説明

走行モード切替装置

【課題】部品点数の増加および選択操作が複雑化するのを抑制しつつ誤操作を防止することができる走行モード切替装置を提供する。
【解決手段】ノーマルモードとスポーツモードとを含む3種類以上の走行モードを記憶する記憶手段50と、走行モードを選択入力するためのモード切替スイッチ30が、一の操作部材を備え、該操作部材は、未操作時の定常位置から押圧操作可能に付勢されてなるとともに、定常位置から所定の回動位置へ回動操作可能に付勢されてなり、FIECU40は、操作部材が定常位置から押圧操作されたことを検出したときに走行モードのうちスポーツモードへ切替える一方、操作部材が所定時間継続して回動位置で保持操作されたことが検出されたときにローンチモードへの切替を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行モードを切替える走行モード切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両にあってはノーマルモードやスポーツモード等の各種走行モードを切り替え可能な走行モード切替装置を備えたものが知られている。この走行モード切替装置としては、例えば、押圧操作でセーブモード、左回転操作でノーマルモード、右回転操作でパワーモードをそれぞれ選択可能な操作部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3872507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、運動性能が高くスポーツ指向の比較的強い自動車においては、サーキット走行のスタート時などに急発進を行うモード(LAUNCHモード)を備えたものが知られている。このようにノーマルモードとの変化が激しい急発進モードのような走行モードを備えている場合、誤操作等により運転者が意図せずモード切替が行われるのを確実に防止する必要があるが、上述した従来の走行モード切替装置においては、単純に押圧操作および回転操作を行うことでモード切替を行っているため、意図せずに急発進を行うモードが選択される虞があるという課題がある。
また、急発進モードを選択する機能のみを個別のスイッチに割り当てるという方法が考えられるが、部品点数が増加するとともに選択操作が複雑で煩わしいという課題がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加および選択操作が複雑化するのを抑制しつつ誤操作を防止することができる走行モード切替装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、通常モード(例えば、実施の形態におけるノーマルモード)と他のモード(例えば、実施の形態におけるスポーツモード)とを含む3種類以上の走行モードを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態における記憶手段50)と、前記走行モードから任意の走行モードを選択入力するための入力手段(例えば、実施の形態におけるモード切替スイッチ30)と、該入力手段から入力された走行モードに応じて、車両に設けられた複数の走行制御装置(例えば、実施の形態における各種走行制御ユニット60)の設定変更を行う制御手段(例えば、実施の形態におけるFIECU40)とを備える走行モード切替装置において、前記入力手段は、一の操作部材(例えば、実施の形態における操作部材33)を備え、該操作部材は、未操作時の定常位置から押圧操作可能に付勢されてなるとともに、前記定常位置から所定の回動位置へ回動操作可能に付勢されてなり、前記制御手段は、前記操作部材が前記定常位置から押圧操作されたことを検出したときに前記走行モードのうち前記通常モードとは異なる所定の走行モードへ切替える一方、該所定の走行モードが選択されている状態で前記操作部材が所定時間継続して回動位置で保持操作されたことが検出されたときに前記通常モードおよび前記所定の走行モードとは異なる他の走行モード(例えば、実施の形態におけるローンチモード)への切替を実行することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記入力手段の操作状態を表示可能な表示手段(例えば、実施の形態におけるマルチインフォメーションディスプレイ25)を備え、該表示手段は、前記入力手段が前記回動位置に操作されたときから前記他の走行モードへの切替が実行されるまでの残時間を表示することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の発明において、前記表示手段が、車両の計器類(例えば、実施の形態におけるメータ26)を備える計器パネル(例えば、実施の形態におけるメータユニット20)に設けられ、該計器パネルは、前記計器類を照明する照明手段(例えば、実施の形態における照明手段26a)を備え、該照明手段は、前記所定の走行モードへの切替が実行されたときに、前記所定の走行モードへの切替が実行される以前の照明色とは異なる照明色に変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、通常モードから所定の走行モードへ切替える操作である押圧操作に対して、通常モード或いは所定のモードから他の走行モードへ切替える操作として回動操作と保持操作との組み合わせ操作という全く異なる操作手法を割り当てることで誤操作を確実に防止することができ、例えば、他の走行モードとして通常モードからの変化が大きい走行モードを割り付けた場合などに、他の走行モードが意図せず選択されて想定外の車両挙動が発生するのを確実に防止することができる効果がある。
また、他の走行モードへ切替える際に、所定時間継続した保持操作が必要となることで、他の走行モードへの切替え操作が、例えば、急発進などを行う特別な走行モードであることを運転者へ認識させる演出効果を持たせることができる。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1の効果に加え、運転者が他の走行モードへの切替が実行されるまでの残時間をリアルタイムで視認可能となるため、更なる誤操作の可能性の低減および演出効果の向上を図ることができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、請求項2の効果に加え、走行モードの切り替え結果が計器パネルの照明手段の照明色の変化により瞬時に視認可能であるため、演出効果をより一層向上することができる効果がある。
また、他の走行モードへの操作入力を受付可能な状態であることを運転者に認識させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態におけるモード切替装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるモード切替スイッチの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるモード切替スイッチおよびシフトノブと操作手との配置を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における走行モードの遷移処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態におけるノーマルモード時の状態を示す図であり、(a)はメータの状態、(b)はモード切替スイッチの状態を示す。
【図6】スポーツモード時の図5に相当する図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるカウントダウン演出画面の表示例を示す図であり(a)はメータ全体図、(b)はマルチインフォメーションディスプレイの拡大図を示す。
【図8】ローンチ準備画面の表示例を示す図7に相当する図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるローンチモード時のモード切替スイッチの正面図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるローンチ不能画面の表示例を示す図であり(a)はメータ全体図、(b)はマルチインフォメーションディスプレイの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の実施の形態における走行モード切替装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、この実施の形態における走行モード切替装置10を示す概略構成図であり、図2は、走行モード切替装置10のモード切替スイッチ30の設置例を示す斜視図である。
走行モード切替装置10は、メータユニット20と、モード切替スイッチ30と、FIECU40と、記憶手段50と、車両の各種走行制御ユニット60とをそれぞれ備えて構成されている。
【0014】
メータユニット20は、運転席前方のインスツルメントパネル内に配置され、図5(a)に示すように、アナログ速度計21、アナログ回転数計22、デジタル表示部23、バーグラフ24、液晶等により種々の情報を表示可能なマルチインフォメーションディスプレイ25からなるメータ26を有している。さらに、メータユニット20は、図1に示すように、ユニット外部からの入力信号に基づきメータ26の作動制御を行うCPU27を備えている。
【0015】
CPU27にはFCANトランシーバ28が接続され、FIECU40より現在選択されている車両の走行モード(後述する)に係るモード情報がFCANトランシーバ28を介して入力される。また、CPU27には、車両の走行モードを切替える入力手段であるモード切替スイッチ30が接続され、このモード切替スイッチ30の操作結果が入力されるようになっている。またCPU27には、例えばステアリングホイールのスポーク部等に設けられる2つの切替スイッチ(SW)29a,29bが接続されている。
【0016】
CPU27は、FIECU40から入力されるモード情報に基づきメータユニット20のメータ26の作動を制御する。より具体的には、アナログ速度計21およびアナログ回転数計22の指針を駆動するステッピングモータ等を図示しない駆動回路を介して駆動制御を行う。また、CPU27は、車両の走行モードに応じてデジタル表示部23を照明する照明手段26a(図1参照)の照明色および、マルチインフォメーションディスプレイ25の表示内容を変更する制御を行う。
【0017】
またCPU27は、切替えスイッチ29a,29bの入力操作に応じて、デジタル表示部23において表示される車速の単位を[km/h]と[mph]との間で切替えたり、バーグラフ24へ表示する対象をエンジン回転数Ne[×1000r/min]とパワー(例えば[ps]や[kw]等)の間で切替える制御を行う。
【0018】
ここで、この実施の形態の走行モード切替装置10は、走行モードとして、通常走行を行う走行モードであるノーマルモードと、このノーマルモードよりもレスポンス重視でエンジンを高回転域まで使用する走行モードであるスポーツモードと、サーキット走行時に急発進を行うための走行モードであるローンチ(LAUNCH)モードとが予め切替え可能に設定されており、上記照明手段26aは、例えば、走行モードがノーマルモードの場合に白色、スポーツモードおよびローンチモードの場合に特別な色として例えば赤色となるように照明色が変更される。そして、ローンチモードの場合、特別な表示として、マルチインフォメーションディスプレイ25は、その背景を橙色、文字表示を黒色等で表示制御される。
【0019】
FCANトランシーバ28は、車両内に配索される比較的高速な車載ネットワークであるFCANを介して各種情報を送受するための通信手段である。このFCANには、内燃機関の燃料噴射装置を制御するFIECU40などの各種制御装置やセンサ類等が接続され、受信した信号をデコードしてCPU27へ向けて出力する。なお、図示都合上、図1のFCANトランシーバ28とFIECU40との間、および、FIECU40と各種走行制御ユニット60との間を個別接続として記載しているが、共通のFCANを介して接続される。
【0020】
モード切替スイッチ30は、ノーマルモード、スポーツモード、ローンチ(LAUNCH)モードからなる複数の走行モードの中から一つの走行モードを切替選択するための入力手段であって、運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソール31上のシフトレバー32(図2参照)よりも車両前方側に配置される。なお、図2に示すモード切替スイッチ30の配置は左ハンドルの車両の一例を示しており、サイドブレーキのレバー37がシフトレバー32の右側に延在している。
【0021】
モード切替スイッチ30は、軸線が車両上方からやや後方に傾斜して突出する略円柱状の操作部材33と、操作部材33の基部側を支持しスポーツモード選択時に点灯するスポーツモードLED35とローンチモード選択時に点灯するローンチモードLED36とをそれぞれ有した本体部34とを備えて構成される。
【0022】
操作部材33は、図3に示すように、運転者の操作手Sがシフトレバー32を上方から把持した状態から、押圧操作および回動操作の各操作位置へ迅速且つ円滑に移動できるように、シフトレバー32の車両前方側の直近に配置され、さらに、その略円柱状の側壁上部を運転者の親指と人差し指とで把持した状態で、運転者の手の平がシフトレバー32に干渉しないように、手の平とシフトレバー32との間に所定のクリアランスが確保される位置に配置されている。
【0023】
また操作部材33は、何ら操作がなされていない位置である定常位置から押圧方向へ変位可能に形成されるとともに、上記定常位置から時計回りへ回動可能に形成され、無操作時には定常位置へ戻るようにコイルバネ等の弾性体によって突出方向および反時計周りに付勢されている。なお、ローンチモードLED36近傍の本体部34上面には、上述した回動操作可能な方向に向かう矢印38が付されている。
【0024】
さらに操作部材33は、押圧操作されて押圧位置に変位しているとき、その回動方向への変位が規制されて押圧方向の変位のみが許容される一方、回動操作された回動位置に変位しているとき、その押圧方向への変位が規制されるように形成されている。
【0025】
モード切替スイッチ30は、上述した操作部材33が定常位置から押圧位置へ変位すると、押圧操作用の接点信号をCPU27へ向けて出力し、操作部材33が定常位置から回動位置へ変位すると、回動操作用の接点信号をCPU27へ向けて出力する。回動操作用の接点信号は、ON故障による誤検知を防止するために、ノーマルオープンの接点とノーマルクローズの接点との組み合わせにより構成され、ノーマルオープンの接点ONと、ノーマルクローズの接点OFFのAND条件が成立したときのみ、CPU27で回転操作が検出されるようになっている。
【0026】
FIECU40は、内燃機関の燃料噴射装置の制御を行う制御装置であって、車両に設けられた他の電子制御装置、例えば車両の各種走行制御ユニット60や、車速を検出する車輪速センサやエンジン回転数Neを検出する回転数センサ、舵角を検出する舵角センサ、路面勾配を検出する勾配センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、トランスミッション油温センサ、エンジン(ENG)水温センサ、シフトポジションを検出するセンサ等、各種センサ類がFCANを介して接続されている。そして、FIECU40は、上記センサ類からの入力情報に基づき、メータユニット20の表示内容に係る情報をCPU27へ向けて出力する。
【0027】
さらにFIECU40は、モード切替スイッチ30による走行モードの切替選択結果および各種走行制御ユニット60から出力される状態フラグに応じて、スポーツモードへの移行許可条件およびローンチモードへの移行許可条件を判定し、所定の移行許可条件を満たしていると判定した場合に、該当する走行モードを記憶手段50に予め記憶されている各走行モード(ノーマルモード、スポーツモード、ローンチモード)情報から検索して、該当する走行モードへの切替えを実施する。具体的には、FIECU40は、走行モードを切替える際、走行モードのモード情報をFCANおよびFCANトランシーバ28を経由してCPU27へ送信するとともに、切替えを行う走行モード情報に関連付けて記憶されているモード移行情報を記憶手段50から取得して各種走行制御ユニット60へ送信する。これにより各種走行制御ユニット60において変更後の走行モードに応じた制御が行われることとなる。
【0028】
記憶手段50は、不揮発性メモリや光磁気ディスクなどからなる記憶媒体であり、複数の走行モードであるノーマルモード、スポーツモード、ローンチモードに係る各種走行制御ユニット60の制御内容を含むモード移行情報が予め記憶される。記憶手段50は、FIECU40から入力される制御指令に応じて各走行モードに係るモード移行情報をFIECU40へ出力する。
【0029】
各種走行制御ユニット60は、車両の走行に係る制御を行うものであり、例えば、トランスミッションや、車両の挙動が乱れるのを抑制するVSA(車両挙動安定化制御システム)や、前後輪と後輪左右の駆動力を自在に制御するSH−AWD(四輪駆動力自在制御システム)や、パワーステアリングのアシストにモータの駆動力を用いるEPS(電動パワーステアリング)等の走行制御ユニットにより構成される。これら各種走行制御ユニット60は、自身の状態情報をモード移行許可フラグとしてFIECU40へ常時送信するとともに、モード移行情報がFIECU40から入力されると、このモード移行情報に基づいた駆動制御を上記走行制御ユニット毎に実施する。
【0030】
この実施の形態の走行モード切替装置は上記構成を備えており、次にこの走行モード切替装置10の作用、特にローンチモードへの遷移処理ついて図4のフローチャートを参照しながら説明する。上記ローンチモードへの移行許可条件にはスポーツモード時であることが含まれているため、まず、ノーマルモードからスポーツモードへの遷移について説明すると、図5(b)に示すように、通常の走行モードであるノーマルモードが選択されているスポーツモードLED35とローンチモードLED36が両者とも消灯している状態から、運転者による操作部材33の押圧操作がなされるとともに状態フラグに基づいて各種走行制御ユニット60に異常が無いと判定されると、スポーツモードへの移行許可条件が満たされる。すると、ノーマルモードからスポーツモードへ移行がなされ、図6(b)に示すようにスポーツモードLED35が例えば緑色で点灯し、図6(a)に示すようにデジタル表示部23の表示が照明手段26aにより白色表示(図5(a)参照)から赤色表示に変更される。一方、上記移行許可条件が満たされない場合ノーマルモードが維持される。
【0031】
次いで、スポーツモードからローンチモードへの遷移処理について説明する。
図4のフローチャートに示すように、まず、ステップS10においては、操作部材33が回転保持されているか否かを判定する。
ステップS10における判定結果が「No」(回転保持されていない)である場合は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0032】
ステップS10における判定結果が「Yes」(回転保持されている)である場合は、ステップS11へ進み、例えば、図7(b)に示すように回転保持が継続している旨の「LAUNCH SWITCH HOLD」というメッセージを含み予め設定された所定時間(例えば5秒)をカウントダウン表示するカウントダウン演出画面41をマルチインフォメーションディスプレイ25へ表示してローンチモードへのカウントダウン演出を行う。このカウントダウン演出画面41により、操作部材33が回転保持されてから所定時間経過するまでの途中経過が運転者により視認可能になっており、図7(b)に示す5秒を所定時間として設定した一例では、カウントダウン演出画面41に直列に5個表示された白丸「○」が1秒経過毎に左端のものから順次黒丸「●」へ遷移するようになっている。なお、この実施の形態のフローチャートにおいては、以下、所定時間に5秒が設定されている場合を一例に説明する。なお、所定時間は5秒に限られるものではない。
【0033】
ステップS12においては、操作部材33が回転操作され回動位置に保持された状態で5秒間経過したか否かを判定する。ステップS12における判定結果が「No」(5秒間経過していない)である場合はステップS19に進む。一方、ステップS12における判定結果が「Yes」(5秒間経過した)である場合は、ステップS13に進み、車両に搭載される走行に関する各種走行制御ユニット60から送信されるモード移行許可フラグや運転者の操作に係る操作情報に基づき、ローンチモードに移行可能な所定の条件が成立しているか否かを判定する。なお、所定の条件とは、ローンチモードへの移行許可を判定するために予め設定された条件である。
【0034】
ステップS13における判定結果が「No」(所定の条件を満たさない)である場合は、ステップS19に進む。一方、ステップS13における判定結果が「Yes」(所定の条件を満たす)である場合はステップS14へ進み、図8(a),(b)に示すローンチモードに移行した旨の「LAUNCH STAND BY」というメッセージを含むローンチ準備画面42をマルチインフォメーションディスプレイ25に表示させる。この際、図9に示すように、モード切替スイッチ30のローンチモードLED36がスポーツモードLED35の緑色とは異なる例えば赤色等で点灯し、スポーツモードLED35およびローンチモードLED36の両者が点灯状態となる。
【0035】
次いで、ステップS15においては、再び所定の条件を満たすか否かを判定し、この判定結果が「No」(所定の条件を満たさない)である場合は、ステップS19に進む一方、ステップS13における判定結果が「Yes」(所定の条件を満たす)である場合はステップS16へ進みタイムアウトすなわち、所定の条件を満たしてから所定時間経過したか否かを判定する。
【0036】
ステップS16における判定結果が「No」(タイムアウトしていない)である場合は、ステップS17へ進みローンチモードによる発進制御を行いステップS18へ進む。
ステップS18においては、ローンチモードによる発進制御の完了を条件として、スポーツモードへ移行し本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0037】
一方、ステップS16における判定結果が「Yes」(タイムアウトした)である場合は、ステップS19へ進む。
ステップS19においては、図10(a),(b)に示す「LAUNCH IMPOSSIBLE」というメッセージを含むローンチ不能画面43をマルチインフォメーションディスプレイ25へ表示させ、ローンチモードへの遷移条件が整っていない旨を運転者へ報知する。
【0038】
次いで、ステップS20においては、ローンチ不能画面43を表示開始してから3秒経過したか否かを判定する。
ステップS20における判定の結果が「No」(3秒経過していない)である場合は、ローンチ不能画面43の表示を継続する一方、ステップS20における判定の結果が「Yes」(3秒経過した)である場合は、ステップS21へ進み、ステップS10で操作部材33の回転操作が検出される以前の元の画面を表示して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0039】
なお、スポーツモードは再度操作部材33を押圧操作することで解除されてノーマルモードへ移行する。また、上述したステップS13において、所定の条件を満たさない(不一致の)場合に、不一致となった項目についてエラーメッセージをマルチインフォメーションディスプレイ25(MID)へ表示して、運転者へ報知するようにしてもよい。
【0040】
したがって、上述の実施の形態によれば、ノーマルモードからスポーツモードへ切替える操作である押圧操作に対して、スポーツモードからローンチモードへ切替える操作を回動操作と保持操作との組み合わせ操作という全く異なる操作手法を割り当てることで、誤操作を確実に防止することができ、スポーツモードからの変化が大きいローンチモードを回転操作に割り付けた場合に、ローンチモードが意図せず選択されて想定外の車両挙動が発生するのを確実に防止することができる。
また、ローンチモードへ切替える際に、操作部材33の回転保持操作が必要となることで、ローンチモードへの切替え操作が、例えば、急発進などを行う特別な走行モードであるということを認識させる演出効果を持たせることができる。
【0041】
さらに、運転者がローンチモードへの切替が実行されるまでの残時間をカウントダウン演出画面41によってリアルタイムで視認可能となるため、更なる誤操作の可能性の低減および演出効果の向上を図ることができる。
そして、走行モードの切り替え結果がメータユニット20の照明手段26aによる照明色の変化により瞬時に視認可能であるため、演出効果をより一層向上することができる。
また、他の走行モードへの操作入力を受付可能な状態であることを運転者に認識させることが容易になる。
【0042】
なお、上述した実施の形態では走行モードとして、ノーマルモード、スポーツモード、および、ローンチモードを備える場合について説明したが、複数の走行モードを備えていればこの構成に限られるものではない。
さらに、上述した実施の形態においては、照明手段26aによってメータ26のデジタル表示部23の照明色を走行モードに応じて変化させる場合について説明したが、この構成に限られず、例えば、アナログ速度計21、アナログ回転数計22、バーグラフ24の照明色をデジタル表示部23と同様に変化させるようにしてもよい。また、ノーマルモードからスポーツモードへ遷移された場合に照明手段26aの照明色を変更する構成について説明したが、スポーツモードからローンチモードへ遷移された場合に照明手段26aの照明色を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
20 メータユニット(計器類)
26 メータ(計器パネル)
26a 照明手段
25 マルチインフォメーションディスプレイ(表示手段)
30 モード切替スイッチ(入力手段)
33 操作部材
50 記憶手段
60 各種走行制御ユニット(走行制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常モードと他のモードとを含む3種類以上の走行モードを記憶する記憶手段と、
前記走行モードから任意の走行モードを選択入力するための入力手段と、
該入力手段から入力された走行モードに応じて、車両に設けられた複数の走行制御装置の設定変更を行う制御手段とを備える走行モード切替装置において、
前記入力手段は、一の操作部材を備え、該操作部材は、未操作時の定常位置から押圧操作可能に付勢されてなるとともに、前記定常位置から所定の回動位置へ回動操作可能に付勢されてなり、
前記制御手段は、前記操作部材が前記定常位置から押圧操作されたことを検出したときに前記走行モードのうち前記通常モードとは異なる所定の走行モードへ切替える一方、前記所定の走行モードが選択された状態で前記操作部材が所定時間継続して回動位置で保持操作されたことが検出されたときに前記通常モードおよび前記所定の走行モードとは異なる他の走行モードへの切替を実行することを特徴とする走行モード切替装置。
【請求項2】
前記入力手段の操作状態を表示可能な表示手段を備え、該表示手段は、前記入力手段が前記回動位置に操作されたときから前記他の走行モードへの切替が実行されるまでの残時間を表示することを特徴とする請求項1に記載の走行モード切替装置。
【請求項3】
前記表示手段は、車両の計器類を備える計器パネルに設けられ、
該計器パネルは、前記計器類を照明する照明手段を備え、
該照明手段は、前記所定の走行モードへの切替が実行されたときに、前記所定の走行モードへの切替が実行される以前の照明色とは異なる照明色に変更されることを特徴とする請求項2に記載の走行モード切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−190084(P2010−190084A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34010(P2009−34010)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】