説明

親子台車

【課題】 親台車と処理槽との間で子台車を走行して出し入れするために、親台車と処理槽との接続を容易に実現する。また、親台車または処理槽へ子台車を載せ込んだ際、手動操作を要することなく、自動で子台車を親台車または処理槽に係止する。
【解決手段】 親台車6の前端部には、処理槽3との間を架け渡すための渡し板28が、枢軸30まわりに揺動可能に設けられる。ストッパ21は、子台車7が走行する前後方向へ延出する部材とされ、子台車7の後端部において、左右方向へ沿う支軸49まわりに揺動可能に設けられ、自重により前端部を下方へ落として傾斜して設けられる。処理槽3から親台車6への載せ込み、または親台車6から処理槽3への載せ込みに伴い、ストッパ21の前端部は、係止部22,53に設けた傾斜面27,57で乗り上げて、係止部22,53に設けた凹部25,56にはまり込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば食品機械や滅菌器の処理槽に、食材や被滅菌物を出し入れするのに用いられる台車に関するものである。特に、親台車に子台車を載せて搬送でき、親台車と処理槽との間を子台車が走行して出し入れされる親子台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、台車運搬車(27)と殺菌槽との間で、トレイ台車(1)を出し入れすることが開示されている。さらに、トレイ台車(1)を台車運搬車(27)に載せた状態で、トレイ台車(1)の係止板(17)の係止孔(16)と、台車運搬車(27)の移動子(23)の係止盲孔とに、留めピン(26)を挿入することにより、トレイ台車(1)を台車運搬車(27)に固定することが開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、搬送用カート(15)と蒸し器本体(11)との間で、多段式トレー(12)を出し入れすることが開示されている。さらに、多段式トレー(12)を蒸し器本体(11)の載置台(17)に載せた状態で、載置台(17)と多段式トレー(12)との間は、落とし錠などによる係止保持具(19)にて着脱可能とされている。また、多段式トレー(12)を搬送用カート(15)に載せた状態で、搬送用カート(15)と多段式トレー(12)との間は、落とし錠などによる係止保持具(26)にて着脱可能とされている。
【特許文献1】特開平7−313127号公報 (段落番号[0008],[0009])
【特許文献2】特開2006−43092号公報 (段落番号[0015],[0016],[0024])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各特許文献に開示される発明では、子台車(トレイ台車,多段式トレー)は、親台車(台車運搬車,搬送用カート)または処理槽(殺菌槽,蒸し器本体)と着脱可能に係止されるが、その係止は、親台車または処理槽に子台車を載せ込んだ後、手動でピンや落とし錠などを操作する必要があった。しかも、その際、ピンとこれが通される孔との位置合わせなども必要であった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、親台車または処理槽などへ子台車を載せ込んだ際、手動操作を要することなく、自動で子台車を親台車または処理槽などに位置決めすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、搬入先と架け渡されるか突き合わされる親台車と、この親台車と前記搬入先との間を走行して出し入れされ、前記搬入先から前記親台車への載せ込みに伴い、前記親台車の係止部に係止されるストッパを有する子台車とを備えることを特徴とする親子台車である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、処理槽などの搬入先から子台車を親台車へ載せ込むに伴い、ストッパにより子台車は親台車に係止される。従って、親台車と子台車との位置決めは、手動操作を要することなく自動で容易になされる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記子台車は、前記親台車から前記搬入先への載せ込みに伴い、前記搬入先の係止部に前記ストッパにて係止されることを特徴とする請求項1に記載の親子台車である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、親台車から子台車を処理槽などの搬入先へ載せ込むに伴い、ストッパにより子台車は搬入先の所望位置に係止される。従って、処理槽などの搬入先と子台車との位置決めは、手動操作を要することなく自動で容易になされる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記ストッパは、前記子台車が走行する前後方向へ延出する部材とされ、前記子台車の後端部において、左右方向へ沿う軸まわりに揺動可能に設けられ、自重または付勢力により前端部を下方へ落として傾斜して設けられ、前記子台車の載せ込みに伴い、前記ストッパの前端部は、それに設けた傾斜面または前記係止部に設けた傾斜面で乗り上げて、前記係止部に設けた凹部にはまり込むか、あるいは前記ストッパの前端部は、前記係止部を構成する凹部にはまり込むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の親子台車である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ストッパは、自重または付勢力により前端部を下方へ落として傾斜して設けられており、親台車または搬入先への子台車の載せ込みに伴い、前端部が傾斜面で乗り越えて凹部にはまり込むか、前端部が単に凹部にはまり込んで係止される。そして、その係止の解除は、ストッパの前端部を持ち上げるだけでよい。このようにして、簡易な構成で確実に、子台車の位置決めとその解除を図ることができる。また、ストッパは、子台車の後端部において揺動可能に設けられているので、親台車または搬入先に対する子台車の係止の解除を、手前側(子台車の後端部)から容易に行うことができる。従って、搬入先が食品機械または滅菌器の処理槽で加熱されている場合にも、処理槽の開口部にて係止の解除を容易に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記親台車の前端部に、前記搬入先との間を架け渡すための渡し板が、左右方向へ沿う枢軸を中心に回転可能に設けられており、前記親台車の後端部に設けられたハンドルの操作により、カムを回転させることで前記渡し板の先端部を前記枢軸まわりに上下動可能とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の親子台車である。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、親台車と搬入先とは渡し板で架け渡されるので、子台車は親台車と搬入先との間を容易に走行して出し入れ可能とされる。また、渡し板は、枢軸まわりに回転して、親台車に対し展開および格納が可能とされる。しかも、その展開または格納の操作は、親台車の後端部のハンドルにてカムを回転させて行われるので、簡易な構成で容易に行うことができる。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記渡し板は、その先端部を前記枢軸まわりに前方へ降ろして前記搬入先に架け渡される際、前記搬入先との間で係合されることを特徴とする請求項4に記載の親子台車である。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、渡し板と搬入先との間が係合されることで、親台車と搬入先との架け渡しを一層確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の親子台車によれば、親台車または処理槽などへの子台車の載せ込みに伴い、手動操作を要することなく、ストッパにより子台車が親台車または処理槽などに自動で係止される。従って、親台車または処理槽などへの子台車の位置決めを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の親子台車は、親台車と、これに載せられて搬送可能な子台車とから構成される。親台車および子台車は、それぞれ底部に複数の車輪が設けられており、押したり引いたりして走行させることができる。そして、子台車は、親台車と搬入先との間を走行して出し入れ可能とされる。
【0018】
搬入先とは、親台車から子台車が降ろされる場所、または子台車が親台車へ乗せられる場所をいい、典型的には食品機械または滅菌器などの処理槽が挙げられる。たとえば、飽和蒸気調理機、真空冷却機、蒸し庫、蒸煮冷却機、スチームコンベクションオーブン、真空冷風複合冷却機、解凍機、流水加熱冷却装置、レトルト殺菌機、蒸気滅菌器またはガス滅菌器などの各種処理槽が含まれる。
【0019】
子台車には、用途に応じて、食材もしくは食品または被滅菌物などの被搬送物が載せられる。この際、被搬送物またはその容器(たとえば、ホテルパン)は、子台車に設けられた棚または棚枠に保持してもよいし、単に子台車を構成する荷台に載せたり、その荷台に容器(たとえば、ばんじゅう)を積み重ねたりしてもよい。いずれにしても、被搬送物は、子台車ごと処理槽などに出し入れされる。
【0020】
親台車と搬入先との間で子台車を走行させて出し入れするために、親台車は搬入先と架け渡されるか突き合わされて停止可能とされる。もちろん、親台車は、搬入先と突き合わされて且つ架け渡されてもよい。このようにして、親台車と搬入先の各床面(子台車の車輪走行面)が連続するように配置される。
【0021】
親台車と搬入先とは、渡し板にて架け渡すのが好ましい。そのために、親台車および/または搬入先には、親台車と搬入先とを架け渡すための渡し板が設けられる。この際、親台車に渡し板を設けておけば、複数の搬入先があっても、それぞれの搬入先に渡し板を設ける必要がなくなる。そこで、本実施形態では、親台車に渡し板を設ける場合について説明するが、搬入先に渡し板を設ける場合も同様に構成できる。
【0022】
親台車の前端部には、一または複数の渡し板が設けられる。各渡し板は、板材および/またはレールなどから構成される。親台車の前端部の左右にそれぞれ渡し板を設ける場合、子台車の左右の車輪が各渡し板を走行する。あるいは、この左右の渡し板を一体化して、一つの渡し板として構成してもよい。
【0023】
渡し板は、親台車の前端部に、前方へ延出して固定して設けてもよいが、親台車の前端部に、ヒンジなどを用いて展開または格納可能に設けるのがよい。具体的には、渡し板は、その基端部が親台車の前端部に、左右方向へ沿う枢軸を中心に回転可能に設けられる。そして、この渡し板は、親台車の後端部に設けられたハンドルの操作により、カムを回転させることで、展開または格納されるのがよい。この際、親台車の下部には、前後方向へ沿ってカム軸を設け、このカム軸には、後端部に前記ハンドルを設ける一方、前端部に前記カムを固定して構成するのが簡易である。この場合、カムに渡し板の下面を当接させて、カムの回転により、渡し板の先端部を枢軸まわりに上げることで、渡し板が格納される。
【0024】
親台車から搬入先へ渡し板を展開して、親台車と搬入先とを架け渡す際、渡し板と搬入先とは係合させるのが好ましい。たとえば、搬入先には、上方へ突出してピンなどの突部を設けておき、渡し板の展開時には、渡し板に設けた係合穴(溝状のものを含む)に、前記突部が突入される構成とすればよい。あるいは、これとは逆に、渡し板の下面に突部を設けておき、この突部が、搬入先に設けた係合穴に突入される構成としてもよい。
【0025】
子台車は、前述したように、親台車と搬入先との間を、走行して出し入れされる。親台車に子台車を載せ込んだ状態で、両者を位置決めするために、親台車に設けた係止部に、子台車に設けたストッパが係止される構成とする。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、搬入先に子台車を載せ込んだ状態で、両者を位置決めするために、搬入先に設けた係止部に、子台車に設けたストッパが係止される構成とする。いずれの場合も、搬入先から親台車への載せ込み、または、親台車から搬入先への載せ込みに伴い、親台車または搬入先の係止部に、子台車のストッパが自動的に係止される構成とするのがよい。
【0026】
具体的には、子台車のストッパは、子台車が走行する前後方向へ延出する部材とされ、子台車の後端部において、左右方向へ沿う支軸まわりに揺動可能に設けられる。そして、このストッパは、自重または付勢力により、前端部を下方へ落として傾斜して設けられる。一方、親台車および搬入先の各係止部は、凹部を備えて構成される。たとえば、搬入先が処理槽であるとして説明すると、親台車の上面または処理槽内の底面に、凹部を窪ませて形成する。あるいは、親台車の上面または処理槽内の底面に、一または複数の凸部を設け、この凸部にて凹部を形成する。後者の場合、親台車の凸部は、その前端部が前方へ行くに従って下方へ傾斜して形成され、処理槽内の凸部は、その後端部が後方(処理槽の開口部の側)へ行くに従って下方へ傾斜して形成される。
【0027】
このような構成であるから、親台車への子台車の載せ込み、または搬入先への子台車の載せ込みに伴い、ストッパの前端部は、係止部を構成する凹部に単にはまり込むか、係止部が凸部を有する場合には、係止部に設けた傾斜面でその凸部を乗り上げて、凹部にはまり込む。これにより、子台車は、親台車または搬入先と、ストッパにより係止され、位置決めされる。親台車または搬入先における係止部の設置位置を調整しておくことで、親台車または搬入先の所望位置に、子台車を位置決めすることができる。
【0028】
ところで、親台車と搬入先のいずれかにのみ係止部が設けられる場合、前記凸部に傾斜面を形成する代わりに、ストッパの前端部に傾斜面を形成して対応してもよい。その場合、ストッパの前端部は、それ自体の傾斜面で凸部を乗り上げて、凹部にはまり込むことになる。また、凸部やストッパに形成する前記傾斜面は、直線状の平面に限らず、円弧状の曲面であってもよい。
【0029】
ストッパと係止部との係止状態では、子台車を押したり引いたりしても、ストッパにより子台車の移動が規制される。この規制を解除して子台車の移動を可能にするには、ストッパと係止部との係止を解除する必要がある。それには、ストッパを支軸まわりに少し回転させて、ストッパの前端部を持ち上げればよい。ストッパの後端部に、支軸よりも後方へ延出させて操作部を設けておけば、この操作部を下方へ押し下げることで、ストッパの前端部を上方へ容易に浮かすことができる。このようにしてストッパと係止部との係止を解除しつつ、子台車を少し動かした後は、ストッパから手を離した状態でも、子台車の移動は可能とされる。そして、再び、親台車または搬入先の係止部にストッパが係止されるまで、子台車を走行させればよい。
【実施例1】
【0030】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の親子台車の実施例1の使用状態を示す概略斜視図である。本実施例の親子台車1は、飽和蒸気調理機2の処理槽3に、食材4(図4)を出し入れするのに用いられる。図1において、処理槽3は、一部を切り欠いて示されると共に、扉5(図6)を省略して示される。
【0031】
本実施例の親子台車1は、ワゴン状の親台車6と、この親台車6に載せられて搬送可能な子台車7とから構成される。子台車7は、食材4を載せられ、親台車6と処理槽3との間を走行して出し入れされる。
【0032】
本実施例の親台車6は、断面略L字形状の形材8,8,…により、略矩形のボックス状に組み立てられた台枠9を備える。台枠9の下部四隅には、それぞれキャスター10,10,…が設けられる。キャスター10は、周知のとおり、下方へ二股分かれしたヨーク11と、このヨーク11の溝に架け渡される車軸12と、この車軸12に回転自在に保持される車輪13とから構成される。本実施例では、台枠9の前方左右に設けた各キャスター10は、そのヨーク11が旋回不能とされるが、台枠9の後方左右に設けた各キャスター10は、そのヨーク11が旋回可能とされる。但し、所望により、全てのキャスター10のヨーク11を旋回可能または旋回不能としてもよい。ところで、台枠9の後方左右に設けた各キャスター10は、足踏みストッパ(図示省略)を備える。この足踏みストッパを足で操作することにより、車輪13の回転の規制とその解除とが切り替えられる。
【0033】
台枠9の後方上部には、手押し部14が設けられる。本実施例の手押し部14は、丸パイプが、下方へ開放する略コ字形状に屈曲されると共に、その左右両端部が前方へ円弧状に屈曲されて構成され、その先端部が台枠9の後方上部の左右両端部に固定される。一方、台枠9の前端部には、クッション材15が設けられる。
【0034】
図2は、子台車7が載せられると共に処理槽3と接続された親台車6の上部を示す概略斜視図であり、子台車7の上部を切り欠いて示している。さらに、親台車6の手押し部14や、処理槽3の一部を切り欠いて示すと共に、処理槽3の扉5を省略して示している。また、図3は、親台車6の上部に載せられた子台車7の背面図であり、後述するレール皿16は、その拡幅部17,17を有する箇所で切断して示される。
【0035】
親台車6の台枠9の上部には、上方へ開口した略矩形の浅い箱状のレール皿16が、水平に設けられる。この際、レール皿16は、台枠9上部の前後の形材8,8を架け渡すように設けられる。また、レール皿16の左右両側壁は、段付きに形成される。すなわち、図3に示すように、レール皿16の底壁18から垂直上方へ延出して第一側壁19,19が形成され、左右方向外側へ水平に延出した後、さらに上方へ延出して第二側壁20,20が形成される。これにより、レール皿16の左右両端辺部の上部には、左右方向外側への拡幅部17,17が形成される。但し、レール皿16の前端部には、拡幅部17,17は設けられず、第一側壁19,19のみが前方へ僅かに延出して設けられる。この左右の第一側壁19,19間において、レール皿16は前方へ開口して形成される。
【0036】
レール皿16の中央部には、後述する子台車7のストッパ21が係止される係止部22が設けられる。本実施例の係止部22は、第一凸部23と第二凸部24とから構成される。第一凸部23と第二凸部24とは、それぞれ略矩形の小片から形成されており、前後に離隔してレール皿16の底壁18の上面に固定される。これにより、第一凸部23と第二凸部24との隙間により、凹部25(図5)が形成される。この凹部25には、後述するように、ストッパ21の前端部に設けたストッパ片26がはまり込んで係止される。ところで、前方に配置される第一凸部23は、その前端部が前方へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面27に形成されている。
【0037】
レール皿16の前端部には、レール皿16の底壁18と処理槽3内の底面とを架け渡すための渡し板28が設けられる。本実施例の渡し板28は、略矩形の板材から構成され、その板面に対して左右両端辺部が垂直に屈曲されて、左右両側壁29,29が形成される。渡し板28の左右両側壁29,29の基端部は、レール皿16の左右両側壁(第一側壁19,19)の前端部に重ね合わされて、それぞれ左右方向へ沿う枢軸30,30にて揺動可能に設けられる(図4)。
【0038】
渡し板28は、その底壁31が水平か先端部を若干下げた展開位置(図2,図5)と、先端部を上方へ上げた格納位置(図1,図4)との間で、枢軸30まわりに揺動可能とされる。渡し板28の展開および格納は、渡し板28の下部に設けたカム32の回転操作により行われる。本実施例のカム32は、略卵形状の板材から構成され、その板面を前後へ向けて配置される。そして、このカム32は、これに接続されたカム軸33にて、回転操作される。
【0039】
親台車6は、レール皿16の前後両端部の下部に、垂直壁34,34を備える(図4)。そして、この前後の垂直壁34,34を架け渡すように、レール皿16の下部の左右方向中央部には、前後方向へ沿ってカム軸33が回転自在に保持される。この際、カム軸33は、レール皿16および前後の垂直壁34,34よりも、それぞれ前後へ延出して設けられる。
【0040】
カム軸33は、前端部にカム32が固定される一方、後端部にハンドル35が設けられる。本実施例のカム32は、前述したとおり、略卵形状の板材から構成されるが、その長軸の長手方向中央部よりも一方へ偏った位置に、板面と垂直にカム軸33の前端部が固定される。また、本実施例のハンドル35は、カム軸33の後端部が垂直に屈曲されて形成される。
【0041】
ハンドル35は、後方の垂直壁34に設けられたハンドル保持片36との関係で、設定角度だけ回転可能とされる。本実施例では、ハンドル35は、先端部を右側へ向けた水平状態と、先端部を上側へ向けた垂直状態との間で、90度分だけ回転可能とされる。ハンドル35の水平状態では、カム32の長軸は水平に配置され、渡し板28は展開状態とされる。一方、ハンドル35の垂直状態では、カム32の長軸は垂直に配置され、渡し板28は格納状態とされる。カム32の大きさなどを変更することで、渡し板28の格納状態における傾斜角度を変更することができる。
【0042】
本実施例の子台車7は、図1および図2に示すように、左右に離隔してそれぞれ前後方向へ沿って配置される底材37,37と、各底材37の前後両端部から垂直に立設される側柱38,38と、各底材37の前後方向中央部から垂直に立設される中央柱39,39と、これら側柱38,38,…や中央柱39,39の上部に保持される天板40とを備える。
【0043】
各底材37は、下方へ開口した断面略コ字形状材から形成され、その溝を横断するように前後両端部に車軸41が設けられ、その車軸41に車輪42が回転自在に保持される。車輪42は、周側面上部が、底材37を構成する断面略コ字形状材の溝に収容され、周側面下部が、底材37を構成する断面略コ字形状材の溝よりも下方へ露出して設けられる。このようにして車輪42が設けられた左右の底材37,37同士の左右方向外寸は、親台車6のレール皿16の第一側壁19,19間の離隔距離よりも少し小さい。
【0044】
各側柱38は、前後方向外側へ開口した断面略コ字形状材から形成される。すなわち、前方左右に立設された各側柱38は、断面略コ字形状材の溝を前方へ向けて配置され、後方左右に立設された各側柱38は、断面略コ字形状材の溝を後方へ向けて配置される。一方、中央柱39は、上下に細長い略矩形の板材から形成され、その板面を前後へ向けて配置される。各中央柱39は、各側柱38よりも僅かに上方へ延出して設けられる。
【0045】
天板40は、略矩形の板材から形成され、側面視は緩やかな三角形状に形成されている(図4)。そして、天板40は、四隅が各側柱38の上端部に保持されると共に、中央部が各中央柱39の上端部に保持される。その際、各側柱38を構成する断面略コ字形状材の中央片43の上端辺と、天板40の前後両端辺とは連続して接続される。
【0046】
天板40の左右両端辺部は、僅かに上方へ屈曲されている。この屈曲部は、前後両端部において、各側柱38を構成する断面略コ字形状材の左右方向外側の端片と連続している。また、各側柱38を構成する断面略コ字形状材の左右方向内側の端片間において、天板40の前後両端辺部は、僅かに上方へ屈曲されている。
【0047】
左右の側柱38,38間、または左右の中央柱39,39間には、それぞれ略L字形状材44,44,…が固定される。この際、略L字形状材44は、左右の側柱38,38の中央片43,43間、または左右の中央柱39,39間を架け渡して設けられる。本実施例では、それぞれ四つの略L字形状材44,44,…が、上下に等間隔に離隔して、設定された高さに設けられる。前後の側柱38に固定される略L字形状材44は、その一片を前後方向内側へ向けて水平に設けられ、中央柱39に固定される略L字形状材44は、その一片を前後方向外側へ向けて水平に設けられる。
【0048】
このようにして前後に向かい合う略L字形状材44,44間には、それぞれホテルパン45が着脱可能に保持される。ホテルパン45は、周知のとおり、上方へのみ開口した略矩形状のステンレス製容器であり、上端部には外周に沿ってツバ部が形成されている。従って、ホテルパン45は、対向する二辺のツバ部が、前後の略L字形状材44,44の前記一片に載せられて、水平に保持される。本実施例では、子台車7には、前後に二つずつ且つ上下に四つずつの、合計八つのホテルパン45を積載可能とされる。ところで、略L字形状材44の左右両端部には、それぞれ垂直片46,46が設けられており、ホテルパン45の脱落が防止される。
【0049】
図1に示すように、子台車7にホテルパン45,45,…を保持した状態では、各ホテルパン45の左右両端部は、子台車7よりも左右方向外側へ露出する。しかしながら、天板40の左右両端辺部は上方へ屈曲されているので、飽和蒸気調理機2に子台車7ごと搬入して加熱調理した場合でも、天板40に生じた蒸気の凝縮水がホテルパン45内へ落下するおそれはない。しかも、天板40は、側面視三角形状に形成されているので、凝縮水は天板40の前後へ案内され、側柱38を構成する断面略コ字形状材の溝を介して下方へ排出される。
【0050】
図2に示すように、子台車7の後端部には、親台車6の係止部22に係脱可能なストッパ21が設けられる。このストッパ21は、親台車6のレール皿16に子台車7を完全に載せ込んだ状態で、親台車6に子台車7を係止するものである。本実施例のストッパ21は、前方へ開放する略コ字形状に屈曲された線材47と、その開放両端部に左右方向へ沿って固定される丸棒状のストッパ片26と、前後方向中央部よりもやや後方に、左右方向へ沿って設けられる円筒材48とから構成される。
【0051】
このようなストッパ21は、その円筒材48が、子台車7の後部に設けられた支軸49に回転自在に保持される。すなわち、子台車7の後部には、左右の底材37,37同士を架け渡すように、丸棒状の支軸49が設けられる。この支軸49は、左右方向中央部が小径部とされており、この小径部にストッパ21の円筒材48が回転自在にはめ込まれる。これにより、ストッパ21は、支軸49まわりに揺動可能とされる。
【0052】
ストッパ21の円筒材48は、支軸49の小径部の長さよりも僅かに短く形成されている。これにより、小径部に沿って円筒材48がスライドすることで、ストッパ21は左右に僅かに移動可能とされる。但し、円筒材48は、その内径が支軸49の左右の大径部よりも小径に形成されており、支軸49の小径部の範囲内に保持される。ところで、支軸49の小径部におけるストッパ21の左右方向位置に拘わらず、あるいは、親台車6のレール皿16における子台車7の左右方向位置に拘わらず、ストッパ21と係止部22との係止は、後述するとおりに達成されるよう構成されている。
【0053】
ストッパ21は、前述したように、その長手方向(前後方向)中央部よりもやや後部において、左右方向へ沿う支軸49まわりに揺動可能に設けられると共に、前端部にストッパ片26が設けられる。これにより、ストッパ21は、自重により前端部を下方へ落として傾斜して設けられる。従って、親台車6と処理槽3との間での子台車7の出し入れは、基本的には、ストッパ21のストッパ片26がレール皿16の底壁18や処理槽3内の底面などに当接しつつ行われる。
【0054】
ストッパ21は、その後端部が操作部50として、子台車7の後方下部において操作可能に露出している。この操作部50を下方へ押すことにより、ストッパ21は支軸49まわりに回転して、その前端部のストッパ片26を上方へ上げることになる。
【0055】
飽和蒸気調理機2は、処理槽3内の圧力を調整することで、処理槽3内の飽和蒸気温度を調整して、所望温度の飽和蒸気により処理槽3内の食材4の加熱を図る装置である。また、飽和蒸気調理機2は、所望により、加熱調理後の食材4の真空冷却または送風冷却が可能に構成される。
【0056】
本実施例の処理槽3は、略矩形の中空ボックス状に形成された金属製の缶体である。処理槽3は、手前側へ開口して中空部を有する処理槽本体51と、この処理槽本体51の開口部を開閉する扉5(図6)とから構成される。処理槽本体51は、略矩形の中空部が手前側へ開口して形成されると共に、その略矩形の開口部の外周に沿って連続的にパッキン52が設けられる。扉5を閉じた状態では、処理槽本体51と扉5との隙間は、パッキン52にて封止される。
【0057】
飽和蒸気調理機2は、その処理槽3内に食材4が子台車7ごと搬入された際、処理槽3内の所望位置に子台車7を係止可能であるのが好ましい。具体的には、処理槽本体51は子台車7よりも一回り大きな中空部を有するが、その中空部内の中央部に子台車7を完全に載せ込んだ状態で、処理槽本体51に子台車7が係止されるのが好ましい。そのために、子台車7のストッパ21と係止される係止部53を、処理槽3内の底面に設けておくのが好ましい。処理槽3内に設ける係止部53は、親台車6に設けた係止部22と、同様の構成であるが前後対称に設けられる。
【0058】
具体的には、処理槽3内の底面の左右方向中央部には、子台車7のストッパ21が係止される係止部53が設けられる。この係止部53は、親台車6に設けた係止部22と同様に、第一凸部54と第二凸部55とから構成される。但し、後方(処理槽3の開口部の側)に配置される第一凸部54は、親台車6の第一凸部23よりも前後方向へ細長く形成されている。
【0059】
また、第一凸部54と第二凸部55とは、実施例1と同様に、前後に離隔して処理槽3内の底面に固定される。これにより、第一凸部54と第二凸部55との隙間により、凹部56が形成される。この凹部56には、ストッパ21のストッパ片26がはまり込んで係止される。後方に配置される第一凸部54は、その後端部が後方へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面57に形成されている。
【0060】
次に、本実施例の親子台車1の使用について説明する。図4から図6は、本実施例の親子台車1の使用状態を示す概略縦断面図であり、図4は、処理槽3に親子台車1を接続しようとする状態を示し、図5は、親台車6と処理槽3とを接続して、子台車7を処理槽3内へ載せ込む状態を示し、図6は、処理槽3内に子台車7を完全に載せ込んで、処理槽3の扉5を閉めた状態を示している。図4および図5において、処理槽3の扉5は省略して示され、図6において、処理槽3の扉5の閉鎖構造は、簡略化して示される。
【0061】
図4の状態では、親台車6には子台車7が載せられて、両者はストッパ21により係止されている。すなわち、子台車7のストッパ21は、そのストッパ片26が親台車6の係止部22の凹部25にはめ込まれている。また、図4の状態では、子台車7には、食材4が入れられたホテルパン45が保持されている。さらに、親台車6の渡し板28は、格納状態とされている。このような状態から、飽和蒸気調理機2の処理槽3内に、食材4を子台車7ごと搬入する場合について説明する。
【0062】
それには、まず図4に示すように、処理槽3の扉5を開けた状態で、処理槽3の開口に子台車7の前端部が対面するように、飽和蒸気調理機2へ向けて親台車6を押し進めればよい。親台車6の前端部がクッション材15を介して飽和蒸気調理機2の正面に当たったら、カム軸33のハンドル35を時計方向へ90度回転させる。これにより、カム32が回転して、渡し板28は、その先端部を枢軸30まわりに下方へ下げることになる。これにより、渡し板28は、処理槽3内の底面とレール皿16の底壁とを、同一平面で接続するか、先端部を若干下げて接続する。
【0063】
ところで、本実施例では、処理槽3内の底面には、処理槽3の開口部側の左右下部に、それぞれ突部58,58が設けられている。この突部58は、処理槽3内の底面から上方へ僅かに突出するピン状に形成されており、その上端部は好ましくは略半球状または先細りに形成される。これら突部58,58は、子台車7の左右の車輪42,42の走行の邪魔にならない位置に設けられている。一方、渡し板28の先端部の左右両部には、渡し板28を処理槽3に架け渡す際に前記突部58,58が突入される係合穴59,59が形成されている。この係合穴59は、突部58よりも大径の丸穴または長穴などから形成される。渡し板28を処理槽3に架け渡す際、渡し板28の係合穴59に処理槽3の突部58が突入して係合されることで、渡し板28は確実に処理槽3内底面に接続される。このようにして、処理槽3と親台車6とを接続した状態で、親台車6のキャスター10の足踏みストッパを操作して、親台車6を位置決めする。
【0064】
その状態で、図5に示すように、子台車7を親台車6から処理槽3内へ移動させる。その際、初期状態では図4に示すように、子台車7は親台車6にストッパ21で係止されているので、まずその係止を解除する必要がある。それには、ストッパ21の操作部50を下方へ押し下げればよい。これにより、ストッパ21を支軸49まわりに回転させて、前方のストッパ片26を上方へ持ち上げることができる。このようして、ストッパ21と係止部53との係止を解除した状態で、子台車7を前方へ押し進めればよい。子台車7が少し進んで、係止部22の凹部25を通過した後は、ストッパ21から手を離してもよい。
【0065】
子台車7を処理槽3に入れると、処理槽3内の設定位置で、処理槽3内の係止部53に子台車7のストッパ21が係止される。この係止は、処理槽3内へ子台車7を押し進めることで、自動でなされる。すなわち、第一凸部54の傾斜面57にストッパ片26が当接すると、ストッパ21は支軸49まわり回転して、ストッパ片26を自動的に持ち上げる。そして、ストッパ片26は、第一凸部54の上面を通過した後、図6に示すように、自重により凹部56にはまり込む。凹部56の前後は垂直面に形成されているので、ストッパ21を手動で操作しない限り、係止部53とストッパ21との係止が解除されるおそれはない。このようにして、処理槽3内の所定位置に、子台車7を位置決めすることができる。
【0066】
その後、親台車6を片付けるのであるが、それにはまず、カム軸33のハンドル35を反時計方向へ90度回転させて、渡し板28を格納する。これにより、処理槽3の突部58と渡し板28の係合穴59との係合が解除される。そして、親台車6のキャスター10の足踏みストッパを操作して、車輪のロックを解除すればよい。これにより、親台車6の移動を自由に行うことができる。その後、図6に示すように、処理槽3の扉5を閉めて、食材4の加熱調理を図ればよい。
【0067】
食材4の加熱調理後、処理槽3内から子台車7ごと食材4を取り出すには、前記と逆の操作を行えばよい。すなわち、まず、処理槽3の扉5を開けた状態で、子台車7の載せられていない親台車6を処理槽3に接続する。すなわち、飽和蒸気調理機2の正面に前端部が当たるまで親台車6を進めて、ハンドル35の操作により渡し板28を展開すればよい。そして、親台車6のキャスター10の足踏みストッパを操作して、親台車6を位置決めする。
【0068】
次に、子台車7のストッパ21の操作部50を下方へ押して、ストッパ21と係止部53との係止を解除しつつ、処理槽3から子台車7を引き出せばよい。処理槽3から子台車7を少し引き出した後は、操作部50から手を離しても構わない。その状態では、図5に示すように、ストッパ21は、前端部のストッパ片26を下げた傾斜状態とされる。そして、親台車6に子台車7を載せ込むのであるが、この際、親台車6の左右の第一側壁19,19間に子台車7が案内される。
【0069】
子台車7を親台車6に完全に載せ込むと、親台車6の係止部22に子台車7のストッパ21が係止される。この係止は、親台車6へ子台車7を載せ込むことで、自動でなされる。すなわち、第一凸部23の傾斜面27にストッパ片26が当接すると、ストッパ21は支軸49まわり回転して、ストッパ片26を自動的に持ち上げる。そして、ストッパ片26は、第一凸部23の上面を通過した後、図4に示すように、自重により凹部25にはまり込む。凹部25の前後は垂直面に形成されているので、ストッパ21を手動で操作しない限り、係止部22とストッパ21との係止が解除されるおそれはない。このようにして、親台車6上の所定位置に、子台車7を位置決めすることができる。ところで、飽和蒸気調理機2から子台車7を取り出した際、子台車7に蒸気の凝縮水が付いていても、その凝縮水は、親台車6のレール皿16の左右の拡幅部17,17にて受けられることになる。
【0070】
その後、カム軸33のハンドル35を反時計方向へ90度回転させて、渡し板28を格納すると共に、親台車6のキャスター10の足踏みストッパを操作して、車輪のロックを解除すればよい。これにより、親台車6の移動を自由になすことができ、所望の場所まで食材4を運ぶことができる。そして、所望により、真空冷却機などの他の食品機械の処理槽に、食材4を子台車7ごと搬入してもよい。その際も、その食品機械の処理槽に係止部53を設けておくことで、飽和蒸気調理機2の場合と同様に、子台車7の位置決めを図ることができる。
【0071】
図7は、本実施例1の変形例を示す概略縦断面図であり、処理槽3内に子台車7を収容した状態を示している。ストッパ21の係止部53は、前記実施例1では、親台車6および処理槽3に第一凸部23,54と第二凸部24,55とを設けて構成したが、この変形例では、処理槽3内の底面に単に凹部56を形成して構成される。また、これと同様に、親台車6の係止部22も、レール皿16の底壁18に単に凹部25を形成して構成してもよい。
【0072】
この変形例の場合も、ストッパ21は通常状態では、前方のストッパ片26を自重により下方へ落とした傾斜状態とされる。また、ストッパ片26は、処理槽3内の底面やレール皿16の底壁18上を滑って移動することになる。そして、親台車6または処理槽3内の所定位置に子台車7が配置されると、ストッパ片26が凹部25,56へ自重によりはまり込んで、子台車7が親台車6または処理槽3に係止される。その他の構成や使用については、同様であるから説明は省略する。
【実施例2】
【0073】
図8から図10は、本発明の親子台車1の実施例2を示す概略図であり、図8は斜視図、図9は左側面図、図10は平面図である。また、図11は、子台車7が載せられた親台車6の上部を示す概略斜視図であり、子台車7の上部を切り欠いて示している。
【0074】
本実施例2の親子台車1も、基本的には前記実施例1の親子台車1と同様である。従って、以下においては、実施例1と異なる点を中心に説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。また、実施例1と対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0075】
本実施例2の親子台車1も、前記実施例1と同様に、親台車6と、これに載せられて搬送可能な子台車7とから構成される。親台車6は、前記実施例1と同様に、断面略L字形状の形材8,8,…により、略矩形のボックス状に組み立てられた台枠9を備え、この台枠9の下部四隅には、それぞれキャスター10が設けられる。この際、台枠9の前方左右に設ける各キャスター10は、そのヨーク11が旋回不能とされるが、台枠9の後方左右に設ける各キャスター10は、そのヨーク11が旋回可能とされる。さらに、台枠9の後方左右に設ける各キャスター10は、足踏みストッパを備え、所望によりその車輪13の固定が可能とされている。
【0076】
親台車6の手押し部14は、丸パイプが下方へ開放する略コ字形状に屈曲されて構成され、その開放両端部が台枠9上部の後方左右両端部に固定される。また、本実施例2では、親台車6の台枠9には、上下方向中途部にドレンパン60が水平に設けられる。このドレンパン60は、台枠9の横断面形状とほぼ同じ大きさで、上方へ開口した浅い箱形状とされている。子台車7を飽和蒸気調理機2から取り出して親台車6に載せると、子台車7に付着していた蒸気の凝縮水が下方へ落下するおそれがあるが、その凝縮水は本実施例2ではドレンパン60に受け入れられる。
【0077】
ドレンパン60の下部には、図9に示すように、排水弁61が設けられている。従って、所望により、排水弁61を開けて、ドレンパン60内の水を排水することができる。ドレンパン60は、台枠9の後部から、台枠9に対し着脱可能とされている。従って、所望により、台枠9からドレンパン60を後方へ引き出して取り外すことで、ドレンパン60を洗浄可能とされる。台枠9に対するドレンパン60の引き出しを容易に行うために、ドレンパン60の後部には把手62が設けられる。
【0078】
前記実施例1では、台枠9の上部にレール皿16を設け、その第一側壁19,19間に子台車7を載せ込む構成としたが、本実施例2では、台枠9上部の左右両端部に、それぞれ前後方向へ沿ってレール材63,63を設け、その左右のレール材63,63に子台車7の左右の車輪42,42が走行する構成とされる。すなわち、各レール材63は、断面略コ字形状材から構成され、その溝を上方へ開口して設けられ、その溝に案内されて子台車7の車輪42が前後方向へ走行可能とされる。
【0079】
台枠9上部の左右方向中央部には、前後に細長い略矩形の板材からなるガイド板64が水平に設けられる。このガイド板64の上面には、前記実施例1と同様に、第一凸部23と第二凸部24とから構成される係止部22が設けられる。
【0080】
ガイド板64の下部には、前記実施例1と同様に、カム軸33が、前後方向へ沿って配置されると共に、回転可能に保持される。カム軸33は、前端部にカム32が固定される一方、後端部は垂直に屈曲されてハンドル35が設けられる。本実施例2のカム32は、図11に示すように、略矩形状の板材から構成され、その左右一端辺はカム32の回転を案内するための略半円形状に形成されている。そして、左右他端辺側の上下方向中央部よりも上下方向一方へ偏心した位置に、カム軸33の前端部が固定される。
【0081】
本実施例2のハンドル35は、後方の垂直壁34に設けられたハンドル保持片36との関係で、180度だけ回転可能とされる。すなわち、先端部を右側へ向けた第一水平状態と、先端部を左側へ向けた第二水平状態との間で、180度分だけ回転可能とされる。ハンドル35の第一水平状態では、渡し板28は展開状態とされ、ハンドル35の第二水平状態では、渡し板28は格納状態とされる。
【0082】
本実施例2の渡し板28も、前記実施例1と同様に、略矩形の板材から構成され、その板面に対して左右両端辺部が垂直に屈曲されて、左右両側壁29,29が形成されている。そして、渡し板28の左右両側壁29,29の基端部は、左右のレール材63,63の左右方向外側の端片の前端部に重ね合わされて、それぞれ左右方向へ沿う枢軸30,30にて揺動可能に設けられる。
【0083】
本実施例2の子台車7は、左右に離隔してそれぞれ前後方向へ沿って配置される底材37,37と、各底材37の前後両端部から垂直に立設される側柱38,38と、前後の側柱38,38の上端部同士を接続する天材65とを備える。
【0084】
各底材37は、前記実施例1と同様に、下方へ開口した断面略コ字形状材から形成され、その溝を横断するように前後両端部に車軸41が設けられ、その車軸41に車輪42が回転自在に保持される。この車輪42は、親台車6のレール材63を構成する断面略コ字形状材の溝に沿って走行可能とされる。
【0085】
前後の側柱38,38および天材65は、断面略矩形の形材により形成される。また、左右の側柱38,38間には、それぞれ略コ字形状材66,66,…が固定される。本実施例では、それぞれ十個の略コ字形状材66,66,…が、上下に等間隔に離隔して、設定された高さに設けられる。この際、各略コ字形状材66は、その溝を前後方向内側へ向けて水平に設けられる。
【0086】
このようにして前後に向かい合う略コ字形状材66,66間には、それぞれトレーやホテルパンなどが着脱可能に保持される。ところで、前方左右に設けた各側柱38,38には、トレーやホテルパンなどの脱落を防止するために、脱落防止バー67,67が設けられる。図12は、脱落防止バー67を示す概略斜視図である。この図では、前方左側の側柱38に設けた脱落防止バー67を示しているが、前方右側の側柱38に設けた脱落防止バー67も同様の構成である。
【0087】
前方左右の側柱38の上下には、その左右方向外側面に、それぞれバー保持具68,68が設けられる。バー保持具68は、水平に保持される略矩形の板材で、上下方向へ貫通してバー挿通穴69が形成されている。但し、バー挿通穴69は、図示例のように、バー保持具68を構成する板材に、その一端辺に開口して溝を形成しておき、その溝の開口部を側柱38の側面で閉塞して構成してもよい。
【0088】
上側のバー保持具68の上部には、バー吊り具70が設けられる。バー吊り具70は、断面コ字形状材から構成され、その溝を左右方向内側へ向けて、左右の側柱38の外側面に固定される。バー吊り具70の中央片の上部には、浅い第一溝71が形成されている。また、バー吊り具70の後端片の上部には、第一溝71よりも深い第二溝72が形成されている。
【0089】
脱落防止バー67は、バー吊り具70に吊り下げられるが、その際、上下のバー保持具68,68にも保持される。脱落防止バー67は、上下方向へ沿う丸棒の上下両端部が、垂直に屈曲された後、上下方向内側へ屈曲されて取付部73,73を形成されている。そして、脱落防止バー67は、上側の取付部73が、バー吊り具70を介して上側のバー保持具68のバー挿通穴69に差し込まれる一方、下側の取付部73が、下側のバー保持具68のバー挿通穴69に差し込まれて設けられる。
【0090】
このような構成であるから、脱落防止バー67は、図12において二点鎖線で示すように、上端部を第一溝71に配置すると、側柱38から左右方向外側へ延出して配置される。従って、その状態では、略コ字形状材66に対し、トレーやホテルパンなどの出し入れが可能とされる。一方、脱落防止バー67は、図12において実線で示すように、上端部を第二溝72に配置すると、側柱38から後方へ延出して配置される。従って、その状態では、略コ字形状材66に保持されたトレーやホテルパンなどの脱落が防止される。
【0091】
本実施例2においても、子台車7の後部には、左右の底材37,37同士を架け渡すように、支軸49が設けられており、その支軸49の左右方向中央部には、ストッパ21が揺動可能に設けられている。このストッパ21の構成、および親台車6や処理槽3の各係止部21,53とストッパ21との係止やその解除、処理槽3と親台車6との間の子台車7の出し入れなどは、前記実施例と同様になされるため、説明は省略する。
【0092】
前記各実施例の構成によれば、親台車6と処理槽3は、揺動可能な渡し板28により接続される。従って、処理槽3の高さが異なる複数の食品機械に対しても、あるいは同じ食品機械であるが設置される床面が異なる場合でも、容易に子台車7を処理槽3に出し入れすることができる。
【0093】
また、親台車6または処理槽3と子台車7との係止は、振り子式のストッパ21により、子台車7の移動により機械的に自動でなされる。従って、簡易な構成で、子台車7の位置決めを容易で確実に行うことができる。しかも、子台車7の後端部に操作部50を配置したので、ストッパ21の解除を容易に行うことができる。
【0094】
本発明の親子台車1は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、飽和蒸気調理機2の処理槽3に子台車7を出し入れする場合について説明したが、子台車7を出し入れする対象は、飽和蒸気調理機2に限らず、その他の食品機械でもよい。また、子台車7に積載される被搬送物に応じて、食品機械に限らず、滅菌器などに対しても同様に使用できる。さらに、親台車6との間で子台車7を出し入れする先は、処理槽3に限らない。
【0095】
また、前記実施例2においても、前記実施例1と同様に、親台車6および/または処理槽3に設ける係止部22,53は、図7に示すように、単なる凹部25,56から構成してもよい。さらに、前記実施例においては、ストッパ片26が第一凸部23,54を乗り越えるために、第一凸部23,54に傾斜面27,57を形成したが、場合によりそれに代えて、ストッパ片26の側に傾斜面を形成して、その傾斜面で第一凸部23,54を乗り越える構成としてもよい。
【0096】
また、前記各実施例において、第一凸部23,54は、スプリングにより設定量だけ上方へ突出するよう設けられると共に、その付勢力に対抗して下方へ押し込み可能に構成してもよい。この場合、親台車6への子台車7の載せ込み、または処理槽3への子台車7の載せ込みにより、ストッパ片26が第一凸部23,54を下方へ押し込みながら通過することができる。そして、通過後には、第一凸部23,54は、スプリングの付勢力により、再び上方へ突出してストッパ片26を係止することになる。
【0097】
また、前記各実施例では、ストッパ21は、その前端部(ストッパ片26)を自重により下方へ落として傾斜する構成であったが、場合により、ねじりコイルバネなどを用いて、ストッパ21の前端部を付勢力により下方へ落として傾斜する構成としてもよい。
【0098】
さらに、前記各実施例では、子台車7に設けた略L字形状材44,44または略コ字形状材66,66に、食材4を入れたホテルパン45などを保持する構成としたが、食材4を入れた容器(たとえば、ばんじゅう)を単に置いたり、積み重ねたりしてもよい。その場合、子台車7は、単に荷台を有していれば足り、棚枠や棚を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の親子台車の実施例1の使用状態を示す概略斜視図であり、処理槽の一部を切り欠いて示すと共に扉を省略して示している。
【図2】実施例1において、子台車が載せられると共に処理槽と接続された親台車の上部を示す概略斜視図であり、子台車の上部を切り欠いて示している。
【図3】実施例1において、親台車の上部に載せられた子台車の背面図である。
【図4】実施例1の親子台車の使用状態を示す概略縦断面図であり、処理槽に親子台車を接続しようとする状態を示している。
【図5】実施例1の親子台車の使用状態を示す概略縦断面図であり、親台車と処理槽とを接続して、子台車を処理槽内へ載せ込む状態を示している。
【図6】実施例1の親子台車の使用状態を示す概略縦断面図であり、処理槽内に子台車を完全に載せ込んで、処理槽の扉を閉めた状態を示している。
【図7】実施例1の変形例を示す概略縦断面図であり、処理槽内に子台車を収容した状態を示している。
【図8】本発明の親子台車の実施例2を示す概略斜視図である。
【図9】実施例2の親子台車の左側面図である。
【図10】実施例2の親子台車の平面図である。
【図11】実施例2において、子台車が載せられた親台車の上部を示す概略斜視図であり、子台車の上部を切り欠いて示している。
【図12】実施例2の親子台車の脱落防止バーを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
1 親子台車
3 処理槽(搬入先)
6 親台車
7 子台車
21 ストッパ
22 係止部
25 凹部
26 ストッパ片(ストッパの前端部)
27 傾斜面
28 渡し板
30 枢軸
32 カム
35 ハンドル
49 支軸
53 係止部
56 凹部
57 傾斜面
58 突部
59 係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入先と架け渡されるか突き合わされる親台車と、
この親台車と前記搬入先との間を走行して出し入れされ、前記搬入先から前記親台車への載せ込みに伴い、前記親台車の係止部に係止されるストッパを有する子台車と
を備えることを特徴とする親子台車。
【請求項2】
前記子台車は、前記親台車から前記搬入先への載せ込みに伴い、前記搬入先の係止部に前記ストッパにて係止される
ことを特徴とする請求項1に記載の親子台車。
【請求項3】
前記ストッパは、前記子台車が走行する前後方向へ延出する部材とされ、前記子台車の後端部において、左右方向へ沿う軸まわりに揺動可能に設けられ、自重または付勢力により前端部を下方へ落として傾斜して設けられ、
前記子台車の載せ込みに伴い、前記ストッパの前端部は、それに設けた傾斜面または前記係止部に設けた傾斜面で乗り上げて、前記係止部に設けた凹部にはまり込むか、あるいは前記ストッパの前端部は、前記係止部を構成する凹部にはまり込む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の親子台車。
【請求項4】
前記親台車の前端部に、前記搬入先との間を架け渡すための渡し板が、左右方向へ沿う枢軸を中心に回転可能に設けられており、
前記親台車の後端部に設けられたハンドルの操作により、カムを回転させることで前記渡し板の先端部を前記枢軸まわりに上下動可能とされた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の親子台車。
【請求項5】
前記渡し板は、その先端部を前記枢軸まわりに前方へ降ろして前記搬入先に架け渡される際、前記搬入先との間で係合される
ことを特徴とする請求項4に記載の親子台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−6802(P2009−6802A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168996(P2007−168996)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)特許法第30条第3項の適用を受けるため ・博覧会名 FOOMA JAPAN 2007(国際食品工業展) ・主催者名 社団法人日本食品機械工業会 ・開催日 平成19年6月5日〜6月8日 (2)特許法第30条第1項の適用を受けるため ・発行者名 株式会社三浦プロテック ・刊行物名 リーフレット「食品加熱冷却装置 ONRAY COOKER CQ−60」 ・発行年月日 平成19年6月5日(上記博覧会の出展小間にて配布した。従って、上記博覧会出品と密接不可分の関係にある公開と考えるが、念のため証明書を提出する。)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】