説明

計測データ保管システム

【課題】 計測データを人手を介して自主管理していたので、データの正当性をチェックすることが困難であった。また、データを安全に管理するためには多くの管理工数をかけなければならなかったという課題を解決する。
【解決手段】 計測装置、計測を実行して得られたデータを保存する遠隔計測用サーバ、この遠隔計測用サーバにアクセスするためのブラウザ端末をネットワークに接続し、ブラウザ端末によって遠隔計測用サーバにアクセスして、選択した計測シナリオに基づいて計測を実行し、得られたデータを参照するようにした。また、登録情報によって遠隔計測用サーバにアクセスする利用者をチェックするようにした。遠隔地から計測を実行でき、かつ計測およびデータの保管を集中的に管理することができるので、操作ミスなどによるデータの改ざん、消失を防止でき、かつ管理工数を大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査・測定データ等計測データを集中管理して安全に保管・利用することができる計測データ保管システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年種々の計測装置が使用されているが、これら計測装置の計測結果である計測データは、通常計測装置の利用事業者の責任で保管、運用している。このような保管、運用形態の一例を図6に示す。なお、ここでいう計測データには、観測や実験、検査等で継続的に計測しているデータ、排水や排気等廃棄物の成分および量、温度、振動、画像、あるいは倉庫の在庫数等が含まれる。
【0003】
図6において、計測装置11〜13が計測した計測データ21〜23は電子記録としてデータベース31に格納され、保管、運用される。また、必要に応じてデータベース31のバックアップ32を作成し、不測の事態に備えている。
【0004】
コンピュータ技術やネットワーク技術の発達により計測データに容易にアクセスできる環境が普及してきたが、その結果計測データを容易に変更できるようになった。特に、最近はモラルが低下し、不都合なデータを改ざんする事件が多発し、社会問題になっている。そのため、不正アクセスを防止し、計測データを安全に保管するニーズが高くなってきている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−350085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単体の計測装置だけで計測データを安全に保管しようとすると管理の手間が大きくなり、かつ監査のためのオーバーヘッドも大きくなるという課題があった。
【0007】
事業者自身が計測データを自主管理しようとすると、人手が介在するために計測データの置き換え、改ざんの危険性が増大し、また外部からデータの正当性をチェックすることは困難になる。また、計測データの保管管理は管理者のスキルおよびシステム環境に依存しており、安全に管理するためには多くの時間をかけなければならず、負担が大きくなるという課題があった。
【0008】
従って本発明の目的は、計測データを集中して一括管理することにより、適正なコストで安全に計測データを保管でき、かつその正当性を保証することができる計測データ保管システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
ネットワークに接続された計測装置と、
この計測装置が計測した計測データ、およびそれに関連するデータが格納されるデータベースと、
前記ネットワークに接続されたブラウザ端末と、
前記ネットワークに接続され、このネットワークを介して前記計測装置の情報および状態を管理し、選択された計測シナリオに基づいて前記計測装置から計測データを収集して、この計測データおよびそれに関連するデータを前記データベースに格納し、前記ブラウザ端末から参照要求があったときに、前記データベースに格納された計測データを前記ブラウザ端末に出力する遠隔計測用サーバと、
を具備したものである。どこからでも計測装置を利用することができ、かつ計測したデータを参照できる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記遠隔計測用サーバは利用者の情報を登録し、この登録された情報に基づいて前記ブラウザ端末を介してログインしてきた利用者の身元を確認することにより、不正アクセスを防止するようにしたものである。データの改ざん等不正行為を防止できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1若しくは請求項2記載の発明において、
前記遠隔計測用サーバには複数の利用者がログインでき、これら利用者毎にアクセスできる範囲を設定できるようにしたものである。システムおよびデータの安全性を確保できる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3いずれかに記載の発明において、
前記遠隔計測用サーバは利用者とは異なる運用者によって運用され、利用者は前記データベースに保存された計測データに関し、参照のみ可能であるようにしたものである。不正行為を防止でき、システムおよびデータの安全性を確保できる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4いずれかに記載の発明において、
前記遠隔計測用サーバは、保存された計測データを分析し、またこの分析結果に基づいて報告書を作成する計測データ分析部を具備したものである。計測とデータの分析、報告書作成が1つのシステムでできる。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5いずれかに記載の発明において、
前記遠隔計測用サーバは、認証局が発行するデジタルIDを用いて正規の運用者がデータ処理行ったことを保証し、また認証局が発行する公開鍵により計測データの真性を証明するようにしたものである。データの改ざんを防止できる。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6いずれかに記載の発明において、
本計測データ管理システムの変更、計測データの保存およびバックアップの作成について監査ログを作成し、利用者の求めに応じてこの監査ログを出力するようにしたものである。データの消失を防止し、システムおよびデータの正当性を確認できる。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項7いずれかに記載の発明において、
前記計測シナリオに、実行開始時刻、停止時刻、周期を指定できるようにしたものである。利用者の運用を容易にできる。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項8いずれかに記載の発明において、
前記計測データの保存と同時に、この計測データの分析を行うようにしたものである。柔軟な診断・警報システムを構成できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2、3、4、5、6、7、8および9の発明によれば、計測装置、計測を実行して得られたデータを保存する遠隔計測用サーバと、この遠隔計測用サーバにアクセスするためのブラウザ端末をネットワークに接続し、ブラウザ端末によって遠隔計測用サーバにアクセスして、選択した計測シナリオに基づいて計測を実行し、得られたデータを参照するようにした。
【0019】
計測およびデータの保管を集中的に管理することができるので、操作ミスなどによるデータの改ざん、消失を防止でき、かつ管理工数を大幅に低減することができる。そのため、管理担当者の負担を大幅に軽減でき、スキルのある人材不足を解消でき、かつ管理コストを削減できるという効果がある。さらに、一括して管理することにより信頼性を向上させ、監査が容易になるという効果もある。
【0020】
また、登録情報や認証で利用者の身元を確認することにより、不正アクセスを防止することができる。そのため、データの信頼性を飛躍的に向上させることができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る計測データ保管システムの一実施例の構成図である。図1において、40はデータセンターであり、データベース41、遠隔計測用サーバ42、ファイアウオール43およびブラウザ端末44で構成される。データセンター40は専任の運用管理者によって管理される。なお、ブラウザ端末44は運用管理者またはカスタマサービスが使用する。
【0022】
データベース41は装置管理情報41a、利用者管理情報41b、計測データ台帳41c、計測報告文書データ41d、計測データ41e、監査ログデータ41fのデータで構成される。遠隔計測用サーバ42はデータベース41に接続され、装置構成管理部42a、計測データ収集管理部42b、計測データ保存管理部42c、計測データ分析部42d、計測データ参照部42e、アクセス管理部42fおよび監査ログ部42gが内蔵される。遠隔計測用サーバ42はファイアウオール43を介してネットワーク71に接続される。また、ブラウザ端末44により各種データ等を参照することができる。ネットワーク71は企業内あるいは工場内のネットワークを想定しているが、インターネット、携帯電話網、無線ネットワーク等を用いることもできる。
【0023】
50は保管庫であり、装置管理情報、計測データのバックアップデータ51、52が格納される。72は認証局であり、ネットワーク71を介して利用することができる。60は工場であり、計測対象物64a、64bにはそれぞれ計測装置63a、63bが接続される。これら計測装置63a、63bはハブ62、ファイアウオール61を介してネットワーク71に接続される。計測データ等を参照するブラウザ端末75はハブ74、ファイアウオール73を介してネットワーク71に接続される。なお、ファイアウオール43、61、73はネットワーク71を経由して部外者が侵入することを防止するセキュリティ装置である。
【0024】
遠隔計測用サーバ42は、ウエブサービス通信を使用して計測装置63a、63bを遠隔地から統合的に制御する機能を有するサーバであり、利用者が指定した計測シナリオに沿って計測処理を行い、得られた計測データを指定された形式に加工してデータベース41に保存する。また、利用者のアクセス制限を登録でき、このアクセス権に従ってアクセス管理を行うことによって計測データを安全に保存できる。また、ブラウザ端末75を用いて、外部から計測データをアクセスして参照することができる。遠隔計測用サーバ42は、SOAP(Simple Object Access Protocol)やCORBA(Common Object Request Broker Architecture)等のウエブサービスインターフェイスを用いてブラウザ端末75と通信を行う。
【0025】
装置構成管理部42aは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、次の3つの機能を有する。
1.利用対象の計測装置の情報を装置管理情報41aに登録し、更新し、削除する。また登録されている装置の一覧を表示する。
2.登録されている装置の状態を表示し、チェック・確認する。すなわち、装置のステータス情報を問い合わせ、返答結果を表示する。
3.登録された装置の記録時刻と整合性を保つため、遠隔計測用サーバ42および登録された装置の内部時刻をネットワーク71で提供される標準時刻と同期させる。
【0026】
計測データ収集管理部42bは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、データ収集を行う。この計測データ収集管理部42bは以下の3つの機能を有する。
1.予め1つまたは複数の計測装置の物理的計測インターフェイスデータを組み合わせて、1組の論理的な意味を持たせた計測データセットを定義する。
2.計測データに対応したURI(Universal Resource Identifier)の指定、計測条件の設定、計測開始前に行う設定パラメータの指示、計測データの格納位置の指定を含む計測シナリオを定義し、保存する。この定義、保存はブラウザ端末75を用いて行う。
3.登録されている計測シナリオのうち、選択された計測シナリオを起動し、実行する。すなわち、選択された計測シナリオを読み込み、このシナリオ中に定義された計測装置情報を読み込んで、計測データにマップされるURIを持つ全装置あるいはインターフェイスに対して順次計測を指示し、計測データを受信する。そして、受信した全ての計測データを、計測データ定義に適合する形式で一時記録する。この一時記録された計測データは計測データ保存管理部42cの処理を経た後、計測シナリオで指定されたデータベースに保存される。
【0027】
計測データ保存管理部42cは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、計測データを保存する。計測データ保存管理部42cは、計測データ単位毎に計測装置の情報や計測条件や計測日時等の属性情報、これらのデータにハッシュ関数で計算したハッシュ値(MD5等)、電子署名、タイムスタンプを付加して追記モードで保存する。ハッシュ値はデータが改ざんされていないかどうかをチェックするために用いる。また、電子署名は認証局72に登録した運用管理者が計測データを収集管理処理したことを証明し、計測データを保証するために用いる。
【0028】
計測データ分析部42dは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、計測データを分析し、また報告書を作成する。この計測データ分析部42dには、保存された計測データを分析し、各種の形式で報告書を出力するアプリケーションを追加、拡充することができる。また、利用者の要求に応じて、日報、週報、月報やトレンド等の形式で表示し、アラーム表示などを行う機能を追加することもできる。
【0029】
計測データ参照部42eは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、ウエブサービスあるいはブラウザ端末75を用いて、計測データ台帳41cに登録された計測データや検査報告書を参照する機能を有する。
【0030】
アクセス管理部42fは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、保存されている計測データ、計測装置構成情報、計測シナリオ、計測データセット定義等管理リソースへのアクセスを管理する。リソース毎にアクセス権限を設定することができるが、利用者は計測データについては参照のみ可能とする。アクセスは監査ログデータ41fに記録される。なお、利用者単位、組織単位で測定データへのアクセス制限をかけるように設定することもできる。
【0031】
監査ログ部42gは遠隔計測用サーバ42に内蔵され、設定変更、実行収集、保存、バックアップ等の各種サービスが適正に運用されていることを記録し、顧客の要求に応じてこれらの記録を監査記録として出力する機能を有する。
【0032】
データベース41には装置管理情報41a、利用者管理情報41b、計測データ台帳41c、計測報告文書データ41d、計測データ41eおよび監査ログデータ41fが格納される。
【0033】
装置管理情報41aは利用者が計測装置の固有情報や管理情報を登録し、参照するためのデータであり、計測装置、インターフェイスを識別するための固有情報を登録割り付けする。この固有情報は管理対象装置のID、装置のベンダー、製品型番、シリアル番号、名称、所属インターフェイス、最終記録日、備考、保守予定日、ステータス更新日付、要求ステータス、結果ステータス、設置情報/カスタマID情報/URI検査要求サービス等の装置属性が含まれる。さらに、登録された装置の状態が有効であるかどうかの問い合わせでは、その結果をステータスとして保持する。
【0034】
利用者管理情報41bには、遠隔計測用サーバ42にアクセスできるメンバーとその権限が格納される。具体的には、ログインID、パスワード、アクセス権限、連絡先等のカスタマ情報等が含まれる。なお、運用管理者もアクセスメンバーの一人としてそのデータが格納される。
【0035】
計測データ台帳41cは遠隔計測すると自動的に作成され、計測記録情報の目録が格納される。
【0036】
計測報告文書データ41dは計測報告を文書形式で記録したデータであり、計測データ情報、計測条件、計測期間、使用した計測装置、カスタマ情報、改ざん防止のためのハッシュ値、認証局72が発行した秘密鍵を使用して作成した電子捺印情報を付加した電子文書が含まれる。この計測報告文書データ41dは、利用者が計測シナリオを実行する都度記録される。なお、計測データが連続データの場合は、別ファイル構成としてもよく、また連続データを可変長データとして1レコード中に格納するようにしてもよい。報告文書が正規のものであるかどうかのチェックは、アクセスの都度行うようにすることもでき、定期的に全記録をチェックするようにすることもできる。
【0037】
計測データ41eは計測装置63a、63bで計測したデータである。計測データを単独の電子ファイルに格納する場合は専用のフォルダに格納して、計測報告文書データ41dにはそのフォルダのディレクトリパスを登録する。このようにすることにより、計測報告文書から計測データを参照することができる。
【0038】
監査ログデータ41fは装置管理情報や利用者管理情報の変更、計測報告文書等にアクセスした記録であり、自動的に記録される。
【0039】
保管庫50には、装置の障害対策のために装置管理情報のバックアップ51、計測データのバックアップ52が保管される。これらのバックアップは運用管理者が運用規定に基づいて定期的に更新し、決められた期間保管する。なお、保管庫50はデータセンター40とは別のロケーションにある機器のメディアを使用する。
【0040】
計測装置63a、63bは計測データを生成する装置であり、計測対象64a、64bに対応した計測用インターフェイスおよびセンサを少なくとも1つ有し、物理量を計測する。計測した信号から計測データへの変換は、計測装置63a、63bで行ってもよく、また上位の遠隔計測用サーバ42で行ってもよい。
【0041】
また、計測装置63a、63bはウエブサービス通信に対応した機能を有し、ネットワーク71に接続することができる。すなわち、ウエブサービス要求を受け付けてこの要求に応じて返信する機能を有し、計測用インターフェイスにURIを割り当て、このURIを指定して計測データにアクセスできる。このウエブサービス通信機能は計測装置63a、63bに内蔵されていてもよく、また外付けでもよい。
【0042】
ネットワーク71にインターネット等を使用する場合は、セキュリティが要求される。この場合は、IPSec(Security Architecture for Internet Protocol)、https(Hyper Text Transfer Protocol Security)等を使用した通信を用いるか、認証IDを発行して相手方の計測装置が真性であるかどうかを確認するようにする。
【0043】
ブラウザ端末75はブラウザ機能を搭載したパソコンあるいはPDA(Personal Digital Assistants)であり、遠隔計測用サーバ42が管理している計測装置63a、63bの装置情報を閲覧し、また遠隔計測用サーバ42が提供している各種サービスを受けるために用いる。
【0044】
認証局72はネットワーク71を介して利用できる。この認証局72に遠隔計測サーバ42や計測装置63a、63bおよびこれらの装置の利用者、運用者を登録し、また登録者のデジタルIDを発行し、公開鍵を提供することにより、通信時のなりすましを防止し、かつ計測データの真性を証明する機能を実現するために用いられる。この認証局72は公共の認証局を用いてもよく、またネットワーク71を経由して利用者からアクセス可能な環境であれば、私的な認証局を用いてもよい。
【0045】
図2に、利用者、専任運用管理者、遠隔計測用サーバ42、計測装置63a、63bとの関係を示す。利用者がユーザ登録情報/装置情報の登録・更新を行うと、アクセス管理部42f、装置構成管理部42aは利用者管理情報41b、装置管理情報41aの登録・更新を行う利用者IDアクセス管理、装置情報管理を行う。装置情報管理を行ったときは、計測装置63a、63bのステータスを読み込む。
【0046】
利用者が計測シナリオを作成すると、遠隔計測用サーバ42はこのシナリオを登録し、計測装置63a、63bのパラメータを設定する。計測装置63a、63bは必要に応じて計測対象64a、64bのパラメータを設定する。
【0047】
利用者が計測条件を設定し、計測実行を指示すると、遠隔計測用サーバ42は登録されたシナリオを実行する。すなわち、計測装置63a、63bにデータ計測と送信を指示して計測データを収集し、このデータをデータベース41に安全に記録する。計測装置63a、63bは計測対象64a、64bにアクセスして計測を行う。
【0048】
利用者が計測データまたは分析データの参照あるいは報告書の印刷を指示すると、計測データ分析部42dはデータを分析して報告書を作成する。また、計測データ参照部42eはデータ参照処理を行う。
【0049】
この他、計測装置63a、63bは必要に応じて計測対象64a、64bにアクセスし、ローカル診断あるいは計測データの保管を行う。
【0050】
専任運用管理者は、運用オペレーション、システムの監視・管理、データベースの領域設定、利用者の登録管理、バックアップ等の処理を行うことによってデータセンター40のメンテナンスを行う。
【0051】
図3は利用者の指示とそれに対応する動作を時間を追って記述したものである。利用者がデータセンター40にログインすると、アクセス管理部42fは登録されている利用者であるかどうかをチェックし、正当な利用者であるとアクセスを許可する。
【0052】
利用者がすでに登録されているシナリオの表示を要求すると、遠隔計測用サーバ42は候補の計測シナリオを表示する。利用者は表示されているシナリオの1つを選択して、実行を指示する。遠隔計測用サーバ42はシナリオで指定されている計測装置を読み出し、パラメータを出力して計測条件を設定する。計測装置63a、63bは必要に応じて計測対象64a、64bを計測条件を出力し、条件設定が完了するとOKを遠隔計測用サーバ42に出力する。
【0053】
次に、遠隔計測用サーバ42は計測装置63a、63bに計測を要求し、計測装置63a、63bは計測データを返す。全計測装置の計測が終了すると、遠隔計測用サーバ42は計測装置に一時保管されている計測データを含めて全計測データの送信を要求し、計測シナリオに指定されている形式に変換して指定位置に保管する。その後、利用者の要求に応じて計測データの読み出し、チェック、表示を行う。
【0054】
図4に、計測記録文書形式の例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図4において、様式1は個別計測で用いる記録文書の例であり、カスタマID情報、計測装置情報、計測条件に続いてここの計測データが記載される。最後にチェックサムを含むハッシュ値と電子署名、タイムスタンプが記載される。
【0055】
様式2は連続計測の場合に用いる記録文書の例であり、カスタマID情報、計測時間を含む計測条件の後に計測データが記載され、最後にハッシュ値、電子署名、タイムスタンプが記載される。これらの記録文書は計測データ41eを参照して作成され、データベース41内の計測報告文書データ41dに保存される。また、要求に応じて報告書の形式で印刷される。
【0056】
図5(A)は計測シナリオ定義の例であり、シナリオの所有者、計測データを記録するデータベースとファイル情報の指定、計測データ構造へのファイルパス、計測条件、対象計測装置の指定がこの順に記載される。計測装置の指定には、URI、入出力の設定パラメータ、出力時間などの要求内容が順番に記載される。
【0057】
図5(B)は計測データ構造の定義例であり、対応項目とデータタイプの定義を記述する。すなわち、全ての計測データについて、URI、データの説明、データのタグ名、データの型が定義される。なお、表現記述にXML(Extensible Markup Language)を使用してもよい。
【0058】
なお、測定シナリオ機能を拡張して、実行開始時刻、停止時刻、周期を指定できるようにすれば、利用者の手を煩わせずに自動でデータを収集して記録することができるので、利用者にとってより使いやすいシステムとすることができる。
【0059】
また、計測データの保存と同時に、このデータに対して分析、診断できるような機能を追加すると、複数の計測データを組み合わせた柔軟な診断、警報システムを構成することができる。従来の計測装置ではこの機能追加は難しかった。
【0060】
また、本計測データ保管システムを使用すると、煙感知信号と画像情報を組み合わせてより正確な火災報知システムを構成し、また侵入警報信号と画像情報を組み合わせた監視・侵入検知システムを構成するなど、計測装置を柔軟に組み合わせることにより、信頼性の高い警報装置を構成できる。
【0061】
さらに、利用者の登録情報とアクセス権をきめ細かく設定できるようにすれば、複数の顧客に対応した、より安価な代行サービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】利用者、遠隔計測用サーバ、計測装置、計測対象の関係を示す図である。
【図3】計測の流れを説明するための図である。
【図4】計測記録文書様式の例を示す図である。
【図5】計測シナリオと計測データ構造の定義例を示す図である。
【図6】従来の計測データとその運用手順を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
40 データセンター
41 データベース
41a 装置管理情報
41b 利用者管理情報
41c 計測データ台帳
41d 計測報告文書データ
41e 計測データ
41f 監査ログデータ
42 遠隔計測用サーバ
42a 装置構成管理部
42b 計測データ収集管理部
42c 計測データ保存管理部
42d 計測データ分析部
42e 計測データ参照部
42f アクセス管理部
42g 監査ログ部
43、61、73 ファイアウオール
44、75 ブラウザ端末
50 保管庫
51 装置管理情報
52 計測データ
60 工場
62、74 ハブ
63a、63b 計測装置
64a、64b 計測対象
71 ネットワーク
72 認証局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された計測装置と、
この計測装置が計測した計測データ、およびそれに関連するデータが格納されるデータベースと、
前記ネットワークに接続されたブラウザ端末と、
前記ネットワークに接続され、このネットワークを介して前記計測装置の情報および状態を管理し、選択された計測シナリオに基づいて前記計測装置から計測データを収集して、この計測データおよびそれに関連するデータを前記データベースに格納し、前記ブラウザ端末から参照要求があったときに、前記データベースに格納された計測データを前記ブラウザ端末に出力する遠隔計測用サーバと、
を具備したことを特徴とする計測データ保管システム。
【請求項2】
前記遠隔計測用サーバは利用者の情報を登録し、この登録された情報に基づいて前記ブラウザ端末を介してログインしてきた利用者の身元を確認することにより、不正アクセスを防止するようにしたことを特徴とする請求項1記載の計測データ保管システム。
【請求項3】
前記遠隔計測用サーバには複数の利用者がログインでき、これら利用者毎にアクセスできる範囲を設定できるようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の計測データ保管システム。
【請求項4】
前記遠隔計測用サーバは利用者とは異なる運用者によって運用され、利用者は前記データベースに保存された計測データに関し、参照のみ可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の計測データ保管システム。
【請求項5】
前記遠隔計測用サーバは、保存された計測データを分析し、またこの分析結果に基づいて報告書を作成する計測データ分析部を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の計測データ保管システム。
【請求項6】
前記遠隔計測用サーバは、認証局が発行するデジタルIDを用いて正規の運用者がデータ処理行ったことを保証し、また認証局が発行する公開鍵により計測データの真性を証明するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載の計測データ保管システム。
【請求項7】
本計測データ管理システムの変更、計測データの保存およびバックアップの作成について監査ログを作成し、利用者の求めに応じてこの監査ログを出力するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれかに記載の計測データ保管システム。
【請求項8】
前記計測シナリオに、実行開始時刻、停止時刻、周期を指定できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれかに記載の計測データ保管システム。
【請求項9】
前記計測データの保存と同時に、この計測データの分析を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項8いずれかに記載の計測データ保管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328669(P2007−328669A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160653(P2006−160653)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】