説明

複合材ファンバイパスダクト及びその他の同様な構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステム

【課題】成形複合材構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステムを提供する。
【解決手段】幅Wを有する三軸材料32を保持しかつ巻付け時に該材料32を真っ直ぐに保って一様な重なりを形成するようになったクリール34と、クリール34から該材料32の幅Wを受けかつ巻付け時に該材料32に張力を与えるようになった緊張装置38と、緊張装置38から該材料32を受けて螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォーム46を生成するようになった成形硬化マンドレル42と、緊張装置38からの該材料32を、該材料32の各後続層が幅Wの約半分だけ重なるように、成形硬化マンドレル42の周りに螺旋状に巻付けるようになった横行スクリュ44とを含む、システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載した実施形態は、総括的には複合材構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステムに関する。より具体的には、本明細書における実施形態は、総括的には、例えばガスタービンエンジンファンバイパスダクト及び格納ケーシングのような複合材構成要素を製作するための自動螺旋ワインディングシステムについて記述する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンのようなガスタービンエンジンでは、空気が、エンジンの前面内に吸込まれ、シャフト支持圧縮機によって加圧され、かつ燃焼器内で燃料と混合される。次に、混合気は燃焼され、高温排出ガスが、同一シャフト上に取付けられたタービンを通って流れる。燃焼ガスの流れは、タービンを通って膨張し、タービンは次に、シャフトを回転させかつ圧縮機に動力を供給する。高温排出ガスはさらに、エンジン後部のノズルを通って膨張して、航空機を前方に駆動する強力な推力を発生する。
【0003】
最近では、その耐久性及び比較的軽重量の故に、多様な航空機用途において、複合材が次第に使用されるようになってきた。複合材は優れた強度及び重量特性をもたらすことができるが、依然として更なる改良を加えることができる。
【0004】
例えばファンバイパスダクト及び格納ケーシングのような複合材構成要素は、現在では、フィラメントワインディング法、自動テープ布設法及びハンドレイアップ法のような従来通りのレイアップ方法を使用して製作される。フィラメントワインディング法は一般的に、様々な張力量の下でマンドレル上に所望のパターンでフィラメントを巻付けることを含む。この方法は、後続の層を前の層とは異なる配向とすることができるようにフィラメントの配向を制御するのを可能にする。自動テープ布設法は一般的に、複数のテーププライを様々な角度で積重ねて積層体を形成することを含む。ハンドレイアップ法は一般的に、モールド内に織物マットを手動で位置決めし、それに樹脂を塗布しかつ織物プライ間に捕捉された気泡を手動で除去することを含む。これらの方法の全ては成功裏に使用することができるが、そのような方法は、多くの場合に、時間がかかり、労働集約的であり、材料を浪費しかつその結果高価なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,497,633号公報
【特許文献2】米国特許第3,797,088号公報
【特許文献3】米国特許第6,851,643号公報
【特許文献4】米国特許第3,893,324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、より少ない時間、材料及び労働消費であり、従って一層コスト効果がある、複合材構成要素を製作するためのシステムに対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書における実施形態は、総括的には、成形複合材構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステムに関し、本システムは、幅を有する三軸材料を保持しかつ巻付け時に該材料を真っ直ぐに保って一様な重なりを形成するようになったクリールと、クリールから材料の幅を受けかつ巻付け時に該材料に張力を与えるようになった緊張装置と、緊張装置から材料を受けて螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォームを生成するようになった成形硬化マンドレルと、緊張装置からの材料を、該材料の各後続層が幅の約半分だけ重なるように、成形硬化マンドレルの周りに螺旋状に巻付けるようになった横行スクリュとを含み、成形複合材構成要素は、円筒形状のかつ非クリンプ又はブレーデッド材料、フープ繊維のない円錐形状のかつ非クリンプ又はブレーデッド材料、或いはそれらの組合せを含むようになる。
【0008】
本明細書における実施形態はまた、総括的には、成形複合材構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステムに関し、本システムは、幅を有する三軸材料を保持しかつ巻付け時に該材料を真っ直ぐに保って一様な重なりを形成するようになったクリールと、クリールから材料の幅を受けかつ巻付け時に該材料に張力を与えるようになった緊張装置と、緊張装置から材料を受けて螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォームを生成するようになった円筒形状硬化マンドレルと、緊張装置からの材料を、該材料の各後続層が幅の約半分だけ重なるように、円筒形状硬化マンドレルの周りに螺旋状に巻付けるようになった横行スクリュとを含み、三軸材料は、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、及びそれらの組合せからなる群から選択された繊維を含む。
【0009】
本明細書における実施形態はまた、総括的には、成形複合材構成要素を製作するための螺旋ワインディングシステムに関し、本システムは、フープ繊維がなくまた幅を有する三軸材料を保持しかつ巻付け時に該材料を真っ直ぐに保って一様な重なりを形成するようになったクリールと、クリールから材料の幅を受けかつ巻付け時に該材料に張力を与えるようになった緊張装置と、緊張装置から材料を受けて螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォームを生成するようになった円錐形状硬化マンドレルと、緊張装置からの材料を、該材料の各後続層が幅の約半分だけ重なるように、円錐形状硬化マンドレルの周りに螺旋状に巻付けるようになった横行スクリュとを含む。
【0010】
これらの及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の開示から当業者には明らかになるであろう。
【0011】
本明細書と共に提出した特許請求の範囲により、本発明を具体的に指摘しかつ明確に特許請求しているが、本明細書に記載した実施形態は、同じ参照符号が同様な要素を表している添付図と関連させた以下の説明から一層良好に理解されるようになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書の説明による、低バイパスガスタービンエンジンの1つの実施形態の概略断面図。
【図2】本明細書の説明による、複合材構成要素の1つの実施形態の概略斜視図。
【図3】本明細書の説明による、螺旋ワインディングシステムの1つの実施形態の概略斜視図。
【図4】本明細書の説明による、螺旋ワインディングシステムを使用して製作した複合材構成要素の1つの実施形態の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載した実施形態は、総括的には複合材構成要素、特にファンケーシングのようなファンバイパスダクト及び格納ケーシングを製作するための螺旋ワインディングシステムに関する。より具体的には、本明細書における実施形態は、総括的には、本明細書で以下に説明するようなクリール、緊張装置、横行スクリュ及び硬化マンドレルを含む螺旋ワインディングシステムを使用して複合材構成要素を製作するための自動螺旋ワインディングシステムに関する。本明細書における実施形態は、低バイパスガスタービンエンジンに焦点を当てているが、その説明はそれに限定されるべきものではないことは、当業者には分かるであろう。
【0014】
次に図を参照すると、図1は、低バイパスガスタービンエンジン10の1つの実施形態の概略図であり、低バイパスガスタービンエンジンは一般的に、ファンケーシング12によって囲まれたファンと、低圧圧縮機14と、ファンバイパスダクト16と、バーナ18と、タービン20と、ファン排気口22と、ノズル24とを含む。さらに、エンジン10は、吸気口26を有する。
【0015】
図2を参照すると、受入れ可能な複合材構成要素30の1つの実施形態を示している。本明細書で使用する場合に、「成形複合材構成要素」というのは、複合材料又は複合材料の組合せで製作された成形形状を有するあらゆる構造体を意味する。本明細書で全体にわたって使用する場合に、「成形(した)」というのは、形状又は表面の少なくとも一部分が非平面であることを意味する。1つの実施形態では、成形というのは、円筒形状、円錐形状、又はそれらのある組合せのいずれかを意味する。1つの実施形態では、複合材構成要素30は、螺旋巻付けファンバイパスダクト31を含むことができるが、本明細書に説明した方法及びシステムは、それに限定されるべきものではないことは、当業者には分かるであろう。別の実施形態では、複合材構成要素30は、図1に概略的に示したファンケーシング12のような螺旋巻付け格納ケーシングを含むことができる。
【0016】
バイパスダクト31は、本明細書で以下に説明するように、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、及びそれらの組合せからなる群から選択された繊維を有する材料32で製作することができる。1つの実施形態では、複合材構成要素は、円筒形状29を含むことができ、また材料32は、あらゆる三軸非クリンプ又はブレーデッド材料を含むことができる。別の実施形態では、複合材構成要素は、円錐形状31を含むことができ、またまた材料32は、フープ(90°)繊維がないあらゆる三軸非クリンプ又はブレーデッド材料を含むことができる。フープ繊維がないことにより、本明細書で以下に説明するように円錐形状硬化マンドレルに対して材料を適合させるのを助けることができる。以下の方法は、材料がフープ繊維を含むか否かに関係なく、同様に適用可能である。
【0017】
最初に、材料32は、幅Wに切断し、かつ図3に概略的に示すように螺旋ワインディングシステム36のクリール34上に巻いておくことができる。材料32は、必要に応じて変化させることができる幅Wを有することができるが、1つの実施形態では、幅Wは、約4インチ(約10.2cm)〜約8インチ(約20.3cm)とすることができる。1つの実施形態では、クリール34は、材料32の幅Wに対応する幅を有することができる。
【0018】
クリール34上に装填されると、材料32は、ガイドローラ40の支援の下で緊張装置38により移送し、かつ横行スクリュ44の支援の下で硬化マンドレル42の周りに巻付けることができる。より具体的には、材料32は、緊張装置38により移送することができ、緊張装置38は、一様性を保証するのに必要な張力を材料32に対して加えることができる。緊張装置38は、材料に張力を与えることができるあらゆるものを含むことができる。1つの実施形態では、緊張装置38は、クリール上に磁気ブレーキを含むことができる。別の実施形態では、緊張装置38は、クリールに取付けられた摩擦ブレーキを含むことができる。
【0019】
材料32は、緊張装置38から硬化マンドレル42の周りに巻付けることができる。具体的には、材料32は、硬化マンドレル42の周りに螺旋状に巻付けることができる。本明細書で使用する場合に、「螺旋状に巻付ける」というのは、材料の各後続層が、該材料32の幅Wの約半分だけ前の層に重なることを示している。このようにして、材料32の2つの層は、硬化マンドレルの周りに同時にレイアップ(積層)することができる。例えば、また図4に示すように、材料32が約4インチ(約10.2cm)の幅Wを有する場合には、各後続層は、約2インチ(約5.1cm)だけ重なることができる。
【0020】
この所望の重なりは、図3に示すように硬化マンドレル42の長さLに沿って位置するように配置することができる横行スクリュ44を使用して達成することができる。材料32の各後続幅Wをマンドレル42に適用する(巻付ける)時に、横行スクリュ44に沿って横方向に緊張装置38を移動させて、所望の螺旋巻付けバイパスダクトプリフォーム46を得ることができる。
【0021】
螺旋巻付けバイパスダクトプリフォーム46は次に、当業者には公知の従来通りの注入及び硬化法を使用して、あらゆる受入れ可能な樹脂で処理しかつ硬化させて、螺旋巻付けバイパスダクトを生成することができる。
【0022】
本明細書で上に説明したような螺旋巻付け設計を有する複合材構成要素を構成することにより、現在の製作法に優る幾つかの利点を得ることができる。螺旋ワインディング法は、特定の設計ニーズに合わせて調整することができる繊維を使用して、複雑な形状寸法を迅速に生成することを可能にすることができる自動製作方法である。さらに、螺旋ワインディング法は、労働集約的ハンドレイアップ法並びにフィラメントワインディング及び単一源ブレイディングによる材料浪費を解消する。加えて、螺旋ワインディング法は、精密なレイアップを行なうこと、複雑な形状寸法を構成することができること、及びあらゆる所望の繊維配向を有する構成要素を製作することができることを可能にすることができる。
【0023】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、またさらに当業者が本発明を製作しかつ使用するのを可能にする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定まり、また当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0024】
10 低バイパスガスタービンエンジン
12 ファンケーシング
14 低圧圧縮機
16 ファンバイパスダクト
18 バーナ
20 タービン
22 ファン排気口
24 ノズル
26 吸気口
30 複合材構成要素
31 螺旋巻付けファンバイパスダクト
32 材料
34 クリール
36 螺旋ワインディングシステム
38 緊張装置
40 ガイドローラ
42 硬化マンドレル
44 横行スクリュ
46 螺旋巻付けバイパスダクトプリフォーム
W 材料の幅
L 硬化マンドレルの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形複合材構成要素(30、31)を製作するための螺旋ワインディングシステム(36)であって、
幅(W)を有する三軸材料(32)を保持しかつ巻付け時に該材料を真っ直ぐに保って一様な重なりを形成するようになったクリール(34)と、
前記クリールから前記材料の幅を受けかつ巻付け時に該材料に張力を与えるようになった緊張装置(38)と、
前記緊張装置から前記材料を受けて螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォーム(46)を生成するようになった成形硬化マンドレル(42)と、
前記緊張装置からの前記材料を、該材料の各後続層が前記幅の約半分だけ重なるように、前記成形硬化マンドレルの周りに螺旋状に巻付けるようになった横行スクリュ(44)と、を含み、
前記成形複合材構成要素が、円筒形状のかつ非クリンプ又はブレーデッド材料、フープ繊維がない円錐形状のかつ非クリンプ又はブレーデッド材料、或いはそれらの組合せを含むようになる、
システム(36)。
【請求項2】
前記三軸材料が、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、及びそれらの組合せからなる群から選択された繊維を含む、請求項1記載のシステム(36)。
【請求項3】
前記材料幅(W)が、約4インチ(約10.2cm)〜約8インチ(約20.3cm)である、請求項1から請求項2のいずれか1項記載のシステム(36)。
【請求項4】
前記緊張装置(38)が、磁気ブレーキ又は摩擦ブレーキである、請求項1から請求項3のいずれか1項記載のシステム(36)。
【請求項5】
前記成形硬化マンドレル(42)が、長さ(L)を含み、
前記横行スクリュ(44)が、前記成形硬化マンドレルの長さに沿って配置される、
請求項1から請求項4のいずれか1項記載のシステム(36)。
【請求項6】
前記緊張装置(38)が、前記横行スクリュ(44)に沿って横方向に移動して、前記成形硬化マンドレル(42)の周りに螺旋巻付け成形複合材構成要素プリフォーム(46)を生成する、請求項1から請求項5のいずれか1項記載のシステム(36)。
【請求項7】
前記材料(32)の各後続層が、約2インチ(約5.1cm)だけ重なる、請求項3記載のシステム(36)。
【請求項8】
前記成形複合材構成要素プリフォーム(46)が、樹脂で処理されかつその後に硬化して、前記成形複合材構成要素(30、31)を生成する、請求項1から請求項7のいずれか1項記載のシステム(36)。
【請求項9】
前記成形複合材構成要素(30)が、ファンバイパスダクト(31)を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項記載のシステム(36)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−88363(P2011−88363A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−244021(P2009−244021)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】