説明

認証装置、及び施錠システム

【課題】個人認証を行うとともに、感染症に感染、発病し高熱となった者を制限することが可能な認証装置を提供する。
【解決手段】認証装置1は、対象となる者から、個人ごとにそれぞれ異なる固有の身体的特徴である固有身体情報を取得する固有身体情報取得部11と、温度を測定する温度測定手段5と、特定者の固有身体情報が予め登録された記憶部6と、固有身体情報取得部11で取得された固有身体情報と、記憶部6に登録された固有身体情報とを比較して、記憶部6に登録された特定者であるかどうかを判定するとともに、温度測定手段5で測定された温度が所定の閾値以下であるかどうかを判定し、記憶部6に登録された特定者であり、かつ温度が閾値以下の場合に許可情報を出力する制御部3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証を行う認証装置、及び施錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入退室管理システムにおいては、顔認証装置を用いて、予め登録された特定の者か否かを判断し、特定の者であれば電気錠を開錠し、特定の者でなければ電気錠を施錠したままとするようになっていた。また、特許文献1の入退室管理システムでは、予め登録された特定の者の指紋や静脈等の身体的特徴の情報に基づいて個人認証を行い、特定の者と判断した場合に、電気錠を開錠するようになっている。
【0003】
ところで、近年インフルエンザの集団感染が問題となっている。インフルエンザは感染力が強く、感染者と同室の者が集団で感染してしまうおそれがある。このため、一般に、インフルエンザに感染、発症して高熱となった者に対しては、加療とともに感染防止のため、自宅で待機し、他の者と接触する可能性があるような行動を抑制する指導が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−108555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の入室管理システムでは、インフルエンザなどの感染症に感染、発病して高熱になった者が、自覚なく、あるいは故意に入室しようとした場合には、予め登録された特定の者である限り、入室を許可して感染を拡大させてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、前述の従来技術における問題を解決するために、個人認証を行うとともに、感染症に感染、発病し高熱となった者を制限することが可能な認証装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る認証装置は、対象となる者から、個人ごとにそれぞれ異なる固有の身体的特徴である固有身体情報を取得する固有身体情報取得部と、温度を測定する温度測定手段と、特定者の前記固有身体情報が予め登録された記憶部と、前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報と、前記記憶部に登録された前記固有身体情報とを比較して、前記記憶部に登録された前記特定者であるかどうかを判定するとともに、前記温度測定手段で測定された前記温度が所定の閾値以下であるかどうかを判定し、前記記憶部に登録された前記特定者であり、かつ前記温度が前記閾値以下の場合に許可情報を出力する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成では、制御部によって、固有身体情報取得部により対象者の固有身体情報を取得し、取得された固有身体情報と記憶部に予め登録された特定者の固有身体情報を制御部により比較して特定者と判定した場合であって、温度測定手段により測定された温度が所定の閾値以下のときに、許可情報を出力することができる。逆に、特定者と判定した場合でも、測定された温度が閾値より高いときは許可情報が出力されない。
【0009】
また、本発明に係る認証装置は、前記固有身体情報取得部は、撮影し、画像を生成するカメラであり、前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報は、前記画像に含まれる前記対象となる者の顔部分を表す顔画像であることを特徴とする。
【0010】
この構成では、固有身体情報取得部はカメラであるので対象者の画像を生成することができ、該画像に含まれる顔画像と記憶部に登録された顔画像とを比較して、特定者であるか否かを判定することができる。
【0011】
また、本発明に係る認証装置は、前記温度測定手段による測定位置を調整する測定位置調整手段を備え、前記制御部は、前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報に基づいて前記測定位置を決定し、前記測定位置調整手段を制御することを特徴とする。
【0012】
この構成では、固有身体情報取得部で取得された固有身体情報に基づいて、制御部が温度を測定する測定位置を決定し、該測定位置に対して温度測定手段により温度を測定できるように測定位置調整手段が測定位置を調整する。これにより、測定位置において確実に温度を測定することができる。
【0013】
また、本発明に係る認証装置は、前記固有身体情報取得部は、前記固有身体情報として指紋を読み取る指紋認証機であっても良い。
【0014】
この構成では、固有身体情報取得部は、指紋認証機であるので、固有身体情報として個人ごとそれぞれ異なる指紋を取得することができる。
【0015】
また、本発明に係る認証装置は、前記温度測定手段は、赤外線放射温度計であることを特徴とする。
【0016】
この構成では、温度測定手段は、赤外線放射温度計であるので、対象者の体表面の温度を測定することができる。
【0017】
また、本発明に係る認証装置は、前記温度測定手段により測定された前記温度と、前記特定者の通常時の前記温度との差異を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成では、温度測定手段により測定された温度が、特定者の通常時の温度より高かったり、又は低かったりする場合は、測定された温度と通常時の温度の差異を表示することができる。このため、特定者は、自己の温度を知ることができ、体調管理に役立つ。
【0019】
また、本発明に係る施錠システムは、前記認証装置と、前記認証装置の前記制御部から出力された前記許可情報に基づいて開錠する電気錠とを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成では、認証装置の制御部から出力された許可情報に基づいて、電気錠を開錠することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る認証装置によれば、個人認証を行うとともに、感染症に感染、発病し高熱となった者を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における施錠システムの配置図である。
【図2】本発明の一実施形態における施錠システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態における制御部のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る施錠システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る施錠システムの配置図である。
図1に示すように、本実施形態の施錠システム10は、例えばドアDが設けられた建物の入口に設けられ、室外Bから室内Aに入ろうとする者である対象者が、所定の条件を満たす場合にのみドアDを開錠して入室を許可するものである。すなわち、ドアDの施錠及び開錠を行う電気錠2と、対象者の認証を行い、所定の条件を満たす場合に電気錠2に開錠を行わせる認証装置1と、を備える。
以下において、認証装置1及び電気錠2について詳しく説明する。
【0024】
図2に示すように、認証装置1は、対象者を撮影する固有身体情報取得部であるカメラ11と、対象者の体温の測定を行う温度測定手段5と、各種データが記憶された記憶部6と、温度測定手段5によって測定される温度測定位置を調整する測定位置調整手段4と、各構成を制御する制御部3と、制御部3の制御のもと情報を表示する表示部7と、を備える。
【0025】
カメラ11は、予め室外Bに設定された立ち位置Xに立った対象者を撮影して、個人ごとにそれぞれ異なる固有の身体的特徴である固有身体情報として、対象者の顔の画像である顔画像を含む画像を生成する。そして、カメラ11で生成された画像は制御部3に出力される。
【0026】
温度測定手段5は、立ち位置Xに立った対象者の温度を測定し、温度情報を制御部3に出力する。本実施形態では、温度測定手段5は、設定された測定位置から放射される赤外線を検出して、検出された赤外線に基づいて測定位置における温度を測定する赤外線放射温度計である。
【0027】
測定位置調整手段4は、制御部3による制御のもと、温度測定手段5による対象者の温度の測定位置を調整する。測定位置調整手段4は、例えば、温度測定手段5を支持し、二軸回りに回動可能な機構と、二軸回りに回動させるサーボモータなどの駆動部からなる。そして、制御部3による制御のもと駆動部を制御することで、温度測定手段5による測定位置を調整することが可能となっている。
【0028】
制御部3は、情報識別部12と、測定位置決定部13と、温度測定指令部14と、温度判定部15と、固有身体情報判定部16と、許可判定部17と、開閉指令部18と、画像生成部19と、を備える。
【0029】
情報識別部12は、カメラ11から出力された画像から、当該画像に含まれる顔画像を識別する。そして、識別した顔画像を識別情報として測定位置決定部13及び固有身体情報判定部16に出力する。
【0030】
測定位置決定部13は、情報識別部12から出力された識別情報に基づいて、対象者の温度を測定する測定位置を決定する。ここでは、測定位置を対象となる者の額とし、識別情報である顔画像から額に相当する位置を特定する。額に相当する位置の特定方法としては、例えば、識別された顔画像の図心から所定割合分だけ上側にずらした位置とすれば良い。そして、決定した測定位置の情報を測定位置情報として測定位置調整手段4、及び温度測定指令部14に出力する。
【0031】
温度測定指令部14は、測定位置決定部13から出力された測定位置情報に基づいて、温度測定手段5が対象者の温度を測定できるように温度測定手段5に対して温度測定指令を出力する。
【0032】
温度判定部15は、温度測定手段5から出力された温度情報を受け取り、該温度情報と、予め設定された閾値を比較する。そして、該温度情報が閾値以下であるか否かを判定し、判定した結果に得られた温度判定情報を許可判定部17に出力する。また、温度判定部15は、該温度情報と、記憶部6から出力された登録固有温度情報を比較する。記憶部6には、許可情報を出力する対象となる特定者の固有温度情報が登録固有温度情報として予め登録されている。そして、温度情報と登録固有温度情報の差異を温度差異情報として画像生成部19に出力する。なお、温度判定部15は、温度判定情報も画像生成部19に出力しても良い。
【0033】
固有身体情報判定部16は、情報識別部12から出力された識別情報と、記憶部6から出力された登録固有身体情報を比較する。記憶部6には、許可情報を出力する対象となる特定者の固有身体情報が登録固有身体情報として予め登録されている。そして、識別情報と登録固有身体情報が一致するか否か、すなわち対象者が予め登録された特定者のいずれかに該当するか否かを判定し、判定した結果に得られた固有身体判定情報を許可判定部17に出力する。
【0034】
許可判定部17は、固有身体情報判定部16から出力された固有身体判定情報と温度判定部15から出力された温度判定情報に基づいて、許可情報を出力するか否かを判定する。すなわち、固有身体判定情報により対象者が特定者のいずれかに該当することが示されていて、かつ温度判定情報により温度情報が閾値以下であることが示されている場合にのみ、許可情報を出力する。そして、この場合は、許可情報を開閉指令部18に対して出力する。よって、対象者が特定者のいずれかに該当していても温度情報が閾値より高い場合、又は対象者が特定者のいずれにも該当しない場合には、許可情報は出力されない。
【0035】
開閉指令部18は、許可判定部17から許可情報が出力されれば、電気錠2を開錠するように電気錠2に対して開錠指令を出力する。
【0036】
画像生成部19は、温度判定部15から出力された温度差異情報又は温度判定情報を画像情報として生成して、表示部7に出力する。
【0037】
表示部7は、画像生成部19から出力された画像情報を、画像として表示する。すなわち、対象者の通常時の温度と測定された温度の差異、又は測定された温度が閾値以下であるか否かの結果を表示する。
【0038】
電気錠2は、開閉指令部18からの開錠指令により開錠され、又は施錠されたままとなる。
【0039】
ここで、固有身体情報としては、顔画像の他に例えば、指紋、静脈、虹彩等の情報が挙げられる。また、固有身体情報取得部11としては、カメラの他に例えば、指紋認証装置等が挙げられる。また、温度測定手段5としては、赤外線放射温度計以外であっても温度が測定できる器具もあれば良い。
【0040】
次に、上記構成を有する制御部3の具体的動作について、図3に示す本発明に係る制御部3の動作を示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
まず、ステップ101において、情報識別部12はカメラ11で撮影され生成された画像が取得されたかを判定する。画像が取得されていれば、ステップ102において、顔画像を識別する。顔画像の識別には、公知の様々な手法が適用可能であり、例えば予め定められたパターンへの当て嵌めや、周囲との色差などにより行われる。そして、顔画像を識別情報として測定位置決定部13及び固有身体情報判定部16に出力し、ステップ103に進む。
【0042】
ステップ103では、固有身体情報判定部16が、情報識別部12から出力された識別情報である顔画像に関する情報と、記憶部から出力された特定者の顔画像に関する情報を比較する。そして、特定者のいずれかに該当する者がいるか否かを判定し、判定した結果に得られた情報は固有身体判定情報として許可判定部17に出力する。そして、該当する者がいればステップ104に進み、該当する者がいなければステップ108に進む。
【0043】
ステップ104では、測定位置決定部13が、情報識別部12から出力された識別情報に基づいて、対象者の温度を測定する測定位置を決定する。ここでは、識別された顔画像から額に相当する位置を特定する。そして、決定した測定位置の情報を測定位置情報として温度測定指令部14に出力し、ステップ105に進む。
【0044】
ステップ105では、温度判定部15が、温度測定手段5から出力された温度情報を受け取り、ステップ106に進む。
【0045】
ステップ106では、温度判定部15が、温度情報と予め設定された閾値を比較して、測定された温度が閾値以下であるか否かを判定する。そして、閾値以下であればステップ107に進み、閾値より高ければステップ108に進む。また、判定した結果に得られた温度判定情報を許可判定部17に出力する。
【0046】
ステップ107では、対象者が特定者のいずれかに該当していて、かつ測定された温度が閾値以下の場合にのみ許可判定部17より出力される許可情報に基づいて、開閉指令部18が電気錠2を開錠するように電気錠2に対して開錠指令を出力する。
【0047】
一方、ステップ108では、許可情報は出力されずに、電気錠2は施錠されたままとなる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る制御部3によれば、固有身体情報判定部16が、対象者の顔画像と記憶部6に予め登録された特定者の顔画像を比較して特定者と判定した場合であって、かつ測定された温度が閾値以下のときに、許可情報を出力することができる。逆に、特定者と判定した場合でも、測定された温度が閾値より高いときは許可情報が出力されない。
【0049】
また、本実施形態に係る施錠システム10によれば、測定位置決定部13は、情報識別部12から出力された識別情報に基づいて、対象者の温度を測定する測定位置を決定する。そして、決定した測定位置の情報を測定位置情報として、測定位置調整手段4に出力し、測定位置調整手段4は測定位置を調整する。
よって、測定位置において確実に温度を測定することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る施錠システム10によれば、上記認許可情報に基づいて、電気錠2を開錠することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る施錠システム10によれば、温度判定部15は、温度測定手段5により測定された温度に関する温度情報と記憶部6から出力された登録固有温度情報を比較し、温度情報と登録固有温度情報の差異を温度差異情報として画像生成部19に出力する。また、温度判定部15は、温度判定情報も画像生成部19に出力しても良い。次に、画像生成部19は、温度判定部15から出力された温度差異情報又は温度判定情報を画像情報として生成し、表示部7に出力する。そして、表示部7は、画像生成部19から出力された画像情報を、画像として表示する。
よって、測定された温度が通常時の温度より高かったり、又は低かったりする場合は、測定された温度と通常時の温度の差異が表示部に表示されるので、対象者は自己の温度を知ることができ、体調管理に役立つ。
また、測定された温度が閾値より高い場合は、表示部7にその旨が表示されるので、対象者は開錠されないこととともに、視覚的にもその事を知ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…認証装置
2…電気錠
3…制御部
4…測定位置調整手段
5…温度測定手段
6…記憶部
7…表示部
10…施錠システム
11…カメラ(固有身体情報取得部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる者から、個人ごとにそれぞれ異なる固有の身体的特徴である固有身体情報を取得する固有身体情報取得部と、
温度を測定する温度測定手段と、
特定者の前記固有身体情報が予め登録された記憶部と、
前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報と、前記記憶部に登録された前記固有身体情報とを比較して、前記記憶部に登録された前記特定者であるかどうかを判定するとともに、前記温度測定手段で測定された前記温度が所定の閾値以下であるかどうかを判定し、前記記憶部に登録された前記特定者であり、かつ前記温度が前記閾値以下の場合に許可情報を出力する制御部とを備えることを特徴とする認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の認証装置において、
前記固有身体情報取得部は、撮影し、画像を生成するカメラであり、
前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報は、前記画像に含まれる前記対象となる者の顔部分を表す顔画像であることを特徴とする認証装置。
【請求項3】
請求項2に記載の認証装置において、
前記温度測定手段による測定位置を調整する測定位置調整手段を備え、
前記制御部は、前記固有身体情報取得部で取得された前記固有身体情報に基づいて前記測定位置を決定し、前記測定位置調整手段を制御することを特徴とする認証装置。
【請求項4】
請求項1に記載の認証装置において、
前記固有身体情報取得部は、前記固有身体情報として指紋を読み取る指紋認証機であることを特徴とする認証装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の認証装置において、
前記温度測定手段は、赤外線放射温度計であることを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の認証装置において、
前記温度測定手段により測定された前記温度と、前記記憶部に予め登録された前記特定者の通常時の前記温度との差異を表示する表示部を備えることを特徴とする認証装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の認証装置と、前記認証装置の前記制御部から出力された前記許可情報に基づいて開錠する電気錠とを備えることを特徴とする施錠システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−219539(P2012−219539A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87586(P2011−87586)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】