説明

負荷駆動回路

【課題】簡易な構成で、直流電源の出力電圧の変動による半導体素子の導通を防止して、意図しない負荷電流による誤動作を防止する負荷駆動回路を提供する。
【解決手段】電源2から負荷1への電力供給経路に直列に接続されオン/オフ動作により負荷1に流れる電流を制御する半導体素子3を有する負荷駆動回路において、半導体素子3のオン/オフを制御する制御部4と、電源2の出力電圧の変動を検出して検出信号を生成する電圧変動検出部5と、電圧変動検出部5により生成された検出信号が入力された場合に、電源2の出力電圧の変動により半導体素子3がオンする前に半導体素子3を強制的にオフさせる遮断部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電流を流すための負荷駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FET(Field Effect Transistor)等の半導体素子を用いて電流を流すことによって負荷を駆動させる負荷駆動回路は、様々な分野で利用されている。1例として、励磁コイルに電圧を印加して磁気力によって可動鉄心に直接直線的な運動を与えるリニアソレノイドは、負荷駆動回路により出力された制御電流に応じて油圧をリニアに制御することができ、カーエレクトロニクス等の分野で多用されている。
【0003】
図6は、従来から用いられている一般的な負荷駆動回路の構成を示すブロック図であり、非特許文献1等に記載されているこの負荷駆動回路は、負荷1、電源2、半導体素子3、及び制御部4で構成されている。
【0004】
制御部4は、例えばチャージポンプであり、信号端子101に印加された電圧を昇圧して、電源2の出力電圧以上の電圧を半導体素子3のゲートに印加し、半導体素子3のオン/オフを制御する。図6に示す従来例において、半導体素子3は、ハイサイドスイッチとして使用される。したがって、制御部4は、半導体素子3をオンにするために必要不可欠な構成であり、電源2の出力電圧よりも高い電圧を半導体素子3のゲートに出力して制御を行う。
【0005】
半導体素子3は、一般的にFETが使用され、電源2から負荷1への電力供給経路に直列に接続され、オン/オフ動作により負荷1に流れる電流を制御する。なお、半導体素子3は、バイポーラトランジスタでもよい。
【0006】
次に、従来の負荷駆動回路の動作を説明する。図7は、図6に示す従来の負荷駆動回路の動作タイムチャート図である。図7中に記載された(A)〜(D)の記号は、図6に記載された(A)〜(D)の位置の電圧に対応している。まず、電源2の電圧(A)が立ち上がった状態において信号端子101の印加電圧(B)がオンになると(時刻t)、制御部4は、信号端子101から入力された印加電圧(B)を昇圧して、半導体素子3のゲートに入力する。半導体素子3は、自己のゲート電圧(C)が制御部4により電源2の出力電圧(A)以上に昇圧され、導通(オン)する。半導体素子3が導通状態になることにより、半導体素子3のソース電圧(D)が上昇し始め、電源2から負荷1に電流が流れる。
【0007】
信号端子101の印加電圧がオフである場合には、制御部4は、半導体素子3を遮断(オフ)させる。したがって、半導体素子3は、負荷1に電流を供給せず、ソース電圧(D)も上昇しない。
【0008】
図8は、半導体素子3に使用されているFETの一般的な等価回路である。このFETは、ドレイン1001、ゲート1002、及びソース1003を有し、ゲート・ソース間電圧VGSが所定の値以上になると、ドレイン1001からソース1003に電流を流す。また、このFETの各端子間には、寄生容量CGD1004、CGS1005、及びCDS1006が存在する。
【0009】
信号端子101に印加される電圧がオンである場合には、制御部4は、半導体素子3のゲート1002に電流を流すことにより、ゲート1002の電位をソース1003よりも高くする。このため、半導体素子3は、負荷1に電流を供給する。
【0010】
また、特許文献1には、容量性負荷の電源電圧変動に起因する不所望な状態を回避する負荷駆動回路が記載されている。この負荷駆動回路は、例えばインクジェットヘッドにおける圧電素子の駆動回路として用いられる。圧電素子は、容量性負荷であり、電圧を印加されることによりノズル孔からインクを吐出する。しかしながら、この圧電素子を利用したインクジェットプリンタは、電源ラインの電圧変動が生じた場合に駆動中の容量性負荷の端子にノイズが発生することにより、インク吐出状態から突然インク吸引状態になることが考えられ、印字精度の劣化を招くおそれがある。そこで、特許文献1記載の負荷駆動回路は、容量性負荷を駆動させるための駆動素子と、容量性負荷の端子電圧と電源電圧とを比較することによって電源電圧の変動を検出するとともに、その検出結果に応じて駆動素子を非導通状態にするための制御論理とを備える。
【0011】
この制御論理は、例えば充電側において、圧電素子の端子電圧と電源電圧とを比較するためのコンパレータと、このコンパレータの出力信号と充電側コントローラからの信号とのオア論理を得るオアゲートを有し、圧電素子の端子電圧が電源電圧を上回る場合に、駆動素子を非導通状態にする。したがって、特許文献1記載の負荷駆動回路は、電源電圧が変動された場合に駆動素子が非導通状態とされることによって容量性負荷の駆動が停止されるため、容量性負荷の電源電圧変動に起因する不所望な状態を回避することができる。
【特許文献1】特開2004−82596号公報
【非特許文献1】B.Murari,et.al.,“Smart Power ICs”, Advanced Microelectronics.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図6に示す従来の負荷駆動回路は、以下のような問題点がある。図9は、図6に示す従来の負荷駆動回路における電源電圧変動時の動作タイムチャートである。図9に示すように、時刻tにおいて電源2の電圧(A)がノイズ等により上昇変動した場合には、信号端子101の印加電圧(B)がオフ(0V)の状態であっても、半導体素子3は、ゲート・ドレイン間の寄生容量CGD1004を介して電源2からゲート1002に電流を流す。その結果、半導体素子3は、ゲート電圧(C)の上昇により導通状態になるという誤動作を起こし、半導体素子3のソース電圧(D)が上昇して負荷1に電流を流してしまう。
【0013】
また、電源2の電圧(A)は、ノイズのみならず、例えば電源2に対して他に接続された機器や回路等がある場合に、それらの機器がオンオフして電流量が急変した際に回路の配線が持つインダクタンスや抵抗に起因して電圧変動が生じることも考えられるため、その対策は必要である。
【0014】
特許文献1に記載された負荷駆動回路は、容量性負荷の端子電圧と電源電圧とを比較することによって電源電圧の変動を検出するので、その検出精度は、容量性負荷の端子電圧に左右される。しかしながら、図6に示す負荷駆動回路の負荷1に上述したようなリニアソレノイド等のコイルを想定している場合、電源2の電圧変動は、必ずしも負荷1の端子電圧が電源2の電圧以上の値になることを意味するものではないため、その検出方法は使用できない。さらに半導体素子3のソース電圧(負荷1の端子電圧)が上昇するのを待って電源2の電圧変動を検出した場合、既に負荷1に電流が流れて、負荷1に用いられる機器は誤動作を起こしていることも考えられる。また、コンパレータやOR回路等を必要とするため、回路の複雑化や高コストといった問題も生じる。
【0015】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、簡易な構成で、直流電源の出力電圧の変動による半導体素子の導通を防止して、意図しない負荷電流による誤動作を防止する負荷駆動回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る負荷駆動回路は、上記課題を解決するために、直流電源から負荷への電力供給経路に直列に接続されオン/オフ動作により負荷に流れる電流を制御する第1半導体素子を有する負荷駆動回路において、前記第1半導体素子のオン/オフを制御する制御部と、前記直流電源の出力電圧の変動を検出して検出信号を生成する検出部と、前記検出部により生成された検出信号が入力された場合に、前記直流電源の出力電圧の変動により前記第1半導体素子がオンする前に前記第1半導体素子を強制的にオフさせる遮断部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で、直流電源の出力電圧の変動による半導体素子の導通を防止して、意図しない負荷電流による誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の負荷駆動回路の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。また図2は、図1に示す負荷駆動回路の電圧変動検出部5及び遮断部6の詳細な構成を示すブロック図である。
【0020】
まず、本実施の形態の構成を説明する。本実施例の負荷駆動回路は、図1に示すように、電源2、半導体素子3、制御部4、電圧変動検出部5、及び遮断部6で構成され、負荷1を駆動する。
【0021】
半導体素子3は、本発明の第1半導体素子に対応し、直流電源である電源2から負荷への電力供給経路に直列に接続されオン/オフ動作により負荷1に流れる電流を制御する。
【0022】
制御部4は、図6で説明した従来の負荷駆動回路における制御部4と同様であり、信号端子101に対する印加電圧に応じて、半導体素子3のオン/オフを制御する。
【0023】
電圧変動検出部5は、本発明の検出部に対応し、電源2の出力電圧の変動を検出して検出信号を生成し、遮断部6に対して出力する。また、電圧変動検出部5は、信号端子101に対する印加電圧に応じて、制御部4が半導体素子3に対してオフ制御を行っている場合にのみ検出信号を生成する。すなわち、信号端子101に対する印加電圧がオンである場合には、電圧変動検出部5は、電源2の出力電圧が変動しても、検出信号を生成しない。
【0024】
遮断部6は、電圧変動検出部5により生成された検出信号が入力された場合に、電源2の出力電圧の変動により半導体素子3がオンする前に、半導体素子3を強制的にオフさせる。
【0025】
図2の電圧変動検出部5a及び遮断部6aは、図1における電圧変動検出部5及び遮断部6の具体的な回路図を示す。
【0026】
電圧変動検出部5aは、電源2の出力端子とグランドとの間にコンデンサ7と抵抗8とを直列に接続した直列回路からなり、電源2の出力電圧の変動に基づいて抵抗8の両端に生じる電圧を検出信号とする。コンデンサ7は、電源2の電圧が変動したときに電流を流す。抵抗8は、コンデンサ7に流れた電流を電圧に変換する。また、電圧変動検出部5aは、抵抗8に並列に接続され制御部4が半導体素子3に対してオン制御を行っている場合にオンする第1トランジスタ9を備える。この第1トランジスタ9は、信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合に導通して、抵抗8の両端に電位差を発生させない。
【0027】
遮断部6aは、半導体素子3の制御端子とグランドとの間に接続された第2トランジスタ10からなり、電圧変動検出部5aにより生成された検出信号に応じて第2トランジスタ10をオンさせる。
【0028】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。まず、制御部4は、信号端子101の印加電圧に応じて、半導体素子3のオン/オフ(導通/遮断)を制御する。信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合には、制御部4が半導体素子3をオンさせるので、半導体素子3は、電源2から負荷1に電流を流す。
【0029】
信号端子101の印加電圧がオフ(0V)の場合には、制御部4が半導体素子3をオフ(遮断)させるので、半導体素子3は、電源2から負荷1に電流を流さない。この際、電源2の電圧が変動すると、電圧変動検出部5は、電源2の出力電圧の変動を検出して、検出信号を遮断部6に出力する。具体的には、電源2の電圧が時間的に変動すると、コンデンサ7は、過渡的に電流を流す。コンデンサ7に流れた電流は、抵抗8に流れることにより抵抗8の両端に電圧を生じさせる。この際、第1トランジスタ9は、信号端子101の印加電圧がオフ(0V)であるため、遮断されている。抵抗8の両端に生じた電圧(電位差)は、検出信号として遮断部6に入力される。
【0030】
遮断部6は、電圧変動検出部5により生成された検出信号が入力された場合に、電源2の出力電圧の変動により半導体素子3がオンする前に、半導体素子3を強制的にオフさせる。具体的には、遮断部6を構成する第2トランジスタ10は、抵抗8の両端に生じた電位差により導通状態になる。したがって、第2トランジスタ10は、半導体素子3の制御端子(図8におけるゲート1002)の電位を下げる。これにより、半導体素子3は、電圧変動により電源2からゲート・ドレイン間の寄生容量(図8におけるCGD1004)を介してゲート1002に電流が流れた場合でも、ゲート1002の電圧が上昇しないため、遮断状態を維持し、負荷1に電流を流さない。
【0031】
なお、半導体素子3が導通する前に第2トランジスタ10をオンして負荷電流が負荷1に流れるのを防ぐため、設計者は、コンデンサ7の容量やチップサイズ、他の部品が持つ寄生容量等との兼ね合いを考慮して、最適な容量のコンデンサ7を選択して実装し、第2トランジスタ10の反応速度を調整する必要がある。
【0032】
一方、信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合には、半導体素子3は、負荷1に電流を流している状態である。この場合において、電源2の出力電圧が変動しても、半導体素子3は負荷1に電流を流し続ける必要があるため、電圧変動検出部5aは、検出信号を遮断部6aに出力しない。具体的に言うと、信号端子101の印加電圧がオンである場合には、第1トランジスタ9は導通状態になる。したがって、電源2の出力電圧が時間的に変動することによりコンデンサ7が過渡的に電流を流しても、抵抗8は、両端に検出信号たる電位差を生じない。それ故、電圧変動検出部5aは検出信号を出力しないので、第2トランジスタ10は遮断状態を維持する。その結果、半導体素子3は、遮断部6により強制的にオフにされることなく、信号端子101の印加電圧がオンである間に、負荷1に電流を流し続ける。
【0033】
図3は、本実施例の形態の負荷駆動回路の動作タイムチャート図である。図3の動作タイムチャート図中の記号(A)〜(E)は、図1に記載の(A)〜(E)点の電圧に対応している。図3に示すように、信号端子101の印加電圧(B)が0Vの状態において、電源2の電圧(A)が変動すると(時刻t)、電圧変動検出部5は、その電圧変動を検出し、オンレベルの電圧(検出信号)を出力する(電圧(E))。遮断部6は、入力された電圧変動検出部5の出力電圧(E)に基づき、検出信号が入力された場合に、半導体素子3のゲート電圧(C)の上昇を妨げる。したがって、半導体素子3のゲート電圧(C)は上昇しないので、半導体3は、遮断状態を維持し、半導体素子3のソース電圧(D)を上昇させず、結果として負荷1に電流を流さない。すなわち、信号端子101の印加電圧がオフの場合には、電源2の出力電圧が変動したとしても、半導体素子3は、誤ってオンすることはなく、負荷1に電流を流さない。
【0034】
もちろん、図3に示すように、電源2の電圧(A)が立ち上がった状態で信号端子101の印加電圧(B)がオン(数V)になった場合には、通常通り、半導体素子3のゲート電圧(C)が上昇するので、半導体素子3は導通状態となる。それ故、半導体素子3のソース電圧(D)は上昇し、半導体素子3は、負荷1に電流を流す。なお、この場合において、電源2の電圧(A)が変動したとしても、電圧変動検出部5は、電圧の変動を検出せず、出力電圧(E)はオフレベルのままである。
【0035】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る負荷駆動回路によれば、簡易な構成で、直流電源である電源2の出力電圧の変動による半導体素子3の導通を防止して、意図しない負荷電流が負荷1に流れることによる誤動作を防止することができる。
【0036】
また、遮断部6を構成する第2トランジスタ10は、電圧変動検出部5が電源2の電圧変動を検出した場合に、半導体素子3がオンする前に半導体素子3を強制的にオフさせるので、半導体素子3がわずかの時間でも導通状態になり負荷1に電流を流すのを防ぐことができる。
【0037】
また、電圧変動検出部5及び遮断部6は、第1トランジスタ9、第2トランジスタ10、コンデンサ7、及び抵抗8により構成されるので、簡易な構成で実現することができ、低コストであるという利点もある。
【0038】
さらに、第1トランジスタ9を備えているので、電圧変動検出部5aは、信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合、すなわち制御部4が半導体素子3に対してオン制御を行っている場合に、検出信号を生成しない。したがって、半導体素子3をオンにして負荷1に電流を流している間に電源2の電圧が変動した場合でも、電圧変動の検出による負荷電流の遮断を行うことなく、安定した動作を継続することができる。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の実施例2の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。実施例1の構成と異なる点は、電圧変動検出部5bにおいて、コンデンサ7の代わりに半導体素子12が備えられている点である。
【0040】
半導体素子12は、本発明の第2半導体素子に対応し、電源2の出力端子と抵抗8との間に直列に接続されている。この半導体素子12は、例えば半導体素子3と同じ形状のFETでもよく、またバイポーラトランジスタを用いてもよい。本実施例においては、半導体素子12は、FETであるものとする。
【0041】
また、半導体素子12のゲートは、半導体素子12自身のソースに接続されている。そのため、本実施例において半導体素子12は、ゲート電圧の上昇に基づく導通状態になることはない。
【0042】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0043】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的な動作は実施例1の負荷駆動回路と同じである。ただし、本実施例において、半導体素子12の寄生容量は、実施例1におけるコンデンサ7の役割を担う。
【0044】
図8で説明したように、半導体素子12は、ドレイン1001とゲート1002との間に寄生容量であるCGD1004を有する。したがって、電源2の電圧が時間的に変動すると、半導体素子12の寄生容量CGD1004は、過渡的に電流を流す。寄生容量CGD1004に流れた電流は、ゲート1002からソース1003に流れ込み、その後、抵抗8に流れることにより抵抗8の両端に電圧を生じさせる。なお、電源2の電圧が時間的に変動した際に、半導体素子12の寄生容量CGD1004のみならず、寄生容量CDS1006も過渡的に電流を流す。しかしながら、一般的にFETの寄生容量は、CDS1006よりCGD1004の方が非常に大きいため、寄生容量CGD1004の流す電流が支配的になる。したがって、設計者は、寄生容量CGD1004の容量を考慮に入れて半導体素子12を選択して実装し、第2トランジスタ10の反応速度を調整する必要がある。
【0045】
その他の動作は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0046】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る負荷駆動回路によれば、実施例1の効果に加え、新たにコンデンサ7を用意して実装しなくても、同じ材料からチップ面積を変えて半導体素子3及び半導体素子12を製造することにより本発明を実現することができるので、コストの削減を図ることができる。
【実施例3】
【0047】
図5は、本発明の実施例3の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。実施例2の構成と異なる点は、信号端子101の代わりに制御部4の出力端子が第1トランジスタ9の制御端子に接続されている点と、抵抗8の一端、第1トランジスタ9のソース側、及び第2トランジスタ10のソース側がグランドの代わりに負荷1の一端(半導体素子3のソース側)に接続されている点である。
【0048】
制御部4は、信号端子101に対する印加電圧に応じて、半導体素子3及び第1トランジスタ9のオン/オフを制御する。
【0049】
電圧変動検出部5cは、電源2の出力電圧の変動を検出して検出信号を生成し、遮断部6cに対して出力する。また、電圧変動検出部5cは、信号端子101に対する印加電圧に応じて、制御部4が半導体素子3に対してオフ制御を行っている場合にのみ検出信号を生成する。
【0050】
電圧変動検出部5cは、電源2の出力端子と負荷1との間に半導体素子12と抵抗8とを直列に接続した直列回路からなり、電源2の出力電圧の変動に基づいて抵抗8の両端に生じる電圧を検出信号とする。半導体素子12の寄生容量は、本発明のコンデンサに対応し、電源2の電圧が変動したときに電流を流す。抵抗8は、半導体素子12の寄生容量に流れた電流を電圧に変換する。また、電圧変動検出部5cは、実施例2と同様に、抵抗8に並列に接続され制御部4が半導体素子3に対してオン制御を行っている場合にオンする第1トランジスタ9を備える。この第1トランジスタ9は、信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合に、制御部4により制御されて導通し、抵抗8の両端に電位差を発生させない。なお、第1トランジスタ9をオン(導通)させるために、第1トランジスタ9の制御端子(ゲート)は、半導体素子3のソース電圧よりも高い電圧を有する半導体素子3のゲートに接続されている。
【0051】
遮断部6cは、半導体素子3の制御端子と負荷1との間に接続された第2トランジスタ10からなり、電圧変動検出部5cにより生成された検出信号に応じて第2トランジスタ10をオンさせる。
【0052】
その他の構成は、実施例2と同様であり、重複した説明を省略する。
【0053】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的な動作は実施例2の負荷駆動回路と同じである。まず、制御部4は、信号端子101の印加電圧に応じて、半導体素子3及び第1トランジスタ9のオン/オフ(導通/遮断)を制御する。信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合には、制御部4が半導体素子3をオンさせるので、半導体素子3は、電源2から負荷1に電流を流す。
【0054】
信号端子101の印加電圧がオフ(0V)の場合には、制御部4が半導体素子3及び第1トランジスタ9をオフ(遮断)させるので、半導体素子3は、電源2から負荷1に電流を流さない。この際、電源2の電圧が変動すると、電圧変動検出部5cは、電源2の出力電圧の変動を検出して、検出信号を遮断部6cに出力する。具体的には、電源2の電圧が時間的に変動すると、半導体素子12のゲート・ドレイン間の寄生容量は、過渡的に電流を流す。半導体素子12の寄生容量に流れた電流は、抵抗8に流れることにより抵抗8の両端に電圧を生じさせる。この際、第1トランジスタ9は、上述したように遮断されている。抵抗8の両端に生じた電圧(電位差)は、検出信号として遮断部6cに入力される。
【0055】
遮断部6cは、電圧変動検出部5cにより生成された検出信号が入力された場合に、電源2の出力電圧の変動により半導体素子3がオンする前に、半導体素子3を強制的にオフさせる。具体的には、遮断部6cを構成する第2トランジスタ10は、抵抗8の両端に生じた電位差により導通状態になる。したがって、第2トランジスタ10は、半導体素子3の制御端子の電位(ゲート電圧)とソース電圧とを同電位にする。これにより、半導体素子3は、電圧変動により電源2からゲート・ドレイン間の寄生容量を介してゲート1002に電流が流れた場合でも、ゲート1002の電圧が上昇しないため、遮断状態を維持し、負荷1に電流を流さない。
【0056】
一方、信号端子101の印加電圧がオン(数V)である場合には、制御部4は、半導体素子3及び第1トランジスタ9のゲート電圧を電源2の出力電圧以上に昇圧し、半導体素子3及び第1トランジスタ9をオン(導通)させる。したがって、半導体素子3は、負荷1に電流を流している状態である。この場合において、電源2の出力電圧が変動しても、半導体素子3は負荷1に電流を流し続ける必要があるため、電圧変動検出部5cは、検出信号を遮断部6cに出力しない。具体的に言うと、第1トランジスタ9が上述したように導通状態であるため、電源2の出力電圧が時間的に変動することにより半導体素子12の寄生容量が過渡的に電流を流しても、当該電流は瞬時に第1トランジスタ9を介して半導体素子3のソース端子に流れるため、抵抗8は、両端に検出信号たる電位差を生じない。ここで、第2トランジスタ10のゲート電圧は、半導体素子3のソース電圧と同電位である。それ故、電圧変動検出部5cは検出信号を出力しないので、第2トランジスタ10は遮断状態を維持する。その結果、半導体素子3は、遮断部6cにより強制的にオフにされることなく、信号端子101の印加電圧がオンである間に、負荷1に電流を流し続ける。
【0057】
その他の動作は、実施例2と同様であり、重複した説明を省略する。
【0058】
上述のとおり、本発明の実施例3の形態に係る負荷駆動回路によれば、実施例1及び2の効果に加え、電圧変動検出部5c及び遮断部6cに流れる電流をグランドの代わりに負荷1に流すので、電圧変動検出部5c及び遮断部6cに使用されるFET(又はトランジスタ)に耐圧の低い素子を使用することができ、コストを抑えることができる。
【0059】
なお、電圧変動検出部5cや遮断部6cを介して負荷1に流れる電流は、非常に微量であるため、負荷1の動作に影響を与えることはない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る負荷駆動回路は、制御電流に応じて油圧をリニアに制御するリニアソレノイドを駆動する負荷駆動回路に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例1の形態の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の負荷駆動回路の電圧変動検出部及び遮断部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の形態の負荷駆動回路の動作タイムチャート図である。
【図4】本発明の実施例2の形態の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例3の形態の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の負荷駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図7】従来の負荷駆動回路の動作タイムチャート図である。
【図8】従来の負荷駆動回路の半導体素子として用いられるFETの一般的な等価回路図である。
【図9】従来の負荷駆動回路における電源電圧変動時の動作タイムチャート図である。
【符号の説明】
【0062】
1 負荷
2 電源
3 半導体素子
4 制御部
5,5a,5b,5c 電圧変動検出部
6,6a,6b,6c 遮断部
7 コンデンサ
8 抵抗
9 第1トランジスタ
10 第2トランジスタ
12 半導体素子
101 信号端子
1001 ドレイン
1002 ゲート
1003 ソース
1004 CGD
1005 CGS
1006 CDS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から負荷への電力供給経路に直列に接続されオン/オフ動作により負荷に流れる電流を制御する第1半導体素子を有する負荷駆動回路において、
前記第1半導体素子のオン/オフを制御する制御部と、
前記直流電源の出力電圧の変動を検出して検出信号を生成する検出部と、
前記検出部により生成された検出信号が入力された場合に、前記直流電源の出力電圧の変動により前記第1半導体素子がオンする前に前記第1半導体素子を強制的にオフさせる遮断部と、
を備えることを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項2】
前記検出部は、前記制御部が前記第1半導体素子に対してオフ制御を行っている場合にのみ検出信号を生成することを特徴とする請求項1記載の負荷駆動回路。
【請求項3】
前記検出部は、前記直流電源の出力端子とグランド又は前記負荷との間にコンデンサと抵抗とを直列に接続した直列回路からなり、前記直流電源の出力電圧の変動に基づいて前記抵抗の両端に生じる電圧を前記検出信号とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の負荷駆動回路。
【請求項4】
前記コンデンサは、前記直流電源の出力端子と前記抵抗との間に直列に接続された第2半導体素子の寄生容量からなることを特徴とする請求項3記載の負荷駆動回路。
【請求項5】
前記検出部は、前記抵抗に並列に接続され前記制御部が前記第1半導体素子に対してオン制御を行っている場合にオンする第1トランジスタを備えることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の負荷駆動回路。
【請求項6】
前記遮断部は、前記第1半導体素子の制御端子とグランド又は前記負荷との間に接続された第2トランジスタからなり、前記検出部により生成された検出信号に応じて前記第2トランジスタをオンさせることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の負荷駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55078(P2009−55078A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216958(P2007−216958)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】