説明

走行制御装置

【課題】 ショックアブソーバの減衰力制御モードを変えても、良好な運転操作性及び乗り心地を確保することができる走行制御装置を提供する。
【解決手段】 走行制御装置は、ショックアブソーバの減衰力制御モードを選択するモード選択スイッチ13と、ショックアブソーバの減衰力を制御するサスペンション制御部49と、運転シート14の位置及び姿勢を制御するシート制御部50とを有している。サスペンション制御部49は、減衰力制御モードとしてスポーツモードが選択されると、ショックアブソーバを高減衰に設定するように制御する。シート制御部50は、減衰力制御モードとしてスポーツモードが選択されると、運転シート14と運転者の体との密着性が高くなるように、メモリに登録されているスポーツ走行用シート位置・姿勢データに応じて運転シート14の位置及び姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、車両の走行状態に応じて、車両の車高及びシート高さ位置を制御することにより、走行状態に合った運転視界を確保するようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開平9−76799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、ショックアブソーバの減衰力制御モードに関係なく、車両の車高及びシート高さ位置が制御される。例えばショックアブソーバの減衰力制御モードとして通常モードとスポーツ(ハード)モードとがある場合に、スポーツモードが選択されたときには、ショックアブソーバの減衰力が高くなるように制御される。この場合、操舵時には車両の横加速度が高くなり、加減速時や制動時には車両の前後加速度が高くなるので、操舵や制動等の操作時に運転者の体が動かされるようになる。従って、運転者の着座姿勢が不安定になり、運転操作性や乗り心地の悪化につながる可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、ショックアブソーバの減衰力制御モードを変えても、良好な運転操作性及び乗り心地を確保することができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両に搭載される走行制御装置において、車両に設けられたショックアブソーバの減衰力制御モードを選択するモード選択手段と、モード選択手段で選択された減衰力制御モードに応じてショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御手段と、モード選択手段で選択された減衰力制御モードに応じて、車両に設けられた運転シートの位置及び姿勢を制御するシート制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような走行制御装置においては、モード選択手段によりショックアブソーバの減衰力制御モードが切り換えられると、減衰力制御手段によってショックアブソーバの減衰力が変わると共に、シート制御手段によって運転シートの位置及び姿勢が変わる。このとき、ショックアブソーバの減衰力が高くなると、運転シートと運転者の体との密着性が高くなるように、運転シートの位置及び姿勢を制御することにより、ショックアブソーバの減衰力制御モードを変えることでショックアブソーバが高減衰力となっても、車両の前後加速度及び横加速度に対する運転者のホールド性が確保され、運転者の着座姿勢が安定するようになる。これにより、運転者の運転操作性及び乗り心地を良好な状態に維持することができる。
【0007】
好ましくは、減衰力制御モードは、第1制御モードと、第1制御モードよりもショックアブソーバを高減衰力に設定するための第2制御モードとを含み、シート制御手段は、モード選択手段により第2制御モードが選択されると、第1制御モードが選択されたときに比べて運転シートと運転者の体との密着性が高くなるように、運転シートの位置及び姿勢を制御する。
【0008】
この場合には、減衰力制御モードとして第2制御モードが選択されることで、ショックアブソーバが高減衰力に制御されても、運転シートと運転者の体との密着性が高くなるため、運転者の着座姿勢が確実に安定するようになる。
【0009】
シート制御手段は、第2制御モードに対応するシート位置・姿勢データを予め記憶しておき、モード選択手段により第2制御モードが選択されると、シート位置・姿勢データに応じて運転シートの位置及び姿勢を制御することが好ましい。
【0010】
この場合には、第2制御モード時の走行に適した運転シートの位置及び姿勢を事前に決め、それをシート位置・姿勢データとしてメモリに記憶しておくことで、特に運転シートと運転者の体との密着度を検出しなくても、運転シートの位置及び姿勢を第2制御モード時の走行に適した状態にすることができる。これにより、運転シートの位置及び姿勢の制御を簡単に且つ安価に行うことが可能となる。
【0011】
また、運転シートに運転者が着座した時に運転シートの座面部に加わる荷重を検出する荷重検出手段を更に備え、シート制御手段は、モード選択手段により第2制御モードが選択されると、荷重検出手段の検出値に基づいて運転シートの位置及び姿勢を制御する構成としても良い。
【0012】
この場合には、荷重検出手段の検出値に基づいて運転シートと運転者の体との密着性を判断し、その結果に応じて運転シートの位置及び姿勢を制御することで、例えば運転者が複数人いる場合に、各運転者にとって好適な運転シートの位置及び姿勢を事前に決めてメモリに記憶しておかなくても、対処可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショックアブソーバの減衰力制御モードを変えても、良好な運転操作性及び乗り心地を確保することができる。その結果、より快適な運転を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わる走行制御装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる走行制御装置の一実施形態を搭載した車両の概略図である。同図において、車両1は、各車輪2毎にサスペンション3を備えている。サスペンション3は、各車輪2と車体4との間に配置されたショックアブソーバ5と、スプリング6とを有している。ショックアブソーバ5は、例えば2種類(ソフト用及びハード用)の減衰力調整用バルブ(図示せず)を有している。ショックアブソーバ5の上部には、ショックアブソーバ5の減衰力調整用バルブを制御して減衰力を切り換えるアブソーバアクチュエータ7が取り付けられている。
【0016】
また、車両1には、車体4の上下加速度を検出するGセンサ8、ステアリングホイール9の操舵量及び回転方向を検出する舵角センサ10、ブレーキ信号を検出するストップランプスイッチ11、車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ12等といった各種センサが設けられている。
【0017】
さらに、車両1には、ショックアブソーバ5の減衰力制御モードを選択するモード選択スイッチ(モード選択手段)13と、減衰力制御モードに応じてショックアブソーバ5の減衰力を制御すると共に、減衰力制御モードに応じて運転シート14の位置及び姿勢を制御する電子制御ユニット(ECU)15とが設けられている。モード選択スイッチ13は、減衰力制御モードとして、通常走行に適した通常モード(第1制御モード)とスポーツ走行に適したスポーツモード(第2制御モード)の何れかを選択するスイッチである。ECU15については、後で詳述する。
【0018】
運転シート14は、図2に示すように、車体4の前後方向(以下、単に前後方向という)にシート全体をスライドさせるスライド調整機構(A参照)と、シートクッション(座面部)16の前端部を上下動させるフロントバーチカル調整機構(B参照)と、シート全体を上下動させるリフター調整機構(C参照)と、シートクッション16に対するシートバック(背面部)17の傾斜角度を変更するリクライニング調整機構(D参照)とを有している。
【0019】
図3は、スライド調整機構の詳細構成図である。同図において、シートクッション16には、1対のシートアッパーレール18が内蔵されている。各シートアッパーレール18は、前後方向に延びるように設置されたシートロワーレール19に対してスライド可能に取り付けられている。各シートアッパーレール18には、シートスライドスクリュー20が取り付けられている。これらのシートスライドスクリュー20は、スライド用モータ21によってシートスライドハウジング22内のウォームギアを介して回転可能である。シートスライドスクリュー20には、ナットホールドブラケット23に保持された樹脂ナットが噛み合っている。ナットホールドブラケット23は、シートロワーレール19に固定されている。
【0020】
スライド用モータ21を回転駆動させると、その回転がシートスライドハウジング22内のウォームギアを介してシートスライドスクリュー20に伝達される。すると、シートスライドスクリュー20が回転しながら前後方向に移動し、これに伴ってシートアッパーレール18がシートロワーレール19に沿って前後方向にスライドする。これにより、運転シート14全体が前後方向にスライドするようになる。
【0021】
図4は、フロントバーチカル調整機構の詳細構成図である。同図において、シートクッション16には、1対のシートクッションブラケット24が内蔵されている。各シートクッションブラケット24には、横方向に延びるフロントバーチカルロッド25がリンク26を介して連結されている。また、フロントバーチカルロッド25には、前後方向に延びるフロントバーチカルスクリュー27がリンク28を介して連結されている。フロントバーチカルスクリュー27は、フロントバーチカル用モータ29によってフロントバーチカルハウジング30内のウォームギアを介して前後方向に移動可能である。
【0022】
フロントバーチカル用モータ29を回転駆動させると、その回転がフロントバーチカルハウジング30内のウォームギアを介してフロントバーチカルスクリュー27に伝達され、フロントバーチカルスクリュー27が前後方向に移動する。そして、そのフロントバーチカルスクリュー27の前後方向の動きがリンク28を介してフロントバーチカルロッド25に伝達され、フロントバーチカルロッド25が回転する。そして、そのフロントバーチカルロッド25の回転がリンク26を介して各シートクッションブラケット24に伝達され、シートクッションブラケット24が上下動し、これに伴ってシートクッション16の前端部が上下動するようになる。
【0023】
図5は、リフター調整機構の詳細構成図である。同図において、シートクッション16には、1対のロワーアーム31が内蔵されている。各ロワーアーム31の後部には、横方向に延びるリフターロッド32がリンク33を介して連結されている。また、各ロワーアーム31の前部は、リンク34を介してシートアッパーレール18に連結されている。リフターロッド32には、前後方向に延びるリフタースクリュー35がリンク36を介して連結されている。リフタースクリュー35は、リフター用モータ37によってリフターハウジング38内のウォームギアを介して前後方向に移動可能である。
【0024】
リフター用モータ37を回転駆動させると、その回転がリフターハウジング38内のウォームギアを介してリフタースクリュー35に伝達され、リフタースクリュー35が前後方向に移動する。そして、そのリフタースクリュー35の前後方向の動きがリンク36を介してリフターロッド32に伝達され、リフターロッド32が回転する。そして、そのリフターロッド32の回転がリンク33を介して各ロワーアーム31に伝達され、各ロワーアーム31の後部が上下動し、更にリンク33の動きに合わせてリンク34が動作することで各ロワーアーム31の前部も上下動する。これにより、運転シート14全体が上下動するようになる。
【0025】
図6は、リクライニング調整機構の詳細構成図であり、図7は、リクライニング調整機構の作動状態を示す図である。各図において、シートバック17には、シートバックフレーム39が内蔵されている。シートバックフレーム39と各ロワーアーム31とは、リクライニングヒンジピン40を介して連結されている。シートバックフレーム39には、リクライニングヒンジピン40の回転軸に対してオフセットされた中心を有するカム部を構成するリクライニングインナーブラケット41が取り付けられ、このリクライニングインナーブラケット41には外歯ギア42が設けられている。ロワーアーム31にはリクライニングアウターブラケット43が取り付けられ、このリクライニングアウターブラケット43には、外歯ギア42と噛み合う内歯ギア44が設けられている。外歯ギア42の歯数は、内歯ギア44の歯数よりも1つ多くなっている。リクライニングヒンジピン40は、リクライニング用モータ45によってリクライニングギアボックス46内のギアを介して回転可能である。
【0026】
リクライニング用モータ45を回転駆動させると、その回転がリクライニングボックス46内のギアを介してリクライニングヒンジピン40に伝達され、リクライニングヒンジピン40が回転し、これに伴ってリクライニングインナーブラケット41が回転し、更に外歯ギア42及び内歯ギア44を介してリクライニングアウターブラケット43が回転する。このとき、外歯ギア42の歯数は内歯ギア44の歯数よりも1歯多く設定されているため、内歯ギア44が1回転するごとに、内歯ギア44と外歯ギア42との噛み合う位置が変わり、結果的にシートバックフレーム39が徐々に移動する(図7参照)。これにより、シートクッション16に対するシートバック17の傾斜角度が変わることとなる。
【0027】
このような機能を有する運転シート14のシートクッション16の右側側部には、図2に示すように、上記のスライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45を駆動するための手動操作スイッチ47と、任意の運転シート14の位置及び姿勢をシート位置・姿勢データとしてECU15のメモリに記憶するための登録ボタン48とが設けられている。手動操作スイッチ47は、上記のスライド調整、フロントバーチカル調整、リフター調整及びリクライニング調整を運転者自身が行うためのものである。
【0028】
図8は、本実施形態の走行制御装置の制御系構成図である。同図において、ECU15は、サスペンション制御部(減衰力制御手段)49と、シート制御部(シート制御手段)50とからなっている。
【0029】
サスペンション制御部49は、Gセンサ8、舵角センサ10、ストップランプスイッチ11及び車輪速センサ12等の検出信号とモード選択スイッチ13の選択信号とに基づいて、ショックアブソーバ5の減衰力を自動制御する。具体的には、サスペンション制御部49は、モード選択スイッチ13で通常モードが選択されたときは、上記のセンサに基づいて、ソフトな乗り心地とフラットな操縦安定性とを両立させるようにアブソーバアクチュエータ7を制御し、モード選択スイッチ13でスポーツモードが選択されたときは、上記のセンサに基づいて、通常モードよりもショックアブソーバ5の減衰力が高め(硬め)となるようにアブソーバアクチュエータ7を制御する。
【0030】
シート制御部50は、モード選択スイッチ13の選択信号に応じてスライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45を制御することにより、運転シート14の位置及び姿勢を自動制御する。
【0031】
シート制御部50のメモリには、通常走行及びスポーツ走行に適した運転シート14の位置及び姿勢がそれぞれ通常走行用シート位置・姿勢データ及びスポーツ走行用シート位置・姿勢データとして予め登録されている。
【0032】
ところで、モード選択スイッチ13によりスポーツモードが選択された場合には、サスペンション制御部49によってショックアブソーバが高減衰に設定されるため、ばね上である車体4のストロークが小さくなる。このため、操舵時には車両1の横加速度が高くなり、加減速時や制動時には車両1の前後加速度が高くなる。従って、運転シート14の位置及び姿勢が通常走行に適したままの状態にあると、運転操作中に運転者の体が動かされやすくなり、運転者の着座姿勢が安定しなくなるので、操舵や制動のための操作量が十分に得られず、また乗り心地が悪くなってしまう。そこで、スポーツモードが選択された時の運転シート14の位置及び姿勢としては、運転者の腿から尻全体にかけてシートクッション16に十分密着するような状態に設定する。
【0033】
なお、運転シート14の位置及び姿勢をメモリに登録する場合は、運転者自身が手動操作スイッチ47を操作して、スライド調整、フロントバーチカル調整、リフター調整及びリクライニング調整を実施することで、運転しやすい運転シート14の位置及び姿勢を決定し、登録ボタン48を操作すれば良い。
【0034】
図9は、シート制御部50による運転シート14の制御処理手順を示すフローチャートである。同図において、まずモード選択スイッチ13の選択信号を入力し(手順101)、ショックアブソーバ5の減衰力制御モードが通常モードからスポーツモードに切り換えられたかどうかを判断する(手順102)。減衰力制御モードがスポーツモードに切り換えられたときは、メモリに登録されているスポーツ走行用シート位置・姿勢データを読み出する(手順103)。そして、運転シート14の位置及び姿勢が当該スポーツ走行用シート位置・姿勢データに対応したものとなるように、スライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45を制御する(手順104)。
【0035】
ショックアブソーバ5の減衰力制御モードがスポーツモードから通常モードに切り換えられたときは、特に示してはいないが、運転シート14の位置及び姿勢がメモリに登録されている通常走行用シート位置・姿勢データに対応したものとなるように、スライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45を制御する。
【0036】
以上のように本実施形態にあっては、モード選択スイッチ13によりスポーツモードが選択されたときには、通常モードよりもショックアブソーバ5が高減衰力となるようにアブソーバアクチュエータ7を制御すると共に、運転シート14に対する運転者の腿、尻、膝及び背中等の密着性が通常モードよりも良くなるように運転シート14の位置及び姿勢を制御する。従って、ショックアブソーバ5の減衰力が高くなることで高い前後加速度及び横加速度が発生しても、車体4の上下方向の振動による荷重が運転者の腿及び尻に効果的に分散されるため、運転者の体のずれ動きが低減され、運転者の着座姿勢が安定化するようになる。これにより、操舵時や制動時の十分な操作量が安定して得られるため、運転操作性を向上させることができる。また、運転者の腿及び尻の大部分で振動を受けることになるので、乗り心地を向上させることもできる。
【0037】
また、通常走行及びスポーツ走行に適した運転シート14の位置及び姿勢をシート位置・姿勢データとして事前にメモリに登録しておき、そのシート位置・姿勢データに従って運転シート14の位置及び姿勢を制御するので、走行制御装置の構成の簡単化が図れると共に、シート制御部50において複雑な演算処理等を実行しなくて済む。
【0038】
図10は、本発明に係わる走行制御装置の他の実施形態の制御系構成図である。図中、上述した実施形態と同一または同等の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
同図において、本実施形態の走行制御装置は、図8に示すものに加えて、運転シート14に運転者が着座した時にシートクッション16に加わる荷重を計測する複数の荷重計(荷重検出手段)60を有している。これらの荷重計60は、図11に示すように、シートクッション16の面圧分布を検出すべく、シートクッション16の上端部の至る所に数多く配置されている。なお、運転者の腿下から受ける座圧を検出するために、シートクッション16の前端部にも荷重計60を設けても良い。
【0040】
また、ECU15は、上述した実施形態におけるシート制御部50に代えて、シート制御部61を有している。シート制御部61は、モード選択スイッチ13の選択信号及び各荷重計60の計測信号に基づいて、スライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45を制御することにより、運転シート14の位置及び姿勢を自動制御する。
【0041】
図12は、シート制御部61による運転シート14の制御処理手順を示すフローチャートである。同図において、図9に示す手順101,102と同様の処理を実行し、モード選択スイッチ13により減衰力制御モードが通常モードからスポーツモードに切り換えられたときは、各荷重計60の計測信号を入力する(手順105)。そして、各荷重計60の計測信号に基づいて、シートクッション16の面圧分布を検出する(手順106)。そして、シートクッション16の面圧分布を均一にするためのスライド用モータ21、フロントバーチカル用モータ29、リフター用モータ37及びリクライニング用モータ45の制御量を求め、その制御量に応じて各モータ21,29,37,45を制御する(手順107)。
【0042】
このようにシートクッション16の面圧分布が均一になるように運転シート14の位置及び姿勢を制御することにより、運転者の腿及び尻全体がシートクッション16に十分密着するようになる。
【0043】
なお、ショックアブソーバ5の減衰力制御モードがスポーツモードから通常モードに切り換えられたときは、上記の実施形態と同様に、予めメモリに記憶された通常走行用シート位置・姿勢データに応じてモータを制御しても良いし、或いはスポーツモードに切り換えられる前の運転シート14の位置及び姿勢をシート位置・姿勢データとしてメモリに記憶しておき、そのシート位置・姿勢データに応じてモータを制御しても良い。
【0044】
以上のような本実施形態においても、モード選択スイッチ13によりスポーツモードが選択されることでショックアブソーバ5の減衰力が高くなっても、運転者の着座姿勢が安定するようになるため、良好な運転操作性及び乗り心地を維持することができる。
【0045】
また、運転者が複数人いる場合に、各運転者についてスポーツ走行に適した運転シート14の位置及び姿勢を事前に決めてメモリに登録しておくという手間を省くことができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態は、スライド調整機能、フロントバーチカル調整機能、リフター調整機能及びリクライニング調整機能を有する運転シート14の位置及び姿勢を、ショックアブソーバ5の減衰力制御モードに応じて自動制御するものであるが、運転シートの調整機能としては、特に上記のものには限られない。例えばシートクッションの後端部を上下させる機構、シートクッションの中心部に対してシート全体を後方に微小回転させる機構、シートクッション及びシートバックのサイドサポートを動かす機構等を有する運転シートについても、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係わる走行制御装置の一実施形態を搭載した車両の概略図である。
【図2】図1に示した運転シートの調整機能を示す斜視図である。
【図3】図2に示した運転シートのスライド調整機構の詳細構成図である。
【図4】図2に示した運転シートのフロントバーチカル調整機構の詳細構成図である。
【図5】図2に示した運転シートのリフター調整機構の詳細構成図である。
【図6】図2に示した運転シートのリクライニング調整機構の詳細構成図である。
【図7】図6に示したリクライニング調整機構の作動状態を示す図である。
【図8】本発明に係わる走行制御装置の一実施形態の制御系構成図である。
【図9】図8に示したシート制御部による運転シートの制御処理手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係わる走行制御装置の他の実施形態の制御系構成図である。
【図11】図10に示した荷重計の配置箇所を示す斜視図である。
【図12】図10に示したシート制御部による運転シートの制御処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1…車両、5…ショックアブソーバ、13…モード選択スイッチ(モード選択手段)、14…運転シート、16…シートクッション(座面部)、49…サスペンション制御部(減衰力制御手段)、50…シート制御部(シート制御手段)、60…荷重計(荷重検出手段)、61…シート制御部(シート制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される走行制御装置において、
前記車両に設けられたショックアブソーバの減衰力制御モードを選択するモード選択手段と、
前記モード選択手段で選択された減衰力制御モードに応じて前記ショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御手段と、
前記モード選択手段で選択された減衰力制御モードに応じて、前記車両に設けられた運転シートの位置及び姿勢を制御するシート制御手段とを備えることを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記減衰力制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードよりも前記ショックアブソーバを高減衰力に設定するための第2制御モードとを含み、
前記シート制御手段は、前記モード選択手段により前記第2制御モードが選択されると、前記第1制御モードが選択されたときに比べて前記運転シートと運転者の体との密着性が高くなるように、前記運転シートの位置及び姿勢を制御することを特徴とする請求項1記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記シート制御手段は、前記第2制御モードに対応するシート位置・姿勢データを予め記憶しておき、前記モード選択手段により前記第2制御モードが選択されると、前記シート位置・姿勢データに応じて前記運転シートの位置及び姿勢を制御することを特徴とする請求項2記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記運転シートに運転者が着座した時に前記運転シートの座面部に加わる荷重を検出する荷重検出手段を更に備え、
前記シート制御手段は、前記モード選択手段により前記第2制御モードが選択されると、前記荷重検出手段の検出値に基づいて前記運転シートの位置及び姿勢を制御することを特徴とする請求項2記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−94164(P2008−94164A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275519(P2006−275519)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】