説明

誘起される振動が少ないエーロフォイル及び該エーロフォイルを備えるガスタービンエンジン

【課題】 誘起される振動を少ないエーロフォイルを提供する。
【解決手段】 ガスタービンエンジン(10)の回転子ブレード(40)を製造する方法及び装置が提供される。回転子ブレードは、第1の側壁(44)及び第2の側壁(46)を有するエーロフォイル(42)を含み、第1の側壁及び第2の側壁は、前縁部(48)及び後縁部(50)において結合される。方法は、0%半径方向スパンの根元部分及び100%半径方向スパンの先端部分により境界を規定され、半径方向スパン従属翼弦長(53)C、それぞれの最大厚さ(58)T及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を有するエーロフォイル部分を形成することと、第1のTmax/C比を有する根元部分を形成することと、第2のTmax/C比を有する先端部分を形成することと、第1の半径方向スパンと第2の半径方向スパンとの間に延出し、第1のTmax/C比及び第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分(57)を形成することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンエンジンの回転子ブレードに関し、特に、回転子ブレードに対して誘起される振動を減少する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの回転子ブレードは、通常、前縁部、後縁部、圧力側及び吸込み側を有するエーロフォイルを含む。圧力側と吸込み側は、前縁部及び後縁部において結合し、エーロフォイルの根元部と先端部との間で半径方向に延在する。内側流路は少なくとも部分的にエーロフォイル根元部により規定され、外側流路は少なくとも部分的に固定ケーシングにより規定される。例えば、少なくともいくつかの周知の圧縮機は、円板又はスプールから半径方向外側へ延出する複数列の回転子ブレードを含む。
【0003】
周知の圧縮機回転子ブレードは、各ブレードの根元部領域がブレードの先端部領域より厚くなるように、内側流路に隣接して片持ち構造として形成される。特に、先端部領域は根元部領域より薄く、また、先端部領域は一般に機械的に拘束されないため、動作中、ウェーク圧力分布によって、先端部領域を経て、ブレードに翼弦の湾曲又は他の振動モードが誘起されることがある。振動応力、特に翼弦の曲げ応力(ストライプモード)は、ブレードの先端部領域に局所的に起こる場合もある。時間の経過に伴って、大きな応力は、先端部の亀裂、角部の損傷、下流側損傷、性能損失、飛行中時間の短縮及び/又は保証費用の上昇を招く。更に、翼弦の湾曲又は他の振動モードを伴って動作が継続されると、ブレードの有効寿命は制限されてしまうであろう。
【0004】
先端部振動モードを減少するのを助長するために及び/又はエンジン動作中に存在する共振振動数の影響を低減するために、少なくともいくつかの周知の羽根は、先端部領域が厚くなるように製造される。しかし、ブレードの厚さが増すと、空力的性能に悪影響が及び且つ/又は回転子アセンブリに追加の半径方向荷重が誘起されるおそれがある。従って、半径方向荷重を誘起せずに、先端部振動を減少するのを助けるために、少なくともいくつかの他の周知のブレードは、先に説明した周知のブレードと比較して、翼弦長が短くなるように製造される。しかし、ブレードの翼弦長を短縮した場合でも、ブレードの空力的性能に悪影響が及ぶ可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態においては、ガスタービンエンジンの回転子ブレードを製造する方法が提供される。回転子ブレードは、第1の側壁及び第2の側壁を有するエーロフォイルを含み、第1の側壁と第2の側壁は、前縁部及び後縁部で結合される。方法は、0%半径方向スパンの根元部分及び100%半径方向スパンの先端部分により境界を規定され、半径方向スパン従属翼弦長C、それぞれの最大厚さT及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を有するエーロフォイル部分を形成することと、第1のTmax/C比を有する根元部分を形成することと、第2のTmax/C比を有する先端部分を形成することと、第1の半径方向スパンと第2の半径方向スパンとの間に延出し、第1のTmax/C比及び第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分を形成することとを含む。
【0007】
別の実施形態においては、ガスタービンエンジンのエーロフォイルが提供される。エーロフォイルは、半径方向スパン従属翼弦長C、それぞれの最大厚さT及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を含み、エーロフォイルは、第1の側壁と、前縁部及び後縁部で前記第1の側壁に結合された第2の側壁と、0%半径方向スパンで第1のTmax/C比を有する根元部分と、100%半径方向スパンで第2のTmax/C比を有する先端部分と、第1の半径方向スパンと第2の半径方向スパンとの間に延出し、第1のTmax/C比及び第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分とを更に含む。
【0008】
更に別の実施形態においては、複数の回転子ブレードを含むガスタービンエンジンが提供される。各回転子ブレードは、半径方向スパン従属翼弦長C、それぞれの最大厚さT及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を有するエーロフォイルを含み、エーロフォイルは、第1の側壁と、前縁部及び後縁部で前記第1の側壁に結合された第2の側壁と、0%半径方向スパンで第1のTmax/C比を有する根元部分と、100%半径方向スパンで第2のTmax/C比を有する先端部分と、第1の半径方向スパンと第2の半径方向スパンとの間に延出し、第1のTmax/C比及び第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分とを更に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、ガスタービンエンジン10の概略図である。ガスタービンエンジン10は、ファンアセンブリ12、高圧圧縮機14及び燃焼器16を含む。一実施形態においては、エンジン10は、General Electric Company(オハイオ州シンシナティ)より入手可能なCF34エンジンである。エンジン10は、高圧タービン18及び低圧タービン20を更に含む。ファンアセンブリ12及びタービン20は、第1の軸24により結合され、圧縮機14及びタービン18は、第2の軸26により結合される。
【0010】
動作中、空気は、ファンアセンブリ12を通って流れ、ファンアセンブリ12から高圧圧縮機14に圧縮空気が供給される。高圧で圧縮された空気は、燃焼器16へ送り出される。燃焼器16からの気流は、回転するタービン18及び20を駆動し、排気系統28を経てガスタービンエンジン10から排気される。
【0011】
図2は、ガスタービンエンジン10(図1に示される)のようなガスタービンエンジンと共に使用することができる回転子ブレード40の一例の部分斜視図である。一実施形態においては、複数の回転子ブレード40は、ガスタービンエンジン10の高圧圧縮機段(図示せず)を形成する。各回転子ブレード40は、エーロフォイル42と、エーロフォイル42を回転子円板(図示せず)に装着するために使用される一体のダブテール43とを含む。あるいは、複数のブレード40がブリスク(図示せず)を形成するように、ブレード40は、円板(図示せず)から半径方向外側へ延出してもよい。
【0012】
各エーロフォイル42は、第1の輪郭規定側壁44及び第2の輪郭規定側壁46を含む。第1の側壁44は、凸形であり、エーロフォイル42の吸込み側を規定する。第2の側壁46は、凹形であり、エーロフォイル42の圧力側を規定する。側壁44及び46は、厚さ49を有する前縁部48と、前縁部から軸方向に離間して配置され且つ厚さ51を有する後縁部50とにおいて接合される。エーロフォイル42の翼弦52は、前縁部48から後縁部50までの距離を表す翼弦長53を有する。特に、エーロフォイル後縁部50は、エーロフォイル前縁部48から翼弦に沿って下流側へ離間して配置される。第1の側壁44及び第2の側壁46は、それぞれ、ダブテール43に隣接して位置するブレード根元部54からエーロフォイル先端部56まで、スパン52に沿って長手方向又は半径方向外側へ延出する。半径方向スパン52は、ブレード根元部54からエーロフォイル先端部56に至るまで、それぞれフルスパンの何%かに相当する複数の増分を経て、徐々に変化することができる。ブレード40の中間部分57は、スパンの選択自在の1つの増分に位置するブレード40の横断面として定義することができ、あるいはスパンの2つの増分の間のある範囲の横断面として定義することができる。エーロフォイル42の最大厚さ58は、スパン52のある増分における側壁44と46との間の最大離間距離の値として定義することができる。
【0013】
ブレード40の形状は、翼弦長の複数の増分における翼弦長53(C)、それぞれの最大厚さ58(Tmax)及び最大厚さ(Tmax)対翼弦長(C)比(Tmax/C比)を使用して、少なくとも部分的に定義することができる。Tmax/C比は、最大厚さを、スパンのその増分における対応する翼弦長で除算した値である。翼弦長及び最大厚さの値は、ブレード根元部54からブレード先端部56まで変化するため、それらの値は、測定が実行される場所の半径方向スパンによって左右されるであろう。
【0014】
ブレード40の製造中、ブレード40の中にコア(図示せず)が鋳造される。コアは、コアダイ(図示せず)の中へ液体セラミック及びグラファイトスラリを注入することにより製造される。固体セラミックコアを形成するために、スラリは加熱される。コアは、タービンブレードダイ(図示せず)の中に浮かんでおり、セラミックコアを取り囲むように、高温ワックスがタービンブレードダイの中へ注入される。高温ワックスは凝固し、ブレードプラットフォームにセラミックコアが浮かんだ状態のタービンブレードを形成する。次に、セラミックコアを含めたワックスのタービンブレードは、セラミックスラリの中に浸漬され、乾燥される。ワックスのタービンブレードの上にシェルが形成されるように、この手順は、何度か繰り返される。次に、ワックスを溶融し、シェルの外へ排出することにより、内側にコアが浮かんでいる型が残り、その型の内部に溶融金属が注入される。金属が凝固した後、シェルは引き剥がされ、コアが取り除かれ、その結果、ブレード40が形成される。ブレード40を所定の指定寸法まで最終仕上げするために、最終機械加工工程が使用されてもよい。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態に従って製造されたブレード40のTmax/Cプロファイルの一例のグラフ300である。グラフ300は、ブレード40の半径方向長さのパーセント(%)スパンの増分で目盛を付されたx軸を含む。0%スパンは、ブレード根元部54に近接するブレード40を表し、100%スパンは、エーロフォイル先端部56に近接するブレード40を表す。グラフ300は、Tmax/Cの増分で目盛を付されたy軸を更に含む。
【0016】
トレース306は、ほぼ直線的である典型的なブレードの場合のTmax/C分布と半径方向高さとの関係を示す。この場合、根元部のTmax/Cの方が大きく、先端部のTmax/Cは小さい。トレース308は、本発明の一実施形態に従ったブレード40のTmax/C分布と半径方向高さとの関係を示す。実施形態においては、ブレード40は、ブレードの固有振動数の変化を最小限に抑えつつ、エーロフォイル42の相対的に広い部分にわたって振動応力を分布させ、エーロフォイル42を強化する。例えば、ブレード40の動作範囲で、1‐2Sモード共振が維持することができる。更に、典型的なブレードと比較して、ブレード振動数の変化が最小限に抑えられることにより、ストライプモード強度が向上することを除いて、ブレードの動応答の変化が最小限に抑えられる。その結果、1‐2S及び1‐3Sなどの少なくともいくつかのモードで、振動応力応答が低減される。
【0017】
実施形態においては、後縁部先端キャンバを含めたキャンバ及び翼形中心線形状、並びに根元部付近の傾き調整及びキャンバ調整は、所定の空力的特性及び動作能力特性を保持しつつ、ブレード40を強化するように値を定められる。トレース308は、ブレード40の振動強度を規定するためにあらかじめ定められている半径方向スパン最大厚さ分布を示す。スパンの約38%〜約78%の範囲などを有する中間部分スパン310において、最大厚さ分布が減少されてもよいが、範囲は、ここで挙げた%スパンに限定されない。
【0018】
図4は、本発明の一実施形態に従って製造されたブレード40の後縁部厚さプロファイルの一例のグラフ400である。グラフ400は、ブレード40の半径方向長さの%スパンの増分で目盛を付されたx軸402を含む。0%スパンは、ブレード根元部54に近接するブレード40を表し、100%スパンは、エーロフォイル先端部56に近接するブレード40を表す。グラフ400は、インチ(ミル)の増分で目盛を付されたy軸404を更に含む。
【0019】
トレース406は、ほぼ直線的である典型的なブレードの場合の後縁部厚さと半径方向高さとの関係を示す。この場合、根元部の後縁部厚さの方が大きく、先端部の後縁部厚さの方が小さい。トレース408は、本発明の一実施形態に従ったブレード40の後縁部厚さの分布と半径方向高さとの関係を示す。Tmax/Cが減少する半径方向スパンの場所で、後縁部厚さが増加する。例えば、典型的なブレード(図3に示される)に対して、スパンの約38%〜78%の範囲で、Tmax/Cは減少する。しかし、後縁部厚さは、典型的なブレードと比較して、この範囲内で増加する。1‐2Sモード振動に対する保護のために、先端部のTmax/Cは増加され、スパンの約38%〜78%の範囲で、Tmax/Cは減少される。特に、中間部分57におけるTmax/Cの値は、先端部56に近接する場所のTmax/Cの値より小さい。実施形態においては、中間部分57におけるTmax/Cの値は、先端部56に近接する場所の値より1%小さくなるように減少される。別の実施形態では、特定の問題の必要条件に適合するように、特定の値が調整することができる。後縁部厚さを修正すると、他のブレードに発生した寸法変化の結果として振動数パラメータ及び強度パラメータの損失を許容できる。
【0020】
図5は、本発明の一実施形態に従って製造されたブレード40の前縁部厚さプロファイルの一例のグラフ500である。グラフ500は、ブレード40の半径方向長さの%スパンの増分で目盛を付されたx軸502を含む。0%スパンは、ブレード根元部54に近接するブレード40を表し、100%スパンは、エーロフォイル先端部56に近接するブレード40を表す。グラフ500は、前縁部厚さの増分で目盛を付されたy軸504を更に含む。
【0021】
トレース506は、ほぼ直線的である典型的なブレードの場合の前縁部厚さと半径方向高さとの関係を示す。この場合、根元部の前縁部厚さの方が大きく、先端部の前縁部厚さの方が小さい。トレース508は、本発明の一実施形態に従ったブレード40の前縁部厚さ分布と半径方向高さとの関係を示す。Tmax/Cが減少する半径方向スパンの場所で、前縁部厚さは増加する。例えば、典型的なブレード(図3に示される)に対して、スパンの約38%〜78%の範囲で、Tmax/Cは減少する。しかし、前縁部厚さは、典型的なブレードと比較して、この範囲内で増加する。1‐2Sモード振動に対する保護のために、先端部Tmax/Cは増加され、スパンの約38%〜78%の範囲のTmax/Cは減少される。特に、中間部分57におけるTmax/Cの値は、先端部56に近接する場所の値より小さい。実施形態においては、中間部分57におけるTmax/Cの値は、先端部56に近接する場所の値より1%小さくなるように減少される。別の実施形態では、特定の問題の必要条件に適合するように、特定の値が調整することができる。前縁部厚さを修正すると、他のブレードに発生した寸法変化の結果として振動数パラメータ及び強度パラメータの損失を許容できる。
【0022】
図6は、典型的な回転子ブレードの振動応力の例を示すプロット図600である。半径方向外側の応力帯604が最高応力レベル領域606を取り囲むように、複数の応力帯602がエーロフォイル先端部56からブレード根元部54に至るまで、向きを定められている。領域606から徐々に遠ざかる領域における応力レベルは、領域606により近接する領域と比較して低い応力を示す。領域606から、例えば、ブレード根元部54に近接する場所にある領域608に向かって、領域の応力レベルの大きさは減少する。
【0023】
図7は、回転子ブレード40(図2に示される)の振動応力の例を示すプロット図700である。半径方向外側の応力帯704が最高応力レベル領域706を取り囲むように、エーロフォイル先端部56からブレード根元部54に至るまで、複数の応力帯702が向きを定められている。領域706から徐々に遠ざかる領域における応力レベルは、領域706により近接する領域と比較して低い応力を示す。領域706から、例えば、ブレード根元部54に近接する場所にある領域708に向かって、領域の応力レベルの大きさは減少する。応力領域710及び712は、典型的なブレードの対応する場所における応力レベル(図6に示される)より高い応力レベルを示す。更に、領域704の応力の値は、領域604と比較して小さくなっている。図3〜図5に示される特性を有するブレード40を形成することにより、応力は、ブレードの中間部分57のより広い領域に分散されるため、エーロフォイル先端部54における応力の大きさの低減が助長される。振動応力の問題に対応するためにTmax/Cプロファイルが修正され、且つ強度及び/又はブレード性能損失を回復するために、後縁部厚さ及び/又は前縁部厚さも対応して修正されたブレード40の製造は、1‐2S振動モードに加えて、より高次の撓みモード及びねじりモードなどの他の局所振動モードで使用することができる。
【0024】
エーロフォイル42に対して誘起されるエネルギーは、励起エネルギーの力と、エーロフォイル42の変位との点乗積として計算することができる。特に、動作中、エーロフォイル先端部54は、一般に、機械的に拘束されないため、空力的駆動力、すなわち、ウェーク圧力分布は、一般に、エーロフォイル先端部54に隣接して最も高い。図3〜図5に示されるようなTmax/Cプロファイル、前縁部厚さプロファイル及び後縁部厚さプロファイルは、そのようなTmax/Cプロファイル、前縁部厚さプロファイル及び後縁部厚さプロファイルを含まない同様のエーロフォイルと比較して、エーロフォイル42を強化し、ブレード自然振動数の変化を最小限に抑えつつ、先端部応力をエーロフォイル42のより広い領域に分布させるのを助ける。
【0025】
ある特定の用途に適するブレードを製造するためのTmax/Cプロファイル、前縁部厚さプロファイル及び後縁部厚さプロファイルは、空力的特性、振動特性及び性能特性がわかっており且つ/又は判定可能であるような既存のブレード幾何学形状を使用して判定することができる。その場合、ブレードの特性を所定の仕様の範囲内に維持しつつ、相対的に小さな増分によりブレード幾何学形状を繰り返し修正することができる。特に、ブレードの自然振動数は、モード並びに予想応答及び/又は測定応答に応じて、5〜10%の範囲内に維持されることが望まれるであろう。キーモードにおける応力対エネルギーの平方根比は、詳細な解析コード(強制応答)を使用して減少され、妥当性検査することができる。他のモードにおける応力対エネルギーの平方根比及びブレード重量は、所定の仕様の範囲内に維持されてもよい。実施形態においては、繰り返しは、エーロフォイル42自体及びそれに近接する部分におけるTmax/Cの増加をもたらし、それは、先端部の強化に好都合であった。中間スパン、例えば、60%スパン付近のTmax/Cは、ブレードにおいて、ストライプモード応力を半径方向内側へ拡散するために減少される。ブレード振動数及び応力対エネルギーの平方根比が維持されるように、中間スパンにおける縁部厚さは増加される。ブレード根元部付近では、Tmax/Cは、相対的に控えめに増加されるが、ブレード根元部におけるTmax/Cは、余分な先端部質量に対する支えが与えられ、減少した中間スパン質量を補償するように、そのまま維持される。
【0026】
図8は、ガスタービンエンジン10(図1に示される)のようなガスタービンエンジンと共に使用できる回転子ブレード800の一例を先端部側から見た横断面図である。一実施形態においては、複数の回転子ブレード800は、ガスタービンエンジン10の高圧圧縮機段(図示せず)を形成する。各回転子ブレード800は、第1の輪郭規定側壁804及び第2の輪郭規定側壁806を有するエーロフォイル802を含む。第1の側壁804は凸形であり、エーロフォイル802の吸込み側を規定する。第2の側壁806は凹形であり、エーロフォイル802の圧力側を規定する。側壁804及び806は、厚さ809を有する前縁部808と、前縁部808から軸方向に離間して配置され且つ厚さ811を有する後縁部810とにおいて接合される。エーロフォイル802の翼弦812は、前縁部808から後縁部810までの距離を表す翼弦長813を含む。特に、エーロフォイル後縁部810は、エーロフォイル前縁部808から翼弦に沿って下流側へ離間して配置される。第1の側壁804及び第2の側壁806は、それぞれ、ブレード根元部(図示せず)からエーロフォイル先端部まで、スパンに沿って長手方向又は半径方向外側に延出する。エーロフォイル802の最大厚さ818は、ブレード800の先端部における側壁804及び806の間の最大離間距離の値として定義することができる。翼弦812の中間点は、最大厚さ818の場所と一致してもよい。実施形態においては、翼弦812の中間点と、最大厚さ818の場所とは一致しない。前縁部厚さ809及び後縁部厚さ811は、それぞれ、前縁部808及び後縁部810に隣接するあらかじめ規定された場所における側壁804及び806の離間距離の値として定義することができる。
【0027】
ブレード800の形状は、翼弦長813、最大厚さ818(Tmax)、前縁部厚さ809、後縁部厚さ810及びブレード800のキャンバを使用して、少なくとも部分的に定義することができる。
【0028】
先端部側から見た別の回転子ブレード850の例の横断面図が、ブレード800の図に重ね合わされている。ブレード850は、既知のパラメータ及び外部刺激に対する既知の応答を含む予備設計又はモデルを表現することができる。ブレード850は、様々に異なる刺激及び/又は応答に対応するように設計を改善するために使用することができる。一般に、ブレード850は、ブレード800と比較して、前縁部においてより狭く、翼弦812の中間点の付近でより厚く、後縁部でより狭い横断面プロファイルを含む。更に、ブレード850のキャンバ又は湾曲は、後縁部において、ブレード800のキャンバより小さい。
【0029】
図9は、本発明の一実施形態に従って製造されたブレード800及びブレード850の前縁部808から後縁部810に至るまでの厚さのプロファイルの例を示すグラフ900である。グラフ900は、前縁部位置904から後縁部位置906までのブレードの軸方向距離の増分で目盛を付されたx軸902を含む。グラフ900は、ブレード先端部厚さの増分で目盛を付されたy軸908を更に含む。
【0030】
トレース910は、ブレード800の先端部に隣接するブレード800の厚さプロファイルを示す。トレース912は、ブレード850の先端部に隣接するブレード850の厚さプロファイルを示す。実施形態においては、前縁部厚さ809は、約0.483mm(0.019インチ)であり、ブレード850の対応する厚さは、約0.229mm(0.009インチ)である。トレース910は、前縁部厚さ809から、ほぼ最大の厚さ818まで漸近線を描いて増加し、その後、後縁部厚さ811までほぼ直線的に減少する。
【0031】
ブレード800の構造は、一般に、例えば、1‐3Sモード振動に起因するブレード後縁部の亀裂発生を低減するのを助けるように構成される。ストライプモード応答の振動数を増加するために、厚さを増加又は翼弦長を短縮するのではなく、1‐3Sモードにおけるブレード800の強度を向上するために、後縁部厚さ811が増加される。1‐3Sモード及び他のモードにおける配置を維持するために、最大厚さ818が減少され、後縁部810に隣接するブレード800のキャンバが増加される。これは、ブレードの厚さ増加を補償するように作用する。一般に、著しく大きな局所キャンバは、局所振動応力を増加させるが、著しく大きな局所キャンバの領域で後縁部の厚さ811を増すことにより、キャンバの増加に対するブレード800の感度は低下される。
【0032】
一般に、ブレード厚さは、翼弦中間領域で減少され、後縁部領域で増加され、後縁部領域における局所キャンバは増加される。そのような変更は、強度を増補し、厚さが増すことによって引き起こされる自然振動数の増加傾向を最小限に抑えるのを助けると共に、このような変更がなければ、ブレード800の形状の変化によって低下していたであろうと考えられる性能のレベルを保持するために、キャンバを増加することを可能にする。従って、実施形態においては、後縁部厚さ811は、前縁部厚さ809より大きい。本発明の様々な実施形態において、後縁部厚さ811は、前縁部厚さ809より約10%〜約100%大きくてもよい。最大厚さ818は、翼弦812の中間点におけるブレード800の厚さとほぼ等しくてもよく、前縁部厚さ809の約150%未満の範囲でもよく、後縁部厚さ811の25%未満の範囲でもよい。特に、実施形態においては、最大厚さ818は約1.22mm(0.048インチ)であり、前縁部厚さ809は約0.483mm(0.019インチ)であり、翼弦中間厚さは約1.19mm(0.047インチ)であり、後縁部厚さ811は約1.02mm(0.04インチ)である。
【0033】
回転子ブレードの上述の実施形態は、費用効率に優れ、非常に高い信頼性を示す。回転子ブレードは、エーロフォイルを強化し、ブレード自然振動数の変化を最小限に抑えつつ、ブレード先端部応力をエーロフォイルのより広い領域に分布させるのを助けるようなTmax/Cプロファイル、前縁部厚さプロファイル及び後縁部厚さプロファイルを含む。その結果、先に説明されたプロファイルは、ブレードの空力的性能を維持するのに好都合である一方で、費用効率よく且つ信頼性をもって、ブレードに航空力学的安定性を与える。
【0034】
以上、ブレードアセンブリの実施形態を詳細に説明した。ブレードアセンブリは、ここで説明された特定の実施形態に限定されず、各アセンブリの構成要素は、ここで説明された他の構成要素から独立して、別個に利用されてもよい。回転子ブレードの各構成要素は、他の回転子ブレード構成要素と組み合わせて使用することも可能である。
【0035】
種々の特定の実施形態に関して本発明を説明したが、特許請求の範囲の趣旨の範囲内で、変形を伴って本発明を実施できることは、当業者には認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ガスタービンエンジンを示した概略図である。
【図2】図1に示されるガスタービンエンジンと共に使用できる回転子ブレードを示した斜視図である。
【図3】図2に示されるブレードのTmax/Cプロファイルの一例を示したグラフである。
【図4】図2に示されるブレードの後縁部厚さプロファイルの一例を示したグラフである。
【図5】図2に示されるブレードの前縁部厚さプロファイルの一例を示したグラフである。
【図6】典型的な回転子ブレードの振動応力の例を示した図である。
【図7】図2に示される回転子ブレードの振動応力の例を示した図である。
【図8】図1に示されるガスタービンエンジンのようなガスタービンエンジンと共に使用できる回転子ブレードの一例を先端部側から見た横断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に従って製造されたブレードの前縁部から後縁部までの厚さのプロファイルの一例を示したグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10…ガスタービンエンジン、40…ブレード、42…エーロフォイル、44…第1の輪郭規定側壁、46…第2の輪郭規定側壁、48…前縁部、50…後縁部、53…翼弦長、57…中間部分、58…最大厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向スパン従属翼弦長(53)C、それぞれの最大厚さ(58)T及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を有するガスタービンエンジン(10)のエーロフォイル(42)において、
第1の側壁(44)と、
前縁部(48)及び後縁部(50)で前記第1の側壁に結合された第2の側壁(46)と;
第1のTmax/C比を有する根元部分と、
第2のTmax/C比を有する先端部分と、
前記根元部分と前記先端部分との間に延出し、前記第1のTmax/C比及び前記第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分(57)と
を有するエーロフォイル(42)。
【請求項2】
前記第1のTmax/C比は0.08より大きく、前記第2のTmax/C比は0.06より大きく、前記第3のTmax/C比は0.05より小さい請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項3】
前記後縁部(50)は、前記後縁部の厚さが0%スパンから100%スパンまで増加するようにテーパ形状である請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項4】
前記後縁部(50)は、前記後縁部の厚さが70%スパンから100%スパンまで減少するようにテーパ形状である請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項5】
前記前縁部(48)は、前記前縁部の厚さが0%スパンから100%スパンまで減少するようにテーパ形状である請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項6】
0%スパンから100%スパンまで連続的に減少する厚さを有する前記前縁部(48)を形成することを更に含む請求項5記載のエーロフォイル(42)。
【請求項7】
ストライプモード応力が前記先端部分及び前記中間部分に分散されるように、前記中間部分(57)より大きいTmax/C比を有する前記先端部分が形成された、請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項8】
ストライプモード応力が前記先端部分に近接して減少されるように、前記中間部分(57)より大きいTmax/C比を有する前記先端部分が形成された、請求項1記載のエーロフォイル(42)。
【請求項9】
複数の回転子ブレード(40)を備え、該回転子ブレードの各々が、半径方向スパン従属翼弦長(53)C、それぞれの最大厚さ(58)T及び最大厚さ対翼弦長比(Tmax/C比)を有するエーロフォイル(42)を具備するガスタービンエンジン(10)において、
前記エーロフォイルは、
第1の側壁(44)と;
前縁部(48)及び後縁部(50)で前記第1の側壁に結合された第2の側壁(46)と;
0%半径方向スパンで第1のTmax/C比を有する根元部分と;
100%半径方向スパンで第2のTmax/C比を有する先端部分と;
前記根元部分と前記先端部分との間に延出し、前記第1のTmax/C比及び前記第2のTmax/C比より小さい第3のTmax/C比を有する中間部分(57)とを具備するガスタービンエンジン(10)。
【請求項10】
ガスタービンエンジン(10)のエーロフォイル(42)において、
根元部分と先端部分との間に延出する第1の側壁(44)と;
前記根元部分と前記先端部分との間に延出し、前縁部(48)及び後縁部(50)で前記第1の側壁(44)に結合された第2の側壁(46)とを具備し;
前記先端部分は、最大厚さ、前縁部厚さ、翼弦中央厚さ及び後縁部厚さを有し、前記後縁部厚さは、前記前縁部厚さより大きいエーロフォイル(42)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−51642(P2007−51642A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219595(P2006−219595)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】