説明

表示装置

【課題】 周囲環境に対応した適切なモニターの輝度調節を行う表示装置を得る。
【解決手段】 画素毎に明るさを検出可能な高ダイナミックレンジカメラ11で車両前方を撮影し、撮像素子13の撮影画像信号を用い、画面分割処理部20で画面中心の所定範囲内をN×N個に分割し、分割画面映像素子ピーク検出部22で分割画面における所定以上の明るい映像素子部分を明部分映像素子検出部23で検出し、所定以上暗い部分を暗部分映像素子検出部24で検出する。ピーク値映像素子数変化検出部25ではそれらの映像素子数の変化を検出し、ピーク値映像素子数初期所定値到達判別部28でその映像素子数が初期の所定以上になったことを検出したときには、分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18でその映像素子数に対応してモニター15の輝度を制御する。その他の場合は画面平均明るさ対応輝度制御部17で画面の平均明るさに対応した輝度の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、車室内に設置されるナビゲーション画面を表示するモニター等の各種表示機器において、周囲の明るさに応じて表示輝度を制御する手段を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車室内に設置されるナビゲーション装置は、モニターに現在地と共に地図画面を表示し、利用者が目的地に容易に、且つ確実に到着することができるように案内を行っている。このようなモニターは多くの場合液晶表示装置が用いられており、バックライトの調節によって容易に輝度調節を行うことができる。
【0003】
このような輝度調節は、周囲の明るさが変化しても表示画面が常に見やすくするために行われるほか、車両に搭載されるモニターの場合にはそのモニターはフロントパネル部分に設置されるため、例えば夜間やトンネルの中で周囲が暗い場合、モニターが特に明るいと運転者の視界に明るい電灯が光っている状態となり、運転しにくくなるためにその輝度を低下させる必要がある。
【0004】
したがって車両に搭載するモニターには、例えば昼間モードと夜間モードのように、周囲の明るさに応じて輝度を調節するオートディマー機能を搭載しており、例えば車両の照明を点灯させたことを検出してモニターの輝度を低下させることが行われている。また、この輝度調節を自動化するため、車両内外の明るさを検出して所定以下の暗さになったときにモニターの輝度を低下させることも行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−234656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような車両内の明るさを検出することによるモニターの輝度調節においては、例えば昼間走行中の車両がトンネルに入ったとき、車両内の明るさの変化を検出するのに時間がかかるため、トンネルに入って暫くの間は昼間時における高輝度の表示がなされ、運転者にとってまぶしい状態が続く。同様にトンネルから出た後は、明るさの変化の検出に時間がかかるため低輝度の表示が続き、暫くの間は見にくい画面表示がなされることとなる。
【0006】
本発明は上記のような従来の表示装置における輝度調節において、周囲の明暗の変化を検出してから輝度の調節を行うことによる実際の環境変化とモニターの輝度調節操作にずれが生じる問題を解決し、周囲環境に対応した適切なモニターの輝度調節を行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による表示装置は、上記課題を解決するため、画素毎に明るさを検出可能な周囲を撮影するカメラと、モニターの表示映像の輝度を調節するモニター輝度制御手段と、前記カメラで撮影した画像において少なくとも中心から所定範囲を適宜の数の映像素子に分割する画面分割処理手段と、前記画面分割処理手段によって形成された映像素子部分の中で、所定以上の明るい部分、或いは所定以上の暗い部分を検出する分割画面映像素子ピーク検出手段とを備え、前記モニター輝度制御手段は、前記分割画面映像素子ピーク検出手段によって検出された所定以上の明るい部分、或いは所定以上暗い部分の映像素子が初期の所定数以上に達したとき、ピーク値映像素子数の変化に応じてモニターの輝度を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による表示装置は、前記表示装置において、前記モニター輝度制御手段には画面の平均明るさに応じて輝度を制御する画面平均明るさ対応輝度制御手段を備え、前記分割画面映像素子ピーク検出手段によって検出された所定以上の明るい部分、或いは暗い部分の映像素子が前記初期の所定数に達しないとき、及び初期の所定数以上の設定した値に達したことを検出したとき、前記画面平均明るさ対応輝度制御手段による輝度制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明による表示装置は、前記表示装置において、前記分割画面映像素子ピーク検出手段は、周囲が暗いときに分割した映像素子の中で所定以上の明るい部分を検出し、周囲が明るいときに分割した映像素子の中で所定以上の暗い部分を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による表示装置は、前記表示装置において、前記カメラは車両の前方を撮影するカメラであり、前記分割画面映像素子ピーク検出手段で検出する所定以上の明るい部分はトンネルの出口と推定し、所定以上の暗い部分はトンネルの入り口と推定して制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来のモニターの輝度調節における、周囲の明暗の変化を検出してから輝度の調節を行うことによる実際の環境変化とモニターの輝度調節操作にずれが生じる問題を解決し、例えば車両におけるトンネルの出入り口部分を含め、周囲の環境変化に迅速に対応可能なモニターの輝度調節を行う表示装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、周囲環境に対応した適切なモニターの輝度調節を行うようにするという目的を、画素毎に明るさを検出可能な周囲を撮影するカメラと、モニターの表示映像の輝度を調節するモニター輝度制御手段と、前記カメラで撮影した画像において少なくとも中心から所定範囲を適宜の数の映像素子に分割する画面分割処理手段と、前記画面分割処理手段によって形成された映像素子部分の中で、所定以上の明るい部分、或いは所定以上の暗い部分を検出する分割画面映像素子ピーク検出手段とを備え、前記モニター輝度制御手段は、前記分割画面映像素子ピーク検出手段によって検出された所定以上の明るい部分、或いは所定以上暗い部分の映像素子が初期の所定数以上に達したとき、ピーク値映像素子数の変化に応じてモニターの輝度を制御することにより実現した。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明による表示装置の一実施例において、特に周囲の環境変化に対応したモニターの輝度調節を行う機能部、及び各機能部の相互関係を示した機能ブロック図である。なお、これらの機能部は各機能を行う手段ということもできる。
【0014】
図1に示すように、本発明においては例えば車両の前方を撮影するカメラとして、高ダイナミックレンジカメラ11を用いている。この高ダイナミックレンジカメラ11は、近年特に発達しているCMOSイメージセンサ等を用いて、従来のCCDと比べて広いダイナミックレンジや高速取り込みが可能であり、しかも1Mピクセル以上の高い解像度と、1000fps以上のフレームレートで100db以上の高ダイナミックレンジが実現でき、従来のCCDセンサでは不可能であったランダムアクセスが可能となり、したがって全体の画素の中の選択部分の読み取り(ROI)ができ、画素毎の明るさの検出が可能となる。
【0015】
上記のような高ダイナミックレンジカメラ11には、レンズを主体とした光学系入力部12を備え、上記CMOSイメージセンサ等の撮像素子13によってこれを撮像する。その撮像信号はモニターに所定の画像を表示するための周知の画面表示用撮影画像処理部14で処理され、所望の撮影画像を液晶等からなるモニター15に表示する。このモニター15は表示の明るさを調節するためのモニター輝度制御部16から制御信号を入力し、周囲環境の明るさ等に応じてその輝度を調節し、利用者にとって見やすく、また車両の運転者の前方に配置しているモニターの光が目に入って眩しくないように表示の明るさが制御される。なお、図1の実施例では、高ダイナミックレンジカメラを用いた通常の画像処理を、モニター15に画像表示するためのものとして示したが、そのほか、前方の車両と所定の車間距離を取るための画像信号を得るためのもの、或いは道路標識の認識等に用いるための画像処理を行うためのものであっても良い。
【0016】
車両の周囲環境の明るさを計測するに際して、車両が前方監視等のために従来から用いられている通常のCCD撮像素子を用いたカメラを使用したときには、例えば図3B(a)に示すように車両がトンネル内走行からトンネル外に出ようとするとき、図3B(b)に示すように急激な明るさの変化に対応できない中央部分が白くなって画像が撮影されない状態となる。それに対して本発明においては前記のような高ダイナミックレンジカメラ11を用いているので、図3A(b)のように急激な明るさの変化に追従して適正な画像の撮影を行うことができる。本発明においてはこのような高ダイナミックレンジカメラを用いて、後述するように画面の中心部分の所定の範囲をN×N個の映像素子に分割して、個々の映像素子部分で明るさの変化を測定可能としている。
【0017】
モニター輝度制御部16には、この実施例においては、前記高ダイナミックレンジカメラ11で撮影した撮像素子全体の信号を入力して、その画面全体の平均の明るさを検出する画面平均明るさ検出部21の出力により制御を行う画面平均明るさ対応輝度制御部17と、後に述べるように撮像素子13で撮影した全体の画面の中で、特定の範囲を分割してなる分割画面映像素子部分について、その部分の明るさの変化に対応して輝度制御を行う分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18とを備え、いずれかの輝度制御を行うようにしている。
【0018】
高ダイナミックレンジカメラ11の前記撮像素子13からの信号は、画面分割処理部20にも出力しており、画面分割処理部20においては撮影した画像のうち、前記図3Aの例のように、中心部分の所定の範囲をN×N個に等分する等の画面分割処理を行い、個々の分割画像としての複数の撮像素子群からなる映像素子部分を形成する。画面分割処理部20で得られた信号は分割画面映像素子ピーク検出部22に出力し、その中の明部分映像素子検出部23か、或いは暗部分映像素子検出部24のいずれかで明るさのピーク検出がなされる。
【0019】
分割画面映像素子ピーク検出部22では、撮像素子13全体の画像の明るさデータを用いる画面平均明るさ検出部21の信号を入力し、現在の画面全体が所定以上の明るさの時には、その状態から例えばトンネルに入ることによって次第に暗くなることを予測するため、暗部分映像素子検出部24によって、所定以上の暗いピーク値部分の検出を行うようにする。逆に、例えばトンネル内を通過中で現在の画面全体の平均明るさが所定以下である時には、その状態からトンネルを出ることによって次第に明るくなることを予測するため、明部分映像素子検出部23によって、所定以上の明るいピーク値部分の検出を行うようにする。
【0020】
ピーク値映像素子数変化検出部25では、前記分割画面映像素子ピーク検出部22の信号を入力して、検出されたピーク値の映像について、その映像素子数が次第に増加しているか否かの、映像素子数の変化を検出する。そのため、明部分映像素子数変化検出部26においては前記明部分映像素子検出部23で所定以上の明るいピーク値を持つ映像素子が検出されたとき、その明部分の映像素子が次第に増加するか否かを検出する。同様に暗部分映像素子数変化検出部27においては、前記暗部分映像素子検出部24で所定以上の暗いピーク値を持つ映像素子が検出されたとき、その暗部分の映像素子が次第に増加するか否かを検出する。
【0021】
ピーク値映像素子数初期所定値到達判別部28では、前記ピーク値映像素子数変化検出部25で所定以上のピーク値を持つ映像素子数が次第に増加していることを検出したとき、その映像素子数が予め定めた初期の所定値に到達したか否かを判別する。そのため、明部分映像素子数第1予定値到達判別部29では、前記明部分映像素子数変化検出部26で得られた次第に増加する明部分の映像素子数が、予め定めた初期の所定値である第1の所定値に到達したか否かを判別する。同様に暗部分映像素子数第3予定値到達判別部30では、前記暗部分映像素子数変化検出部27で得られた次第に増加する暗部分の映像素子数が、予め定めた初期の所定値である第3の所定値に到達したか否かを判別する。
【0022】
ピーク値映像素子数初期所定値到達判別部28における上記各部のいずれかで前記所定値に達したと判別したときには、その信号をモニター輝度制御部16における分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18にその旨の信号を出力し、分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18ではそれらの判別結果に応じて、画面平均明るさ対応輝度制御部17で周囲が所定以上明るいものとして輝度制御を行っているときには、前記のように画面上の暗部分が次第に増加することに対応してモニターの輝度を低下させるように制御を行い、逆に周囲が所定以上暗いものとして輝度制御を行っているときには、次第に明部分が増加することによってモニターの輝度を増加させるように制御を行う。
【0023】
ピーク値映像素子数最終所定値到達判別部31では、ピーク値映像素子数が更に増加し、最終的に分割画面映像素子の明るさ変化に対応した輝度制御を行うよりも、通常のモニター輝度制御である画面平均明るさ対応輝度制御を行うことが好ましいとして予め設定した、最終的な所定値のピーク値映像素子数に到達したか否かを判別する。そのため、明部分映像素子数第2所定値到達判別部32では、前記明部分映像素子数変化検出部26で得られた明部分の映像素子数が、予め定めた最終的な所定値である第2の所定値に到達したか否かを判別する。同様に暗部分映像素子数第4所定値到達判別部33では、前記暗部分映像素子数変化検出部27で得られた暗部分の映像素子数が予め定めた初期の所定値である第4の所定値に到達したか否かを判別する。
【0024】
ピーク値映像素子数最終所定値到達判別部31における上記各部で前記所定値に達したと判別したときには、その信号をモニター輝度制御部16にその旨の信号を出力し、モニター輝度制御部16では前記のような分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18による輝度制御から、画面平均明るさ対応輝度制御部17による通常の輝度制御に切り換えることができるようにしている。
【0025】
このような機能ブロックからなる、上記実施例における高ダイナミックレンジカメラを利用したオートディマー機能を行うため、例えば車両に搭載したカメラによって上記オートディマー機能を行わせる際には、図2に示す作動フローによって順に作動させることができる。以下にこの作動フローを前記図1の機能ブロック図、及び図3及び図4の画像例等を参照しつつ説明する。
【0026】
図2に示す例においては、前記のような高ダイナミックレンジカメラによって車両の前方の撮影を行い(ステップS1)、次いでその撮影映像に基づき、撮影画像全体の明るさに対応した画面輝度に設定する制御を行う(ステップS2)。これは図1における画面平均明るさ検出部21において高ダイナミックレンジカメラ11の撮像素子13の信号を入力し、画面全体の平均明るさを検出して、その検出値に応じて画面平均明るさ対応輝度制御部17によってモニター15の通常の輝度制御を行うことによってなされる。
【0027】
その後、撮像素子の所定領域をN×Nに分割し、各素子分割部分である映像素子の輝度を計測する(ステップS3)。これは図1における画面分割処理部20によって例えば図3のA(a)〜(c)のように、画面全体のうち画面中心から所定の領域を選択し、この領域を縦横に等分割する。図示の例では5×5に分割した例を示しているが、9×9等必要に応じて任意に設定することができ、中心部に1つの映像素子部分を形成する際には縦横奇数の値を選択することが好ましい。なお、この場合においても、縦横の分割数は異なっても良区、この分割数の最大の値は撮像素子1つの単位とすることが可能である。画面中心の各素子分割部分である映像素子部分の輝度は、図1における画面分割処理部20において検出することもできるが、分割画面映像素子ピーク値検出部22で検出しても良い。
【0028】
次いで、現在の撮影映像の平均の明るさは所定以上であるか否かを判別する(ステップS4)。この判別は前記ステップS2において、撮影画像全体の明るさに応じた輝度制御に際して得られた撮影画像全体の明るさの平均値を利用することができ、その明るさが所定以上であるか否かによって、以降の処理において明暗逆の処理がなされる。
【0029】
ステップS4において現在の撮影映像の明るさが所定以上ではないと判別したときには、撮影画像の略中心部の映像素子が特に明るいか否かを判別する(ステップS5)。即ち、現在の撮影映像の明るさが暗いときであって、例えば車両がトンネル等の暗所を走行しているとき、モニターは通常の輝度制御によって輝度を下げた状態で表示している。このときにトンネルの出口が次第に近づいてくることにより画面の中心部が次第に明るくなってくる状態を検出するため、画面全体の映像素子のピーク値検出を行い、最初に中心部近傍の映像素子にピーク値が存在するか否かを判別する。これは図1の分割画面映像素子ピーク検出部22における、明部分映像素子検出部23において行う。このステップS5において、略中心部の映像素子が特に明るくはないと判別されたとき、即ち、明るさのピーク値をもつ映像素子は車両走行前方位置に相当する略中心部以外の、例えば画面の端の部分であるか、或いは特に所定以上明るい映像素子が存在しないときには、ステップS1に戻って前記処理を繰り返す。
【0030】
ステップS5において撮影映像の略中心部の映像素子が特に明るいと判別したとき、即ち例えば図4A(a)の映像素子の例に示されるように、トンネル走行中において全体の映像素子が暗いとき、中心部に特に明るい映像素子が検出されたときには、その特に明るい部分の面積が増大しているか否かを判別する(ステップS6)。これは図1のピーク値映像素子数変化検出部25における、明部分映像素子数変化検出部26によって、特に明るい部分の映像素子数が増大しているか否かを判別することにより行う。このステップS6において、特に明るい部分の面積が増大していないと判別したときには、再びステップS1に戻って同様の作動を繰り返す。
【0031】
このステップS6において、特に明るい部分として検出された映像素子部分の面積が増大していると判別したときには、その部分が第1の所定以上の広さになったか否かを判別する(ステップS7)。これは図1のピーク値映像素子数初期所定値到達判別部28における明部分映像素子数第1所定値到達判別部29において、特に明るい映像素子の数が次第に増加し、予め定めた初期の所定値である第1所定値に到達したか否かを判別することにより行われる。このときの所定値としては、図4に示す例においては、例えば図4A(b)に示す映像素子の面積とし、この面積になったときに、第1の所定値に到達したと判別することができる。
【0032】
このステップS7において、未だ第1の所定以上の広さになっていないと判別したときには、前記ステップS6に戻り、特に明るい部分の面積が増大しているか否かの判別を繰り返し、増大しているときには再びステップS7の判別を行い、前記第1の所定値に到達するまでこの作動を繰り返す。
【0033】
ステップS7において特に明るい映像素子部分が第1の所定以上の広さになったとき、即ち、明部分の映像素子数が第1の所定値に到達したと判別されたときには、画面の輝度を次第に上げていく(ステップS8)。この作動は図1の明部分映像素子数第1所定値到達判別部29がモニタ輝度制御部16における分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18に信号を出力することにより、明部分映像素子数に応じたモニターの輝度制御が可能となる。
【0034】
その後、前記の特に明るい部分が第2の所定以上の広さになったか否かを判別し(ステップS9)、未だ通常の輝度制御を行う状態には至っていないと判別されたときには、前記ステップS6に戻って前記作動を繰り返し、第2の所定以上になったと判別したときには、周囲環境の明るさに応じた通常の輝度調節制御を行う(ステップS10)。この第2の所定値としては、図4A(c)に示す映像素子の面積となったときに、その所定値に達したものとして判別するようにしても良い。このようにして、例えば車両がトンネルから抜け出るときに大きな明るさの変化が生じるにもかかわらず、その明るさの変化に対応した適切なモニターの輝度調節が可能となる。
【0035】
一方、前記ステップS4において現在の撮影映像の平均の明るさは所定以上か否かの判別において、前記とは逆に所定以上であると判別したとき、即ち現在の撮影映像の平均の明るさが所定以上であることにより、それに対応してモニター画面の輝度が上がっているときには、ステップS11に進み、以降は前記ステップS5〜S10の作動とは明暗逆の同様の作動を行う。
【0036】
即ち、ステップS11で略中心部の映像素子が特に暗いか否かを判別し、現在の撮影映像の明るさが明るいときであって、例えば車両がトンネル等の暗所に入る前の走行状態のときには、トンネルの入り口が次第に近づいてくることにより画面の中心部が次第に暗くなってくるか否かを判別する。このステップS11において、略中心部の映像素子が特に暗くはないと判別されたとき、即ち、暗部分のピーク値をもつ映像素子は車両走行前方位置に相当する略中心部以外の、例えば画面の端の部分であるか、或いは特に所定以上暗い映像素子が存在しないときには、ステップS1に戻って前記処理を繰り返す。
【0037】
ステップS11において例えば図4B(a)に示すように、撮影映像の略中心部の映像素子が特に暗いと判別したときには、その特に暗い部分の面積が増大しているか否かを判別する(ステップS12)。これは図1のピーク値映像素子数変化検出部25における、暗部分映像素子数変化検出部27によって、特に暗い部分の映像素子数が増大しているか否かを判別することにより行う。
【0038】
このステップS12において、特に暗い部分として検出された映像素子部分の面積が増大していると判別したときには、その部分が第3の所定以上の広さになったか否かを判別する(ステップS13)。これは図1のピーク値映像素子数初期所定値到達判別部28における暗部分映像素子数第3所定値到達判別部30において、特に暗い映像素子の数が次第に増加し、予め定めた初期の所定値である第3所定値に到達したか否かを判別することにより行われる。このときの第3の所定値としては、例えば図4B(b)に示す映像素子の面積とし、その面積になったときに、その所定値に達したものとして判別するようにしても良い。
【0039】
このステップS13において、未だ第3の所定以上の広さになっていないと判別したときには、前記ステップS12に戻り、特に暗い部分の面積が増大しているか否かの判別を繰り返し、増大しているときには再びステップS13の判別を行い、第3の所定値に到達するまでこの作動を繰り返す。このステップS12において、特に暗い部分の面積が増大していないと判別したときには、再びステップS1に戻って同様の作動を繰り返す。
【0040】
ステップS13において特に明るい映像素子部分が第3の所定以上の広さになったとき、即ち、暗部分の映像素子数が第3の所定値に到達したと判別されたときには、画面の輝度を次第に下げていく(ステップS14)。この作動は図1の暗部分映像素子数第3所定値到達判別部30がモニタ輝度制御部16における分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部18に信号を出力することにより、暗部分映像素子数に応じたモニターの輝度制御が可能となる。
【0041】
その後、前記の特に暗い部分が第4の所定以上の広さになったか否かを判別し(ステップS15)、未だ通常の輝度制御を行う状態には至っていないと判別されたときには、前記ステップS12に戻って前記作動を繰り返し、第4の所定以上になったと判別したときには、周囲環境の明るさに応じた通常の輝度調節制御を行う(ステップS10)。このときの第4の所定値としては、例えば図4B(c)に示す映像素子の面積となったときに、その所定値に達したものとして判別するようにしても良い。このようにして、例えば車両がトンネルに入るときに大きな明るさの変化が生じるにもかかわらず、その明るさの変化に対応した適切なモニターの輝度調節が可能となる。
【0042】
本発明は図1に示すような各機能部の作用によって本発明を実施することができるが、実際の高ダイナミックレンジカメラを使用して通常の画像処理と、その画像信号の一部を利用した周囲環境の明るさ検出、及びその検出結果によるモニターの輝度制御を行うためには、例えば図5に示すような構成によって実施することができる。
【0043】
図5に示す例においては、高ダイナミックレンジカメラ41を用い、レンズ42を介して撮像素子43に例えば前記図3Aのような映像を撮影する。その撮像素子43からの信号は、所定以下の画像の明るさのときには高感度側信号系に対して高感度フレーム映像信号を出力し、所定より明るい画像の時には低感度側信号系に対して低感度フレーム映像信号を出力するように第1切換器44によって切り換える。
【0044】
高感度フレーム映像信号処理系統には直接その信号を映像合成部49に出力する系統と、高感度側信号系用フレームメモリ45に記録し、必要なときに読み出される系統とを備え、第1切換器44と連動する第2切換器46によって、映像合成部49に対してフレームメモリ45の信号か、このフレームメモリ45を通さない信号のいずれかを選択して出力するようにしている。
【0045】
また、低感度フレーム映像信号処理系統においても同様に、直接その信号を映像合成部49に出力する系統と、低感度側信号系用フレームメモリ47に記録し、必要に応じて読み出される系統とを備え、第1切換器44及び前記第2切換器46と連動する第3切換器48によって、映像合成部49に対してフレームメモリ47の信号か、このフレームメモリ47を通さない信号のいずれかを選択して出力するようにしている。
【0046】
第1切換器44によって図示の実線のように切り換えられたときには、高感度フレーム映像信号が高感度側信号系に出力され、第2切換器46によってその信号を直接映像合成部49に出力し、それに対して低感度側信号系は第3切換器48によって先に記録していた低感度側信号系用フレームメモリ47のデータを読み取って映像合成部49に出力するようにしており、映像合成部49では両信号を適切な比率で合成し、合成映像信号に対してカメラ信号処理部50で各種画像信号処理を行い、NTSC信号として必要に応じてモニタにこれを表示し、或いは例えば前方の車両への追従用信号、道路標識識別用信号等に使用する。
【0047】
このような高ダイナミックレンジカメラの撮像素子43からの信号は画面分割・平均値・ピーク値検出部51にも出力し、前記図3Aのように画面中心部から所定範囲部分をN×Nに画面分割するとともに、明るさの平均値を検出し、更に一つの画像素子、或いは複数の画像素子の集合からなる分割映像素子部分の中で特に明るい、或いは特に暗いピーク値を検出する。その信号はマイコン52で処理され、電子シャッタ発生部53に露光時間制御信号として出力し、撮像素子43の電子シャッタ制御を行う。また、画面分割・平均値・ピーク値検出部51の信号を処理するマイコン52からは前記のように処理されて得られる輝度制御信号を出力し、モニター54に対して本発明による輝度制御を行う。なお、第1切換器44において図中波線のように切り換えたときには、第2切換器46,第3切換器48も同様に連動して切り換えられ、特に低感度側信号系の信号を主として用いた映像合成がなされる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は上記実施例で説明したような車両の前方をカメラで撮影して、トンネルの出入りに応じた適切なモニター輝度制御に用いるほか、地下駐車場の出入り、比較的長い高架道下の走行時等、種々の状況に対応するために利用することができ、車両以外の各種移動体におけるモニター表示等、種々の分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例の作動フロー図である。
【図3】本発明で用いる高ダイナミックレンジカメラによる撮影画像例Aと、従来のCCDカメラの撮影画像例Bを示す図である。
【図4】本発明で用いる高ダイナミックレンジカメラの撮影画像を画面分割し、特に明るい映像素子A、及び特に暗い映像素子Bの面積の変化の状態を示す図である。
【図5】本発明の実施例におけるカメラ撮影画像の信号処理システム例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
11 高ダイナミックレンジカメラ
12 光学系入力部
13 撮像素子
14 画面表示用撮影画像処理部
15 モニター
16 モニター輝度制御部
17 画面平均明るさ対応輝度制御部
18 分割画面映像素子明るさ変化対応輝度制御部
20 画面分割処理部
21 画面平均明るさ検出部
22 分割画面映像素子ピーク検出部
23 明部分映像素子検出部
24 暗部分映像素子検出部
25 ピーク映像素子数変化検出部
26 明部分映像素子数変化検出部
27 暗部分映像素子数変化検出部
28 ピーク値映像素子数初期所定値到達判別部
29 明部分映像素子数第1所定値到達判別部
30 暗部分映像素子数第3所定値到達判別部
31 ピーク値映像素子数最終所定値到達判別部
32 明部分映像素子数第2所定値到達判別部
33 暗部分映像素子数第4所定値到達判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に明るさを検出可能な周囲を撮影するカメラと、
モニターの表示映像の輝度を調節するモニター輝度制御手段と、
前記カメラで撮影した画像において少なくとも中心から所定範囲を適宜の数の映像素子に分割する画面分割処理手段と、
前記画面分割処理手段によって形成された映像素子部分の中で、所定以上の明るい部分、或いは所定以上の暗い部分を検出する分割画面映像素子ピーク検出手段とを備え、
前記モニター輝度制御手段は、前記分割画面映像素子ピーク検出手段によって検出された所定以上の明るい部分、或いは所定以上暗い部分の映像素子が初期の所定数以上に達したとき、ピーク値映像素子数の変化に応じてモニターの輝度を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記モニター輝度制御手段には画面の平均明るさに応じて輝度を制御する画面平均明るさ対応輝度制御手段を備え、
前記分割画面映像素子ピーク検出手段によって検出された所定以上の明るい部分、或いは暗い部分の映像素子が前記初期の所定数に達しないとき、及び初期の所定数以上の設定した値に達したことを検出したとき、前記画面平均明るさ対応輝度制御手段による輝度制御を行うことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記分割画面映像素子ピーク検出手段は、周囲が暗いときに分割した映像素子の中で所定以上の明るい部分を検出し、周囲が明るいときに分割した映像素子の中で所定以上の暗い部分を検出することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記カメラは車両の前方を撮影するカメラであり、
前記分割画面映像素子ピーク検出手段で検出する所定以上の明るい部分はトンネルの出口と推定し、所定以上の暗い部分はトンネルの入り口と推定して制御を行うことを特徴とする請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−30713(P2006−30713A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210855(P2004−210855)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】