説明

表示装置

【課題】 高抵抗である透明電極から低抵抗配線にコンタクトする場合のコンタクトホールにおいて、電力損失を低減しつつ、狭額縁化を図ることを目的とする。
【解決手段】 表示装置において、基板上に少なくとも薄膜トランジスタ、平坦化膜及び複数の発光素子が形成されており、発光素子には、少なくとも発光層と、第1の電極及び第2の電極を有している。この第1の電極と、第1電極よりも抵抗値の低い配線(GND配線又は電源配線)とを接続させるために、表示領域よりも外側の平坦化膜には複数の第1のコンタクトホール及び複数の第2のコンタクトホールが設けられており、第2のコンタクトホールは、表示領域から第1のコンタクトホールまでの距離に比べて遠距離に配置され、かつ第1のコンタクトホールよりも開口面積が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置において、透明電極(TCO:Transparent Conductive Oxide)から配線(電源配線/GND配線)に接続する場合のコンタクトホール形状に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称す。)技術の開発が盛んである。
【0003】
そして、このような技術を利用した発光素子は、基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)発色する材料を成膜した画素で構成されたフルカラー発光可能なマトリクス表示装置などが知られている。
【0004】
発光素子の構造を、図1を用いて説明する。
【0005】
ガラスの基板101上に発光素子が積層されている。発光素子とは、陽極102(第2の電極)と陰極106(第1の電極)との間に少なくとも発光層104が積層されているものである。その他にも、正孔注入層(図示せず)、正孔輸送層103、電子輸送層105、電子注入層(図示せず)などが陽極102(第2の電極)と陰極106(第1の電極)との間に積層されている場合もある。
【0006】
なお、図1では、陽極102(第2の電極)と陰極106(第1の電極)との間に、正孔輸送層103、発光層104、電子輸送層105が積層されている。
【0007】
ここで、この発光素子を駆動する回路を図9(a)、(b)に、また図9(a)縦構造を図10にそれぞれ示す。
【0008】
なお、図9(a)にTCO電極を陰極に用いた場合であるが、発光素子の縦構造を逆にして発光面側が陽極電源であってよい。その場合は電流の流れる向きが逆となる為図9(b)のような構成となる。この場合TFT300’はNMOS型を使用する。
【0009】
図10において、TCO電極を陰極に用いた場合に、PMOS型の駆動TFT300(TFT、Thin Film Transistorの略であり、薄膜トランジスタと同義である。)のドレイン306から画素電極308を介して、発光素子301に接続されている。発光素子301に流れる電流を駆動TFT300のゲート−ソース間電圧で制御する。ここで、平坦化膜307は、駆動TFT300による表面性を平坦にするために駆動TFT300である薄膜トランジスタ上に形成されたものである。なお、先述した図1の発光素子301は、この平坦化膜上に形成される。また、309は平坦化膜307上に形成された電極である。この電極309は図1では電極102に相当する。
【0010】
なお、図9(a)及び図10において、発光素子301に流れる電流(以下、EL電流と称す。)はVCC電源121から駆動TFT300のソース305、ドレイン306、発光素子301、陰極304に流れる。
【0011】
ここで、図9(b)においては、時系列的に回路の動作を説明する。
【0012】
VSR出力120(VSR:垂直シフトレジスタのことであり、上から下の画素回路部へ順次スキャンを行う。)がHレベルの時、スイッチTFT303がONとなる。その時、DRIVER122の出力の電圧レベルが保持容量302によって保持される。
【0013】
そして、VSR120の出力がLレベルの時には、スイッチTFT303がOFFとなる。この時保持容量302に保持された電圧がPMOS型の駆動TFT300のVGS電圧(VGS電圧:ゲート・ソース間電圧の意味)となる。
【0014】
この電圧値VGSに応じて駆動TFTは所望のEL電流(IEL)を出力する。
IEL=β/2・(VGS−Vth)^2
(β:電流増倍係数、Vth:スレッシュホルド電圧)
【0015】
発光素子301にEL電流が流入すると、図2に示すように流入される電子108とホール107が発光層104で再結合し、発光する。ここで、電子数を増やせば結合数が増える。よって、EL電流に比例して発光輝度が決定される。つまり発光素子301は電流発光素子である。なお、109は電源である。
【0016】
発光素子301の陰極304は導電性とEL発光を透過させる両機能を併用させた膜が要求される。
【0017】
例えば特登録3940738号公報(特許文献1)において、Ag/TCO(例えばITO、IZO)を用いる事が記載してある。
【0018】
またFTO(フッ素ドープした酸化スズ)なども多くの文献に記載されており公知である。
【0019】
ここで一般に配線に用いられる材質としてALと、透明電極配線のITOの比抵抗値をそれぞれ比較すると、ALの場合は1.2×10^−5Ωcmであり、ITOの場合は約1.2〜1.4×10^−4Ωcmである。膜厚にも依存するが、仮に同じ膜厚の場合ITOのシート抵抗値はALの抵抗値に比べて10倍の値を示す。
【0020】
しかし、ITOは膜厚を厚くすると光の透過率の低下が懸念されALの様に比較的厚くする事は出来ない。よってITOの光透過率を向上させるべく薄膜にするとシート抵抗がALに比較して約1000倍の値を示す場合がある。
【0021】
例えば、ALのシート抵抗値を100mΩ/□であり、ITOのシート抵抗値は約100Ω/□を示す。
【0022】
このITOなどの高シート抵抗から、ALなどの低シート抵抗のGND配線に乗り換える場合の方法について、特登録3940738号公報(特許文献1)では次のような技術が開示されている。すなわち図11に示すように、コンタクトホールの1つ当たりの開口面積を小さくし、複数のコンタクトホールを1列に配置している構成が開示されている。
【0023】
また、US7227312(特許文献2)におけるFig6では、表示領域からコンタクトホールに向う方向において、複数の同一面積のコンタクトホールが3列に亘って格子状に配置されている。
【特許文献1】特登録3940738号公報
【特許文献2】US7227312
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかし、特登録3940738号のように、TCO電極から低抵抗配線へのコンタクトホール表示領域に沿って1列に複数個用意させると、コンタクトホールとコンタクトホールの間の寄生抵抗値が増大する。そして、各々のコンタクトホールに電流が集中して流れ、見かけ状寄生抵抗値が増大することとなり、電力損失に繋がるおそれがある。
【0025】
また、US7227312では、複数の同一面積のコンタクトホールが3列に亘って格子状に形成されているが、表示領域から遠距離に配置されている程、コンタクトホールに流れ込む電流は少なくなると思われる。
【0026】
これは、特に高抵抗のTCO電極と、それよりも低抵抗の配線を電気的に接続する場合に発生する。その理由は、表示領域から近距離に配置されたコンタクトホールを通じて低抵抗の配線に電流が流れ込んだ場合、その電流が再び高抵抗のTCO電極に流れないと思われるためである。
【0027】
そのため、表示領域からコンタクトホールまでの距離が遠距離であるほど、流れ込む電流が少なくなると思われる。
【0028】
とすると、表示領域から遠距離に配置されたコンタクトホールに流れ込む電流量に対する開口面積が大きすぎることとなり、狭額縁化を妨げるといった問題がある。
【0029】
そこで本発明の目的は、各々のコンタクトホールに対する電流の集中を低減させる寄生抵抗値を増大させることなく、電力損失を低減させ、かつ狭額縁化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記を鑑みて、本発明では、基板と、前記基板の上に形成された薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜と、表示領域を形成するために前記平坦化膜上に形成された複数の発光素子とを有する表示装置において、前記発光素子は、少なくとも発光層、該発光層を挟むように配置された第1の電極及び第2の電極とを有し、
前記第1の電極と、該第1の電極よりも抵抗値の低い配線とを接続させるために、前記表示領域よりも外側の前記平坦化膜には複数の第1のコンタクトホール及び複数の第2のコンタクトホールが設けられており、前記第2のコンタクトホールは、前記表示領域から前記第1のコンタクトホールまでの距離に比べて遠距離に配置され、かつ前記第1のコンタクトホールよりも開口面積が小さい表示装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高抵抗である透明電極から低抵抗配線である配線(GND配線、電源配線)にコンタクトする場合のコンタクトホールにおいて、電力損失を低減しつつ、狭額縁化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図3を用いてパネルの構成について説明する。まず、基板の上にTFT(薄膜トランジスタ)及び平坦化膜が形成されている。そして、平坦化膜の上には、TCO電極124(第1の電極、例えばITO)と第2の電極(例えばAl)が設けられており、第1の電極と第2の電極との間に少なくとも発光層が構成されている。
【0033】
次に、TCO電極124からGND端子116及びPAD部(図示せず)までの電流経路における、コンタクトホール1(110、113)と、コンタクトホール2(111、114)が配置されている。なお、請求項では、コンタクトホール1に相当するのが第1のコンタクトホールであり、コンタクトホール2に相当するのが第2のコンタクトホールである。
【0034】
電流経路として、高抵抗のTCO電極124(第1の電極)から流れる電流は、まずTCO電極124のうち表示領域100から距離の近いコンタクトホール1に流れる。そして、コンタクトホール1に流れなかった残留の電流、すなわちコンタクトホール1同士の間に流れる電流は、コンタクトホール2へ流れる。ここで、コンタクトホール2は表示領域からコンタクトホール1までの距離に比べて遠距離に形成されており、残留電流は、コンタクトホール2へ流れ込む。
【0035】
このとき、電流は、主にコンタクトホール1に電流が流れる。ここで、一度コンタクトホール1に流れた電流が配線の抵抗よりも高抵抗であるTCO電極124にほど戻ることはない。そのため、コンタクトホール2へ流れる電流はコンタクトホール1に流れる電流に比べると少ない。
【0036】
そこで、コンタクトホール1の開口面積よりもコンタクトホール2の開口面積よりも小さくすることで、無駄にコンタクトホール2の開口面積を大きくしなくても良いという効果を得られる。
【0037】
また、コンタクトホール2の開口面積を小さくしすぎると、開口面積に対する電流密度が高くなり、発熱を生じてしまい電力の損失に繋がってしまう。そのため、コンタクトホール1とコンタクトホール2の電流密度を等しくすることで、コンタクトホール1及びコンタクトホール2における電流の流れやすさを等しくする。これにより、電力損失の低減を達成できると共に、開口面積を無駄に大きくしなくても良い、すなわち狭額縁化という効果をも得ることができる。
【実施例1】
【0038】
図3を用いて有機発光素子を含む表示パネルの構成を詳細に説明する。
【0039】
VCC電源端子115及びPAD部(不図示)、電源配線117、電源分配線121を介して画素回路部123へ電力が供給される。なお、PAD部については、後述する図5にPAD部148として図示した。
【0040】
また、GND端子116から、低抵抗配線125(GND配線)、コンタクトホール1(110、113)、コンタクトホール2(111、114)を介してTCO電極124に接続し、画素回路部123へ電力が供給される。ここで、コンタクトホール2の開口面積は、コンタクトホール1の開口面積よりも小さい。なお、本実施例ではTCO電極124側から光を取り出すため、TCO電極124は、透光性及び導電性を有するITOを使用する。また、コンタクトホール1及びコンタクトホール2は、基板上に形成された駆動TFT(薄膜トランジスタ)の表面凹凸を平坦化させるために設けられた平坦化膜をエッチングすることにより形成される。この平坦化膜は表示領域100のみならず、非表示領域部の基板上にも形成されている。
【0041】
VSR118は垂直シフトレジスタで、図中上から下方向に画素回路部を順次スキャンする。そして、その出力をVSR出力端子部120へ出力する。
【0042】
DRIVER119は、RGBビデオ信号を各列毎に出力する。そして、各列毎の出力端子122が、画素回路部123へ接続される。
【0043】
尚VSR118の入力信号、DRIVER119の入力信号、及びPAD部、配線等については図示していない。
【0044】
ここで、図4にコンタクトホール部112の拡大説明を示し、図5にその断面を、図6にコンタクトホール1及びコンタクトホール2に寄生する抵抗とTCO電極124の抵抗を等価的に示す回路を示す。
【0045】
図4に、コンタクトホール1(110、113)の縦方向長さをW、その横方向の長さをL1とし、また、コンタクトホール2(111、114)の縦方向の長さをW、その横方向の長さをL2としたものを示す。なお、実施例1では、コンタクトホール1とコンタクトホール2は、格子配置となっている。後述する実施例では、コンタクトホール1とコンタクトホール2が、千鳥配置となっている。
【0046】
また、後述する図5では、コンタクトホールにおける底部と側壁最上部では開口の大きさが異なる様になっている。
【0047】
しかし、実際には開口の大きさに比べ傾斜部の幅が無視できるくらい小さい。そのため、コンタクトホール底部の開口と側壁最上部の開口の大きさは、ほぼ等しいので、横方向の長さをL1やL2としている。
【0048】
ここで図4中には、発光素子から流れてくる電流経路128及び129が、左から右で横方向であることを示している。これは、TCO電極124に流れる電流が、表示領域100からコンタクトホール1、コンタクトホール2の方向に向かって流れていくことを示しているものである。
【0049】
次に電流経路と寄生抵抗の模式図を説明する。
【0050】
コンタクトホール1(110、113)には電流経路128、コンタクトホール2(111、114)には電流経路129がそれぞれ存在する。そして、電流経路128には抵抗値Rs/W(126)が存在し、電流経路129にはRITO(136)+Rs/W(127)が存在することを示している。なお、TCO電極124では、ITOを用いたため、抵抗値をRITOと表記しており、以下においても同様である。また、抵抗値Rsは、電流の流れる方向と垂直方向における単位長あたりの抵抗値を示す。Wは先述したようにコンタクトホール1及びコンタクトホール2の縦方向の長さである。
【0051】
次に、図5を用いてコンタクトホールの断面構造を用いて電流経路と寄生抵抗について説明する。
【0052】
まず、電流経路128で通過するコンタクトホール1(110、113)におけるTCO電極124の側壁133の膜厚Tsは、成膜した結果、平坦部の膜厚T1より薄くなる。
【0053】
そのため、TCO電極124の側壁部の抵抗値Rs/Wは、平坦部の抵抗値RITOより大きく、Rs/W>RITOの関係が成り立つ。
【0054】
一方、電流経路129では、TCO電極124の配線抵抗RITOと、コンタクトホール2の側壁部の抵抗値Rs/Wとが直列に接続された状態で存在する。なお、コンタクトホール2には、一旦コンタクトホール1に流れ込んだ電流は、ほぼ流れることはない。コンタクトホール1における低抵抗配線125に電流が流れるためである。
【0055】
なお、図中の平坦化膜131はTCO電極124と低抵抗配線125の間に設けられており、コンタクトホール1(110、113)及びコンタクトホール2(111、114)を形成するためにリソグラフィー処理によって除去される。
【0056】
図6には、図4の電流経路128に相当する電流経路137に寄生する抵抗値、及び図4の電流経路129に相当する電流経路138に寄生する抵抗値を示している。
【0057】
図5、6から、TCO電極124における表示領域100から低抵抗配線125までにおけるコンタクトホール1の抵抗値は、コンタクトホール1の傾斜部におけるRs/W(134)である。なお、表示領域100からコンタクトホール1までのTCO電極124の抵抗も存在するが、ここでは距離が短く、寄与する抵抗値も低いため説明を簡略化させるために省略する。
【0058】
一方、電流経路138における、表示領域100からコンタクトホール2までのTCOの抵抗値RITO(136)とコンタクトホール2における抵抗値Rs/W(135)との合成抵抗を、RITO+(Rs/W)と表す。これは、表示領域100からコンタクトホール2までにおけるTCO電極124の抵抗RITOが存在するためである。
【0059】
この条件から、狭額縁化を図りつつ、電力損失を低減可能なコンタクトホール幅L1、L2のサイズ比を求める。
【0060】
まず、電流経路1に発生する電位と電流経路2に発生する電位は等しいことから次の(式1)、(式2)が成り立つ。
I1・(Rs/W)=I2・(RITO+Rs/W)・・・・・・(式1)
I1:I2=(RITO+Rs/W):Rs/W・・・・・・(式2)
【0061】
次に、コンタクトホール1に流れる電流密度とコンタクトホール2に流れる電流密度を等しくする。コンタクトホール1とコンタクトホール2における電流密度を等しくすることで、コンタクトホール1とコンタクトホール2に流れる電流の流れやすさを等しくするのである。これにより、電流密度が高いことによる発熱の低減と狭額縁化を可能とする構成にすることができる。ちなみに、電流密度とは、単位面積あたりに流れる電流量のことを示す。
【0062】
ここで、コンタクトホール1における電流密度は、I1/(W×L1)である。また、コンタクトホール2における電流密度は、I2/(W×L2)である。コンタクトホール1及びコンタクトホール2の幅(W)は、ここでは等しいものとする。
【0063】
電流密度の定義と(式2)とから、L1とL2の比率は(式3)となることが分かる。
L1:L2=(RITO+Rs/W):Rs/W・・・・・・(式3)
(但し、W>L1及びW>L2を満たすことを条件とする。)
すなわち、(式3)を満たすようなL1及びL2を選択することにより、コンタクトホール1とコンタクトホール2の電流密度を等しくすることができるのである。
【0064】
このように、コンタクトホールを格子状に配置し、電流密度を等しくするようにコンタクトホール1とコンタクトホール2を構成することにより、夫々のコンタクトホールにおいて寄生する抵抗値を等しくすることができる。これにより、輝度ムラをも低減することもできる。
【0065】
なお、図4で電流経路2をコンタクトホール1の上からの電流のみ示してあるが、実際には同上と下の両方から分岐して流入してくる。すなわちコンタクトホール1の周りからコンタクトホール2へ電流が流れてくる。本実施例では、流れる電流及び寄生抵抗は同じなので、簡易的に示し、計算を導きやすくしている。
【0066】
この様に高抵抗のTCO電極124から低抵抗の配線125にコンタクトホール1及びコンタクトホール2を介して接続させる場合には、コンタクトホールの形状を(式3)を参照し適宜最適解を導く事が可能である。
【0067】
尚、L1、L2のサイズ比はL2を最小値としており、この値以上であってももちろん良い。
【0068】
またL2のコンタクトホール2を複数設けてももちろんよい。
【0069】
また、コンタクトホール1、2の表示装置における配置は、図3では2辺に配置した例を示したが、1辺もしくは3辺以上に配置しても良い。この場合でも、表示領域100に対して最内側にコンタクトホール1、最外側にコンタクトホール2を配置させる。
【0070】
上記内容はTCO電極124を陰極に用いた場合に、低抵抗配線125をGND配線として説明をした。ここで、ELデバイスの縦構造を逆にして発光面側が陽極電源であってよい。この場合、低抵抗配線125は電源配線となり、TCO電極124が陽極となる。
【実施例2】
【0071】
図7に第2実施例のコンタクトホールの形状を示す。
【0072】
コンタクトホール1及びコンタクトホール2を格子状に複数配置にしていた実施例1に比べ、実施例2では、コンタクトホール1’139及びコンタクトホール2’140を千鳥状に配置にしている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0073】
これに伴い、表示領域100からコンタクトホール2’(140)までの電流経路146に寄生する抵抗RITO’147の大きさが実施例1における表示領域100からコンタクトホール2までの抵抗RITO136とは異なってくる。
【0074】
すなわち、抵抗RITO’147の値は抵抗RITO値136より低い抵抗値となる。これは、電流経路の距離の差が起因している。すなわち、表示領域100からコンタクトホール2と、表示領域100からコンタクトホール2’を比べた場合、後者の方が短いためである。
【0075】
図8に各電流経路に寄生する抵抗値の等価回路を示す。
【0076】
図8には、コンタクトホール1’に流れ込む電流経路145に寄生する抵抗値Rs/W143、及びコンタクトホール2’に流れ込む電流経路146に寄生する抵抗値RITO’(147)+Rs/W(144)を示している。
【0077】
ここで、図6と図8より、RITO136>RITO’147の関係となるので、実施例1の合成抵抗値RITO(136)+Rs/W(135)よりも実施例2の合成抵抗値RITO’(147)+Rs/W(144)が低くなる。
【0078】
この条件から、電力損失を低減しながら、狭額縁化を図ることのできるコンタクトホール幅L1’、L2’のサイズ比を求める。
【0079】
求める方法は実施例1と同じ手順で求めていく。
【0080】
図7、9から、TCO電極124における表示領域100から低抵抗配線125までにおけるコンタクトホール1’の抵抗値は、コンタクトホール1’の傾斜部におけるRs/Wである。
【0081】
一方、表示領域100から低抵抗配線125までにおけるコンタクトホール2’と電流経路146の合成抵抗を、RITO’+Rs/Wと表す。これは、表示領域100からコンタクトホール2’までにおけるTCO電極124の抵抗RITO’が存在するためである。
【0082】
この条件から、コンタクトホール幅L1’、L2’のサイズ比を以下の(式5)を用いて求める。なお、求め方は実施例1と同じであるため説明を割愛する。
L1’:L2’=(RITO’+Rs/W):Rs/W・・・・・・(式5)
すなわち、(式5)を満たすようなL1’及びL2’を選択することにより、コンタクトホール1’とコンタクトホール2’の電流密度を等しくすることができるため、狭額縁化を図ることができるのである。
【0083】
このように、コンタクトホールを千鳥状に配置し、電流密度を等しくするようにコンタクトホール1’とコンタクトホール2’を構成することにより、夫々のコンタクトホールにおいて寄生する抵抗値を等しくすることができる。これにより、輝度ムラをも低減することもできる。
【0084】
この様に高抵抗のTCO電極124から低抵抗配線125にコンタクトホール1’、コンタクトホール2’を介して接続させる場合には、複数もしくは単数のコンタクトホールの形状、及び配置を(式5)を参照し適宜最適解を導く事が可能である。
【0085】
尚、L1’,L2’のサイズ比はL2’を最小値としており、この値以上であってももちろん良い。
【0086】
ここで実施例に有機発光素子を用いて説明したが、高抵抗のTCOを電極に用いて、これを低抵抗の導電体に接続させる液晶パネルなどいかなる場合においても本発明が適用可能である事は言うまでもない。
【0087】
また、コンタクトホール1’、2’は表示装置の1辺もしくはそれ以上の辺に配置され最内側にコンタクトホール1’、最外側にコンタクトホール2’を配置させる事も可能である。
【0088】
上記内容はTCO電極124を陰極に、低抵抗配線125をGND配線として用いた場合について述べた。ここで、ELデバイスの縦構造を逆にして発光面側が陽極電源であってよい。この場合、低抵抗配線125は電源配線となり、TCO電極124が陽極となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】トップエミッションデバイス構造図
【図2】素子発光メカニズム説明用の図
【図3】実施例1のパネル構成概略図
【図4】実施例1のコンタクトホール部の図
【図5】実施例1のコンタクトホール部の縦構造図
【図6】実施例1のコンタクトホール部の等価回路図
【図7】実施例2のコンタクトホール部の図
【図8】実施例2のコンタクトホール部の等価回路図
【図9】画素回路図
【図10】画素回路の縦構造図
【図11】従来のコンタクトホールを有するパネルの概略図
【符号の説明】
【0090】
110 コンタクトホール1
111 コンタクトホール2
112 コンタクト部分
113 コンタクトホール1
114 コンタクトホール2
126、127コンタクトホールの抵抗Rs/W
128、137 電流経路1
129、138 電流経路2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜と、
表示領域を形成するために前記平坦化膜の上に形成された複数の発光素子とを有する表示装置において、
前記発光素子は、少なくとも発光層、該発光層を挟むように配置された第1の電極及び第2の電極とを有し、
前記第1の電極と、該第1の電極よりも抵抗値の低い配線とを接続させるために、前記表示領域よりも外側の前記平坦化膜には複数の第1のコンタクトホール及び複数の第2のコンタクトホールが設けられており、
前記第2のコンタクトホールは、前記表示領域から前記第1のコンタクトホールまでの距離に比べて遠距離に配置され、かつ前記第1のコンタクトホールよりも開口面積が小さいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールにおける電流密度が等しいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示領域から前記第1のコンタクトホールに流れてくる電流の方向における前記第1のコンタクトホールの幅をL1、前記第2のコンタクトホールの幅をL2とし、前記方向に垂直方向の前記第1のコンタクトホール及び前記第2のコンタクトホールの幅をWとした場合には、L1>L2の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1のコンタクトホールと前記第2のコンタクトホールは格子状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1の電極が陰極である場合には、該第1の電極に接続される前記配線はGND配線であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の電極が陽極である場合には、該第1の電極に接続される前記配線は電源配線であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−139640(P2010−139640A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314606(P2008−314606)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】