応じて補正量をΔEVpur、ΔEVmove、0の3段階としたが、これに限定されず、これ以上であってもよく、また補正をする、しないの2段階であってもよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態の表示装置を含むカメラの概略図である。
【図2】本発明のカメラのシステム構成を示すブロック図である。
【図3】ファインダ内の画面を示した図である。
【図4】ファインダ視野内に全測距エリア表示を示した図である。
【図5】カメラの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
57:ファインダ、57a:ファインダ視野、72:透過型液晶、74:LED、100:カメラ、111:スーパーインポーズ表示制御回路、200:測距エリア表示、200a:選択測距エリア表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラにおけるファインダの視野内に、該選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示を、被写体像に重ねて表示する測距エリア表示手段と、
該測距エリア表示手段によって表示される前記選択測距エリア表示の輝度を、被写体の移動速度に応じて変更する輝度調整手段と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
複数の測距エリアのうちの選択された測距エリアに合焦可能なカメラにおけるファインダの視野内に、該選択された測距エリアを表示する選択測距エリア表示を、被写体像に重ねて表示する測距エリア表示手段と、
該測距エリア表示手段によって表示される前記選択測距エリア表示の輝度を、前記カメラの移動速度に応じて変更する輝度調整手段と、を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記輝度調整手段は、前記選択測距エリア表示の輝度を、被写体の移動速度に応じて変更することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記輝度調整手段は、前記選択測距エリア表示の輝度を、前記移動速度が閾値より小さい場合は第1の輝度とし、前記移動速度が閾値以上の場合は、前記第1の輝度よりも大きい第2の輝度にすることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記移動速度は、前記カメラに加わる角速度を測定する角速度センサにより検出された角速度成分を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記角速度センサが、撮影時の手ブレによる像ブレを補正するブレ補正機構に含まれることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記移動速度は、前記カメラの傾斜を測定する傾斜センサにより検出された傾斜角度を単位時間で割った角速度成分を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示装置を備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−44202(P2010−44202A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207955(P2008−207955)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】