説明

記録装置の制御方法および記録装置

【課題】記録媒体上の光硬化型インクを確実に硬化させると共に、空走査の時間を短縮することができる記録装置の制御方法および記録装置を提供する。
【解決手段】ワークWに対し、インクジェットヘッド51および紫外線照射装置45を相対的に移動させながら、インクジェットヘッド51を駆動して光硬化型のインクをワークW上に吐出着弾させて未硬化画像60を形成すると共に、紫外線照射装置45を駆動して未硬化画像60を光硬化させる画像形成走査工程S1と、画像形成走査工程S1の結果、光硬化のための積算光量が不足するワークW上の光量不足領域61に対し、インクジェットヘッド51および紫外線照射装置45を相対的に移動させながら、紫外線照射装置を駆動して積算光量を充足させる光硬化走査工程S2と、を備え、光硬化走査工程S2における相対的な移動を、画像形成走査工程S1における相対的な移動より高速で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対し、インクジェット方式の記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、記録ヘッドを駆動して光硬化型インクを記録媒体上に吐出着弾させて画像を形成する記録装置の制御方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体がセットされるセットテーブル(プラテン)と、インクジェット方式の複数の記録ヘッドおよび紫外線ランプを搭載したキャリッジと、記録媒体を副走査方向に改行送りし、キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、を備え、キャリッジを主走査方向に移動させながら各記録ヘッドおよび紫外線ランプを駆動して、記録媒体上に光硬化型インクを吐出着弾させると共に光硬化させ、所定の画像を描画した後、記録媒体上の記録領域中で、紫外線照射時間の少ない記録領域(光量不足領域)に対して、インクの吐出は行わず描画と同様にキャリッジのみを空走査(紫外線照射のための走査)させ、紫外線を照射する記録装置の制御方法が知られている(特許文献1参照)。
この記録装置の制御方法では、記録媒体上に描画された画像に対し、紫外線照射時間を平均化することで、記録媒体上に着弾したインクの硬化を均一にすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−292907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の記録装置の制御方法では、紫外線照射時間を平均化するために、描画の際と同じ速度で空走査が行われており、描画以外の空走査のための時間が長くなり、全体として記録処理に要する時間が長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、記録媒体上の光硬化型インクを確実に硬化させると共に、空走査の時間を短縮することができる記録装置の制御方法および記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置の制御方法は、記録媒体に対し、インクジェット方式の記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、記録ヘッドを駆動して光硬化型インクを記録媒体上に吐出着弾させて未硬化画像を形成すると共に、光照射手段を駆動して未硬化画像を光硬化させる画像形成走査工程と、画像形成走査工程の結果、光硬化のための積算光量が不足する記録媒体上の光量不足領域に対し、記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、光照射手段を駆動して積算光量を充足させる光硬化走査工程と、を備え、光硬化走査工程における相対的な移動を、画像形成走査工程における相対的な移動より高速で行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の記録装置は、記録媒体がセットされるセットテーブルと、インクジェット方式で光硬化型インクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドから吐出着弾した記録媒体上の光硬化型インクを光硬化させる光照射手段と、記録ヘッドおよび光照射手段を搭載したキャリッジと、セットテーブルに対しキャリッジを相対的に移動させる移動手段と、記録ヘッド、光照射手段および移動手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、記録媒体に対し、記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、記録ヘッドを駆動して光硬化型インクを記録媒体上に吐出着弾させて未硬化画像を形成すると共に、光照射手段を駆動して未硬化画像を光硬化させる画像形成走査と、画像形成走査の結果、光硬化のための積算光量が不足する記録媒体上の光量不足領域に対し、記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、光照射手段を駆動して積算光量を充足させる光硬化走査と、を実施し、且つ光硬化走査における相対的な移動を、画像形成走査における相対的な移動より高速で実施することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、画像形成走査(工程)において形成された画像の範囲内で、光硬化に必要な積算光量が不足する範囲(光量不足領域)に対し、その不足している積算光量を充足させるように光硬化走査(工程)を行うことにより、確実に記録媒体上の光硬化型インクを本硬化させることができる。また、記録ヘッドおよび光照射手段を、画像形成走査よりも高速移動させることで、光硬化走査(工程)にかかる時間(空走査の時間)を短縮することができる。これにより、記録媒体上に着弾したインク滴の混色を防止することができ、かつ、記録装置による記録処理に要する時間(サイクルタイム)を短縮させることができる。
なお、画像形成走査(工程)が終了した後の記録媒体上の画像は、半硬化している状態である。ここでいう「半硬化」とは、インク滴が部分的に硬化しているが、完全に硬化していない状態を指す。また、「本硬化」とは、インク滴が光硬化に必要な積算光量を充足し、完全に硬化した状態を指す。
【0009】
この場合、画像形成走査工程および光硬化走査工程において、記録媒体に対し、記録ヘッドおよび光照射手段を主走査方向および副走査方向に、それぞれ相対的に移動させ、光硬化走査工程における主走査方向への相対的な移動を、画像形成走査工程における主走査方向への相対的な移動より高速で行うと共に、光硬化走査工程における副走査方向への相対的な移動を、画像形成走査工程における副走査方向への相対的な移動より高速で行うことが好ましい。
【0010】
この場合、移動手段は、セットテーブルに対しキャリッジを主走査方向に相対的に移動させる主走査移動手段と、セットテーブルに対しキャリッジを副走査方向に相対的に移動させる副走査移動手段と、を有し、制御手段は、画像形成走査および光硬化走査において、記録ヘッドおよび光照射手段を主走査方向および副走査方向に、それぞれ相対的に移動させ、光硬化走査における主走査方向への相対的な移動を、画像形成走査における主走査方向への相対的な移動より高速で行うと共に、光硬化走査における副走査方向への相対的な移動を、画像形成走査における副走査方向への相対的な移動より高速で行うことが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、記録ヘッドおよび光照射手段を、主走査方向および副走査方向に相対移動させることが可能であるため、記録媒体上において広範な記録可能範囲を設定することができる。また、光硬化走査(工程)において、画像形成走査(工程)よりも、主・副両走査方向の相対移動を高速で行える。このため、広範な記録可能範囲のうち、光量不足領域に対してのみ迅速に光硬化させることができる。
【0012】
また、この場合、光硬化走査工程における光照射手段の放射照度を、画像形成走査工程における光照射手段の放射照度より高く調整することが好ましい。
【0013】
また、この場合、光照射手段は、放射照度を調整する照度調整手段を有し、制御手段は、光硬化走査における光照射手段の放射照度を、画像形成走査における光照射手段の放射照度より高く調整することが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、光硬化走査(工程)における相対的な移動を、画像形成走査(工程)における相対的な移動よりも高速で行うことに伴い、光量不足領域に照射される単位面積当りの光量が低下し、光硬化型インクを適切に本硬化させることができなくなることを防止することができる。すなわち、光照射手段を高速で移動させても、記録媒体上の光硬化型インクに十分な放射照度を有する光を与えることができ、光硬化型インクを確実に光硬化させることができる。
【0015】
また、この場合、光硬化走査工程における記録媒体と光照射手段との離間間隔を、画像形成走査工程における記録媒体と光照射手段との離間間隔より小さく調整することが好ましい。
【0016】
また、この場合、光照射手段は、記録媒体と光照射手段との離間間隔を調整するギャップ調整手段を、更に有し、制御手段は、光硬化走査における記録媒体と光照射手段との離間間隔を、画像形成走査における記録媒体と光照射手段との離間間隔より小さく調整することが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、画像形成走査(工程)における相対的な移動速度に比して光硬化走査(工程)における相対的な移動速度を高速とすることで、光量不足領域に照射される単位面積当りの光量が低下し、光硬化型インクの硬化が不完全となることを防止することができる。すなわち、光照射手段を高速で移動させても、記録媒体上の光硬化型インクを確実に光硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】記録装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】(a)は、ヘッドユニットの平面図であり、(b)は、インクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】記録装置の制御方法のフローチャートである。
【図4】マイクロウィーブ方式を用いた印刷方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係る記録装置の制御方法を説明するための図である。
【図6】未硬化画像中の光量不足領域について示した説明図である。
【図7】第3実施形態に係るギャップ調整装置を備えた記録装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、薄いフィルム状の枚葉のワークに対して、例えば、紫外線硬化型のインク(UVインク)をインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を描画するものである。なお、以下の説明では、ワークの送り方向をX軸方向と、X軸方向に直交する方向をY軸方向と、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と、さらにワークと平行な平面内における回転方向をθ方向と規定する。
【0020】
図1に示すように、記録装置1は、機台上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、X軸テーブル2を跨ぐように架け渡され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、複数のインクジェットヘッド51等を搭載したキャリッジユニット4と、各インクジェットヘッド51にインクを供給するインク供給ユニット(図示省略)と、記録装置1全体を統括制御する制御装置6と、を備えている。この記録装置1では、X軸テーブル2およびY軸テーブル3が交わる部分において、X軸テーブル2とY軸テーブル3とを同期駆動して、インク供給ユニットから供給された複数色のインクを各インクジェットヘッド51から吐出させ、ワークWに所定の描画パターンを描画する。また、各インクジェットヘッド51は、吸引やワイピング等を実施する保守装置(図示省略)により、その機能維持・機能回復を図るようになっている。
【0021】
X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットすると共に、θ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル21と、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール22と、セットテーブル21をX軸ガイドレール22に沿ってスライド自在に支持するモーター駆動のX軸スライダー(図示省略)と、を有している。X軸テーブル2は、キャリッジユニット4の往動(または復動)時には停止し、次の復動(または往動)までに、ワークWを、X軸方向下流側へと所定の描画幅分だけ間欠送り(改行送り)する。なお、その駆動系は、リニアモーターや、モーターおよびボールネジ機構等で構成することが好ましい。
【0022】
Y軸テーブル3は、X軸テーブル2をY軸方向に跨ぐように架け渡された一対のY軸ガイドレール31と、キャリッジユニット4を吊設したブリッジプレート32と、ブリッジプレート32をY軸方向にスライド自在に支持するモーター駆動のY軸スライダー(図示省略)と、を有している。Y軸テーブル3は、キャリッジユニット4を介して描画時に各インクジェットヘッド51をY軸方向に往復動させるほか、インクジェットヘッド51を保守装置に臨ませる。なお、その駆動系は、リニアモーター、モーターおよびボールネジ機構や、ベルトおよびプーリーによる機構等で構成することが好ましい。
【0023】
キャリッジユニット4は、ブリッジプレート32に垂設したキャリッジ本体41と、キャリッジ本体41に垂設されたヘッドユニット42と、を備えている。また、ヘッドユニット42は、回転昇降調整機構43を介して、θ回転自在に、かつ、Z軸方向に調整移動可能に、キャリッジ本体41に設けられている。
【0024】
図2(a)に示すように、ヘッドユニット42には、ヘッドプレート50にインクジェットヘッド51がX軸方向に3個ずつ2分して組み付けられている。Y軸方向に並んだ3個のインクジェットヘッド51は、それぞれ階段状に位置ずれして配設されており、各インクジェットヘッド51からワークW上に吐出されたインク滴は、X軸方向に等間隔で一直線上に着弾することとなる。なお、ヘッドユニット42に搭載されるインクジェットヘッド51の数は任意である。
【0025】
また、ヘッドプレート50のY軸方向両端部には、紫外線照射装置45がそれぞれ搭載されている。各紫外線照射装置45は、ワークW上に吐出されX軸方向に一直線上に着弾した全てのインク滴に対して紫外線を照射可能な長さを有している。
【0026】
図2(b)に示すように、インクジェットヘッド51は、いわゆる2連のものであり、2つの接続針55を有するインク導入部52と、インク導入部52の側方に連なる2連のヘッド基板53と、ヘッド基板53の下方に連なる2連のポンプ部54と、ポンプ部54に連なるノズルプレート58と、を備えている。各接続針55には、インク供給ユニットに連通する供給チューブ(図示省略)が接続されており、この供給チューブを介してインクジェットヘッド51にインクが供給される。ノズルプレート58のノズル面NFには、複数の吐出ノズル56が等間隔で並んで構成された2本のノズル列NLが、相互に半ノズルピッチずれた状態で、かつ、平行に列設されている。ポンプ部54には、各吐出ノズル56毎に対応するピエゾ圧電素子が構成され、ヘッド基板53に接続された制御ケーブルを介して、ピエゾ圧電素子に電圧が印加されると吐出ノズル56からインク滴が吐出される。
【0027】
本実施形態で使用するインクは、いわゆる紫外線硬化型のインクであり、ヘッドユニット42に搭載した一対の紫外線照射装置45が点灯し、ワークWに着弾した紫外線硬化型のインクを硬化・定着させる。なお、インクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等のインクでもよい。この場合、硬化に適した光源をヘッドユニット42に搭載する。
【0028】
続いて、図3ないし図6を参照して、制御装置6による記録装置1の制御方法について説明する。図3に示すように、この制御方法は、ワークWに対し、キャリッジユニット4を移動させながらインクを吐出・着弾させて未硬化画像60を形成すると共に、未硬化画像60を半硬化させる画像形成走査工程S1と、画像形成走査工程S1の結果、光硬化のための積算光量が不足するワークW(未硬化画像60)上の領域に対し、キャリッジユニット4を移動させながら、紫外線照射装置45を駆動して積算光量を充足させる光硬化走査工程S2と、を備えている。
【0029】
本実施形態に係る制御方法では、画像形成走査工程S1での印刷方式としてマイクロウィーブ方式(インターレース方式)を採用している。以下、図4を用いて、マイクロウィーブ方式を用いた印刷方法について簡単に説明する。なお、ここでは、説明を簡単にするために、20個の吐出ノズル56(n=20)を、3ドットピッチ分(k=3(nと素の関係))のピッチで配列したノズル列NLを用いて、360dpi(dot per inch)の画像を印刷(描画)する場合を例にして説明する。
【0030】
まず、1ドットピッチは、1/360インチであることから、ノズルピッチは、その3倍の3/360インチであり、ワークWの改行送り距離は、20倍の20/360インチとなる。1パス目を終了し、この設定で改行送りを1回行うと、各吐出ノズル56はX軸方向に20/360インチだけ相対的に移動するため、各吐出ノズル56は、1ライン目の画像形成走査時における8番目のノズルの位置(21/360インチ先の位置)から1ドットピッチ分だけ前の位置に相対移動することになる。さらに、2パス目を終了し、もう1回改行送りを行うと、各吐出ノズル56は1ライン目の画像形成走査時における15番目の吐出ノズル56の位置(42/360インチ先の位置)から2ドットピッチ分だけ手前の位置に相対移動する。
【0031】
すなわち、この例では、1の画像形成走査(パス)で各吐出ノズル56によって各ラインが描画されると、次のパスでは、その各吐出ノズル56から7ノズル分だけ離れた異なる位置の吐出ノズル56によって、その各ラインの上側の隣接するラインが描画される。このように、「マイクロウィーブ方式」では、隣接するラインは必ず異なるノズルによって印刷される。この結果、個々の吐出ノズル56の吐出特性やノズルピッチに僅かなバラツキあったとしても、描画された印刷結果では目立たなくなり、高品質な印刷が可能となる。
【0032】
なお、マイクロウィーブ方式を用いた印刷方法では、インクジェットヘッド51の下流端側の吐出ノズル56を使用して描画を開始し、走査するごとに徐々に使用する吐出ノズル56(インクジェットヘッド51)の数を増やしながら描画が行われる。すなわち、実際には、図4において、破線で描いた吐出ノズル56からはインクを吐出しない。
【0033】
画像形成走査工程S1では、まず、X軸テーブル2を駆動し、セットテーブル21を移動させ、ワークWを描画可能位置に移動させる。その後、制御装置6は、予め入力され記憶された画像データに基づき、キャリッジユニット4をY軸方向に往動(画像形成走査)させながら、各インクジェットヘッド51からインクを吐出させ、ワークW上にインク滴を着弾させる(図5(a)参照)。この際、移動方向に対し下流側の紫外線照射装置45を点灯させた状態でキャリッジユニット4を往動させる。これにより、ワークW上には、着弾した各インク滴に紫外線が照射され、各インク滴が半硬化した状態の1ライン目の未硬化画像60が形成される。なお、ここでいう「半硬化」とは、インク滴が部分的に硬化しているが、完全に硬化していない状態をいうものであり、ワークW上において隣接するインク滴が、目視で遜色がない程度に混ざらない程度で、かつ、表面にある程度の光沢性を持つように平滑になった状態で硬化した状態を指す。
【0034】
次に、制御装置6は、X軸テーブル2を駆動してセットテーブル21を、上記したマイクロウィーブ方式に従って下流へと移動(改行送り)させる(図5(a)参照)。そして、キャリッジユニット4をY軸方向に復動させながら、2ライン目の未硬化画像60の描画を行う。以降、セットテーブル21の改行送りと、キャリッジユニット4の往復移動と、を繰り返し、セットテーブル21上に吸着保持されたワークWの描画可能領域(セットテーブル21上に吸着された範囲)に対し、画像データに基づいた描画(印刷処理)を行う(図5(b)参照)。なお、マイクロウィーブ方式の印刷を行うに当って、吐出ノズル56数(n)は任意であり、また、ドットピッチ(k)および印刷(描画)解像度も描画条件に合わせて任意に設定することができる。
【0035】
図6に示すように、この画像形成走査工程S1において、描画可能領域のX軸方向中心付近では、1の画像形成走査で描画された各ラインに対し、他の画像形成走査時の紫外線が照射されることにより、それらのラインは、光硬化に必要な積算光量が充足され本硬化する。すなわち、他の各ラインの描画および半硬化のための画像形成走査により、紫外線照射装置45が、既成の各ライン上を複数回通過することで、既成のラインを本硬化させる。なお、「本硬化」とは、インク滴が光硬化に必要な積算光量を充足し、完全に硬化した状態を指す。
【0036】
一方、描画可能領域の下流側および上流側(X軸方向両端部)では、他の画像形成走査により、本硬化のために必要な紫外線の照射を受けることができないラインも存在する。特に、最終パスで形成された各ラインは、半硬化した状態から追加的に紫外線の照射が行われることが無い。すなわち、画像形成走査工程S1は、最終パスで形成された各ライン等、本硬化していないラインを複数含んだ状態で終了する。なお、以降の説明では、積算光量の不足しているラインを含む領域を光量不足領域61と呼ぶ。
【0037】
この光量不足領域61を本硬化させるためには、光量不足領域61に対し、各紫外線照射装置45のみを駆動してキャリッジユニット4を走査(以降「光硬化走査」という。)させて、積算光量を充足させることが考えられる。しかし、描画が行われないキャリッジユニット4の走査を行うことは、ワークWへの記録処理全体に要する時間(サイクルタイム)の増加につながるという問題がある。
そこで、本実施形態に係る記録装置1では、光量不足領域61に対する光硬化走査を、画像形成走査における移動速度よりも高速で移動させて行う光硬化走査工程S2を実施する。また、移動をより高速で行うと、照射される紫外線の光量が減少するため、光硬化走査工程S2では、光量不足領域61に対する光硬化走査を、画像形成走査工程S1時の紫外線照射装置45から照射される紫外線の放射照度よりも高くして実施する。なお、光量不足が顕著でない場合には、紫外線照射装置45の出力(放射照度)を高めておき、キャリッジユニット4の移動速度をより速くなるように設定してもよい。
【0038】
光硬化走査工程S2は、画像形成走査工程S1が終了した状態で、X軸方向上流側の光量不足領域61に対して実施される。まず、制御装置6は、移動速度および紫外線照射装置45の駆動数(この場合、2台)をパラメーターとして、紫外線の照射回数の最も少ないライン(この場合、最終ライン)の光硬化に必要な放射照度を算出する。なお、請求項に言う「照度調整手段」とは、制御装置6を指す。
【0039】
その後、制御装置6は、一対の紫外線照射装置45のみを駆動して、算出した放射照度の紫外線を照射させながら、キャリッジユニット4をY軸方向に移動(光硬化走査)させる(図5(b)参照)。この光硬化走査は、一対の紫外線照射装置45が駆動され、画像形成走査よりも高速で行われる。これにより、キャリッジユニット4を高速で移動させても、ワークW上のインク滴を確実に光硬化させることができる。なお、光硬化走査における移動速度は、画像形成走査における移動速度の1.5倍から3倍程度であることが好ましい。また、一方の紫外線照射装置45のみを駆動(点灯)させるようにしてもよい。
【0040】
次に、制御装置6は、ワークWの下流側の光量不足領域61がキャリッジユニット4に臨むように、X軸テーブル2を駆動してセットテーブル21(ワークW)を上流へと移動させる(図5(c)参照)。そして、上記と同様に、光硬化走査が行われる。なお、本実施形態に係るものでは、ワークW上の記録可能範囲のうち、光量不足領域61に対してのみ迅速な光硬化走査を行うことができるように、X軸テーブル2の移動速度も、画像形成走査工程S1時のX軸テーブル2の移動速度よりも高速に設定されている。
【0041】
以上の構成により、画像形成走査工程S1において形成された画像の光量不足領域61に対し、その不足している積算光量を充足させるように光硬化走査工程S2を行うことにより、確実にワークW上の光硬化型のインクを硬化させることができる。また、インクジェットヘッド51および紫外線照射装置45を、画像形成走査よりも高速移動させることで、光硬化走査工程S2にかかる時間を短縮することができる。これにより、ワークW上に着弾したインク滴の混色を防止することができ、かつ、記録装置1による記録処理に要する時間(サイクルタイム)を短縮させることができる。なお、印刷処理に供されるワークWは、連続的に供給可能なロール状のものでもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る記録装置1について説明する。なお、以降の説明では、第1実施形態と異なる点のみを示す。第2実施形態に係る制御装置6による記録装置1の制御方法は、画像形成走査工程S1において、1の印刷ラインを形成する毎に、光硬化走査工程S2を実施する。すなわち、キャリッジユニット4を往動(画像形成走査)させ、半硬化した状態の1ライン目を形成した後、キャリッジユニット4を復動(光硬化走査)させ、その1ライン目の各インク滴に不足している光量を充足させて本硬化させる。なお、この第2実施形態に係る制御方法は、光量不足領域61となる部分についてのみ実施する。以上の構成によっても、第1実施形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0043】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る記録装置1について説明する。なお、以降の説明では、第1実施形態と異なる点のみを示す。図7に示すように、この記録装置1では、ヘッドユニット42に搭載された一対の紫外線照射装置45のみをZ軸方向に昇降可能なギャップ調整装置7を備えている。このギャップ調整装置7は、キャリッジユニット4を画像形成走査させる際の上昇位置と、キャリッジユニット4を光硬化走査させる際に印刷ギャップ位置よりも下降させた下降位置と、の間で一対の紫外線照射装置45を昇降させる。なお、ギャップ調整装置7の駆動系は、モーターおよびボールネジ機構、シリンダー(空気圧、油圧いずれでもよい。)、モーターおよびラック・アンド・ピニオン等で構成することが好ましい。
【0044】
第3実施形態における画像形成走査工程S1は、一対の紫外線照射装置45を上昇位置に移動させた状態で行われる。これにより、ワークWと各インクジェットヘッド51のノズル面NFとの離間間隔を適切に維持した状態で、ワークWに対する印刷(描画)を行うことができる。
【0045】
続く、光硬化走査工程S2は、ギャップ調整装置7を駆動して、一対の紫外線照射装置45を下降位置に移動させた状態で行われる。このように、ワークWと各ノズル面NFとの離間間隔を小さくすることで、紫外線の散乱等が防止され、ワークWに対して照射する紫外線の光束密度を上げることができ、光硬化に必要な光量の紫外線を光量不足領域61に照射することができる。
【0046】
以上の構成によれば、ワークWと各インクジェットヘッド51のノズル面NFとのギャップを一定に維持したまま、一対の紫外線照射装置45のみを昇降させることができるため、ワークギャップのずれから生じる印刷(描画)品質の低下を防止することができ、かつ、画像形成走査よりも光硬化走査を高速移動させても、光量不足領域61に照射される単位面積当りの紫外線の光量低下を防止することができる。これにより、第1実施形態のものと同様に、ワークW上に着弾したインク滴の混色を防止と、記録装置1による記録処理に要する時間(サイクルタイム)の短縮と、を両立させることができる。
【0047】
なお、ギャップ調整装置7を省略し、ヘッドユニット42をθ回転方向およびZ軸方向に調整移動させる回転昇降調整機構43により、ヘッドユニット42を昇降移動させて、ワークWと、各ノズル面NFおよび一対の紫外線照射装置45とのギャップ調整を行ってもよい。
【0048】
また、上記のギャップ調整装置7では、各紫外線照射装置45を昇降させることで、ワークWとのギャップを調整していたが、これに代えて、ギャップ調整装置7をX軸テーブル2に搭載し、セットテーブル21をZ軸方向に昇降移動させてもよい(図示省略)。
【符号の説明】
【0049】
1:記録装置、2:X軸テーブル、3:Y軸テーブル、4:キャリッジユニット、6:制御装置、7:ギャップ調整装置、21:セットテーブル、45:紫外線照射装置、51:インクジェットヘッド、W:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対し、インクジェット方式の記録ヘッドおよび光照射手段を相対的に移動させながら、前記記録ヘッドを駆動して光硬化型インクを前記記録媒体上に吐出着弾させて未硬化画像を形成すると共に、前記光照射手段を駆動して前記未硬化画像を光硬化させる画像形成走査工程と、
前記画像形成走査工程の結果、前記光硬化のための積算光量が不足する前記記録媒体上の光量不足領域に対し、前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を相対的に移動させながら、前記光照射手段を駆動して前記積算光量を充足させる光硬化走査工程と、を備え、
前記光硬化走査工程における相対的な移動を、前記画像形成走査工程における相対的な移動より高速で行うことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項2】
前記画像形成走査工程および前記光硬化走査工程において、前記記録媒体に対し、前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を主走査方向および副走査方向に、それぞれ相対的に移動させ、
前記光硬化走査工程における前記主走査方向への相対的な移動を、前記画像形成走査工程における前記主走査方向への相対的な移動より高速で行うと共に、前記光硬化走査工程における前記副走査方向への相対的な移動を、前記画像形成走査工程における前記副走査方向への相対的な移動より高速で行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置の制御方法。
【請求項3】
前記光硬化走査工程における前記光照射手段の放射照度を、前記画像形成走査工程における前記光照射手段の放射照度より高く調整することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置の制御方法。
【請求項4】
前記光硬化走査工程における前記記録媒体と前記光照射手段との離間間隔を、前記画像形成走査工程における前記記録媒体と前記光照射手段との離間間隔より小さく調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置の制御方法。
【請求項5】
記録媒体がセットされるセットテーブルと、
インクジェット方式で光硬化型インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出着弾した前記記録媒体上の前記光硬化型インクを光硬化させる光照射手段と、
前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を搭載したキャリッジと、
前記セットテーブルに対し前記キャリッジを相対的に移動させる移動手段と、
前記記録ヘッド、前記光照射手段および前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
記録媒体に対し、前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を相対的に移動させながら、前記記録ヘッドを駆動して前記光硬化型インクを前記記録媒体上に吐出着弾させて未硬化画像を形成すると共に、前記光照射手段を駆動して前記未硬化画像を光硬化させる画像形成走査と、
前記画像形成走査の結果、前記光硬化のための積算光量が不足する前記記録媒体上の光量不足領域に対し、前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を相対的に移動させながら、前記光照射手段を駆動して前記積算光量を充足させる光硬化走査と、を実施し、
且つ前記光硬化走査における相対的な移動を、前記画像形成走査における相対的な移動より高速で実施することを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記セットテーブルに対し前記キャリッジを主走査方向に相対的に移動させる主走査移動手段と、前記セットテーブルに対し前記キャリッジを副走査方向に相対的に移動させる副走査移動手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記画像形成走査および前記光硬化走査において、前記記録ヘッドおよび前記光照射手段を主走査方向および副走査方向に、それぞれ相対的に移動させ、
前記光硬化走査における前記主走査方向への相対的な移動を、前記画像形成走査における前記主走査方向への相対的な移動より高速で行うと共に、前記光硬化走査における前記副走査方向への相対的な移動を、前記画像形成走査における前記副走査方向への相対的な移動より高速で行うことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記光照射手段は、放射照度を調整する照度調整手段を有し、
前記制御手段は、
前記光硬化走査における前記光照射手段の放射照度を、前記画像形成走査における前記光照射手段の放射照度より高く調整することを特徴とする請求項5または6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記光照射手段は、前記記録媒体と前記光照射手段との離間間隔を調整するギャップ調整手段を、更に有し、
前記制御手段は、
前記光硬化走査における前記記録媒体と前記光照射手段との離間間隔を、前記画像形成走査における前記記録媒体と前記光照射手段との離間間隔より小さく調整することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−56272(P2012−56272A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204020(P2010−204020)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】