説明

表面検査装置

【課題】通常は高速な検査を行いながら、必要に応じて高倍率の画像に基づく高精度な検査を行うことが可能な表面検査装置を提供する。
【解決手段】表面検査装置1において、制御部40は、第1の撮像装置35にウェハWの表面全体の像を撮像させ、画像処理部45で第1の撮像装置35により撮像されたウェハWの表面全体の画像において異常を検出した場合に、第1の撮像装置35よりも高い倍率で撮像可能な第2の撮像装置36に切り替えてウェハWの表面における異常が検出された部分の像を撮像させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程において半導体ウェハ等の基板表面を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような表面検査装置として、半導体ウェハの表面に照明光を照射して当該ウェハの表面に形成された繰返しパターンからの回折光による像を撮像し、撮像面内における輝度変化からパターンの良否判断を行う表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。近年、例えば携帯電話のカメラ等に用いられるイメージセンサの微細化が進んで、1チップあたりの面積が小さくなり、ウェハの表面検査においてより高い撮像倍率が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−151663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述のような表面検査装置では、ウェハの表面を一括撮像するため、撮像倍率が不足してしまう。これに対し、撮像素子の画素数を高めて分解能を高くすることが考えられるが、現状では、上述のような1チップあたりの面積が小さいウェハに対応できる高画素数の撮像素子(特に、DUV対応の撮像素子)は存在しない。また、照明系および撮像系の倍率を高くして、ステージによりウェハの表面を相対移動させてスキャンしながら撮像する方法も考えられるが、ウェハの移動に要する時間が長くなり、スループットが低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、通常は高速な検査を行いながら、必要に応じて高倍率の画像に基づく高精度な検査を行うことが可能な表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る表面検査装置は、基板を支持するステージ部と、前記ステージ部に支持された前記基板の表面に照明光を照射する照射部と、前記照明光が照射された前記基板の表面全体の像を撮像する第1の撮像部と、前記照明光が照射された前記基板の表面の像を前記第1の撮像部よりも高い倍率で部分的に撮像する第2の撮像部と、前記第1の撮像部または前記第2の撮像部により撮像された前記基板の画像に基づいて前記基板の表面における異常の有無を検出する検出部と、前記第1の撮像部に前記基板の表面全体の像を撮像させ、前記検出部が前記第1の撮像部により撮像された前記基板の表面全体の画像において異常を検出した場合に、前記第2の撮像部に切り替えて前記基板の表面における前記異常が検出された部分の像を撮像させる制御を行う制御部とを備えて構成される。
【0007】
なお、上述の表面検査装置において、前記第2の撮像部は、前記第1の撮像部に対して光軸が傾いた状態で、前記第1の撮像部と並ぶように配設され、前記ステージ部が傾動可能に構成されており、前記ステージ部の傾動に応じて、前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を前記第1の撮像部もしくは前記第2の撮像部のいずれか一方に向けて反射および集光させる受光側凹面鏡が設けられていることが好ましい。
【0008】
また、上述の表面検査装置において、前記検出部は、前記基板の表面において所定の範囲で区切られた複数のショット領域ごとに、前記異常の有無を検出するように構成されており、前記制御部は、前記検出部が前記基板の表面全体の画像において異常を検出した場合に、前記第2の撮像部に切り替えて、前記異常が検出された第1のショット領域および、前記異常が検出されなかったショット領域のうち前記第1のショット領域に近い第2のショット領域の像を撮像させる制御を行い、前記検出部は、前記第2の撮像部によりそれぞれ撮像された前記第1のショット領域の画像と前記第2のショット領域の画像とを比較することにより、前記第1のショット領域における異常の有無を再び検出することが好ましい。
【0009】
また、上述の表面検査装置において、前記照射部は、光源部と、前記光源部からの光を反射させて前記基板の表面に前記照明光として照射する照明側凹面鏡とを有し、前記第2の撮像部は、前記第1の撮像部に対して光軸が傾いた状態で、前記第1の撮像部と並ぶように配設され、前記ステージ部が傾動可能に構成されており、前記ステージ部の傾動に応じて、前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を前記第1の撮像部もしくは前記第2の撮像部のいずれか一方に向けて反射および集光させるように前記照明側凹面鏡よりも大きい受光側凹面鏡が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通常は高速な検査を行いながら、必要に応じて高倍率の画像に基づく高精度な検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の表面検査装置を示す図である。
【図2】第1実施形態の表面検査装置において撮像装置を切り替えた状態を示す図である。
【図3】(a)は半導体ウェハの概略図であり、(b)はウェハの表面に形成されたショット領域の拡大図である。
【図4】第2実施形態の表面検査装置を示す図である。
【図5】第2実施形態の表面検査装置において撮像装置を切り替えた状態を示す図である。
【図6】第3実施形態の表面検査装置を示す図である。
【図7】第3実施形態の表面検査装置において撮像装置を切り替えた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。第1実施形態の表面検査装置を図1に示しており、この装置により被検基板である半導体ウェハW(以下、ウェハWと称する)の表面を検査する。第1実施形態の表面検査装置1は、略円盤形に形成されたウェハWを支持するステージ10を備え、不図示の搬送装置によって搬送されてくるウェハWは、ステージ10の上に載置されるとともに真空吸着によって固定保持される。ステージ10は、ウェハWの回転対称軸(ステージ10の中心軸)を回転軸として、ウェハWを回転(ウェハWの表面内での回転)可能に支持する。また、ステージ10は、ウェハWの表面を通る軸を中心に、ウェハWをチルト(傾動)させることが可能であり、照明光の入射角を調整できるようになっている。
【0013】
表面検査装置1はさらに、ステージ10に支持されたウェハWの表面に照明光を平行光として照射する照明系20と、照明光の照射を受けたときのウェハWからの回折光を集光する受光系30と、受光系30により集光された光を受けてウェハWの表面の像を撮像する第1および第2の撮像装置35,36と、制御部40および画像処理部45とを備えて構成される。照明系20は、照明光を射出する照明ユニット21と、照明ユニット21から射出された照明光をウェハWの表面に向けて反射させる照明側凹面鏡25とを有して構成される。照明ユニット21は、メタルハライドランプや水銀ランプ等の光源部22と、光源部22からの光のうち所定の波長を有する光を抽出し強度を調節する調光部23と、調光部23からの光を照明光として照明側凹面鏡25へ導く導光ファイバ24とを有して構成される。
【0014】
そして、光源部22からの光は調光部23を通過し、所定の波長(例えば、248nmの波長)を有する照明光が導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出された照明光は、導光ファイバ24の射出部が照明側凹面鏡25の焦点面に配置されているため、照明側凹面鏡25により平行光束となってステージ10に保持されたウェハWの表面に照射される。なお、ウェハWに対する照明光の入射角と出射角との関係は、ステージ10をチルト(傾動)させてウェハWの載置角度を変化させることにより調整可能である。
【0015】
ウェハWの表面からの出射光(回折光)は受光系30により集光される。受光系30は、ステージ10に対向して配設された受光側凹面鏡31を主体に構成され、受光側凹面鏡31により集光された出射光(回折光)は、第1の撮像装置35または第2の撮像装置36の撮像面上に達し、ウェハWの像(回折像)が結像される。なおこのとき、ステージ10をチルト(傾動)させて回折光の進む角度を変化させることにより、ウェハWの表面からの出射光(回折光)が受光側凹面鏡31で第1の撮像装置35もしくは第2の撮像装置36のいずれか一方に反射して集光されるようになっている。そのため、受光側凹面鏡31は、回折光の進む角度(方向)が変化してもウェハWの表面からの回折光を捉えられるように、照明側凹面鏡25よりも大きく形成される。
【0016】
第1の撮像装置35は、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。第2の撮像装置36は、第1の撮像装置35に対して光軸が傾いた(例えば、5°程度傾いた)状態で、第1の撮像装置35と並ぶように配設され、撮像面上に形成されたウェハWの表面の一部の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。なお、第2の撮像装置36は、第1の撮像装置35よりも撮像倍率が高くなるように(例えば、第1の撮像装置35の撮像倍率の6倍程度となるように)設定され、撮像面上にウェハWの一部の像が拡大結像されて、ウェハWの像を部分的に撮像することになる。なお、撮像倍率の設定は撮像光学系の焦点距離によって設定することができる。つまり、撮像倍率を高くしたい場合には、撮像光学系の焦点距離の長い撮像光学系を用いることによって高い撮像倍率を得ることができる。
【0017】
そこで、第2の撮像装置36は、例えば小型のチルトステージを用いたカメラ支持機構(図示せず)によって(受光系30の光軸に対して直交する2軸を回動中心として)傾動可能に支持されている。これにより、第2の撮像装置36を傾動させると、撮像面上に結像されるウェハWの範囲、すなわち撮像範囲を変えることができるため、第2の撮像装置36を傾動させて撮像範囲を変えながら、ウェハWの全体にわたってウェハWの像を部分的に撮像することができる。
【0018】
制御部40は、第1の撮像装置35および第2の撮像装置36や、ステージ10等の作動を制御する。画像処理部45は、第1の撮像装置35または第2の撮像装置36から入力されたウェハWの画像信号に基づいて、ウェハWのデジタル画像を生成する。画像処理部45の内部メモリ(図示せず)には、良品ウェハの画像データが予め記憶されており、画像処理部45は、ウェハWの画像(デジタル画像)を生成すると、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データとを比較して、ウェハWの表面における異常の有無を検査する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0019】
ところで、ウェハWは、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置からステージ10上に搬送される。なおこのとき、ウェハWは、ウェハWのパターンもしくは外縁部(ノッチやオリエンテーションフラット等)を基準としてアライメントが行われた状態で、ステージ10上に搬送される。なお、ウェハWの表面には、図3(a)に示すように、複数のショット領域(チップ領域)Aが縦横に配列され、各ショット領域の中には、ラインパターンまたはホールパターン等の繰り返しパターンが形成されている。
【0020】
以上のように構成される表面検査装置1を用いて、ウェハWの表面検査を行うには、まず、不図示の搬送装置により、ウェハWをステージ10上に搬送する。なお、搬送の途中で不図示のアライメント機構によりウェハWの表面に形成されているパターンの位置情報を取得しており、ウェハWをステージ10上の所定の位置に所定の方向で載置することができる。
【0021】
次に、制御部40の作動制御によって、ウェハWの表面上における照明方向とパターンの繰り返し方向とが一致するようにステージ10を回転させるとともに、パターンのピッチをPとし、ウェハWの表面に照射する照明光の波長をλとし、照明光の入射角をθ1とし、n次回折光の出射角をθ2としたとき、ホイヘンスの原理より、次の(1)式を満足するように設定を行う(ステージ10をチルトさせる)。
【0022】
P=n×λ/{sin(θ1)−sin(θ2)} …(1)
【0023】
次に、制御部40の作動制御によって、照明光をウェハWの表面に照射する。このような条件で照明光をウェハWの表面に照射する際、照明ユニット21における光源部22からの光は調光部23を通過し、所定の波長(例えば、248nmの波長)を有する照明光が導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、照明側凹面鏡25で反射した照明光が平行光束となってウェハWの表面に照射される。
【0024】
ところで、本実施形態では、制御部40の作動制御によって、通常は、図1に示すように、ウェハWの表面からの光が受光側凹面鏡31で第1の撮像装置35に向けて反射するように設定され、第1の撮像装置35がウェハWの表面全体の像を撮像するようになっている。そのため、ウェハWの表面から出射された回折光は、受光側凹面鏡31により集光されて第1の撮像装置35の撮像面上に達し、ウェハWの表面全体の像(回折像)が結像される。
【0025】
そこで、第1の撮像装置35は、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45は、第1の撮像装置35から入力された画像信号に基づいて、ウェハWの表面全体の画像(デジタル画像)を生成する。また、画像処理部45は、ウェハWの表面全体の画像(デジタル画像)を生成すると、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データ(予め取得され記憶されている)とを比較して、ウェハWの表面における異常の有無を検査(検出)する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの表面全体の画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0026】
このとき、ウェハWの表面検査はショット領域Aごとに行われ、異常が検出されない場合には、そのまま、他の(未検査の)ウェハWについて表面検査が行われる。一方、ウェハWのいずれかのショット領域Aにおいて異常が検出された場合には、制御部40の作動制御によって、図2に示すように、ウェハWの表面からの光が受光側凹面鏡31で第2の撮像装置36に向けて反射するようにステージ10が傾動し、第1の撮像装置35から切り替わった第2の撮像装置36がウェハWの表面の像を部分的に撮像する。ここで、第2の撮像装置36の撮像倍率が高いため部分的な拡大像を撮像している。
【0027】
このとき、制御部40の制御によって、カメラ支持機構(図示せず)が第2の撮像装置36を傾動させて撮像範囲を変えることにより、図3(b)に示すように、異常が検出された欠陥候補のショット領域A1および、異常が検出されなかったショット領域のうち欠陥候補のショット領域A1に一番近い良品ショット領域A2の像をそれぞれ光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。
【0028】
画像処理部45は、第2の撮像装置36から入力された画像信号に基づいて、欠陥候補のショット領域A1の画像および良品ショット領域A2の画像(デジタル画像)をそれぞれ生成する。そして、画像処理部45は、欠陥候補のショット領域A1の画像および良品ショット領域A2の画像(デジタル画像)をそれぞれ生成すると、欠陥候補のショット領域A1の画像データと良品ショット領域A2の画像データとを比較することにより、欠陥候補のショット領域A1における異常(傷や異物等の欠陥B)の有無を再び検査(検出)する。その後、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの全体画像や拡大した欠陥候補のショット領域A1の画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。なお、ウェハWの表面における全てのショット領域Aで異常が検出された場合、良品ショット領域の撮像を行うことができないので、画像処理部45は、予め別のウェハWで撮像取得しておいた良品ショット領域の画像データと欠陥候補のショット領域の画像データとを比較することにより、欠陥候補のショット領域における異常の有無を再び検査(検出)する。
【0029】
このように、第1実施形態の表面検査装置1によれば、第1の撮像装置35により撮像されたウェハWの表面全体の画像に基づいて異常の有無を検出し、ウェハWの表面全体の画像において異常が検出された場合には、第1の撮像装置35から第2の撮像装置36に切り替えてウェハWの表面の像を部分的に撮像して、高倍率の画像に基づき異常の有無を検出することができる。そのため、通常は、第1の撮像装置35により撮像されたウェハWの表面全体の画像に基づく高速な検査ができることから、通常は高速な検査を行いながら、必要に応じて高倍率の画像に基づく高精度な検査を行うことが可能になる。
【0030】
また、第2の撮像装置36が第1の撮像装置35に対して光軸が傾いた状態で並ぶように配設され、ステージ10を傾動させることにより、ウェハWの表面からの回折光を第1の撮像装置35もしくは第2の撮像装置36のいずれか一方に向けて集光することで、検査装置の構成を最小限に抑えることができる。なおこの場合、ステージ10を傾動させるため、第1の撮像装置35および第2の撮像装置36の両方で回折光を検出できるように予め、調整用の回折格子を用いて第2の撮像装置36の光軸の傾きを調整しておくことが好ましい。また、前述したように、受光側凹面鏡31は、回折光の進む角度が変化してもウェハWの表面からの回折光を捉えられるように、照明側凹面鏡25よりも大きいことが好ましい。
【0031】
また、ウェハWの表面全体の画像において異常が検出された場合、異常が検出された欠陥候補のショット領域A1(またはチップ領域)および、異常が検出されなかったショット領域のうち欠陥候補のショット領域A1に一番近い良品ショット領域A2(またはチップ領域)の像をそれぞれ撮像し、欠陥候補のショット領域A1の画像データと良品ショット領域A2の画像データとを比較することにより、欠陥候補のショット領域A1における異常の有無を再び検査(検出)している。このようにすれば、欠陥候補のショット領域A1に一番近い良品ショット領域A2の像を撮像するため、撮像範囲の移動量を最小限に抑えることができることから、高倍率の画像(欠陥候補のショット領域A1の画像)に基づく高精度な検査に要する時間を短くすることができる。なお、チップ領域を比較する場合は、欠陥のあるチップ領域と異常が検出されなかったショット領域のうち欠陥候補のチップ領域に一番近い良品ショット領域内から最も良品と推定されるチップ領域を選ぶことができる。
【0032】
次に、表面検査装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の表面検査装置は、第1の撮像装置35および第2の撮像装置36の構成を除いて、第1実施形態の表面検査装置1と同様の構成であり、各部に第1実施形態の場合と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態の表面検査装置51は、図4に示すように、照明系20と、受光系30と、第1の撮像装置55および第2の撮像装置56と、スライド保持機構57と、制御部40および画像処理部45とを備えて構成される。
【0033】
第1の撮像装置55は、第1実施形態の場合と同様に、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。第2の撮像装置56は、第1の撮像装置55と光軸が略平行に並ぶように配設され、撮像面上に形成されたウェハWの表面の一部の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。なお、第2の撮像装置56は、第1実施形態の場合と同様に、第1の撮像装置55よりも撮像倍率が高くなるように設定され、撮像面上にウェハWの一部の像が拡大結像されて、ウェハWの像を部分的に撮像することになる。
【0034】
第2実施形態において、第1の撮像装置55および第2の撮像装置56は、スライド保持機構57を用いて光軸と垂直な方向へ一体的にスライド移動可能に保持され、第1の撮像装置55もしくは第2の撮像装置56のいずれか一方を受光側凹面鏡31からの光路上に配置できるようになっている。なおこれにより、受光側凹面鏡31は、第1実施形態のように照明側凹面鏡25よりも大きくする必要はない。さらに、第2の撮像装置56は、スライド保持機構57上に設けられたカメラ支持機構(図示せず)によって(受光系30の光軸に対して直交する2軸を回動中心として)傾動可能に構成されており、第2の撮像装置56を傾動させると、撮像面上に結像されるウェハWの範囲、すなわち撮像範囲を変えることができるため、第2の撮像装置56を傾動させて撮像範囲を変えながら、ウェハWの全体にわたってウェハWの像を部分的に撮像することができる。
【0035】
以上のように構成される表面検査装置51を用いて、ウェハWの表面検査を行うには、まず、第1実施形態の場合と同様にして、ウェハWをステージ10上に搬送する。次に、ウェハWの表面上における照明方向とパターンの繰り返し方向とが一致するようにステージ10を回転させるとともに、前述の(1)式を満足するように設定を行う。このとき、通常は、制御部40の作動制御によって、図4に示すように、スライド保持機構57の作動により第1の撮像装置55が受光側凹面鏡31からの光路上に配置される。
【0036】
次に、第1実施形態の場合と同様にして、照明光をウェハWの表面に照射する。そうすると、ウェハWの表面から出射された回折光は、受光側凹面鏡31により集光されて第1の撮像装置55の撮像面上に達し、ウェハWの像(回折像)が結像される。そこで、第1の撮像装置55は、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45は、第1実施形態の場合と同様に、第1の撮像装置55から入力された画像信号に基づいて、ウェハWの表面全体の画像(デジタル画像)を生成し、ウェハWの表面における異常の有無を検査(検出)する。
【0037】
このとき、ウェハWのいずれかのショット領域Aにおいて異常が検出された場合には、制御部40の作動制御によって、図5に示すように、スライド保持機構57の作動により第2の撮像装置56が受光側凹面鏡31からの光路上に配置され、第1実施形態の場合と同様にして、第1の撮像装置55から切り替わった第2の撮像装置56がウェハWの表面の像を部分的に撮像する。そして、画像処理部45は、第1実施形態の場合と同様にして、欠陥候補のショット領域A1における異常(傷や異物等の欠陥B)の有無を再び検査(検出)する。
【0038】
このように、第2実施形態の表面検査装置51によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。また、スライド保持機構57を用いて、第1の撮像装置55もしくは第2の撮像装置56のいずれか一方を受光側凹面鏡31からの光路上に配置できるようになっているため、回折条件が変わらずに安定した検査を行うことができる。なお、撮像倍率の切替を、いわゆるフロントコンバージョンレンズ(テレコン)の挿抜によって行うようにしてもよい。この場合においても、撮像装置を傾動可能な構成とする。
【0039】
続いて、表面検査装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態の表面検査装置は、第1の撮像装置35および第2の撮像装置36の構成を除いて、第1実施形態の表面検査装置1と同様の構成であり、各部に第1実施形態の場合と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第3実施形態の表面検査装置61は、図6に示すように、照明系20と、受光系30と、第1の撮像装置65および第2の撮像装置66と、ミラー67と、制御部40および画像処理部45とを備えて構成される。
【0040】
第1の撮像装置65は、第1実施形態の場合と同様に、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。第2の撮像装置66は、第1の撮像装置65と光軸が直交するように配設され、撮像面上に形成されたウェハWの表面の一部の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。なお、第2の撮像装置66は、第1実施形態の場合と同様に、第1の撮像装置65よりも撮像倍率が高くなるように設定され、撮像面上にウェハWの一部の像が拡大結像されて、ウェハWの像を部分的に撮像することになる。
【0041】
第1の撮像装置65と受光側凹面鏡31との間の光路上には、ミラー67が図示しないスライド機構により挿抜可能に配設される。そして、図6に示すようにミラー67が当該光路上から抜去されたときには、受光側凹面鏡31からの光が第1の撮像装置65に達し、図7に示すようにミラー67が当該光路上に挿入されたときには、受光側凹面鏡31からの光がミラー67で反射して第2の撮像装置66に達するようになっている。なおこれにより、受光側凹面鏡31は、第1実施形態のように照明側凹面鏡25よりも大きくする必要はない。さらに、第2の撮像装置66は、例えば小型のチルトステージを用いたカメラ支持機構(図示せず)によって(受光系30の光軸に対して)傾動可能に構成されており、第2の撮像装置66を傾動させると、撮像面上に結像されるウェハWの範囲、すなわち撮像範囲を変えることができるため、第2の撮像装置66を傾動させて撮像範囲を変えながら、ウェハWの全体にわたってウェハWの像を部分的に撮像することができる。
【0042】
以上のように構成される表面検査装置61を用いて、ウェハWの表面検査を行うには、まず、第1実施形態の場合と同様にして、ウェハWをステージ10上に搬送する。次に、ウェハWの表面上における照明方向とパターンの繰り返し方向とが一致するようにステージ10を回転させるとともに、前述の(1)式を満足するように設定を行う。このとき、通常は、制御部40の作動制御によって、図6に示すように、スライド機構(図示せず)の作動によりミラー67が第1の撮像装置65と受光側凹面鏡31との間の光路上から抜去される。
【0043】
次に、第1実施形態の場合と同様にして、照明光をウェハWの表面に照射する。そうすると、ウェハWの表面から出射された回折光は、受光側凹面鏡31により集光されて第1の撮像装置65の撮像面上に達し、ウェハWの像(回折像)が結像される。そこで、第1の撮像装置65は、撮像面上に形成されたウェハWの表面全体の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45は、第1実施形態の場合と同様に、第1の撮像装置65から入力された画像信号に基づいて、ウェハWの表面全体の画像(デジタル画像)を生成し、ウェハWの表面における異常の有無を検査(検出)する。
【0044】
このとき、ウェハWのいずれかのショット領域Aにおいて異常が検出された場合には、制御部40の作動制御によって、図7に示すように、スライド機構(図示せず)の作動によりミラー67が第1の撮像装置65と受光側凹面鏡31との間の光路上に挿入される。そうすると、受光側凹面鏡31により集光された回折光がミラー67で反射して第2の撮像装置66の撮像面上に達し、第1実施形態の場合と同様にして、第1の撮像装置65から切り替わった第2の撮像装置66がウェハWの表面の像を部分的に撮像する。そして、画像処理部45は、第1実施形態の場合と同様にして、欠陥候補のショット領域A1における異常(傷や異物等の欠陥B)の有無を再び検査(検出)する。
【0045】
このように、第3実施形態の表面検査装置61によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。また、ミラー67を用いて、第1の撮像装置65もしくは第2の撮像装置66のいずれか一方に受光側凹面鏡31からの光を導くようになっているため、回折条件が変わらずに安定した検査を行うことができる。
【0046】
なお、上述の各実施形態において、撮像装置の撮像倍率で倍率の切替を行ったが、極めて高解像度(画素数の極めて大きい)の撮像素子を用いる場合は、電子ズームで倍率の切替を行ってもよい。この場合、全体を撮像する場合には得られた高解像度の画像を敢えて画素処理により解像度を落として検査することにより処理速度を向上させ、異常が見つかった場合には、高解像度画像から異常を含む領域を切り出すことにより見かけ上の倍率を切り替えることができる。また、上述の各実施形態において、ウェハWの表面で生じた回折光を利用してウェハWの表面を検査しているが、これに限られるものではなく、ウェハWの表面の正反射像、もしくは、ウェハWの表面で生じた散乱光や偏光の状態変化を利用してウェハWの表面を検査する表面検査装置においても、本発明を適用可能である。
【0047】
また、上述の各実施形態において、ウェハWの表面を検査しているが、これに限られるものではなく、例えば、ガラス基板の表面を検査することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
W ウェハ(基板) A ショット領域
A1 欠陥候補のショット領域 A2 良品ショット領域
1 表面検査装置(第1実施形態)
10 ステージ
20 照明系(照射部) 21 照明ユニット
22 光源部 25 照明側凹面鏡
30 受光系 31 受光側凹面鏡
35 第1の撮像装置 36 第2の撮像装置
40 制御部 45 画像処理部(検出部)
51 表面検査装置(第2実施形態)
55 第1の撮像装置 56 第2の撮像装置
57 スライド保持機構
61 表面検査装置(第3実施形態)
65 第1の撮像装置 66 第2の撮像装置
67 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するステージ部と、
前記ステージ部に支持された前記基板の表面に照明光を照射する照射部と、
前記照明光が照射された前記基板の表面全体の像を撮像する第1の撮像部と、
前記照明光が照射された前記基板の表面の像を前記第1の撮像部よりも高い倍率で部分的に撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部または前記第2の撮像部により撮像された前記基板の画像に基づいて前記基板の表面における異常の有無を検出する検出部と、
前記第1の撮像部に前記基板の表面全体の像を撮像させ、前記検出部が前記第1の撮像部により撮像された前記基板の表面全体の画像において異常を検出した場合に、前記第2の撮像部に切り替えて前記基板の表面における前記異常が検出された部分の像を撮像させる制御を行う制御部とを備えて構成されることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記第2の撮像部は、前記第1の撮像部に対して光軸が傾いた状態で、前記第1の撮像部と並ぶように配設され、
前記ステージ部が傾動可能に構成されており、
前記ステージ部の傾動に応じて、前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を前記第1の撮像部もしくは前記第2の撮像部のいずれか一方に向けて反射および集光させる受光側凹面鏡が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記基板の表面において所定の範囲で区切られた複数のショット領域ごとに、前記異常の有無を検出するように構成されており、
前記制御部は、前記検出部が前記基板の表面全体の画像において異常を検出した場合に、前記第2の撮像部に切り替えて、前記異常が検出された第1のショット領域および、前記異常が検出されなかったショット領域のうち前記第1のショット領域に近い第2のショット領域の像を撮像させる制御を行い、
前記検出部は、前記第2の撮像部によりそれぞれ撮像された前記第1のショット領域の画像と前記第2のショット領域の画像とを比較することにより、前記第1のショット領域における異常の有無を再び検出することを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記照射部は、光源部と、前記光源部からの光を反射させて前記基板の表面に前記照明光として照射する照明側凹面鏡とを有し、
前記第2の撮像部は、前記第1の撮像部に対して光軸が傾いた状態で、前記第1の撮像部と並ぶように配設され、
前記ステージ部が傾動可能に構成されており、
前記ステージ部の傾動に応じて、前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を前記第1の撮像部もしくは前記第2の撮像部のいずれか一方に向けて反射および集光させるように前記照明側凹面鏡よりも大きい受光側凹面鏡が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−141135(P2011−141135A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−675(P2010−675)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】