説明

被検査物の測定方法、及び被検査物の測定装置

【課題】被検査物の音速及び音響インピーダンスを求め、それらを用いて被検査物の物理特性をより正確に把握すること。
【解決手段】トランスデューサ14はパルス励起されることによって超音波を生体組織21に向けて照射するとともに、生体組織21からの反射波を受信する。CPU31は、ガラス基板20からの反射波を用いてデコンボリューション処理を行うことで、生体組織21からの反射波を補正する。CPU31は、補正した反射波から、生体組織21の表面での反射波及び裏面での反射波を時間領域で分離する。CPU31は、分離した各反射波をそれぞれ周波数領域で解析することにより、複数の周波数についての音速及び音響インピーダンスを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検査物を測定する被検査物の測定方法、及び被検査物の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科手術中において切除する部位の大きさは、術後の患者の負担を考えるとできるかぎり小さく抑えるべきであるが、患部の一部が切除されずに残ってしまうと病気が再発するといった問題がある。このため、切除後の残留部分から標本(生体組織)をサンプリングし、患部の拡がりがないことを確認する必要がある。現在、この作業は、摘出した生体組織の切片を染色し、光学顕微鏡で観察することによって行われている。組織確定診断は、病理学的所見に基づいて標本部分に患部が拡がっていないことを確認する診断であるが、切片の染色には数日を要することから、術後の確認に用いられている。
【0003】
術中においては、縫合前に患部が残されていないことを短時間で判断することが要求される。そのため、特殊な染料を用いて短時間で染色し、標本部分に患部が拡がっていないことを概ね確認する「組織迅速診断」といった方法も実用化されている。ところが、この組織迅速診断においても1時間程度の時間を必要とし、この間手術が中断されるので、これに代わる方法として、超音波による音速像の観察が提案されている。つまり、超音波によって音速像を得る場合には、染色法を用いなくても生体組織の観察を行うことができる。このことから、組織確定診断を行う診断装置として超音波顕微鏡を応用した製品の開発が進められている。
【0004】
具体的には、従来の超音波顕微鏡では、単一周波数のバースト波を利用し、反射した超音波信号の強度や位相を解析することで、生体組織の性状を観察する。しかし、このような超音波顕微鏡には、超音波信号の測定に長時間を要するという問題があった。また、十分な精度と安定度を持った発振器や測定系などのアナログシステムが必要となるため、装置が大型化、複雑化するといった問題もあった。
【0005】
これら問題を解消して術中診断を可能とするための手段として、本発明者らはパルス励起型の超音波顕微鏡をすでに提案している(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。このパルス励起型超音波顕微鏡を用いた観察では、生体組織から切り出し、その組織を用いて厚さ数μmの凍結切片51を作製し、これをまずガラス基板52上に固定する(図15参照)。そして、パルス波でトランスデューサ53を励起して超音波Sを出力させ、その超音波Sを水などの媒質54を介して凍結切片51に照射する。そして、組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとの合成波を、トランスデューサ53で受信する。さらに、この受信波をフーリエ変換して基板52からの直接反射と比較することにより、強度及び位相スペクトルを得る。
【0006】
ところで、バースト波を用いた従来方式では、同じ測定点で周波数を切り替え何回も測定し、組織表面の反射と背面の反射との干渉を観測する必要があった。これに対して、パルス励起型超音波顕微鏡によれば、1回の測定で算出することができるという利点がある。この測定で得られた信号強度の極小点または極大点の周波数をf、そのときの位相をφとすると、組織表面と背面からの反射は極小点では逆位相、極大点では同位相となる。すなわち、極小点においては組織表面からの反射は背面からの反射より位相が(2n−1)π進んでおり、φ+(2n−1)πとなる(nは自然数)。従って、組織の厚さd、水の音速Cとすると、
【0007】
【数1】

が成立している。
【0008】
従って、次式のように組織厚さdが求まる。
【0009】
【数2】

【0010】
また、距離2dを組織音速Cで通過した波と水の音速Cで通過した波との位相差がφであることから、
【0011】
【数3】

となり、次式のように組織音速Cが求まる。
【0012】
【数4】

【0013】
また、極大点においては組織表面からの反射と背面からの反射との位相差が2nπとなっていることから、次式の関係が成立している。
【0014】
【数5】

【0015】
この式を用いれば、極小点の場合と同様に、組織厚さdを求めることができ、さらに、その組織厚さdを用いて音速Cを求めることができる。
【0016】
このように、組織音速Cを測定しながら、超音波の照射点を二次元走査することにより、二次元の音速像が得られる。音速Cは、組織の硬さに関連するパラメータであり、音速像によって凍結切片51の性状を観察することができる。
【0017】
さらに、本発明者らはパルス励起型の超音波顕微鏡を利用して生体組織の音響インピーダンス像を表示する超音波画像検査装置も提案している。この超音波画像検査装置では、超音波Sが走査される範囲内において生体組織61の周縁となる位置にリファレンス部材62を設け、ガラス基板63を介して生体組織61及びリファレンス部材62に超音波Sを照射する(図16参照)。
【0018】
リファレンス部材62においてその表面と直交する角度で照射される超音波(入射波)Sと反射波Sとの間には次式(6)の関係が成り立つ。
【0019】
【数6】

【0020】
ただし、Zはガラス基板63の音響インピーダンスであり、Zはリファレンス部材62の音響インピーダンスである。
【0021】
生体組織61においてその表面と直交する角度で照射される超音波Sと反射波Sとの間には次式(7)の関係が成り立つ。
【0022】
【数7】

【0023】
ただし、Zは生体組織61の音響インピーダンスである。
【0024】
従って、上記式(6),(7)から生体組織61の音響インピーダンスZは、次式(8)により求められる。
【0025】
【数8】

【0026】
この超音波画像検査装置において、音響インピーダンスZを測定しながら超音波Sの照射点を二次元走査することにより、二次元の音響インピーダンス像が得られる。音響インピーダンスZも、組織の硬さに関連するパラメータであり、音響インピーダンス像によって生体組織61の性状を観察することができる。
【特許文献1】特開2004−294189号公報
【非特許文献1】「医用超音波:パルス励起型超音波音速顕微鏡」(「超音波TECHNO」VOL.15 No.6(2003.11〜12)(101〜105頁)日本工業出版社発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、音速Cや音響インピーダンスZは、生体組織の硬さに関連する音響パラメータであるが、体積弾性率などのような物理パラメータではないため、生体組織のより正確な物理特性を得ることはできない。同一の生体組織における同じ場所の音速Cと音響インピーダンスZとを取得することができれば、それらを用いてその場所の体積弾性率を求めることができ、その体積弾性率により生体組織の硬さ情報を正確に把握することが可能となる。しかし、従来技術では、組織音速Cを求める装置と音響インピーダンスZを求める装置とが別々に必要となるため、装置の設置スペースが増大したり、設備コストが嵩んだりするといった問題が生じる。また、生体組織をそれぞれの装置に設置して各画像を取得する必要があるため、生体組織を各装置間で移動させなければならない。さらに、観察場所の位置合わせも困難となるため、組織診断を迅速に行うこと困難となるといった問題も生じてしまう。
【0028】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査物の音速及び音響インピーダンスを求め、それらを用いて被検査物の物理特性をより正確に把握することができる被検査物の測定方法、及び被検査物の測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する方法であって、前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を取得するステップと、前記被検査物からの反射波を取得するステップと、前記非載置面からの反射波を用いて、前記被検査物からの反射波を周波数領域で解析することにより、複数の周波数についての音速及び音響インピーダンスを求めるステップとを含むことを特徴とする被検査物の測定方法をその要旨とする。
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、パルス励起型超音波顕微鏡において、異なる周波数成分を含む超音波がパルス励起されて被検査物に照射される。その被検査物で反射される反射波も異なる周波数成分を含む。そのため、非載置面からの反射波を用いて、被検査物からの反射波を周波数領域で解析することにより、複数の周波数についての音速及び音響インピーダンスが求められる。そして、これら音速及び音響インピーダンスを用いれば、各種の物理パラメータを求めることができ、被検査物の物理特性を正確に把握することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明は、パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する方法であって、前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を取得するステップと、前記被検査物からの反射波を取得するステップと、前記非載置面からの反射波を用いて、前記被検査物からの反射波を補正するデコンボリューション処理を行うステップと、前記補正された反射波から前記被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波を時間領域で分離するステップと、前記分離された各反射波の位相に基づいて音速を求めるステップと、前記分離された各反射波の信号強度に基づいて音響インピーダンスを求めるステップとを含むことを特徴とする被検査物の測定方法をその要旨とする。
【0032】
前記被検査物で反射される反射波は、被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波が干渉した波形となる。従って、請求項2に記載の発明のように、試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を用いてデコンボリューション処理を行うことにより、被検査物からの反射波が補正され、その反射波から被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波が時間領域で分離される。そして、分離された各反射波の位相に基づいて音速が求められ、反射波の信号強度に基づいて音響インピーダンスが求められる。これら音速及び音響インピーダンスを用いれば、各種の物理パラメータを求めることができるため、被検査物の物理特性を正確に把握することができる。
【0033】
前記時間領域で分離した各反射波も異なる周波数成分を含むため、各反射波をそれぞれフーリエ変換することにより、信号強度及び位相スペクトルの周波数特性データを求めることができる。そして、位相スペクトルの周波数特性データにより得られる位相差に基づいて、被検査物の音速を求めることができる。また、強度スペクトルの周波数特性データにより得られる反射波の信号強度に基づいて音響インピーダンスを求めることができる。このようにすると、音速や音響インピーダンスなどの各種のパラメータの周波数依存性を得ることができるため、被検査物の物理特性をより正確に把握することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記音響インピーダンスを前記音速で除算することにより被検査物の密度を求めることをその要旨とする。
【0035】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記音響インピーダンスと前記音速とを乗算することにより被検査物の体積弾性率を求めることをその要旨とする。
【0036】
請求項3や請求項4に記載の発明のように、音響インピーダンスと音速を用いて、被検査物の密度や体積弾性率といった物理パラメータを求めることができるので、被検査物の物理特性をより正確に把握することができる。
【0037】
請求項5に記載の発明は、パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する測定装置であって、パルス励起されることによって超音波を被検査物に照射するとともに、前記被検査物からの反射波を受信する超音波振動子と、前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波と前記被検査物からの反射波とに基づいて、前記被検査物からの反射波を補正するデコンボリューション処理を行う処理手段と、前記処理手段により補正された反射波から前記被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波を時間領域で分離する波形分離手段と、前記波形分離手段により分離された各反射波の位相に基づいて、前記被検査物の音速を算出する音速算出手段と、前記波形分離手段により分離された各反射波の信号強度に基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出する音響インピーダンス演算手段とを備えることを特徴とする被検査物の測定装置をその要旨とする。
【0038】
請求項5に記載の発明によれば、超音波振動子がパルス励起されることによって超音波が被検査物に向けて照射され、超音波振動子により被検査物からの反射波が受信される。そして、処理手段により、試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を用いてデコンボリューション処理が行われて被検査物からの反射波が補正される。また、波形分離手段により、補正された反射波から被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波が時間領域で分離される。さらに、音速算出手段により、各反射波の位相に基づいて被検査物の音速が算出され、音響インピーダンス演算手段により、各反射波の信号強度に基づいて被検査物の音響インピーダンスが算出される。そして、これら音速及び音響インピーダンスを用いれば、各種の物理パラメータを求めることができ、被検査物の物理特性をより正確に把握することができる。またこの場合、従来技術のように音速の測定装置と音響インピーダンスの測定装置とを別々に設ける必要がないので、測定装置の設置スペースを削減できるとともに、設備コストを抑えることができる。さらに、被検査物を移動させることなく、同一場所の音速や音響インピーダンスなどのパラメータを容易に取得できるため、被検査物の解析を迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、被検査物の音速及び音響インピーダンスを求め、それらを用いて被検査物の物理特性をより正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は測定装置としての超音波画像検査装置を示す概略構成図である。
【0041】
図1に示されるように、本実施の形態の超音波画像検査装置1は、パルス励起型超音波顕微鏡2と、A/Dボード3と、パーソナルコンピュータ(パソコン)4とを備える。
【0042】
超音波顕微鏡2には、パルス発生回路11と、送受波分離回路12と、受信回路13と、トランスデューサ14と、X−Yステージ15と、エンコーダ(ENC)16と、コントローラ17と、駆動モータ18X,18Yとが設けられている。
【0043】
トランスデューサ14は、酸化亜鉛の薄膜圧電素子14aとサファイアロッドの音響レンズ14bとからなり、パルス発生回路11で発生される励起パルスにより薄膜圧電素子14aが振動して所定周波数帯域の超音波が音響レンズ14bを通して出力される。この音響レンズ14bにおける超音波は円錐状に収束され、水などの媒質19を介して試料載置板としてのガラス基板20の表面で焦点を結ぶようになっている。なお、トランスデューサ14としては、口径1.2mm、焦点距離1.5mm、中心周波数80MHz、帯域幅50〜105MHz(−6dB)の仕様のものを用いている。
【0044】
また、トランスデューサ14の下方に、二次元走査手段としてのX−Yステージ15が設けられ、そのステージ15上にはガラス基板20が固定されている。そして、そのガラス基板20の上面に、被検査物としての生体組織21が載置され、この生体組織21に対してその上方から超音波が照射される。なお、この生体組織21は、数μm程度(通常4μm〜10μm)の厚さにスライスされた凍結切片(生体組織切片)である。
【0045】
X−Yステージ15は、生体組織21を二次元的に動かすためのステージ15X,15Yと、それぞれのステージ15X,15Yを駆動するモータ18X,18Yとを備えている。このモータ18X,18Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0046】
各モータ18X,18Yにはコントローラ17が接続されており、該コントローラ17の駆動信号に応答してモータ18X,18Yが駆動される。これらモータ18X,18Yの駆動により、Xステージ15Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ15Yを間欠送りとなるよう制御することで、X−Yステージ15の高速走査が可能となっている。
【0047】
また、本実施の形態においては、Xステージ15Xに対応してエンコーダ16が設けられ、エンコーダ16によりXステージ15Xの走査位置が検出される。具体的に、走査範囲を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ16によって検出され、パソコン4に取り込まれる。パソコン4はそのエンコーダ16の出力に同期して駆動制御信号を生成して、その駆動制御信号をコントローラ17に供給する。コントローラ17は、この駆動制御信号に基づいてモータ18Xを駆動する。また、コントローラ17は、エンコーダ16の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ18Yを駆動して、Yステージ15YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0048】
さらに、コントローラ17は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路11に供給する。これにより、パルス発生回路11において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路12を介してトランスデューサ14に供給されて該トランスデューサ14から超音波が照射される。
【0049】
図2は、トランスデューサ14側から見たX−Yステージ15の平面図である。図2に示されるように、Xステージ15Xによるx方向への往復走査とYステージによるy方向への走査とを行うことにより、ガラス基板20上の生体組織21に対して超音波が二次元的に走査される。
【0050】
図3には、本実施の形態における超音波の走査範囲Rの一例を示している。すなわち、超音波の走査範囲Rは、生体組織21に加えてガラス基板20の表面が露出している部分(ガラス面20a)を含むように設定される。そして、走査範囲Rの左上の隅の位置から走査が開始され、矢印で示すように、X方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。
【0051】
図1に示すトランスデューサ14の薄膜圧電素子14aは、送受波兼用の超音波振動子であり、生体組織21で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は送受波分離回路12を介して受信回路13に供給される。受信回路13は、図示しない信号増幅回路を含み、反射波の信号を増幅してA/Dボード3の検波回路23に出力する。
【0052】
検波回路23は、超音波の反射波を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含む。本実施の形態の検波回路23は、トランスデューサ14で受信した反射波信号のなかからガラス面20aもしくは生体組織21の反射波信号を抽出する。超音波はトランスデューサ14とガラス面20aもしくは生体組織21との間で繰り返し反射されるものであるため、検波回路23は、最初に得られる反射波信号を抽出するよう構成されている。そして、検波回路23で抽出された反射波信号はA/D変換回路24に入力されて、A/D変換された後、パソコン4に転送される。
【0053】
パソコン4は、CPU31、インターフェース(I/F)32,33、メモリ34、記憶装置35、入力装置36、及び表示装置37を備え、それらはバス38を介して相互に接続されている。
【0054】
CPU31は、メモリ34を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ15による二次元走査を制御するためのプログラム、音速や音響インピーダンスといった各種のパラメータを算出するためのプログラムなどを含む。
【0055】
インターフェース32は、A/Dボード3からの転送データ(A/D変換後の反射波信号など)を取り込むための通信ポート(例えば、USBポート)であり、インターフェース33は、コントローラ17への駆動制御信号を出力したりエンコーダ16の出力信号を取り込むための入出力ポートである。
【0056】
表示装置37は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、生体組織21の画像や、各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置36は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0057】
記憶装置35は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、その記憶装置35には制御プログラム及び各種のデータが記憶されている。CPU31は、入力装置36による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置35からメモリ34へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置35にインストールして利用する。
【0058】
次に、本実施の形態の超音波画像検査装置1において、生体組織21の厚さ、音速、音響インピーダンスなどの各種のパラメータを算出するための方法について説明する。
【0059】
先ず、図4に示すように、ガラス基板20の表面(ガラス面)20aに超音波Sを照射し、そのガラス面20aでの反射波Srefを取得する。その後、生体組織21の表面に超音波Sを照射し、生体組織21からの反射波Sを取得する。この生体組織21からの反射波Sは、組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとを含んだ合成波として取得される。そして、ガラス面20aでの反射波Srefを参照波形としてデコンボリューション処理を行うことにより、生体組織21での反射波Sを補正して組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとを分離する。
【0060】
なお、このデコンボリューション処理では、各反射波Sref,Sをそれぞれフーリエ変換し、フーリエ変換後の反射波Sの周波数成分を反射波Srefの周波数成分で除算し、さらに、その算出結果を逆フーリエ変換する。これにより、補正した反射波Sのデータが得られる。
【0061】
図5は、デコンボリューション処理前のガラス面20aの反射波Srefと生体組織21の反射波Sとを示している。図6は、デコンボリューション処理後におけるガラス面の反射波Srefと生体組織21の反射波Sとを示している。
【0062】
図5及び図6に示されるように、デコンボリューション処理により補正された生体組織21の反射波Sは、補正前の波形に比べて生体組織21の表面及び裏面での反射が分離可能な波形となる。本実施の形態では、このデコンボリューション処理によって補正された反射波Sに対して窓関数をかけることにより、組織表面での反射波Sfrontと組織裏面での反射波Srearとを時間領域で分離する。
【0063】
このように分離した各反射波Sfront,Srearも、超音波Sと同様に異なる周波数成分を含む。従って、各反射波Sfront,Srearのデータをそれぞれフーリエ変換することで各反射波Sfront,Srearの強度及び位相スペクトルの周波数特性データ(図7及び図8参照)を求めることができる。なお、これら周波数特性データは、ガラス面20aでの反射波Srefを基準としたデータである。
【0064】
ここで、組織表面での反射波Sfrontの位相φfrontは次式で表される。
【0065】
【数9】

また、組織裏面での反射波Srearの位相φrearは次式で表される。
【0066】
【数10】

【0067】
ただし、fは周波数、dは組織の厚さ、Cは水の音速、Cは組織の音速である。
【0068】
従って、上記式(9)から組織の厚さdは次式により求められる。
【0069】
【数11】

【0070】
また、上記式(10)から組織の音速Cは次式により求められる。
【0071】
【数12】

【0072】
このように、周波数fとそれに応じた位相φfront,φrearを上記式(11)及び式(12)に代入することにより、各周波数fに対応した組織音速Cを求めることができる。
【0073】
また、ガラス面20aでの反射波Sref、組織表面での反射波Sfront、組織裏面での反射波Srearはそれぞれ以下の式で表される。
【0074】
【数13】

【0075】
ただし、Zsはガラス基板20の音響インピーダンス、Zwは水の音響インピーダンス、Zは生体組織21の音響インピーダンス、αwは水の減衰定数、αは生体組織21の減衰定数である。
【0076】
測定条件における水の減衰定数αwの影響は極めて少ないため、入射される超音波Sは、上記式(13)を用いて次式のように簡素化できる。
【0077】
【数14】

【0078】
従って、所定の周波数fでの超音波Sの信号強度は、ガラス面20aでの反射波Srefとガラス基板20の音響インピーダンスZsと水の音響インピーダンスZwとを用いて求めることができる。
【0079】
また、生体組織21の音響インピーダンスZtは、上記式(14)を用いて次式のように表される。
【0080】
【数15】

【0081】
従って、所定の周波数fでの音響インピーダンスZは、その周波数fにおける超音波Sの信号強度と組織表面での反射波Sfrontの信号強度とを用いて求めることができる。なおここで、組織表面での反射波Sfrontは、図7に示す強度スペクトルの周波数特性データを用いる。
【0082】
また、上記のように算出した生体組織21の音響インピーダンスZと音速Cとを用いて、次式のように密度ρや体積弾性率Kを求める。
【0083】
【数16】

すなわち、音響インピーダンスZを音速Cで除算することにより生体組織21の密度ρを求め、音響インピーダンスZと音速Cとを乗算することにより生体組織21の体積弾性率Kを求める。
【0084】
さらに、生体組織21の減衰定数αは、次式のように表される。
【0085】
【数17】

従って、生体組織21の減衰定数αは、組織の厚さdとガラス面20aでの反射波Sref及び組織裏面での反射波Srearの信号強度とを用いて求められる。なお、減衰定数αは、式(16)で求めた超音波S0の信号強度や式(17)で求めた音響インピーダンスZなどに基づいて算出してもよい。
【0086】
次に、本実施の形態において、生体組織21の画像を生成するためにCPU31が実行する処理例について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0087】
先ず、CPU31は、制御信号を出力することでコントローラ17によってモータ18X,18Yを駆動し、超音波の照射点がガラス面20a上に位置するようにX−Yステージ15を移動する。またこのとき、励起パルスがトランスデューサ14に供給されると、トランスデューサ14から超音波が照射され、反射波の電気信号が検波回路23で抽出される。そして、CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをインターフェース32を介して取り込み、そのデータをガラス面20aでの反射波のデータとしてメモリ34に記憶する(ステップ100)。
【0088】
次に、CPU31は、制御信号を出力することでコントローラ17によってモータ18X,18Yを駆動し、X−Yステージ15による二次元走査を開始させる。このとき、CPU31は、エンコーダ16の出力に基づいて測定点の座標データを取得する(ステップ110)。ここで、励起パルスがトランスデューサ14に供給されると、トランスデューサ14から超音波が照射され、反射波の電気信号が検波回路23で抽出される。そして、CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをインターフェース32を介して取り込み、そのデータを各測定点での反射波のデータとして座標データに関連付けてメモリ34に記憶する(ステップ120)。
【0089】
その後、処理手段としてのCPU31は、ガラス面20aからの反射波のデータを用いてデコンボリューション処理を行う(ステップ130)。図10には、そのデコンボリューション処理の具体例を示している。
【0090】
すなわち、第1のフーリエ変換手段としてのCPU31は、ガラス面20aからの反射波Srefのデータをフーリエ変換する(ステップ131)。次に、第2のフーリエ変換手段としてのCPU31は、生体組織21における測定点での反射波Sのデータをフーリエ変換する(ステップ132)。そして、除算手段としてのCPU31は、フーリエ変換後の反射波Sの周波数成分を反射波Srefの周波数成分で除算する(ステップ133)。その後、逆フーリエ変換手段としてのCPU31は、その除算結果を逆フーリエ変換することで補正された反射波S(図6参照)のデータを得る(ステップ134)。この処理の終了後、CPU31は、図9に示すステップ140に移行する。
【0091】
ステップ140において、波形分離手段としてのCPU31は、所定の窓関数を用いて、補正された反射波Sから組織表面での反射波Sfrontと組織裏面での反射波Srearとを時間領域で分離する。次いで、CPU31は、分離した各反射波Sfront,Srearのデータをそれぞれフーリエ変換して各反射波Sfront,Srearの位相スペクトルの周波数特性データを求める。そして、音速算出手段としてのCPU31は、そのデータを用いて、上記式(11)及び式(12)に対応した演算を行うことで、測定点での生体組織21の厚さd及び音速Cを周波数毎に算出し、それら算出値を各測定点の座標データに関連付けてメモリ34に記憶する(ステップ150)。
【0092】
その後、音響インピーダンス算出手段としてのCPU31は、上記式(16)及び式(17)に対応した演算を行うことで、測定点での生体組織21の音響インピーダンスZを周波数毎に算出し、それら算出値を各測定点の座標データに関連付けてメモリ34に記憶する。さらに、算出した音速Cや音響インピーダンスZなどを用い、上記式(18)、式(19)、式(20)に対応した演算を行うことで、密度ρ、体積弾性率K、減衰定数αなどのパラメータを周波数毎に算出し、それら算出値を各測定点の座標データに関連付けてメモリ34に記憶する(ステップ160)。
【0093】
CPU31は、全ての測定点での処理が終了し、1画面分の測定データが取得されたか否かを判断する(ステップ170)。ここで、全データが取得されていない場合、CPU31は、ステップ100に戻って、ステップ100〜170の処理を繰り返し実行し、全データが取得された場合には、画像表示処理を実行する(ステップ180)。
【0094】
図11には、その画像表示処理の具体例を示している。
先ず、CPU31は、所定のデータを表示装置37に送信し、設定画面を表示させる(ステップ181)。この設定画面には、例えば、表示すべき画像の種類(音速像、インピーダンス像、密度像などのいずれかの画像)を選択するためのチェックボックスや周波数を指定するためのテキストボックスが表示されている。そして、ユーザにより入力装置36が操作されて、チェックボックスにて画像の種類が選択され、テキストボックスに所定の周波数が入力される。ここで、例えば、音速像が選択された場合、画像生成手段としてのCPU31は、入力された周波数に対応する1画面分の音速Cのデータをメモリ34から順次読み出して、その音速Cのデータに基づいて音速像を生成するための画像処理を行う(ステップ182)。すなわち、CPU31は、音速Cを用いてカラー変調処理を行い、音速Cの大きさに応じた画像データを生成する。そして、CPU31は、それら画像データを表示装置37に転送することにより、図12に示すような音速像39を表示させる(ステップ183)。このように、CPU31は、ユーザが指定した周波数の音速像39を表示装置37に表示した後に本処理を終了する。
【0095】
また、本実施の形態では、ステップ181で表示される設定画面において、音響インピーダンスZや密度ρの画像が選択される場合、図13に示すような音響インピーダンス像40や図14に示すような密度像41などが表示装置37に表示される。さらに、設定画面において複数種類の画像が選択された場合には、複数の画像が表示装置37に並べて表示される。なお、図12〜図14に示す画像(音速像39、音響インピーダンス像40、密度像41)では、生体組織21におけるパラメータ値の違いを色の濃淡で示しているが、実際には、パラメータ値に応じて色分けされたカラー画像として表示される。
【0096】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0097】
(1)本実施の形態超音波画像検査装置1では、生体組織21の音速Cや音響インピーダンスZを測定することができ、さらに、音速Cや音響インピーダンスZtを用いることで、密度ρ、体積弾性率K、減衰定数αなどの各種パラメータを求めることができる。また、本実施の形態では、音速Cや音響インピーダンスZなどの各種のパラメータの周波数依存性に関する情報を得ることができる。従って、これらパラメータによって生体組織21の物理特性をより正確に判定することが可能となる。具体的には、例えば、体積弾性率Kは、生体組織21の硬さを示す物理パラメータであるので、体積弾性率Kによって生体組織21の硬さ情報を正確に得ることができる。また、低周波数での減衰定数αは、生体組織21の粘性に関連する音響パラメータであるので、その減衰定数αによって、生体組織21の粘り度合いを判定することができる。
【0098】
(2)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、従来技術のように音速Cの測定装置と音響インピーダンスZの測定装置とを別々に設ける必要がないので、設置スペースを削減できるとともに、設備コストを抑えることができる。さらに、生体組織21を移動させることなく、同一場所の音速Cや音響インピーダンスZなどを容易に取得できるため、生体組織21の解析を迅速に行うことが可能となる。
【0099】
(3)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、X−Yステージ15により超音波の照射点を二次元的に走査することで、生体組織21における複数点での音速Cや音響インピーダンスZなどのパラメータを求めることができる。そして、それらパラメータを用いて画像処理を行うことにより、生体組織21の画像を生成することができる。特に、本実施の形態では、音速像39や音響インピーダンス像40といった音響像以外に、物理パラメータである密度ρや体積弾性率Kに応じた画像を表示させることができるため、音響像で見ることができない構造を確認することが可能となる。
【0100】
(4)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、音速像39や音響インピーダンス像40などの複数種類の画像を表示装置37に表示させることができるため、各画像に基づいてそれらの相関性を検討することができる。
【0101】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0102】
・上記実施の形態では、デコンボリューション処理により反射波を補正し、その反射波から分離した各反射波Sfront,Srearの位相φfront,φrearに基づいて、生体組織21の厚さd及び音速Cを求めるようにしたが、これに限定されるものではない。従来技術のように、生体組織からの反射波をフーリエ変換してガラス面からの反射波と比較することにより、強度及び位相スペクトルの周波数特性データを求め、強度スペクトルの極小点または極大点における周波数とその周波数における位相とに基づいて生体組織の厚さd及び音速Cを求めてもよい。勿論、厚さdや音速Cと音響インピーダンスZと別々の測定装置で測定し、それらに基づいて密度ρ、体積弾性率Kなどの物理パラメータを求めるようにしてもよい。ただし、上記実施の形態の超音波画像検査装置1のように、音速Cや音響インピーダンスZを同じ装置で測定し、それらに基づいて各種のパラメータを求めるように構成すると、生体組織21の物理特性をより迅速に把握することができる。
【0103】
・上記実施の形態では、生体組織21に超音波Sを照射して音速Cや音響インピーダンスZなどのパラメータを測定した後に、設定画面を表示させて画像の種類や周波数を指定するものであったが、これに限定するものではない。例えば、超音波を照射して音速Cを測定する前(図9のステップ100の処理前)に、設定画面を表示させて画像の種類や周波数を指定するように構成してもよい。このようにすると、指定された周波数でのパラメータを求めそれに対応した画像データを生成すればよいので、使用するメモリ34の容量やCPU31の処理負荷を抑えることができる。
【0104】
・上記実施の形態では、X−Yステージ15を駆動することにより、超音波の照射点を二次元的に走査する構成を採用したが、超音波トランスデューサ14側に二次元走査手段を設けてもよい。
【0105】
・上記実施の形態では、被検査物としての生体組織21の各種パラメータを測定するものであったが、それ以外に、例えば樹脂表面などのパラメータを測定してもよい。
【0106】
・上記実施の形態では、音速像39、音響インピーダンス像40、密度像41などの複数の画像を表示装置37に並べて表示するようにしたが、複数の画像を重ね合わせて表示してもよい。なおこの場合、各パラメータに応じた画像データ同士を重ね合わせて重合像データを生成し、その重合像データに基づいて表示装置37に画像(重合像)を表示する。ここで、例えば、音速像39と音響インピーダンス像40とを重ね合わせることで、体積弾性率Kに応じた画像を生成することが可能であり、その画像を用いて生体組織21の物理特性をより正確に把握することが可能となる。
【0107】
・上記実施の形態において、パソコン4を用いて超音波画像検査装置1を構成したが、それ以外にワークステーションなどのコンピュータを用いてもよい。また、音速像39、音響インピーダンス像40、密度像41などの画像を表示するための表示装置37は、パソコン4に一体的に設けられるものであったが、パソコン4と別体で設けてもよい。
【0108】
・上記実施の形態の超音波画像検査装置1では、カラー変調による画像を得るものであったが、それ以外に輝度変調した画像として可視化してもよい。
【0109】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0110】
(1)請求項2において、前記分離された各反射波をそれぞれフーリエ変換することで、位相スペクトルの周波数特性データを求め、そのデータにより得られる位相差に基づいて、前記被検査物の厚さ及び音速を求めることを特徴とする被検査物の測定方法。
【0111】
(2)請求項2において、前記分離した各反射波をそれぞれフーリエ変換することで、強度スペクトルの周波数特性データを求め、そのデータにより得られる反射波の信号強度に基づいて前記音響インピーダンスを求めることを特徴とする被検査物の測定方法。
【0112】
(3)請求項1において、前記被検査物からの反射波をフーリエ変換して前記非載置面からの反射波と比較することにより、強度及び位相スペクトルの周波数特性データを求め、強度スペクトルの極小点または極大点における周波数とその周波数における位相とに基づいて前記被検査物の厚さ及び音速を求めることを特徴とする被検査物の測定方法。
【0113】
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記音響インピーダンスに基づいて減衰定数を求めることを特徴とする被検査物の測定方法。
【0114】
(5)請求項5において、前記処理手段は、前記被検査物の非載置面からの反射波をフーリエ変換する第1のフーリエ変換手段と、前記被検査物からの反射波をフーリエ変換する第2のフーリエ変換手段と、前記第2のフーリエ変換手段により得られた変換結果を前記第1のフーリエ変換手段により得られた変換結果で除算する除算手段と、その除算結果を逆フーリエ変換することで補正された反射波のデータを得る逆フーリエ変換手段とを含むことを特徴とする被検査物の測定装置。
【0115】
(6)請求項5において、前記超音波の照射点を二次元的に走査させる二次元走査手段をさらに備えることを特徴とする被検査物の測定装置。
【0116】
(7)技術的思想(6)に記載の音響パラメータ測定装置と、前記被検査物の音速及び音響インピーダンスに基づいて画像を生成する処理を行う画像生成手段と、前記画像を表示するための表示装置とを備えることを特徴とする超音波画像検査装置。
【0117】
(8)技術的思想(7)において、前記画像生成手段は、輝度変調またはカラー変調して画像表示するための画像データを生成することを特徴とする超音波画像検査装置。
【0118】
(9)技術的思想(7)または(8)において、前記表示装置に、音速像と音響インピーダンス像とを含む複数の画像を別々に表示することを特徴とする超音波画像検査装置。
【0119】
(10)技術的思想(9)において、前記表示装置に、前記複数の画像を並べて表示することを特徴とする超音波画像検査装置。
【0120】
(11)技術的思想(9)において、前記表示装置に、前記複数の画像を重ね合わせて表示することを特徴とする超音波画像検査装置。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の超音波画像検査装置を示す概略構成図。
【図2】トランスデューサ側から見たX−Yステージの平面図。
【図3】超音波の走査範囲を示す説明図。
【図4】各反射波を示す説明図。
【図5】デコンボリューション処理前の反射波を示す説明図。
【図6】デコンボリューション処理後の反射波を示す説明図。
【図7】生体組織の表面及び裏面での反射波の強度スペクトルを示すグラフ。
【図8】生体組織の表面及び裏面での反射波の位相スペクトルを示すグラフ。
【図9】生体組織の画像を生成するための処理を示すフローチャート。
【図10】デコンボリューション処理を示すフローチャート。
【図11】画像表示処理を示すフローチャート。
【図12】音速像を示す説明図。
【図13】音響インピーダンス像を示す説明図。
【図14】密度像を示す説明図。
【図15】従来のパルス励起型超音波顕微鏡での音速測定方法を示す模式図。
【図16】従来のパルス励起型超音波顕微鏡での音響インピーダンス測定方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0122】
1…測定装置としての超音波画像検査装置
2…パルス励起型超音波顕微鏡
14a…超音波振動子としての薄膜圧電素子
20…試料載置板としてのガラス基板
20a…非載置面としてのガラス面
21…被検査物としての生体組織
31…処理手段、波形分離手段、及び算出手段としてのCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する方法であって、
前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を取得するステップと、
前記被検査物からの反射波を取得するステップと、
前記非載置面からの反射波を用いて、前記被検査物からの反射波を周波数領域で解析することにより、複数の周波数についての音速及び音響インピーダンスを求めるステップと
を含むことを特徴とする被検査物の測定方法。
【請求項2】
パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する方法であって、
前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波を取得するステップと、
前記被検査物からの反射波を取得するステップと、
前記非載置面からの反射波を用いて、前記被検査物からの反射波を補正するデコンボリューション処理を行うステップと、
前記補正された反射波から前記被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波を時間領域で分離するステップと、
前記分離された各反射波の位相に基づいて音速を求めるステップと、
前記分離された各反射波の信号強度に基づいて音響インピーダンスを求めるステップと
を含むことを特徴とする被検査物の測定方法。
【請求項3】
前記音響インピーダンスを前記音速で除算することにより被検査物の密度を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の被検査物の測定方法。
【請求項4】
前記音響インピーダンスと前記音速とを乗算することにより被検査物の体積弾性率を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被検査物の測定方法。
【請求項5】
パルス励起型超音波顕微鏡を利用して、試料載置板上に載置された被検査物を超音波の反射波に基づいて測定する測定装置であって、
パルス励起されることによって超音波を被検査物に照射するとともに、前記被検査物からの反射波を受信する超音波振動子と、
前記試料載置板における被検査物の非載置面からの反射波と前記被検査物からの反射波とに基づいて、前記被検査物からの反射波を補正するデコンボリューション処理を行う処理手段と、
前記処理手段により補正された反射波から前記被検査物の表面での反射波及び裏面での反射波を時間領域で分離する波形分離手段と、
前記波形分離手段により分離された各反射波の位相に基づいて、前記被検査物の音速を算出する音速算出手段と、
前記波形分離手段により分離された各反射波の信号強度に基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出する音響インピーダンス演算手段と
を備えることを特徴とする被検査物の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−57512(P2007−57512A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246895(P2005−246895)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】