複数の二次電池セルを電源とする電動工具
【課題】 複数の二次電池セルを電源とする電動工具において、二次電池セルが無駄に破棄されることを防止する。
【解決手段】 電動工具10は、複数の二次電池セル112を電源とする電動工具であって、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能となっている。電動工具10は、各々の二次電池セル112の状態を監視する監視回路140と、その監視回路140による監視結果を各々の二次電池セル112について表示する表示回路144を備えることが好ましい。この場合、監視回路140は、各々の二次電池セル112の出力電圧を監視し、表示回路144は、各々の二次電池セル112について、出力電圧が所定範囲内にあるのか否かを表示することが好ましい。
【解決手段】 電動工具10は、複数の二次電池セル112を電源とする電動工具であって、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能となっている。電動工具10は、各々の二次電池セル112の状態を監視する監視回路140と、その監視回路140による監視結果を各々の二次電池セル112について表示する表示回路144を備えることが好ましい。この場合、監視回路140は、各々の二次電池セル112の出力電圧を監視し、表示回路144は、各々の二次電池セル112について、出力電圧が所定範囲内にあるのか否かを表示することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池セルを電源とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電動工具が開示されている。この電動工具は、工具本体と、工具本体に着脱可能なバッテリパックを備えている。バッテリパックには複数の二次電池セルが収容されており、複数の二次電池セルによって電動工具の本体へ電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−161340号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池セルは、充放電を繰り返すことによって劣化する。従って、バッテリパックを繰り返し使用すれば、バッテリパックの性能は低下していき、やがてバッテリパックの交換が必要となる。ここで、使用済みのバッテリパックを検証してみると、全ての二次電池セルが劣化しているわけではなく、一部の二次電池セルのみが大きく劣化していることが判明した。即ち、従来の電動工具では、バッテリパックを交換する際に、未だ使用できる二次電池セルが無駄に破棄されていた。
【0005】
上記の問題を鑑み、本発明は、複数の二次電池セルを電源とする電動工具において、二次電池セルが無駄に破棄されることを防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明では、複数の二次電池セルを電源とする電動工具において、各々の二次電池セルを個別に着脱可能とする構成を採用する。それにより、劣化又は故障した二次電池セルのみを選択的に交換することができ、使用可能な二次電池セルが無駄に破棄されることを防止することができる。
【0007】
上記した電動工具は、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路と、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を、さらに備えることが好ましい。この構成によると、ユーザは、劣化又は故障した二次電池セルを特定し、二次電池セルの交換を正しく行うことができる。
【0008】
前記した監視回路は、少なくとも、各々の二次電池セルの出力電圧と温度の少なくとも一方を監視することが好ましい。この場合、前記した表示回路は、各々の二次電池セルについて、出力電圧又は温度が所定範囲内にあるのか否かを表示することが好ましい。ここでいう所定範囲とは、電動工具において予め設定された数値的範囲であり、例えば、所定の上限値以下、所定の下限値以上、又は、所定の上限値以下であって所定の下限値以上といった範囲を意味する。
【0009】
上記した電動工具は、複数の二次電池セルによる電力供給を遮断するスイッチ回路をさらに備えることが好ましい。この場合、前記した監視回路は、少なくとも一つの二次電池セルの出力電圧が所定範囲内にないときに、スイッチ回路を開放することが好ましい。それにより、劣化又は故障した二次電池セルが使用されることを防止することができる。
【0010】
前記した電動工具は、工具本体と、その工具本体に着脱可能なバッテリパックを備え、そのバッテリパック内に複数の二次電池セルを収容する構成とすることが好ましい。ただし、そのような着脱可能なバッテリパックを備えず、工具本体内に複数の二次電池セルを直接的に収容する構成とすることもできる。
【0011】
前記した電動工具は、バッテリパックを充電するパック充電器をさらに備えることが好ましい。この場合、バッテリパックは、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路を有し、パック充電器は、バッテリパックの監視回路と通信可能に接続し、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を有することが好ましい。
【0012】
前記した電動工具は、取り外された二次電池セルを充電するセル充電器をさらに備えることが好ましい。この場合、セル充電器は、二次電池セルの温度を測定する温度センサを有することが好ましい。この構成によると、セル充電器は、二次電池セルの温度に応じて、その充電を適切に制御することができる。
【0013】
前記したセル充電器は、充電中の二次電池セルの出力電圧が所定の上限値に達するか、充電開始から所定の時間が経過した時に、二次電池セルの充電を終了することが好ましい。それにより、二次電池セルの過充電を防止するとともに、劣化又は故障した二次電池セルを無駄に充電し続けることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の工具本体とバッテリパックの外観を示す図。
【図2】工具本体から取り外されたバッテリパックを示す図。
【図3】ハウジングの蓋を開放したバッテリパックを示す図。
【図4】パック充電器の外観を示す図。
【図5】セル充電器の外観を示す図。
【図6】実施例1の工具本体及びバッテリパックの回路構成を示す図。なお、複数の二次電池セルの一部は図示省略されている。
【図7】工具本体及びバッテリパックの回路構成の変形例を示す図。
【図8】バッテリパックの他の一例を示す図。
【図9】バッテリパックの他の一例を示す図。
【図10】実施例2の電動工具を示す図。
【図11】図10中のXI−XI線矢視図。
【図12】図10中のXII−XII線矢視図。
【図13】実施例2の電動工具の回路構成を示す図。なお、複数の二次電池セルの一部は図示省略されている。
【図14】実施例3の電動工具の外観を示す図。
【図15】図14中のXV−XV線断面図。
【図16】図14中のXVI−XVI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
図面を参照して、実施例1の電動工具10について説明する。図1、図2は、電動工具10の外観を示している。図1、図2に示すように、電動工具10は、工具本体12と、工具本体12に着脱可能なバッテリパック100を備えている。バッテリパック100は、再充電可能なバッテリパックであり、電動工具10の電源として工具本体12へ電力を供給する。工具本体12には、工具が着脱可能な工具ホルダ14と、ユーザによって操作されるメインスイッチ16と、ユーザによって把持されるグリップ18が設けられている。工具本体12の内部には、工具ホルダ14を駆動するモータ50や各種回路(図6参照)が収容されている。
【0016】
工具本体12は、バッテリ取付部20を有している。バッテリ取付部20は、グリップ18の下端に設けられている。図2に示すように、バッテリ取付部20には、バッテリパック100を着脱することができる。バッテリパック100には、バッテリ取付部20とスライド可能に係合する工具接続部104が設けられている。工具接続部104は、バッテリパック100のハウジング102の上面に形成されている。バッテリパック100をバッテリ取付部20に対して後方へスライドさせると、バッテリ取付部20へバッテリパック100を取り付けることができ、バッテリパック100をバッテリ取付部20に対して前方へスライドさせると、バッテリ取付部20からバッテリパック100を取り外すことができる。バッテリ取付部20へバッテリパック100を取り付けると、バッテリパック100は工具本体12と機械的に及び電気的に接続する。
【0017】
図3に示すように、バッテリパック100は、複数の二次電池セル112を有している。複数の二次電池セル112は、ハウジング102に収容されている。二次電池セル112は、リチウムイオン電池セルであり、その公称電圧は3.6ボルトである。本実施例のバッテリパック100では、十本のリチウムイオン電池セル112が直列に接続されているので、バッテリパック100の全体としての公称電圧は36ボルトである。なお、二次電池セル112の種類、数、接続方式(直列/並列)は、特に限定されず、自由に設計することができる。また、バッテリパック100の公称電圧も、特定の電圧値に限定されない。
【0018】
本実施例のバッテリパック100では、ハウジング102が開閉可能に構成されている。即ち、ハウジング102には、開口部106とその開口部106を開閉するカバー108が設けられている。カバー108は、開口部106を液密に閉塞することができる。カバー108の内面には、複数の電極板110が配設されている。各々の電極板110は、上限に隣接する二次電池セル112に接触し、それらを電気的に接続する。開口部106は、二次電池セル112よりも十分に大きく、開口部106を通じてハウジング102内の二次電池セル112を出し入れすることができる。
【0019】
上記したように、本実施例のバッテリパック100は、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能に構成されている。それにより、必要に応じて、ハウジング102内の一又は複数の二次電池セル112を、別に用意した一又は複数の二次電池セルと交換することができる。よく知れられているように、二次電池セル112は、充放電を繰り返すことによって劣化する。従って、バッテリパック100を繰り返し使用すれば、バッテリパック100の性能は低下していく。多くの場合、性能が低下したバッテリパック100では、全ての二次電池セル112が劣化しているわけではなく、一部の二次電池セル112のみが大きく劣化又は故障している。従って、劣化又は故障した二次電池セル112のみを交換するだけで、バッテリパック100の性能を十分に回復させることができる。二次電池セル112の交換を個別に可能とすることで、各々の二次電池セル112をその寿命が尽きるまで使うことができ、使用可能な二次電池セル112を廃棄するという無駄を防ぐことができる。
【0020】
バッテリパック100には、表示部144が設けられている。表示部144は、後述するメインコントローラ140(図6参照)によって制御される。表示部144は、一又は複数の二次電池セル112が劣化又は故障したときに、ユーザがその二次電池セル112を特定可能な表示を行う。本実施例では、一例ではあるが、表示部144が複数の発光ダイオードを有しており、劣化又は故障した二次電池セル112に対応する発光ダイオードが点灯するよう構成されている。なお、表示部144は、7セグメントディスプレイ、ドットマトリクスディスプレイ、液晶ディスプレイを用いたものでもよい。表示部144による表示により、ユーザは、劣化又は故障した二次電池セル112を、間違えることなく交換することができる。なお、メインコントローラ140が劣化又は故障した二次電池セル112を特定する処理については、後段において説明する。
【0021】
本実施例の電動工具10には、図4に示すパック充電器200と、図5に示すセル充電器220がそれぞれ用意されている。パック充電器200は、交流電源(コンセント)に接続して、バッテリパック100を充電する充電器である。パック充電器200は、バッテリパック100が着脱可能なパック取付部204を有している。パック取付部204は、パック充電器200のハウジング202の上面に設けられている。パック取付部204には、バッテリパック100と電気的に接続するための複数の端子が設けられている。その複数の端子は、保護プレート206によって覆われており、図4において図示されない。また、パック充電器200には、表示部208が設けられている。表示部208は、充電中、充電完了、各種の異常といった情報を表示する。本実施例の表示部208は、複数の発光ダイオードを用いて構成されているが、その構成は、バッテリパック100の表示部144と同じように特に限定されない。
【0022】
パック充電器200は、バッテリパック100が取り付けられたときに、バッテリパック100のメインコントローラ140と通信可能に接続する。そして、パック充電器200は、メインコントローラ140からの指示に従い、表示部144によって劣化又は故障した二次電池セル112の表示を行うことができる。それにより、ユーザがバッテリパック100を充電するときにも、劣化又は故障した二次電池セル112の存在をユーザに報知し、その交換を促すことができる。
【0023】
一方、セル充電器220は、交流電源(コンセント)に接続して、二次電池セル112を単体で充電する充電器である。セル充電器220は、二次電池セル112が着脱可能なセル取付部224を有している。セル取付部224は、セル充電器220のハウジング222の正面に設けられている。セル取付部224には、二次電池セル112と電気的に接続するための複数の端子が設けられている。また、セル充電器220には、セル取付部224をスライドカバー226、及び、表示部230が設けられている。表示部230は、充電中、充電完了、各種の異常といった情報を表示する。本実施例の表示部230は、複数の発光ダイオードを用いて構成されているが、その構成は、バッテリパック100の表示部144と同じように特に限定されない。
【0024】
加えて、セル充電器220には、温度センサ228が設けられている。温度センサ228は、セル取付部224の近傍に配置されており、二次電池セル112の温度を測定することができる。セル充電器220は、温度センサ228の検出結果に応じて、二次電池セル112への充電電流及び充電電圧を制御することができる。通常、セル充電器220は、二次電池セル112の温度及び出力電圧を監視しながら充電し、二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達したときに、充電を終了する。このとき、セル充電器220は、充電開始からの経過時間を計測しながら、充電を行う。そして、所定の下限時間よりも短時間で二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達したときは、二次電池セル112に劣化又は故障が生じているとして、その旨を表示部230によって表示する。あるいは、所定の上限時間が経過しても二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達しないときも、二次電池セル112に劣化又は故障が生じているとして、その旨を表示部230によって表示する。
【0025】
通常、ユーザは、パック充電器200によってバッテリパック100の充電を行い、セル充電器220を使用する必要はない。しかしながら、劣化又は故障した二次電池セル112の交換を行う場合に、セル充電器220を有効に使用することができる。例えば、劣化又は故障したと判定された二次電池セル112を、セル充電器220によって充電してみることで、本当に劣化又は故障しているのか否かを確認することができる。また、交換用に用意した新しい二次電池セル112を、セル充電器220によって事前に充電することによって、既存する二次電池セル112との間で充電レベルを合わせることができる。
【0026】
次に、図6を参照して、工具本体12の電気的な構造について説明する。工具本体12は、モータ50と工具コントローラ54を備えている。工具コントローラ54は、メインスイッチ16に接続されている。ユーザがメインスイッチ16に加えた操作量に応じて、メインスイッチ16から工具コントローラ54へ速度指令信号が送信される。加えて、工具本体12は、正極入力端子62、第1通信端子64、第2通信端子66、負極入力端子68を備えている。これらの端子は、工具本体12のバッテリ取付部20に配置されている。
【0027】
正極入力端子62と負極入力端子68は、電力供給回路52によってモータ50へそれぞれ接続されている。正極入力端子62とモータ50を接続する電力供給回路52には、メインスイッチ16が設けられている。第1通信端子64は、メインスイッチ16とモータ50の間の電力供給回路52に接続されている。それにより、メインスイッチ16がオンされている間は、第1通信端子64の電位が正極入力端子62と同電位になり、メインスイッチ16がオフされている間は、第1通信端子64の電位が負極入力端子68と同電位になる。即ち、第1通信端子64は、メインスイッチ16のオンとオフに応じて、高低の電圧信号を出力する。第2通信端子66は、工具コントローラ54へ電気的に接続されている。
【0028】
続いて、図6を参照して、バッテリパック100の電気的な構造について説明する。図6に示すように、バッテリパック100は、正極出力端子162、第1通信端子164、第2通信端子166、負極出力端子168を備えている。これらの端子は、バッテリパック100の工具接続部104に配置されている。バッテリパック100が工具本体12に取り付けられると、バッテリパック100の正極出力端子162、第1通信端子164、第2通信端子166及び負極出力端子168は、工具本体12の正極入力端子62、第1通信端子64、第2通信端子66及び負極入力端子68へそれぞれ電気的に接続される。それにより、バッテリパック100は工具本体12へ電気的に接続される。
【0029】
バッテリパック100は、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124を備えている。複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、ハウジング102に収容された複数の二次電池セル112へ電気的に接続される。複数の二次電池セル112は、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124を介して、直列に接続される。直列に接続された複数の二次電池セル112の両端に位置するセル正極接続端子122とセル負極接続端子124は、電力供給回路152を通じて、正極出力端子162及び負極出力端子168へそれぞれ電気的に接続されている。それにより、直列に接続された複数の二次電池セル112が、正極出力端子162及び負極出力端子168を介して、工具本体12へ電気的に接続される。
【0030】
セル負極接続端子124と負極出力端子168の間の電力供給回路152には、電流値を測定するためのシャント抵抗130と、工具本体12への電力供給を遮断するためのスイッチ回路(ここでは電界効果トランジスタ)148が設けられている。シャント抵抗130は、アンプ回路138を介してメインコントローラ140に接続されている。スイッチ回路148はメインコントローラ140に接続されており、メインコントローラ140によって制御される。メインコントローラ140は、シャント抵抗130に生じる電圧に基づいて、二次電池セル112の放電電流を検出することができる。メインコントローラ140は、検出した電流値が所定の上限値に達したときに、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0031】
各々のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、マルチプレクサ134及びバッファ回路136を介して、メインコントローラ140に接続されている。それにより、メインコントローラ140には、各々の二次電池セル112の出力電圧が入力される。メインコントローラ140は、各々の二次電池セル112の出力電圧を監視しており、二次電池セル112の出力電圧が所定の下限値を下回るか、所定の上限値を上回る場合に、その二次電池セル112は劣化又は故障したと判定する。この場合、メインコントローラ140は、表示部144によって、劣化又は故障した二次電池セル112を特定可能に表示する。図6に示すように、本実施例の表示部144は、複数の発光ダイオードを有し、複数の発光ダイオードはマルチプレクサ142を介してメインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、劣化又は故障した二次電池セル112に対応する発光ダイオードを点灯させることによって、劣化又は故障した二次電池セル112をユーザに教示する。さらにメインコントローラ140は、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0032】
バッテリパック100は、複数の温度センサ126を備えている。本実施例の温度センサ126は、一例ではあるがサーミスタである。各々の温度センサ126は、対応する一つの二次電池セル112の近傍に配置されており、対応する一つの二次電池セル112の温度に応じた温度信号を出力する。複数の温度センサ126は、マルチプレクサ132を介して、メインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、各々の温度センサ126の検出温度を監視しており、検出された温度が所定の上限値を上回る場合に、二次電池セル112の温度異常が発生したと判定する。この場合、メインコントローラ140は、表示部144によって、温度異常の二次電池セル112を表示することができる。さらにメインコントローラ140は、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0033】
バッテリパック100は、メインスイッチ検出回路146を備えている。メインスイッチ検出回路146は、第1通信端子164に接続されており、メインスイッチ16のオンオフを検出することができる。メインスイッチ検出回路146は、メインスイッチ16がオフされている間、メインコントローラ140へハイレベルの電圧信号(Vcc)を出力し、メインスイッチ16がオンされている間は、メインコントローラ140へローレベルの電圧信号(GND)を出力する。メインコントローラ140は、メインスイッチ検出回路146の出力信号に基づいて、メインスイッチ16のオンオフを検出することができる。メインコントローラ140は、前述した異常等によってスイッチ回路148をオフしたときは、メインスイッチ16がオフされるまで、スイッチ回路148をオフし続ける。
【0034】
メインコントローラ140は、第2通信端子166に接続されており、工具本体12の工具コントローラ54と通信可能に接続される。先に説明したように、工具コントローラ54は、ユーザによるメインスイッチ16の操作量に応じて、速度指令信号を出力する。メインコントローラ140は、速度指令信号を受信し、受信した速度指令信号に応じてスイッチ回路148をPWM制御することができる。それにより、ユーザによるメインスイッチ16の操作量に応じて、モータ50の回転速度を調節することができる。
【0035】
図7は、工具本体12及びバッテリパック100の回路構成の変形例を示す。図7に示すように、スイッチ回路148は、工具本体12に設けることもできる。この場合、工具コントローラ54をスイッチ回路148に接続し、工具コントローラ54によってスイッチ回路148を制御する構成とするとよい。工具コントローラ54は、第2通信端子66、166を介してメインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、前述した異常等を検出したときに、工具コントローラ54を介してスイッチ回路148をオフすることができる。即ち、メインコントローラ140は工具コントローラ54へ指令を与え、指令を受けた工具コントローラ54がスイッチ回路148をオフするように構成することができる。
【0036】
先にも説明したように、本実施例のバッテリパック100は、十本のリチウムイオン二次電池セル112を有するが、二次電池セル112の種類や数は特に限定されない。図8、図9に示すように、各々の二次電池セル112が個別に着脱可能である限り、二次電池セル112の数や配置は適宜変更することができる。
【0037】
(実施例2)
図面を参照して、実施例2の電動工具310について説明する。上記した実施例1の電動工具10では、複数の二次電池セル112が、工具本体12に着脱可能なバッテリパック100に収容されていたのに対して、本実施例の電動工具310では、図10、図11、図12に示すように、複数の二次電池セル112が、工具本体12のへ直接的に取り付けられている。以下、本実施例の電動工具310について説明するが、実施例1の電動工具10と共通する構成については、同一の参照番号を付すことによって説明を省略する。
【0038】
電動工具310の工具本体12には、セル収容部320が設けられている。セル収容部320は、複数の二次電池セル112を収容することができる。セル収容部320は、グリップ18の先端に設けられている。セル収容部320には、開閉可能なカバー322が設けられている。カバー322を開放すると、各々の二次電池セル112をセル収容部320に対して個別に着脱することができる。カバー322を閉じると、セル収容部320は液密に閉塞される。
【0039】
図13は、本実施例の電動工具310の回路構成を示している。図13に示される回路構成を、図6及び図7に示される回路構成と比較して理解されるように、本実施例の電動工具310の回路構成は、実施例1の工具本体12及びバッテリパック100の回路構成を、一体化したものに相当する。従って、本実施例の回路構成については、実施例1の説明を参照するものとし、重複して説明することは避けることとする。実施例1との相違点として、本実施例では、実施例1で説明した工具コントローラ54がメインコントローラ140へ統合されている。また、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、セル収容部320内に配置されている。また、複数の温度センサ126は、複数の二次電池セル112の温度をそれぞれ検出できるよう、セル収容部320の近傍に配置されている。また、表示部144は、工具本体12のユーザが視認可能な位置に配設されている。
【0040】
本実施例の電動工具310も、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能に構成されている。それにより、必要に応じて、工具本体12内の一又は複数の二次電池セル112を、別に用意した一又は複数の二次電池セルと交換することができる。二次電池セル112の交換を個別に可能とすることで、各々の二次電池セル112をその寿命が尽きるまで使うことができ、使用可能な二次電池セル112を廃棄するという無駄を防ぐことができる。
【0041】
一例ではあるが、本実施例の工具本体12は、五本のリチウムイオン二次電池セル112を有する。ただし、二次電池セル112の種類や数は特に限定されない。図14、図15、図16に示すように、各々の二次電池セル112が個別に着脱可能である限り、二次電池セル112の数や配置は適宜変更することができる。なお、図14、図15、図16に示す変形例では、工具本体12のセル収容部320に八本のリチウムイオン二次電池セル112が収容可能であり、カバー322を取り外すことによって、各々の二次電池セル112を着脱することができるように構成されている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0043】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10、310、320:電動工具
12:工具本体
20:バッテリ取付部
50:モータ
100:バッテリパック
102:バッテリパックのハウジング
106:バッテリパックのハウジングの開口部
108:バッテリパックのハウジングの開口部に設けられたカバー
112:二次電池セル
126:温度センサ
140:メインコントローラ
144:表示部
148:スイッチ回路
200:パック充電器
220:セル充電器
228:セル充電器の温度センサ
320:セル収容部
322:工具本体のセル収容部のカバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池セルを電源とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電動工具が開示されている。この電動工具は、工具本体と、工具本体に着脱可能なバッテリパックを備えている。バッテリパックには複数の二次電池セルが収容されており、複数の二次電池セルによって電動工具の本体へ電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−161340号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池セルは、充放電を繰り返すことによって劣化する。従って、バッテリパックを繰り返し使用すれば、バッテリパックの性能は低下していき、やがてバッテリパックの交換が必要となる。ここで、使用済みのバッテリパックを検証してみると、全ての二次電池セルが劣化しているわけではなく、一部の二次電池セルのみが大きく劣化していることが判明した。即ち、従来の電動工具では、バッテリパックを交換する際に、未だ使用できる二次電池セルが無駄に破棄されていた。
【0005】
上記の問題を鑑み、本発明は、複数の二次電池セルを電源とする電動工具において、二次電池セルが無駄に破棄されることを防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明では、複数の二次電池セルを電源とする電動工具において、各々の二次電池セルを個別に着脱可能とする構成を採用する。それにより、劣化又は故障した二次電池セルのみを選択的に交換することができ、使用可能な二次電池セルが無駄に破棄されることを防止することができる。
【0007】
上記した電動工具は、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路と、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を、さらに備えることが好ましい。この構成によると、ユーザは、劣化又は故障した二次電池セルを特定し、二次電池セルの交換を正しく行うことができる。
【0008】
前記した監視回路は、少なくとも、各々の二次電池セルの出力電圧と温度の少なくとも一方を監視することが好ましい。この場合、前記した表示回路は、各々の二次電池セルについて、出力電圧又は温度が所定範囲内にあるのか否かを表示することが好ましい。ここでいう所定範囲とは、電動工具において予め設定された数値的範囲であり、例えば、所定の上限値以下、所定の下限値以上、又は、所定の上限値以下であって所定の下限値以上といった範囲を意味する。
【0009】
上記した電動工具は、複数の二次電池セルによる電力供給を遮断するスイッチ回路をさらに備えることが好ましい。この場合、前記した監視回路は、少なくとも一つの二次電池セルの出力電圧が所定範囲内にないときに、スイッチ回路を開放することが好ましい。それにより、劣化又は故障した二次電池セルが使用されることを防止することができる。
【0010】
前記した電動工具は、工具本体と、その工具本体に着脱可能なバッテリパックを備え、そのバッテリパック内に複数の二次電池セルを収容する構成とすることが好ましい。ただし、そのような着脱可能なバッテリパックを備えず、工具本体内に複数の二次電池セルを直接的に収容する構成とすることもできる。
【0011】
前記した電動工具は、バッテリパックを充電するパック充電器をさらに備えることが好ましい。この場合、バッテリパックは、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路を有し、パック充電器は、バッテリパックの監視回路と通信可能に接続し、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を有することが好ましい。
【0012】
前記した電動工具は、取り外された二次電池セルを充電するセル充電器をさらに備えることが好ましい。この場合、セル充電器は、二次電池セルの温度を測定する温度センサを有することが好ましい。この構成によると、セル充電器は、二次電池セルの温度に応じて、その充電を適切に制御することができる。
【0013】
前記したセル充電器は、充電中の二次電池セルの出力電圧が所定の上限値に達するか、充電開始から所定の時間が経過した時に、二次電池セルの充電を終了することが好ましい。それにより、二次電池セルの過充電を防止するとともに、劣化又は故障した二次電池セルを無駄に充電し続けることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の工具本体とバッテリパックの外観を示す図。
【図2】工具本体から取り外されたバッテリパックを示す図。
【図3】ハウジングの蓋を開放したバッテリパックを示す図。
【図4】パック充電器の外観を示す図。
【図5】セル充電器の外観を示す図。
【図6】実施例1の工具本体及びバッテリパックの回路構成を示す図。なお、複数の二次電池セルの一部は図示省略されている。
【図7】工具本体及びバッテリパックの回路構成の変形例を示す図。
【図8】バッテリパックの他の一例を示す図。
【図9】バッテリパックの他の一例を示す図。
【図10】実施例2の電動工具を示す図。
【図11】図10中のXI−XI線矢視図。
【図12】図10中のXII−XII線矢視図。
【図13】実施例2の電動工具の回路構成を示す図。なお、複数の二次電池セルの一部は図示省略されている。
【図14】実施例3の電動工具の外観を示す図。
【図15】図14中のXV−XV線断面図。
【図16】図14中のXVI−XVI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
図面を参照して、実施例1の電動工具10について説明する。図1、図2は、電動工具10の外観を示している。図1、図2に示すように、電動工具10は、工具本体12と、工具本体12に着脱可能なバッテリパック100を備えている。バッテリパック100は、再充電可能なバッテリパックであり、電動工具10の電源として工具本体12へ電力を供給する。工具本体12には、工具が着脱可能な工具ホルダ14と、ユーザによって操作されるメインスイッチ16と、ユーザによって把持されるグリップ18が設けられている。工具本体12の内部には、工具ホルダ14を駆動するモータ50や各種回路(図6参照)が収容されている。
【0016】
工具本体12は、バッテリ取付部20を有している。バッテリ取付部20は、グリップ18の下端に設けられている。図2に示すように、バッテリ取付部20には、バッテリパック100を着脱することができる。バッテリパック100には、バッテリ取付部20とスライド可能に係合する工具接続部104が設けられている。工具接続部104は、バッテリパック100のハウジング102の上面に形成されている。バッテリパック100をバッテリ取付部20に対して後方へスライドさせると、バッテリ取付部20へバッテリパック100を取り付けることができ、バッテリパック100をバッテリ取付部20に対して前方へスライドさせると、バッテリ取付部20からバッテリパック100を取り外すことができる。バッテリ取付部20へバッテリパック100を取り付けると、バッテリパック100は工具本体12と機械的に及び電気的に接続する。
【0017】
図3に示すように、バッテリパック100は、複数の二次電池セル112を有している。複数の二次電池セル112は、ハウジング102に収容されている。二次電池セル112は、リチウムイオン電池セルであり、その公称電圧は3.6ボルトである。本実施例のバッテリパック100では、十本のリチウムイオン電池セル112が直列に接続されているので、バッテリパック100の全体としての公称電圧は36ボルトである。なお、二次電池セル112の種類、数、接続方式(直列/並列)は、特に限定されず、自由に設計することができる。また、バッテリパック100の公称電圧も、特定の電圧値に限定されない。
【0018】
本実施例のバッテリパック100では、ハウジング102が開閉可能に構成されている。即ち、ハウジング102には、開口部106とその開口部106を開閉するカバー108が設けられている。カバー108は、開口部106を液密に閉塞することができる。カバー108の内面には、複数の電極板110が配設されている。各々の電極板110は、上限に隣接する二次電池セル112に接触し、それらを電気的に接続する。開口部106は、二次電池セル112よりも十分に大きく、開口部106を通じてハウジング102内の二次電池セル112を出し入れすることができる。
【0019】
上記したように、本実施例のバッテリパック100は、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能に構成されている。それにより、必要に応じて、ハウジング102内の一又は複数の二次電池セル112を、別に用意した一又は複数の二次電池セルと交換することができる。よく知れられているように、二次電池セル112は、充放電を繰り返すことによって劣化する。従って、バッテリパック100を繰り返し使用すれば、バッテリパック100の性能は低下していく。多くの場合、性能が低下したバッテリパック100では、全ての二次電池セル112が劣化しているわけではなく、一部の二次電池セル112のみが大きく劣化又は故障している。従って、劣化又は故障した二次電池セル112のみを交換するだけで、バッテリパック100の性能を十分に回復させることができる。二次電池セル112の交換を個別に可能とすることで、各々の二次電池セル112をその寿命が尽きるまで使うことができ、使用可能な二次電池セル112を廃棄するという無駄を防ぐことができる。
【0020】
バッテリパック100には、表示部144が設けられている。表示部144は、後述するメインコントローラ140(図6参照)によって制御される。表示部144は、一又は複数の二次電池セル112が劣化又は故障したときに、ユーザがその二次電池セル112を特定可能な表示を行う。本実施例では、一例ではあるが、表示部144が複数の発光ダイオードを有しており、劣化又は故障した二次電池セル112に対応する発光ダイオードが点灯するよう構成されている。なお、表示部144は、7セグメントディスプレイ、ドットマトリクスディスプレイ、液晶ディスプレイを用いたものでもよい。表示部144による表示により、ユーザは、劣化又は故障した二次電池セル112を、間違えることなく交換することができる。なお、メインコントローラ140が劣化又は故障した二次電池セル112を特定する処理については、後段において説明する。
【0021】
本実施例の電動工具10には、図4に示すパック充電器200と、図5に示すセル充電器220がそれぞれ用意されている。パック充電器200は、交流電源(コンセント)に接続して、バッテリパック100を充電する充電器である。パック充電器200は、バッテリパック100が着脱可能なパック取付部204を有している。パック取付部204は、パック充電器200のハウジング202の上面に設けられている。パック取付部204には、バッテリパック100と電気的に接続するための複数の端子が設けられている。その複数の端子は、保護プレート206によって覆われており、図4において図示されない。また、パック充電器200には、表示部208が設けられている。表示部208は、充電中、充電完了、各種の異常といった情報を表示する。本実施例の表示部208は、複数の発光ダイオードを用いて構成されているが、その構成は、バッテリパック100の表示部144と同じように特に限定されない。
【0022】
パック充電器200は、バッテリパック100が取り付けられたときに、バッテリパック100のメインコントローラ140と通信可能に接続する。そして、パック充電器200は、メインコントローラ140からの指示に従い、表示部144によって劣化又は故障した二次電池セル112の表示を行うことができる。それにより、ユーザがバッテリパック100を充電するときにも、劣化又は故障した二次電池セル112の存在をユーザに報知し、その交換を促すことができる。
【0023】
一方、セル充電器220は、交流電源(コンセント)に接続して、二次電池セル112を単体で充電する充電器である。セル充電器220は、二次電池セル112が着脱可能なセル取付部224を有している。セル取付部224は、セル充電器220のハウジング222の正面に設けられている。セル取付部224には、二次電池セル112と電気的に接続するための複数の端子が設けられている。また、セル充電器220には、セル取付部224をスライドカバー226、及び、表示部230が設けられている。表示部230は、充電中、充電完了、各種の異常といった情報を表示する。本実施例の表示部230は、複数の発光ダイオードを用いて構成されているが、その構成は、バッテリパック100の表示部144と同じように特に限定されない。
【0024】
加えて、セル充電器220には、温度センサ228が設けられている。温度センサ228は、セル取付部224の近傍に配置されており、二次電池セル112の温度を測定することができる。セル充電器220は、温度センサ228の検出結果に応じて、二次電池セル112への充電電流及び充電電圧を制御することができる。通常、セル充電器220は、二次電池セル112の温度及び出力電圧を監視しながら充電し、二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達したときに、充電を終了する。このとき、セル充電器220は、充電開始からの経過時間を計測しながら、充電を行う。そして、所定の下限時間よりも短時間で二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達したときは、二次電池セル112に劣化又は故障が生じているとして、その旨を表示部230によって表示する。あるいは、所定の上限時間が経過しても二次電池セル112の出力電圧が所定の上限値に達しないときも、二次電池セル112に劣化又は故障が生じているとして、その旨を表示部230によって表示する。
【0025】
通常、ユーザは、パック充電器200によってバッテリパック100の充電を行い、セル充電器220を使用する必要はない。しかしながら、劣化又は故障した二次電池セル112の交換を行う場合に、セル充電器220を有効に使用することができる。例えば、劣化又は故障したと判定された二次電池セル112を、セル充電器220によって充電してみることで、本当に劣化又は故障しているのか否かを確認することができる。また、交換用に用意した新しい二次電池セル112を、セル充電器220によって事前に充電することによって、既存する二次電池セル112との間で充電レベルを合わせることができる。
【0026】
次に、図6を参照して、工具本体12の電気的な構造について説明する。工具本体12は、モータ50と工具コントローラ54を備えている。工具コントローラ54は、メインスイッチ16に接続されている。ユーザがメインスイッチ16に加えた操作量に応じて、メインスイッチ16から工具コントローラ54へ速度指令信号が送信される。加えて、工具本体12は、正極入力端子62、第1通信端子64、第2通信端子66、負極入力端子68を備えている。これらの端子は、工具本体12のバッテリ取付部20に配置されている。
【0027】
正極入力端子62と負極入力端子68は、電力供給回路52によってモータ50へそれぞれ接続されている。正極入力端子62とモータ50を接続する電力供給回路52には、メインスイッチ16が設けられている。第1通信端子64は、メインスイッチ16とモータ50の間の電力供給回路52に接続されている。それにより、メインスイッチ16がオンされている間は、第1通信端子64の電位が正極入力端子62と同電位になり、メインスイッチ16がオフされている間は、第1通信端子64の電位が負極入力端子68と同電位になる。即ち、第1通信端子64は、メインスイッチ16のオンとオフに応じて、高低の電圧信号を出力する。第2通信端子66は、工具コントローラ54へ電気的に接続されている。
【0028】
続いて、図6を参照して、バッテリパック100の電気的な構造について説明する。図6に示すように、バッテリパック100は、正極出力端子162、第1通信端子164、第2通信端子166、負極出力端子168を備えている。これらの端子は、バッテリパック100の工具接続部104に配置されている。バッテリパック100が工具本体12に取り付けられると、バッテリパック100の正極出力端子162、第1通信端子164、第2通信端子166及び負極出力端子168は、工具本体12の正極入力端子62、第1通信端子64、第2通信端子66及び負極入力端子68へそれぞれ電気的に接続される。それにより、バッテリパック100は工具本体12へ電気的に接続される。
【0029】
バッテリパック100は、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124を備えている。複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、ハウジング102に収容された複数の二次電池セル112へ電気的に接続される。複数の二次電池セル112は、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124を介して、直列に接続される。直列に接続された複数の二次電池セル112の両端に位置するセル正極接続端子122とセル負極接続端子124は、電力供給回路152を通じて、正極出力端子162及び負極出力端子168へそれぞれ電気的に接続されている。それにより、直列に接続された複数の二次電池セル112が、正極出力端子162及び負極出力端子168を介して、工具本体12へ電気的に接続される。
【0030】
セル負極接続端子124と負極出力端子168の間の電力供給回路152には、電流値を測定するためのシャント抵抗130と、工具本体12への電力供給を遮断するためのスイッチ回路(ここでは電界効果トランジスタ)148が設けられている。シャント抵抗130は、アンプ回路138を介してメインコントローラ140に接続されている。スイッチ回路148はメインコントローラ140に接続されており、メインコントローラ140によって制御される。メインコントローラ140は、シャント抵抗130に生じる電圧に基づいて、二次電池セル112の放電電流を検出することができる。メインコントローラ140は、検出した電流値が所定の上限値に達したときに、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0031】
各々のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、マルチプレクサ134及びバッファ回路136を介して、メインコントローラ140に接続されている。それにより、メインコントローラ140には、各々の二次電池セル112の出力電圧が入力される。メインコントローラ140は、各々の二次電池セル112の出力電圧を監視しており、二次電池セル112の出力電圧が所定の下限値を下回るか、所定の上限値を上回る場合に、その二次電池セル112は劣化又は故障したと判定する。この場合、メインコントローラ140は、表示部144によって、劣化又は故障した二次電池セル112を特定可能に表示する。図6に示すように、本実施例の表示部144は、複数の発光ダイオードを有し、複数の発光ダイオードはマルチプレクサ142を介してメインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、劣化又は故障した二次電池セル112に対応する発光ダイオードを点灯させることによって、劣化又は故障した二次電池セル112をユーザに教示する。さらにメインコントローラ140は、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0032】
バッテリパック100は、複数の温度センサ126を備えている。本実施例の温度センサ126は、一例ではあるがサーミスタである。各々の温度センサ126は、対応する一つの二次電池セル112の近傍に配置されており、対応する一つの二次電池セル112の温度に応じた温度信号を出力する。複数の温度センサ126は、マルチプレクサ132を介して、メインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、各々の温度センサ126の検出温度を監視しており、検出された温度が所定の上限値を上回る場合に、二次電池セル112の温度異常が発生したと判定する。この場合、メインコントローラ140は、表示部144によって、温度異常の二次電池セル112を表示することができる。さらにメインコントローラ140は、スイッチ回路148をオフすることによって、工具本体12への電力供給を中止することができる。
【0033】
バッテリパック100は、メインスイッチ検出回路146を備えている。メインスイッチ検出回路146は、第1通信端子164に接続されており、メインスイッチ16のオンオフを検出することができる。メインスイッチ検出回路146は、メインスイッチ16がオフされている間、メインコントローラ140へハイレベルの電圧信号(Vcc)を出力し、メインスイッチ16がオンされている間は、メインコントローラ140へローレベルの電圧信号(GND)を出力する。メインコントローラ140は、メインスイッチ検出回路146の出力信号に基づいて、メインスイッチ16のオンオフを検出することができる。メインコントローラ140は、前述した異常等によってスイッチ回路148をオフしたときは、メインスイッチ16がオフされるまで、スイッチ回路148をオフし続ける。
【0034】
メインコントローラ140は、第2通信端子166に接続されており、工具本体12の工具コントローラ54と通信可能に接続される。先に説明したように、工具コントローラ54は、ユーザによるメインスイッチ16の操作量に応じて、速度指令信号を出力する。メインコントローラ140は、速度指令信号を受信し、受信した速度指令信号に応じてスイッチ回路148をPWM制御することができる。それにより、ユーザによるメインスイッチ16の操作量に応じて、モータ50の回転速度を調節することができる。
【0035】
図7は、工具本体12及びバッテリパック100の回路構成の変形例を示す。図7に示すように、スイッチ回路148は、工具本体12に設けることもできる。この場合、工具コントローラ54をスイッチ回路148に接続し、工具コントローラ54によってスイッチ回路148を制御する構成とするとよい。工具コントローラ54は、第2通信端子66、166を介してメインコントローラ140に接続されている。メインコントローラ140は、前述した異常等を検出したときに、工具コントローラ54を介してスイッチ回路148をオフすることができる。即ち、メインコントローラ140は工具コントローラ54へ指令を与え、指令を受けた工具コントローラ54がスイッチ回路148をオフするように構成することができる。
【0036】
先にも説明したように、本実施例のバッテリパック100は、十本のリチウムイオン二次電池セル112を有するが、二次電池セル112の種類や数は特に限定されない。図8、図9に示すように、各々の二次電池セル112が個別に着脱可能である限り、二次電池セル112の数や配置は適宜変更することができる。
【0037】
(実施例2)
図面を参照して、実施例2の電動工具310について説明する。上記した実施例1の電動工具10では、複数の二次電池セル112が、工具本体12に着脱可能なバッテリパック100に収容されていたのに対して、本実施例の電動工具310では、図10、図11、図12に示すように、複数の二次電池セル112が、工具本体12のへ直接的に取り付けられている。以下、本実施例の電動工具310について説明するが、実施例1の電動工具10と共通する構成については、同一の参照番号を付すことによって説明を省略する。
【0038】
電動工具310の工具本体12には、セル収容部320が設けられている。セル収容部320は、複数の二次電池セル112を収容することができる。セル収容部320は、グリップ18の先端に設けられている。セル収容部320には、開閉可能なカバー322が設けられている。カバー322を開放すると、各々の二次電池セル112をセル収容部320に対して個別に着脱することができる。カバー322を閉じると、セル収容部320は液密に閉塞される。
【0039】
図13は、本実施例の電動工具310の回路構成を示している。図13に示される回路構成を、図6及び図7に示される回路構成と比較して理解されるように、本実施例の電動工具310の回路構成は、実施例1の工具本体12及びバッテリパック100の回路構成を、一体化したものに相当する。従って、本実施例の回路構成については、実施例1の説明を参照するものとし、重複して説明することは避けることとする。実施例1との相違点として、本実施例では、実施例1で説明した工具コントローラ54がメインコントローラ140へ統合されている。また、複数のセル正極接続端子122及びセル負極接続端子124は、セル収容部320内に配置されている。また、複数の温度センサ126は、複数の二次電池セル112の温度をそれぞれ検出できるよう、セル収容部320の近傍に配置されている。また、表示部144は、工具本体12のユーザが視認可能な位置に配設されている。
【0040】
本実施例の電動工具310も、各々の二次電池セル112を個別に着脱可能に構成されている。それにより、必要に応じて、工具本体12内の一又は複数の二次電池セル112を、別に用意した一又は複数の二次電池セルと交換することができる。二次電池セル112の交換を個別に可能とすることで、各々の二次電池セル112をその寿命が尽きるまで使うことができ、使用可能な二次電池セル112を廃棄するという無駄を防ぐことができる。
【0041】
一例ではあるが、本実施例の工具本体12は、五本のリチウムイオン二次電池セル112を有する。ただし、二次電池セル112の種類や数は特に限定されない。図14、図15、図16に示すように、各々の二次電池セル112が個別に着脱可能である限り、二次電池セル112の数や配置は適宜変更することができる。なお、図14、図15、図16に示す変形例では、工具本体12のセル収容部320に八本のリチウムイオン二次電池セル112が収容可能であり、カバー322を取り外すことによって、各々の二次電池セル112を着脱することができるように構成されている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0043】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10、310、320:電動工具
12:工具本体
20:バッテリ取付部
50:モータ
100:バッテリパック
102:バッテリパックのハウジング
106:バッテリパックのハウジングの開口部
108:バッテリパックのハウジングの開口部に設けられたカバー
112:二次電池セル
126:温度センサ
140:メインコントローラ
144:表示部
148:スイッチ回路
200:パック充電器
220:セル充電器
228:セル充電器の温度センサ
320:セル収容部
322:工具本体のセル収容部のカバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池セルを電源とする電動工具であって、各々の二次電池セルが個別に着脱可能であることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路と、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記監視回路は、各々の二次電池セルの出力電圧と温度の少なくとも一方を監視し、
前記表示回路は、各々の二次電池セルについて、出力電圧又は温度が所定範囲内にあるのか否かを表示することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
複数の二次電池セルによる電力供給を遮断するスイッチ回路をさらに備え、
前記監視回路は、少なくとも一つの二次電池セルの出力電圧又は温度が所定範囲内にないときに、前記スイッチ回路を開放することを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記電動工具は、工具本体と、その工具本体に着脱可能であるとともに前記複数の二次電池セルを収容しているバッテリパックと、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記バッテリパックを充電するパック充電器をさらに備え、
前記バッテリパックは、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路を有し、
前記パック充電器は、前記バッテリパックの監視回路と通信可能に接続し、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
取り外された二次電池セルを充電するセル充電器をさらに備え、そのセル充電器は、二次電池セルの温度を測定する温度センサを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記セル充電器は、充電中の二次電池セルの出力電圧が所定の上限値に達するか、充電開始から所定の時間が経過した時に、二次電池セルの充電を終了することを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
電動工具の電源となるバッテリパックであって、複数の二次電池セルを有しており、各々の二次電池セルが個別に着脱可能であることを特徴とするバッテリパック。
【請求項1】
複数の二次電池セルを電源とする電動工具であって、各々の二次電池セルが個別に着脱可能であることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路と、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記監視回路は、各々の二次電池セルの出力電圧と温度の少なくとも一方を監視し、
前記表示回路は、各々の二次電池セルについて、出力電圧又は温度が所定範囲内にあるのか否かを表示することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
複数の二次電池セルによる電力供給を遮断するスイッチ回路をさらに備え、
前記監視回路は、少なくとも一つの二次電池セルの出力電圧又は温度が所定範囲内にないときに、前記スイッチ回路を開放することを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記電動工具は、工具本体と、その工具本体に着脱可能であるとともに前記複数の二次電池セルを収容しているバッテリパックと、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記バッテリパックを充電するパック充電器をさらに備え、
前記バッテリパックは、各々の二次電池セルの状態を監視する監視回路を有し、
前記パック充電器は、前記バッテリパックの監視回路と通信可能に接続し、その監視回路による監視結果を各々の二次電池セルについて表示する表示回路を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
取り外された二次電池セルを充電するセル充電器をさらに備え、そのセル充電器は、二次電池セルの温度を測定する温度センサを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記セル充電器は、充電中の二次電池セルの出力電圧が所定の上限値に達するか、充電開始から所定の時間が経過した時に、二次電池セルの充電を終了することを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
電動工具の電源となるバッテリパックであって、複数の二次電池セルを有しており、各々の二次電池セルが個別に着脱可能であることを特徴とするバッテリパック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図6】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−183611(P2012−183611A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48892(P2011−48892)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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