説明

装着型顕微鏡システム

【課題】被観察者が運動時であっても血管や血球像が高分解能に観察可能で、かつ観察対象物を焦点深度内に容易に保持できる小型、軽量な装着型顕微鏡システムを提供すること。
【解決手段】可動ユニット110は、血管131に対して単一波長の光を照射する固体光源111と、少なくとも対物レンズ112と、血管131の像を取り込むイメージセンサ113とを備える撮像手段114と、撮像手段114を、血管131を含む被観察者130の身体の一部に対して一体的に押圧固定するための装着手段117と、血管131が対物レンズ112の焦点深度内に位置するように少なくとも対物レンズ112を光軸に沿った方向に移動するためのピント合わせ手段115とを有し、固定ユニット140は、画像信号を生成する信号処理手段142と、画像信号に応じて画像表示を行う表示手段143とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内部の血管像などを光学的に観察する生体観察機器、特に装着型顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の血管に流れる血液を非侵襲で光学的に計測し、血液検査に必要な血球成分を分析する装置が提案されている。図12はこのような従来の装置構成例を示している(例えば、特許文献1参照)。図12では、被観察者の指を観察系に固定して爪郭部の毛細血管を観察している。
【0003】
被観察者は、指75を支持台71と透明板66との間に挿入する。スプリング72a、72bは、適度な圧力で透明板66を指75の爪郭部に押圧する。これにより、爪郭部の血管内の検出領域がCCD40aの視野の中に固定される。この結果、指75の検出領域のブレが防止される。
【0004】
また、CCD40aのピントの調整は、微動素子74によりレンズ38bを光軸方向(矢印a又はb方向)に移動させることにより行うことができる。さらに、皮膚面からの乱反射を防止し、より鮮明な画像を得るために、液状またはゲル状の光媒体を皮膚面と透明板66との間に介在させる。
【0005】
照明方法は、対物レンズ38bの外側から照射する暗視野照明を使用している。照明光のうち皮膚面で反射された光は、対物レンズ38bの外側に反射され、CCD40aには到達しない。これにより、CCD40aで撮像される画像のコントラストを向上できる。
【0006】
一般に、in vivo(生体内で)で毛細血管が観察しやすい人体部位は、白目、網膜(眼底)、口唇、手足爪郭である。特に白目、網膜では、血管がむき出しに近いため、クリアな像が得られる。しかしながら、目に照明光を当てる抵抗感と、頭全体を固定する拘束感がある。一方、手爪郭部は皮膚面の散乱の影響でやや不鮮明な像となってしまうが、手指先であり計測することへの抵抗感や拘束感は、白目、網膜に比較して遥かに少ない。このため、白目、網膜で得られるような鮮明な血管・血球像を、手爪郭部で得ることができれば、利用場面は遥かに増える。
【0007】
【特許文献1】特許第3566756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術の装置は、以下のような問題を有している。第1の問題は、従来技術の装置は、据え置き型で、かつ大型であるため、被観察者は観察中において自由に動き回ることが出来ず、使い勝手が悪いことである。最近、活動中の生体信号を計測することの重要さが叫ばれている。従来技術のような据え置き型の装置では、被観察者が運動中の血流状態を、安定して高精細に観察することはできない。
【0009】
また、第2の問題は、観察対象物、例えば指先を焦点深度以内に保持し続けることが困難な点である。直径8μm、厚さ1〜2.5μmの円盤状の赤血球1個をクリアに解像するとき、必要な焦点深度は数μm程度である。そして、被観察者の指先の位置を、数μm程度の範囲内において長時間保持することは苦痛である。まして、幼い子供を観察対象としたとき、長時間にわたって指先等の位置を一定範囲内に保持するのは極めて困難である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被観察者が例えば運動時であっても血管や血球像が高分解能に観察可能で、かつ観察対象物を焦点深度内に容易に保持できる小型、軽量な装着型顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも可動ユニットと、可動ユニットとは別体に設けられている固定ユニットとを備え、可動ユニットは、観察対象物に対して、単一波長の光を照射する少なくとも一つの固体光源と、少なくとも対物レンズと、観察対象物の像を取り込むイメージセンサとを備える撮像手段と、撮像手段を、観察対象物を含む被観察者の身体の一部に対して一体的に押圧固定するための装着手段と、観察対象物が対物レンズの焦点深度内に位置するように少なくとも対物レンズを光軸に沿った方向に移動するためのピント合わせ手段と、を有し、固定ユニットは、撮像手段からの画像データに応じて所定の画像表示を行う画像信号を生成する信号処理手段と、信号処理手段からの画像信号に応じて画像表示を行う表示手段と、を有することを特徴とする装着型顕微鏡システムを提供できる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、可動ユニットと固定ユニットとは、有線で接続されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、可動ユニットと有線で接続された駆動ユニットを備え、駆動ユニットは、少なくとも撮像手段からの画像データを固定ユニットに対して送信するための通信部と、可動ユニットへ電力を供給するためのバッテリ部と、を有し、固定ユニットは、少なくとも駆動ユニットからの画像データを受信するための通信部を有することが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、可動ユニットと有線で接続された駆動ユニットを備え、駆動ユニットは、撮像手段からの画像データを記憶するための記憶部と、可動ユニットへ電力を供給するためのバッテリ部と、を有し、固定ユニットは、記憶部に記憶された画像データを読み取るための画像データ読み取り部を有することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、観察対象物と対物レンズとの間に、所定の屈折率を有する油浸用オイルを充填したことが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、平行平板を観察対象物に密着するように対物レンズと観察対象物との間に配置し、平行平板と観察対象物との間に油浸用オイルを充填したことが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、固体光源は、側斜照明光源として、青色と、青緑色と、緑色と、黄緑色と、黄色との少なくともいずれか一つの波長領域の発光ダイオードを使用したことが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、固体光源は、透過照明光源として、赤色と、近赤外色との少なくともいずれか一つの波長領域のレーザーダイオードを使用したことが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、固定ユニット側から可動ユニットに対して、少なくともピント合わせ手段の駆動用信号を出力することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る装着型顕微鏡では、可動ユニットと固定ユニットとが別体に構成されている。そして、被観察者は、可動ユニットを身体の一部に装着する。可動ユニット中の装着手段は、撮像手段を被観察者の身体の一部に一体的に押圧固定する。これにより、被観察者が動いたとき、例えば運動中のときでも血流状態を安定して観察できる。また、可動ユニット中のピント合わせ手段は、観察対象物が対物レンズの焦点深度内に位置するように、少なくとも対物レンズを光軸に沿った方向に移動する。これにより、長時間にわたって指先等の観察対象物の位置を一定範囲内に保持できる。この結果、被観察者が運動時であっても血管や血球像が高分解能に観察可能で、かつ観察対象物を焦点深度内に容易に保持できる小型、軽量な装着型顕微鏡システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る装着型顕微鏡システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
まず、本実施例において、良好な画像を得るための諸条件について説明し、次に本実施例に係る装着型顕微鏡システムの構成について説明する。
【0023】
(分解能の向上)
最初に、本実施例において、1個の赤血球まで分解するに至った撮影条件に関して述べる。そして、そこから得られた「鮮明さ」と「分解能」を両立させる方策に関して考察する。
【0024】
(オイル塗布効果)
まず、皮膚表面からの乱反射が生じていると、いかなる観察系を用いても皮膚下の血管像を鮮明に見ることはできなかった。この理由は、単純なフレネル反射ではない複雑な乱反射系が皮膚表面には存在し、多量の反射光が戻ってきているためと考えられる。皮膚表面に近い屈折率の液体を塗布すれば、皮膚下の血管像が見えてくる。皮膚表面からの乱反射光がイメージセンサに入射するのを防止し、結像に寄与する光量が増えて血管像が鮮明になってくると考えられる。近い屈折率の液体をすりガラス面に塗布すると、向こうが透けて見えてくるのと現象が似ている。
【0025】
(照射光源と照明方法)
また、本願の発明者らは、NA0.4の油浸対物レンズを用い、皮膚表面との間にイマルジョンオイルを充填させて比較実験を行った。青色発光ダイオード(以下、適宜「LED」という)(475nm)、緑色LED(525nm)、赤色LED(630nm)の3種類の光源と、同軸落射照明及び側射(暗視野)照明とを組み合わせた。この結果、青色LEDまたは緑色LEDと側射照明の組み合わせで、鮮明な血管像が得られた。
【0026】
血管像は黒っぽく写っており、かつ吸収が大きい青色と緑色の照明の際に血管像が鮮明であった。つまり、得られた血管像は赤血球中のヘモグロビンによる吸収像である。吸収が小さい赤色では、殆ど血管像は見えなかった。一方、側射照明の方が同軸落射照明よりも遥かに鮮明な血管像が得られた。同軸落射照明の場合、図1に示す皮膚多層構造からの散乱反射光がまともに撮像素子に入射して、コントラストを劣化させていると考えられる。この実験から、単一波長による反射式の照明を前提とすれば、ヘモグロビンによる吸収が大きい波長の光源を使用して、迷光を抑制できる暗視野照明が良いことがわかる。
【0027】
(境界面マッチング)
吸収の大きい緑色LEDを用いた側射照明で、以下の(a)、(b)、(c)の組み合わせによる比較実験を行った。
(a)金属対物レンズと空気(屈折率1.0)
(b)水浸対物レンズと蒸留水(屈折率1.33)
(c)油浸対物レンズとオイル(屈折率1.52)
【0028】
この結果、(c)の組み合わせで最も良好な血管像が得られた。(a)では血管像は殆ど見えなかったが、指表面にオイルを少量垂らすだけで内部の血管が見えてくる。次に、ピントを皮膚部と血管部に合わせた時の比較を、(b)と(c)で行った。(b)では皮膚面は見えるが、(c)では皮膚面は殆ど見えなくなる。血管像は(c)の方が(b)よりも鮮明に見えた。つまり、皮膚表面との屈折率マッチングを取ることが、良好な画像を得るための第一の条件と言える。
【0029】
(皮膚表面から血管までの距離)
人間の手の薬指と小指の爪郭部における皮膚表面から毛細血管までの距離を実測してみた。母数(サンプル数)は不十分ではあるものの、皮膚表面から毛細血管までは、略80〜100μmである。
【0030】
(考察)
図1は、皮膚下を光学的に顕微鏡観察するときの模式な構成を示している。まず、皮膚構造について説明する。皮膚表面を形成するのは表皮であり、その直下に毛細血管などの微小循環が伸びてきている。表皮の最外層が角質層であり、その微視的内部構造は、直接空気に接する皮脂膜(屈折率1.5)の下に、板状の角質細胞(屈折率1.42)と細胞間脂質(屈折率1.33)とが交互に層状重積する(詳細に関しては、以下の文献を参照。石井,安田,横井,鳥脇,“表面の微視的構造に注目した皮膚の光反射モデル”,NICOGRAPH’91論文集,pp.68−76,1991)。
【0031】
次に、観察光学系について説明する。屈折率1.52のオイルを充填して屈折率1.5の皮脂膜からの乱反射を防止すると、皮膚表面が透けて血管像を見ることができる。加えて、暗視野照明すると、他の多層微細構造などからの散乱反射も防止できる。この2つの対策によって結像に有効な光線を多量に撮像素子に入射させることができ、鮮明な血管像を得ることができた。
【0032】
ここで、生体細胞の屈折率は1.35程度である。屈折率1.52で設計された油浸対物レンズを通過する光線は、軸上と軸外の間で結像点にズレが生じて、収差が発生してしまう。特に、分解能を上げるためにNAを大きくした場合に問題となってくる。
【0033】
対物レンズの先端が観察対象物に接触するまでの距離fWD(フリー・ワーキング・ディスタンス:自由作動距離)の選び方によって発生収差の状況は異なる。fWDが皮膚表面から血管までの距離80〜100μmに対して十分に大きければ、屈折率1.52に対して収差補正された油浸対物レンズを使うのが有利である。一方、fWDが皮膚表面から血管までの距離80〜100μmに対して十分に小さければ、屈折率1.33に対して収差補正された水浸対物レンズを使うのが有利である。
【0034】
仮に、fWDがゼロで設計された水浸対物レンズであれば、オイルは皮膚面の微細な凹凸は埋めるが実質厚みがゼロとなる。そして、皮膚面を押圧した状態で皮膚下の血管にピントが合うので、理論上は略無収差となる。しかし、サブ・ミリ径の対物レンズとなってしまうので、加工技術の困難さが伴う。
【0035】
(焦点ブレの防止)
次に、焦点ブレを防止する方策に関して述べる。固定された顕微鏡に、生体の指を固定させる従来の方式では、焦点ブレに関して限界がある。顕微鏡と指とが相対的に固定されていると焦点ブレは生じない。このため、発想を逆転させて、生体の一部である指に顕微鏡を装着可能にして取り付ければ良い。従来では考えられなかったほどの小型で軽量な顕微鏡を実現しなければならないが、これが実現できれば、以下の問題点(1)、(2)、(3)が一挙に解決できる。
(1)観察中に肉体が拘束され、自由に動き回ることが出来ないこと。
(2)観察対象物を焦点深度以内に保持し続けることが困難であること。
(3)外光の影響を遮断するために、暗室中の観測が望ましい場面が多いこと。特に超高速度撮影に由来する微弱光撮影の場合に、外光の問題は顕著になる。
【0036】
次に、例えば指輪のように指に固定できる、超小型の装着型顕微鏡システムについて説明する。
(設計例)
指先の爪郭部の毛細血管内を流れる血流の状況を、in vivo、かつ無侵襲で観察できる装着型顕微鏡システムの設計例について述べる。径8μm、厚さ1〜2.5μmの円盤形状の赤血球をクリアに解像するとき、1μm程度の分解能が必要となる。λ=480nmの青色光源を使用し、対物レンズは回折限界に近い性能が発揮できるとすれば、分解能≒λ/NAと表せるので、対物レンズに要求されるNAは0.48となる。標本と対物レンズの間の媒質を仮に空気とすれば、NA=n・sinθから、光軸と最外光束とが成す角θ=28.7°となる。また目安として、焦点深度≒λ/NAで表され、±2.1μm程度の焦点深度しかないことがわかる。
【0037】
次に、固体撮像素子で1μmを分解するための光学倍率を求める。ユニットセルサイズ8μm角のCCDを使用する場合を考える。径1μmΦの血球を2×2セルで捕らえて解像するとすれば、血球の1μmは、固体撮像素子の16μmに相当する。このため、16倍以上の光学倍率が必要となる。
【0038】
毛細血管の間隔は略100μmなので、光学倍率が16倍の時に隣接血管は、固体撮像素子上において1.6mm間隔で並んでいる。例えば、1/2型CCDを使用すれば、横長は6.4mmである。このため、視野内には縦方向に並ぶ4〜5本の毛細血管像が捉えられることになる。中央と両隣接の計3本の毛細血管まで回折限界性能で観察するとき、対物レンズに要求される無収差像高は0.1mmとなる。
【0039】
表1に、分解能1μmの対物レンズに要求される設計仕様の一例を掲げる。
(表1)
レンズ先端から観察血管までの距離=(0.1+fWD)mm
使用波長=480nm
NA=0.48
光学倍率=16倍
許容収差=像高0.1mm以内で回折限界内
物体側条件=以下(4)〜(7)に述べる。
【0040】
加工や取り扱いが容易となるように径が2mmΦ程度は確保できて、回折限界の分解能で血球撮像が可能な、新たな生体観察用の対物レンズ112の設計例を図2に示す。物体側に存在する物質が層構造であって、その厚みと屈折率がわかれば、対物レンズの収差補正設計はできる。
【0041】
例えば、物点から発せられた光線は、
(4)生体(平均屈折率:1.35、厚さ:0.1mm)
(5)オイル(屈折率:1.52、厚さ:0mm)
(6)平行平板(屈折率:1.52、厚さ:0.17)
(7)空気(屈折率:1、厚さ:1.23)
を順に通過して対物レンズに入射するとする。
【0042】
軸上から軸外までの全ての光線がイメージセンサ113上で一点に集まるように対物レンズ112の収差補正設計を行えば、この条件を満たす場合には回折限界の結像性能が得られる。
【0043】
(4)生体は、皮膚下0.1mmにピントを合わせた時に、軸上物点の半径0.1mm以内で、回折限界の分解能が得られる。ピントがずれるに従って、分解能は悪くなる。
(5)オイルは、生体と平行平板の間に挟まれ、平行平板が生体を軽く押圧するので、実質的な厚さはゼロとなる。従って、レンズ設計上は考慮されないが、皮膚面の微細凹凸を埋めて屈折率をマッチングさせ、不要な迷光の入射を防ぐ重要な役割を果たしている。
(6)平行平板は、屈折率や厚さは自由に選定できる。本実施例では、一般に顕微鏡観察において使用される標準カバーガラスを選定した。厚さは0.17mmであり、屈折率はオイルと同じ1.52で適合性が良い。
(7)空気の光路長1.23mmは、対物レンズ径を稼ぐためと、レンズ面で高い屈折力を得るために設定した。対物レンズ先端から物点までの距離z=1.5mmであれば、対物レンズの径は2mm程度になる。また、ここを空気層とすることにより、レンズ面での屈折力が高くなり、屈折力が弱い液浸より設計上の自由度が増すという利点がある。
【0044】
このような対物レンズは、1枚の非球面レンズや片面球面加工のセルフォックレンズなどで実現できる。また、この時のイメージセンサ113までの全長は、略30mm程度となる。加工や取り扱いを若干犠牲にして、対物レンズの径を2mmより小さくすれば、全長も30mmより短くできる。
【0045】
このような諸条件を具備する以下に述べる装着型顕微鏡システムにより、次のような作用効果を奏することができる。
・鮮明さと分解能を両立させることによって、回折限界に近い分解能が得られるようになる。また、生体顕微鏡を人体に装着するタイプにすることによって、新たに以下の効果が得られるようになる。
・観察対象物を焦点深度以内に維持し続けることが比較的容易に実現できること。
・例えば、運動時の血流画像観察のように比較的自由に動き回れるので、使い勝手が大幅に増すこと。
・撮像手段が超小型化されたことで、迷光進入を防ぐ構造が比較的容易に実現できること。
【0046】
(基本構成)
図3は、本実施例に係る装着型顕微鏡システム100の機能ブロック図を示している。また、装着型顕微鏡システム100は、可動ユニット110と、可動ユニット110とは別体に設けられている固定ユニット140と、さらに可動ユニット110と有線で接続された駆動ユニット120とを備えている。図4は、被観察者130が、本システムの可動ユニット110を手の指先に、駆動ユニット120を手首に装着している様子を示している。
【0047】
本構成では、生体顕微鏡を指先装着型にして、相対的な位置安定性を数ミクロン以内に抑えるために、装着部分の重量が10グラム以下、鏡枠高さは30mm以下を目安とした。回折限界の性能を犠牲にせず、そのような超小型、軽量な顕微鏡システムが実現できる設計例を示した。対物レンズは単波長仕様として極限まで枚数を減らし、径も2mm以下としている。照明系は発光ダイオードやレーザーダイオードのような半導体発光素子を用いている。後述する装着機構は、指先の背と腹を挟み込んでやや強めに圧着することで安定性を増すことができる。
【0048】
(構成概要)
まず、本システムの概要を説明してから、詳細な構成を述べる。左手薬指の先端に装着部材117aと装着部材117bから成る可動ユニット110が装着されている。装着部材117aの一部は円筒状に突出しており、爪郭部の毛細血管を観測する鏡筒を内部に収納する。鏡筒全体、或いは鏡筒内部に収納された対物レンズ112(図5参照)は光軸方向にスライド可能なように保持されており、焦点位置をサーチしてその位置に固定する。サーチ機構は手動式でも良いし、VCM(ボイスコイルモーター)、パルスモーター、圧電素子、超音波モータなどを使った電動式でも良い。電動式の場合には、ピントの鮮明さを最高に維持するように帰還をかけて、オートフォーカスとすることも出来る。
【0049】
可動ユニット110の先端部側はクリップ力の原動力となるバネ機構118を有しており、他方の端部側を開いて指先に挿入することで、矢印方向に押圧力Fで締まり、背と腹を圧着する(図5参照)。可動ユニット110の全体を回転させて見たい血管を探しながら、フォーカス方向へのスライド機構も併用して、観察した所望の血管像を固定する。
【0050】
圧着力を増したい場合には、他方の端部側に調整用ビスを用意して、装着部材117aと装着部材117bを閉めこむことも出来る。腕(手首)には、ボックス型の駆動ユニット120と一体化したベルトが巻きつけられて、例えばマジックテープ(登録商標)などで留められている。ボックスの中には後述するバッテリ部と通信回路などが収納されている。
【0051】
バッテリ部は有線の線路を通じて可動ユニット110に電力を供給する。通信回路は、机上の固定ユニット140側と無線でやり取りする映像信号やコントロール信号を、有線の線路を介して可動ユニット110と通信する機能を有している。
【0052】
可動ユニット110は、出来得る限り軽量であることが望ましい。照明光源用駆動回路などは駆動ユニット120側に収納するのが望ましい。また、机上には、通信部141と信号処理手段142と表示手段143とを内蔵した固定ユニット140が設置されている。駆動ユニット120とのやり取りはお互いの通信手段間で無線で行われる。駆動ユニット120側からは映像信号が送信される。また、机上の固定ユニット140側からはフォーカスコントロール信号などが送信される。
【0053】
このような構成をさらに詳細に説明する。可動ユニット110は、固体光源111と、撮像手段114と、装着手段117と、ピント合わせ手段115とを備えている。固体光源111は、例えば、LEDであり、観察対象物である血管131に対して、単一波長の光を照射する。撮像手段114は、少なくとも対物レンズ112と、血管131の像を取り込むイメージセンサ113とを備えている。
【0054】
また、装着手段117は、撮像手段114を、血管131を含む被観察者130の身体の一部に対して一体的に押圧固定する。さらに、ピント合わせ手段115は、血管131が対物レンズ112の焦点深度内に位置するように少なくとも対物レンズ112を光軸に沿った方向に移動する。
【0055】
また、駆動ユニット120は、通信部121と、バッテリ部122とを備えている。通信部121は、撮像手段114からの画像データを固定ユニット140に対して送信する。この通信は、上述のように無線により行なわれる。バッテリ部122は、可動ユニット110へ電力を供給する。なお、通信部121は、可動ユニット110に搭載する構成でも良い。
【0056】
また、固定ユニット140は、通信部141と、信号処理手段142と表示手段143とを備えている。通信部141は、駆動ユニット120からの画像データを受信する。信号処理手段142は、撮像手段114からの画像データに応じて所定の画像表示を行う画像信号を生成する。信号処理手段142としては、例えばCPUを用いることができる。表示手段143は、信号処理手段142からの画像信号に応じて画像表示を行う。表示手段143としては、CRTや液晶モニタのようなディスプレイ装置を用いることができる。
【0057】
駆動ユニット120と固定ユニット140とは、画像情報や通信情報が相互に送信及び受信可能に構成されている。可動ユニット110は、一定圧が保持できるバネ作用のある装着手段117を介して被観察者130の生体に一体的に固定維持される。これにより、皮膚132を通して血管131をピントのブレなく観察することができる。なお、外乱に対して安定を保つには、できるだけ小型・軽量が望ましい。
【0058】
また、被観察者130の生体に圧着固定される可動ユニット110をできるだけ軽くするために、ピントに関係する撮像手段114のみを残して、固体光源111は、近接する人体箇所に分離設置しても良い。
【0059】
固定ユニット140は、例えば机の上に設置されている。観察者は、ピントなどを遠隔操作しながら、可動ユニット110を装着した被観察者の血流状態を表示手段143で観察することができる。
【0060】
図5は、装着型顕微鏡システム100を指先に装着して、爪郭部の毛細血管を観察するときの指先近傍の拡大した構成を示している。
【0061】
装着手段117は、装着部材117aと装着部材117bとから成る。装着部材117a、117bは、スプリング118を介して結合され、指先の背側と腹側を挟み込むように構成されている。挟み込む面は平らでも良いが、接触面積を増やして安定させるために、指形状に合わせても良い。
【0062】
スプリング118は、挟み込んだ状態で平衡状態よりも伸びている。このため、指先を挟んだ状態では、縮もうとする力が働いている。これにより、指先の背側と腹側を適切な圧力で押圧して固定することができる。従って、装着部材117a、117bは、指に対して相対的に位置が固定される。なお、図示はしていないが、装着部材117a、117bの相対位置関係は、押圧方向のみに移動可能で、それ以外の方向や傾きに対しては制限されている。このため、両部材間にブレが生じにくく安定に保持される。
【0063】
指先の背側を押圧する装着部材117aは、その光軸方向にスライド可能なように鏡枠部材116を収納している。鏡枠部材116は、対物レンズ112とイメージセンサ113から構成される。ここで、観察対象物は、爪郭部の毛細血管131である。
【0064】
鏡枠部材116の一端には、ピント合わせ手段115、例えば駆動素子が取り付けられており、鏡枠部材116を光軸方向にスライドさせて、μm精度でピント調節を行うことができる。この時、対物レンズ112のみをスライドさせる構造でも良い。所定の血管を捜したい場合には、紙面と直行方向も含めた2軸駆動ができるよう構成することが望ましい。これにより、さらに、使い勝手が向上する。ピント合わせ手段115、例えば駆動素子として、例えばピエゾ素子や超音波モータなどを使うことができる。皮膚132の表面と対物レンズ112とが成す間隙部にはオイルOLが充填されている。これにより、皮膚132の表面からの散乱反射による迷光の入射を防止して、鮮明な血管像を得ることができる。この場合の対物レンズは油浸設計されているのが望ましい。
【0065】
光源111は、指先の腹側を押圧する装着部材117b側に搭載されて指の反対側を透過照明している。しかしながら、これに限らず、装着部材117aに搭載して側射照明しても良いし、鏡枠部材116に組み込んで偏軸落射照明しても良い。側射照明や偏軸落射照明の場合は赤血球による吸収が大きい青色〜黄色の光源を使うこと、透過照明の場合には吸収の小さい赤色〜近赤外光の光源を使うことが望ましい。
【0066】
また、血管像や余り分解能に拘らない血球像であれば、図5の観察系で十分である。さらに、回折限界に近い分解能を得たい時は、図2に示した光学系を装着型として採用すれば良い。平行平板PPを皮膚132の表面に押圧する機構を、図5の一部を置き換えた形で拡大させて図6に示す。
【0067】
図5と同じく、指先の背側を押圧する装着部材117aは、その光軸方向にスライドしてピント調節が可能なように、鏡枠部材116を収納している。図5と異なるのは、平行平板PPが押圧環119に固着され、スプリング118aの伸張力によって皮膚132の表面を押圧している点である。装着手段の押圧力Faよりも軽い押圧力Fbではあるが、皮膚132と平行平板PPに介在するオイルOLは実質的な厚みがゼロとなっている。
【0068】
ここで、装着する顕微鏡システムは、通常の光学顕微鏡に限定されず、例えば共焦点顕微鏡とすることもできる。このとき、単一モードファイバを導光と受光の両使いとし、直交するX軸、Y軸の2軸駆動のMEMSミラーを用いて超小型化した、マイクロ共焦点顕微鏡を用いることができる。光学プローブの大きさは、鏡筒外径が2.8mmで、長さが8mmなので、本システムの装着は十分に可能である。
【0069】
なお、本実施例において、駆動ユニット120と固定ユニット140とを無線ではなく、有線で接続する構成としても良い。
【実施例2】
【0070】
次に、本発明の実施例2に係る装着型顕微鏡システム200を図7を用いて説明する。実施例1では、駆動ユニット120と固定ユニット140とを無線で通信している。これに対して、本実施例では、駆動ユニット120と固定ユニット140との間のデータのやり取りを、メモリ等の記憶部を介した、いわゆるオフラインの形で行なっている点が異なる。実施例1と同一の部分には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
本実施例の駆動ユニット120は、記憶部123を備えている。記憶部123は、例えば、メモリスロットに抜き挿し可能なメモリカードやHDD(ハードディスクドライブ)などである。記憶部123は、撮像手段114からの画像データを記憶する。
【0072】
また、固定ユニット140は、画像データ読み取り部144を備えている。画像データ読み取り部144は、記憶部123に記憶された画像データを読み取る。例えば、観察者は、イメージセンサ113からの画像データを記憶した記憶部123をメモリスロットから抜いて、固定ユニット140のメモリスロットへ挿入する。これにより、オフラインの形で画像データを駆動ユニット120から固定ユニット140へ受け渡すことができる。
【実施例3】
【0073】
次に、本発明の実施例3に係る装着型顕微鏡システム300を図8を用いて説明する。本実施例では、駆動ユニットが無く、可動ユニット110と固定ユニットとが有線で接続されている。実施例1と同一の部分には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
固定ユニット140は、バッテリ部122と、信号処理手段142と、表示手段143とを備えている。バッテリ部122は、可動ユニット110へ電力を供給する。可動ユニット110からの画像データは、有線で固定ユニット140の信号処理手段142へ出力される。本実施例によれば、駆動ユニットを省略することで、さらに簡便な構成なシステムを実現できる。
【実施例4】
【0075】
次に、2波長で照明した画像間の差分を画像化した場合の実施例4を説明する。後述する技術を上記各実施例で説明した装着型顕微鏡システムに適用すると、毛細血管内の1個の赤血球が組織細胞に酸素供給を行う場面を、例え運動中であっても観察できる。
【0076】
図9は、酸素飽和度をパラメータとした時の、ヘモグロビンの吸収スペクトルを示している。
酸素飽和度=酸化ヘモグロビン/(酸化ヘモグロビン+還元ヘモグロビン)
で定義されている。
【0077】
図9において、(A)100%(いわゆる酸化ヘモグロビン)、(B)40%、(C)0%(いわゆる還元ヘモグロビン)における吸収スペクトルをそれぞれ示している。λ1=470nm(青色)と等吸収波長であるλ2=505nm(青緑色)を照明する2波長として選択する。λ1照明画像とλ2照明画像の間で差分処理を行うと、その差分量は吸収スペクトルのλ1とλ2を結ぶ傾き=酸素飽和度に対応する。
【0078】
差分量を、例えば擬似カラー表示すると、酸素飽和度が可視化できる。赤血球が毛細血管内で酸素を組織細胞に放出していく際に、1個の赤血球が酸素を含有する割合と、図9の吸収スペクトルは略同じであると考えられるから、1個の赤血球細胞が組織細胞と酸素を交換するプロセスが画像化できることになる。
【0079】
図10は、差分映像を生成する回路のブロック図である。発光回路401は、λ1=470nmとλ2=505nmの2波長発光素子を交番に発光させる信号を出力する。固体光源111は、生体の皮膚下にある毛細血管131を側面から暗視野照明する。
【0080】
吸収像は、対物レンズ112とイメージセンサ113とで撮像され、フレームメモリ402に蓄積される。
【0081】
フレームメモリ402から出力された画像は、切替回路403によってλ1照明画像蓄積404aとλ2照明画像蓄積404bとに振り分けられる。差動増幅器405aは、λ1照明画像とλ2照明画像とを差分演算して、X信号を出力する。また、λ2照明画像は、バッファ回路405bを経由して等吸収波長であるゆえの基準信号Yを出力する。また、割り算器406によりX/Yの演算処理された差分信号は、基準信号Yによってノーマライズ(正規化)されており、光量変動などの影響を受けない。
【0082】
X/Y信号は、表示装置部143に入力され、例えば擬似カラーなどでTVモニタに表示される。撮像系が毛細血管内の赤血球1個までを分解していれば、酸素交換のプロセスが可視化できる。
【0083】
また、上記各実施例のように、本システムを人体装着型にするには、少なくとも対物レンズ112とイメージセンサ113から成る撮像手段114を生体(人体)に装着すればよい。装着型に使用する対物レンズは、枚数を大きく低減するために特別な色収差補正は施されていない。2波長を選ぶ際に、2波長間があまり離れていないように設定することが必要となる。
【0084】
また、2波長照明による差分映像を生成する際に、2波長照明間に空間的・時間的な強度ムラがあればノイズとなってしまう。図11に2波長均一照明を実現させるための照明光学系を示す。
【0085】
λ1光源111aを出射した光束はコリメータCLaによって平行光束に変換される。λ2光源111bを出射した光束はコリメータCLbによって平行光束に変換される。両平行光束はビームスプリッタBSで互いの透過光と反射光同士が重ね合わされて、2波長の均一照明光束が生成される。
【0086】
図11において、λ1透過光とλ2反射光とが重ね合わされて、生体へ照射されている。なお、ビームスプリッタBSを出射した後にコリメータ1枚のみを設置しても同様の効果は得られる。
【0087】
反射型の照明用光源として、ヘモグロビンの吸収が大きい青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色の発光ダイオードを用いる。差分映像を得る場合には、λ1光源111aとして470nmの青色発光ダイオードを、λ2光源111bとして505nmの青緑色発光ダイオードを用いる。また、偏光特性を持たない半透過コートが施されたビームスプリッタBSを用いる。これにより、光量は半分損失するが、側射照明によるコントラストの良い吸収像が得られる。
【0088】
また、透過型の照明用光源として、生体を透過する赤色や近赤外光を発するレーザダイオードを用いる。差分映像を得る場合には、λ1光源111aとして780nmのレーザーダイオードを、λ2光源111bとして830nmのレーザーダイオードを使用する。さらに、偏光膜がコーティングされたビームスプリッタBSを用いる。レーザーダイオードから出射される直線偏光の向きを、λ1光源111aでは紙面内振動、λ2光源111bでは紙面垂直振動とすれば、重なり合う照明光は光量損失なく有効に利用できる。また、本光学系を図5に示すような透過型光源111に用いると、指の腹側から発せられて背側に到達した光束は、途中で強い散乱を受けるので、空間的な強度分布は更に均一化できる。なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形例をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明に係る装着型顕微鏡システムは、例えば、被観察者が運動中の場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】皮膚下を光学的に顕微鏡観察する際の模式的な構成を示す図である。
【図2】本発明における対物レンズの設計例と対物レンズ近傍の構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1に係る装着型顕微鏡システムの機能ブロック図である。
【図4】実施例1の装着型顕微鏡システムを使用している状態を示す図である。
【図5】実施例1において指先の近傍の構成を拡大して示す図である。
【図6】実施例1において平行平板を皮膚表面に押圧する場合の対物レンズ近傍の構成を拡大して示す図である。
【図7】実施例2に係る装着型顕微鏡システムの機能ブロック図である。
【図8】実施例3に係る装着型顕微鏡システムの機能ブロック図である。
【図9】ヘモグロビンの吸収スペクトルを示す図である。
【図10】実施例4において差分映像を生成する回路構成を示す図である。
【図11】実施例4において2波長均一照明を生成する照明光学系を示す図である。
【図12】従来技術の観察装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
100 装着型顕微鏡システム
110 可動ユニット
111、111a、111b 固体光源
112 対物レンズ
113 イメージセンサ
114 撮像手段
115 駆動素子
116 鏡枠部材
117a、117b 装着部材
118 スプリング
119 押圧環
120 駆動ユニット
121 通信部
122 バッテリ部
123 記憶部
130 被観察者
131 血管
132 皮膚
133 爪
140 固定ユニット
141 通信部
142 信号処理手段
143 表示部
144 画像データ読み取り部
200 装着型顕微鏡システム
300 装着型顕微鏡システム
400 装着型顕微鏡システム
401 発光回路
402 フレームメモリ
403 切替回路
404a、404b 照明画像蓄積部
405a 差動増幅器
405b バッファ回路
406 割り算器
BS ビームスプリッタ
CLa、CLb コリメータ
OL オイル
PP 平行平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可動ユニットと、前記可動ユニットとは別体に設けられている固定ユニットとを備え、
前記可動ユニットは、
観察対象物に対して、単一波長の光を照射する少なくとも一つの固体光源と、
少なくとも対物レンズと、前記観察対象物の像を取り込むイメージセンサとを備える撮像手段と、
前記撮像手段を、前記観察対象物を含む被観察者の身体の一部に対して一体的に押圧固定するための装着手段と、
前記観察対象物が前記対物レンズの焦点深度内に位置するように少なくとも前記対物レンズを光軸に沿った方向に移動するためのピント合わせ手段と、を有し、
前記固定ユニットは、
前記撮像手段からの画像データに応じて所定の画像表示を行う画像信号を生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの前記画像信号に応じて画像表示を行う表示手段と、を有することを特徴とする装着型顕微鏡システム。
【請求項2】
前記可動ユニットと前記固定ユニットとは、有線で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項3】
さらに、前記可動ユニットと有線で接続された駆動ユニットを備え、
前記駆動ユニットは、
少なくとも前記撮像手段からの前記画像データを前記固定ユニットに対して送信するための通信部と、
前記可動ユニットへ電力を供給するためのバッテリ部と、を有し、
前記固定ユニットは、少なくとも前記駆動ユニットからの前記画像データを受信するための通信部を有することを特徴とする請求項1に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項4】
さらに、前記可動ユニットと有線で接続された駆動ユニットを備え、
前記駆動ユニットは、
前記撮像手段からの前記画像データを記憶するための記憶部と、
前記可動ユニットへ電力を供給するためのバッテリ部と、を有し、
前記固定ユニットは、
前記記憶部に記憶された前記画像データを読み取るための画像データ読み取り部を有することを特徴とする請求項1に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項5】
前記観察対象物と前記対物レンズとの間に、所定の屈折率を有する油浸用オイルを充填したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項6】
平行平板を前記観察対象物に密着するように前記対物レンズと前記観察対象物との間に配置し、
前記平行平板と前記観察対象物との間に前記油浸用オイルを充填したことを特徴とする請求項5に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項7】
前記固体光源は、側斜照明光源として、青色と、青緑色と、緑色と、黄緑色と、黄色との少なくともいずれか一つの波長領域の発光ダイオードを使用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項8】
前記固体光源は、透過照明光源として、赤色と、近赤外色との少なくともいずれか一つの波長領域のレーザーダイオードを使用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装着型顕微鏡システム。
【請求項9】
前記固定ユニット側から前記可動ユニットに対して、少なくとも前記ピント合わせ手段の駆動用信号を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装着型顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−54483(P2007−54483A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245736(P2005−245736)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(505199773)特定非営利活動法人健康情報推進機構 (2)
【Fターム(参考)】