説明

調理装置及び調理方法

【課題】釜が破損するおそれや調理者が怪我、火傷を負うおそれがなく、安全性の高い調理装置を提供することを目的とする。又、加熱にむらが生じることなく、且つ調理時間の短縮が可能な調理装置を提供することを目的とする。更に、熱媒体が被調理物に混合するおそれがなく、万が一に混入しても被調理物の安全性が確保される調理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内釜3と外釜4で構成される二重構造の釜2を備え、該内釜3と該外釜4間の密閉空間10に熱媒体22と空気100を封入し、外釜4を加熱する加熱手段5を備え、密閉空間10内を負圧にする負圧手段8を設けたことを特徴とする調理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理装置及び調理方法に関し、詳しくは内釜と外釜とを備え、内釜と外釜間の密閉された空間に熱媒体を封入し、加熱手段で外釜を加熱することにより、熱媒体を介して内釜を加熱して、内釜に投入した被調理物を加熱する調理装置及び調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調理装置として、内釜と外釜の二重構造であり、該内釜と該外釜間の空洞部に水を張り込み、該外釜の下部に設けたバーナーによって、該空洞部の水を加熱して、これにより該内釜内の煮炊物を煮炊きするものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、空洞部は密閉されているために、空洞部内の熱媒体たる水が加熱されて熱膨張することにより釜が破損するおそれがあるという問題点、更に、釜の破損により調理者が怪我、火傷を負うおそれがあり、安全性に問題があるという欠点を有していた。又、調理後に熱媒体の温度が低下して体積が収縮することによっても釜が破損するおそれがあるという問題点があった。
【0004】
そこで、外釜に安全弁を設置して、空洞部内が一定以上の圧力となったときに弁を開いて空洞部内の圧力を低下させる調理装置も提案されている。
【0005】
しかし、このような構成の調理装置は、弁から高圧、高温の熱媒体が排出され、調理者が怪我、火傷を負うおそれがあり、安全性に問題があるという欠点を有していた。又、この排出により熱媒体の温度が下がり加熱にむらが生じると共に調理時間が長くなるという欠点を有していた。更に、熱媒体が被調理物に混合するおそれもあり、使用する熱媒体によっては被調理物の安全性が確保されないという欠点を有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−61821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明は上記従来技術の問題点を解決し、内釜と外釜とを備え、内釜と外釜間の密閉された空間に熱媒体を封入し、加熱手段で外釜を加熱することにより、熱媒体を介して内釜を加熱して、内釜に投入した被調理物を加熱する調理装置及び調理方法において、釜が破損するおそれや調理者が怪我、火傷を負うおそれがなく、安全性の高い調理装置を提供することを目的とする。又、加熱にむらが生じることなく、且つ調理時間の短縮が可能な調理装置を提供することを目的とする。更に、熱媒体が被調理物に混合するおそれがなく、万が一に混入しても被調理物の安全性が確保される調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、内釜と外釜で構成される二重構造の釜を備え、該内釜と該外釜間の密閉空間に熱媒体と気体を封入し、外釜を加熱する加熱手段を備え、密閉空間内を負圧としたことを特徴とする調理装置である。
【0009】
又、上記調理装置において、前記密閉空間内を負圧にする負圧手段を設けたことを特徴とする調理装置である。
【0010】
又、上記調理装置において、熱媒体は食用油であることを特徴とする調理装置である。
【0011】
又、内釜と外釜で構成される二重構造の釜を備え、該内釜と該外釜間の密閉空間に熱媒体と気体を封入し、外釜を加熱する加熱手段を備えた調理装置を用い、密閉空間内を加熱に先立ち予め負圧にすることを特徴とする調理方法である。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本願発明によれば、釜が破損するおそれや調理者が怪我、火傷を負うおそれがなく、高い安全性を確保することが可能となった。又、加熱にむらが生じることなく、均一な加熱が可能であり且つ調理時間の短縮が可能となった。更に、熱媒体が被調理物に混合するおそれがなく被調理物の安全性を確保することが可能となった。
【0013】
特に、請求項3記載の発明によれば、万一にも漏出した熱媒体が被調理物に混入した場合であっても、被調理物の安全性を保つことをが可能となった。更に、食用油は熱媒体としてコストが低いという利点があり、又、200℃以上の高温を保つことが可能であるので、調理及び保温の効率がよくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図に従って説明する。調理装置1は上部開口の内釜3と外釜4で構成される釜2、外釜4を加熱する加熱手段5、釜2及び加熱手段5を被覆する外袴6、釜2の両側に配置され釜2を支持する支持体71,72及び内釜3と外釜4間の密閉空間10内を負圧にする負圧手段8を備えて構成されている。
【0015】
釜2は内釜3と外釜4の二重構造とし、外釜4は内釜3の胴部31及び底部32を被覆し、外釜4の上端を内釜3の上端部に固着して、夫々の胴部31,48及び底部32,49を離間させて、内釜3と外釜4間に密閉空間10を構成している。
【0016】
釜2の密閉空間10内には熱媒体22及び気体としての空気100が封入されている。外釜4には熱媒体22及び空気100の密閉空間10内への注入、排出を行う図示しないバルブを設けている。尚、一般的に熱媒体には空気等の気体も包含されるが、本願発明における熱媒体には空気等の常温時に気体のものは包含されない。又、気体は常温時に気体のものを意味し、空気100に限定されない。加熱手段5たるガスバーナーは外釜4の底部49の下方に外袴6に固定して設置し、図示しないガス供給源と電磁弁を介して配管にて接続されている。尚、加熱手段5としては図1及び2に示すようにガスバーナーを用いる他、電磁誘導加熱装置、発熱コイル、ヒーター等の公知の加熱手段を用いることが可能である。
【0017】
加熱手段5として誘導加熱コイルを用いる電磁誘導加熱装置を使用した実施形態としては、図4乃至6に示すように、外釜4の底部49の一部を下方へ突出させてタンク41を設けている。タンク41は四側面412,412…及び底面413からなる上部開口の四角柱形状であり、側面412の上部を外釜4の底部49に設けた孔48に溶着して形成し、タンク41内部は密閉空間10の一部を構成している。
【0018】
タンク41にはタンク41を水平方向に貫通する3本の円筒状の管42を設け、該管42内に加熱手段5たる誘導加熱コイルを設置している。両端開口の管42の両端縁422,422はタンク41の対向する側面412,412に設けた孔414,414に溶着され、管42は密閉空間10内に位置するが、管42の内部は密閉空間10を構成せずに、密閉空間10の外部に開放されている。管42は他の管42、タンク41の底面413及び内釜3の底部32と適宜の間隔を備えて設けている。このような構成とすることで、管42と熱媒体22の接触面積を広くすることが出来、熱媒体22ひいては被調理物の急速加熱、均一な加熱が可能となっている。
【0019】
尚、管42の設置数は3本に限定されず、1本、2本或いは4本以上を設けることとしてもよく、その形状も直線状且つ円筒状に限定されず、湾曲状、屈曲状、又、断面方形状等も採用可能である。又、管42はタンク41を貫通させず、即ち一端のみ開口させる構成としてもよく、更に、タンク41を設けずに、一端のみ開口又は両端開口の管42を密閉空間10内に挿入設置することとしてもよい。又、外釜4にはタンク41及び管42を設けずに、外釜4の外面に適宜誘導加熱コイル5を配設する構成としてもよい。
【0020】
外釜4或いは少なくとも管42又は管42の内面は加熱手段5としての誘導加熱コイルにより誘導加熱され得る適当な抵抗率を有する金属材料、例えばステンレス、鉄、銅等を用いて形成している。誘導加熱コイルは図示しない電源、後述するシーケンサ51に電気的に接続されている。
【0021】
釜2は釜2の側部を被複する円筒状の外袴6の上端部61で支持され、外袴6は対向する二個の回転軸11,11に固定され、回転軸11,11は収納部73を備える函状の支持体71,72内に設けた軸受12,12に回転自在に軸支されている。支持体71にはハンドル79が設けられ、ハンドル79の軸791に設けたウォーム66及び回転軸11に設けたウォーム歯車67により回転軸11と連結して、ハンドル79の回転により回転軸11を軸方向に回転させて釜2を回動、傾倒可能としている。回転軸11には軸方向に貫通する貫通孔111が設けられ、外袴6の該貫通孔111と対応する位置に通孔62が設けられて、外袴6内部と収納部73が連通している。
【0022】
外釜3の上部側面には吸引管82の一端を接続して密閉空間10と連通させ、吸引管82は回転軸11の貫通孔111を通り、吸引管82の他端を支持体71の収納部73内に設置した真空ポンプ81に接続し、吸引管82には密閉空間10内の圧力を計測する圧力検出手段たる圧力センサ83、密閉空間10を開閉する電磁弁84及び密閉空間10内の熱媒22が吸引管82内或いは少なくとも真空ポンプ81に進入するのを防止するフィルター85を備えて、負圧手段8を構成している。吸引管82は収納部73内の貫通孔111出口付近でスイベルジョイント89により接続されて構成され、スイベルジョイント89から外釜3までの部分を回動可能とし、釜2の回動と共に回動する構成としている。
【0023】
尚、負圧手段8を設けずに、密閉空間10に熱媒体22及び気体たる空気100を封入する際に予め密閉空間10内を負圧とすることとしてもよい。もっとも熱媒体22の膨張、収縮が繰り返されるので、密閉空間10内の負圧の程度を一定に保つ為には、使用毎の微調整が望ましいので、負圧手段8を備えることが望ましい。
【0024】
蓋13は支持体71に枢支されたアーム14に支持されて、内釜3の上部開口部を開閉自在としている。又、支持体71には釜2に給水、給湯する為の水栓15,15を設けている。
【0025】
支持体72には圧力検出手段たる圧力センサ83で検出された密閉空間10内の圧力を予め記憶された値と比較演算して電磁弁84の開閉及び真空ポンプ81の作動、加熱手段5への燃料ガスの供給、自動着火等を制御する制御手段たるシーケンサ51等が内設され、支持体72の前面には操作盤91が設けられ、該操作盤91には電磁弁84、真空ポンプ81等の電源スイッチ、圧力表示モニタ等が設けられている。
【0026】
内釜3と外釜4間の密閉空間10には熱媒体22及び空気100が封入されている。このように熱媒体22のみで密閉空間10を満たすのではなく空気100をも封入することにより、熱媒体22の熱膨張に伴う密閉空間10内の圧力を調整可能としている。熱媒体22としては、グリス等の工業油や食用油等の油や水等を用いることが出来るが、高温を保つことが容易且つ低コストで、更に、釜2の破損等による被調理物への混入時にも被調理物の安全性を保つことが可能な食用油が望ましい。又、熱媒体22の封入量は用いる熱媒体22の熱膨張率により適宜決定するが、膨張時に密閉空間10の体積以下の体積となる量とする。例えば、密閉空間10の体積が97l、熱媒体に76lを300℃まで加熱すると約97lとなる食用油を用いる場合には、熱媒体22としての該食用油を71l封入する。
【0027】
次に、本発明の調理装置1の使用、作用について説明する。密閉空間10内に熱媒体22及び空気100を封入し、負圧手段8を用いて、即ち、操作盤91を操作し、圧力センサ83で密閉空間10内の圧力を検出してシーケンサ51に出力し、該圧力の情報を入力したシーケンサ51は予め設定記憶された圧力値と比較演算して電磁弁84を開き、真空ポンプ81を作動させるよう制御する。密閉空間10内の空気は吸引管82をとおり真空ポンプ81に吸引されて、密閉空間10内を負圧とする。
【0028】
予め設定された圧力値まで負圧になると、シーケンサ51の制御により電磁弁84を閉じると共に、真空ポンプ81を停止させる。この後に内釜3内に被調理物を投入し、操作盤91を操作し、シーケンサ51の制御により加熱手段5への燃料ガスの供給、自動着火等を行い加熱手段5により外釜4を加熱する。加熱手段5として誘導加熱コイルを用いる場合には、誘導加熱コイルにより外釜4の一部である管42を誘導加熱する。そして、順次熱交換が行われ、外釜4は熱媒体22を加熱し、熱媒体22は内釜3を加熱することにより、内釜3内に投入された被調理物を加熱し、調理する。
【0029】
このように加熱時に密閉空間10から圧を逃がすことがないので、気化した熱媒体22の排出による調理者の怪我、火傷の心配、被調理物への熱媒の混入がなく、高い安全性を備えることとなると共に、急速な加熱が出来、しかも被調理物の均一な加熱が可能となっている。
【0030】
加熱された熱媒体22は熱膨張するが、密閉空間10内が負圧となっているので、密閉空間10内の圧力の上昇を抑制することが出来、内釜3及び外釜4の損傷を防止することが出来る。
【0031】
調理が終了しガスの供給を停止しても熱媒体22の温度は急激には低下しないので、被調理物を長時間に亘って保温することが可能である。
【0032】
その後熱媒体22の温度は徐々に低下し、熱媒体22は収縮するが、熱媒体22の膨張により収縮した空気100が膨張するので、密閉空間10内の圧力の変動を抑制することが出来る。このように負圧状態の空気100が熱媒体22の膨張、収縮による密閉空間10内の圧の変動を吸収し、釜2の損傷を防止している。
【0033】
次に本調理装置1を使用する前に上記と同様に密閉空間10内を負圧として、調理を開始する。負圧にするのは、直前の調理が終り、熱媒体22が略常温時の体積に戻った時に行うことにより、次回の調理に於いて負圧にする作業時間の短縮を図れるので、望ましい。このように調理毎に負圧手段8を用いて密閉空間10内の圧力を調整して負圧とすることが望ましいが、必ずしも調理毎に行わなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明一実施例側面図
【図2】本発明一実施例平面図
【図3】本発明一実施例支持体部分側面図
【図4】本発明他実施例側面図
【図5】本発明他実施例平面図
【図6】本発明他実施例釜部分側面図
【符号の説明】
【0035】
1 調理装置
2 釜
3 内釜
4 外釜
41 タンク
42 管
5 加熱手段
51 シーケンサ
6 外袴
71 支持体
72 支持体
8 負圧手段
81 真空ポンプ
82 吸引管
83 圧力センサ
84 電磁弁
85 フィルター
91 操作盤
10 密閉空間
11 回転軸
13 蓋
22 熱媒体
100 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内釜と外釜で構成される二重構造の釜を備え、該内釜と該外釜間の密閉空間に熱媒体と気体を封入し、外釜を加熱する加熱手段を備え、密閉空間内を負圧としたことを特徴とする調理装置。
【請求項2】
前記密閉空間内を負圧にする負圧手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
熱媒体は食用油であることを特徴とする請求項1又は2記載の調理装置。
【請求項4】
内釜と外釜で構成される二重構造の釜を備え、該内釜と該外釜間の密閉空間に熱媒体と気体を封入し、外釜を加熱する加熱手段を備えた調理装置を用い、密閉空間内を加熱に先立ち予め負圧にすることを特徴とする調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−239316(P2006−239316A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62934(P2005−62934)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】