説明

走行制御装置

【課題】本線車両の有無にかかわらず合流路から本線への自車両の円滑な合流を支援する走行制御装置を提供すること。
【解決手段】所定速度まで自車両を加速させる加速制御を実行する走行制御装置100は、走行環境に関する走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段3と、走行環境情報取得手段3が取得した走行環境情報に基づいて自車両が合流路に進入したか否かを判定する合流路進入当否判定手段11と、合流路当否判定手段11により自車両が合流路に進入したと判定された場合に加速制御における加速度を増大させる加速度増大手段12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定速度まで自車両を加速させる加速制御を実行する走行制御装置に関し、特に、加速制御を用いて合流路から本線への自車両の合流を支援する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両が合流路から本線へ合流するときに円滑な合流が可能となるよう走行速度の調整を行う車両速度制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両速度制御装置は、車車間通信を介して取得する情報に基づいて本線道路を走行する本線車両が合流地点に到達する時刻を算出し、本線車両が合流地点に到達する時刻と自車両がその合流地点に到達する時刻とが重ならないよう自車両の走行速度を調整する。
【特許文献1】特開平11−161895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両速度制御装置は、本線道路を走行する本線車両が存在する場合であって、かつ、本線車両が車車間通信装置を備える場合に限り自車両の走行速度を調整できるが、それ以外の場合には自車両の走行速度を調整できず、合流路から本線への自車両の合流を支援できない。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、本線車両の有無にかかわらず合流路から本線への自車両の円滑な合流を支援する走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る走行制御装置は、所定速度まで自車両を加速させる加速制御を実行する走行制御装置であって、走行環境に関する走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段と、前記走行環境情報取得手段が取得した走行環境情報に基づいて自車両が合流路に進入したか否かを判定する合流路進入当否判定手段と、前記合流路当否判定手段により自車両が合流路に進入したと判定された場合に加速制御における加速度の増大を調整する加速度増大手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明に係る走行制御装置であって、合流路における自車両の運転操作の内容を記録する運転操作記録手段を更に備え、前記加速度増大手段は、前記運転操作記録手段が記録した運転操作の内容に基づいて加速度の増大を調整することを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、第二の発明に係る走行制御装置であって、前記運転操作記録手段は、合流路において加速制御がキャンセルされたか否かを記録することを特徴とする。
【0009】
また、第四の発明は、第三の発明に係る走行制御装置であって、合流路において加速制御がキャンセルされたときの条件を学習する運転操作学習手段を更に備え、前記加速度増大手段は、前記運転操作学習手段の学習結果に基づいて加速度の増大を調整することを特徴とする。
【0010】
また、第五の発明は、第一乃至第四の何れかの発明に係る走行制御装置であって、前記加速度増大手段は、自車両が合流路の終端から所定範囲内に進入した場合に、加速度の増大を抑制することを特徴とする。
【0011】
また、第六の発明は、第一乃至第五の何れかの発明に係る走行制御装置であって、前記走行環境情報取得手段は、ナビゲーション装置又は路車間通信装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述の手段により、本発明は、本線車両の有無にかかわらず合流路から本線への自車両の円滑な合流を支援する走行制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明に係る走行制御装置の構成例を示すブロック図であり、走行制御装置100は、制御装置1、ミリ波センサ2、ナビゲーション装置3、ブレーキ装置4、クルーズコントロール装置5、車車間通信装置6、路車間通信装置7、ブレーキ制御装置8及びスロットル制御装置9から構成される。
【0015】
制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等を備えたコンピュータであって、例えば、走行制御手段10、合流路進入当否判定手段11、加速度増大手段12、運転操作記録手段13及び運転操作学習手段14のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、ミリ波センサ2、ナビゲーション装置3、ブレーキ装置4、クルーズレバー5、車車間通信装置6又は路車間通信装置7の出力に応じて上述の各手段による演算をCPUに実行させ、その演算結果に基づく制御信号をブレーキ制御装置8又はスロットル制御装置9に出力する。
【0016】
ミリ波センサ2は、自車両周辺に存在する物体を検出するためのセンサであり、例えば、グリルやバンパー内に設置され、測定データを制御装置1に出力して、制御装置1が自車両側方を走行する本線車両と自車両との間の距離、本線車両の走行速度、自車両と本線車両との間の相対速度(速度差)等を算出できるようにする。
【0017】
ナビゲーション装置3は、走行環境情報取得手段の一例であり、GPS(Global Positioning System)受信機により取得される自車両の位置情報とハードディスク等に記憶された地図情報データベース(以下、「地図情報DB」とする。)とに基づいて目的地までの経路を示しながら車両を誘導するための装置である。
【0018】
自車両の位置情報は、例えば、GPS受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号に基づいて測位・演算される。測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよいが、好ましくは精度の高い相対測位が用いられる。この際、自車両の位置は、舵角センサ、車速センサやジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてもよい。
【0019】
地図情報DBは、交差点、合流点、インターチェンジ等のノード位置、リンク(ノード間を接続する要素)の距離、リンクコスト(リンクを通過するために要する時間、費用等の度合いをいう。)、施設位置(緯度、経度、高度)、施設名称等を体系的に記憶するデータベースであり、記憶される地図情報は、合流路の総距離、合流路の始端位置及び終端位置(緯度、経度、高度)、合流路の回転半径、合流路の勾配等に関する情報を含む。
【0020】
ここで、「合流路」とは、主要道路、自動車専用道路又は高速道路等の本線に合流するために設置される道路であり、例えば、遅い交通流から速い交通流へ合流する際の加速を行うための道路である。
【0021】
ブレーキ装置4は、制動力を発生させて自車両を減速させるための装置であり、ブレーキペダル踏み込みの有無、ブレーキペダル踏み込み量等に関する情報を制御装置1に出力する。
【0022】
クルーズコントロール装置5は、自車両の走行速度を所定の巡航速度に制御する定速走行制御で用いられる各種設定を行うための装置であり、例えば、レバー形状を採用しながらステアリングホイール付近に設置され、巡航速度の設定(例えば、40km/h〜100km/hの間で設定される。)、巡航速度の変更、定速走行制御の開始、中止若しくは再開、設定加速度の変更等を可能にする各種スイッチを備え、設定内容を制御装置1に出力する。
【0023】
車車間通信装置6は、自車両と他車両との間の通信を制御するための装置であり、例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)で使用される5.8GHzの周波数帯域を利用しながら各車両の位置、走行速度、加速度等の情報のやり取りを可能にする。
【0024】
路車間通信装置7は、走行環境情報取得手段の一例であり、道路に埋設された発信機や道路脇に設置された発信機が発信する情報を受信するための車載装置であって、例えば、合流路における合流路の総距離、合流路の始端位置、合流路の回転半径、合流路の勾配等に関する静的な情報、又は、合流路付近の気象情報、本線の渋滞、道路規制、路面凍結注意報等の道路に関する動的な情報を受信する。
【0025】
ブレーキ制御装置8は、ブレーキ装置4による制動力を自動的に制御するための装置であり、例えば、制御装置1が出力する制御信号に基づいて油圧ポンプの圧油吐出量を増減させてブレーキ装置4に送出する油圧を調整しながら自車両の減速を制御する。
【0026】
スロットル制御装置9は、スロットル開度を自動的に制御するための装置であり、例えば、制御装置1が出力する制御信号に基づいて電磁スロットルバルブに供給される電流を増減させてスロットル開度を調整しながら自車両の加速を制御する。
【0027】
次に、制御装置1が有する各種手段について説明する。
【0028】
走行制御手段10は、自車両の走行を制御するための手段であり、例えば、クルーズコントロール装置5により設定された巡航速度で定速走行を実現するようスロットル制御装置9に制御信号を出力して設定加速度で自車両を加速させ(加速制御)、或いは、ブレーキ制御装置8に制御信号を出力して設定減速度で自車両を減速させながら(減速制御)、定速走行制御を実現する。
【0029】
なお、本実施例において、加速制御及び減速制御は、定速走行制御の一部を構成するものであるが、定速走行制御とは別個独立のものであってもよい。その場合、例えば、加速制御は、走行する道路の制限速度まで自車両を加速させ、減速制御は、停止に至るまで自車両を減速させてもよい。
【0030】
走行制御手段10は、定速走行制御が開始されると、その巡航速度が現在速度よりも大きい場合には設定加速度で自車両を加速させながらその巡航速度を実現し、一方で、その巡航速度が現在速度よりも小さい場合には設定減速度で自車両を減速させながらその巡航速度を実現する。
【0031】
なお、走行制御手段10は、クルーズコントロール装置5で巡航速度が設定・変更された場合に定速走行制御を開始させてもよく、クルーズコントロール装置5における所定のスイッチ(例えば、スタート(巡航開始)ボタン、レジューム(巡航再開)ボタン等がある。)が操作された場合に定速走行制御を開始させてもよい。
【0032】
更に、走行制御手段10は、自車両が合流路に進入した場合、高速道路本線に進入した場合、制限速度が所定値以上の道路に進入した場合、或いは、追い越し車線から走行車線に車線変更した場合等、自車両の位置情報を取得しながら自車両が所定の領域に進入したと判断した場合に定速走行制御を自動的に実行させるようにしてもよい。
【0033】
一方、走行制御手段10は、自車両が高速道路本線を逸脱した場合、制限速度が所定値未満の道路に進入した場合、或いは、走行車線から追い越し車線に車線変更した場合等に定速走行制御を自動的に中止させるようにしてもよい。
【0034】
また、走行制御手段10は、自車両前方を探索するミリ波センサ2の出力に基づいて先行車両の存否を判断し、先行車両が存在すると判断した場合には(先行車両と自車両との間の車間距離が所定距離未満の場合)、その車間距離を所定距離で維持するよう所定の加速度又は減速度で自車両を加速或いは減速させるようにしてもよい(以下、「追従走行制御」とする。)。
【0035】
追従走行制御において、走行制御手段10は、先行車両が減速して自車両とその先行車両との間の車間距離が所定距離より小さくなった場合には自車両を減速させて車間距離を拡大させるようにし、一方で、先行車両が加速して自車両とその先行車両との間の車間距離が所定距離より大きくなった場合には自車両を加速させて車間距離を縮小させるようにする。
【0036】
合流路進入当否判定手段11は、自車両が合流路に進入したか否かを判定するための手段であり、例えば、ナビゲーション装置3の出力に基づいて自車両が合流路に進入したか否かを判定する。
【0037】
また、合流路進入当否判定手段11は、路車間通信装置7を介して取得した情報に基づいて自車両が合流路に進入したか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
図2及び図3は、合流路を例示する図であり、図3は、図2における領域IIIの拡大図であって、合流車両(自車両)V1及び本線車両V2を示す。また、破線で示す領域は、それぞれ、図面右上方向に向かう高速道路の本線に合流する合流路R1、図面左下方向に向かう高速道路の本線に合流する合流路R2を示す。なお、地点S1は、合流路R1の始端を示し、地点E1は、合流路R1の終端を示す。同様に、地点S2は、合流路R2の始端を示し、地点E2は、合流路R2の終端を示す。合流路始端S1、S2及び合流路終端E1、E2は、地図情報に予め登録されていてもよく、磁気ネイル等の発信機が埋設されることで予め決定されていてもよい。
【0039】
また、図3は、本線車両V2が自車両V1の右前方を併走しており、合流路終端E1までの残部距離も短く、自車両V1を加速させた場合には却って自車両V1の合流を妨げることとなるため自車両V1の加速を抑制すべき状況を表す。
【0040】
合流路進入当否判定手段11は、自車両の位置情報と地図情報とから自車両が合流路始端S1に至ったことを認識した場合、或いは、合流路始端S1における道路に埋設された発信機又は路側帯に設置された発信機が発信する信号を受信した場合に、自車両が合流路R1に進入したものと判定する。合流路R2についても同様である。
【0041】
加速度増大手段12は、加速制御における設定加速度を調整するための手段であり、例えば、合流路進入当否判定手段11により自車両が合流路に進入したと判定された場合に、設定加速度をその標準設定(例えば、5km/h/秒)より増大させる。
【0042】
高速道路走行時に所定の巡航速度まで自車両を加速させるような場合に比べ、合流路から本線に自車両を合流させる場合には、自車両を加速させるために利用できる走行距離が限定されるからである。
【0043】
運転操作記録手段13は、合流路における運転操作を記録するための手段であり、例えば、合流路進入当否判定手段11により自車両が合流路に進入したと判定された場合に、ブレーキ装置4の出力に基づくブレーキペダル踏み込みの有無、クルーズコントロール装置5の出力に基づく定速走行制御の中止操作の有無等、加速制御をキャンセルするための運転操作(以下、「加速キャンセル操作」とする。)が行われたことをハードディスク等の不揮発性記憶媒体に用意される運転操作履歴データベースに記録する。
【0044】
また、運転操作記録手段13は、ミリ波センサ2の出力に基づく併走する本線車両の有無、ナビゲーション装置3又は路車間通信装置7の出力に基づく合流路の総距離、合流路の勾配、合流路の回転半径、合流路始端からの距離、合流路終端までの距離、気象条件、時刻若しくは日付、クルーズコントロール装置5の出力に基づく設定加速度、又は、車速センサの出力に基づく走行速度等を加速キャンセル操作に関連付けて運転操作履歴データベースに記録するようにしてもよい。
【0045】
更に、運転操作記録手段13は、ヘッドライト点灯の有無、ワイパー操作の有無等を加速キャンセル操作に関連付けて運転操作履歴データベースに記録するようにしてもよい。夜間走行又は雨天走行が運転者の加速キャンセル操作に影響を与える場合があるからである。
【0046】
運転操作学習手段14は、合流路における運転操作の内容を学習するための手段であり、例えば、運転操作記録手段13が記録した運転操作の内容に基づいて運転者が加速キャンセル操作を実行する条件を学習する。
【0047】
運転操作学習手段14は、例えば、合流路毎、或いは、構成が類似する合流路(合流路の総距離、合流路の勾配、合流路の回転半径等が類似する合流路群である。)毎に、運転者が加速キャンセル操作を行う条件(併走する本線車両の有無、合流路終端までの距離、気象条件、昼夜の別等で構成される。)を学習し、その学習結果をハードディスク等の不揮発性記憶媒体に記憶する。
【0048】
なお、運転操作学習手段14は、合流路毎、或いは、構成が類似する合流路毎に、加速キャンセル操作が行われたか否か、或いは、加速キャンセル操作が何回行われたかを学習結果として記憶するようにしてもよい。
【0049】
次に、図4を参照しながら、走行制御装置100が加速制御における設定加速度を増大させる処理(以下、「設定加速度増大処理」とする。)について説明する。なお、図4は、設定加速度増大処理の流れを示すフローチャートであり、走行制御装置100は、所定周期で繰り返しこの設定加速度増大処理を実行するものとする。
【0050】
最初に、走行制御装置100の制御装置1は、合流路進入当否判定手段11により、自車両が合流路に進入したか否かを判定する(ステップS1)。
【0051】
合流路進入当否判定手段11は、合流路始端S1に設置された発信機が発信する信号を路車間通信装置7により受信して合流路R1の存在を検出した場合に、自車両が合流路R1に進入したと判定する(図2及び図3参照。)。
【0052】
また、合流路進入当否判定手段11は、ナビゲーション装置3の出力に基づいて自車両の位置が合流路始端S1に到達したことを検出した場合に、自車両が合流路R1に進入したと判定するようにしてもよい。
【0053】
自車両が未だ合流路に進入していないと判定された場合(ステップS1のNO)、制御装置1は、加速制御における設定加速度を増大させることなく、また、定速走行制御を自動的に実行させることなくこの処理を終了させる。
【0054】
一方、自車両が合流路に進入したと判定された場合(ステップS1のYES)、制御装置1は、加速度増大手段12により設定加速度を増大させ(ステップS2)、定速走行制御を自動的に実行させる(ステップS3)。
【0055】
加速度増大手段12は、ナビゲーション装置3又は路車間通信装置7を介して取得した合流路R1に関する情報(総距離、勾配、回転半径等である。)、又は、運転者の運転感覚に影響を与える要素に関する情報(夜間走行、雨天走行の当否等である。)に基づいて新たに設定すべき設定加速度を導き出し、導き出した設定加速度で標準の設定加速度を置き換えた上で走行制御手段10により定速走行制御を実行させるようにする。
【0056】
また、加速度増大手段12は、予め合流路R1に関連付けて記憶された設定加速度(例えば、ROM上のルックアップテーブルに記憶されている。)を読み出し、読み出した設定加速度で標準の設定加速度を置き換えた上で走行制御手段10により定速走行制御を実行させるようにしてもよい。なお、ルックアップテーブルは、合流路毎に設定加速度を記憶しておいてもよく、構造が類似する合流路群毎に設定加速度を記憶しておいてもよい。
【0057】
この場合、走行制御手段10は、合流路R1に関する情報、又は、運転者の運転感覚に影響を与える要素に関する情報に基づいて設定最大速度を増減させるようにしてもよい。
【0058】
このようにして、走行制御装置100は、高速道路本線への合流に適した加速を実現することができ、より強い加速が必要であるにもかかわらず標準の設定加速度で緩やかに自車両を加速させることで運転者に焦燥感や違和感を与えてしまうのを防止することができる。
【0059】
次に、図5を参照しながら、走行制御装置100が加速制御における設定加速度の増大を調整する処理(以下、「設定加速度増大調整処理」とする。)について説明する。なお、図5は、設定加速度増大調整処理の流れを示すフローチャートであり、走行制御装置100は、所定周期で繰り返しこの処理を実行するものとする。
【0060】
また、走行制御装置100は、合流路進入当否判定手段11により自車両が合流路R1に進入したと判定された場合に、加速度増大手段12により自車両の加速度を増大させ、かつ、運転操作記録手段13により自車両の運転者による合流路R1における運転操作の記録を開始させる。
【0061】
合流路における運転操作の記録は、運転者が加速キャンセル操作を実行する条件を運転操作学習手段14に学習させ、合流路であっても加速を抑制すべき状況(例えば、図3に示す状況である。)を、運転者が加速キャンセル操作を実行する前に認識できるようにするためであり、ひいては運転者の運転感覚に合った加速を実現させるためである。
【0062】
最初に、制御装置1は、ハードディスク等に記憶された運転操作学習手段14による学習結果を取得する(ステップS11)。運転操作学習手段14は、例えば、特定の合流路において過去に加速キャンセル操作が行われたか否か、或いは、加速キャンセル操作が何回行われたかを学習結果として記憶している。
【0063】
また、運転操作学習手段14は、総距離がT1(メートル)で下り勾配がT2(%)である合流路において設定加速度をα(km/h/秒)に増大させた場合に走行速度がV(km/h)で加速キャンセル操作が行われたという記録に基づいて、その合流路における設定加速度αが大き過ぎたことを学習しており、そのときの条件(合流路の総距離、勾配、走行距離等である。)と設定加速度αとの組み合わせを学習結果として記憶するようにしてもよい。
【0064】
また、運転操作学習手段14は、同じ合流路において複数回の加速キャンセル操作が行われていた場合には、各種条件(合流路の総距離、勾配、走行距離等である。)の統計値(例えば、平均値、中間値、最大値、最小値、中央値等である。)を学習結果として記憶するようにしてもよい。
【0065】
また、運転操作学習手段14は、その合流路における最適な設定加速度β(km/h/秒)(α<β)を推定し、そのときの条件とその推定結果を学習結果として記憶するようにしてもよい。
【0066】
なお、運転操作学習手段14は、雨天走行、夜間走行若しくは本線車両の有無、又は、自車両と本線車両との間の位置関係等を学習結果に加えるようにしてもよい。
【0067】
その後、制御装置1は、学習結果に基づき、自車両が進入した合流路において過去に加速キャンセル操作が行われたか否かを判断し(ステップS12)、加速キャンセル操作が行われていた場合には(ステップS12のYES)、加速度増大手段12により設定加速度を標準設定に設定させ、或いは、一旦設定させた所定の設定加速度αを標準設定に戻させた上で(ステップS13)、走行制御手段10により定速走行制御を実行させるようにする(ステップS14)。
【0068】
一方で、加速キャンセル操作が行われていなかった場合(ステップS12のNO)、制御装置1は、加速度増大手段12により設定加速度を所定の設定加速度αに増大させ、或いは、一旦設定した所定の設定加速度αを変更することなく(ステップS15)、定速走行制御を実行させるようにする(ステップS14)。
【0069】
なお、制御装置1は、過去に加速キャンセル操作が行われたか否かを判断する代わりに、加速キャンセル操作が所定回数以上行われたか否かを判断するようにしてもよい。
【0070】
また、加速度増大手段12は、設定加速度を標準設定に設定する、或いは、一旦設定した所定の設定加速度αを標準設定に戻す代わりに、所定の設定加速度αよりも小さく標準設定よりも大きい別の設定加速度βを設定加速度として採用するようにしてもよい。
【0071】
なお、制御装置1は、自車両が進入した合流路における条件と運転操作学習手段14による学習結果が示す複数の条件とを順次比較し(ステップS12)、その合流路の条件に合致する条件(学習結果)が存在する場合に(ステップS12のYES)、加速度増大手段12により設定加速度を標準設定に設定させ、或いは、一旦設定させた所定の設定加速度αを標準設定に戻させた上で(ステップS13)、走行制御手段10により定速走行制御を実行させるようにしてもよい(ステップS14)。
【0072】
この場合、条件の合致は、各値が完全に一致する場合の他、各値が類似する場合(その差が所定値以下の場合をいう。)を含むものとする。
【0073】
一方で、その合流路の条件に合致する条件(学習結果)が存在しない場合(ステップS12のNO)、制御装置1は、加速度増大手段12により設定加速度を所定の設定加速度αに増大させ、或いは、一旦設定した所定の設定加速度αを変更することなく(ステップS15)、定速走行制御を実行させるようにする(ステップS14)。
【0074】
このようにして、走行制御装置100は、運転者が違和感を憶えるような加速を抑制することで運転者の運転感覚に合った加速を実現させることができる。
【0075】
また、運転操作学習手段14は、個々の合流路毎に運転操作を学習するばかりでなく、条件(総距離、勾配、回転半径等である。)が類似する合流路群を一つのグループとし、グループ毎に運転操作を学習するので、走行制御装置100は、走行経験のない合流路に対しても運転操作学習手段14による学習結果を適用することができ、走行経験のない合流路においても本線道路へ自車両を円滑に合流させることができる。
【0076】
次に、図6を参照しながら、走行制御装置100が加速制御における設定加速度の増大を抑制する処理(以下、「設定加速度増大抑制処理」とする。)について説明する。なお、図6は、設定加速度増大抑制処理の流れを示すフローチャートであり、走行制御装置100は、所定周期で繰り返しこの処理を実行するものとし、自車両は、合流を完了しておらず、未だ合流路を走行中であるものとする。
【0077】
最初に、制御装置1は、ナビゲーション装置3又は路車間通信装置7の出力に基づいて自車両の位置から合流路終端までの残部距離を算出し、算出した残部距離と閾値L1(例えば、20メートルである。)とを比較する(ステップS21)。なお、閾値L1は、自車両の現在速度に応じて変化するものであってもよい。
【0078】
残部距離が閾値L1以下となった場合(ステップS21のYES)、制御装置1は、加速度増大手段12が採用している設定加速度を低減させる(ステップS22)。
【0079】
本線道路が混雑しているため合流が遅れてしまったような場合に、合流路終了点に接近しているにもかかわらず加速を継続させることで運転者に恐怖感や違和感を与えてしまうのを防止するためである。
【0080】
この場合、制御装置1は、加速度増大手段12が採用している設定加速度を標準設定に戻すようにしてもよく、より低い設定加速度を採用するようにしてもよく、加速を中止するようにしてもよく、更には、減速制御を実行させるようにしてもよい。
【0081】
一方で、残部距離が閾値L1より大きい場合(ステップS21のNO)、制御装置1は、加速度増大手段12が採用している設定加速度を低減させることなく加速制御を継続させるようにする。
【0082】
このようにして、走行制御装置100は、合流路終端付近における加速を抑制するので、運転者に恐怖感や違和感を抱かせることなく、運転者の運転感覚に合った加速制御を提供することができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0084】
例えば、上述の実施例において、走行制御装置100は、合流路における過去の運転操作の記録に基づいて加速制御における加速度を和らげる方向に調整するが、加速制御における加速度を強める方向に調整するようにしてもよい。
【0085】
この場合、運転操作記録手段13は、合流路において加速制御が実行されているときにアクセルペダル踏み込みの有無、アクセルペダル踏み込み後の走行速度等を記録し、運転操作学習手段14は、それらの記録に基づいて運転者が更なる加速を行う場合の条件、又は、運転者が望む加速度若しくは走行速度等を学習し、そして、加速度増大手段12は、運転操作学習手段14の学習結果に基づいて合流路における加速度を更に強めるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】走行制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】合流路の一例を示す図である。
【図3】図2における領域IIIの拡大図である。
【図4】設定加速度増大処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】設定加速度増大調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】設定加速度増大抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 制御装置
2 ミリ波センサ
3 ナビゲーション装置
4 ブレーキ装置
5 クルーズコントロール装置
6 車車間通信装置
7 路車間通信装置
8 ブレーキ制御装置
9 スロットル制御装置
10 走行制御手段
11 合流路進入当否判定手段
12 加速度増大手段
13 運転操作記録手段
14 運転操作学習手段
100 走行制御装置
E1、E2 合流路終端
R1、R2 合流路
S1、S2 合流路始端
V1 合流車両
V2 本線車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定速度まで自車両を加速させる加速制御を実行する走行制御装置であって、
走行環境に関する走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段と、
前記走行環境情報取得手段が取得した走行環境情報に基づいて自車両が合流路に進入したか否かを判定する合流路進入当否判定手段と、
前記合流路当否判定手段により自車両が合流路に進入したと判定された場合に加速制御における加速度の増大を調整する加速度増大手段と、
を備えることを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
合流路における自車両の運転操作の内容を記録する運転操作記録手段を更に備え、
前記加速度増大手段は、前記運転操作記録手段が記録した運転操作の内容に基づいて加速度の増大を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記運転操作記録手段は、合流路において加速制御がキャンセルされたか否かを記録する、
ことを特徴とする請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
合流路において加速制御がキャンセルされたときの条件を学習する運転操作学習手段を更に備え、
前記加速度増大手段は、前記運転操作学習手段の学習結果に基づいて加速度の増大を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記加速度増大手段は、自車両が合流路の終端から所定範囲内に進入した場合に、加速度の増大を抑制する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記走行環境情報取得手段は、ナビゲーション装置又は路車間通信装置である、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の走行制御装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−137550(P2009−137550A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318950(P2007−318950)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】