説明

調整可能な干渉フィルタ

本発明は、特に選ばれた範囲内の赤外線によるガス検出での使用のための調整可能な干渉フィルタであって、光が間で振動しうる反射面によって区切られたキャビティを定義する選ばれた距離によって分離された少なくとも2つの本質的に平行な反射面を有し、前記表面の少なくとも1つがキャビティへの、またはキャビティからの光の伝播に対して半透明であるような、干渉フィルタに関する。そのフィルタは、透明で高い屈折率材料と調整可能部分によって構成されるキャビティを得るために、キャビティ内に位置し、選ばれた厚さを備え、高い屈折率を持った透明な材料と、反射面間のキャビティ長さを調整するための調整可能な分離手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整可能な干渉フィルタ、特に選ばれた範囲内の赤外線によるガス検出での使用のためのものに関わる。
【背景技術】
【0002】
ほとんどのガスが、ガス分子の振動遷移に対応するフォトンエネルギーをもった赤外線を吸収する。赤外光で気体濃度を測定する時、ガスを通して透過された光の2つの測定を行なうことが通常である:その1つの測定はガス吸収によって影響される(減少させられる)もので、もう1つはガスにより影響を受けない基準測定である。この測定方法はしばしば非分散赤外線(non-dispersive inflrared:NDIR)と言われる。
【0003】
4.5〜5.0μmの範囲の波長の関数としての透過を示す図1に示すように、一酸化炭素(CO)の赤外スペクトルはほぼ周期的なラインパターンを持つ。メタン(CH)を含むいくつかのガスは類似の吸収線を持っている。COライン間の距離は波長の増加と共に増加するが、波長の短い間隔内で本質的には一定である。COの濃度を測定するために、図2に示すような組立体を使うことができる。赤外線源21からの光は集光ミラー22によってガスセル23を通り、さらに変調されたフィルタ24、例えばファブリーペローフィルタを通して送られ、固定帯域通過フィルタ25、さらに新たな集光ミラー26を通して検出器27に送られる。上記このラインにおいて、変調されたフィルタの機能は2つの形状または設定の間で変更しうる。1つの設定ではCOが光を透過するスペクトル範囲の光を透過し(相関設定)、また他の設定ではCOが光を吸収する範囲の光を透過する(反相関設定)。このようにして、異なった設定を使った測定の間で連続的に変更することができる。2つの設定間の差は、COがガスセルに存在しないときには零となり、CO濃度の増加に伴って増加することになる。
【0004】
ガススペクトルにおける一つのラインに適合させられるフィルタを使うことによって、いくつかの利点を得ることができる:
1)帯域通過フィルタが使われる場合と比較して、所定の気体濃度が、測定された信号における大きな相対的変化を与える。
2)同じ波長範囲内で吸収する領域に他のガスが存在するならば、それらは、同じ範囲であるが異なるラインのガスに対する感度を減らすので、測定に最小の影響を持つことになる。
3)ソース(源)の温度変化および他の擾乱が、同程度の測定の両方に影響を与えることにもなる。
【0005】
これをうまく働かせるため、フィルタラインの位置以外のすべてを不変にしておかれなければならない。これは、光を可能な限り類似の進路を通るようにするによって得ることができる。好ましくは、測定に影響する全てが、同じ影響を有するべきである。他のガスに加えて、温度勾配、光学表面上への汚れ堆積、増幅回路のドリフト、機械的安定性などが影響でありうる。
【0006】
COラインに直接適合するフィルタを作ることは難しい。表面間に距離dを有し、表面間の媒質が屈折率nである2つの平行な光学表面を持った干渉フィルタが良好な近似である。この時、フィルタを通じた透過は波数ν=1/λの周期関数である。ここに、λは波長である。周期は1/2ndである。ここに、nは屈折率である。今、周期がスペクトルの一範囲におけるCOラインと一致するように、距離dを選択することができる。光学波長s=ndが波長の4分の1と共に変わる時、すなわちs±(Δs)=s±λ/4の時、フィルタの必要とされる変調が得られる。一定の屈折率では、これは厚さの変化d±(Δd)=d±λ/4nに対応することになる。屈折率が1である時、Δdは約2.3μmとなる。
【0007】
COスペクトルに適合させた反相関設定モードでの干渉フィルタを通じた透過を図1に示す。ここでは、いずれも波長の関数として、4.5〜5.0μmの範囲で、上のラインがCOスペクトルを示し、下のラインがフィルタの透過スペクトルを示す。
【0008】
図1に示すように、フィルタラインとガスラインの間に、中心波長から次第に外側に偏差の増加が起こることになる。帯域通過フィルタを追加することにより、使用される範囲を限定することができる。
【0009】
干渉フィルタが調整可能な距離を有する2つの平行なミラーから成り立つならば、ミラー間の光学材料の選択は非常に限定される。つまり、空気、他のガス、あるいは場合によっては弾性で透明な材料である。干渉フィルタ内の光学材料は、入射する光においていかに大きな角度の広がりを持ちうるかに影響する。角度が増加する場合、有効な光学波長は、干渉光に対して減少することになり、入射角におけるsの広がりは、透過スペクトルの汚染をもたらすことになる。高い屈折率はフィルタ中の低い最大屈折角をもたらす。可能な最大の角度はフィルタのエテンデュー(etendue)を決定することになる。エテンデューは、光束の面積と立体角の積であって、放射源が無制限な広がりを持つ時に、系を通過することが可能な光の量がどのくらいかの基準である。所定のスペクトル分解に対してエテンデューが屈折率の2乗に比例することを示すことができる。従って、共振器内の空気の代わりに、例えばシリコン(n=3.4)が使われるならば、10倍多くの光を得ることができる。
【0010】
課題は、高い屈折率を持ち、また相関設定モードと反相関設定モードの両方にフィルタを調整するのに十分に光学波長を変えることもできる干渉フィルタを作ることである。
【0011】
[従来の業績]
このような干渉フィルタによって一酸化炭素を測定する原理は、1974年の特許文献1に記載されている。これも熱的に変調された透明な光学材料内のフィルタを作る可能性に言及しているが、シリコンまたは類似のものについては言及していない。
【0012】
機械的な干渉計を作ることは高価になり、そのため、この測定方法は例えば国内市場のための火災警報器や焼却炉のプロセス監視での使用のための安価で大量生産向きのCOセンサには不適である。
【0013】
1990頃に、Michael Zochbauerは、光学波長を変えるためのシリコンディスクの加熱に関するいくつかの実験を行った(Zochbauerの非特許文献1)。このように干渉フィルタは安価な部品になっている。加熱および冷却サイクルは遅くて、エネルギーを消費するということが分かった。やはり、ディスクにわたって均一な温度を達成することは難しかった。
【特許文献1】米国特許第3,939,348号明細書(1974年:Barrett JJ)
【特許文献2】米国特許第5,886,247号明細書(1997年:Rabbett MD)
【非特許文献1】Zochbauer M著、「Technisches Messen 61」,1994年,195〜203頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、可能な限り類似の状態の下で相関測定と反相関測定を、例えば2つの干渉状態間を高速スイッチングによって行なうこともできるようにする、調整可能な干渉フィルタに最大の光処理能力を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は添付の請求項による調整可能なフィルタを使って得られる。
【0016】
例として本発明を例証している添付の図面を参照しながら、本発明を以下でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図3Bおよび図3Cにおいて、干渉フィルタは2つのシリコンディスクI、IIから成っているように示されている。フィルタ内で振動する光10の支配的な干渉はシリコンと空気の間の2つの境界2の間にある。ディスクの反対側には反射防止層3が位置する。この結果、「見えない」キャビティ以外は、干渉フィルタが一つのシリコンディスク1のように振舞うことになり、光学的に等価な状態が図3Aで示されたもののようになる。そこ(図3A)では、干渉フィルタが両側に反射面2を持ったシリコンディスク1として示されている。図3BのディスクI、IIの間の距離を意味するキャビティを変えることによって、干渉を与える反射面の間の全体の光路長は変化することになる。次に、フィルタを、相関設定モードと反相関設定モードの両方に設定することができ、キャビティとミラーを使う干渉計の適応性を達成すると同時に、シリコン材料の利点、すなわち大きな入射角度と低減された全体厚さが維持される。低減された厚さと短いキャビティ距離は一般に平行な表面を作ることを容易にする。図面から明らかなように、図3Bと図3Cの違いは1つのシリコンディスクがひっくり返されたことだけであり、2つの反射面間の光路長に影響を与えるだけである。
【0018】
キャビティは、実際の実施形態の許容誤差と安定性に応じて、λ/4からλ/2の範囲で実用的な調整を可能にするのに十分な大きさでなければならないのみである。
【0019】
使われる材料は好ましくはシリコンであるが、他の材料でも良好な結果を達成することができる。1つの例はゲルマニウムであって、それはシリコンよりさらに高い屈折率を持つ。代案の実施形態では、さらに一層フィルタの効率を増やすために、可変のキャビティが、例えば適当な屈折率を持ったジェルで充填されうる。しかしながら通常の使用では、それは空気を収容することになる。
【0020】
通常、反射層は、空気と材料の間の平らで本質的に平行な表面から成ることになる。シリコンに対してそれは約0.3の反射率を与えることになるが、フィルタのフィネスを調整するために異なった表面処理を考慮することができる。反射防止層または反射低減面は、異なった屈折率の1つ以上の層から成り立つことができる。これはそれ自体、既知の技術であって、ここではいかなる詳細な説明も行わないが、4.75μmの範囲の波長で動作する0.65μmのSiOの層として提供することができる。多孔性シリコン、または屈折率を次第に変える他の技術をも使うことができる。最も重要なのは、関連する波長範囲に対する最小の反射係数をそれが持つということである。残りの反射係数は、2つの測定に異なる影響を与えることになる。1つの層からの干渉は、図3Dに示すように粗で傾斜した1つの表面4を作ることによって、さらに一層多く減らされうる。
【0021】
図4および図5は、ウェーハボンディングとマイクロ機械加工のためのそれ自体既知の解決法に基づいて、フィルタがどのように実施されうるかを示す。図4から明らかなように、ここでのフィルタは、基板上に選ばれた距離を保ったディスクを備えた基板6によって構成されている。フィルタ内に反射体の1つと透明な材料を構成しているシリコンディスク6と、第2の反射体を持った下にある基板7との間に電圧を印加することによって、静電気引力によりそれらの間の距離を調整することができる。従って、キャビティの厚さは単純な方法で変化する。図4では、異なる方向の寸法は、図示の目的から実際に実現可能な実施形態のための比率ではない。
【0022】
図4は、適切な電圧源(図示しない)に接続された電極5を使用して、部材の静電気的動きによって調整可能なファブリーペローフィルタを有する本発明の好ましい実施形態の断面を示す。上に重なったディスク6と基板7との間の静電気引力により、ディスクは引き下ろされ、それらの間のキャビティは小さくなる。これは、ウェーハボンディングおよびポリッシング(研磨)に基づくフォトリソグラフィの大量生産によって実現すすることができる。
【0023】
図5Aおよび図5Bは別の原理を示し、そこではキャビティの厚さが圧電アクチュエータ11を使って調整される。図5Bから明らかに、光が1つの側から入り、そして光の透過がフィルタの他の側で測定されるように、光10がファブリィ−ペローを通過する。ディスクと基板とはいずれも、反射面を提供され、他の側に反射低減層を提供されうる。これらの配列はキャビティの長さに応じて変化させることができるだけでなく、少なくとも1つのシリコンのディスクが反射層の間に見出される。これらの考察はもちろん、図4に示した解決策と関連して行うこともできる。これらの解決策に加えて、既知の技術で説明されるように、関連する測定範囲に対する粗い調整が可能なように温度を選択することによって、反射層間の距離を調整することももちろんできる。従って、フィルタを通した光路長を調整するための結果的な手段は、温度と距離制御の組合せを有することになる。
【0024】
ここで示された解決策に加えて、シリコンディスクには、例えば部材を通過する光の合焦点をさせるためのパターンを提供することができる。これは回折パターン、フレネルレンズ、または図6に示すようなゾーンプレート8とすることができる。そこでは、光がフィルタをも通過して、ある点に向かって合焦点される。これは、図2に示された光学システムにおける他のフィルタタイプに置き換えることができ、従って様々な部品間の複雑さおよび調整の必要性を減らすることができる。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、追加または代替としてのシリコンディスクに、ディスク上の異なった位置での異なったキャビティ距離を提供するための、より大きな反射面パターンを提供することができる。このようにして、光スペクトルの異なった部分を、ディスク上の異なった位置において分析することができ、考えうる回折レンズが別個の解析のための異なった方向に光を向けることができる。これは、光における様々な範囲の波長の並行した分析の可能性を与えることになる。また参考文献としてここに組み入れられ、特に同時に出願されたノルウェー特許出願第2005.1850と、該出願の優先権により出願された国際出願においてさらに扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】上述のCOに対する、またファブリーペローフィルタに対する透過スペクトルを示す。
【図2】既知の技術に従ったガス測定を行なうための、上述の通常的な組立体を示す。
【図3A】本発明の代案の実施形態と、さらにこの実施形態の光学等価物を示す。
【図3B】本発明の代案の実施形態と、さらにこの実施形態の光学等価物を示す。
【図3C】本発明の代案の実施形態と、さらにこの実施形態の光学等価物を示す。
【図3D】本発明の代案の実施形態と、さらにこの実施形態の光学等価物を示す。
【図4】本発明のマイクロ機械の実施形態を示す。
【図5A】本発明の代案の実施形態を示す。
【図5B】本発明の代案の実施形態を示す。
【図6】表面上に合焦点パターンを持った本発明の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 シリコンディスク
2 反射面
3 反射防止層
4 表面
5 電極
6 シリコンディスク
7 基板
8 ゾーンプレート
10 光
11 圧電アクチュエータ
21 赤外線源
22 集光ミラー
23 ガスセル
24 フィルタ
25 固定帯域通過フィルタ
26 集光ミラー
27 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に選ばれた範囲内の赤外線によるガス検出での使用のための調整可能な干渉フィルタであって、定義された光路と、該光路に位置して、光が間で振動しうる反射面によって区切られキャビティを定義する選ばれた距離によって分離された少なくとも2つの本質的に平行な反射面と、を有し、前記表面の少なくとも1つがキャビティへの、またはキャビティからの光の伝播に対して半透明であるような、干渉フィルタであり、該フィルタは、
選ばれた厚さを備え、前記光路内の前記反射面間に置かれ、例えばシリコンのような高い屈折率を持つ第1の透明な材料と、
第1の透明な材料と反射面の少なくとも1つとの間に、距離、従ってキャビティを定義するための分離手段、および、前記反射面間の距離を調整するための、従って選ばれた光路長を持つキャビティを提供するための調整手段デバイスと、
前記透明な材料と前記光路における前記キャビティとの間の少なくとも1つの境界表面であって、波長の前記範囲における前記境界表面の反射率を減らすための反射低減手段を備えた境界表面と、
を有することを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
第1の反射面は前記透明な材料の1つの側を構成し、1つの境界表面はこれの反対側上に置かれた低減された反射率を持ち、第2の反射面は前記キャビティの反対側上のキャリア材料上に置かれることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
マイクロ機械シリコンユニット(micro mechanical silicon unit)内に提供され、そこでは、第1の反射面がディスクの上側にあり、反射低減層がディスクの下側に置かれるように、前記第1の透明な材料が前記第2の反射面の上に延在するディスクによって構成されることを特徴とする請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
電圧源と2つの反射面のそれぞれに対する電気的導体とに連結するための、従ってそれらの間の距離の静電的調整を提供するための手段を有することを特徴とする請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記反射面の少なくとも1つは3次元パターンを有し、前記パターンは、例えば異なった方向における異なった波長を持った光の透過または反射のための、回折フィルタを有することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記パターンは、異なった位置に向かって異なった波長を持つ光を合焦点するよう適合させられた、少なくとも1つの回折レンズを有することを特徴とする請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記キャビティは、柔軟な材料、例えば選ばれた屈折率を持ったジェルで充填されることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項8】
低減された反射率を持つ前記境界は、キャビティおよび透明な材料の屈折率と異なった屈折率を持つ材料であって、波長の選ばれた範囲内の前記境界における反射を、既知の方法それ自体で減らすような厚さを備えた材料の、少なくとも1つの層を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−537802(P2008−537802A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506394(P2008−506394)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000124
【国際公開番号】WO2006/110042
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(505249953)
【Fターム(参考)】