説明

複合フランジ、フランジを組み込むダクト及びフランジの製造方法

複合材料で作られるフランジ(1)、フランジ(1)の製造方法及びフランジ(1)を形成するためのマンドレル(3)を提供する。フランジ(1)は、実質的に三角形の断面を有する湾曲した中空部材を有する。フランジ(1)の製造方法は、複合材料を湾曲したマンドレル(3)の外側表面に適用する。マンドレル(3)は、湾曲され、中実の三角形の断面を有している。製造方法は、断面が実質的に三角形で、湾曲した中空部材を有するフランジ(1)を生成する複合材料を硬化する工程も含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料で作られたフランジに関する。特に、本発明は、湾曲し、且つ、実質的に三角形の断面を有し、しかも複合材料で作られたフランジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フランジは、例えば、パイプ等のような金属の中空構造上に、当該2つ金属の中空構造を接合するために設けられる。従来のフランジの例としては、それらを互いに連結するためのパイプ及びシャフトの端に形成された円形状のリムを挙げることができる。
【0003】
複合材料は、より軽量であること、疲労又は損傷抵抗の改善、耐食性の改善及び無視できる熱膨張等の改善された特性を提供するため、最近では、複合材料は、多くの航空機の構成部材にとって金属に代わってますます魅力的となった。製造に関し、複合材料から作られ、円形に形成されたリム状のフランジは、繊維配列の均一性がフランジにおける使用時の耐荷重性に関して重要であるため、製造工程が非常に複雑となり得る。
【0004】
複合フランジを製造することにおける複雑さのため、そのような構成を必要とする航空機の構成部材は、一般的に金属から作られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面は、複合材料を含むフランジであって、フランジが実質的に三角形の断面を有する湾曲した中空部材を備えているフランジを提供することである。
【0006】
一実施形態において、フランジは、三角形の断面を有し、複合構造と一体不可分の部分として機能するように当該構造に取り付けられ得る構造を提供する複合材料から作られる。三角形の断面は、局所化された負荷を構造に効率的に伝達することによって軸の偏荷重に耐えることができる構造を提供することができる。三角形に形成されたフランジにより、複合構造は、円形に形成されたリム状のフランジと同様に、互いを又は周囲の構成要素と接合することができる。
【0007】
フランジは、実質的に直角三角形である断面を有し、三角形の第1辺がフランジの湾曲面により定義され、且つ、対応する湾曲構造に取り付け可能であり、三角形の第2辺が第1辺に実質的に垂直であってもよい。第1辺に実質的に垂直な三角形の第2辺は、2つの構造を互いに連結するための表面を設けるために取り付けられた構造の外周部から突出するように構成されてもよい。
【0008】
湾曲したフランジは閉じた形状の一部、例えば、円又は楕円の一部として定義してもよい。2以上の湾曲したフランジ部材は、閉じた形状を形成するために互いに接合されてもよい。本発明に係るフランジの例は、通路のような開かれた構造に接合されてもよいし、パイプ等のような閉じた構造に接合されてもよい。
【0009】
断面において、三角形のフランジは閉じた形状を有している。従って、2つの構成部材又は構造の相互接続を容易にするために、フランジは、三角形の取り付け側が2つの構成部材又は構造が接合された状態で容易にアクセス可能なように、三角形の第3辺(斜辺側面)上にアクセスホールを有してもよい。一実施形態において、アクセスホールは、五角形状であり、五角形の各辺が積層構造における繊維配向に沿っており、その形状はフランジの品質にほとんど又は全く影響を与えないものであってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、フランジは、複合材料で作られたダクトに取り付けられる。従って、ダクトは、他のダクト又は他の構造部材と連結することができる。ダクト、例えば、エンジンケーシングは、フランジと同じ複合材料から作られていてもよい。これに代えて、ダクトは、フランジとは異なる複合材料で作られていてもよい。実施形態の一例において、ダクト及びフランジは、実質的に熱的及び化学的に互換性のある複合材料で作られる。
【0011】
ダクトは、湾曲した外周部を有する開水路であってもよいし、湾曲した外周部を有する閉じた形状、例えば、円又は楕円等であってもよい。1又は複数のフランジは、ダクトの一端又は両端に取り付けられてもよい。
【0012】
本発明の第2の側面は、複合材料を含むフランジの製造方法であって、複合材料を実質的に三角形の断面を有する湾曲したマンドレルに適用し、複合材料を硬化させて中空且つ三角形の断面を有する湾曲したフランジを生成するステップを有する方法を提供する。
【0013】
マンドレルは、フランジの中空部に残っていてもよいし、又は、除去可能とされてもよい。例えば、軽量の発泡体のマンドレルを使用することにより、マンドレルを中空部内に残すことができる。
【0014】
マンドレルが除去可能である場合、フランジの製造方法は、マンドレルを除去するステップをさらに含む。発泡体のマンドレルは可溶性であってもよい。この場合、発泡体のマンドレルを除去するには、マンドレルを溶かすことにより中空のフランジから除去される。
【0015】
この代わりに、好適なマンドレルは、除去のために解体されてもよい。このマンドレルは、複合材料が適用され得る中実の三角形の本体を提供するために互いに接合された2以上の部材から構成されてもよい。
【0016】
フランジの製造方法は、複合材料で作られたダクトの少なくとも一端にフランジを取り付けることを含んでもよい。2つの構成部材が互いに接合するように、ダクトを形成する材料の端面は、端面がフランジの側面に対して折り曲げられて生成されるように、突出されてもよい。材料がフランジと接触するように折り曲げられたときに、複合材料を突出させることは、繊維の破損又は歪みによる損傷の危険性を最小化する。
【0017】
また、フランジの表面によってダクトに接触しているフランジの表面により提供された三角形の断面の頂点と斜辺との接合部に、充填材が、当該接合部に存在し得るどんな間隙をも除去するために適用されてもよい。充填材は、ダクトに接触しているフランジの表面により提供された三角形の断面の頂点と斜辺との接合部の領域におけるねじれのため、複合繊維への損傷を低減させるのにも有効であろう。フランジをダクト、ダクトの一部、充填材及び斜辺の一部に接合するために、複合材料の層を設けて覆ってもよい。
【0018】
三角形のフランジとダクトとの接触面に存在するギャップが満たされるように、ダクトへのフランジの取り付けは、三角形の断面の湾曲面に好適な接着剤を適用することにより、さらに改良されてもよい。
【0019】
フランジ及びダクトの製造方法は、フランジがダクトと一体不可分になるように全体構造を送り込み、硬化させるステップをさらに有する。
【0020】
積層構造において、各層は、整列された繊維を含んでもよい。フランジ及びダクトを提供する積層プラスチックは、繊維が0度、90度、+45度及び/又は−45度で指向された層を含んでもよい。
【0021】
硬化ステップの後、三角形のフランジの斜辺上に、アクセスホールが機械加工されてもよい。アクセスホールにより、フランジの取り付け表面、すなわち、構造の一方を他方に取り付けるフランジの側面へのアクセスが可能となる。アクセスホールは、アクセスホールの側面が繊維に沿うように、五角形状であってもよい。上述したように配列された繊維を含む積層構造における五角形状のアクセスホールは、複合材料の品質にほとんど又は全く影響を与えないものであるべきである。
【0022】
本発明のさらなる側面は、第1の側面に従うフランジの製造方法に用いられるマンドレルに向けられたものである。マンドレルは、フランジの形状に対応して、湾曲され、且つ、三角形の断面を有する中実の構成部材であってもよい。
【0023】
マンドレルは、三角形の断面を提供するために互いに接合された2以上の部材を有していてもよい。有利なことに、マンドレルを構成する部材は、フランジの中空部内にあるときに、それらが除去され得るように、解体可能である。一実施形態において、マンドレルは、フランジから除去するために、互いに対して摺動させることにより分離する留め継ぎ表面(mitred surfaces)を有する2つの分割部を備えている。これに代えて、マンドレルは、互いに接合して中実の三角形の断面を形成する複数のモザイク状片を有し、三角形のフランジ内にある間に、除去のために解体され得ることとしてもよい。
【0024】
マンドレルは、当該マンドレルの三角形の断面を構成する部材の端に固定され得る1以上のエンドプレートを含んでもよい。エンドプレートは、マンドレルの部材が互いに対して移動したり、フランジの製造中に分離したりすることを保護するのに用いられ得る。製造中のマンドレルの移動は、結果としてフランジを構成する層内の不連続性をもたらすかもしれない。どんな不連続性も使用中のフランジの強度及び品質に悪影響を与えるかもしれない。
【0025】
例えば、解体可能なマンドレルは、例えば、金属、例えば、INVAR(TM)で作られてもよい。好ましくは、マンドレルの材質は、フランジが形成され、硬化する温度により影響を受けない特性を有している。
【0026】
フランジからマンドレルを容易に除去するために、マンドレルは、剥離剤により被覆されてもよいし、これに加えて又はこれに代えて、マンドレルは、低摩擦材(例えば、PTFE)により被覆されてもよい。
【0027】
本発明の様々な側面は添付の独立請求項に示されているが、本発明のその他の側面は、添付の請求項に明確に示された単一の組み合わせのみならず、実施形態の記述、及び/又は、独立請求項の特徴を備えた添付の従属請求項からの特徴をどのように組み合せたものをも含むものである。
【0028】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下に記述されるが、これは一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一例の実施形態を形成するフランジ部材の斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1の3つのフランジ部材が互いに接合された状態を示す概略図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのフランジの部分断面図である。
【図3】図3は、図1のフランジを生成するためのマンドレルに適用されるマンドレル及び複合材料を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、図1のフランジを作るために好適なマンドレルの斜視図である。
【図4B】図4Bは、マンドレルに固定されたエンドプレートを示す図4Aのマンドレルの端面図である。
【図5A】図5Aは、複合ダクト及び複合フランジが互いに接合された状態の斜視図である。
【図5B】図5Bは、筒状構造に複合フランジを取り付ける方法を示す模式図である。
【図5C】図5Cは、筒状構造に複合フランジを取り付ける方法を示す模式図である。
【図5D】図5Dは、筒状構造に複合フランジを取り付ける方法を示す模式図である。
【図5E】図5Eは、筒状構造に複合フランジを取り付ける方法を示す模式図である。
【図5F】図5Fは、筒状構造に複合フランジを取り付ける方法を示す模式図である。
【図6】図6は、筒状構造に取り付けられたフランジ及びフランジに機械加工されたアクセスホールを含む筒状構造の部分斜視図である。
【図7】図7は、2機のエンジンを備えた航空機を示す概略図である。
【図8】図8は、航空機のエンジンのための2つのハウジング構成部材を示す概略図である。
【図9】図9は、それぞれのフランジで接合された2つの部材を示す概略図である。
【図10】図10は、フランジの2つの部材の接合を詳細に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は様々な変更及び代替形態をとり得る余地があり、特定の実施形態が、図面に一例として示されており、ここに詳細に説明される。しかしながら、図面及び詳細な説明に記載された事項が、本発明を限定するものではなく、本発明が請求の範囲内に含まれる全ての変更、均等物、及び代替物を含むことは理解されるべきである。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係るフランジ1を提供する中空の湾曲構造の斜視図を示す。フランジ1は、対応する形状の通路又は容器構造、例えば、エンジンケーシングに、取り付けられるような湾曲表面を有している。フランジ1は、複合材料で作られている。この特定の例において、フランジは、航空機アプリケーションにおいて使用するために、炭素繊維強化複合材料で作られている。
【0032】
図2Aには、閉じた円を形成するために互いに接合された3つのフランジ部材1が例示されている。この特定の例において、各フランジ部材1は、円の1/3を定義する。他の例においては、各フランジ部材が湾曲構造の他の割合、例えば湾曲構造の1/4又は湾曲構造の1/4と1/3との間のその他の割合、あるいは、それ以外の割合を構成してもよいことは理解されるだろう。図2Aは湾曲構造の略等しい割合で形成される3つのフランジ部材について例示しているが、他の例において、異なる数のフランジ部材が提供されてもよく、それらは湾曲構造の等しい又は異なる割合を形成してもよい。図2Aに示された湾曲構造は、断面が実質的に円形であるが、他の例において、湾曲構造は、ある他の形状、例えば、閉じた楕円、楕円又は円に近似する形、あるいは複雑に湾曲した形、例えば部分的に円形だが所々平坦な湾曲構造を有していてもよい。実際に、図2Aは、例示する目的のためだけに、一般的に円形の閉じた構造を示し、他の例において、他の湾曲構造が想定され得ることに留意すべきである。
【0033】
図2Bは、図2Aの閉じた形状に通じる断面を示している。フランジ部材1の本例における断面形状は、直角三角形である。図2Bで例示されるような三角形は、フランジ部材1を作るための製造工程によって頂点が丸められている。
【0034】
図3は、フランジ部材1の例を生成するための製造工程の例を表す。フランジ部材1は複合材料5で作られる。フランジ部材1を生成するためにいかなる好適な製造工程、例えば、フィラメント・ワインディング、3D織物の注入等をも使用可能であることが理解されるだろう。三角形の断面に対応するマンドレル3は、フランジ1の湾曲部材又は湾曲部分を生成するために用いられ得る。複合材料5は、複合構造、すなわち、中空のフランジ部材1において三角形の断面を生成するためにマンドレル3に適用される。
【0035】
図4Aには、マンドレル3が、湾曲構造における三角形の断面を形成するために組み立て可能とされ、且つ、フランジ部材1の中空部から除去するために解体可能とされていることが例示されている。
【0036】
例示された例において、マンドレル3は、2つの留め継ぎ部3A,3Bにより形成される。一方の留め継ぎ部3Aは、他方の留め継ぎ部3Bの上部に載置され、複合材料がフランジ1を生成するために設置される中実の三角形の断面を生成する。2つの部材が互いに対して移動したり、製造工程の間、分離したりするのを防ぐために、エンドプレート3Cは組み立てられた留め継ぎ部3A,3Bの一方又は双方に取り付けられてもよい。
【0037】
図4Bは、エンドプレート3Cが取り付けられたマンドレル3の一端を示す。ねじ等の好適な機械的締結部材が、エンドプレート3Cをマンドレル3に取り付けるために用いられ得る。
【0038】
フランジ部材1を作るための複合材料は、図3に示されるように、フランジ部材1を形成するためにマンドレルの周囲に巻き付けられる。複合材料5は、人手により巻き付けられることとしてもよいし、この工程が自動化されることとしてもよい。フランジ部材1のレイアップは、特定のアプリケーションに従って選択され得る。例えば、フランジ1が航空機のエンジンケーシングにおいて使用されるものであるとき、複合レイアップは、縦の繊維層を有していてもよく、各層において繊維の配向が0度、+45度、90度及び−45度に沿っていてもよい。層が所望の厚さに到達した場合、複合材料は硬化される。マンドレル3は、複合材料を硬化させた後に、除去され得る。
【0039】
フランジ部材1からマンドレル3を除去するために、1又は複数のエンドプレート3Cを使用している場合には、当該エンドプレートをマンドレル3から取り外し、2つの留め継ぎ部3A,3Bを矢印7A,7Bの方向に互いに対して摺動させることにより、2つの留め継ぎ部2A,3Bが分離され、しかも、双方がフランジ部材1内の中空部に対して摺動されて、三角形の断面を有する湾曲した中空部が残されるようにフランジ部材1から取り出される。
【0040】
例示された例において、マンドレル3は金属、例えばINVAR(インバー)(TM)で作られている。INVAR(TM)は、36パーセントの鉄ニッケル合金であり、熱膨張率がほとんど0又は複合材料が形成可能である。フランジ部材1を形成する複合材料の品質が製造工程の間に影響されないように、マンドレル3の材料は、複合材料の硬化温度に影響を与えないことを1つとして選択される。マンドレル3のための材料の選択は、フランジ部材1が硬化した後にマンドレル3がフランジ部材1からどれだけ容易に除去されるかということに影響され得る。フランジの材料及びマンドレルの材料が異なる熱膨張率を有する場合、フランジ部材1の内部にあるときのマンドレル3の取り外しは、より容易となる。これは、フランジ部材1が例えばガラス繊維及び/又は炭素繊維等の繊維強化材を含む1又は複数の樹脂の複合物から形成された複合材料で作られた場合であり、マンドレル3がINVAR(TM)で作られた場合である。
【0041】
硬化したフランジ部材1からのマンドレル3の除去をさらに簡単化するために、マンドレル3は、PTFEで被覆されてもよい。これに加えて又はこれに代えて、複合材料に影響を与えないrotafix(R)の製品であるFREKOTE(フリコート)(R) NC700のような剥離剤が、フランジ部材1からの除去をより容易にするためにマンドレル3の表面に塗布されてもよい。
【0042】
フランジから除去するために解体されるマンドレル3を使用する代わりに、例えば、マンドレルを発泡体で作ることも可能である。発泡体のマンドレルは、発泡体による重量の増加が無視できると思われるため、フランジ部材1の内部に残っていてもよい。これに代えて、発泡体のマンドレルは、フランジ部材1が硬化した後にそれを溶かすことによって除去されてもよい。
【0043】
発泡体で作られたマンドレルは、小さな断面積を有するフランジに特に好適である。フランジ部材から除去するために解体可能な金属で作られたマンドレルは、比較的大きい断面積を有するフランジに特に好適である。
【0044】
フランジ又はフランジ部材1は、エンジンケーシングのような構造の一端又は両端に取り付けられ、2つのこのような構造を互いに連結することを容易にしたり、このような構造と他の構造部材とを取り付けることを容易にしたりする。
【0045】
図5Aは、筒状構造11、例えば、一端にフランジ1が取り付けられたエンジンケーシングの斜視図を示す。フランジ1を筒状本体11に取り付ける工程は、図5Bから図5Eを参照しつつ以下で説明される。
【0046】
図5Bは、複合材料で作られた筒状ドラム11の外側表面に載置されたフランジ又はフランジ部材1の断面を示している。筒状ドラム11は、筒状の形成治具13上にレイアップされる。図5Bにおいて、筒状ドラム11に供給される複合材料は、複数の平行な水平線によって示されており、構造が複数の層を含む積層プラスチックにより形成されることを示している。本例における積層されたプラスチック材料は、例えば、ガラス繊維及び/又は炭素繊維等の繊維強化材を含む1又は複数の樹脂(例えばエポキシ樹脂又はポリエステル樹脂)から形成された積層複合材料とされ得る。
【0047】
筒状ドラム11のための製造工程は、最終生成物が特定のアプリケーションのために要求される機械特性を有する複合材料を作るためのいかなる工程を含んでもよい。フランジ部材1は、ドラム11の端部から離れた部分11Aに配置される。図5Cに示されるように、筒状ドラム11の端部11Aは、突出されており、図5Dに示されるように、ドラム材料が伸びたり裂けたりする危険がほとんどない状態で各突出部11Bが垂直に折り曲げられてドラム11の外部に設けられ得る。
【0048】
図5Dに例示されるように、筒状ドラム11の端部11Aの突出部11Bは、ドラム11の軸に垂直なフランジ1の面に当接するように折り曲げられている。
【0049】
接着剤又は樹脂等の好適な充填材が、三角形のフランジ1と筒状ドラム11との接触面に適用されてもよい。充填材は、フランジ1とドラム11との合わせ面に存在する表面の不規則性によって生じ得る間隙又はギャップを埋めるだろう。生じた間隙を埋めることは、構造全体の品質を改良することに有益であろう。
【0050】
筒状ドラム11へのフランジ1の取り付けをよりよくするために、複合材料11Cは、三角形のフランジ1の斜辺側面と筒状ドラム11の一部とに取り付けられる。しかしながら、三角形のフランジ1の頂点が丸いため、三角形のフランジの斜辺側面の頂点と筒状ドラム11のとの接合部に間隙が存在するおそれがある。複合材料を被覆する際に間隙を埋めようとすると、繊維がねじれたり破損したりする可能性がある。ギャップがフランジと筒状ドラム11との間に残っている場合、その領域における複合材料の層間剥離が、フランジ1が使用中に十分高い負荷を受けた結果として生じる可能性がある。被覆された複合材料の破損及びギャップが残ることを防止し、完成した構造の品質を改善するために、充填材のヌードル(noodle)15、例えば、発泡体が、三角形のフランジ1と筒状ドラム11の表面の外側との接合部に塗布される。複合材料11Cは、筒状ドラム11の一部、ヌードル15及び三角形のフランジ1の斜辺側面の一部を被覆し、フランジ1をドラム11に取り付ける。
【0051】
図2Aを参照しつつ上述したように、1以上の三角形のフランジ部材1が筒状のエンジンケーシングのような閉じた形状の外周部の全体にフランジ1を供給するために用いられる。
【0052】
図5E及び図5Fに示されるように、2つのフランジ部材が当接する領域には、複合材料11Dの追加層又はプライがフランジ部材1に適用されている。複合部材11Dは、フランジ部材同士が接合される部分1Aが被覆されるように適用され、複合材料11B,11Cは、フランジ又はフランジ部材1を筒状ドラム11に接合させる。
【0053】
それから、全体構造は、図5Aに例示されるような、フランジ1及びドラム11が一体不可分である製品となるように硬化される。フランジ1及びドラム11を含む組み合せ構造は、例えばオートクレーブ又は屋外で、硬化されてもよい。
【0054】
フランジ1とドラム11とが一体不可分の製品となるように、フランジ1及びドラム11を形成する複合材料は、同じものであるべきか、又は、少なくとも複合材料は、化学的又は熱的に互換性を有するべきである。
【0055】
図6には、フランジ1及びドラム11を含む組み合わせ構造の部分斜視図が示されている。三角形のフランジ1の斜辺側面には、アクセスホール17が設けられている。本例において、アクセスホール17は、五角形状を有している。これは五角形のホール17の各辺が、0度、90度、+45度及び−45度に配向された繊維層を有する積層構造における繊維配向に沿うように設けたものである。五角形の各辺を繊維配向に沿わせることにより、フランジの品質への損害が最小限となる。
【0056】
アクセスホールにより、ドラム11及びフランジ1の組み合せ構造の他の構造部材への取り付けを可能とするための複数の孔(図示せず)が設けられたフランジ1の取り付け表面へのアクセスが可能となる。
【0057】
上記においては、エンジンケーシング上の三角形のフランジの使用について説明した。三角形のフランジ1の使用例は、航空機アプリケーションにおけるものである。例えば、ジェットエンジン上において、複合フランジ1は、エンジンハウジングの前方及び/又は後方の金属フランジと置き換えられてもよい。上述したように複合ダクト及び複合フランジ配置を用いることは、金属のハウジング及びフランジに比較して、重量の軽減をもたらし、要求される部品数の低減をもたらすだろう。
【0058】
例えば、図1は、エンジンケーシング内に収容された第1エンジン102及び第2エンジン104を含む航空機100を示す概略図である。
【0059】
図8は、2つの部分すなわち第1部分106及び第2部分110を有するエンジン102及び104のようなジェットエンジンの外部ファンダクトを示す概略図である。第1部分106には、第1フランジ108が設けられ、第2部分110には、第2フランジ112が設けられている。図9は、フランジ108,112によって第2部分110に接合された第1部分106を例示している。図10は、これをより詳細に例示するものであり、特に拡大図には、例えばボルトやリベット等によって形成され得る締結部材114によって第1部分の第1フランジ108が第2部分110の第2フランジ112に接合されることが示されている。
【0060】
図7−10に示される事項は、例示の目的のみに概略的に示されたものであり、本発明が航空機及び他のアプリケーションにおける湾曲構造上のフランジを形成するアプリケーションとしても有用であろう。
【0061】
上記実施形態は、かなり詳細に記載されているが、上記開示が十分に理解されれば、様々なバリエーション及び変更が当業者に明らかとなるだろう。以下の特許請求の範囲はそのようなバリエーション及び変更と同様にそれらの均等物の全てを包含すると解釈されることを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料から構成されるフランジであって、前記フランジが実質的に三角形の断面を有する湾曲した中空部材を備えている、フランジ。
【請求項2】
前記断面は、実質的に直角三角形を含み、前記三角形の第1辺は、湾曲して続く前記三角形の第2辺に実質的に垂直である、請求項1に記載のフランジ。
【請求項3】
前記湾曲した中空部材は、湾曲した外周部を有する閉じた形状が分割されたものとして定義される、請求項1又は2に記載のフランジ。
【請求項4】
前記分割は、湾曲した外周部を有する閉じた形状の1/4から1/3とされる、請求項3に記載のフランジ。
【請求項5】
複数の前記湾曲した中空部材は、湾曲した外周部を有する閉じた形状を形成するために組み合せられる、請求項1から4の何れかに記載のフランジ。
【請求項6】
前記閉じた形状は、円である、請求項5に記載のフランジ。
【請求項7】
前記閉じた形状は、楕円である、請求項5に記載のフランジ。
【請求項8】
繊維強化複合材料を含む、請求項1から7の何れかに記載のフランジ。
【請求項9】
前記繊維強化複合材料は、炭素繊維によるものである、請求項8に記載のフランジ。
【請求項10】
前記複合材料は、積層されている、請求項8又は9に記載のフランジ。
【請求項11】
前記三角形の第3辺は、実質的に五角形状の孔を有している、請求項2又は請求項2に従属する請求項3から10の何れかに記載のフランジ。
【請求項12】
請求項1から11の何れかに記載のフランジを含む複合材料から構成される、ダクト。
【請求項13】
前記ダクトの断面形状は、湾曲した外周部を有する閉じた形状である、請求項12に記載のダクト。
【請求項14】
前記ダクトは、湾曲した外周部を有する開水路である、請求項12に記載のダクト。
【請求項15】
前記ダクトの材料は及び前記フランジの材料は、化学的及び熱的に互換性がある、請求項12から14の何れかに記載のダクト。
【請求項16】
前記ダクトの材料及び前記フランジの材料は、同じ材料である、請求項12から14の何れかに記載のダクト。
【請求項17】
請求項12から16の何れかに記載のダクトを備えた、航空機。
【請求項18】
複合材料から構成されるフランジの製造方法であって、
a)複合材料を実質的に三角形の断面を有する湾曲したマンドレルの外側表面に適用するステップと、
b)前記複合材料を硬化して、実質的に三角形の断面を有する湾曲した中空部材を備えたフランジを生成するステップとを有する、方法。
【請求項19】
c)前記中空部材から前記マンドレルを除去するステップをさらに有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マンドレルは、解体可能であり、前記マンドレルを除去するステップは、前記マンドレルを解体するステップを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マンドレルは、実質的に三角形の断面を形成するために組み立てられる2以上の部材からなり、前記2以上の部材は、前記中空部材から除去するために分解される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マンドレルは、互いに対して摺動することにより分解される2以上の分割部からなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マンドレルは、組み立てる際に実質的に三角形の断面を有する前記マンドレルを提供するために互いに接合し、前記中空部材から除去するために分離する複数のモザイク状部材からなる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記マンドレルは、可溶性の材料から作られ、形成された前記中空部材から前記マンドレルを除去するために溶かされる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
複合材料から構成される構造の製造方法であって、複合材料のフランジを有する複合材料のダクトを提供するステップを有し、前記フランジは、請求項18から24の何れかに記載の方法から生成され、前記フランジを少なくとも前記ダクトの一端に取り付けるステップをさらに有する、方法。
【請求項26】
前記ダクトの材料の端部は、前記材料を前記フランジの一端に当接するように折り曲げることが可能となるように突出されており、前記フランジを前記突出部近傍の前記ダクトの表面に取り付け、前記複合材料の突出部を折り曲げて前記フランジの側面に接触するようにダクトを形成することにより前記フランジを前記ダクトに取り付ける、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ダクトに接触している前記フランジの表面と前記三角形の断面の斜辺側面とによって形成される前記三角形の断面の頂点の接合部に充填材を適用するステップと、前記ダクト、前記充填材及び前記三角形の断面の斜辺側面の少なくとも一部を被覆するために、複合材料の層を付設するステップとをさらに有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記構造を送り込み、前記複合材料を硬化させて前記構造を供給するステップを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記フランジの外表面に固定孔及びアクセスホールを機械加工して設けるステップをさらに有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アクセスホールは、前記三角形の断面の斜辺を形成する前記フランジの表面に機械加工された五角形状の孔であり、前記五角形の各辺は、前記フランジを形成する前記複合材料の繊維に沿って配置されている、請求項26に従属する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項18から23の何れかに記載のフランジの製造方法に用いるマンドレルであって、前記マンドレルは、湾曲され、中実の三角形の断面を有している、マンドレル。
【請求項32】
前記マンドレルは、互いに組み立てられることにより実質的に三角形の断面が形成されるような2以上の部材を有する、請求項31に記載のマンドレル。
【請求項33】
実質的に三角形の断面を有する湾曲した部材を形成するために、一方の留め継ぎされる表面が他方の上部に配置される、2つの分割部を有している、請求項32に記載のマンドレル。
【請求項34】
前記分割部の一端又は両端に取り付け可能な1又は複数のエンドプレートを有している、請求項33に記載のマンドレル。
【請求項35】
前記マンドレルは、鉄ニッケル合金で作られる、請求項31から34の何れかに記載のマンドレル。
【請求項36】
前記マンドレルは、複合材料で作られる、請求項31から35の何れかに記載のマンドレル。
【請求項37】
前記マンドレルは、剥離剤により被覆される、請求項31から36の何れかに記載のマンドレル。
【請求項38】
前記マンドレルは、PTFEにより被覆される、請求項31から37の何れかに記載のマンドレル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−530319(P2010−530319A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510870(P2010−510870)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001892
【国際公開番号】WO2008/149079
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509016575)ジーケイエヌ エアロスペース サービシイズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】