説明

走行路推定装置

【課題】 走行路に応じた車両制御を行う車両制御装置において、交差点通過後、高速に、その車両制御を復帰させることが可能な走行路推定装置を提供すること。
【解決手段】 ナビゲーション装置が備える走行路確定出力部は、車両が交差点以外を走行中の場合、ステータスを、マップマッチング部により推定された走行路の信頼性が高いことを示す「確定」に設定する(S140)。一方、車両が交差点に進入すると、ステータスを、推定される走行路の信頼性が低く、走行路を確定することができないことを示す「不確定」に設定する(S150)。また、交差点進入後の車両の走行距離が基準距離を越えた時点で、車両が旋回していないと、その時点で、ステータスを「確定」に切り替え、走行距離が基準距離を越えた時点で、車両が旋回していると、旋回完了時点で、ステータスを「確定」に切り替える(S190)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置情報と、道路地図情報と、に基づいて、車両の走行路を推定する走行路推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行路推定装置としては、マップマッチング機能を備えるカーナビゲーション装置が知られている。
マップマッチング機能を備えるカーナビゲーション装置は、GPS衛星から送信されてくる衛星信号に基づいて車両の現在位置を検出するGPS受信機、車両の進行方位を検出する地磁気センサ、車両の走行距離を計測する距離センサ、車両の旋回状態を検出するジャイロスコープ等を備え、これらセンサ等から得られる情報に基づいて導出される車両の走行軌跡(車両位置及び進行方位等)と、道路地図情報と、に基づき、車両が走行中の道路(走行路)を推定する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、近年では、カーナビゲーション装置から、車両が走行中の道路に関する情報を得て、前方の道路事象を把握し、走行路に好適な車両制御を行う車両制御装置が発明されている(例えば、特許文献3参照)。このような車両制御の技術は、車両の走行安全性を高めるための有効な技術として期待されている。
【特許文献1】特開平10−185601号公報
【特許文献2】特開平9−229698号公報
【特許文献3】特開平9−126310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、周知のマップマッチングの技術では、その特性上、道路が分岐する地点、即ち交差点の周囲で、現在走行中の道路を正確に推定することが困難になる。
従って、カーナビゲーション装置にて推定された走行路の情報に基づき、車両制御を行う場合には、交差点進入時に、一旦、ナビゲーション装置から得られる走行路の情報に基づく車両制御を禁止して、交差点から車両が離れた後に、車両制御を復帰させる必要がある。
【0005】
近年では、車両の位置検出精度、マップマッチングの精度が飛躍的に向上したが、このような技術をもってしても、交差点通過直後には、検出誤差等から車両の走行路を正確に推定することが難しく、ナビゲーション装置から得られる走行路の情報に基づく車両制御では、交差点通過後、十分な距離(例えば、100m前後)を車両が走行するまで、その動作を禁止せざるを得なかった。従って、交差点通過後しばらくの期間は、上記車両制御による利益を享受することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車両の走行路に応じて車両制御を行う車両制御装置において、交差点通過後、高速に、その車両制御を復帰させることが可能な走行路推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、交差点通過時に車両が旋回している場合(車両が右左折している場合)には、その旋回によって車両の進路を正確に特定することが困難になり、その状態で走行路の推定(マップマッチング)を行うと、推定結果の信頼性が著しく悪化するが、車両が旋回をしていない時、即ち、車両が直進している時には、車両の進路を正確に特定することが可能で、車両の実際の位置と、センサ等により特定される車両位置とに多少の誤差があっても、周知のマップマッチングの手法を用いて車両が走行中の道路(走行路)を正確に推定することができる点に着目し、上記目的を達成するに至った。
【0008】
この点に着目してなされた請求項1記載の走行路推定装置は、車両の位置を検出する検出手段の検出結果と道路地図情報とに基づき、車両の走行路を推定する走行路推定手段と、走行路確定出力手段と、進入判断手段と、距離計測手段と、車両が旋回中であるか否かを判定する旋回判定手段と、確定動作禁止手段と、を備える。
【0009】
走行路確定出力手段は、走行路推定手段の推定結果に基づき、車両の走行路を確定し、その確定情報を、外部に出力する。例えば、走行路確定出力手段は、確定動作として、走行路推定手段により推定された走行路についての情報(走行路の識別情報、道路種別等)を出力情報として決定し、これを出力する。また、走行路確定出力手段は、確定された走行路の信頼性を表す情報(情報の確かさを証明する情報等)を、確定情報として出力する構成にされてもよい。
【0010】
進入判断手段は、上記走行路推定手段の推定結果に基づき、車両が交差点に進入したか否かを判断し、距離計測手段は、この進入判断手段の判断結果に基づき、車両が交差点に進入した時点からの車両の走行距離を計測する。例えば、距離計測手段は、進入判断手段により車両が交差点に進入したと判断された時点から現在までの車両の走行距離を計測するように構成される。
【0011】
確定動作禁止手段は、この進入判断手段の判断結果及び距離計測手段の計測結果に基づいて、車両が交差点に進入した時点から、距離計測手段により計測された車両の走行距離が基準距離を越えるまでの期間、走行路確定出力手段の動作を禁止する。また、確定動作禁止手段は、上記期間の終了時点(即ち、走行距離が基準距離を越えた時点)で、旋回判定手段により車両が旋回中であると判定されていると、その後、旋回判定手段により車両が旋回中ではないと判定されるまで、継続的に、走行路確定出力手段の動作を禁止する。
【0012】
即ち、本発明では、交差点通過時において、車両が旋回しておらず走行路の推定結果の信頼性が高い時にのみ、走行路の確定情報を出力し、これを車両制御装置に提供することにより、走行路の推定結果の信頼性が低い場合に、車両制御装置側で、走行路の推定結果を用いた車両制御が行われないようにしている。
【0013】
この発明では、走行路の推定結果の信頼性の高さを保証する条件として、『車両が交差点に進入してから、基準距離を走行した時点Tで、車両が旋回中ではないこと』を設定した。このように条件を設定したのは、検出手段の検出結果には誤差が存在し、交差点進入後、ある程度の距離を車両が進行するまでは、車両が旋回中か否か判断しても、車両の進路変更動作が開始されているとは限らないためである。従って、交差点進入時から上記時点Tまでは、車両が旋回中であるか否かに拘わらず一律に、走行路を確定しないようにし、時点Tで車両が旋回していない場合には、当該交差点における進路変更動作は完了しているとして、走行路を確定するのである。
【0014】
本発明の走行路推定装置によれば、車両が交差点を直進する場合に、走行路の確定情報を、従来より高速に車両制御装置に提供することができるので、走行路の情報に基づく車両制御を、交差点通過後、高速に復帰させることができる。従って、この走行路推定装置を用いれば、交差点周囲において、上述の車両制御に係る利益を十分に得ることができる。
【0015】
尚、上記走行路推定装置においては、走行路確定出力手段の動作が禁止されている期間、走行路の確定情報が出力されないことになる。しかしながら、この際、車両制御装置側では、走行路確定出力手段の動作が禁止されているため確定情報を受信することができないのか、走行路推定装置とのデータ授受に支障が生じて、確定情報を受信することができないのかを、判別することができない。
【0016】
従って、上記の走行路推定装置においては、走行路確定出力手段の動作を禁止している期間、走行路が確定されていないことを表す情報を、外部に出力するように、確定動作禁止手段を構成するとよい。このように構成された請求項2記載の走行路推定装置によれば、確定動作禁止手段の動作を、車両制御装置側で正確に把握することができる。従って、この発明によれば、異常等への対処が容易になる他、車両制御装置側で、走行路が確定されている場合とそうでない場合の動作モードの切替を高速に行うことができる。
【0017】
ところで、車両制御装置が、車両の走行安全性に左右する車両制御と共に、走行安全性に左右しない車両制御を行う場合には、走行路推定装置から得られる走行路の信頼性が低くても、その車両制御を交差点周囲で継続可能なケースがある。
【0018】
このため、確定動作禁止手段は、走行路確定出力手段の動作を禁止している期間、走行路推定手段により推定された走行路についての情報(走行路の識別情報、道路種別等)を、走行路が確定されていないことを表す情報と共に、不確定の走行路に関する情報として送信する構成にされてもよい。
【0019】
その他、本発明の走行路推定装置において、走行路確定出力手段の動作禁止解除の判断に用いられる上記基準距離は、試験等に基づいて一定値に決定されてもよいし、車両の走行状態や、上記検出手段の検出状態等に基づいて決定されてもよい。
【0020】
尚、走行路の推定結果の信頼性の低下は、交差点で右左折が起こること、及び、検出手段の検出結果に誤差が存在することに起因するものであるから、上記基準距離は、請求項3記載のように、検出手段の検出誤差に基づいて決定されるとよい。
【0021】
このようにすれば、走行路推定結果の信頼性が保証される基準距離の値を狭めることができ、走行路確定出力手段の禁止状態を一層高速に解除することができる。従って、上記の車両制御を高速に復帰させることができる。尚、予想される基準距離の適値としては、検出手段の検出誤差、若しくは、それにオフセットを加算した値等が挙げられる。
【0022】
但し、走行路の推定方法(マップマッチング方法)には様々な方法が存在することから、基準距離は、その推定方法に応じて、適宜設定されるとよい。
また、請求項1〜3記載の走行路推定装置は、上記各手段としての機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを、コンピュータに実行させることにより構成されてもよい。このプログラムは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で、利用者に提供されてもよいし、ネットワークを通じて利用者に提供されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面と共に説明する。図1は、本発明が適用されたカーナビゲーション装置1の構成を表すブロック図である。
本実施例のナビゲーション装置1は、主に、車両の現在位置及び進行方位を検出する位置検出器10と、道路地図情報を含む地図データが記録された記憶媒体(CD−ROM、DVD、ハードディスク等)から地図データ等を読み出し、これを制御回路20に入力する地図データ入力器31と、表示装置33と、外部情報入出力装置35と、利用者の操作情報を制御回路20に入力する操作スイッチ群36と、操作スイッチ群36と同様に利用者の操作情報を制御回路20に入力するためのリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す。)37aと、リモコン37aから受信した信号を制御回路20に入力するリモコンセンサ37bと、音声出力装置38と、車内LAN(ローカルエリアネットワーク)に接続され、車内LANを構成する各端末と双方向通信可能なLANインタフェース39と、装置内各部を統括制御する制御回路20と、を備える。
【0024】
位置検出器10は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星から送信されてくる電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置等を検出するGPS受信機11と、車両に加えられる回転運動(車両の旋回運動)の大きさを検出するジャイロスコープ13と、車両の単位時間当たりの走行距離を計測する距離センサ15と、地磁気から進行方位を検出する地磁気センサ17とを備える。制御回路20は、性質の異なる誤差を有するこれら各センサ等11〜17の出力信号を、互いに補完しながら使用して、車両の現在位置及び進行方位を決定する構成にされている。尚、図1に示した位置検出器10の構成は一例であって、位置検出器10は、上述したうちの一部のセンサで構成されたものであってもよいし、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等が更に付加されたものであってもよい。
【0025】
一方、地図データ入力器31は、道路地図情報を含む上記地図データや、建造物等に関するデータ、位置検出の精度向上のためのマップマッチング用データ等の各種データを、記録媒体から読み出し、制御回路20に入力する構成にされている。
【0026】
地図データに含まれる道路地図情報は、交差点等の複数のノード間をリンクにより接続して道路地図を形成するものであって、各リンクに対し、リンクの識別番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端の位置座標、リンクの道路幅及び道路種別(有料道路等の道路情報や、直線・カーブ等の道路情報)、道路を特定するための道路ID(例えば国道○号線のような道路を特定する情報)等のデータからなるリンク情報を備える。また、この道路地図情報は、各ノードに対し、ノードの識別番号(ノードID)、ノードの位置座標、ノード種別(交差点に関する情報、信号機の有無を表す情報)等のデータからなるノード情報を備える。
【0027】
また、表示装置33は、液晶ディスプレイ等からなるカラー表示装置であり、その表示画面には、地図画面として、車両の現在位置を表すマーク、地図データ入力器31より入力される地図データ、誘導経路などが、重ねて表示される。
【0028】
その他、外部情報入出力装置35は、外部、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System)などのインフラから提供される情報を受信すると共に、外部へ各種情報を送信するための装置である。この外部情報入出力装置35が外部から受信した情報は、制御回路20にて処理される。
【0029】
また、制御回路20は、各種演算処理を行うためのCPU21と、CPU21により実行される各種プログラムを記憶するROM23と、CPU21によるプログラムの実行時に、作業用メモリとして使用されるRAM25と、を備え、これら各部を用いて、装置各部を統括制御し、又、経路探索・案内等の機能を実現する。
【0030】
例えば、制御回路20は、リモコン37aを介してリモコンセンサ37bから、あるいは操作スイッチ群36から、目的地に関する情報が入力されると、ROM23に記録された経路探索用のプログラムを読出し、これをCPU21に実行させることにより、図2に示すように、経路探索部26として機能する。尚、図2は、制御回路20にて実現される機能の一部をブロック化して表した機能ブロック図である。
【0031】
経路探索部26は、ダイクストラ法等の周知の経路探索方法を用いて、現在位置からその目的地までの最適な経路を探索し、探索された経路を表示装置33に表示させる。また、制御回路20は、利用者により誘導経路が決定されると、経路案内用のプログラムを読出し、これをCPU21に実行させることにより、経路案内部27として機能する。
【0032】
経路案内部27は、マップマッチング部28にて推定された車両の走行路の識別情報(リンクID又はノードID)を、マップマッチング部28から取得し、この情報により車両の現在の走行路を把握して、車両前方の道路事象を理解し、経路探索部26にて探索された経路に沿って、運転者が車両を進行させることができるように、適宜、音声出力装置38に、経路案内用の音声信号を入力し、音声出力装置38に経路を音声案内させる。
【0033】
尚、制御回路20は、ROM23に格納されたマップマッチング用のプログラムをCPU21に実行させることにより、マップマッチング部28としての機能を果たす。このマップマッチング部28は、位置検出器10の出力信号から得られる車両位置及び進行方位等の情報と、車両周囲の道路地図情報と、に基づいて、周知のマップマッチング法により、車両の走行路を推定し、推定した走行路の識別情報(リンクID又はノードID)を出力する。
【0034】
また、制御回路20は、ROM23に格納された確定処理及び出力処理を実現するためのプログラムをCPU21に実行させることにより、車両の現在の走行路に対応するリンク情報と、「確定」「不確定」のいずれかの値を取るパラメータで構成されるステータス情報とを、車内LANに接続された車両制御装置40に送信する走行路確定出力部29としての機能を果たす。尚、ステータス情報は、マップマッチング部28により推定された走行路の信頼性を示す情報として使用される。具体的に、「確定」は、マップマッチング部28の推定結果の信頼性を保証する情報として、「不確定」は、マップマッチング部28の推定結果の信頼性が低く、この推定結果をもって走行路を確定することはできないことを示す情報として使用される。
【0035】
本実施例においては、ナビゲーション装置1のLANインタフェース39に、車両制御装置40が接続されており、走行路確定出力部29は、LANインタフェース39を通じて、車両制御装置40に、車両の現在の走行路に対応するリンク情報及び上記ステータス情報を送信する。尚、車両制御装置40は、車両各部に配置された車両の走行に携わる装置を制御するものであり、ナビゲーション装置1から得られるリンク情報及びステータス情報に基づいて、車両が現在走行中の道路に適した車両制御を行う。
【0036】
以下には、走行路確定出力部29の動作態様を、図3,4を用いて説明し、車両制御装置40の動作態様を、図5を用いて説明する。
図3は、上記走行路確定出力部29が実行する確定処理を表すフローチャートであり、図4は、走行路確定出力部29が、上記確定処理と並行して、繰り返し実行する出力処理を表すフローチャートである。
【0037】
走行路確定出力部29は、確定処理を実行すると、上記ステータス情報を表すパラメータの値を「不確定」に設定した後(S110)、マップマッチングの処理タイミングが到来するまで待機し(S115)、処理タイミングが到来すると(S115でYes)、マップマッチング部28を作動させて、マップマッチング部28が推定した車両の現在の走行路の識別情報(リンクID又はノードID)を取得し(S120)、この情報に基づいて、車両が交差点に進入したか否かを判断する(S130)。具体的に、マップマッチング部28が推定した車両の走行路が交差点を表すノードである場合には、車両が交差点に進入したと判断し(S130でYes)、そうでない場合には、車両は交差点に進入していないと判断する(S130でNo)。
【0038】
走行路確定出力部29は、ここで車両が交差点に進入していないと判断すると(S130でNo)、ステータス情報を表す上記パラメータの値を「確定」に設定し(S140)、その後、S115に処理を戻して、次の処理タイミングが到来するまで待機する。
【0039】
一方、走行路確定出力部29は、車両が交差点に進入したと判断すると(S130でYes)、上記パラメータの値を「不確定」に設定すると共に(S150)、車両が交差点に進入したと判断した現在の時点を基準として、車両の走行距離の計測を開始する(S155)。尚、走行路確定出力部29における上記走行距離の計測は、例えば、距離センサ15の出力信号に基づいて行われる。
【0040】
S155での処理を終えると、走行路確定出力部29は、位置検出器10から得られる車両位置(マップマッチング部28で用いられる車両位置)の誤差ε0を、周知の方法で導出し、この誤差ε0に基づいて、上記パラメータの値を「不確定」から「確定」へ切り替えるタイミングを決定するための基準距離εを決定する(S160)。尚、基準距離εは、予め試験により求められた関係式ε=f(ε0)、又は、誤差ε0と基準距離εとの関係を示すテーブルに従って決定される。具体的に、基準距離εとしては、誤差ε0や、誤差ε0に所定のオフセットsを加算した値(ε0+s)等を用いることができる。
【0041】
S160の処理後、走行路確定出力部29は、S155で計測を開始した車両の走行距離が、基準距離εを越えたか否か判断し(S165)、走行距離が基準距離εを越えていなければ、走行距離が基準距離εを越えるまで待機する。そして、走行距離が基準距離εを越えたと判断すると(S165でYes)、ジャイロスコープ13、地磁気センサ17等の出力信号に基づき、車両が旋回中であるか否か判断し(S170)、車両が旋回中であると判断すると(S170でYes)、車両の旋回が完了するまで待機する(S175)。
【0042】
また、車両の旋回が完了したと判断すると(S175でYes)、走行路確定出力部29は、マップマッチング部28を作動させて、マップマッチング部28が推定した車両の現在の走行路の識別情報を取得する(S180)と共に、ステータス情報を表す上記パタメータの値を「不確定」から「確定」に切り替える(S190)。
【0043】
一方、S170で車両が旋回中ではないと判断すると(S170でNo)、走行路確定出力部29は、S175をスキップしてS180に移行し、マップマッチング部28を作動させて、マップマッチング部28が推定した車両の現在の走行路の識別情報を取得し(S180)、上記パラメータの値を「不確定」から「確定」に切り替える(S190)。
【0044】
S190での処理を終えると、走行路確定出力部29は、外部から終了指令が入力されているか否か判断し、終了指令が入力されていないと判断すると(S195でNo)、処理をS115に戻して、次の処理タイミングが到来するまで待機し、終了指令が入力されていると判断すると(S195でYes)、当該確定処理を終了する。
【0045】
一方、走行路確定出力部29は、図4に示す出力処理を実行すると、ステータス情報の出力タイミングが到来するまで待機し(S210)、ステータス情報の出力タイミングが到来すると(S210でYes)、RAM25に記憶されている上記ステータス情報を表すパラメータの値を参照して、そのパラメータが「確定」及び「不確定」のいずれの値を保持しているかを判断する(S220)。
【0046】
そして、パラメータの値が「確定」であると判断すると、走行路確定出力部29は、上述のS120又はS180でマップマッチング部28から得られた走行路の識別情報に基づき、その走行路に対応するリンク情報を、地図データから取得する(S230)。尚、本実施例では、基準距離εの調整・ステータス情報の出力タイミングの調整によって、S230の処理時には、マップマッチング部28にて、ノードではなく、リンクが現在の走行路として推定されるようになっている。
【0047】
また、S230において、走行路確定出力部29は、上記取得した現在の走行路に対応するリンク情報と、「確定」との値を示すステータス情報とを関連付けて、車両制御装置40への出力信号を生成し、これを、当該ナビゲーション装置1にて確定した車両の現在の走行路に関する確定情報として、車両制御装置40に送信する。この後、走行路確定出力部29は、一旦当該出力処理を終了し、再びS210の処理を実行して、上述の処理を繰り返す。
【0048】
一方、走行路確定出力部29は、S220にて、RAM25に記憶されている上記ステータス情報を表すパラメータが「不確定」との値を保持していると判断すると、「不確定」との値を示すステータス情報を格納した出力信号を生成し、これを不確定情報として、車両制御装置40に送信する。この後、走行路確定出力部29は、一旦当該出力処理を終了し、再びS210の処理を実行して、上述の処理を繰り返す。
【0049】
以上に、本実施例のナビゲーション装置1の構成について説明したが、この走行路確定出力部29から出力される確定情報及び不確定情報を受信する車両制御装置40は、例えば、図5に示すように動作する。図5は、上述した本実施例のナビゲーション装置1と連携して動作する車両制御装置40が繰返し実行する制御切替処理を表すフローチャートである。
【0050】
車両制御装置40は、制御切替処理を実行すると、ナビゲーション装置1の走行路確定出力部29から出力される信号を受信し(S310)、この受信信号が上記確定情報及び不確定情報のいずれの情報を含む信号であるかを判断する(S320)。
【0051】
そして、確定情報であると判断すると(S320でYes)、確定情報に含まれるリンク情報に基づいて、車両制御を行う(S330)。例えば、リンク情報により車両の走行路がカーブであると判断される場合には、車両の速度制御を行う等である。
【0052】
一方、受信信号が不確定情報を含む信号であると判断すると(S320でNo)、車両制御装置40は、リンク情報を用いた車両制御に代えて、リンク情報を使用しない所定の処理を実行する(S340)。例えば、車両制御が行われていないことを示す情報を、専用のLEDを用いて運転者に通知する等の処理を行う。
【0053】
以上に示したように、本実施例のナビゲーション装置1では、交差点通過時において、車両が旋回しておらず走行路の推定結果の信頼性が高い時にのみ、走行路の確定情報(リンク情報及び「確定」とのステータス情報)を出力し、これを車両制御装置40に提供することにより、走行路の推定結果の信頼性が低い場合に、車両制御装置40側で、走行路の推定結果を用いた車両制御が行われないようにした。
【0054】
このナビゲーション装置1では、車両が交差点を直進する場合、車両の旋回が行われないことから、図6(a)に示すように、車両が交差点に進入してから基準距離εを走行した時点で、ただちに「確定」とのステータス情報がリンク情報と共に車両制御装置40に送信され、車両制御装置40側では、そのリンク情報を用いた車両制御が行われる。
【0055】
つまり、このナビゲーション装置1によれば、走行路の情報(リンク情報)に基づく車両制御装置40の車両制御を、交差点通過後、高速に復帰させることができ、交差点通過後においてもリンク情報を用いた車両制御に係る利益を十分に享受することができる。
【0056】
また、本実施例では、車両が交差点に進入してから基準距離εを走行するまでの期間、、及び、車両が交差点に進入してから基準距離εを走行した時点で車両が旋回中である場合(図6(b)参照)には、その旋回が終了するまでの期間、「不確定」とのステータス情報を車両制御装置40側に送信するようにしたので、位置検出器10から得られる車両位置等に誤差があっても、それによって、信頼性の低いリンクについての情報が車両制御装置40に送信され、それに基づく車両制御が行われるのを防止することができる。
【0057】
また、旋回後には、走行路をマップマッチングにより正確に推定できることから、本実施例では、車両の旋回が終了した直後に、ステータスを「不確定」から「確定」に切り替えて、「確定」とのステータス情報と、マップマッチング部28にて推定された走行路に関する信頼性の高いリンク情報とを、車両制御装置40に高速に提供できるようにした。従って、本実施例によれば、車両が交差点を直進する場合だけでなく、車両が交差点を右左折する場合でも、高速に、リンク情報を用いた車両制御を復帰させることができ、大変便利である。
【0058】
この他、本実施例では、走行路の推定結果に関するステータス情報として、「不確定」及び「確定」のいずれかの情報を、車両制御装置40に提供するようにしたので、車両制御装置40側では、「確定」及び「不確定」の情報に基づいて、走行路が確定されている場合とそうでない場合の動作モードの切替を高速に行うことができ、大変便利である。
【0059】
尚、本発明の走行路推定装置は、ナビゲーション装置1にて実現されており、検出手段は、位置検出器10に相当し、走行路推定手段は、マップマッチング部28に相当する。また、走行路確定出力手段は、走行路確定出力部29が実行するS230の処理にて実現されており、進入判断手段は、S130での処理にて実現されている。また、距離計測手段は、S130で車両が交差点に進入したと判断すると、走行路確定出力部29が車両の走行距離の計測を開始するS155の動作にて実現されている。
【0060】
その他、旋回判定手段は、ジャイロスコープ13等の出力信号に基づき、車両が旋回中であるか否かを判断するS170,S175の処理にて実現されている。また、確定動作禁止手段は、車両が交差点に進入した時点でステータス情報を表すパラメータの値を「不確定」に設定し(S150)、この値を、車両の走行距離が基準距離εを越えるまで(S165でYesと判断されるまで)の期間、及び、基準距離を越えるまでの期間の終了時点で車両が旋回中である場合には、車両が旋回中ではないと判定されるまで(S175でYesと判断されるまで)の期間、保持する動作と、ステータス情報を表すパラメータの値が「不確定」である場合には、S220でNoと判断して、S230の処理を実行せず、S240の処理を実行する動作と、により実現されている。
【0061】
また、本発明の走行路推定装置は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
上記実施例では、ステータス情報を表すパラメータが「不確定」である場合に、「不確定」とのステータス情報のみを車両制御装置40に提供するようにナビゲーション装置1を構成したが、S240では、マップマッチング部28を作動させて、マップマッチング部28が推定した走行路についての情報(リンク情報・ノード情報)を、「不確定」とのステータス情報と共に、車両制御装置40に提供するように、ナビゲーション装置1を構成しても構わない。また、ここでは、マップマッチング部28を作動させず、S120でマップマッチング部28が推定した走行路についての情報(ノード情報)を、「不確定」とのステータス情報と共に、車両制御装置40に提供するように、ナビゲーション装置1を構成してもよい。
【0062】
また、上記実施例では、車両制御装置40に提供する走行路に関する情報として、マップマッチング部28が示すリンクIDに対応するリンク情報を送信するようにしたが(S230)、S230では、現在走行中の道路を道なりに車両が走行すると仮定して、現在走行中のリンクより先に位置する近い将来車両が走行する予定のリンクについてのリンク情報を、車両制御装置40に送信するようにしてもよい。その他、S230では、車両が誘導経路に沿って走行すると仮定して、現在走行中のリンクより先に位置する近い将来車両が走行する予定のリンクについてのリンク情報を、車両制御装置40に送信するようにしてもよい。
【0063】
また、走行路確定出力部29が実行する出力処理では、定期的に、ステータス情報を送信するようにしてもよいし、車両制御装置40からの要求があったときに、S210でYesと判断して、ステータス情報を送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カーナビゲーション装置1の構成を表すブロック図である。
【図2】制御回路20にて実現される機能を表す機能ブロック図である。
【図3】走行路確定出力部29が実行する確定処理を表すフローチャートである。
【図4】走行路確定出力部29が実行する出力処理を表すフローチャートである。
【図5】車両制御装置40が実行する制御切替処理を表すフローチャートである。
【図6】ステータス情報の切替態様に関する説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ナビゲーション装置、10…位置検出器、11…GPS受信機、13…ジャイロスコープ、15…距離センサ、17…地磁気センサ、20…制御回路、21…CPU、23…ROM、25…RAM、26…経路探索部、27…経路案内部、28…マップマッチング部、29…走行路確定出力部、31…地図データ入力器、33…表示装置、35…外部情報入出力装置、36…操作スイッチ群、37a…リモコン、37b…リモコンセンサ、38…音声出力装置、39…LANインタフェース、40…車両制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を検出する検出手段の検出結果と、道路地図情報と、に基づいて、車両の走行路を推定する走行路推定手段、を備える走行路推定装置であって、
前記走行路推定手段の推定結果に基づき、車両の走行路を確定し、その確定情報を、外部に出力する走行路確定出力手段と、
前記走行路推定手段の推定結果に基づき、車両が交差点に進入したか否かを判断する進入判断手段と、
前記進入判断手段の判断結果に基づき、車両が交差点に進入した時点からの車両の走行距離を計測する距離計測手段と、
車両が旋回中であるか否かを判定する旋回判定手段と、
車両が交差点に進入した時点から、前記距離計測手段により計測された車両の走行距離が予め定められた基準距離を越えるまでの期間、前記走行路確定出力手段の動作を禁止する確定動作禁止手段と、
を備え、
前記確定動作禁止手段は、前記基準距離を越えるまでの期間の終了時点で、前記旋回判定手段により車両が旋回中であると判定されていると、その後、前記旋回判定手段により車両が旋回中ではないと判定されるまで、継続的に、前記走行路確定出力手段の動作を禁止することを特徴とする走行路推定装置。
【請求項2】
前記確定動作禁止手段は、前記走行路確定出力手段の動作を禁止している期間、走行路が確定されていないことを表す情報を、外部に出力することを特徴とする請求項1記載の走行路推定装置。
【請求項3】
前記基準距離は、前記検出手段の検出誤差に基づいて決定される距離であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の走行路推定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−3166(P2006−3166A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178580(P2004−178580)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】