説明

被覆切削工具インサート

【課題】フライス加工用の改善された切削工具インサートを提供する。
【解決手段】本発明は、未加工の表面領域を持つ、または持たない非合金、低合金および高合金鋼ならびに鋳鉄の乾式および湿式機械加工、好ましくはフライス加工に特に有用な被覆切削工具インサートを開示する。前記インサートは、W合金Coバインダー相を持つWC−TaC−NbC−Co超硬合金および柱状粒子を持つTiCxyzの最内層および少なくともすくい面上の平滑なα−Al23の最上層を含む被膜により特徴づけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳肌、鍛造肌、熱間または冷間圧延肌または予備切削表面などの未加工の表面を有する非合金、低合金および高合金鋼ならびに鋳鉄の乾式および湿式機械加工、好ましくはフライス加工に特に有用な被覆超硬合金切削工具インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工の際、超硬合金刃先は摩耗を受けやすい。摩耗は、化学摩耗、アブレシブ摩耗、凝着摩耗および刃先に沿って形成される亀裂、いわゆる櫛状亀裂により発生する刃先のチッピングなどの異なる機構により特徴づけることができる。厳しい切削条件下では、バルクおよび刃先の破壊が通常起こる。被加工材料および切削条件により、切削インサートの異なる性質が要求される。例えば、未加工表面領域を持つ鋼部品を切削する場合、または他の異なる条件で切削する場合、被覆超硬合金インサートは強靭な炭化物基材を主成分としなければならず、優れた粘着を有する被膜を持たなければならない。低合金鋼および鋳鉄を高い切削速度および大きな半径方向の切込み深さで機械加工する場合、一般的に化学摩耗が最も大きな摩耗のタイプである。この場合、一般的に7〜14μmの厚さのCVD被膜が好ましい。
【0003】
特定の摩耗タイプに関して切削性能を向上または最適化させる手段をとることができる。しかし、そのような手段は、他の摩耗性質に悪影響を与えることが非常に多いだろう。
【0004】
可能性のある手段の影響を以下に示す。
【0005】
1)櫛状亀裂の発生は、バインダー相含量を低くすると低減できる。しかし、バインダー含量が低いと、切削インサートの靭性が低下して少しも望ましくない。
【0006】
2)被膜の厚さを増すことにより化学摩耗の改善が可能である。しかし、厚い被膜はフレーキングの危険性を高め、凝着摩耗に対する耐性も低くするであろう。
【0007】
3)高い切削速度および高い刃先温度につながる他の条件での機械加工は、多量の立方晶炭化物(WC−TiC−TaC−NbCの固溶体)を持つ超硬合金を必要とするが、そのような炭化物は櫛状亀裂の形成を促進するであろう。
【0008】
4)コバルトバインダー含量を増すことにより向上された靭性が得られる。しかし、コバルト含量が高いと、塑性変形に対する耐性が低下する。
【0009】
市販の超硬合金グレードは、通常、言及された摩耗タイプの1種または数種に関して、および特定の切削用途分野に関して位置づけされ最適化されている。
【0010】
米国特許第6,062,776号は、湿潤または乾燥状態において、未加工表面領域を持つ、または持たない低合金または中合金鋼のフライス加工に特に有用な被覆切削工具インサートを開示している。そのインサートは、低含量の立方晶炭化物および高W合金バインダー相を持つWC−Co超硬合金、柱状粒子を持つTiCxyzの最内層およびTiNの最上層を持つκ−Al23層を含む被膜により特徴づけられている。
【0011】
米国特許第6,406,224号は、高切削速度で、研磨表面領域を持つ、または持たない合金鋼のフライス加工に特に有用な被覆切削工具インサートを開示している。被覆切削工具インサートは、7.1〜7.9重量%のCo、0.2〜1.8重量%の金属Ta、NbおよびTiの立方晶炭化物および残部WCの組成を持つ超硬合金ボディから成る。前記インサートは、柱状粒子を持つTiCxyzの最内層およびTiNの最上層を持つκ−Al23層により被覆されている。
【0012】
EP-A-736615は、ねずみ鋳鉄の乾式フライス加工に特に有用な被覆切削インサートを開示している。前記インサートは、純粋なWC−Co超硬合金基材ならびに柱状粒子を持つTiCxyzの層および微粒組織のα−Al23の最上層から成る被膜を有するという特徴がある。
【0013】
EP-A-1696051は、旋削、フライス加工、穿孔による、または類似のチップを形成する機械加工方法により金属を機械加工するのに好適な被覆切削工具インサートを開示している。前記工具インサートは、靭性を要する断続切削に特に有用である。
【0014】
米国特許第6,200,671号は、ステンレス鋼の旋削加工に特に有用な被覆旋削インサートを開示している。前記インサートは、高W合金Coバインダー相を有するWC−Co系超硬合金基材ならびに柱状粒子を持つTiCxyzの最内層およびTiNの最上層および微粒κ−Al23層の内部層を含む被膜により特徴づけられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、フライス加工用の改善された切削工具インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、好ましくはフライス加工用の改善された切削工具インサートを開発した。組み合わされた特徴は以下のとおりである:特定の超硬合金組成、特定のWC粒径、合金化されたバインダー相、いくつかの定義された層から成る内部被膜およびα−Al23の平滑な最上すくい面層。
【0017】
インサートは、好ましくは乾式および湿式両方の機械加工における安定条件下で、未加工表面領域を持つ、または持たない非合金、低合金および高合金鋼において向上した切削性能を有する。開示された切削工具インサートは、鋳鉄にも良好に作用する。切削工具は、上述の摩耗タイプの多くに関して従来技術のインサートに比べて向上した切削性能を示す。特に、耐化学性および櫛状亀裂に対する耐性が向上した。
【0018】
本発明による切削工具インサートは、W合金Coバインダー相、バランスの良い化学組成および良好に選択されたWCの粒径を有する超硬合金ボディ、柱状TiCxyz内部層および平滑なα−Al23最上層から成る被膜を含んで成る。TiN層が、インサートのクリアランス面の最上層であることが好ましい。
【0019】
本発明によると、8.1〜9.3重量%のCo、好ましくは8.3〜9.1重量%のCo、最も好ましくは8.4〜9.0重量%のCoおよび1.00〜1.45重量%のTaC、好ましくは1.18〜1.28重量%のTaCおよび0.10〜0.50重量%のNbC、好ましくは0.25〜0.35重量%のNbCおよび残部WCの組成を持つ超硬合金ボディを含んで成る被覆切削工具インサートが提供される。超硬合金ボディは、より少量の他の元素も含んでよいが、それらは技術的不純物(technical impurity)に相当する濃度である。保磁力は、14.9〜16.7kA/m、好ましくは15.3〜16.3kA/mの範囲である。
【0020】
コバルトバインダー相は、本発明の超硬合金切削インサートにその望ましい性質を与える特定量のWと合金化されている。バインダー相中のWはコバルトの磁気的性質に影響を与え、したがって以下に定義のとおりCW比の値と関連づけられ、
CW比=磁性Co%/Co重量%
上式において、磁性Co%は磁性Coの重量パーセンテージであり、Co重量%は超硬合金中のCoの重量パーセンテージである。
【0021】
CW比は、合金の程度により1と約0.75の間で変動する。CW比が低いとWの含量が高く、CW比=1はバインダー相中にWがないことを実質的に示す。
【0022】
超硬合金のCW比が0.80〜1.00未満、好ましくは0.81〜0.90、最も好ましくは0.82〜0.88である場合、向上した切削性能が得られることが見いだされた。
【0023】
超硬合金は、不利益な効果なしに、少量の、1体積%未満のη−相(M6C)を含むことがある。特定のCW比から(<1)、フリーのグラファイトは本発明による超硬合金ボディ中に全くないことになる。
【0024】
超硬合金インサートは、少なくとも3層のTiCxyzを含む7.5〜13.5μmの厚さの被膜に少なくとも部分的に被覆されている。少なくともすくい面上にある外層としてのα−Al23層とともに、前記3層は内部被膜を形成している。全厚さが3.0〜8.0μmであるTiCxyz層は、以下を含んで成る:
x+y=1、x≧0、好ましくはx<0.2およびz=0の組成を有する、超硬合金に隣接する第1のTiCxyz層、
x>0.4、y>0.4および0≦z<0.1、好ましくはz=0の組成を有する、第2のTiCxyz層、および
x+y+z≧1およびz>0、好ましくはz>0.2およびx+y+z=1の組成を有する、α−Al23層に隣接する針状粒子を有する第3のTiCxyz結合層。
【0025】
α−Al23の外層は厚さが2.0〜6.0μmであり、表面がブラスト処理を施されて粒子が平坦化している。
【0026】
1実施形態において、好ましくはTiN、Ti(C,N)、TiC、ZrNまたはHfNの、0.1〜2.3μm、好ましくは0.1〜1μmの追加の着色層が、α−Al23層の上に存在する。
【0027】
本発明は、粉末冶金技術、硬質成分およびバインダー相を形成する粉末の湿式混練、混練した混合物の所望の形状および大きさのボディへの圧縮および焼結による、8.1〜9.3重量%のCo、好ましくは8.3〜9.1重量%のCo、最も好ましくは8.4〜9.0重量%のCoおよび1.00〜1.45重量%のTaC、好ましくは1.18〜1.28重量%のTaCおよび0.10〜0.50重量%のNbC、好ましくは0.25〜0.35重量%のNbCおよび残部WCの組成を持つ超硬合金ボディを含んで成る被覆切削工具インサートを製造する方法にも関する。超硬合金ボディは、より少量の他の元素を含んでよいが、それらは技術的不純物に相当する濃度である。混練および焼結条件は、焼結したままの構造が、14.9〜16.7kA/m、好ましくは15.3〜16.3kA/mの範囲の保磁力および0.8〜1.00未満、好ましくは0.81〜0.90、最も好ましくは0.82〜0.88のCW比を持つように選択される。
【0028】
超硬合金インサートボディは、少なくともすくい面上にある外層としてのブラスト処理されたα−Al23層とともに内部被膜を形成している少なくとも3層のTiCxyzを含む7.5〜13.5μmの厚さの被膜により少なくとも部分的に被覆されている。全厚さが3.0〜8.0μmであるTiCxyz層は、以下を含んで成る:
TiCl4、H2およびN2から成る反応混合物を使用する公知のCVD法を利用した、x+y=1、x≧0、好ましくはx<0.2およびz=0の組成を有する、超硬合金に隣接する第1のTiCxyz層;
温度885〜850℃で、炭素/窒素源としてCH3CNおよび任意にCOおよび/またはCO2を使用する公知のMTCVD技術を利用した、x>0.4、y>0.4および0≦z<0.1、好ましくはz=0の組成を有する、第2のTiCxyz層;および
TiCl4、H2、COおよび/またはCO2および任意にN2から成る反応混合物を使用する公知のCVD法を利用した、x+y+z≧1およびz>0、好ましくはz>0.2およびx+y+z=1の組成を有する、α−Al23層に隣接する針状粒子を有する第3のTiCxyz結合層。
【0029】
厚さが2.0〜6.0μmであるα−Al23層は、公知のCVD技術を利用し、インサートに少なくともすくい面でのブラスト処理を施すことにより堆積する。
【0030】
1実施形態において、好ましくはTiN、Ti(C,N)、TiC、ZrNまたはHfNの、追加の0.1〜2.3μmの、好ましくは0.1〜1μmの着色層が、好ましくはブラスト処理の前にCVD技術を利用してα〜Al23層の上に堆積する。
【0031】
本発明は、鋳肌、鍛造肌、熱間または冷間圧延肌または予備切削表面などの未加工の表面を有する非合金、低合金および高合金鋼および鋳鉄の、以下の表による切削速度および送り速度での乾式および湿式機械加工、好ましくはフライス加工への上述のインサートの使用にも関する:
切込み角90°でのフライス加工:
切削速度:25〜400m/分、好ましくは150〜300m/分および
送り速度:0.04〜0.4mm/歯
正面フライス加工(切込み角45〜75°):
切削速度:25〜600m/分、好ましくは200〜400m/分および
送り速度:0.05〜0.7mm/歯
高送り速度で丸形インサートを用いたフライス加工
切削速度:25〜600m/分および送り速度:0.05〜3.0mm/歯、好ましくは0.3〜1.8mm/歯。
【実施例】
【0032】
実施例1(本発明A)
8.7重量%のCo、1.25重量%のTaC、0.28重量%のNbCおよび残部WCの組成を有し、Foerster Instruments Inc.から市販のFOERSTER KOERZIMAT CS 1.096で測定して約1.3μmのWC粒径およびCW比0.84に対応する保磁力15.5kA/mを持つ、以下のスタイル、R390-11T308M-PM、R390-170408M-PM、R245-12T3M-PM、R300-1648M-PHおよびR300-1240M-PHの超硬合金フライス加工インサートを調製した。インサートを以下のとおり被覆した:
TiCl4、H2およびN2から成る反応混合物を使用する公知のCVD法を利用して、およそx=0.05、y=0.95およびz=0の組成を有する、0.5μmのTiCxyz第1層、
温度885〜850℃で、炭素/窒素源としてCH3CNを使用する公知のMTCVD技術を利用して、およびx=0.55、y=0.45およびz=0の組成を有する、6μmの柱状TiCxyz第2層;および
0.5μmのTiCxyzの第3の結合層。この第3層の粒子は針状形状であり、その組成はおよそx=0.5、y=0およびz=0.5であった:
4μmのα−Al23から成る第4層および最後に約2μmのTiNの最上層が公知のCVD技術を利用して堆積された。XRD測定により、Al23層が100%α相から成ることを確認した。
【0033】
被覆サイクルの後、インサートの最上面(すくい面)に、Al23粗粒および水から成るスラリーによる強度のウェットブラスト法を施した。ブラスト処理は、すくい面上の最上TiN層を除去し、ほとんどの粒子が平坦化されている平滑なα−Al23を露出した。
【0034】
実施例2(従来技術B)
7.6重量%のCo、1.25重量%のTaC、0.28重量%のNbCおよび残部WCの組成を有し、Foerster Instruments Inc.から市販のFOERSTER KOERZIMAT CS 1.096で測定して約1.5μmのWC粒径およびCW比0.91に対応する保磁力14.7kA/mを持つ、以下のスタイル、R390-11T308M-PM、R390-170408M-PM、R245-12T3M-PM、R300-1648M-PHおよびR300-1240M-PHの超硬合金フライス加工インサートを調製した。インサートを以下のとおり被覆した:
0.5μmの等軸晶のTiCxyの第1層(推定値x=0.95およびy=0.05に相当する高窒素含量)、その次に
温度885〜850℃で、炭素/窒素源としてCH3CNを使用するMTCVD技術を利用して、4μmの厚さの柱状粒子を持つTi(C,N)層。同じ被覆サイクルの間の次の工程において、EP-A-523021に開示のとおり温度970℃および0.4%のH2Sドーパント濃度を利用して1.0μmの厚さのAl23層を堆積させた。公知のCVD技術により薄い0.5μmのTiN層をその上に堆積させた。XRD測定により、Al23層が100%κ相から成ることが示された。
【0035】
実施例3
実施例1および2の異なるスタイルのインサートを切削試験で比較した。
操作1: 正面フライス加工、コロミル245
被加工材: 鋼板
材料: 非合金鋼、200HB
切削速度: 350m/分
送り速度/歯: 0.45mm/歯
軸方向切込み深さ: 2.0mm
半径方向切込み深さ: 95mm
インサートスタイル: R245-12T3M-PH
カッター直径: 250mm
備考:カッター中に1インサート、乾式機械加工
工具寿命の基準は逃げ面摩耗および化学摩耗であった。より良好な耐摩耗性および化学摩耗に対するより良好な耐性の組み合わせが、工具寿命の著しい上昇をもたらした。
結果: 工具寿命、切削時間(分)
本発明A: 36
従来技術B: 19
化学摩耗に対する耐性の向上が、図2の従来技術Bに比べて図1の本発明Aで明らかに示されている。図1の本発明Aでは刃先が無傷であるが、図2の従来技術Bでは櫛状亀裂のあるクレータが発生した。
操作2: 正面フライス加工、コロミル245
被加工材: 鋼板
材料: 非合金鋼、200HB
切削速度: 300m/分
送り速度/歯: 0.35mm/歯
軸方向切込み深さ: 1.0〜3.5mm
半径方向切込み深さ: 120mm
インサートスタイル: R245-12T3M-PH
カッター直径: 160mm
備考:カッター中に10のインサート、乾式機械加工
工具寿命の基準は逃げ面摩耗および刃先の靭性であった。より良好な耐摩耗性およびより良好な刃先の靭性の組み合わせが、工具寿命の著しい上昇をもたらした。
結果: 工具寿命、切削時間(分)
本発明A: 70
従来技術B: 31
刃先の靭性の向上が、図4の従来技術Bに比べて図3の本発明Aで明らかに示されている。図3の本発明Aでは刃先が無傷であるが、図4の従来技術Bでは櫛状亀裂が発生し、刃先が破壊された。
操作3: 正面フライス加工、コロミル210
被加工材: 鋼板
材料: 高合金鋼、240HB
切削速度: 142m/分
送り速度/歯: 1.33mm/歯
軸方向切込み深さ: 1.5mm
半径方向切込み深さ: 76mm
インサートスタイル: R210-140512M-PM
カッター直径: 100mm
備考:カッター中に7のインサート、乾式機械加工
工具寿命の基準は逃げ面摩耗であった。良好な耐アブレシブ摩耗性の組み合わせが工具寿命の著しい上昇をもたらした。
結果: 工具寿命、切削時間(分)
本発明A: 90
従来技術B: 31
操作4: 正面フライス加工、コロミル245
被加工材: 鋼板
材料: 高合金鋼、230HB
切削速度: 350m/分
送り速度/歯: 0.40mm/歯
軸方向切込み深さ: 2.5mm
半径方向切込み深さ: 170mm
インサートスタイル: R245-12T3M-PH
カッター直径: 200mm
備考:カッター中に12のインサート、乾式機械加工
刃先の靭性、インサート上のチッピング挙動が工具寿命の基準であった。
【0036】
より良好な耐摩耗性およびより良好な刃先の靭性の組み合わせが工具寿命の著しい上昇をもたらした。
結果: 工具寿命、切削時間(分)
本発明A: 43
従来技術B: 17.2
操作5: 正面フライス加工、コロミル300
被加工材: 主継手
材料: 高合金鋼、330HB
切削速度: 263m/分
送り速度/歯: 0.25mm/歯
軸方向切込み深さ: 1.5mm
半径方向切込み深さ: 0〜125mm
インサートスタイル: R245-12T3M-PH
カッター直径: 125mm
備考:カッター中に8のインサート、乾式機械加工
工具寿命の基準、刃先靭性、チッピング。
【0037】
より良好な櫛状亀裂に対する耐性およびより良好な刃先の靭性の組み合わせが工具寿命の著しい上昇をもたらした。
結果: 工具寿命、切削時間(分)
本発明A: 32
従来技術B: 21
実施例3の操作1〜5は、実施例1のインサートが実施例2による従来技術インサートよりも性能が優れていることを明らかに示している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明によるサンプルインサートのクレータ摩耗パターンの倍率50倍での光学顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、正面フライス加工試験を施した時の従来技術によるインサートを示す。
【図3】図3は、本発明によるサンプルインサートの刃先靭性の違いの倍率50倍での光学顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、正面フライス加工試験を施した時の従来技術によるインサートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤または乾燥状態における、未加工の表面を有する、または有さない非合金、低合金および高合金鋼ならびに鋳鉄の機械加工のための切削工具フライス加工インサートであって、
前記切削工具フライス加工インサートが、
超硬合金ボディ、および
少なくとも部分的に前記ボディを覆っている被膜
を含んで成り、
前記超硬合金ボディが、8.1〜9.3重量%のCo、1.00〜1.45重量%のTaC、0.10〜0.50重量%のNbCおよび残部WCの組成を持ち、
保磁力が14.9〜16.7kA/mの範囲であり、CW比が0.80〜1.00未満であり、
前記被膜が7.5〜13.5μmの厚さであり、全厚さが3.0〜8.0μmの少なくとも3層のTiCxyz層を含み、
前記TiCxyz層が、
x+y=1、x≧0の組成を有する、前記超硬合金ボディに隣接する第1のTiCxyz層、
x>0.4、y>0.4および0≦z<0.1の組成を有する、第2のTiCxyz層、および
x+y+z≧1およびz>0の組成を有する、α−Al23層に隣接する針状粒子を有する第3のTiCxyz結合層
を含み、
前記α−Al23層が少なくともすくい面で最外層であり、前記α−Al23層の厚さが2.0〜6.0μmであり、前記α−Al23層の少なくとも一部が、ブラスト処理を施されて表面がブラストにより平滑化し粒子が平坦化していることを特徴とする切削工具フライス加工インサート。
【請求項2】
前記超硬合金が、8.3〜9.1重量%のCoおよび1.18〜1.28重量%のTaCおよび0.25〜0.35重量%のNbCおよび残部WCの組成を有し、15.3〜16.3kA/mの保磁力および0.81〜0.90のCW比を有することを特徴とする、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記逃げ面に0.1〜2.3μmの着色最上層を有することを特徴とする、請求項1に記載の切削工具インサート。
【請求項4】
前記着色層が、CVDまたはPVD技術により堆積したTiN、Ti(C,N)、TiC、ZrNおよび/またはHfNから成ることを特徴とする、請求項3に記載の切削工具インサート。
【請求項5】
前記着色層がCVD技術を利用して堆積したことを特徴とする、請求項4に記載の切削工具インサート。
【請求項6】
前記第1のTiCxyz層がx<0.2およびz=0の組成を有し、前記第2のTiCxyz層がz=0の組成を有し、前記第3のTiCxyz結合層がz>0.2およびx+y+z=1の組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の切削工具インサート。
【請求項7】
超硬合金ボディおよび被膜を含む切削インサートを製造する方法であって、以下の工程:
硬質成分およびバインダー相を形成する粉末の湿式混練、混練した混合物の所望の形状および大きさのボディへの圧縮および前記圧縮体の焼結を含む粉末冶金技術により超硬合金ボディを形成する超硬合金ボディ形成工程であって、
前記超硬合金ボディが、8.1〜9.3重量%のCo、1.00〜1.45重量%のTaC、0.10〜0.50重量%のNbCおよび残部WCの組成、14.9〜16.7kA/mの範囲の保磁力および0.80〜1.00未満のCW比を有する、
超硬合金ボディ形成工程、
前記超硬合金ボディの少なくとも一部を、7.5〜13.5μmの厚さの被膜で被覆する超硬合金ボディ被覆工程であって、
前記被膜が、少なくとも3層のTiCxyzを有する内部被膜および切削インサートの少なくともすくい面で平滑なα−Al23層を有する最外層を含み、
前記TiCxyz層の全厚さが3.0〜8.0μmであり、
前記被膜が、
TiCl4、H2およびN2から成る反応混合物を使用するCVD法を利用して堆積させた、x+y=1、x≧0の組成を有し、超硬合金に隣接する第1のTiCxyz層、
温度885〜850℃で、炭素/窒素源としてCH3CNを使用するMTCVD技術により堆積させた、x>0.4、y>0.4および0≦z<0.1の組成を有し、第2のTiCxyz層、および
TiCl4、H2およびN2から成る反応混合物を使用するCVD法により堆積させた、x+y+z≧1およびz>0の組成を有し、α−Al23層に隣接する針状粒子を有する第3のTiCxyz結合層、
を含んで成り、
前記α−Al23層が、CVD技術により堆積しており2.0〜6.0μmの厚さを有する
超硬合金ボディ被覆工程、および
粒子が平坦化して平滑になったα−Al23が露出されるように、前記インサートの少なくともすくい面にブラスト処理を施すブラスト処理工程、
を含んでなる切削インサートの製造方法。
【請求項8】
好ましくはTiN、Ti(C,N)、TiC、ZrNまたはHfNの、追加の0.1〜2.3μmの着色層を、α−Al23層の上に堆積させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記着色層が、ブラスト処理の前に、CVD技術により堆積されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ブラスト処理の後、追加の0.1〜2.3μmの着色最上層を逃げ面上に堆積させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記着色層が、TiN、Ti(C,N)、TiC、ZrNまたはHfNであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記追加の着色層がブラスト処理の前にCVD技術により堆積することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超硬合金ボディが、8.3〜9.1重量%のCo、1.18〜1.28重量%のTaC、0.25〜0.35重量%のNbCおよび残部WCの組成を持ち、保磁力が15.3〜16.3kA/mの範囲であり、CW比が0.81〜0.90であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のTiCxyz層がx<0.2およびz=0の組成を有し、前記第2のTiCxyz層がz=0の組成を有し、前記第3のTiCxyz結合層がz>0.2およびx+y+z=1の組成を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
鋳肌、鍛造肌、熱間または冷間圧延肌または予備切削表面などの未加工の表面を有する非合金、低合金および高合金鋼ならびに鋳鉄の、以下による切削速度および送り速度の安定条件下での乾式および湿式フライス加工への請求項1〜6に記載のインサートの使用:
切込み角90°でのフライス加工:
切削速度:25〜400m/分、および送り速度:0.04〜0.4mm/歯
正面フライス加工(切込み角、45〜75°):
切削速度:25〜600m/分、および送り速度:0.05〜0.7mm/歯
高送り速度で丸形インサートを用いたフライス加工
切削速度:25〜600m/分および送り速度:0.05〜3.0mm/歯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−12167(P2009−12167A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−143157(P2008−143157)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】