表面状態検査装置及び表面状態検査方法
【課題】 物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性を、高精度に、迅速に検出することができる表面状態検査装置及び表面状態検査方法を得ること。
【解決手段】 被検査対象の表面を照射するためのレーザー光源、該表面からの光回折像の一部を集光する所定の開口数NAの光学系を有し、該レーザー光の波長よりも十分に大きい粗さを持つ該円筒形状部材の表面の粗さの均一度を、該表面からの光回折像強度分布の変化から測定する検査装置において、入射光はθiの角度でP偏光で入射され、入射面内で法線から、所定の角度θS方向への回折光をP偏光成分のみを選択する手段を備えた該光学系で集光し、光学系の近軸像面付近の光束制限手段を介して、光強度検出器で光量変化を測定するとき、入射角θi、角度θS、開口数NAを適切に設定したこと。
【解決手段】 被検査対象の表面を照射するためのレーザー光源、該表面からの光回折像の一部を集光する所定の開口数NAの光学系を有し、該レーザー光の波長よりも十分に大きい粗さを持つ該円筒形状部材の表面の粗さの均一度を、該表面からの光回折像強度分布の変化から測定する検査装置において、入射光はθiの角度でP偏光で入射され、入射面内で法線から、所定の角度θS方向への回折光をP偏光成分のみを選択する手段を備えた該光学系で集光し、光学系の近軸像面付近の光束制限手段を介して、光強度検出器で光量変化を測定するとき、入射角θi、角度θS、開口数NAを適切に設定したこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面状態検査装置及び表面状態検査方法に関し、例えば円筒面の表面の粗面(粗さ)の均一度を、高精度に測定する際に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体表面に存在する微小な欠損(キズや異物の付着)の有無を検出する方法として、レーザー光を微細なスポットに集光して、被検査面を照射し、そこから発生する散乱光(光回折光)を検出する方法が知られている。
【0003】
また、物体表面の粗面の粗さ状態を検出する方法として、入射光の波長や入射角を変化させたときの、物体表面から生ずるスペックル回折像分布の相互相関関数を求める方法や、干渉計によって位相差を検出する干渉計方法などが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、測定対象物の表面物質の特性を利用して表面粗さを測定する検査装置が知られている(特許文献2、3)。特許文献2は線状光源からP偏光の照明光を被検査面に入射して、ブリュースター角方向で正反射光を検出している。そして被検査面からの光を、P成分とS成分を分岐して別々に検出し、その成分比から被検査面の異常部の検出を行っている。
【0005】
特許文献3はS成分及びP成分を持つレーザー光を、ある入射角から被検査面に入射してブリュースター角方向への散乱光のS、P成分を、特許文献1と同様に別々に検出して、その強度比から表面粗さを評価している。
【0006】
また、特許文献3では、P偏光の光を入射し、ブリュースター角方向と、それとは異なる方向の二方向において散乱光強度を検出し、その比から表面粗さを求める方法も提案している。
【0007】
一方、一定以上の面積を持つ面を光で走査して表面状態を検査する走査測定方法が知られている。この方法では偏向器と走査光学系の組合せで測定対象の面を走査して検査している。
【特許文献1】特開平5−52540号公報
【特許文献2】特開平11−295240号公報
【特許文献3】特開2000−081325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、物体表面に存在する欠損として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さ(凹凸)をもち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性として高速に検出することができる装置が要請されている。
【0009】
このとき、数〜数十ミクロンの微細なスポット光を物体表面に照射すると回折像は乱れてしまい、そこから微量を検出することが困難となる。
【0010】
前述したスペックルの相関関数を用いる方法は、表面の粗さが入射光の波長より短いことが前提である。このため、広い範囲において多数の点、各々において相関関数を求めることは、時間の制限から現実的でない。
【0011】
前述した、測定方法のうち干渉計方式では、複雑で精密な光学系が必要となる。基本的に粗い表面上から生ずる可視域のレーザー光線によって生成されるスペックルパターンは、2πより大きい標準偏差のランダム位相を有する。このため、通常は得られる位相差には粗い表面のプロファイルに関して有効な情報を含んでいない。
【0012】
これらの各測定方法では、各偏光成分を分岐する分岐手段、あるいは被検査面上の複数の位置で測定する測定手段が必要となり、検出、判定するための各部材より成る装置全体が複雑なものになる傾向があった。
【0013】
また、走査測定方法は高速に精度良く走査することでは優れているが、装置全体が複雑であること、また走査画角によって照射点に対する入射角が異なるため、同じ条件で物体表面全面を照射することが困難となる。
【0014】
このため被走査面上の位置による相対的な変化量を精密に検出することが難しい。検出光学系としてテレセントリックな光学系を用いれば、入射角を一定にすることは可能となるが、測定対象と同程度の大きさの光学部品が必要となり、装置全体が大型化してくる。
【0015】
本発明は、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、高精度に、迅速に検出することができる表面状態検査装置及び表面状態検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面状態検査装置は、
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはP偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該検出光学系の光入射側又は該検出光学系から該光検出器との間の光路中にP偏光成分を選択して透過させるP偏光成分選択手段と、
を有し、該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)2<W ‥‥‥(1)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の表面状態検査方法は、
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度2θB−θi方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しており、
該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をKj、
該円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をLとするとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp 、 ‥‥‥(3)
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
を満たすことを特徴としている。
【0018】
又、本発明の表面状態検査方法は、
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しているとき、
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
‥‥‥(4)
を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性を、高精度に、迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1の表面状態検査装置の要部側面図である。図2は図1に示した各部材間の説明図である。図3は実施例1の表面状態検査装置の要部上面図である。
【0022】
図1〜図3において、1は被検査物体であり、円筒形状より成っている。円筒形状の表面(円筒面)の一部が被検査面1aとなっている。
【0023】
2は光源手段であり、He−Neレーザーより成っている。3は被検査物体1の被検面(照射点)1cから生ずる散乱光(光回折光)である。4は光源手段2からの光2aを制限する光束制限手段(第1の光束制限手段)(スリット)である。5は光源手段2からの光2aが被検面1aで正反射したときの正反射光である。
【0024】
8は開口数NAの検出光学系であり、被検面1aから生ずる散乱光(光回折光)の一部を光束制限手段(第2の光束制限手段)6上に集光している。
【0025】
被検面1aと光束制限手段6とは共役関係又は略共役関係にある。9はP偏光成分選択手段であり、偏光板より成り、検出光学系8から入射してくる光のうちP偏光のみを通過させている。
【0026】
光束制限手段6はP偏光成分選択手段9を通過してきた光の通過光を制限している。7は光検出器であり、光束制限手段6を通過した光を検出している。
【0027】
本実施例は散乱ブリュースター角への散乱強度のP偏光成分が誘電体表面の粗さに応じて変化するのを検出して物体表面(被検査表面)の粗さを測定している。
【0028】
一般に光が物体表面に入射するとき、P偏光の反射率が0となる入射角度(ブリュースター角)が存在する。
【0029】
ここで入射媒質の屈折率をN0、物体表面における物質の屈折率をN1とするときブリュースター角θBは
tanθB=N1/N0
となる。
【0030】
ここでは、散乱ブリュースター角方向(入射光線から2θBの方向)には、表面の粗さが大きい(凹凸密度が低い)とP偏光成分が多くなり、表面の粗さが小さい(凹凸密度が高い)とP偏光成分が小さくなる。 本実施例における被検査物体1は直径30mm(φ30mm)、軸方向(X方向)の長さが400mmの円筒形状より成り、円筒円形の外側の表面の粗さの周波数の平均値kjが1/(50μm)程度で分布している。
【0031】
光源手段2からは、波長λが632.8nm、光量が5mW、被検査物体1上への入射ビーム径がφ1mm(相対強度13.5%)の光(レーザー)2aが出射している。光源手段2からの光2aはスリット4を介して被検査物体1の被検査面1aに入射角θi=70°で入射している。
【0032】
このとき、光2aの広がり角は約0.02°であり、ほぼ平行なビームと見なせるものである。ここでは被検査物体1上の粗面の検出できる最小の異常部の大きさdを2mmと想定している。被検査物体1への照明光2aのX方向(軸方向)の照射領域(照射エリア)Dpは2mmである。
【0033】
このとき、被検査物体1の表面材質のブリュースター角θBが60°であるので、照射点1cからの回折光3の一部が、粗面の法線1bから正反射方向に2θB−θi=50°の角度で観測される。
【0034】
この方向への光は、照射点1cから距離L=20mmの位置に瞳(入射瞳)が設置された焦点距離12mm、有効径W=10mm(NA0.384)の検出光学系8で取り込まれ、P偏光成分選択手段9と光束制限手段6を介して光検出器7に集められる。
【0035】
P偏光成分選択手段9は検出光学系8から光検出器7に至る光路中のいずれの位置であってもよい。また検出光学系8の倍率βは1.5であり、被検査面1aの像面に配置した光束制限手段6の幅HはH=1.5mmである。光検出器7への迷光を防ぐため、検出光学系8と光検出器7の間は遮光されている。
【0036】
図13は本実施例で得られる2次元画像化したデータを示している。表面粗さの差異に対して異常部が鮮明になっている。
【0037】
本実施例では被検査物体1の円筒形状の表面(被検査面)1aを光源手段2からの光(ビーム)2aで照明している。円筒形状の表面1aからの光回折像の一部を所定のNAの検出光学系8で検出している。このとき光2aの波長よりも十分に大きい粗さを持つ円筒形状の表面1aの粗さの均一度を、該円筒形状の表面1aからの光回折像の強度分布(光量)の変化から測定している。
【0038】
光源手段2からの光は略平行ビームで円筒面の母線と中心軸を含む平面(XY平面)を入射面として、照射点1cにおける法線1bに対し、θiの角度でP偏光状態で入射している。表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該入射面内で該法線1bから、所定の角度2θB−θiの方向への拡散反射光を検出光学系8で集光しP偏光成分のみをP偏光成分選択手段9で選択している。そしてP偏光成分の光を検出光学系8の近軸像面付近に配置した光束制限手段6を介して、光検出器7で光量変化を測定している。
【0039】
このとき得られる光検出器7からの信号に基づいて表面1aの粗さの均一度を求めている。
【0040】
ここで
λを光源手段2からの光2aの波長とする。
kjを光2aの照射エリアDpでの表面の凹凸の面方向の周波数の平均値とする。
Dpを光2aの入射ビーム径(規格化強度13.5%となる径)の、表面1a上の円筒面母線方向への射影寸法とする。
Lを検出光学系8の瞳位置から被検査物体1の表面上の照射点1cまでの距離とする。
Wを検出光学系8の有効径とする。
θBを被検査物体1の表面物質のブリュースター角とする。
【0041】
このとき
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp ‥‥‥(3)
なる条件の1以上を満たしている。
【0042】
条件式(1)、(2)、(3)のうち1以上を満足するように各部材を設定すると、被検査面1aの粗面の中で局所的に粗さの異なる領域に可干渉性の高いレーザービームを入射したときの回折像パターンは、他の均一な部分からの回折像パターンに比べ変化が顕著に現れる。
【0043】
本実施例では、その中でもブリュースター散乱方向へのP偏光成分の光強度の変化を測定することによって、被検査面1aの僅かな粗さの差も、より感度よく(高精度に)検出している。
【0044】
この他、本実施例では、光検出器7は、円筒面1から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段9を介して検出しても良い。
【0045】
このとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
‥‥‥(4)
を満たすようにしても良い。
【0046】
これによっても前述したのと同様の効果が得られる。
【0047】
本実施例が対象とする被検査面1aの表面の凹凸の大きさは、光2aの波長よりも十分に大きい。このため、照射する領域(光2aのビーム径の表面上の円筒面母線方向(X方向)への射影)Dpが凹凸の表面方向のオーダーを示す1/kjと同等であると、照射された少数の凹凸部が曲面ミラーのように働く。この結果、図4に示すように回折像(スペックル像)41の粒径が大きく乱れたパターンとなる。
【0048】
図5に示すような回折像が得られるのが良い。そこでスペックルの粒径を小さくして、全体の包絡線を滑らかで安定したものにするためには、被検査面1aのある程度の凹凸の数を含む領域を光照射する必要がある。すなわち、凹凸の寸法を示す1/kjより十分に大きな領域Dpを光2aで照射する必要がある。
【0049】
本実施例では前述の条件式(3)を満足するようにしている。
【0050】
更に、スペックルの粒径は、図2に示す回折像の位置から照射点1cまでの距離をLとすると、λ/(Dp/L)2で表されるが、検出光学系8の開口Wは少なくともこの粒径以上でなければならない。
【0051】
粒径が開口Wに比べて小さいほど、全体の回折像分布は滑らかなものになり、測定の安定性が増すことになる。
【0052】
ビーム径をある程度太くする際、収束若しくは発散ビームを用い、その中で適当な照射スポットとなる位置に被検査面1aの粗面の位置を合わせるという方法もある。その場合、照射されるビームの波面はビームウエスト径が小さいほど曲率の大きい波面となる。このときは照射領域Dpの中で幾何学的入射角を一定にすることができない。
【0053】
したがって、ビームウエスト径は光2aの照射径と同等、すなわち略平行ビームとなるような値に設定することが望ましい。
【0054】
これにより入射ビーム2aが平面波となり、照射領域Dp内の全域で一定の入射角を確保することができ、異なる条件の回折光が発生するのを防ぐことができる。
【0055】
いま、図6に示すように入射光2aが主にP偏光成分からなるとき、凹凸部のある微小な部分の面の法線2dに対し、入射光2aの中心軸がブリュースター角を満足したとする。この場合、この入射光2aに対する反射光強度は非常に小さいものとなる。
【0056】
これにより、図7に示すようにブロードな拡散反射(回折)分布の中に、周囲に比べて明るさが暗い部分が発生する。図8は、ある被検査面の表面のP偏光とS偏光成分に対する反射率の角度依存性の図である。
【0057】
被検査面として、凹凸密度が低い(Kの値が小さい)、即ちビーム照射領域Dp内での凹凸の数が少ない場合(滑らかな場合)、ブリュースター角を満たす光線の比率が減るため、暗い部分の明るさは明るくなる。
【0058】
逆に凹凸密度が高い(kの値が大きい)、即ちビーム照射領域Dp内での凹凸の数が多い場合、ブリュースター角を満たす光線の比率が増えるため、暗い部分の明るさはより暗くなる。
【0059】
本実施例はこの変化を測定することにより、周囲の正常な部分に対して凹凸密度の変化した部分を検出している。
【0060】
ビーム入射方向に関しては、被検査面としての対象となる粗面が平面でなく図9に示すような円筒面91であるとする。このとき入射面が円筒面91の断面と一致する面内となるように光2aを入射すると、円筒面91が凸面鏡の作用を持ち、回折パターンが入射面内で大きく広がってしまう。
【0061】
これにより、回折像におけるブリュースター角を満たす光線の割合が少なくなり、検出感度を落とすことになる。
【0062】
このため、図10に示すように光2aの入射面は円筒面の母線101と軸102を含む平面102に一致するように設定し、入射面102内では光2aの照射エリア全域Dpで一定の入射角条件を満足するようにしている。
【0063】
本実施例では、入射角に対してブリュースター角を満たす特定の1箇所で測定することにより、よりシンプルな構成を実現している。
【0064】
図11は被検査面上に欠損等の異常部を含む領域を、円筒面91の軸102方向に光でスキャンしたときの、検出光量の相対変化量(回折光強度比)PLの結果の説明図である。
【0065】
ここで相対変化量PLは
相対変化量PL=|異常部の光量/正常部の光量−1|
である。
【0066】
ここでは異常部の粗さが周囲に比べて「粗」になっているため、ブリュースター角を満たす光線の割合が減ったため、検出光量としては周囲よりも増加することになる。これにより僅かな粗さの変化でも、数十%の変化量として検出できる。
【実施例2】
【0067】
次に本発明の実施例2について説明する。
【0068】
実施例2では被検査面として円筒面を用い、円筒面上の粗さを測定している。
【0069】
実施例2では、図12に示すように円筒面1を一定の角速度で回転させながら、円筒面1の軸方向(X方向)に円筒面1もしくは光源と測定器の測定ユニットSBが一定の速度で平行移動している。そして一定の時間おきに円筒面1からの反射光を検出して光量測定を行うことで円筒面1の2次元の測定値を得ている。
【0070】
このとき、円筒面1上の測定点間の距離をΔは、
Δ< Dp ‥‥‥(5)
としている。
【0071】
これにより測定対象面の全域について、全く同じ入射角、照射領域寸法の条件で走査することが可能になり、位置による厳密な相対変化量を検出することができる。
【0072】
特に図12に示すように、円筒面1を回転させながら軸方向(X方向)に移動することで、入射面を円筒面1の母線と軸を含む平面に一致するように設定し、円筒面1全体に関して同じ条件で測定を行っている。
【実施例3】
【0073】
次に本発明の実施例3について説明する。
【0074】
実施例3では、レーザー光源からの光を、1つもしくは2つ以上の半透鏡で複数の光に分岐し、1つの円筒面の複数の位置もしくは複数の円筒面に同時に照射して、各々に対応した複数の測定器で同時に光量測定を行っている。
【0075】
本実施例では、走査光学系を用いて測定時間の短縮化を図り、より高速に測定するのに好適である。
【0076】
本実施例では円筒面を高速に回転させなくても高速な測定が容易となる。特に単一の測定対象の複数の場所、或いは複数の測定対象面に同時に光を照射して、そこからの拡散光を測定することで、単位面積あたりの測定時間を短縮している。
【0077】
その際、入射光は略平行であるため、光源を多数準備する必要はなく、単一(或いは必要最低限の少ない複数)の光源からの出射光を、半透鏡の機能を持つ光学素子で分岐することにより、おのおのの照射点に導いている。また円筒面の軸方向の移動も単一(或いは必要最低限の少ない複数)の手段で実現可能である。
【実施例4】
【0078】
次に本発明の実施例4について説明する。
【0079】
本実施例では、被検査物体上の表面の照射する光の位置を変化させたときの、表面からの光回折像の強度分布の変化から、円筒形状で光の波長よりも十分に大きい表面の粗さの均一度を測定している。このとき入射光は略平行ビームで円筒面の母線と中心軸を含む平面を入射面とする。
【0080】
円筒面上の照射点における法線に対し、光をθiの角度でP偏光で入射する。入射面内で法線から、所定の角度2θB−θiの方向への拡散反射光をP偏光成分のみをP偏光成分選択手段で選択する。P偏光成分選択手段からの光を検出光学系で集光し、検出光学系の近軸像面付近に設けた光束制限手段を介して、光検出器で光量変化を測定している。
【0081】
これにより表面の粗さの均一度を求めている。
【0082】
ここで
dを検出される最も小さい異常領域の幅(mm)とする。
Hを光束制限手段の開口部の幅(mm)とする。
βを検出光学系が円筒面の一部を光束制限手段6に結像するときの近軸横倍率とする。
【0083】
このとき
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp ‥‥‥(3)
H ≦ β・d、 ‥‥‥(6)
を満たしている。
【0084】
照射点による回折分布の相対変化を、より感度の高い条件で測定する際、光の入射角を70°を超えるような非常に大きな角度にしなければならない場合も多い。
【0085】
このとき、照射対象面上に照射される光のスポット径の大きさは、円筒面の軸方向に長く伸びた状態となる。たとえば、1mmのビーム径で入射角が70°の場合、照射領域は2.9mmにも広がる。
【0086】
このとき、照射領域内でムラなど異常部の大きさが1mm程度であった場合、回折像は正常部と異常部の面からの成分が混合されたものとなり、異常部からの情報のみを感度よく得ることができない。
【0087】
本実施例ではこれを解決するため、検出光学系8の像面付近に設置されるスリットやピンホールなどの光束制限手段の開口部の幅Hを、必要な空間分解能に相当する値に設定している。
【0088】
たとえば、検出されなければならない最も小さい異常部の大きさのサイズがd[mm]であり、検出光学系8の近軸横倍率がβである場合、光束制限手段6の開口部の幅H[mm]はβ・dと同等又はそれ以下である必要がある。
【0089】
これにより、照射領域が必要分解能を超える場合でも、光束を制限することにより、諸条件を満たし必要な情報を持つ回折光のみを取り込んで、空間的にも感度の高い系が実現可能となる。
【0090】
条件式(1)、(2)、(3)、(6)は以上の理由により特定されたものであり、条件式(1)、(2)、(3)、(6)を満足するように各部材を特定することにより、円筒面上の表面の粗さを高精度に測定している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1の要部側面図
【図2】本発明の実施例1の各部材間の説明図
【図3】本発明の実施例1の要部上面図
【図4】照射ビーム径が0.1mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図5】照射ビーム径が0.5mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図6】粗面表面でのブリュースター条件を満たす拡散反射の説明図
【図7】P偏光成分の回折像分布の説明図
【図8】表面材質の偏光成分別反射率特性の説明図
【図9】ビーム入射面が円筒面の軸に垂直となるように入射したときの説明図
【図10】円筒面に光が入射するときの説明図
【図11】スキャンしたときの測定結果例の説明図
【図12】スキャン方式を用いた実施例の説明図
【図13】測定結果の2次元画像化データの説明図
【符号の説明】
【0092】
1・・・円筒面
2・・・レーザー光源
3・・・回折光
4・・・第1の光束制限手段
5・・・正反射方向
6・・・第2の光束制限手段
7・・・光検出器
8・・・検出光学系
9・・・P偏光成分選択手段
【技術分野】
【0001】
本発明は表面状態検査装置及び表面状態検査方法に関し、例えば円筒面の表面の粗面(粗さ)の均一度を、高精度に測定する際に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体表面に存在する微小な欠損(キズや異物の付着)の有無を検出する方法として、レーザー光を微細なスポットに集光して、被検査面を照射し、そこから発生する散乱光(光回折光)を検出する方法が知られている。
【0003】
また、物体表面の粗面の粗さ状態を検出する方法として、入射光の波長や入射角を変化させたときの、物体表面から生ずるスペックル回折像分布の相互相関関数を求める方法や、干渉計によって位相差を検出する干渉計方法などが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、測定対象物の表面物質の特性を利用して表面粗さを測定する検査装置が知られている(特許文献2、3)。特許文献2は線状光源からP偏光の照明光を被検査面に入射して、ブリュースター角方向で正反射光を検出している。そして被検査面からの光を、P成分とS成分を分岐して別々に検出し、その成分比から被検査面の異常部の検出を行っている。
【0005】
特許文献3はS成分及びP成分を持つレーザー光を、ある入射角から被検査面に入射してブリュースター角方向への散乱光のS、P成分を、特許文献1と同様に別々に検出して、その強度比から表面粗さを評価している。
【0006】
また、特許文献3では、P偏光の光を入射し、ブリュースター角方向と、それとは異なる方向の二方向において散乱光強度を検出し、その比から表面粗さを求める方法も提案している。
【0007】
一方、一定以上の面積を持つ面を光で走査して表面状態を検査する走査測定方法が知られている。この方法では偏向器と走査光学系の組合せで測定対象の面を走査して検査している。
【特許文献1】特開平5−52540号公報
【特許文献2】特開平11−295240号公報
【特許文献3】特開2000−081325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、物体表面に存在する欠損として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さ(凹凸)をもち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性として高速に検出することができる装置が要請されている。
【0009】
このとき、数〜数十ミクロンの微細なスポット光を物体表面に照射すると回折像は乱れてしまい、そこから微量を検出することが困難となる。
【0010】
前述したスペックルの相関関数を用いる方法は、表面の粗さが入射光の波長より短いことが前提である。このため、広い範囲において多数の点、各々において相関関数を求めることは、時間の制限から現実的でない。
【0011】
前述した、測定方法のうち干渉計方式では、複雑で精密な光学系が必要となる。基本的に粗い表面上から生ずる可視域のレーザー光線によって生成されるスペックルパターンは、2πより大きい標準偏差のランダム位相を有する。このため、通常は得られる位相差には粗い表面のプロファイルに関して有効な情報を含んでいない。
【0012】
これらの各測定方法では、各偏光成分を分岐する分岐手段、あるいは被検査面上の複数の位置で測定する測定手段が必要となり、検出、判定するための各部材より成る装置全体が複雑なものになる傾向があった。
【0013】
また、走査測定方法は高速に精度良く走査することでは優れているが、装置全体が複雑であること、また走査画角によって照射点に対する入射角が異なるため、同じ条件で物体表面全面を照射することが困難となる。
【0014】
このため被走査面上の位置による相対的な変化量を精密に検出することが難しい。検出光学系としてテレセントリックな光学系を用いれば、入射角を一定にすることは可能となるが、測定対象と同程度の大きさの光学部品が必要となり、装置全体が大型化してくる。
【0015】
本発明は、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、高精度に、迅速に検出することができる表面状態検査装置及び表面状態検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の表面状態検査装置は、
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはP偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該検出光学系の光入射側又は該検出光学系から該光検出器との間の光路中にP偏光成分を選択して透過させるP偏光成分選択手段と、
を有し、該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)2<W ‥‥‥(1)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の表面状態検査方法は、
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度2θB−θi方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しており、
該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をKj、
該円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をLとするとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp 、 ‥‥‥(3)
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
を満たすことを特徴としている。
【0018】
又、本発明の表面状態検査方法は、
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しているとき、
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
‥‥‥(4)
を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性を、高精度に、迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1の表面状態検査装置の要部側面図である。図2は図1に示した各部材間の説明図である。図3は実施例1の表面状態検査装置の要部上面図である。
【0022】
図1〜図3において、1は被検査物体であり、円筒形状より成っている。円筒形状の表面(円筒面)の一部が被検査面1aとなっている。
【0023】
2は光源手段であり、He−Neレーザーより成っている。3は被検査物体1の被検面(照射点)1cから生ずる散乱光(光回折光)である。4は光源手段2からの光2aを制限する光束制限手段(第1の光束制限手段)(スリット)である。5は光源手段2からの光2aが被検面1aで正反射したときの正反射光である。
【0024】
8は開口数NAの検出光学系であり、被検面1aから生ずる散乱光(光回折光)の一部を光束制限手段(第2の光束制限手段)6上に集光している。
【0025】
被検面1aと光束制限手段6とは共役関係又は略共役関係にある。9はP偏光成分選択手段であり、偏光板より成り、検出光学系8から入射してくる光のうちP偏光のみを通過させている。
【0026】
光束制限手段6はP偏光成分選択手段9を通過してきた光の通過光を制限している。7は光検出器であり、光束制限手段6を通過した光を検出している。
【0027】
本実施例は散乱ブリュースター角への散乱強度のP偏光成分が誘電体表面の粗さに応じて変化するのを検出して物体表面(被検査表面)の粗さを測定している。
【0028】
一般に光が物体表面に入射するとき、P偏光の反射率が0となる入射角度(ブリュースター角)が存在する。
【0029】
ここで入射媒質の屈折率をN0、物体表面における物質の屈折率をN1とするときブリュースター角θBは
tanθB=N1/N0
となる。
【0030】
ここでは、散乱ブリュースター角方向(入射光線から2θBの方向)には、表面の粗さが大きい(凹凸密度が低い)とP偏光成分が多くなり、表面の粗さが小さい(凹凸密度が高い)とP偏光成分が小さくなる。 本実施例における被検査物体1は直径30mm(φ30mm)、軸方向(X方向)の長さが400mmの円筒形状より成り、円筒円形の外側の表面の粗さの周波数の平均値kjが1/(50μm)程度で分布している。
【0031】
光源手段2からは、波長λが632.8nm、光量が5mW、被検査物体1上への入射ビーム径がφ1mm(相対強度13.5%)の光(レーザー)2aが出射している。光源手段2からの光2aはスリット4を介して被検査物体1の被検査面1aに入射角θi=70°で入射している。
【0032】
このとき、光2aの広がり角は約0.02°であり、ほぼ平行なビームと見なせるものである。ここでは被検査物体1上の粗面の検出できる最小の異常部の大きさdを2mmと想定している。被検査物体1への照明光2aのX方向(軸方向)の照射領域(照射エリア)Dpは2mmである。
【0033】
このとき、被検査物体1の表面材質のブリュースター角θBが60°であるので、照射点1cからの回折光3の一部が、粗面の法線1bから正反射方向に2θB−θi=50°の角度で観測される。
【0034】
この方向への光は、照射点1cから距離L=20mmの位置に瞳(入射瞳)が設置された焦点距離12mm、有効径W=10mm(NA0.384)の検出光学系8で取り込まれ、P偏光成分選択手段9と光束制限手段6を介して光検出器7に集められる。
【0035】
P偏光成分選択手段9は検出光学系8から光検出器7に至る光路中のいずれの位置であってもよい。また検出光学系8の倍率βは1.5であり、被検査面1aの像面に配置した光束制限手段6の幅HはH=1.5mmである。光検出器7への迷光を防ぐため、検出光学系8と光検出器7の間は遮光されている。
【0036】
図13は本実施例で得られる2次元画像化したデータを示している。表面粗さの差異に対して異常部が鮮明になっている。
【0037】
本実施例では被検査物体1の円筒形状の表面(被検査面)1aを光源手段2からの光(ビーム)2aで照明している。円筒形状の表面1aからの光回折像の一部を所定のNAの検出光学系8で検出している。このとき光2aの波長よりも十分に大きい粗さを持つ円筒形状の表面1aの粗さの均一度を、該円筒形状の表面1aからの光回折像の強度分布(光量)の変化から測定している。
【0038】
光源手段2からの光は略平行ビームで円筒面の母線と中心軸を含む平面(XY平面)を入射面として、照射点1cにおける法線1bに対し、θiの角度でP偏光状態で入射している。表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該入射面内で該法線1bから、所定の角度2θB−θiの方向への拡散反射光を検出光学系8で集光しP偏光成分のみをP偏光成分選択手段9で選択している。そしてP偏光成分の光を検出光学系8の近軸像面付近に配置した光束制限手段6を介して、光検出器7で光量変化を測定している。
【0039】
このとき得られる光検出器7からの信号に基づいて表面1aの粗さの均一度を求めている。
【0040】
ここで
λを光源手段2からの光2aの波長とする。
kjを光2aの照射エリアDpでの表面の凹凸の面方向の周波数の平均値とする。
Dpを光2aの入射ビーム径(規格化強度13.5%となる径)の、表面1a上の円筒面母線方向への射影寸法とする。
Lを検出光学系8の瞳位置から被検査物体1の表面上の照射点1cまでの距離とする。
Wを検出光学系8の有効径とする。
θBを被検査物体1の表面物質のブリュースター角とする。
【0041】
このとき
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp ‥‥‥(3)
なる条件の1以上を満たしている。
【0042】
条件式(1)、(2)、(3)のうち1以上を満足するように各部材を設定すると、被検査面1aの粗面の中で局所的に粗さの異なる領域に可干渉性の高いレーザービームを入射したときの回折像パターンは、他の均一な部分からの回折像パターンに比べ変化が顕著に現れる。
【0043】
本実施例では、その中でもブリュースター散乱方向へのP偏光成分の光強度の変化を測定することによって、被検査面1aの僅かな粗さの差も、より感度よく(高精度に)検出している。
【0044】
この他、本実施例では、光検出器7は、円筒面1から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段9を介して検出しても良い。
【0045】
このとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
‥‥‥(4)
を満たすようにしても良い。
【0046】
これによっても前述したのと同様の効果が得られる。
【0047】
本実施例が対象とする被検査面1aの表面の凹凸の大きさは、光2aの波長よりも十分に大きい。このため、照射する領域(光2aのビーム径の表面上の円筒面母線方向(X方向)への射影)Dpが凹凸の表面方向のオーダーを示す1/kjと同等であると、照射された少数の凹凸部が曲面ミラーのように働く。この結果、図4に示すように回折像(スペックル像)41の粒径が大きく乱れたパターンとなる。
【0048】
図5に示すような回折像が得られるのが良い。そこでスペックルの粒径を小さくして、全体の包絡線を滑らかで安定したものにするためには、被検査面1aのある程度の凹凸の数を含む領域を光照射する必要がある。すなわち、凹凸の寸法を示す1/kjより十分に大きな領域Dpを光2aで照射する必要がある。
【0049】
本実施例では前述の条件式(3)を満足するようにしている。
【0050】
更に、スペックルの粒径は、図2に示す回折像の位置から照射点1cまでの距離をLとすると、λ/(Dp/L)2で表されるが、検出光学系8の開口Wは少なくともこの粒径以上でなければならない。
【0051】
粒径が開口Wに比べて小さいほど、全体の回折像分布は滑らかなものになり、測定の安定性が増すことになる。
【0052】
ビーム径をある程度太くする際、収束若しくは発散ビームを用い、その中で適当な照射スポットとなる位置に被検査面1aの粗面の位置を合わせるという方法もある。その場合、照射されるビームの波面はビームウエスト径が小さいほど曲率の大きい波面となる。このときは照射領域Dpの中で幾何学的入射角を一定にすることができない。
【0053】
したがって、ビームウエスト径は光2aの照射径と同等、すなわち略平行ビームとなるような値に設定することが望ましい。
【0054】
これにより入射ビーム2aが平面波となり、照射領域Dp内の全域で一定の入射角を確保することができ、異なる条件の回折光が発生するのを防ぐことができる。
【0055】
いま、図6に示すように入射光2aが主にP偏光成分からなるとき、凹凸部のある微小な部分の面の法線2dに対し、入射光2aの中心軸がブリュースター角を満足したとする。この場合、この入射光2aに対する反射光強度は非常に小さいものとなる。
【0056】
これにより、図7に示すようにブロードな拡散反射(回折)分布の中に、周囲に比べて明るさが暗い部分が発生する。図8は、ある被検査面の表面のP偏光とS偏光成分に対する反射率の角度依存性の図である。
【0057】
被検査面として、凹凸密度が低い(Kの値が小さい)、即ちビーム照射領域Dp内での凹凸の数が少ない場合(滑らかな場合)、ブリュースター角を満たす光線の比率が減るため、暗い部分の明るさは明るくなる。
【0058】
逆に凹凸密度が高い(kの値が大きい)、即ちビーム照射領域Dp内での凹凸の数が多い場合、ブリュースター角を満たす光線の比率が増えるため、暗い部分の明るさはより暗くなる。
【0059】
本実施例はこの変化を測定することにより、周囲の正常な部分に対して凹凸密度の変化した部分を検出している。
【0060】
ビーム入射方向に関しては、被検査面としての対象となる粗面が平面でなく図9に示すような円筒面91であるとする。このとき入射面が円筒面91の断面と一致する面内となるように光2aを入射すると、円筒面91が凸面鏡の作用を持ち、回折パターンが入射面内で大きく広がってしまう。
【0061】
これにより、回折像におけるブリュースター角を満たす光線の割合が少なくなり、検出感度を落とすことになる。
【0062】
このため、図10に示すように光2aの入射面は円筒面の母線101と軸102を含む平面102に一致するように設定し、入射面102内では光2aの照射エリア全域Dpで一定の入射角条件を満足するようにしている。
【0063】
本実施例では、入射角に対してブリュースター角を満たす特定の1箇所で測定することにより、よりシンプルな構成を実現している。
【0064】
図11は被検査面上に欠損等の異常部を含む領域を、円筒面91の軸102方向に光でスキャンしたときの、検出光量の相対変化量(回折光強度比)PLの結果の説明図である。
【0065】
ここで相対変化量PLは
相対変化量PL=|異常部の光量/正常部の光量−1|
である。
【0066】
ここでは異常部の粗さが周囲に比べて「粗」になっているため、ブリュースター角を満たす光線の割合が減ったため、検出光量としては周囲よりも増加することになる。これにより僅かな粗さの変化でも、数十%の変化量として検出できる。
【実施例2】
【0067】
次に本発明の実施例2について説明する。
【0068】
実施例2では被検査面として円筒面を用い、円筒面上の粗さを測定している。
【0069】
実施例2では、図12に示すように円筒面1を一定の角速度で回転させながら、円筒面1の軸方向(X方向)に円筒面1もしくは光源と測定器の測定ユニットSBが一定の速度で平行移動している。そして一定の時間おきに円筒面1からの反射光を検出して光量測定を行うことで円筒面1の2次元の測定値を得ている。
【0070】
このとき、円筒面1上の測定点間の距離をΔは、
Δ< Dp ‥‥‥(5)
としている。
【0071】
これにより測定対象面の全域について、全く同じ入射角、照射領域寸法の条件で走査することが可能になり、位置による厳密な相対変化量を検出することができる。
【0072】
特に図12に示すように、円筒面1を回転させながら軸方向(X方向)に移動することで、入射面を円筒面1の母線と軸を含む平面に一致するように設定し、円筒面1全体に関して同じ条件で測定を行っている。
【実施例3】
【0073】
次に本発明の実施例3について説明する。
【0074】
実施例3では、レーザー光源からの光を、1つもしくは2つ以上の半透鏡で複数の光に分岐し、1つの円筒面の複数の位置もしくは複数の円筒面に同時に照射して、各々に対応した複数の測定器で同時に光量測定を行っている。
【0075】
本実施例では、走査光学系を用いて測定時間の短縮化を図り、より高速に測定するのに好適である。
【0076】
本実施例では円筒面を高速に回転させなくても高速な測定が容易となる。特に単一の測定対象の複数の場所、或いは複数の測定対象面に同時に光を照射して、そこからの拡散光を測定することで、単位面積あたりの測定時間を短縮している。
【0077】
その際、入射光は略平行であるため、光源を多数準備する必要はなく、単一(或いは必要最低限の少ない複数)の光源からの出射光を、半透鏡の機能を持つ光学素子で分岐することにより、おのおのの照射点に導いている。また円筒面の軸方向の移動も単一(或いは必要最低限の少ない複数)の手段で実現可能である。
【実施例4】
【0078】
次に本発明の実施例4について説明する。
【0079】
本実施例では、被検査物体上の表面の照射する光の位置を変化させたときの、表面からの光回折像の強度分布の変化から、円筒形状で光の波長よりも十分に大きい表面の粗さの均一度を測定している。このとき入射光は略平行ビームで円筒面の母線と中心軸を含む平面を入射面とする。
【0080】
円筒面上の照射点における法線に対し、光をθiの角度でP偏光で入射する。入射面内で法線から、所定の角度2θB−θiの方向への拡散反射光をP偏光成分のみをP偏光成分選択手段で選択する。P偏光成分選択手段からの光を検出光学系で集光し、検出光学系の近軸像面付近に設けた光束制限手段を介して、光検出器で光量変化を測定している。
【0081】
これにより表面の粗さの均一度を求めている。
【0082】
ここで
dを検出される最も小さい異常領域の幅(mm)とする。
Hを光束制限手段の開口部の幅(mm)とする。
βを検出光学系が円筒面の一部を光束制限手段6に結像するときの近軸横倍率とする。
【0083】
このとき
λ/(Dp/L)2< W ‥‥‥(1)
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、 ‥‥‥(2)
1/kj < Dp ‥‥‥(3)
H ≦ β・d、 ‥‥‥(6)
を満たしている。
【0084】
照射点による回折分布の相対変化を、より感度の高い条件で測定する際、光の入射角を70°を超えるような非常に大きな角度にしなければならない場合も多い。
【0085】
このとき、照射対象面上に照射される光のスポット径の大きさは、円筒面の軸方向に長く伸びた状態となる。たとえば、1mmのビーム径で入射角が70°の場合、照射領域は2.9mmにも広がる。
【0086】
このとき、照射領域内でムラなど異常部の大きさが1mm程度であった場合、回折像は正常部と異常部の面からの成分が混合されたものとなり、異常部からの情報のみを感度よく得ることができない。
【0087】
本実施例ではこれを解決するため、検出光学系8の像面付近に設置されるスリットやピンホールなどの光束制限手段の開口部の幅Hを、必要な空間分解能に相当する値に設定している。
【0088】
たとえば、検出されなければならない最も小さい異常部の大きさのサイズがd[mm]であり、検出光学系8の近軸横倍率がβである場合、光束制限手段6の開口部の幅H[mm]はβ・dと同等又はそれ以下である必要がある。
【0089】
これにより、照射領域が必要分解能を超える場合でも、光束を制限することにより、諸条件を満たし必要な情報を持つ回折光のみを取り込んで、空間的にも感度の高い系が実現可能となる。
【0090】
条件式(1)、(2)、(3)、(6)は以上の理由により特定されたものであり、条件式(1)、(2)、(3)、(6)を満足するように各部材を特定することにより、円筒面上の表面の粗さを高精度に測定している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1の要部側面図
【図2】本発明の実施例1の各部材間の説明図
【図3】本発明の実施例1の要部上面図
【図4】照射ビーム径が0.1mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図5】照射ビーム径が0.5mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図6】粗面表面でのブリュースター条件を満たす拡散反射の説明図
【図7】P偏光成分の回折像分布の説明図
【図8】表面材質の偏光成分別反射率特性の説明図
【図9】ビーム入射面が円筒面の軸に垂直となるように入射したときの説明図
【図10】円筒面に光が入射するときの説明図
【図11】スキャンしたときの測定結果例の説明図
【図12】スキャン方式を用いた実施例の説明図
【図13】測定結果の2次元画像化データの説明図
【符号の説明】
【0092】
1・・・円筒面
2・・・レーザー光源
3・・・回折光
4・・・第1の光束制限手段
5・・・正反射方向
6・・・第2の光束制限手段
7・・・光検出器
8・・・検出光学系
9・・・P偏光成分選択手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはP偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該検出光学系の光入射側又は該検出光学系から該光検出器との間の光路中にP偏光成分を選択して透過させるP偏光成分選択手段と、
を有し、該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)2<W
なる条件を満足することを特徴とする表面状態検査装置。
【請求項2】
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度2θB−θi方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しており、
該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をKj、
該円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をLとするとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、
1/kj < Dp 、
λ/(Dp/L)2<W
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項3】
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しているとき、
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項4】
前記円筒面を一定の角速度で回転させながら、円筒面の軸方向に円筒面と入射光とが一定の速度で相対的に平行移動するようにし、一定の時間おきに前記光検出器で光量測定を行うことにより、円筒面上の2次元での表面状態を検査しており、このとき円筒面上の測定点間の距離Δが、
Δ< Dp
となるようにしていることを特徴とする請求項2又は3の表面状態検査方法。
【請求項5】
前記照射工程では円筒面上の異なった領域に各々光を照明しており、前記検査工程では、該円筒面上の異なった領域から生ずる光回折光を各々検出して、円筒面上の複数の領域の表面状態を検査していることを特徴とする請求項2、3又は4の表面状態検査方法。
【請求項6】
前記入射面内において、前記光束制限手段の光束が通過する幅をH、前記検出光学系が前記円筒面の一部を該光束制限手段面上に結像するときの近軸横倍率をβ、該円筒面上の検出すべき凹凸部の最小の長さをdとするとき
H≦β・d
を満足することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項の表面状態検査方法。
【請求項1】
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはP偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該検出光学系の光入射側又は該検出光学系から該光検出器との間の光路中にP偏光成分を選択して透過させるP偏光成分選択手段と、
を有し、該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)2<W
なる条件を満足することを特徴とする表面状態検査装置。
【請求項2】
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度2θB−θi方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しており、
該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をKj、
該円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をLとするとき
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、
1/kj < Dp 、
λ/(Dp/L)2<W
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項3】
平行でP偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面を照射するときの光の入射角をθi、
該円筒面の表面物質のブリュースター角をθBとするとき、該光検出器は、該円筒面から角度θS方向に生ずる光回折光をP偏光成分のみを選択するP偏光成分選択手段を介して検出しているとき、
θi ≠ θB、 θi ≧ 2θB−90[°] 、
2θB−θ1−sin−1(NA)<θS<2θB−θ1+sin−1(NA)
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項4】
前記円筒面を一定の角速度で回転させながら、円筒面の軸方向に円筒面と入射光とが一定の速度で相対的に平行移動するようにし、一定の時間おきに前記光検出器で光量測定を行うことにより、円筒面上の2次元での表面状態を検査しており、このとき円筒面上の測定点間の距離Δが、
Δ< Dp
となるようにしていることを特徴とする請求項2又は3の表面状態検査方法。
【請求項5】
前記照射工程では円筒面上の異なった領域に各々光を照明しており、前記検査工程では、該円筒面上の異なった領域から生ずる光回折光を各々検出して、円筒面上の複数の領域の表面状態を検査していることを特徴とする請求項2、3又は4の表面状態検査方法。
【請求項6】
前記入射面内において、前記光束制限手段の光束が通過する幅をH、前記検出光学系が前記円筒面の一部を該光束制限手段面上に結像するときの近軸横倍率をβ、該円筒面上の検出すべき凹凸部の最小の長さをdとするとき
H≦β・d
を満足することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項の表面状態検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−2892(P2008−2892A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171553(P2006−171553)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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