説明

複合部品の微小亀裂を制限することを目的とした新規な中間材料

本発明は、強化糸の一方向セットの少なくとも2枚により形成され、各セットの糸が異なる方向に伸びており、それらのセットが少なくとも1本の縫い糸又は編み糸を用いた縫い合せ又は編み合せによって連結されている、樹脂マトリックスと組み合わせて複合部品を製造することを対象とした中間製品に関する。本発明は、前記の縫い糸又は編み糸が、EN ISO 2060の規格に従い、30 dTex以下の、好ましくは25 dTex以下の糸番手を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品の作成に適合した強化材料の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、特にその後の熱硬化性樹脂の射出(injection)又は注入(infusion)により複合部品を作成するための新規な中間材料、かかる材料から複合部品を組み立てる方法、及び、そのようにして得られる複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
複合部品又は複合商品の組み立て、即ち、一方では一つ又はいくつかの強化材又は繊維層を含み、他方では熱可塑性樹脂を含み得る主として熱硬化性(『樹脂』)マトリックスを含有する部品又は商品の組み立ては、例えば、『直接』又は“LCM”(英語の『液状複合成形』(“Liquid Composite Molding”)から)と呼ばれる方法によって開発することが出来る。直接方法は、一つ又はいくつかの繊維強化材を(最終マトリックスなしの)『乾燥』状態で準備し、樹脂又はマトリックスを別個に、例えば、強化繊維を含有する金型中への射出(英語の『樹脂トランスファー成形』から、“RTM”法)により、あるいは、強化繊維の厚さを通しての注入(英語の『液状樹脂注入』から、“LRI”法、又は英語の『樹脂フィルム注入』から、“RFI”法)により、あるいは、強化繊維の単位層の各々上への、金型に連続的に適用されるローラー又はブラシによる手動の塗布/含浸により、準備することによって定義される。
【0003】
“RTM”法、“LRI”法、又は“RFI”法に関しては、一般的に、先ず、所望完成製品の金型の繊維状予備成形物を形成し、次にこの予備成形物に樹脂を含浸させることが必要である。ある温度で圧力差により樹脂を射出又は注入し、次に、一旦必要な樹脂のすべての量が該予備成形物中に含有されたら、該組み立て品をより高温の状態にして該重合/網状化サイクルを達成し、かくしてその硬化をもたらす。使用したマトリックスは熱硬化性である。射出された樹脂は、例えば、以下の熱硬化性ポリマー、即ち、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂の中から選択される。
【0004】
特に、自動車、航空機、又は海軍の産業で使用される複合部品は、とりわけそれらの機械的性質の観点から非常に厳しい要求を著しく受ける。従って、一方では非常にしっかりしていて(consistent)、他方では取り扱い易く加工し易い材料を使用することが特に重要である。
【0005】
この状況において、多軸型又は“NCF”(英語で非捲縮布)と呼ばれる材料が開発されてきた。これらの材料は一方向糸層の積み重ねから成り、該一方向層は、複合部品の主軸に対して、例えば、0°、30°、45°、60°、90°、120°、又は135°の角度の方向に合せられた、複合部品内の繊維が得られるように、該層の糸の方向を合せることにより製造されるものである。選択された方向に沿ってこのように置かれたカーボン糸の層は、縫い糸又は編み糸を用いた縫い合せ又は編み合せにより互いにくっ付けられている。3,000本と24,000本(3Kと24K)の間のカーボン・フィラメントを含有するカーボン糸から製造された、かかる縫い合せ層は、例えば、Sigmatex UK Limited (英国、Cheshire WA7 1TE)により、MC8021270(80 dTexの糸で縫い合せられた268 g/m2の4軸4層)として、市場に出されている。該縫い糸の目的は、巧みに扱うことが出来る中間製品を形成するために、異なる層を単に一緒に維持することである。
【0006】
このような縫い合せ又は編み合せ結合方法は、その影響により強化糸間の分離域が発生する、層内糸どうしの膨張を縫い合せ又は編み合せ時に制限する。この影響の一結果は、複合部品の製造中に樹脂マトリックスと組み合せる際の、該材料の横断透過性の増大である。従って、これは、特にLRI又はRFIによる、かかる中間材料の実現に有利に働く。
【0007】
しかしながら、かかる中間材料で作られた部品は、構造物の耐久性に影響し易い、湿度と温度のサイクルによる微小亀裂を有することが見出された。同じように、航空機構造物は、その寿命中に、熱のサイクル(温度のサイクル)と湿度の高い期間(暑い砂漠におけるパーキング、極寒における高い高度飛行、静的な地上期間中、例えば、整備中の湿度吸収、飛行中の乾燥・・・・)を受ける。このような影響は、従来技術の多軸型材料の使用を、このような用途に対する適性において不十分にする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】フランス特許2761380
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tsu Wei Chou及びFranck. K. Koによる、Elsevier Science Publishers B.V.発行、国際標準図書番号0-444-42992-1、1989年版の書物、『繊維構造用複合体、複合材料シリーズ3巻』、5章、3.3項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故に、本発明は、その後に製造される複合部品が湿度と温度のストレスを受ける際に、該複合部品における微小亀裂の出現を制限することを可能にする、一方向層に基づく新規な中間製品(intermediate product)を提供することを目的にする。
【0011】
本発明による中間製品はまた、容易に処理されなければならず、そして容易に且つ安価に製造されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような状況において、本発明の対象は、少なくとも2つの一方向強化糸層から成り、該2層の各々における糸が異なる方向に伸びており、それらの層が少なくとも1本の縫い糸(stitching yarn)又は編み糸(knitting yarn)を用いた縫い合せ(stitching)又は編み合せ(knitting)により一緒にくっ付けられている、熱硬化性樹脂マトリックスとの結び付きにより複合部品を作成するための中間製品であって、前記の縫い糸又は編み糸が、EN ISO 2060の規格により測定して、30 dTex未満の、好ましくは25 dTex以下の番手(count)を有することを特徴とする、中間製品である。本発明との関連で、EN ISO 2060の規格はその1995年6月版のことを言い、この糸番手(yarn count)測定は、その重量が標準試験環境と釣りあわせて調整されている未洗浄糸に基づいて、変形1(Variant 1)を用いてなされる。
【0013】
特に本発明に適した、該縫い糸を構成する材料の例には、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポルマー(LCP)、ポリケトン、ポリアミド、炭素、ガラス、玄武岩、シリカ、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレン・テレフタレート、ポリブチレン・テレフタレート、トリメチレン・テレフタレート、ポリ乳酸、及びそれらの共重合体が、使用され得るポリエステルの例である。ポリケトンの例には、PEEK及びPEKKが含まれ得る。吸湿性の低いポリアミドの例には、PA 6.10及びPA 6.12が含まれる。該縫い糸又は編み糸が、ASTM D629-99(9項)により測定して、0.4%以下の吸湿係数を有する材料から成ることは、実際に興味深いであろう。同様に、該縫い糸又は編み糸が複合部品の作成温度で樹脂マトリックスに不溶性の材料から成る場合、本発明は更に有利である。何故なら、樹脂マトリックスに溶解性の材料糸は、湿度と温度のストレスの下で微小亀裂が起こる樹脂に富む帯域の形成に対して、より助けとならないからである。
【0014】
更に、該縫い糸又は編み糸は、例えば、1995年版のISO EN 2062により測定して、20 cN/Texと100 cN/Texとの間の破壊靭性を有することが出来る。いくつかの態様によれば、該縫い糸又は編み糸は、1995年版のISO EN 2062により測定して、10%と60%との間の破断伸びを有することが出来る。
【0015】
なお、好ましい状態で、使用される縫い糸は洗浄されていて、表面潤滑剤又は表面油を含有しないか、又は多くとも1,3%より低い潤滑剤重量比を有するであろう。存在する塗油は、好ましくは鉱物性であり、有利にはシリコーン又はシリコーン誘導体を含有しない。
【0016】
特別な態様の例として、該縫い糸は、ポリエステル族の23 dTexの糸であっても良い。
【0017】
等しく、本発明の対象は、本発明による中間材料に熱硬化性樹脂を、特に注入又は射出により、添加する工程、次に、所定の温度及び圧力のサイクルにおける重合/網状化により所望部品を硬化し、続いて冷却する工程を含む、複合部品の製造方法である。
【0018】
少なくとも部分的に、本発明による中間製品と熱硬化性樹脂マトリックスとの結び付きにより製造される複合部品、及びこの様な方法により得られる可能性が高い複合部品は、本発明の切離せない部分である。
【0019】
かかる複合部品は、縫い糸における樹脂に富む帯域が小さいことを特徴とし、それにより湿度と温度のサイクル的負荷に基づく微小亀裂が最小となる。実際、最も低い可能な番手を有する縫い糸を使用することにより、縫い糸の周りで、強化繊維を含有しない帯域であって、該部品が湿度と温度のストレスを受ける際に最初の微小亀裂が起こる帯域を、減少させることが可能になるということが、本発明の一部分として見出された。縫い糸の周りで、強化繊維を含有しないこれらの帯域は、『樹脂に富む領域』と呼ばれている。明白に、得られる部品上の樹脂に富む帯域は、中間製品の一方向層に平行であり中間製品の中央部に位置する平面で測定して、多くとも0.11 mmの平均高さを示す。
【0020】
他の色々な特徴は、別紙図面を参照している以下の説明から把握される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】45°/135°/0°の3層縫い合せ多軸型から成る、本発明による中間製品の分解斜視図である。
【図2】環縫いを用いた縫い合せ方法を示した4層多軸型から成る、本発明による中間製品の概要斜視図である。
【図3】案内棒移動(guide bar movement)を用いた他の縫い合せ方法を示した、本発明による中間製品の上面図である。
【図4】本発明による積層品を試験するための湿度と温度のサイクルを示す。
【図5】試験片の中心における、実施例1の切断断面を示す。
【図6】縫い合せ点及び一方向層に関して、切断面により明確にされる、観察面の位置を示す。
【図7】特定数の湿度温度サイクル後に異なる試料について得られる因子dの値を示す。
【図8】湿度と温度の400サイクル後に比較例3の積層品(35dTexのポリエステル)で得られる微小亀裂の映像である。
【図9】実施例1の積層品、及び一方向織物(唯一つの方向が強化繊維で織られているのでそのように呼ばれ、HexcelによりG1157として市場に出されており、該織物の坪量は実施例1多軸型の一方向層の坪量に相当する)で製造されたその対応物、及び縫い合せされていない多軸層で製造されたその対応物の場合に、湿度温度サイクル数の関数としての亀裂密度の進展を示す。
【図10】実施例1の積層品に関して、縫い目における樹脂に富む帯域を示す。
【図11】使用された糸の番手及び種類の関数として、積層品の場合における、縫い合せでの樹脂に富む帯域の高さに相当する『短軸』寸法を示す。
【図12】使用された糸の番手及び種類の関数として、積層品の場合における、縫い合せでの樹脂に富む帯域の高さに相当する『短軸』寸法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、炭素、ガラス、玄武岩、アラミド、シリカ、セラミック及びそれらの混合物の中から選択される材料から成る強化繊維の一方向層を用いて製造される中間材料に特に適している。それらの繊維は、天然であっても合成であっても良い。使用することが出来るセラミックは、特に炭化珪素、並び、アルミナ及びジルコニアのような耐火性酸化物である。それにも拘わらず、航空機分野で使用されている炭素が好ましい。
【0023】
糸の各層は、互いに平行に伸びている糸から成る。糸は、一般に繊維又はフィラメントの集成体から成り、一般に炭素糸の場合1,000〜80,000本のフィラメント、有効には12,000〜24,000本のフィラメントを含有する。本発明との関連で使用するのに特に好ましいのは、1〜24K、優先的には12〜24Kの炭素糸である。構成成分の繊維は、不連続であっても、砕けていても、或いは、好ましくは連続であっても良い。使用される糸は一般的に、本質的に円形の横断面を有する(丸糸と見なされる)か、好ましくは、本質的に平行6面体であるか楕円形である(フラットヤーンと見なされる)。これらの糸は、特定の幅及び厚みを有する。例えば、3,000〜24,000本のフィラメントから成る炭素フラットヤーンは、ほとんどの場合、1〜12mmの幅を有するであろう。炭素糸の中には、その引張弾性率が220GPaと241GPaの間であり、その引張応力破断が3450MPaと4830MPaの間である高抵抗(HR)糸、その引張弾性率が290GPaと297GPaの間であり、その引張応力破断が3450MPaと6200MPaの間である中間弾性率(IM)糸、及びその引張弾性率が345GPaと448GPaの間であり、その引張応力破断が3450Paと5520Paの間である高弾性率(HM)糸がある(『ASMハンドブック』、ISBN 0-87170-703-9、ASM2001年版より)。一方向層において、炭素ストランドは、好ましくはポリマー結合材と結び付けられておらず、従って、それらがいかなるポリマー結合材でも含浸されておらず又潤滑されてもいないことを意味するドライと見なされる。しかしながら、炭素繊維は、ほとんどの場合、それらの重量の多くとも2%を有し得る標準的な潤滑重量比を特徴とするが、かかる繊維はドライと見なされたままである。
【0024】
例えば、図1に図解されているように、一方向層は各層において同じ方向に沿って伸びている一組の糸から成る。それらの糸は、該層の全表面にわたる準全体的被覆を確実にするように位置付けられている。本中間材料を構成する層の各々において、それらの糸は、いかなる材料間隙(英語での“gap”)又は重複(英語での“overlap”)をも最小にしながら又は避けながら、縁から縁まで位置付けられている。本明細書の残りにおいて、一方向層は、それが勿論すべての糸が互いに平行である特定のプライを構成するけれども、更なる説明なしに、プライとも呼ばれる。
【0025】
前述及び後述のあらゆる変形にあてはまる特定の一態様において、中間材料の各構成成分一方向層の表面密度は、50g/m2〜600g/m2の範囲、好ましくは130g/m2〜270g/m2の範囲にある。該表面密度は、特に、1998年3月版における規格NF EN 12127により測定することが出来る。本中間製品は、2枚、3枚、4枚、5枚、又はそれより多くの一方向層から成ることが出来る。強化繊維は、各一方向層内で互いに平行に伸びている。しかし、該方向は、一つの層から他の層へと相違している。特に、本発明の中間材料は、角度0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°の中から選択される異方向に伸びている複数の一方向層から成っている。それらの層のすべて又はそれらのいくつかだけが、異なる方向を有することが出来る。例えば、本発明による中間製品は、以下の積み重ね、即ち、0°/90°、90°/0°、45°/135°、135°/45°、90°/0°/90°、0°/90°/0°、135°/45°/135°、45°/135°/45°、0°/45°/90°、90°/45°/0°、45°/0°/90°、90°/0°/45°、0°/135°/90°、90°/135°/0°、135°/0°/90°、90°/0°/135°、45°/0°/135°、135°/0°/45°、45°/135°/0°、0°/135°/45°、45°/135°/90°、90°/135°/45°、135°/45°/0°、0°/45°/135°、135°/45°/90°、90°/45°/135°、60°/0°/120°、120°/0°/60°、30°/0°/150°、150°/0°/30°、135°/0°/45°/90°、90°/45°/0°/135°、45°/135°/0°/90°、90°/0°/135°/45°、0°/45°/135°/90°、90°/135°/45°/90°、90°/135°/0°/45°、45°/0°/135°/90°を用いて製造することが出来るが、ここで0°は、本発明による中間材料を製造することを可能にする機械の前進方向に相当し、かくして縫い合せ糸の一般的方向にも相当する。図1は、縫い合せ糸fにより一緒に組み立てられた、このような3層(3軸)45°/135°/0°の中間製品を図解している。かかる多軸型の製造は知られており、例えば、Tsu Wei Chou及びFranck. K. Koによる、Elsevier Science Publishers B.V.発行、国際標準図書番号0-444-42992-1、1989年版の書物、『繊維構造用複合体、複合材料シリーズ3巻』“Textile Structural Composites, Composite Materials Series Volume 3”、5章、3.3項、又は多軸繊維層を製造するための方法及び装置を記載したフランス特許2761380に記載された従来技術を利用している。特に、それらの一方向層は、該多軸型を製造する時より前に作成することが出来る、即ち、その時にライン上に積み重ねることが出来る。
【0026】
縫い合せ又は編み合せによる結合は、任意の公知技術により、特に縦編機を使用することにより、例えば、環縫い(英語で“chain stitch”)又は本縫い(英語で“lock stitch”)で行うことが出来る。図2は、環縫いを用いた縫い合せ方法を示した、4層多軸型から成る、本発明による中間製品の概要斜視図である。
【0027】
種々な一方向層の縫い合せ又は編み合せによる結合は、互いに平行な線で伸びる縫い合せ又は編み合せにより成し遂げることが出来る。特に、縫い合せ又は編み合せ点は、同じ列内に、好ましくは同じ間隔で、1〜20mmだけ、好ましくは2〜12mmだけ間隔があけられている。同様に、2本の連続した縫い合せ又は編み合せ線は、例えば、互いから2〜50mm、好ましくは5〜15mmだけ間隔があけられている。好ましくは、互いに平行な一連の線を形成する連続したすべての縫い合せ線は、同じ距離だけ間隔があけられるであろう。層間の結合が案内棒移動を用いた『ジグザグ縫い合せ』により成し遂げられる態様は、図3に示されている。有利には、縫い目は、当業者に周知の考え方である望ましくない張力現象を避けるために、充分ゆるいであろう。例えば、環縫いの場合、ゆるい糸は、268g/m2の4層多軸型に関して、3700mm/m〜4000mm/mの吸収糸長さ(LFA)により特徴付けることが出来る。
【0028】
本発明による中間製品は、樹脂マトリックスと組み合せて、特に自動車、航空機、及び海軍の分野における複合部品の製造に使用するように構成されており、そのように使用することを目的としている。該使用方法は直接方法である。かかる部品は、様々な複雑性の積層品の形で存在し得る。
【0029】
複合部品の作成は、本発明による中間製品を金型内でドレーピングすること(draping)、そして多分それを他の強化材料と積み重ねること、を必要とするかもしれない。該積み重ねは、いくつかの本発明による中間製品から成っていても良い。次に、熱硬化性樹脂又はマトリックスを、例えば、該中間製品を含有する金型中への射出(“RTM”法、英語の樹脂トランスファー成形)により、又は、該層の厚さを通しての金型中への注入(“LRI”法、英語の液状樹脂注入、又は“RFI”法、英語の樹脂フィルム注入)により、あるいは他にまた、使用される金型に連続的に適用される、該中間製品の各々上へのローラー又はブラシによる手動の塗布/含浸により、添加する。
【0030】
該マトリックスを構成する樹脂は、熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、及びそれらの混合物の中から選択することが出来る。該樹脂は、特に航空機分野における複合部品の製造に使用される熱硬化性樹脂と一緒に従来から使用されている可塑化添加剤、又は熱可塑性ポリマー粒子、又は他の任意の添加剤を含有することが出来る。
【0031】
最後に、該複合部品は、これらのポリマーの供給業者により推薦され、当業者に知られている、検討されているポリマーの伝統的な熱処理サイクルを用いて得られる。対応するポリマー熱硬化を招く、この熱処理の後段階は、複合部品を製造するための種々の従来技術の方法で伝統的に用いられている。繊維状強化材から複合部品を製造するのに従来から用いられている直接的方法、特に温度及び圧力条件は、本発明による中間製品の作成に直接移すことが出来る。
【0032】
本発明による中間製品は、航空機分野における複合部品、特に航空機に使用される構造部品、例えば、胴体フレーム、翼外板、胴体外板、垂直安定板外板、水平尾翼外板、隔壁、翼けたボックス、リアクター・ブレード、の製造に特に適している。得られる部品はより小さな樹脂に富む帯域を有し、湿度と温度のストレスによる微小亀裂の発生は、非常に制限される。特に、これらの部品は、それらの高さが、該縫い合せ積み重ね物(stitched stack)を構成する一方向層に平行であり、該積み重ね物の中央部に位置する平面で測定して、多くとも0.11 mmに等しい、縫い合せ糸における樹脂に富む帯域を有する。該縫い合せ積み重ね物は、本発明による中間製品に相当する。例えば、該部品の一部を構成する、縫い合せられた4一方向層の積み重ね物の場合、該測定はかくして中央の2層間の平面(該積み重ね物厚みの中央に相当する)で行われ、縫い合せられた3一方向層の積み重ね物の場合、該測定は該中央層の真ん中に位置する平面で行われる。この平面において、ほとんどの場合概略で楕円に例えることが出来る樹脂に富む帯域は、主軸を決めるより大きな寸法を有する。この同じ平面において、該高さは、その主軸に垂直な軸に沿って測定される、樹脂に富む領域の最大寸法である。
【0033】
以下の例は、本発明を説明することを可能にするが、本来限定するものではない。
【0034】
Bが〔45°/0°/135°/90°〕であり、Sが〔90°/135°/0°/45°〕である、4層の疑似等方性B/S/B/S多軸型から成る積層品に関して、微小亀裂の動きを検討した。該積み重ね物は、その場合〔〔45°/0°/135°/90°〕S〕2と、省略形で書かれる。
【0035】
多軸型の各一方向層は、268g/m2の表面密度を有するTenax HTS 5631繊維から成る。各多軸型は5mmのピッチで縫い合せられており、2本の縫い合せ線間の距離も5mmであり、縫い合せのタイプは『環縫い』(英語で『環縫い』(“chain stitch”)又は『鎖編』(“open pillar stitch”))である。吸収糸の長さ(LFA)は3800mm/mである。
【0036】
以下の4本の縫い合せ糸を検討した。
【実施例】
【0037】
実施例1(本発明による):
23 dTexのポリエステル(スイス、Domat CH-7013のEMS-CHEMIEからのGrilon KE-160)
【0038】
比較例2:
49 dTexのポリエステル、INVISTAからのタイプ712(ドイツ、Bad Hersfeld 36251, Berliner StraBe, Werk Bad HersfeldのINVISTA Resins & Fibers GmbH & Co. KG)
【0039】
比較例3:
35 dTexのポリエステル(ドイツ、Guben 03172のTrevira GmbHからの511W)
【0040】
比較例4:
150 dTexのポリヒドロキシエーテル(フェノキシ)(スイス、Domat CH-7013のEMS-CHEMIEから)
【0041】
これらの縫い合せ糸は、供給業者により洗浄されて供給されている、または、非常に低い潤滑重量率(lubrication weight factor)を有している。かくして、使用されている糸は、以下の潤滑重量率を有している。
23 dTex: 重量率<1.2%
35 dTex: 重量率: 0%(製品仕様書から)
49 dTex: 重量率<0.1%
76 dTex: 重量率: 0%(製品仕様書から)
【0042】
使用されている縫い合せ糸は、表1に提示された破断時の靭性及び伸びを有している。
【0043】
【表1】

【0044】
かくして、検討された各積層品は4層の多軸型から成り、各多軸型は上で明確にされた糸で縫い合せられた4枚の一方向層から成る。
【0045】
該積層品は、以下のように組み立てる。即ち、4層に関して0°方向(機械の方向、従って縫い目の方向)を同一に注意深く維持しながら、4組のB/S/B/S列を切断する。次に、それらの層を積み重ねて340 mm x 340 mmの予備成形物を形成する。それから後者をプレス中の射出金型に入れる。60%の繊維容量比(VFR)を得るために、4mmの厚さを有するフレームが該予備成形物を囲んでいる。
【0046】
HexcelによりHexFlow RTM6として販売されているエポキシ樹脂を、該プレスのプラテン(platens)の温度で、120°Cに維持されている該予備成形物の中を通して、80°Cで200 kPa(2 bars)において射出する。2本のプレス・プラテンの各々にかけられている圧力は、500 kPa(5 bars)である。該樹脂が該金型の出口に現れる時、該出口管が閉められて重合サイクルが開始する(3°C/分で180°Cに昇温させ、次に180°Cに2時間維持し、それから5°C/分で冷却した。)
【0047】
航空機部品が受けるかもしれない温度サイクル及び加湿期間を模擬実験することを目的として、該積層品に一つ又はいくつかの湿度と温度のサイクルを受けさせる。
【0048】
以下の湿度温度サイクルを受けるために、50 mm x 60 mm x 4 mmの試料を切り取る。次に各試料を再び削り、それから、該サイクルの適用中に現れる亀裂を数えるために、磨く。
【0049】
湿度と温度のサイクル(Hygrothermal cycle):
湿度と温度の応力には、50°C及び95%湿度における吸湿の固定相、その後に続く1時間の熱サイクルという2相のいくつかの繰り返しが含まれる。これらの熱サイクルは、4分の1時間、−55°Cの平坦域、それに続く80°Cの温度に達する15分間の温度変化、それに続く4分の1時間、80°Cの平坦域、それに続く−55°Cに戻る15分間の温度変化の新相から成る。該負の温度は、それが亜音速飛行で航空機が経験するものに相当するので、選択された。該正の温度は、該脱湿を促進することだけを目的としている。該湿度と温度のサイクルは、図4に示されている。
【0050】
加湿期間を通しての応力は、試料内の水濃度勾配を引起こす。この濃度プロファイルは試料の縁で異なるが、それはその拡散係数が繊維の方向においてより高いからである。繊維の方向は各一方向層において異なるので、その拡散係数も異なり、試料の縁で非常に複雑な水濃度プロファイルを発生する。この現象は、試料を特定の寸法に合せ、検討する帯域を決めるのに考慮した。
【0051】
該湿度と温度のサイクルは、2段階液体冷媒膨張システムを用いた冷却を含めて、Climatique et Thermique Service(フランス、Auriol 13390のZAC du Pujol)からの『CTS(耐候試験システム)』、モデルCS-70/280-15添付書類において作成されている。Carrier(Montluel Cedex 01122 Route du ThilのCARRIER S. A. S.)からの冷却装置モデル、Type 30 RA-040-B 0327-PEEは、環境試験槽冷却システムの第一段階において10°Cで大量の再循環グリコール-水を循環させて、その操作を確実にしている。かかる装置は、180°C〜-70°Cに設定された試験槽の操作限界に近い-50°Cより低い温度でさえも、10°C/分の冷却速度を確実にする。
【0052】
囲い地の作業用容積における湿度は、露点発生器を用いて、管理され調整される。この装置に、ZANDER(ドイツ、ESSEN 45219)からの、乾燥空気の噴射によるZANDER K-MTI乾燥機が、加えられた。一旦該乾燥機の湿度が0%に設定されると、該容積は完全に乾燥していると考えられる。
【0053】
試料調製用の手順は、該湿度と温度のサイクルの後で顕微鏡観察により亀裂を数えるように確立された。材料中の微小亀裂のような内部微小構造を観察する唯一の直接的方法は、切断し、切断面を磨くことである。この方法は、非常に広く行き渡っている。それは、良好な分析に必要な平面度を得るために、布とダイアモンド懸濁液を用いて表面をますます品質の優れた研磨面まで研磨することから成る。
【0054】
縫い合せ線が5cm辺に平行な、5 x 6 cm2の試料を使用する決定がなされた。従って、二つの同等な観察平面が利用できる。湿度と温度のサイクルを受けた各試料において、図5に示されているような切り抜きがなされる。研磨後に、図5に提示された観察面上で中央の例1が観察される。研磨中観察面の調節を可能にするように、切断面は縫い目上に位置していない。
【0055】
縫い合せ糸f及び一方向層Nに関して、切断面Pの位置が図6に示されている。該面Pは、縫い合せ線l及び一方向層Nの面の両方に対して直角である。陰影をつけた領域Zは、縫い目における樹脂に富む帯域を表す。
【0056】
観察に適した鏡面仕上げまで試料を研磨する方法は、そのより大きな延性の故に粗いペーパーを使用する工程において、金属と比べて単純化されている。しかし、ダイアモンド懸濁液を用いた最終研磨段階中は、超音波バス洗浄を組み入れた、より研磨された仕上げが必要である。
【0057】
積層品を構成する多軸型内の一方向層の結合を確実にする縫い目の周期性に起因する樹脂に富む領域の周期性は、観察面の位置を調節する手順の開発を必要とした。実際、縫い合せ域で何が起こるかを学ぶためには、当該域の研究に焦点を合せることが必要である。この目的を達するために、切断面の位置をおおよそ決め、研磨中の磨耗の結果として当該域に関する観察面の位置を調整することが、決定された。この方法により、該研究を行うのに充分正確な、切断面の位置に関する約20ミクロンの精度が許容される。
【0058】
最初に、炭化珪素の丸のこぎりで、例1に関する試験試料を切り抜く。この切抜きは、該刃の前進速度の校正を用いた前進磨耗により得られる。
【0059】
次に、顕微鏡観察に適した鏡面仕上げを可能にする、下記の研磨手順を切断面において実行する。
【0060】
研磨手順
試料をLamPlan 605樹脂(メチルメタクリレートを用いて重合したアクリル樹脂)に埋め込み、自動式圧力非依存性研磨機(PresiからのMecapol P320)で研磨する。このためには、切り抜かれた試料を円筒状金型の底に置く。研磨されるべき表面は、該金型の底に向かって方向を合せる。次に該金型を、約15分で自然発生的に重合する、2成分常温取り付け樹脂(LamPlan 605)で充填する。次に、該試料を該金型から除去し、記述される手順を用いて研磨する。
【0061】
研磨の種々の段階を、表2に記載する。
【0062】
【表2】

【0063】
工程1、2及び3において、該自動式研磨機は、プレートに関して反対回転で150回転/分の速度及びヘッドに関して最大速度(100rpm)を有している。不純物は、流水で除去される。
【0064】
工程4及び5において、該自動式研磨機は、プレートに関して反対回転で300回転/分の速度及びヘッドに関して最大速度(100rpm)を有している。それから不純物は、一滴ずつ導入される潤滑剤で除去される。
【0065】
次に亀裂は、x 5対物レンズ(x 50倍率)を有する顕微鏡(Olympus モデルGX 51 F-T2 SN 4 G 0 9299)上に装着された5メガピクセル・デジタルカメラ(Olympus モデルU-TVO.5XC-2-4F04335)で得られた顕微鏡写真像を分析することにより、数える。該像の分析ソフトウェアは、フランス、Cedex Rungis 94533、74 Rue d’Arcueil BP 90165、Parc d’affaire SilicのOlympus France SASにより市場に出されている“Analysis Pro Five”である。
【0066】
p枚の一方向層における亀裂を見える状態のままにしておく立体裁断(draping:ドレーピング)を有する長さLの試料について、一方向シートiにおけるNi個の亀裂の観察に関して、判断基準dは以下の等式により定義される。
【数1】

【0067】
もしこれらの一方向層において亀裂が見えない状態のままであるならば、因子pは、積層品の一方向層の総数から、炭素繊維が観察面と平行な一方向層の数を差し引いた数である。
【0068】
因子dは、cm-1で表された亀裂の線密度であり、それは、Lの選択に依存して、検討されている応力を受ける材料の固有特性とみなすことが出来る。
【0069】
多軸型において、観察は亀裂が完全に独自の様式で成長することを示している、即ち、不均一な(異性分から成る)試料内の均質樹脂の帯域は、亀裂に、繊維によりそれらに与えられた方向性をそのままにしておかせ、或る層から他の層へとそれらの方向性を変えさせる。
【0070】
図7におけるグラフは、決められた数の湿度・温度サイクルの後で、(該測定方法が破壊的であることを考えると)異なる試料について得られるd因子(亀裂密度と呼ばれる)の値を示す。23 dTex ポリエステルの糸を使用した本発明による積層品は非常に低い亀裂密度を有することが、明らかに示されている。
【0071】
図8は、比較例3(35 dTex ポリエステル)の積層品を用いて、400回の湿度・温度サイクルの後で得られた微小亀裂の像である。
【0072】
樹脂に富む帯域の大きさは、主として、異なる層を縫い合せるのに用いた糸の番手に依存するので、樹脂に富む帯域がより小さい積層品の方が、亀裂密度はより低いこともまた示された。
【0073】
150、76、49及び35 dTexの糸で縫い合せられた層を用いて製造された積層品は、すべて、400回の温度サイクル(150 dTex フェノキシ樹脂糸の場合は800回)程度の早さで亀裂を生じ易いことを示した。
【0074】
23 dTex ポリエステルの糸で縫い合せられた層を用いて製造された積層品だけが、1600回の温度サイクルより前に亀裂を生ずることはなかった。
【0075】
図9は、実施例1の積層品、及び坪量が該多軸型の一つの層に相当する織物で製造されたその対応物、及び縫い合せされていない多軸層で製造されたその対応物の場合に、湿度温度サイクル数の関数としての亀裂密度の進展を示す。
【0076】
本発明による積層品における亀裂の発生は、縫い合せされていない材料における亀裂の発生と一致すると思われる。従って、一方は縫い目に対して特定的であり、他方は全体として複合材料に対して特定的である二つの形態の亀裂が、共存すると思われる。更に、本発明による積層品の場合、1600回の温度サイクルまで、亀裂は主として縫い合せ帯域に位置しているが、2000回の温度サイクルで、亀裂はもはや縫い合せ帯域だけには位置しておらず、樹脂に富む帯域の外側にも存在している。
【0077】
このような結果は、本発明の貢献を明らかにするものである、即ち、1600サイクル後に生ずる亀裂は縫い合せに起因するのではなくて、複合材料の実際の性質に起因するので、23 dTexの縫い合せ糸は、実際に亀裂の発生を最小にすることを可能にするのである。
【0078】
樹脂に富む帯域の特有の寸法は、光学顕微鏡検査により直接測定される。観察に適した表面を得るために使用される埋め込み及び研磨の手順は、微小亀裂の特徴付けに使用されるものと同じである。縫い目の検討を位置付ける前の場合に用いた、研磨中に磨耗される試料体積の調節は、多軸層内の同じ基準位置における、即ち、縫い目ループからの同じ距離における層の特有の寸法を測定するのにここで用いられる。
【0079】
しかしながら、試料の調製は、試料の大きさ及び埋め込みピンにおけるその方向付けにより相違する。試料は、厚さの変更なしにプレートから直接切り抜かれる。従って、試料の大きさは、検討される表面に関して2×2 cm2である。
【0080】
切り抜かれた試料は、直径が32 mmの円筒状金型の底に置く。研磨すべき表面は、該金型の底の方に向ける。従って、該試料は、平らに置かれ、そのままで内部微小亀裂を特徴付ける縁の上には置かれない。
【0081】
縫い目における樹脂に富む帯域の寸法は、下記の表3に明確にされた三つの基準により、x 5対物レンズ(x 50倍率)を有する顕微鏡(Olympus モデルGX 51 F-T2 SN 4 G 0 9299)上に装着された5メガピクセル・デジタルカメラ(Olympus モデルU-TVO.5XC-2-4F04335)で得られた顕微鏡写真像について測定した。該像の分析ソフトウェアは、フランス、Cedex Rungis 94533、74 Rue d’Arcueil BP 90165、Parc d’affaire SilicのOlympus France SASにより市場に出されている“Analysis Pro Five”である。該測定は、該像を得るのに用いた倍率を該処理ソフトウェアに入力することにより、該像について直接おこなわれる。研磨用平面を考えると、該像は、該中間製品の一方向層に平行で、該中間製品の中央に位置する平面から得られる。これらの測定は、二つの主要な軸、即ち、該レンズ状帯域の長径(major axis)及び短径(minor axis)に沿ってなされる。図10は、23 dTexの糸を用いて製造された実施例1の積層品に関して、縫い目における樹脂に富む帯域を示し、該帯域の長径及び短径についての高さhを明らかにしている。該長径は、該レンズ状帯域の両端を通る直線により明確にされ、該短径は、該先行する軸に対して直角である。該短径(高さhとも呼ばれる)は、その最大値の点に位置している。
【0082】
一試料について、各タイプの縫い合せに対して4回の測定を行った。表3は、得られた値の平均値をそれらの標準偏差と共に提示している。全体的な測定の観点から見れば、それらの糸間の主要な差は、該樹脂に富む領域の『高さ』であると思われる。『高さ』とは、上記で明確にしたように、楕円に例えることが出来そうな該樹脂に富む領域の短径であって、検討されている縫い合せられた積み重ね物を構成する一方向層に平行であってこの積み重ね物の中央に位置している平面において、該積み重ね物を通る縫い合せ糸の通過により形成される樹脂に富む帯域の範囲を定める該樹脂に富む領域の短径という意味である。
【0083】
【表3】

【0084】
本発明による積層品に関して、該樹脂に富む帯域の『高さ』は0.10 mmである。
【0085】
得られた様々な結果は、図11及び12に示されており、23 dTexの糸が樹脂に富む帯域の最小高さを形成することを、明示している。
【0086】
これらの図面において、50dTexまでは、樹脂に富む帯域における高さの分散が、糸の番手が増加するに従って、大きくなるようにも見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の一方向強化繊維からなり、該2層の各々における繊維が異なる方向に伸びており、それらの層が少なくとも1本の縫い糸又は編み糸を用いた縫い合せ又は編み合せにより一緒に結合されている、熱硬化性樹脂マトリックスとの結び付きにより複合部品を組み立てるための中間製品であって、前記の縫い糸又は編み糸が、EN ISO 2060の規格により測定して、30 dTex以下の、好ましくは25 dTex以下の番手を有することを特徴とする、前記の中間製品。
【請求項2】
該縫い糸又は編み糸の材料が、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポルマー(LCP)、ポリケトン、ポリアミド、炭素、ガラス、玄武岩、シリカ、及びそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の中間製品。
【請求項3】
該縫い糸又は編み糸が、ASTM D629-99(第9項)の規格により測定して、0.4%以下の吸湿係数を有する材料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間製品。
【請求項4】
該縫い糸又は編み糸が、該複合部品を造る温度で該マトリックス樹脂に不溶性の材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項5】
該縫い糸又は編み糸が、1995年版のEN ISO 2062により測定して、20 cN/Texと100 cN/Texとの間の破壊靭性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項6】
該縫い糸又は編み糸が、1995年版のISO EN 2062により測定して、10%と60%との間の破断伸びを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項7】
該縫い糸又は編み糸が、ポリエステル類の23 dTexポリエステル糸であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項8】
該一方向層の強化繊維が、以下の材料:炭素、ガラス、玄武岩、アラミド、シリカ、セラミック及びそれらの混合物から選択される材料から形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項9】
該一方向層の各々における表面密度が、1998年3月の規格NF EN 12127により測定して、50 g/m2〜600 g/m2の範囲、好ましくは130 g/m2〜270 g/m2の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項10】
該縫い合せ結合又は編み合せ結合が、平行線に沿って伸びる縫い合せ又は編み合せにより行われていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項11】
該縫い合せ点又は編み合せ点が、同じ線内で1〜20 mm、好ましくは2〜12 mmだけ間隔が空けられており、該縫い合せ線又は編み合せ線が、互いに2〜50 mm、好ましくは5〜15 mmだけ間隔が空けられていることを特徴とする、請求項9に記載の中間製品。
【請求項12】
角度、0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°の中から選択される異方向に伸びている複数の一方向層からなっていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の中間製品。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の中間材料に、熱硬化性樹脂を、特に注入又は射出により、添加する工程、次に、所定の温度及び圧力のサイクルにおける重合/網状化の段階により所望の部品を硬化し、続いて冷却する工程を含む、複合部品の製造方法。
【請求項14】
該樹脂マトリックスが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、及びそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法により得ることの出来る、少なくとも部分的に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の中間製品と熱硬化性樹脂マトリックスとの結び付きから構成されている複合部品。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のいくつかの中間製品の積み重ねを、熱硬化性樹脂マトリックスと組み合わせていることを特徴とする、請求項15に記載の複合部品。
【請求項17】
それらの平均高さが、該中間製品の一方向層に平行であり該中間製品の中央部に位置する平面で測定して、多くとも0.11 mmに等しい、縫い目における樹脂に富む帯域を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の複合部品。
【請求項18】
航空機で使用される構造部品、例えば、胴体フレーム、翼外板、胴体外板、垂直安定板外板、水平尾翼外板、隔壁、翼けたボックス、リアクター・ブレードの中から選択される請求項15〜17のいずれか1項に記載の複合部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−511450(P2012−511450A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540159(P2011−540159)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052441
【国際公開番号】WO2010/067003
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(509341374)
【Fターム(参考)】