説明

走査型共焦点顕微鏡

【課題】広い波長域で高い光の利用効率を有する、分光検出機能を備えた共焦点顕微鏡を提供する。
【解決手段】標本を走査するガルバノミラー5を備えた共焦点走査型顕微鏡100は、VPHグレーティング1を利用して標本からの光を分光し、光検出器13で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型共焦点顕微鏡に関し、特に、分光検出機能を有する走査型共焦点顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分光検出機能を備えた走査型共焦点顕微鏡が開発され、利用されるに至っている。このような顕微鏡は、例えば、特許文献1に開示されている。
分光検出機能を備えた走査型共焦点顕微鏡の多くは蛍光観察に用いられるが、通常、蛍光は微弱であり、単位時間当たりに得られる蛍光の光量は少ない。また、走査型共焦点顕微鏡の場合、標本を高速に走査するため、標本上の各点を励起する時間も短い。このため、明るい画像を得るためには、発生量が限られる蛍光を効率良く光検出器に導くことが求められる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、現在利用されている分光検出機能を備えた走査型共焦点顕微鏡は、分光手段として反射型回折格子を利用しているため、広い波長域で高い回折効率を得ることができない。これは、反射型回折格子は、一般に、表面のレリーフ構造を利用して回折光を得る表面レリーフ回折格子であり、表面レリーフ回折格子の回折効率は、最大でも70%程度であるからである。
分光手段は、一般に、光量の損失が大きな光学素子であるため、分光検出機能を備えた走査型共焦点顕微鏡では、分光手段で生じる光量損失を抑制することが、光の利用効率の改善に効果的である。
【0004】
分光手段で生じる光量損失を抑制する技術は、例えば、特許文献2で開示されている。特許文献2では、分光手段である反射型回折格子の偏光依存性に着目し、入射光をより高い回折効率を示すS偏光に変換してから入射させることで、分光手段で生じる光量損失を抑制する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2に開示される技術を用いることで、分光検出機能を備えた走査型共焦点顕微鏡における、光の利用効率を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−010944号公報
【特許文献2】特開2006−153587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示される技術では、回折効率が改善して反射型回折格子自体で生じる光量損失は抑制されるが、反射型回折格子の前後の光学系が複雑化してしまう。また、複雑化した光学系で光量の損失が生じてしまう。
【0008】
例えば、入射光はP偏光とS偏光に分割されて、それぞれ異なる光路を通って反射型回折格子に導かれる。このため、入射光をP偏光とS偏光に分割する偏光ビームスプリッタが用いられるが、その偏光ビームスプリッタで光量の損失が生じてしまう。また、P偏光をS偏光に変換するために偏光を回転させる波長板が用いられるが、その波長板でも光量の損失が生じてしまう。
【0009】
このため、反射型回折格子自体の回折効率が改善されても、走査型共焦点顕微鏡全体として光の利用効率が十分に改善されない。
以上のような実情を踏まえ、本発明では、広い波長域で高い光の利用効率を有する、分光検出機能を備えた共焦点顕微鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、標本を走査する走査手段を備えた走査型共焦点顕微鏡であって、標本からの光を分光する透過型のVPHグレーティングと、VPHグレーティングで回折された光を検出する光検出器と、を含む走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングに入射する光の光軸とVPHグレーティングの屈折率が周期的に変化する屈折率分布方向とのなす角を変更する入射角変更手段を含む走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと光検出器の間に、光を光検出器に集光させる集光光学系を含み、光検出器は、複数の受光素子が1次元に配列されたマルチチャンネル検出器である走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、入射角変更手段は、VPHグレーティングを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0014】
本発明の第5の態様は、第3の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、走査手段とVPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、入射角変更手段は、第1のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0015】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと集光光学系の間に配置される第2のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第2のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、第1のミラー及び第2のミラーは、同方向に同じ回転角だけ回転する走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0017】
本発明の第8の態様は、第3の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、光検出器で検出される光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段を含む走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0018】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、走査型共焦点顕微鏡は、標本と光検出器の間の検出光路で生じる波長分散量の異なる複数の状態を有し、帯域幅変更手段は、複数の状態を切り替える走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0019】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、VPHグレーティングと光検出器の間に、選択的に使用される、焦点距離の異なる複数の集光光学系を含み、帯域幅変更手段は、光が入射する集光光学系を変更する走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0020】
本発明の第11の態様は、第9の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、集光光学系は、複数の光学素子を含む、合成焦点距離の可変な変倍光学系であり、帯域幅変更手段は、変倍光学系の合成焦点距離を変更する走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0021】
本発明の第12の態様は、第9の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、標本からの光を分光する、格子周波数の異なる透過型の複数のVPHグレーティングを含み、帯域幅変更手段は、検出光路中に、複数のVPHグレーティングのうちの一つを選択的に配置する走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0022】
本発明の第13の態様は、第9の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、入射角変更手段は、VPHグレーティングを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0023】
本発明の第14の態様は、第13の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、走査手段とVPHグレーティングの間に配置される第1のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第1のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0024】
本発明の第15の態様は、第13の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと集光光学系の間に配置される第2のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第2のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0025】
本発明の第16の態様は、第9の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、走査手段とVPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、入射角変更手段は、第1のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0026】
本発明の第17の態様は、第16の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと集光光学系の間に配置される第2のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第2のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0027】
本発明の第18の態様は、第2の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと光検出器の間に、光を光検出器に集光させる集光光学系と、光検出器と集光光学系の間に、光検出器で検出される光の波長帯域の幅を制限する絞り手段と、を含み、光検出器は、単一の受光素子を含むシングルチャンネル検出器である走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0028】
本発明の第19の態様は、第18の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、入射角変更手段は、VPHグレーティングを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0029】
本発明の第20の態様は、第19の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、光検出器及び絞り手段を、光検出器の受光面と平行に移動させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0030】
本発明の第21の態様は、第19の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、走査手段とVPHグレーティングの間に配置される第1のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第1のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0031】
本発明の第22の態様は、第19の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと集光光学系の間に配置される第2のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第2のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0032】
本発明の第23の態様は、第18の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、走査手段とVPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、入射角変更手段は、第1のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0033】
本発明の第24の態様は、第23の態様に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、VPHグレーティングと集光光学系の間に配置される第2のミラーと、光検出器で検出される光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、検出波長帯域シフト手段は、第2のミラーを、光軸及び屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0034】
本発明の第25の態様は、第18の態様乃至第24の態様のいずれか1つに記載の走査型共焦点顕微鏡において、絞り手段の開口部の幅は、可変である走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【0035】
本発明の第26の態様は、第18の態様乃至第25の態様のいずれか1つに記載の走査型共焦点顕微鏡において、走査手段とVPHグレーティングの間に、光を分割する光路分割手段と、光路分割手段により分割された光の各々の光路上に、VPHグレーティング、集光光学系、絞り手段、及び光検出器と、を含む走査型共焦点顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、広い波長域で高い光の利用効率を有する、分光検出機能を備えた共焦点顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1に係る走査型共焦点顕微鏡に含まれるVPHグレーティングの作用について説明するための図である。
【図2】図1に例示されるVPHグレーティングの回折効率について説明するための図である。
【図3】VPHグレーティングを含む透過型回折格子の回折について説明するための図である。
【図4】実施例1に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図5】実施例2に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図6】図2に例示される走査型共焦点顕微鏡に含まれるミラーの動作について説明するための図である。
【図7A】実施例3に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図7B】実施例3に係る走査型共焦点顕微鏡の構成の変形例を例示した概略図である。
【図7C】実施例3に係る走査型共焦点顕微鏡の構成の他の変形例を例示した概略図である。
【図7D】実施例3に係る走査型共焦点顕微鏡の構成の更に他の変形例を例示した概略図である。
【図8】実施例4に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図9】実施例5に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図10】実施例6に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図11】実施例7に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図12】実施例8に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【図13】実施例9に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0038】
まず、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡について説明する前に、図1及び図2を参照しながら、共焦点走査型顕微鏡に含まれるVPHグレーティング1について説明する。
図1は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡に含まれる体積ホログラム(Volume Phase Holographic)グレーティング(以降、VPHグレーティングと記す。)の作用について説明するための図である。図2は、図1に例示されるVPHグレーティングの回折特性を例示した図である。図2の縦軸は、回折効率(DE:diffraction efficiency)(%)を示し、横軸は、波長(nm)を示している。また、図2に例示される特性Crは、従来技術に係る表面レリーフ回折格子の回折特性を示し、特性Ca、特性Cb、特性Ccは、それぞれ、図1(a)、図1(b)、図1(c)に例示される本実施例に係るVPHグレーティング1の回折特性を示している。
【0039】
図1に例示されるVPHグレーティング1は、主直線PLに沿って屈折率が周期的に変化するVPH層を含んでいる。以降では、屈折率が周期的に変化する主直線PLと平行な方向を屈折率分布方向と記す。VPHグレーティング1は、入射光ILと平行な方向に0次回折光L0を射出し、0次回折光L0から波長毎に異なる角度で1次回折光L1を射出する透過型回折格子であり、表面レリーフ回折格子に比べて高回折効率で広帯域の回折特性を有する。
【0040】
一般に、VPHグレーティングでは、回折光が得られる帯域幅と最大回折効率とには、トレードオフの関係が存在する。このため、VPHグレーティングが実現する回折特性には選択性がある。図2に例示されるように、本実施例に係るVPHグレーティング1(図2の特性Ca、特性Cb、特性Ccを参照)は、表面レリーフ回折格子(図2の特性Crを参照)に比べて、高回折効率で同等以上の帯域幅を有する回折特性が実現されるように設計されたVPHグレーティングである。
【0041】
VPHグレーティング1の回折特性は、一般的なVPHグレーティングと同様に、次のような特徴を有している。
第1に、屈折率分布方向と入射光ILの光軸とのなす角度θ1(以降、傾き角と記す)に依存して、1次回折光L1の回折効率(以降、1次回折効率と記す。)のピークの波長(以降、ブラッグ波長と記す。)が変化する。換言すると、入射角θ2に依存して、ブラッグ波長が変化する。
【0042】
例えば、図1(a)に例示されるVPHグレーティング1では、緑色Gの波長の1次回折効率が最も高い(図2の特性Caを参照。矢印の太さが太いほど回折効率が高いことを示す)。これに対して、VPHグレーティング1を反時計回りに回転させて傾き角θ1を大きくした場合、図1(b)に例示されるように、回折効率のピークが短波長側にシフトし、青色Bの波長の1次回折効率が最も高くなる(図2の特性Cbを参照)。また、VPHグレーティング1を反対に時計回りに回転させて傾き角θ1を小さくした場合、図1(c)に例示されるように、回折効率のピークが長波長側にシフトし、赤色Rの波長の1次回折効率が最も高くなる(図2の特性Ccを参照)。
【0043】
第2に、傾き角θ1(または、入射角θ2)が変化しても、入射光ILと1次回折光とのなす角は、波長毎にほぼ変化しないことである。従って、0次回折光L0と1次回折光とのなす角(以降、出射角と記す。)も、波長毎にほぼ変化しない。換言すると、0次回折光L0の方向が一定であれば、1次回折光L1の射出方向(以降、回折方向と記す。)は、波長毎に略一定である。
図3は、VPHグレーティング1を含む透過型回折格子の回折について説明するための図である。図3(a)では、透過型回折格子における回折の様子が表されている。図3(b)では、透過型回折格子の回折角と射出角の関係が例示されている。図3を参照しながら、透過型回折格子の回折方向が入射角によらず略一定となることについて説明する。
図3(a)に例示されるように、0次光に対する1次回折光の出射角は、α+βで表される。ここで、αは透過型回折格子TGへの入射角(図1のθ2に相当)である。βは、1次回折光の回折角である。
また、透過型回折格子を含む一般の回折格子では、入射角αと回折角βの間に下式が成り立つ。
sinα+ sinβ = Nλ ・・・(1)
ここで、Nは回折格子の格子周波数である。λは回折格子への入射波長である。
式(1)でNとλが一定の時、α=βの近傍では、出射角α+βはほとんど変化しない。このため、透過型回折格子では、入射角が変化しても、0次光に対する1次回折光の出射角は波長毎に略一定となり、入射角によらず回折方向が略一定に維持される。特に、格子周波数Nが小さいときにはこの近似が精度良く成り立つ。
【0044】
VPHグレーティング1が上述した第1の特徴を有する理由は、VPHグレーティング1で生じる回折現象はブラッグ条件の影響下にあるからである。このため、VPHグレーティング1は、回折角と入射角θ2が一致する波長の1次回折光L1で最大回折効率を示す。このとき、ブラッグ条件が満たされるからである。また、VPHグレーティング1が上述した第2の特徴を有する理由は、VPHグレーティングが透過型回折格子であるからである。
【0045】
次に、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡について説明する。
図4は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図4のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
【0046】
図4に例示される共焦点走査型顕微鏡100は、標本を走査する走査手段を備えた共焦点顕微鏡であり、標本からの蛍光を分光する上述したVPHグレーティング1と、VPHグレーティング1で回折された蛍光を検出する光検出器13を含んでいる。光検出器13は、複数の受光素子が1次元に配列されたマルチチャンネル検出器である。また、共焦点走査型顕微鏡100は、VPHグレーティング1と光検出器13の間には、蛍光を光検出器13に集光させる集光レンズ12も含んでいる。
【0047】
より具体的には、共焦点走査型顕微鏡100は、レーザ光を射出するレーザ光源LSと、光ファイバ2と、コリメータレンズ3と、レーザ光を反射し蛍光を透過するダイクロイックミラー4と、レーザ光で標本面SP上に配置された標本(図示しない)を走査する走査手段であるガルバノミラー5と、対物レンズ6と、共焦点レンズ7と、対物レンズ6の焦点位置と共役な位置にピンホールを有する共焦点絞り8と、コリメータレンズ9と、ミラー10と、VPHグレーティング1と、ミラー11と、集光レンズ(集光光学系)12と、光検出器13と、共焦点走査型顕微鏡100全体を制御する制御手段14と、制御手段14の指示に従ってVPHグレーティング1を回転させる駆動手段15と、を含んでいる。
なお、集光レンズ12は、正パワーを持つ凹面ミラー等に置き換えることも可能である。
【0048】
制御手段14は、駆動手段15に、VPHグレーティング1に入射する蛍光の光軸とVPHグレーティング1の屈折率分布方向とのなす角である傾き角を変更させることができる。つまり、制御手段14及び駆動手段15は、VPHグレーティング1の傾き角を変更することで入射角を変更する入射角変更手段であり、VPHグレーティング1を光軸と屈折率分布方向との両方に平行な平面(YZ平面)に対して垂直な回転軸周りに回転させることができる。
【0049】
レーザ光の射出から蛍光の検出までの共焦点走査型顕微鏡100の作用を説明する。
レーザ光源LSから射出されたレーザ光は、光ファイバ2を介してコリメータレンズ3で略平行光束に変換されて、ダイクロイックミラー4に入射する。さらに、レーザ光は、ダイクロイックミラー4を反射して、ガルバノミラー5を介して対物レンズ6に入射する。対物レンズ6は、レーザ光を、標本面SP上に配置された標本の1点に集光させて照射する。これにより、標本中の蛍光物質が、レーザ光により励起される。
【0050】
標本からの蛍光は、レーザ光と同じ光路を反対向きに進行し、対物レンズ6及びガルバノミラー5を介してダイクロイックミラー4に入射する。共焦点レンズ7は、ダイクロイックミラー4を透過した蛍光を集光させる。共焦点絞り8は、対物レンズ6の焦点位置と光学的に共役な位置にピンホールを有しているため、対物レンズ6の焦点位置から生じた蛍光のみが共焦点絞り8を通過する。その後、蛍光は、コリメータレンズ9で略平行光束に変換されて、ミラー10を介して略平行光束としてVPHグレーティング1に入射する。
【0051】
VPHグレーティング1では、蛍光は回折されて、波長毎にそれぞれ異なる回折角で射出される。波長毎に異なる回折角で射出された1次回折光(蛍光)はミラー11を反射して、波長毎に光軸に対して異なる角度で集光レンズ12に入射する。このため、1次回折光は、集光レンズ12により、波長毎に光検出器13の異なる位置(受光素子)に入射して、波長毎に異なるチャンネルで検出される。
【0052】
光検出器13で検出された1次回折光(蛍光)は、電気信号に変換されて、制御手段14へ送信される。制御手段14では、ガルバノミラー5によって標本を走査することにより得られる標本の各点に関する電気信号に基づいて、蛍光画像の形成やその他の分析等が行われる。そして、その蛍光画像や分析結果がモニター等の表示手段29に表示される。
【0053】
VPHグレーティング1は、図2に例示されるように、検出対象とする波長域全域で、表面レリーフ回折格子に比べて高い回折効率を実現することができる。このため、VPHグレーティング1を含む共焦点走査型顕微鏡100は、表面レリーフ回折格子を分光手段として使用する従来の共焦点走査型顕微鏡に比べて、広い波長域で高い光の利用効率を有する分光検出機能を備える共焦点走査型顕微鏡である。従って、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡100によれば、広い波長域で高い光の利用効率を実現することができる。
【0054】
なお、図2では、検出対象とする波長域が可視光域である例を示したが、特にこれに限られない。
また、共焦点走査型顕微鏡100では、制御手段14及び駆動手段15によりVPHグレーティング1へ入射する光の入射角を変更することができる。VPHグレーティング1は、入射角の変更により、任意の波長をブラッグ波長に変更することができる。従って、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡100によれば、検出対象とする蛍光の波長に応じてブラッグ波長を変更することで、より高い光の利用効率を実現することができる。また、複数種類の蛍光を同時に検出する場合には、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。また、複数種類の蛍光を同時に検出する場合に、興味ある波長域全体で検出効率が最適化されるようにブラッグ波長を設定・選択することができる。
【0055】
また、VPHグレーティング1は透過型回折格子であり、0次回折光の方向は入射角によらず一定である。波長毎の出射角も入射角によらず略一定である。従って、1次回折光は、入射角によらず、波長毎に常に略一定の回折方向に射出されて同じ集光素子で検出される。このため、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡100によれば、VPHグレーティング1を回転させて入射角を変更することで、検出波長帯域を変更することなく、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。
【0056】
また、VPHグレーティング1への入射角の変更により、検出効率が最も高いブラッグ波長を変化させることができる。従って、VPHグレーティング1を回転させてブラッグ波長を変更させるのと同期して、ブラッグ波長に対応するチャネルのシグナルだけをシーケンシャルに取得することにより、検出波長帯域全域で高い効率のスペクトルデータを高速で取得することができる。
【実施例2】
【0057】
図5は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図5のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図5に例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡101は、ミラー10の代わりにX軸周りに回転するミラー16(第1のミラー)が含まれる点、ミラー11の代わりにX軸周りに回転するミラー17(第2のミラー)が含まれる点、駆動手段15の代わりに駆動手段18及び駆動手段19が含まれる点、が実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と異なっている。その他の構成は、図4に例示される共焦点走査型顕微鏡100と同様である。このため、図5では、共焦点走査型顕微鏡101の構成の一部のみが記載されている。
【0058】
ミラー16は、ガルバノミラー5(図示しない)とVPHグレーティング1の間に配置されていて、ミラー16をYZ平面に垂直な回転軸(X軸)周りに回転させる駆動手段18に接続されている。駆動手段18は、さらに、制御手段14に接続されている。つまり、駆動手段18及び制御手段14は、ミラー16をYZ平面に対して垂直な回転軸(X軸)周りに回転させることで、入射角を変更する入射角変更手段である。
【0059】
共焦点走査型顕微鏡101の入射角変更手段は、入射角を変更するために、VPHグレーティング1ではなくミラー16を回転させる。このため、0次回折光の方向も入射角によって変化する。従って、1次回折光の回折方向は、入射角に依存する。
【0060】
ミラー17は、VPHグレーティング1と集光レンズ12の間に配置されていて、ミラー17をYZ平面に垂直な回転軸(X軸)周りに回転させる駆動手段19に接続されている。駆動手段19は、さらに、制御手段14に接続されている。
【0061】
駆動手段19及び制御手段14は、例えば、入射角に依存して異なる回折方向に射出される1次回折光が波長毎に常に一定の方向に反射されるように、ミラー17を回転させる。これにより、1次回折光は、集光レンズ12により波長毎に常に一定の位置に集光するため、光検出器13の受光素子に入射する波長帯域は、入射角によらず維持される。つまり、駆動手段19及び制御手段14は光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持する検出波長帯域維持手段である。
【0062】
なお、ミラー16の回転によっても検出波長帯域は変化するため、制御手段14及び駆動手段19に駆動手段18を加えて、検出波長帯域維持手段とみなしてもよい。
【0063】
図6は、共焦点走査型顕微鏡101に含まれるミラー16及びミラー17の動作について説明するための図である。図6を参照しながら、入射角によらず検出波長帯域を維持するためのミラー16とミラー17の制御方法について説明する。
図6(a)に例示されるように、ミラー16への入射光ILの入射角をα、ミラー17への緑色の1次回折光Gの入射角をβ、VPHグレーティング1へ入射する光と緑色の1次回折光Gとのなす角をθとする。
【0064】
図6(b)では、入射角を変更するために入射角変更手段がミラー16を角度δだけ時計周りに回転させて、ミラー16を正反射した光と入射光ILとのなす角が角度αから角度α−δに変更された例が示されている。この時、ミラー16の反射光がVPHグレーティング1へ入射する角度は2δ大きくなる。回折光が射出される角度は入射角によらず波長毎に略一定であるため、緑色の1次回折光Gがミラー17へ入射する角度も2δ大きくなる。従って、入射角変更前のミラー17で反射した緑色の1次回折光Gと入射角変更後のミラー17で反射した緑色の1次回折光G´の成す角は2δになる。
【0065】
図6(c)に例示されるように、検出波長帯域維持手段は、ミラー16と同様に、ミラー17を角度δだけ時計回りに回転させることで、緑色の1次回折光Gを入射光ILと平行な方向に射出することができる。これにより、1次回折光Gが、入射角によらず常に一定の方向に反射されるため、他の波長の1次回折光も同様に、入射角によらず波長毎に常に一定の方向に反射される。その結果、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域が維持される。
【0066】
同様に、入射角を変更するために入射角変更手段がミラー16を角度δだけ反時計周りに回転させた場合は、ミラー17を角度δだけ反時計周りに回転させれば、1次回折光は、入射角によらず波長毎に常に一定の方向に反射される。つまりミラー16とミラー17を同方向に同じ回転角だけ回転することで、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域が維持される。
【0067】
なお、図6では、制御手段14及び駆動手段19が光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持する検出波長帯域維持手段として機能する例が示されているが、特にこれに限られない。制御手段14及び駆動手段19は、必ずしも検出波長帯域を維持するように動作する必要なく、ミラー17をミラー16と独立に回転させることで検出波長帯域をシフトさせても良い。その場合、制御手段14及び駆動手段19は、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域幅を変更することなく検出波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段である。また、制御手段14及び駆動手段19に駆動手段18を加えて、検出波長帯域シフト手段とみなしてもよい。
【0068】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡101によれば、VPHグレーティング1を含むことで、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、広い波長域で高い光の利用効率を実現することができる。
【0069】
また、共焦点走査型顕微鏡101は、制御手段14及び駆動手段18がミラー16を回転させることにより、VPHグレーティング1へ入射する光の入射角を変更することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡101によれば、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、検出対象とする蛍光の波長に応じてブラッグ波長を変更することで、より高い光の利用効率を実現することができる。また、複数種類の蛍光を同時に検出する場合には、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。
【0070】
また、共焦点走査型顕微鏡101は、制御手段14及び駆動手段19がミラー17を回転させることにより、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡101によれば、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、検出波長帯域を変更することなく、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。さらに、共焦点走査型顕微鏡101によれば、検出波長帯域をシフトさせることもできる。
【実施例3】
【0071】
図7Aは、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図7AのXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図7Aに例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡102は、実施例1の図4のミラー11の代わりにX軸周りに回転するミラー17(第2のミラー)が含まれる点、駆動手段19、集光レンズ20、ミラー21a、ミラー21b、及び駆動手段22が追加されている点が実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と異なっている。その他の構成は、図4に例示される共焦点走査型顕微鏡100と同様である。
【0072】
制御手段14及び駆動手段15は、実施例1と同様に、VPHグレーティング1の傾き角を変更することで入射角を変更する入射角変更手段である。入射角変更手段は、VPHグレーティング1を光軸と屈折率分布方向との両方に平行な平面(YZ平面)に対して垂直な回転軸周りに回転させることが可能であり、ブラッグ波長を変更することができる。
【0073】
また、ミラー17は、VPHグレーティング1と集光レンズ12の間に配置されていて、ミラー17をYZ平面に垂直な回転軸(X軸)周りに回転させる駆動手段19に接続されている。駆動手段19は、さらに、制御手段14に接続されている。
【0074】
駆動手段19及び制御手段14は、実施例2と同様に、検出波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段である。また、ミラー17が動作しないように制御する場合には、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持する検出波長帯域維持手段とみなすことができる。
【0075】
共焦点走査型顕微鏡102は、VPHグレーティング1と光検出器13の間に、選択的に使用される焦点距離の異なる集光レンズ12と集光レンズ20を含んでいる。集光レンズ20は、集光レンズ12に比べて長い焦点距離を有している。
【0076】
制御手段14は、駆動手段22に、ミラー21a及びミラー21bをミラー17からの反射光の光路に挿脱させることが可能である。これらのミラーの挿脱により、蛍光が入射する集光レンズが変化する。具体的には、ミラー21a及びミラー21bが光路から取り除かれている場合には、ミラー17を反射した1次回折光は、集光レンズ12により光検出器13上に集光される。一方、ミラー21a及びミラー21bが光路に挿入されている場合には、ミラー17を反射した1次回折光は、ミラー21a及びミラー30aを反射して集光レンズ20へ入射し、集光レンズ20によりミラー30b及びミラー21bを介して光検出器13上に集光される。
【0077】
一般に、焦点距離が長いほど、また、回折格子の格子周波数が大きいほど、波長分散量は大きくなる。このため、共焦点走査型顕微鏡102では、集光レンズ20を介して光検出器13に入射する蛍光の波長帯域の幅は、集光レンズ12を介して光検出器13に入射する蛍光の波長帯域の幅よりも狭くなる。つまり、波長分散量が小さい場合には、例えば、可視光全域など、広い波長帯域が検出され、波長分散量が大きい場合には、狭い波長帯域が検出される。
【0078】
従って、制御手段14及び駆動手段22は、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段である。また、光検出器13に入射する蛍光の波長帯域の幅に比例して、各受光素子に入射する蛍光の帯域の幅も狭くなり分解能が向上する。このため、制御手段14及び駆動手段22は、波長分解能を変更する波長分解能変更手段でもある。
【0079】
なお、以降では、波長分散量が小さい状態を、広帯域検出状態と記し、波長分散量が大きい状態を狭帯域検出状態または高分解能検出状態と記す。
【0080】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡102によれば、VPHグレーティング1を含むことで、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、広帯域検出状態において、広い波長域で高い光の利用効率を実現することができる。
【0081】
また、共焦点走査型顕微鏡102は、制御手段14及び駆動手段15がVPHグレーティング1を回転させることにより、VPHグレーティング1へ入射する光の入射角を変更することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡102によれば、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、検出対象とする蛍光の波長に応じてブラッグ波長を変更することで、より高い光の利用効率を実現することができる。また、複数種類の蛍光を同時に検出する場合には、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。
【0082】
また、共焦点走査型顕微鏡102は、制御手段14及び駆動手段22がミラー21a及びミラー21bを検出光路に挿脱させることにより、検出される蛍光の波長帯域の幅を変更することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡102によれば、広帯域検出状態での広い波長帯域の検出と、狭帯域検出状態での高分解能での検出と、必要に応じて容易に切り換えることができる。
【0083】
さらに、共焦点走査型顕微鏡102は、制御手段14及び駆動手段19がミラー17を回転させることにより、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡102によれば、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、検出波長帯域を変更することなく、最も高効率に検出する蛍光を任意に選択することができる。このような制御は、広帯域検出状態において特に有効である。
【0084】
また、共焦点走査型顕微鏡102は、制御手段14及び駆動手段19がミラー17を回転させることにより、検出波長帯域の中心を制御することができる。これにより、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域をシフトさせることができる。従って、共焦点走査型顕微鏡102によれば、ブラッグ波長の変更とは別に、検出波長帯域を容易に変更することができる。このような制御は、狭帯域検出状態において特に有効である。
【0085】
また、検出対象とする蛍光の波長に応じて検出波長域とブラッグ波長を同時に変更することにより、少ない検出回数でより高い光の利用効率を実現することができる。また、検出波長域をシームレスにシフトさせ、それと同期させてブラッグ波長を変更することにより、広帯域を高分解能でかつ高い効率で検出することができる。
【0086】
なお、図7Aでは、ミラー21a及びミラー21bを検出光路に挿脱することにより、広帯域検出状態と狭帯域検出状態(または高分解能検出状態)とを切り換える例を示したが特にこれに限られない。他の方法により、検出状態が切り換えられても良い。
図7B、図7C、及び図7Dは、それぞれ本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡102の変形例の構成を例示した概略図である。
【0087】
図7Bに例示される共焦点走査型顕微鏡102aは、VPHグレーティング1と光検出器13の間に、回転可能なミラー31aを含んでいる。共焦点走査型顕微鏡102aでは、制御手段14が駆動手段22にミラー31aを回転させることによって、広帯域検出状態と狭帯域検出状態を切り換えることができる。
【0088】
具体的には、ミラー31aが第1の状態(ミラー31aの状態が実線で表されている状態)にある場合には、ミラー31aを反射した1次回折光は、集光レンズ12により光検出器13上に集光される。これにより、広帯域検出状態が実現される。
【0089】
一方、ミラー31aが第2の状態(ミラー31aの状態が破線で表されている状態)にある場合には、ミラー31aを反射した1次回折光は、ミラー31bを反射して集光レンズ32へ入射する。さらに、1次回折光は、ミラー31c及びミラー31dを介して再びミラー31aに入射して反射する。その後、集光レンズ12により光検出器13上に集光される。つまり、ミラー31aが第2の状態にある場合には、集光レンズ32と集光レンズ12の両方により、1次回折光は光検出器13上に集光される。これにより、狭帯域検出状態が実現される。
【0090】
図7Cに例示される共焦点走査型顕微鏡102bは、VPHグレーティング1と光検出器13の間に、光軸方向に可動な複数のレンズ(集光レンズ33a、集光レンズ33b)からなる集光レンズ群33を含んでいる。集光レンズ群33は、集光レンズの位置により合成焦点距離の異なる複数のズーム状態を有するズームレンズ(変倍光学系)である。共焦点走査型顕微鏡102bでは、制御手段14が駆動手段22に集光レンズ群33のズーム状態を変更させることによって、広帯域検出状態と狭帯域検出状態を切り換えることができる。
【0091】
具体的には、集光レンズ33a及び集光レンズ33bの光軸方向の移動により、集光レンズ群33の合成焦点距離が短い第1の状態(集光レンズ33a及び集光レンズ33bが実線で表されている位置にある状態)にある場合には、1次回折光は、合成焦点距離の短い状態の集光レンズ群33により光検出器13上に集光される。これにより、広帯域検出状態が実現される。
【0092】
一方、集光レンズ33a及び集光レンズ33bの光軸方向の移動により、集光レンズ群33の合成焦点距離が長い第2の状態(集光レンズ33a及び集光レンズ33bが破線で表されている位置にある状態)にある場合には、1次回折光は、合成焦点距離の長い状態の集光レンズ群33により光検出器13上に集光される。これにより、狭帯域検出状態が実現される。
【0093】
なお、共焦点走査型顕微鏡102bでは、集光レンズを光軸方向に移動させることによって、広帯域検出状態から狭帯域検出状態まで、または、狭帯域検出状態から広帯域検出状態まで、検出状態を連続的に変化させることができる。
【0094】
図7Dに例示される共焦点走査型顕微鏡102cは、光路に対して挿脱可能な複数のVPHグレーティング(VPHグレーティング1、VPHグレーティング34)を含んでいる。VPHグレーティング1とVPHグレーティング34では、格子周波数が異なり、VPHグレーティング1はVPHグレーティング34に比べて小さな格子周波数を有している。共焦点走査型顕微鏡102cでは、制御手段14が駆動手段22に光路に挿入するVPHグレーティングを変更させることによって、広帯域検出状態と狭帯域検出状態を切り換えることができる。
【0095】
具体的には、VPHグレーティング1が光路に挿入されている第1の状態では、1次回折光は、比較的小さな波長分散量で光検出器13上に集光される。これにより、広帯域検出状態が実現される。
【0096】
一方、VPHグレーティング34が光路に挿入されている第2の状態では、1次回折光は、比較的大きな波長分散量で光検出器13上に集光される。これにより、狭帯域検出状態が実現される。
【0097】
なお、上述した共焦点走査型顕微鏡102、共焦点走査型顕微鏡102a、及び共焦点走査型顕微鏡102bは、VPHグレーティング1と光検出器13の間の集光レンズ(群)の焦点距離を変更することにより、波長分散量を変更して検出状態を変更する。これに対して、共焦点走査型顕微鏡102cは、VPHグレーティングの格子周波数を変更することにより、波長分散量を変更して検出状態を変更する。
【0098】
以上の変形例に係る共焦点走査型顕微鏡(共焦点走査型顕微鏡102a、共焦点走査型顕微鏡102b、共焦点走査型顕微鏡102c)によっても、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡102と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0099】
図8は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図8のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
【0100】
図8に例示される共焦点走査型顕微鏡103は、ミラー10の代わりにX軸周りに回転するミラー16(第1のミラー)と駆動手段18が含まれる点、ミラー17(第2のミラー)及び駆動手段19の代わりにミラー11が含まれる点が実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と異なっている。その他の構成は、図7Aに例示される共焦点走査型顕微鏡102と同様である。
【0101】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡103は、実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と同様に、広帯域検出状態と狭帯域検出状態とを切り換えることができる共焦点走査型顕微鏡であり、入射角変更手段、検出波長帯域シフト手段(検出波長帯域維持手段)、及び帯域幅変更手段(波長分解能変更手段)を有している。
【0102】
共焦点走査型顕微鏡103では、ミラー11が固定されているため、ミラー16の回転によってのみ検出波長帯域が変化する。このため、制御手段14及び駆動手段18は、検出波長帯域シフト手段である。また、ミラー16が動作しないように制御する場合には、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域を維持する検出波長帯域維持手段とみなすことができる。
【0103】
また、共焦点走査型顕微鏡103では、制御手段14が駆動手段15にVPHグレーティング1を回転させることで、入射角を変更することができる。このため、制御手段14及び駆動手段15は、入射角を変更する入射角変更手段である。なお、ミラー16の回転によっても入射角は変化するため、制御手段14及び駆動手段15に駆動手段18を加えて、入射角変更手段とみなしてもよい。
【0104】
制御手段14及び駆動手段22は、実施例3と同様に、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段である。また、制御手段14及び駆動手段22は、波長分解能を変更する波長分解能変更手段でもある。
【0105】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡103によっても、実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と同様の効果を得ることができる。
【0106】
また、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡103では、VPHグレーティング1と集光レンズ12(または集光レンズ20)の間のミラー11を省略することができる。VPHグレーティング1と集光レンズ間の距離は、集光レンズの焦点距離によって制限される。このため、ミラー11を省略できる本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡103の構成は、レイアウトに関する制約が小さい点で望ましい。
【実施例5】
【0107】
図9は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図9のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図9に例示される共焦点走査型顕微鏡104は、ミラー10の代わりにX軸周りに回転するミラー16(第1のミラー)と駆動手段18が含まれる点、VPHグレーティング1を回転させる駆動手段15が含まれない点、が実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と異なっている。その他の構成は、図7Aに例示される共焦点走査型顕微鏡102と同様である。
【0108】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡104は、実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と同様に、広帯域検出状態と狭帯域検出状態とを切り換えることができる共焦点走査型顕微鏡であり、入射角変更手段、検出波長帯域シフト手段(検出波長帯域維持手段)、及び帯域幅変更手段(波長分解能変更手段)を有している。
【0109】
共焦点走査型顕微鏡104では、制御手段14が駆動手段18にミラー16を回転させることで、入射角を変更することができる。このため、制御手段14及び駆動手段18は、入射角を変更する入射角変更手段である。
【0110】
また、共焦点走査型顕微鏡104では、実施例2と同様に駆動手段19がミラー17をミラー16と同方向に同じ回転角だけ回転させることで、1次回折光を波長毎に同じ位置に集光させることができる。このため、制御手段14及び駆動手段19は、検出波長帯域維持手段である。また、ミラー17の回転角をミラー16と異ならせることで検出波長帯域シフト手段としても機能する。また、ミラー16の回転によっても検出波長帯域は変化するため、制御手段14及び駆動手段19に駆動手段18を加えて、検出波長帯域維持手段または検出波長帯域シフト手段とみなしてもよい。
【0111】
制御手段14及び駆動手段22は、実施例3と同様に、光検出器13で検出される蛍光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段である。また、制御手段14及び駆動手段22は、波長分解能を変更する波長分解能変更手段でもある。
【0112】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡104によっても、実施例3に係る共焦点走査型顕微鏡102と同様の効果を得ることができる。
【実施例6】
【0113】
図10は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図10のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図10に例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡105は、マルチチャンネル検出器である光検出器13の代わりに、シングルチャンネル検出器である光検出器(光検出器13a、光検出器13b)が複数含まれる点、光検出器と集光レンズ(集光レンズ12aと集光レンズ12b)の間に光検出器で検出される蛍光の波長帯域の幅を制限する絞り手段(絞り手段28a、絞り手段28b)が含まれる点、が実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と主に異なっている。
【0114】
共焦点走査型顕微鏡105は、共焦点走査型顕微鏡100と同様に、レーザ光源LSと、光ファイバ2と、コリメータレンズ3と、ダイクロイックミラー4と、ガルバノミラー5と、対物レンズ6と、共焦点レンズ7と、共焦点絞り8と、コリメータレンズ9を含んでいる。
【0115】
さらに、共焦点走査型顕微鏡105は、ミラー24と、ミラー25と、蛍光を2つに分離するダイクロイックミラー26(光路分割手段)と、ミラー27を含み、ダイクロイックミラー26の反射光路と透過光路のそれぞれに、ミラー(ミラー10a、ミラー10b)と、VPHグレーティング(VPHグレーティング1a、VPHグレーティング1b)と、ミラー(ミラー11a、ミラー11b)と、集光レンズ(集光レンズ12a、集光レンズ12b)と、絞り手段(絞り手段28a、絞り手段28b)と、シングルチャンネル検出器である光検出器(光検出器13a、光検出器13b)を含んでいる。
【0116】
光検出器(光検出器13a、光検出器13b)は、それぞれ独立に、その受光素子の受光面と平行(Y方向)に移動することができる。また、絞り手段(絞り手段28a、絞り手段28b)は、それぞれ独立に、光検出器の動作に連動して移動することで、スリット(開口部)位置を変更することができる。さらに、スリット(開口部)幅を変更することもできる。
【0117】
光検出器及び絞り手段は、不図示の駆動手段及び制御手段に接続されている。不図示の制御手段及び駆動手段は、光検出器と絞り手段を移動させることで検出波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段である。また、不図示の制御手段及び駆動手段は、絞り手段のスリット幅を変更することで検出される蛍光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段である。
【0118】
また、VPHグレーティング(VPHグレーティング1a、VPHグレーティング1b)は、不図示の駆動手段及び制御手段に接続されている。不図示の制御手段及び駆動手段は、各VPHグレーティングの傾き角を変更することで入射角を変更する入射角変更手段であり、各VPHグレーティングを光軸と屈折率分布方向との両方に平行な平面(YZ平面)に対して垂直な回転軸(X軸)周りに回転させることができる。
【0119】
レーザ光の射出から蛍光の検出までの共焦点走査型顕微鏡105の作用を、600nm未満の波長の蛍光を反射するダイクロイックミラー26を用いて赤色と緑色の波長の蛍光を同時に検出する場合を例に、説明する。
【0120】
レーザ光源LSから射出されたレーザ光は、共焦点走査型顕微鏡100と同様の経路を経て標本に照射されて、標本中の蛍光物質を励起する。標本からの蛍光は、共焦点走査型顕微鏡100と同様の経路を経て、コリメータレンズ9から略平行光束として射出される。その後、蛍光はミラー24及びミラー25を介してダイクロイックミラー26に入射する。ダイクロイックミラー26では、600nm未満の波長の蛍光は反射され、600nm以上の波長の蛍光は透過する。
【0121】
ダイクロイックミラー26を反射した蛍光は、ミラー10aを介してVPHグレーティング1aに入射して回折される。このとき、VPHグレーティング1aは不図示の入射角変更手段により緑色の波長がブラッグ波長となるように予め回転しているため、緑色の波長の蛍光Gが最も効率よく回折される。VPHグレーティング1aを回折した蛍光は、ミラー11aを介して集光レンズ12aに入射して、波長毎にそれぞれ異なる位置に集光する。
【0122】
このため、検出波長帯域シフト手段が光検出器13a及び絞り手段28aを緑色の波長の蛍光Gの集光位置に応じて移動させることで、光検出器13aで緑色の波長の蛍光Gを効率良く検出することができる。また、帯域幅変更手段が絞り手段28aのスリット幅を光検出器13aの受光面よりも狭くすることで、緑色以外の波長の蛍光の検出を抑制することができる。このため、ノイズ成分が抑制されて、信号のS/N比が改善される。
【0123】
一方、ダイクロイックミラー26を透過した蛍光は、ミラー10bを介してVPHグレーティング1bに入射して回折される。このとき、VPHグレーティング1bは不図示の入射角変更手段により赤色の波長がブラッグ波長となるように予め回転しているため、赤色の波長の蛍光Rが最も効率よく回折される。VPHグレーティング1bを回折した蛍光は、ミラー11bを介して集光レンズ12bに入射して、波長毎にそれぞれ異なる位置に集光する。
【0124】
このため、検出波長帯域シフト手段が光検出器13b及び絞り手段28bを赤色の波長の蛍光Rの集光位置に応じて移動させることで、光検出器13bで赤色の波長の蛍光Rを効率良く検出することができる。また、帯域幅変更手段が絞り手段28bのスリット幅を光検出器13bの受光面よりも狭くすることで、赤色以外の波長の蛍光の検出を抑制することができる。このため、ノイズ成分が抑制されて、信号のS/N比が改善される。
【0125】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡105では、実施例1に係る共焦点走査型顕微鏡100と同様に、VPHグレーティングを回転させて入射角を変更することで、容易にブラッグ波長を変更することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡105によれば、検出対象とする蛍光の波長に応じてブラッグ波長を変更することで、高い光の利用効率を実現することができる。
【0126】
また、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡105によれば、シングルチャンネルの光検出器と絞り手段の組み合わせにより、検出対象の波長の蛍光を、ノイズを抑えながら高効率に検出することができる。このため、マルチチャンネルの光検出器を用いた共焦点走査型顕微鏡に比べて、より高い信号のS/N比を実現することができる。
【0127】
また、共焦点走査型顕微鏡105では、検出対象とする波長毎にVPHグレーティングを有している。このため、複数の波長の蛍光を同時に検出する場合であっても、それぞれの波長に対してVPHグレーティングを最適化することができる。従って、共焦点走査型顕微鏡105によれば、複数の波長の蛍光に対して、同時に高い回折効率を実現することができる。なお、検出対象とする波長毎にVPHグレーティングを有する構成は、例えば、複数の検出波長が互いに大きく離れている場合に、特に有効である。
【0128】
また、共焦点走査型顕微鏡105では、各VPHグレーティングに入射する蛍光の波長帯域がダイクロイックミラー26により制限される。このため、各VPHグレーティングは、制限された波長帯域に対して高い回折効率を実現するように設計することができる。すでに上述したように、VPHグレーティングの特性には、回折光が得られる帯域幅と最大回折効率との間にトレードオフの関係が存在するため、波長帯域を制限することでより高い最大回折効率が得られる。従って、共焦点走査型顕微鏡105によれば、VPHグレーティングを一つだけ含む共焦点走査型顕微鏡に比べて、検出対象の波長の蛍光をさらに効率よく検出することができる。
【0129】
なお、図10では、説明を簡略化するために、2波長を同時に検出する構成を例示したが特にこれに限られない。1波長の検出で足りるのであれば、ダイクロイックミラー26の代わりにミラーを用いても良い。また、3波長以上を同時に検出する必要がある場合には、ミラー27の代わりにダイクロイックミラー(光路分割手段)を用いてさらに光検出器を追加してもよい。また、追加する検出器は、シングルチャンネルの検出器に限られない。マルチチャンネルの検出を追加してもよい。
【実施例7】
【0130】
図11は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図11のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図11に例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡106は、ミラー11a及びミラー11bの代わりにX軸周りに回転するミラー17a及びミラー17b(第2のミラー)が含まれる点、光検出器(光検出器13a、光検出器13b)が固定されている点、が実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と異なっている。その他の構成は、図10に例示される共焦点走査型顕微鏡105と同様である。このため、図11では、共焦点走査型顕微鏡106の構成の一部のみが記載されている。
【0131】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡106は、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、入射角変更手段、検出波長帯域シフト手段、及び帯域幅変更手段を有している。
【0132】
共焦点走査型顕微鏡106では、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、VPHグレーティング1a及びVPHグレーティング1bの傾き角を変更する不図示の制御手段及び駆動手段が入射角変更手段であり、絞り手段のスリット幅を変更する不図示の制御手段及び駆動手段が帯域幅変更手段である。
【0133】
また、共焦点走査型顕微鏡106では、不図示の制御手段が駆動手段にミラー17a及びミラー17bを回転させることで、光検出器に入射する蛍光の波長帯域を変更することができる。従って、ミラー17a及びミラー17bを回転させる不図示の制御手段及び駆動手段が検出波長帯域シフト手段である。
【0134】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡106によっても、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様の効果を得ることができる。また、共焦点走査型顕微鏡106では、光検出器の代わりにミラーを回転させることで検出波長帯域を変更するため、共焦点走査型顕微鏡105に比べて、より高速に検出波長帯域を変更することができる。
【実施例8】
【0135】
図12は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図12のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図12に例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡107は、ミラー10a及びミラー10bの代わりにX軸周りに回転するミラー16a及びミラー16b(第1のミラー)が含まれる点、光検出器(光検出器13a、光検出器13b)が固定されている点、が実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と異なっている。その他の構成は、図10に例示される共焦点走査型顕微鏡105と同様である。このため、図12では、共焦点走査型顕微鏡107の構成の一部のみが記載されている。
【0136】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡107は、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、入射角変更手段、検出波長帯域シフト手段、及び帯域幅変更手段を有している。
【0137】
共焦点走査型顕微鏡107では、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、絞り手段のスリット幅を変更する不図示の制御手段及び駆動手段が帯域幅変更手段である。
【0138】
共焦点走査型顕微鏡107では、ミラー11a及びミラー11bが固定されているため、ミラー16a及びミラー16bの回転によってのみ検出波長帯域が変化する。このため、ミラー16a及びミラー16bを回転させる不図示の制御手段及び駆動手段が検出波長帯域シフト手段である。
【0139】
共焦点走査型顕微鏡107では、不図示の制御手段が駆動手段にVPHグレーティング1a及びVPHグレーティング1bを回転させることで、入射角を変更することができる。このため、VPHグレーティング1a及びVPHグレーティング1bを回転させる不図示の制御手段及び駆動手段が入射角変更手段である。なお、ミラー16a及びミラー16bの回転によっても入射角は変化するため、さらに、ミラー16a及びミラー16bの駆動手段を加えて、入射角変更手段とみなしてもよい。
【0140】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡107によっても、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様の効果を得ることができる。また、共焦点走査型顕微鏡106では、光検出器の代わりにミラーやVPHグレーティングを回転させることで検出波長帯域を変更するため、共焦点走査型顕微鏡105に比べて、より高速に検出波長帯域を変更することができる。
【実施例9】
【0141】
図13は、本実施例に係る走査型共焦点顕微鏡の構成を例示した概略図である。また、図13のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
図13に例示される本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡108は、ミラー10a及びミラー10bの代わりにX軸周りに回転するミラー16a及びミラー16b(第1のミラー)が含まれる点、ミラー11a及びミラー11bの代わりにX軸周りに回転するミラー17a及びミラー17b(第2のミラー)が含まれる点、VPHグレーティング(VPHグレーティング1a、VPHグレーティング1b)及び光検出器(光検出器13a、光検出器13b)が固定されている点、が実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と異なっている。その他の構成は、図10に例示される共焦点走査型顕微鏡105と同様である。このため、図13では、共焦点走査型顕微鏡108の構成の一部のみが記載されている。
【0142】
本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡108は、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、入射角変更手段、検出波長帯域シフト手段、及び帯域幅変更手段を有している。
【0143】
共焦点走査型顕微鏡108では、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様に、絞り手段のスリット幅を変更する不図示の制御手段及び駆動手段が帯域幅変更手段である。
【0144】
共焦点走査型顕微鏡108では、不図示の制御手段が駆動手段にミラー16a及びミラー16bを回転させることで、入射角を変更することができる。このため、ミラー16a及びミラー16bを回転させる不図示の制御手段及び駆動手段が入射角変更手段である。
【0145】
共焦点走査型顕微鏡108では、不図示の駆動手段がミラー17a及びミラー17bを回転させることで検出波長帯域が変化する。このため、ミラー17a及びミラー17bを回転させる不図示の制御手段及び駆動手段が検出波長帯域シフト手段である。なお、ミラー16a及びミラー16bの回転によっても検出波長帯域は変化するため、さらに、ミラー16a及びミラー16bの駆動手段を加えて、検出波長帯域シフト手段とみなしてもよい。
【0146】
以上、本実施例に係る共焦点走査型顕微鏡107によっても、実施例6に係る共焦点走査型顕微鏡105と同様の効果を得ることができる。また、共焦点走査型顕微鏡106では、光検出器の代わりにミラーを回転させることで検出波長帯域を変更するため、共焦点走査型顕微鏡105に比べて、より高速に検出波長帯域を変更することができる。
【符号の説明】
【0147】
100、101、102、102a、102b、102c、103、104、105、106、107・・・共焦点走査型顕微鏡、1、1a、1b、34・・・VPHグレーティング、2・・・光ファイバ、3、9・・・コリメータレンズ、4、26・・・ダイクロイックミラー、5・・・ガルバノミラー、6・・・対物レンズ、7・・・共焦点レンズ、8・・・共焦点絞り、10、10a、10b、11、11a、11b、16、16a、16b、17、17a、17b、21a、21b、24、25、27、30a、30b、31a、31b、31c、31d・・・ミラー、12、12a、12b、20、32、33a、33b・・・集光レンズ、13、13a、13b・・・光検出器、14・・・制御手段、15、18、19、22・・・駆動手段、28a、28b・・・絞り手段、29・・・表示手段、集光レンズ群・・・33、SP・・・標本面、LS・・・レーザ光源、IL・・・入射光、L0・・・0次回折光、L1・・・1次回折光、PL・・・主直線、Ca、Cb、Cc、Cr・・・特性



【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を走査する走査手段を備えた走査型共焦点顕微鏡であって、
前記標本からの光を分光する透過型のVPHグレーティングと、
前記VPHグレーティングで回折された前記光を検出する光検出器と、を含む
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングに入射する前記光の光軸と前記VPHグレーティングの屈折率が周期的に変化する屈折率分布方向とのなす角を変更する入射角変更手段を含む
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項3】
請求項2に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記光検出器の間に、前記光を前記光検出器に集光させる集光光学系を含み、
前記光検出器は、複数の受光素子が1次元に配列されたマルチチャンネル検出器である
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記入射角変更手段は、前記VPHグレーティングを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項5】
請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、
前記入射角変更手段は、前記第1のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項6】
請求項5に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記集光光学系の間に配置される第2のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第2のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項7】
請求項6に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記第1のミラー及び前記第2のミラーは、同方向に同じ回転角だけ回転する
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項8】
請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の幅を変更する帯域幅変更手段を含む
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項9】
請求項8に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記走査が走査焦点顕微鏡は、前記標本と前記光検出器の間の検出光路で生じる波長分散量の異なる複数の状態を有し、
前記帯域幅変更手段は、前記複数の状態を切り替える
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項10】
請求項9に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記VPHグレーティングと前記光検出器の間に、選択的に使用される、焦点距離の異なる複数の前記集光光学系を含み、
前記帯域幅変更手段は、前記光が入射する前記集光光学系を変更する
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項11】
請求項9に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記集光光学系は、複数の光学素子を含む、合成焦点距離の可変な変倍光学系であり、
前記帯域幅変更手段は、前記変倍光学系の合成焦点距離を変更する
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項12】
請求項9に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記標本からの光を分光する、格子周波数の異なる透過型の複数の前記VPHグレーティングを含み、
前記帯域幅変更手段は、前記検出光路中に、前記複数のVPHグレーティングのうちの一つを選択的に配置する
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項13】
請求項9に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記入射角変更手段は、前記VPHグレーティングを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項14】
請求項13に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に配置される第1のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第1のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項15】
請求項13に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記集光光学系の間に配置される第2のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第2のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項16】
請求項9に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、
前記入射角変更手段は、前記第1のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項17】
請求項16に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記集光光学系の間に配置される第2のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第2のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項18】
請求項2に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記光検出器の間に、前記光を前記光検出器に集光させる集光光学系と、
前記光検出器と前記集光光学系の間に、前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の幅を制限する絞り手段と、を含み、
前記光検出器は、単一の受光素子を含むシングルチャンネル検出器である
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項19】
請求項18に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記入射角変更手段は、前記VPHグレーティングを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項20】
請求項19に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記光検出器及び前記絞り手段を、前記光検出器の受光面と平行に移動させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項21】
請求項19に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に配置される第1のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第1のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項22】
請求項19に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記集光光学系の間に配置される第2のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第2のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項23】
請求項18に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に配置される第1のミラーを含み、
前記入射角変更手段は、前記第1のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項24】
請求項23に記載の走査型共焦点顕微鏡において、さらに、
前記VPHグレーティングと前記集光光学系の間に配置される第2のミラーと、
前記光検出器で検出される前記光の波長帯域の中心を制御する検出波長帯域シフト手段と、を含み、
前記検出波長帯域シフト手段は、前記第2のミラーを、前記光軸及び前記屈折率分布方向に平行な平面に対して垂直な回転軸周りに回転させる
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項25】
請求項18乃至請求項24のいずれか1項に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記絞り手段の開口部の幅は、可変である
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。
【請求項26】
請求項18乃至請求項25のいずれか1項に記載の走査型共焦点顕微鏡において、
前記走査手段と前記VPHグレーティングの間に、前記光を分割する光路分割手段と、
前記光路分割手段により分割された前記光の各々の光路上に、前記VPHグレーティング、前記集光光学系、前記絞り手段、及び前記光検出器と、を含む
ことを特徴とする走査型共焦点顕微鏡。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−257583(P2011−257583A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131772(P2010−131772)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】