説明

計測装置及び計測方法

【課題】微小構造の計測精度向上
【解決手段】計測対象物10に対し直線偏光の第1計測光80を照射する第1照射部52と、計測対象物10により反射された第1計測光80の第1反射光82を検出する第1検出部54と、計測対象物10を回転させる回転部55と、計測対象物10の回転に伴う第1反射光82の変化に基づき、計測対象物10の方向を判定する第1判定部60と、を具備することを特徴とする計測装置50。計測対象物10の方向を判定する機構を備えることにより、計測精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測装置及び計測方法に関し、特に光学的手段を用いた計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の回折限界より小さな微小構造を計測するための技術として、例えば走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)、原子間力顕微鏡(AFM: Atomic Force Microscope)、スキャトロメトリー法(Scatterometry)などが知られている。特に、スキャトロメトリー法は計測を非破壊かつ高精度で行うことができ、単位時間当たりの処理能力も高いことから、半導体分野におけるプロセス管理に広く用いられている。
【0003】
スキャトロメトリー法は、サンプルに対し計測光を照射して得た反射光の光学特性と、あらかじめシミュレーションにより求めた計算結果とを比較することにより、微小構造の形状を判定する計測方法である。スキャトロメトリー法は、サンプルの微小構造が対称性を有する場合(例えば、ライン&スペース等の周期的な微小構造が形成されている場合)に特に有効な計測方法である。
【0004】
電子ビーム露光・ナノインプリント法等により作成される光学素子や次世代ディスク媒体の表面には、ナノレベルの微小構造が形成されており、上記のスキャトロメトリー法はこれらの表面形状を計測・検査するためにも用いられる。例えば特許文献1には、溝構造を有する磁気記録ディスクの表面を、スキャトロメトリー法により検査する検査装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−133985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スキャトロメトリー法は、光学特性の実測値をシミュレーションにおける計算結果と比較するものであるため、計算モデルと実測における光学条件を一致させる必要がある。半導体分野においては、サンプルに設けられたアライメントマークをもとに、計測光に対するサンプルの方向を調整することが行われている。しかし、次世代の記録媒体や光学素子においては、計測対象となる表面上にアライメントマークを設けることができない場合がある。
【0007】
このように、アライメントマークが設けられていないサンプルをスキャトロメトリー法により計測する場合、計算モデルと実測における光学条件を一致させることが困難であるため計測制度が低下するおそれがあった。また、ナノレベルの微小構造は顕微鏡で判別することが不可能であり、スキャトロメトリー法による計測の場合に限らず、サンプルの方向を知ることは困難であった。
【0008】
以下に説明する計測装置及び計測方法は、上記の課題に鑑みなされたものであり、計測対象物(サンプル)の方向を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の計測方法は、計測対象物を回転させながら、前記計測対象物に対し直線偏光の第1計測光を照射するステップと、前記計測対象物により反射された第1反射光の、前記計測対称物の回転に伴う変化を検出するステップと、前記第1反射光の変化に基づき、前記計測対象物の方向を判定するステップと、を有する。また、この計測方法を実現するための機構として、本計測装置は計測対象物に対し直線偏光の第1計測光を照射する第1照射部と、前記計測対象物により反射された前記第1計測光の第1反射光を検出する第1検出部と、前記計測対象物を回転させる回転部と、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の変化の対称性に基づき、前記計測対象物の方向を判定する第1判定部とを具備する。上記の計測方法及び計測装置によれば、計測対象物の方向を容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本計測装置及び本計測方法によれば、計測対象物の方向を容易に判定することができる。また、判定結果に基づき計測対象物の方向を調整して計測を行うことができるため、計測精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
初めに、図面を用い従来技術における課題について詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は、スキャトロメトリー法により計測されるサンプルの斜視図であり、図1(b)は図1(a)の一部を拡大した図である。図1(b)を参照に、計測対象物であるサンプル10の表面には、ライン12とスペース14によるラインアンドスペース構造16が形成されている。
【0013】
図2は従来例に係るスキャトロメトリー装置の構成を示した図である。スキャトロメトリー装置20は、ステージ22、照射部24、検出部26、記憶部28、判定部30、及びオートコリメーター34を備えている。ステージ22には、計測されるサンプル10が搭載されている。照射部24は、計測光40をサンプル10に照射する。検出部26は、サンプル10により反射された計測光40の反射光42を検出し、検出結果を判定部30へと出力する。
【0014】
スキャトロメトリー法では、形状が既知の微小構造に対して計測光40を照射したと仮定した場合の反射光42の光学特性を、シミュレーションによりあらかじめ求めておく。図2を参照に、記憶部28には、複数の様々な形状パターンに対応して、上記のシミュレーションによる計算結果が記憶されている。判定部30は、検出部26により得られた計測結果と記憶部28に記憶された計算結果とを比較して、サンプル10の表面形状を判定する。例えば、計測結果に対し最も近い計算結果に対応した形状を、サンプル10の表面形状として決定する。以上のように、スキャトロメトリー装置20によりサンプル10の表面に形成された微小構造を計測することができる。
【0015】
図3は、図1と同じサンプル10に計測光40を照射した様子を示した図である。スキャトロメトリー法による計測では、シミュレーション時に仮定した光学条件と実際の計測時の光学条件とを一致させる必要がある。図3を参照に、光学条件としては、計測光40の偏光状態、計測光40の入射角度θ、サンプル10のあおり角θx及びθy、並びに計測光40の入射面46に対してサンプル10の成す角φ(以下、サンプル角φ)がある。図3では、ラインアンドスペース構造16がX軸の方向に形成されているため、入射面46とX軸の間の角をサンプル角φと定義する。
【0016】
図2及び図3を参照に、計測光40の偏光状態及び入射角度θは、照射部24を調整することによりシミュレーション時の光学条件と合わせることができる。また、サンプル10のあおり角θx及びθyは、オートコリメーター34から照射される調整光44により検出が可能であり、シミュレーション時の光学条件と容易に合わせることができる。
【0017】
これに対しサンプル角φの場合は、例えばサンプル10の表面に調整用のアライメントマークを形成し、そのアライメントマークに基づいて調整を行う方法がある。このような方法は、特に半導体分野において多く用いられる。しかし、サンプル10にアライメントマークを形成しない場合や、アライメントマークの形成が不可能な場合は、上記の方法による調整は不可能である。また、サンプル10に形成される微小構造のスケールが光の回折限界以下の場合、顕微鏡を用いた調整を行うことも不可能である。このように、サンプル10のサンプル角φをシミュレーション時の光学条件に合わせて正確に調整することが難しく、スキャトロメトリー法による計測の精度が低下するおそれがある。
【0018】
以下に開示の実施例は上記の課題を解決し、計測対象物の方向を容易に判定することができる計測装置及び計測方法を提供するものである。以下、図面をもとに詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図4は本実施例に係る計測装置の構成を示した図である。計測装置50の構成は、サンプル方向の計測を行うための第1の光学系と、サンプル形状の計測を行うための第2の光学系に大別される。第1の光学系は、第1照射部52及び第1検出部54を含む。第2の光学系は、第2照射部24及び第2検出部26を含む。第2の光学系の構成要素は、図2で説明したスキャトロメトリー装置20の構成要素と共通であるため同一の符号を使用するが、第1の光学系の構成要素と区別するために、各構成要素に「第2」の接頭語を付している。計測装置50はさらに、回転ステージ55、X−Y−Zステージ56、Θ−Θステージ57、ステージコントローラー58、演算装置60、及びビームスプリッター72〜76を備えている。
【0020】
本実施例で使用する計測対象物であるサンプル10は、図1(a)に示したものと同じである。本実施例では、上記のサンプル10のように対称性を有する微小構造が形成された物体を計測対象とすることができる。対称性を有する微小構造としては、例えば図1(a)のラインアンドスペース構造16のように、所定の形状パターンが周期的に形成されたものが挙げられるが、対称性を有する構造はこれらに限定されるものではない。また、サンプル10に形成された微小構造の対称性をもとに、サンプル10のサンプル方向を定めることができる。サンプル方向としては、例えば微小構造の対称軸の方向や、周期的な微小構造の形成方向を採用することができる。本実施例の場合は、ラインアンドスペース構造16が形成されたX軸方向をサンプル方向とすることができる。
【0021】
第1照射部52は、サンプル10に対し直線偏光の第1計測光80を照射する。第1照射部52は光源62及び第1偏光板64を含む。光源62から射出された光は、第1偏光板64により直線偏光の第1計測光80に変換され、ビームスプリッター72〜76を経てサンプル10へと照射される。本実施例において使用するサンプル10は、従来例(図1)にて説明したものと同一である。なお、図示するように光源62と第1偏光板64との間に波長フィルタ63を設けてもよい。例えば、サンプル10が特定の波長に対し感度が高い場合に、その波長成分のみをもつ第1計測光80を照射することにより、計測精度を向上させることができる。
【0022】
第1検出部54は、サンプル10により反射された第1計測光80の反射光である第1反射光82を検出する。第1検出部54は、第1反射光82の光強度を検出する第1センサ66と、第1反射光82の偏光状態を検出する第2センサ68を含む。第1センサ66に入射される第1反射光82の第1光束84は、第1ビームスプリッター72及び第2ビームスプリッター74を通過したのち、第1センサ66へと導かれる。これにより、第1センサ66は第1反射光82の光強度を検出する。第2センサ68に入射される第1反射光82の第2光束86は、第1ビームスプリッター72、第2ビームスプリッター74、及び第3ビームスプリッター76を通過したのち、第2偏光板70を透過して第2センサ68へと導かれる。これにより、光強度検出部である第2センサ68は、第1反射光82の偏光状態を第2光束86の光強度として検出する。
【0023】
回転ステージ55は、サンプル10を回転させる回転部であり、調整部であるステージコントローラー58の制御により水平方向に回転する。回転ステージ55にはステージ22に設置されたサンプル10が搭載されており、サンプル10は回転ステージ55の回転に伴って水平方向に回転する。また、X−Y−Zステージ56及びΘ−Θステージ57は、それぞれサンプル10の位置及びあおり角を調整するためのものであり、回転ステージ55と同様にステージコントローラー58により制御される。
【0024】
演算装置60は、サンプル10の方向を判定する第1判定部と、サンプル10に形成された微小構造の形状を判定する第2判定部を含む。演算装置60には、第1センサ66及び第2センサ68から検出結果が入力され、ステージコントローラー58からステージ22の水平方向の回転角(以下、ステージ角)が入力される。また、演算装置60は記憶部28に接続されている。記憶部28には、第2計測光40を複数の既知の形状に対し照射した際の、第2反射光42の光学特性の計算結果が記憶されている。
【0025】
図5及び図6は実施例に係る計測装置50の制御の流れを示したフローチャートである。サンプル10は、計測開始時においてステージ22に設置されている。図4及び図5を参照に、はじめにX−Y−Zステージ56がサンプル10の位置を調整する(ステップS12)。次に、Θ−Θステージ57がサンプル10のあおり角を調整する(ステップS14)。サンプル10のあおり角は、オートコリメーター34からの調整光により検出することができる。
【0026】
次に、第1照射部52がステージ22に設置されたサンプル10に対し第1計測光80を照射する(ステップS16)。次に、第1検出部54における第1センサ66及び第2センサ68が、第1反射光82を検出する(ステップS18)。次に、演算装置60が、第1センサ66及び第2センサ68から検出結果を取得し、ステージ22のステージ角と共に不図示のメモリに一時的に記憶する(ステップS20)。
【0027】
次に、演算装置60が、計測開始前に予め設定したステージの角度の全てに対して計測が終了したか否かの判定を行う(ステップS22)。計測が完了していない場合は、演算装置60の出力を受けたステージコントローラー58が、回転ステージ55を所定の角度だけ回転させ(ステップS24)、再び計測を行う(ステップS16〜S22)。以上のステップS16〜S24を繰り返すことにより、異なる複数のステージ角に対し、第1反射光82の光強度及び偏光状態のデータを計測する。これにより、サンプル10を回転させながらサンプル10に第1計測光80を照射し、サンプル10の回転に伴う第1反射光82の変化を検出することができる。
【0028】
ステップS22において全ての計測が終了している場合は、演算装置60がステップS16〜S24において収集されたデータをもとに、データ角の変化が対称となるステージ角を求め(ステップS26)、求められたステージ角からサンプル10の方向を判定する(ステップS28)。ステップS26及びS28におけるサンプル方向の判定方法については後段で詳述する。以上のステップにより、計測対象物であるサンプル10のサンプル方向が判定される。
【0029】
次に、図4及び図6を参照に、ステージコントローラー58が、演算装置60により判定されたサンプル方向をもとにステージ角の調整を行う(ステップS30)。図3を参照に、サンプル角φがシミュレーション時に仮定したサンプル角と等しくなるように調整を行う。調整が終了したら、以下のステップS32〜S38の手順でスキャトロメトリー計測を行う。
【0030】
まず、第2照射部24が、サンプル10に対し第2計測光40を照射する(ステップS32)。次に、第2検出部26が第2計測光の反射光である第2反射光を検出する(ステップS34)。次に、演算装置60が、記憶部28に記憶されたシミュレーション時のデータと、第2検出部26による検出結果とを比較する(ステップS36)。演算装置60は、比較結果をもとにサンプル10の形状を判定する(ステップS38)。以上のステップにより、サンプル10の表面に形成された微小構造の形状を計測することができる。
【0031】
図7(a)〜(d)及び図8を参照に、図5のステップS26及びS28におけるサンプル方向の判定方法について説明する。図7(a)〜(d)はサンプル10に対し、直線偏光の第1計測光80を照射した状態を示した上面図である。図中の点線90はサンプル10の方向を、図中の一点差線92は基準とする平面(例えば図3を参照に、第2計測光40の入射面46を基準面とすることができる)を示し、φは両者の成す角を示す。また、図7はサンプル10により反射された第1反射光82の検出値を、ステージ角と対応させて示したグラフである。図8中の点(a)〜(d)は、それぞれ図7(a)〜(d)に対応する。
【0032】
図7(a)〜(d)及び図8を参照に、初期状態φ=φにおいてセンサ検出値はピーク付近にあり、ステージ角はtとなっている。φ=φ及びφ=φにおいては、センサ検出値はピークから少し落ちたところにあり、ステージ角はそれぞれt及びtとなっている。φ=φにおいては、基準面とサンプル方向とが一致し、センサ検出値はピーク値を記録し、ステージ角はtとなっている。
【0033】
サンプル10の表面には対称性を有する微小構造が形成されているため、ある特定のサンプル角φを境に、センサ検出値の変化(第1反射光82の光強度及び偏光状態の変化)が対称となる。図7を参照に、本実施例ではセンサ検出値のピークである点(d)がこのような変化の中心点となる。このとき図7(d)を参照に、サンプル10のラインアンドスペース構造16の形成される方向が基準面と一致する。サンプル角φは直接測定することはできないが、図8のグラフの対称性からセンサ検出値の変化の中心(d)を特定し、対応するステージ角tを求めることで、サンプル10に形成された微小構造の方向を求めることができる。
【0034】
なお、図8に示されるように、中心となるステージ角tの付近ではセンサ検出値の変化が小さい場合あるため、中心値から離れた部分(図8の(b)及び(c))のデータを取得できるようにステージ角tを調整して計測を行うことが好ましい。また、図7では上に凸のピークをもつグラフを例に説明したが、計測条件やサンプルの性質によっては、グラフが下に凸のピークを持つ場合もある。その場合も本実施例と同様に、検出値の変化が対称となる点に対応するステージ角tから、微小構造の方向を求めることができる。
【0035】
以上のように、本実施例に係る計測装置50は、サンプル10の回転に伴う第1反射光82の変化に基づき、サンプル10の方向を判定する。これにより、アライメントマークに頼らずとも、サンプル10の方向を容易に判定することができる。また、計測装置50が具備するステージコントローラー58は、演算装置60により判定されたサンプル方向に基づき、第2計測光40に対するサンプル10の方向を調整する。これにより、スキャトロメトリーの計測精度を向上させることができる。
【0036】
本実施例において、第1計測光80の直線偏光の方向は、第2計測光40の入射面に対し平行または垂直とすることが好ましい。これにより、第2計測光40に対するサンプル10の方向の調整を容易に行うことができる。また、第1検出部54における第2偏光板70の偏光方向は、第1計測光40の偏光方向に対して平行または垂直とすることが好ましい。これにより、第2センサ68における偏光状態の検出をより正確に行うことができるため、計測精度を向上させることができる。
【0037】
本実施例において、第1検出部54は第1反射光82の光強度と偏光状態の両方を検出する機構を備えていたが、このうち片方のみを備えた構成とすることも可能である。例えば、サンプル10が偏光板に近い特性を持つ場合には、第1反射光82の偏光状態はあまり変化せずに、光強度が大きく変化する。このような場合、第1検出部54は光強度を検出する第1センサ66のみを備える構成とすることができる。演算装置60は、サンプル10の回転に伴う第1反射光82の光強度の変化に基づき、サンプル10の方向を判定する。これにより、偏光板としての性質をもつ計測対象物に対してより正確に計測を行うことができる。
【0038】
一方、サンプル10が波長板(偏光子)に近い特性を持つ場合には、第1反射光82の光強度はあまり変化せずに、偏光状態が大きく変化する。このような場合、第1検出部54は、偏光状態を検出するための第2センサ68及び第2偏光板70のみを備える構成とすることができる。演算装置60は、サンプル10の回転に伴う第1反射光82の偏光状態の変化に基づき、サンプル10の方向を判定する。これにより、波長板としての性質をもつ計測対象物に対してより正確に計測を行うことができる。
【0039】
本実施例のように、光強度と偏光状態の両方を検知する構成とする場合、性質が未知の計測対象物に対してより正確に計測を行うことができる。このとき例えば、光強度の変化と偏光状態の変化のうち変化が大きい方のデータを使用して判定を行う構成とすることができる。これにより、計測精度をより向上させることができる。
【0040】
また、光強度の変化と偏光状態の変化において、変化量が所定の閾値を超えたデータに基づき判定を行う構成とすることができる。以下、これについて説明する。
【0041】
図9は、図5のステップS28におけるサンプル方向の判定動作の詳細を示したフローチャートである。なお、以下の動作は全て第1判定部である演算装置60により行われる。最初に、第1センサ66から出力される検出値の変化を、あらかじめ設定した所定の閾値と比較する(ステップS50)。検出値の変化が閾値以上である場合にはステップS52へ進み、第1センサ66の出力からサンプル方向の判定を行う。
【0042】
次に、第2センサ68から出力される検出値の変化を、あらかじめ設定した閾値と比較する(ステップS54)。検出値の変化が閾値以上である場合にはステップS56へ進み、第2センサ68の出力からサンプル方向の判定を行う。さらに、第1センサ66の出力をもとに求めたサンプル方向と、第2センサ68の出力を求めたサンプル方向を平均して、最終的なサンプル方向を判定する(ステップS58)。ステップS54において、第2センサ68の検出値の変化が閾値未満の場合は、第1センサ66の出力から求めたサンプル方向を最終的なサンプル方向とする。
【0043】
ステップS50において、第1センサ66の検出値の変化が閾値未満の場合も、ステップS54と同様に、第2センサ68から出力される検出値の変化をあらかじめ設定した閾値と比較する(ステップS60)。検出値の変化が閾値以上である場合には、第2センサ68の出力から求めたサンプル方向を最終的なサンプル方向とする。検出値の変化が閾値未満の場合は、サンプル方向の判定を行わない。
【0044】
上記の方法によれば、第1反射光82の光強度または偏光状態の変化のうち、変化量が所定の閾値を超えた少なくとも一方のデータに基づきサンプル方向を判定する。これにより、計測精度をより向上させることができる。また、光強度及び偏光状態の変化の両方が閾値を上回った場合には、光強度及び偏光状態のそれぞれに基づき求められたサンプル方向を平均してサンプル方向を判定する。すなわち、光強度の変化に基づき求められた第1の方向と、偏光状態の変化に基づき求められた第2の方向との中間の方向をサンプル方向として判定する。これにより、計測精度をさらに向上させることができる。
【0045】
図4を参照に、本実施例に係る計測装置50は、サンプル方向を計測するための第1光学系及びサンプル形状を計測するための第2光学系の両方を備えているが、第2光学系(第2照射部24及び第2検出部26)を備えない構成としてもよい。この場合、例えば計測装置50によりサンプル方向の計測及びステージ角の調整のみを行い、スキャトロメトリー計測は別の計測装置を使用して行ってもよい。また、計測装置50によりサンプル方向の計測のみを行い、判定されたサンプル方向をスキャトロメトリー計測以外に利用してもよい。
【0046】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)は従来のスキャトロメトリー装置により計測されるサンプルの斜視図であり、図1(b)は図1(a)の一部を拡大した断面図である。
【図2】図2は従来のスキャトロメトリー装置の構成を示した模式図である。
【図3】図3はサンプルに計測光を照射した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は本実施例に係る計測装置の構成を示した模式図である。
【図5】図5は本実施例に係る計測装置の動作を示したフローチャート(その1)である。
【図6】図6は本実施例に係る計測装置の動作を示したフローチャート(その2)である。
【図7】図7(a)〜(d)はサンプルに計測光を照射した状態を示す上面図である。
【図8】図8は本実施例に係る計測装置による計測結果を示すグラフである。
【図9】図9は本実施例の変形例に係る計測装置の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
10 サンプル
20 スキャトロメトリー装置
24 第2照射部
26 第2検出部
28 記憶部
50 計測装置
52 第1照射部
54 第1検出部
55 回転ステージ
58 ステージコントローラー
60 演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に対し直線偏光の第1計測光を照射する第1照射部と、
前記計測対象物により反射された前記第1計測光の第1反射光を検出する第1検出部と、
前記計測対象物を回転させる回転部と、
前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の変化の対称性に基づき、前記計測対象物の方向を判定する第1判定部と、
を具備することを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記計測対象物に対し、第2計測光を照射する第2照射部と、
前記計測対象物により反射された前記第2計測光の第2反射光を検出する第2検出部と、
前記第2計測光を複数の既知の形状に対し照射した際の反射光の光学特性に関する計算結果を記憶した記憶部と、
前記第2検出部により検出された前記第2反射光と、前記記憶部に記憶された前記計算結果とを比較することにより、前記計測対象物の形状を判定する第2判定部と、
前記第1判定部により判定された前記計測対象物の方向に基づいて、前記第2計測光の入射方向に対する前記計測対象物の方向を調整する調整部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1計測光の直線偏光の方向は、前記第2計測光の入射面に対し平行または垂直であることを特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第1検出部は、前記第1反射光の光強度を検出し、
前記第1判定部は、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の光強度の変化に基づき、前記計測対象物の方向を判定することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記第1反射光の偏光状態を検出し、
前記第1判定部は、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の偏光状態の変化に基づき、前記計測対象物の方向を判定することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第1検出部は、前記第1反射光の光強度及び偏光状態を検出し、
前記第1判定部は、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の光強度の変化及び偏光状態の変化のうち少なくとも一方に基づき、前記計測対象物の方向を判定することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の光強度の変化及び偏光状態の変化のうち変化量が所定の閾値を超えた少なくとも一方に基づき、前記計測対象物の方向を判定することを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記第1判定部は、前記計測対象物の回転に伴う前記第1反射光の光強度の変化及び偏光状態の変化のそれぞれに基づき前記計測対象物の方向を判定し、前記光強度の変化に基づき求められた第1方向と、前記偏光状態の変化に基づき求められた第2方向との中間の方向を、前記計測対象物の方向として判定することを特徴とする請求項6または7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記第1検出部は、前記第1反射光を偏光させる偏光板と、前記偏光板を通過した前記第1反射光の光強度を検出する光強度検出部とを含み、
前記偏光板の偏光の方向は、前記第1計測光の偏光の方向に対し平行または垂直であることを特徴とする請求項5から8のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項10】
計測対象物を回転させながら、前記計測対象物に対し直線偏光の第1計測光を照射するステップと、
前記計測対象物により反射された第1反射光の、前記計測対象物の回転に伴う変化を検出するステップと、
前記第1反射光の変化に基づき、前記計測対象物の方向を判定するステップと、
を有することを特徴とする計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−222640(P2009−222640A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69161(P2008−69161)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】