説明

超音波トランスデューサアレイ、超音波用探触子、超音波内視鏡、超音波診断装置

【課題】超音波送受信面の面積が異なる複数種類の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイにおいて、それらの超音波トランスデューサの間における電気インピーダンスを揃える。
【解決手段】超音波送受信面の面積が互いに異なっていると共に、全体の厚さが互いに実質的に等しい少なくとも2種類の複数の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイであって、第1の超音波トランスデューサと、層数が上記第1の超音波トランスデューサの層数よりも多く、且つ、超音波送受信面の面積が第1の超音波トランスデューサの超音波送受信面の面積よりも小さい第2の超音波トランスデューサとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送信及び受信を行う超音波トランスデューサアレイ、並びに、それを含む超音波用探触子及び超音波内視鏡に関し、さらに、そのような超音波用探触子又は超音波内視鏡を用いることより超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内に向けて送信され、被検体内の構造物(臓器等)によって反射された超音波(超音波エコー)を受信して信号処理することにより、被検体内の様子が表された画像を生成する超音波撮像技術は、医療を含む様々な分野において、広く利用されている。超音波撮像を行う装置(超音波診断装置又は超音波撮像装置等と呼ばれる)には、超音波の送受信を行う探触子(プローブ)や超音波内視鏡が備えられており、撮像を行う際には、探触子が被検体に当接して用いられ、又は、超音波内視鏡が被検体内に挿入して用いられる。
【0003】
超音波用探触子や超音波内視鏡においては、超音波を送信及び受信する超音波トランスデューサとして、圧電体の両面に電極を形成した振動子(圧電振動子)が、一般的に用いられている。このような振動子の電極に電界を印加すると、圧電効果により圧電体が伸縮して超音波が発生する。そこで、複数の振動子を、時間をずらして駆動することにより、所望の深度に焦点を結ぶ超音波ビームを形成することができる。また、振動子は、伝播する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生する。この電気信号は、超音波の受信信号として用いられる。
【0004】
近年においては、超音波用探触子や超音波内視鏡装置において、複数の振動子が並べられたアレイ状のトランスデューサ(超音波トランスデューサアレイ)が用いられている。超音波トランスデューサアレイによれば、複数の振動子にそれぞれ印加される駆動信号の振幅や遅延量を制御することにより、探触子自体の位置や向きを変えることなく超音波ビームの送信位置や方向を変化させることができる。このような走査方式は、フェーズドアレイ方式又は電子スキャン方式と呼ばれている。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、高分解能を有する超音波探触子においてビーム指向性を改善するために、超音波放射面を一定方向に向けてマトリックス状に組合せ配列された複数の探触子セグメントと、各探触子セグメントの超音波放射面をそれぞれ変位させる変位手段とを有する超音波探触子が開示されている。即ち、特許文献1においては、超音波を容易に集束又は偏向するために、探触子セグメント(振動子)の超音波送信面を機械的に移動させ、又は、傾けている。
【0006】
また、最近では、多数の振動子が2次元的に配置されたフェーズドアレイに関する研究が盛んに行われている。複数の超音波を2次元領域から送信することにより、3次元空間内における所望の点に超音波ビームの焦点を形成することができるからである。それにより、被検体内の3次元空間に関する超音波画像情報(ボリューム・データ)を取得できるようになるので、3次元画像を構築したり、超音波画像の画質を向上させることが可能になる。
【0007】
しかしながら、マトリックス状の2次元フェーズドアレイのサイズは、他のアレイ(1次元アレイ等)に比較すると大きくなる。また、素子を微細化及び高集積化するに従って、2次元フェーズドアレイの作製は困難になってくる。さらに、素子数の増加に伴って配線数が増加するので、探触子に接続されるケーブルが太くなるという問題も生じる。そのようなアレイを、特に、超音波内視鏡に適用するのは困難である。超音波内視鏡は生体の内部に挿入されることから、サイズ面での制約が厳しいからである。
【0008】
一方、複数の1次元アレイが平行に並べられた、所謂多列アレイの研究も為されている。多列アレイに並べられているアレイの数はマトリックス配置におけるものほど多くはないが、2次元領域に配置された振動子を用いることによって、2方向についてフォーカスされた超音波ビームを形成することが可能である。
【0009】
多列アレイにおいては、分解能等の超音波ビームの質やスキャニングボリューム(走査量)といった面でマトリックス配置のアレイに及ばない面は残る。しかしながら、多列アレイによれば素子数や配線数を大幅に削減できるので、超音波用探触子や超音波内視鏡の小型化やコストの低減を図ることが可能になる。従って、性能の良い多列アレイが実用化されることの利点は大きいものと考えられる。
【0010】
また、特許文献2には、体腔内等に挿入する挿入部の先端部に設けられ、超音波ビームを送受信する超音波送受信手段と、該超音波送受信手段による超音波ビームの走査範囲に向けて穿刺針等の処置具を導出可能な処置具導出口とを備える超音波プローブであって、超音波送受信手段による超音波ビームの走査範囲を偏向する超音波偏向手段を備えた超音波プローブが開示されている。即ち、特許文献2においては、超音波振動子を3列に配置し、各列から位相の異なる超音波を送信して超音波の走査範囲を偏向することにより、穿刺針が湾曲した場合にも穿刺針に超音波ビームを照射できるようにしている。
【0011】
さらに、特許文献3には、連続波ドプラモードを有する超音波診断装置であって、電子走査方向及び電子走査方向に直交するエレベーション方向に整列した複数の振動素子からなるアレイ振動子と、上記複数の振動素子の動作を制御する送受信制御部とを備え、連続波ドプラモードにおいて、上記アレイ振動子上に、電子走査方向に整列した少なくとも1つの送信振動素子群と、電子走査方向に整列した少なくとも1つの受信振動素子群とが、エレベーション方向において互いに異なる位置に設定されている超音波診断装置が開示されている。即ち、特許文献3においては、送信振動素子列と受信振動素子列とを1列おきに交互に配置することにより、送信開口及び受信開口を広く取るようにしている。
【0012】
ここで、図16及び図17を参照しながら、一般的な多列アレイの構成について説明する。図16の(a)は、多列アレイを示す側面図であり、図16の(b)は、その平面図であり、図16の(c)は、その一部を拡大して示す平面図である。また、図17は、多列アレイにおける配線方法を示す図である。
【0013】
図16に示すように、この多列アレイは、各々に128個(チャンネル)の超音波トランスデューサ(単に「素子」ともいう)が1次元的に配列されたL2列、L1列、C列、R1列、R2列の5つの素子列を含んでいる。C列には素子901が配置されており、L1列及びR1列には素子902が配置されており、L2列及びR2列には素子903が配置されている。これらの素子は、バッキング層900上に並べられている。なお、多列アレイにおいて、各素子列における素子の配列方向(X方向)はアジマス(azimuth:方位)方向と呼ばれており、アジマス方向に直交する方向(Y方向)はエレベーション(elevation:仰角)方向と呼ばれている。
【0014】
図17に示すように、各素子901〜903は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等によって形成された圧電体層910と、その上面及び下面に形成された電極911及び912とを含んでいる。また、超音波診断装置本体から素子に駆動信号を供給したり、素子から出力された受信信号を超音波診断装置本体に出力するために、各素子901〜903は配線904〜907に接続されている。
【0015】
このような多列アレイに関し、非特許文献1においては、エレベーション方向における振動子の配置や配線方法を変化させた多列アレイの性能が検討されている。ここで、非特許文献1の定義によれば、アレイの次元を次の(1)〜(5)のように説明することができる。
【0016】
(1)1Dアレイ:複数の素子を1列(アジマス方向)に配置したものである。従って、エレベーション方向における開口径(この場合には、素子の幅)が固定されており、超音波ビームの焦点形成は音響レンズ等によって行われ、焦点距離が固定されている。
【0017】
(2)1.25Dアレイ:図17の(a)に示すように、複数の素子を数個の列に配置したものである。エレベーション方向の中心について対称な位置に配置されている素子は、共通の配線905〜907に接続されている。エレベーション方向において複数列の素子を配置したことにより、開口径を変化させることが可能になる。しかしながら、超音波ビームの焦点形成は音響レンズ等によって行うので、焦点距離は固定されている。
【0018】
(3)1.5Dアレイ:図17の(a)に示すように、複数の素子を数個の列に配置したものである。エレベーション方向の中心について対称な位置に配置されている素子は、共通の配線905〜907に接続されており、電子的な制御により超音波ビームの焦点が形成される。従って、超音波ビームの焦点を動的に変化させることが可能である。しかしながら、素子が左右対称に共通配線されているので、超音波ビームの偏向はできない。
【0019】
(4)1.75Dアレイ:複数の素子を数個の列に配置し、さらに、それぞれの素子を独立に配線したものである。即ち、図17の(b)に示すように、エレベーション方向に配置されている複数の素子は、個別に配線904に接続されている。それにより、配線数は1.5Dアレイよりも多くなるが、開口径及び超音波ビームの焦点距離を動的に変化できるのに加えて、エレベーション方向において超音波ビームを偏向させることも可能となる。
【0020】
(5)2Dアレイ:複数の素子を、エレベーション方向においてもアジマス方向と同程度の数で配置することにより、マトリックス状にしたものである。従って、アポダイゼーションや、3次元空間における超音波ビームの焦点距離や、超音波ビームの送信方向(偏向)を、電気的に制御することができる。
なお、1.25Dアレイ、1.5Dアレイ、及び、1.75Dアレイについては、エレベーション方向における素子数が1Dアレイと2Dアレイとの間であることから、このように呼ばれている。
【0021】
このような多列アレイにおいては、グレーティングローブを低減することにより超音波ビームの品質を向上するために、通常、アジマス方向における素子の配列ピッチが送信超音波の波長以下となるように設計されている。
一方、エレベーション方向については、内側(C列)から外側(L2列及びR2列)に向かって、素子901〜903の幅W〜Wが小さくるように設計されている。このような配置は、超音波ビームの品質を改良するための工夫として行われており、フレネル(Fresnel)配置や、MIAE(Minimum Integrated Absolute time-delay Error)配置等と呼ばれる配置方法が知られている。
なお、フレネル配置及びMIAE配置の詳細については、非特許文献1を参照されたい。
【0022】
ところで、図16に示す多列アレイにおいては、素子901〜903の長さX〜Xが共通であるのに対して、素子901〜903の幅W〜Wが互いに異なっているので、電気インピーダンスの値は列ごとに変化する。そのため、超音波診断装置本体との間における電気的なインピーダンスマッチングの度合いが列ごとに異なることになるので、送信音響エネルギーや受信感度が列ごとに変化してしまい、また、システムとしての周波数特性がばらつくという不具合が生じてしまう。
【0023】
また、非特許文献2には、多層構造を有する超音波トランスデューサ(multilayer PZT transducer)において、圧電体層の層数を変化させることにより、超音波トランスデューサのインピーダンスを送信回路の出力インピーダンスや同軸ケーブルのリアクタンスにマッチングさせることが開示されている。多層構造を有する超音波トランスデューサとは、非特許文献2の図1に示すように、複数の圧電体層と複数の電極層とが交互に積層された構造を有する超音波トランスデューサのことである。このような超音波トランスデューサにおいては、圧電体層及びそれを挟む2つの電極層によって構成される1組の振動子の構造が電気的に並列に接続されるように、電極が形成されている。
【0024】
ここで、素子全体のサイズ(底面積及び厚さ)が等しいN層の超音波トランスデューサと単層の超音波トランスデューサとを比較すると、後者に対して前者は、層数がN倍であり、且つ、各層の厚さが1/Nである。従って、N層の超音波トランスデューサの電気インピーダンスZは、単層の超音波トランスデューサの電気インピーダンスZの1/N倍となる。そこで、非特許文献2においては、次のような原理に基づいて、多層構造の超音波トランスデューサの層数を最適化している。即ち、NTX層の超音波トランスデューサにおいては、Z/NTXが送信回路の出力インピーダンスと等しくなるときに、送信される超音波のエネルギー(音響出力)が最大となる。一方、NRX層の超音波トランスデューサにおいては、Z/NRXが同軸ケーブルのリアクタンスに等しくなるときに受信信号(電圧)が最大となる。これより、超音波トランスデューサの層数が幾何平均(NTX・NRX1/2を満たすときに、超音波(パルスエコー信号)の送受信感度が最大になる。
【特許文献1】特開平7−203592号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2000−139926号公報(第1、2頁、図6)
【特許文献3】特開2004−57460号公報(第2頁、図6)
【非特許文献1】ワイルズ(D. G. Wildes)、他、「1.25次元及び1.5次元トランスデューサアレイにおけるエレベーション・パフォーマンス(Elevation Performance of 1.25D and 1.5D Transducer Arrays)」、IEEE超音波、強誘電体、周波数会報(IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL)、第44巻、第5号、p.1027−1037、1997年9月
【非特許文献2】ゴールドバーグ(R. L. Goldberg)、他、「多層PZTトランスデューサにおける信号対ノイズ比の最適化(OPTIMIZATION OF SIGNAL-TO-NOISE RATIO FOR MULTILAYER PZT TRANSDUCERS)」、超音波画像(ULTRASONIC IMAGING)、第17巻、p.95−113、1995年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、超音波送受信面の面積が異なる複数種類の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイにおいて、それらの超音波トランスデューサの間における電気インピーダンスを揃えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の1つの観点に係る超音波トランスデューサアレイは、超音波送受信面の面積が互いに異なっていると共に、全体の厚さが互いに実質的に等しい少なくとも2種類の複数の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイであって、第1の超音波トランスデューサと、層数が前記第1の超音波トランスデューサの層数よりも多く、且つ、超音波送受信面の面積が第1の超音波トランスデューサの超音波送受信面の面積よりも小さい第2の超音波トランスデューサとを具備する。
【0027】
ここで、本願において、電気インピーダンスが実質的に等しいとは、比較対象となっている値が厳密に等しい場合だけでなく、所定の範囲の誤差を含む場合、即ち、それらの値が概ね等しい場合も含むものとする。例えば、比較対称となっている値のバラツキが±30%以内である場合には、実質的に等しいものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、超音波送受信面の面積が互いに異なっていると共に、全体の厚さが互いに実質的に等しい複数種類の超音波トランスデューサにおいて、面積が小さい方の超音波トランスデューサの層数を増やすので、それらの超音波トランスデューサ間の電気インピーダンスを実質的に揃えることができる。また、各超音波トランスデューサと超音波診断装置本体側との電気的なインピーダンスマッチングの度合いが揃い易くなるので、送信音響エネルギーを増加させることもできる。従って、そのような超音波トランスデューサアレイ含む超音波用探触子や超音波内視鏡を用いることにより、送信される超音波ビームの品質を向上できると共に、取得された受信信号に基づいて、超音波診断装置において画質の良い超音波画像を容易に生成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイを模式的に示している。図1の(a)は、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイがバッキング層の上に配置されている様子を示す側面図であり、図1の(b)は、その平面図である。
【0030】
また、図2の(a)は、本発明の一実施形態に係る超音波用探触子を示す一部断面斜視図であり、図2の(b)は、超音波用探触子が接続される超音波診断装置本体を示すブロック図である。図1に示す超音波トランスデューサアレイは、図2に示すような超音波用探触子や、後述する超音波内視鏡等に配置されて使用される。
【0031】
図2の(a)に示すように、本実施形態に係る超音波用探触子は、超音波トランスデューサアレイ1と、バッキング層2と、音響整合層3とを含んでいる。また、この超音波用探触子は、必要に応じて音響レンズ4を含んでも良い。これらの部分は、筐体5に収納されている。また、超音波トランスデューサアレイ1から引き出された配線は、ケーブル6を介して超音波撮像装置本体に含まれる電子回路に接続される。
【0032】
超音波トランスデューサアレイ1は、駆動信号を供給されることにより伸縮して超音波を発生すると共に、被検体から伝播する超音波を受信することにより電気信号(受信信号)を出力する複数の超音波トランスデューサ11〜13を含んでいる。これらの超音波トランスデューサ11〜13の間や周囲には、各超音波トランスデューサを保護すると共に、超音波の不要な伝播(例えば、振動子の配置面内における超音波の伝播)を抑制するために、ウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂等の充填材1aを配置しても良い。以下においては、1つの超音波トランスデューサのことを、単に「素子」とも言う。素子11〜13の構造については、後で詳しく説明する。
【0033】
バッキング層2は、例えば、フェライト粉や金属粉やPZT粉入りのエポキシ樹脂や、フェライト粉入りのゴムのように、音響減衰の大きい材料によって形成されており、超音波トランスデューサアレイ1から発生した不要な超音波の減衰を早める。
音響整合層3は、例えば、超音波を伝播し易いパイレックス(登録商標)ガラスや金属粉入りエポキシ樹脂等によって形成されており、生体である被検体と超音波トランスデューサとの間の音響インピーダンスの不整合を解消する。これにより、超音波トランスデューサから送信された超音波が、効率良く被検体中に伝播する。
【0034】
音響レンズ4は、例えば、シリコンゴムによって形成されており、超音波トランスデューサアレイ1から送信され、音響整合層3を伝播した超音波ビームを、被検体内の所定の深度において集束させる。なお、以下に説明する実施形態に係る超音波トランスデューサアレイにおいては、超音波ビームを電子的制御により集束させることができるので、音響レンズ4を配置しなくても良いが、音響レンズ4を併用することにより超音波ビームの集束効果を高めても良い。
【0035】
図2の(b)に示すように、超音波診断装置本体は、駆動信号生成部7aと、送受信切換部7bと、受信信号処理部7cと、画像生成部7dと、表示部7eとを含んでいる。駆動信号生成部7aは、超音波用探触子の超音波トランスデューサ1に配置されている素子にそれぞれ供給される駆動信号を生成する複数のパルサを含んでいる。また、送受信切換部7bは、超音波用探触子への駆動信号の出力と超音波用探触子からの受信信号の入力を切り換える。受信信号処理部7cは、前置増幅器(プリアンプ)や、必要に応じて信号レベルを調整するための増幅器又はアッテネータ等の可変利得回路や、A/D変換器や、演算処理部等を有しており、超音波用探触子の各素子から出力された受信信号に、前置増幅、レベル調整、A/D変換、整相加算、検波等の所定の信号処理を施す。画像生成部7dは、所定の信号処理が施された受信信号について、走査フォーマットの変換等の処理を行うことにより、画像データを生成する。表示部7eは、生成された画像データに基づいて、超音波画像を画面に表示する。
【0036】
再び、図1を参照すると、超音波トランスデューサアレイ1に配置されている素子11〜13は、積層構造を有している。ここで、図3を参照しながら、積層超音波トランスデューサの構造について説明する。図3は、5層の超音波トランスデューサを示す一部断面斜視図である。
図3に示す超音波トランスデューサは、下部電極層10aと、5層の圧電体層10と、それらの圧電体層10の間に交互に挿入されている内部電極層10b及び10cと、上部電極層10dと、側面電極10e及び10fとを有している。
【0037】
圧電体層10は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料によって形成されている。また、内部電極層10b及び上部電極層10dは、一方の側面電極10eに接続され、他方の側面電極10fから絶縁されるように形成されている。さらに、内部電極層10c及び下部電極層10aは、一方の側面電極10fに接続され、他方の側面電極10eから絶縁されるように形成されている。超音波トランスデューサの電極をこのように形成することにより、5層の圧電体層10に電界を印加するための5組の電極が並列に接続される。なお、図3においては、内部電極層10b及び10cの一方の端部をその上層の圧電体層10によって覆うことにより絶縁領域を形成している。しかしながら、それらの端部を圧電体層10の側面まで延在させ、側面において内部電極層10b及び10cの端部を別途絶縁膜で覆うようにしても良い。
【0038】
このようなN個(図3においては、N=5)の圧電体層10を有する超音波トランスデューサにおいては、単層(N=1)の超音波トランスデューサに比較して、圧電体層の数がN倍になると共に、各圧電体層の厚さが1/Nになる。従って、N層の超音波トランスデューサの電気インピーダンスZは、単層超音波トランスデューサの電気インピーダンスZの約1/N倍となる。
【0039】
再び、図1を参照すると、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、L2列、L1列、C列、R1列、R2列の5列に配置された3種類の素子11〜13を含んでいる。以下において、各列における素子の配列方向(X軸方向)のことを「アジマス方向」といい、それと垂直な方向(Y軸方向)のことを「エレベーション方向」とも言う。
【0040】
各列には、128個(チャンネル)の超音波トランスデューサ(素子)が配列ピッチPで配置されている。この配列ピッチPは、電子セクタスキャン方式におけるグレーティングローブの発生角度を考慮して、送信超音波の波長の半分以下となるように設計されている。例えば、生体における音速を1500m/sとすると、送信超音波の周波数が5MHzである場合に波長は約0.3mmとなるので、超音波の波長の半分は0.15mmとなる。本実施形態において、配列ピッチPは0.15mmである。
【0041】
素子11〜13の幅W〜W及び位置Y〜Yは、フレネル(Fresnel)配置となるように設計されている。フレネル配置とは、エレベーション方向の中央から外側に向かって素子の幅W〜Wが小さくなるような配置方法の1つである。また、これらの素子11〜13は、超音波送受信面の面積が小さくなるほど、層数が増えるように設計されている。このように層数を変化させる理由は、次の通りである。即ち、フレネル配置を採用することにより、素子11〜13の超音波送受信面の面積が互いに変化してしまうので、電気インピーダンスの値が互いに異なることになってしまう。そのため、それらの素子と図2に示す超音波診断装置本体(具体的には、駆動信号生成部7bや、受信信号処理部7cや、ケーブル6)との間において、電気インピーダンスのマッチングが取り難くなってしまう。そこで、本実施形態においては、素子間における電気インピーダンスのバラツキを低減するために、超音波送受信面の面積が小さい素子ほど層数を増加させている。それにより、各素子と超音波診断装置本体との電気インピーダンスもマッチングを取り易くし、超音波の送受信効率を高めることができる。
さらに、図1の(a)に示すように、各列に配置されている素子11〜13の各々は、配線14に独立に接続されている。それにより、素子11〜13には、超音波診断装置本体において生成された駆動信号が、配線14を介してそれぞれ供給される。
【0042】
このような超音波トランスデューサアレイを用いて超音波を送信する際には、エレベーション方向に並んでいる1行又は複数行(例えば、3〜5行)に含まれる素子11〜13を、同時に用いられる1組の駆動素子として設定し、それらの素子に供給する駆動信号の間に所定の遅延時間を設けて素子を駆動する。それにより、所望の深度に焦点を有する超音波ビームを所望の方向に送信することができる。また、そのような駆動素子の組の設定位置をアジマス方向にずらしながら順次駆動することにより、超音波ビームを電子的制御により走査することができる。その際に、前回設定された駆動素子の組に対して、素子が完全にずれるように、今回の駆動素子の組を設定しても良い。例えば、1回目の送信において第1〜3行の素子を用い、2回目の送信において第4〜6行の素子を用い、3回目の送信において第7〜9行の素子を用いる。或いは、前回設定された駆動素子の組に対して、一部の素子が重複するように今回の駆動素子の組を設定しても良い。例えば、第1回の送信において第1〜3行の素子を用い、2回目の送信において第3〜5行の素子を用い、3回目の送信において第5〜7行の素子を用いる。
【0043】
次に、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの具体的な設計値について、従来の超音波トランスデューサアレイにおける設計値と比較しながら説明する。ここで、以下に示す設計値は、次のような条件で超音波診断装置に接続されることを前提として定められている。
パルサ(駆動信号生成部):出力電圧100V、出力インピーダンス30Ω
同軸ケーブル:長さ3.4m、容量100pF/m、
インピーダンス94Ω(5MHz)
プリアンプ(受信信号処理部):入力インピーダンス10MΩ
【0044】
図1に示す超音波トランスデューサアレイに含まれる素子11〜13のサイズ(長さ及び幅)は、図16に示す素子901〜903と同様であり、素子11〜13が多層構造であるという点において、図16に示すものと異なっている。
【0045】
図1及び図16に示す超音波トランスデューサアレイの設計値は次の通りである。
配列方法:フレネル配置、配線方法:独立配線
素子の平面サイズ:
C列(素子11及び901):幅W=2.88mm、長さX=0.12mm
L1列、R1列(素子12及び902):
幅W=0.57mm、長さX=0.12mm
L2列、R2列(素子13及び903):
幅W=0.43mm、長さX=0.12mm
エレベーション方向の素子間隔:0.03mm(30μm)
アジマス方向の配列ピッチ:P=0.15mm(素子間隔0.03mm)
【0046】
また、各素子901〜903の比誘電率εは3600である。図16においては、各素子901〜903の厚さが0.36mmであり、この値及び各素子のサイズから、共振周波数5MHzにおいて、各素子901〜903の電気インピーダンスZ901〜Z903は、次の通りとなる。
素子901(C列):Z901=326Ω
素子902(L1列、R1列):Z902=1647Ω
素子903(L2列、R2列):Z903=2183Ω
【0047】
一方、本実施形態においては、各素子の電気インピーダンスZ11〜Z13が、駆動信号生成装置の出力インピーダンス(30Ω)とケーブルのインピーダンス(94Ω)との幾何平均である約53Ωになるべく近くなるように、各素子11〜13の層数N11〜N13が決定されている。
【0048】
その結果、各素子11〜13の電気インピーダンスは、次のようになる。
素子11(C列):N11=3、Z11=Z901/3≒36.2Ω
素子12(L1列、R1列):N12=6、Z12=Z902/6≒45.8Ω
素子13(L2列、R1列):N13=7、Z13=Z903/7≒44.6Ω
【0049】
実施例1として、図1に示す本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの特性を、上記の装置条件の下でシミュレートした。また、比較例1として、図16に示す従来の超音波トランスデューサアレイの特性を、同じ装置条件の下でシミュレートした。それにより、図4に示す送受信特性が得られた。ここで、受信感度は、一定の音圧を有する音波を受信するときの相対的な受信電圧を示しており、任意の単位(a.u.)となっている。
【0050】
図4より明らかなように、比較例1においては、素子901〜903間の電気インピーダンスのバラツキが大きい(最大で、100×(Z903−Z901)/Z903≒85.0%)。また、C列の素子901による送信音響エネルギーの影響が支配的となっている。このような素子によって超音波ビームを形成しようとしても、外側(L1列、R1列、L2列、R2列)に配置された素子から送信される音響エネルギーを有効に作用させることができない。即ち、超音波トランスデューサアレイの開口全体を有効に活用することができない。また、超音波ビームを偏向させる場合には、超音波ビームの送信方向に対し、各素子901〜903から送信される音響エネルギーの対称性が崩れてしまうので、ビーム品質が低下し、良質な画像を形成することが困難になる。
【0051】
それに対して、実施例1においては、素子11〜13間の電気インピーダンスを実質的に揃えることができた(バラツキは最大で、100×(Z12−Z11)/Z12≒20.1%)。各素子11〜13の電気インピーダンスを送信回路の出力インピーダンスに近づけたので、送信音響エネルギーの大きさ自体を大幅に向上させることが可能である。また、素子11〜13の送信音響エネルギーは、ほぼ同一となった。
【0052】
一方、受信感度については、受信感度の値そのものは比較例1よりも改善されているものの、素子ごとのバラツキが若干残っている。ここで、受信音圧が一定である場合には、受信電圧は圧電体層の厚さに比例するので、一般に、層数をN倍にすれば、受信電圧は1/Nになる。そこで、受信電圧のバラツキを補正する手段を設けることが望ましい。例えば、図2の(b)に示す受信信号処理部7cに、列ごとに異なるゲイン(増幅率)が設定されたプリアンプを設けても良い。列の間におけるゲインの比は、概ね層数の比とすれば良く、さらに微調整しても構わない。例えば、C列の素子11に対応するゲインをG、L1列及びR1列の素子12に対応するゲインをG、L2列及びR2列に対応するゲインをGとし、それらのゲインを、G:G:G=3:6.42:7.41となるように設定する。それにより、全ての列においてほぼ一定となるように、受信信号のレベルを補正することができる。
【0053】
または、補正手段として、受信信号処理部7cのプリアンプの後段に増幅器又はアッテネータ等の可変利得回路を設けて、ゲインを列ごとに設定しても良い。或いは、プリアンプ又は可変利得回路の後段に設けられるA/D変換器において受信信号をディジタル化し、ディジタル受信信号に対して演算処理を行うことにより、上記の比に対応する補正率で補正を行っても良い。
【0054】
さらに、そのような補正を、超音波用探触子(又は超音波内視鏡)側において行っても良い。即ち、超音波トランスデューサアレイが配置される超音波用探触子(又は超音波内視鏡)に、各素子に対応するプリアンプ、可変利得回路、又は、A/D変換器及び演算部を設け、それらのゲインや補正率を上記の比となるように設定しても良い。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波送受信面の面積に応じて素子11〜13の層数を決定するので、それらの素子の間における電気インピーダンスを実質的に揃えることができる。それにより、各素子の電気インピーダンスと装置側の電気インピーダンスとのマッチングを取り易くなるので、送信音響エネルギー及び受信感度を向上させることが可能になる。さらに、各素子から出力された受信信号について、素子ごと(列ごと)にゲインを調節することにより、受信感度のバラツキを低減することが可能になる。
【0056】
その結果、開口内の全ての素子を有効に作用させることができるようになるので、十分に焦点が絞られた超音波ビームを送受信することが可能になる。また、エレベーション方向において超音波ビームを偏向させる場合においても、送信方向について比較的音響エネルギーの対称性の良い、即ち、品質の良い超音波ビームを形成することが可能になる。従って、そのような超音波ビームによって得られた超音波画像情報に基づいて、画質の良い超音波画像を形成することが可能になる。特に、超音波ビームを偏向させることにより、被検体内の3次元空間の各位置に関する超音波画像情報(ボリューム・データ)を、超音波用探触子の位置や向きを変化させることなく取得できるようになるので、3次元画像を高速に構築することが可能になる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイについて、図5を参照しながら説明する。図5の(a)は、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイがバッキング層の上に配置されている様子を示す側面図であり、図5の(b)は、その平面図であり、図5の(c)は、図5の(b)に示す超音波トランスデューサの一部を拡大して示す平面図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、L2列、L1列、C列、R1列、R2列の5列に配置された3種類の素子21〜23を含んでいる。これらの素子21〜23の各々は、配線24に接続されている。なお、素子の配列方法(フレネル配置)や配線方法(独立配線)や配列ピッチについては、図1に示すものと同様である。
【0059】
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、図1に示す超音波トランスデューサアレイに対して、各素子の長さ(アジマス方向におけるサイズ)を変更したものである。ここで、各素子の層数を調整することにより素子間の電気インピーダンスを揃えようとしても、層数は整数しか取ることができないので限界がある。そこで、本実施形態においては、素子21〜23の超音波送受信面の面積をそれぞれS21〜S23(長さ×幅)とし、それらの層数をそれぞれN21〜N23とする場合に、S21:S22:S23=1/N21:1/N22:1/N23となるように、素子の長さX〜Xを調節している。それにより、フレネル配置(エレベーション方向における素子サイズ及び素子間隔)を維持したまま、素子間の電気インピーダンスZ21〜Z23のバラツキをさらに低減することが可能になる。
【0060】
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの具体的な設計値は、以下の通りである。
素子21(C列):N21=3
幅W=2.88mm、長さX=0.095
21=45.8Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ21の値は、図1に示す素子11の電気インピーダンスZ11の約X/X倍に相当する。
素子22(L1列及びR1列):N22=6
幅W=0.57mm、長さX=0.120mm
22=45.8Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ22の値は、図1に示す素子12の電気インピーダンスZ12の約X/X倍に相当する。
素子23(L2列及びR2列):N23=7
幅W=0.43mm、長さX=0.116mm
23=46.1Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ23の値は、図1に示す素子13の電気インピーダンスZ13の約X/X倍に相当する。
【0061】
実施例2として、上記の超音波トランスデューサアレイの特性を、実施例1及び比較例1と同じ装置条件の下でシミュレートした。それにより、図4に示す結果が得られた。
図4に示すように、各素子の層数に加えて、素子の長さを調節することにより、素子21〜23間の電気インピーダンスを実質的に揃えることができた(バラツキは最大で、100×(Z23−Z21)/Z23≒0.7%)。また、送信音響エネルギーのバラツキをさらに低減することができた。なお、素子21及び23については、素子の長さを実施例1における素子11及び13よりも小さくしたために、送信音響エネルギーが若干低下している。しかしながら、各素子の電気インピーダンスと送信回路の出力インピーダンスとの整合が良好なので、依然として比較例1よりも大幅に高い値を維持することができた。
【0062】
一方、受信感度については、素子ごとのバラツキが若干残っている。そのため、本実施形態においても、第1の実施形態におけるものと同様に、受信感度のバラツキを補正する手段を装置側又は超音波用探触子側に設けることが望ましい。列の間におけるゲインの比は、概ね層数の比として良い。例えば、C列、L1列及びR1列、L2列及びR2列に対応するゲインG、G、Gを、3:6:7となるように設定することにより、全ての列においてほぼ一定となるように、受信感度を補正することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、各素子の間で電気インピーダンスが実質的に揃うように素子の層数及び長さを調整することにより、送信音響エネルギー及び受信感度のバラツキを更に低減することができる。また、その際に、各素子の電気インピーダンスを装置側の電気インピーダンスに揃えることにより、送信音響エネルギー及び受信感度を更に向上させることが可能になる。
【0064】
次に、本発明の第3の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイについて、図6を参照しながら説明する。図6の(a)は、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイがバッキング層の上に配置されている様子を示す側面図であり、図6の(b)は、その平面図である。
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、図1に示す超音波トランスデューサアレイに対して、配線方法及び各素子の層数を変更したものである。従って、各素子の平面サイズや配列方法(フレネル配置)や配列ピッチについては、図1に示すものと同様である。
【0065】
図6の(b)に示すように、この超音波トランスデューサアレイは、L2列、L1列、C列、R1列、R2列の5列に配置された3種類の素子31〜33を含んでいる。また、図6の(a)に示すように、C列の素子31は配線34に接続されており、L1列及びR1列の素子32は配線35に接続されており、L2列及びR2列の素子33は配線36に接続されている。このように、エレベーション方向の中心について対称に配置されている素子を共通配線することにより、超音波診断装置本体において発生した駆動信号が、それらの素子に同じタイミングで供給されるようになる。
【0066】
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの具体的な設計値について、従来の超音波トランスデューサアレイの設計値と比較しながら説明する。なお、以下に示す設計値は、第1の実施形態におけるものと同じ条件で超音波診断装置に接続されることを前提として定められている。
【0067】
図6及び図17の(a)に示す共通接続方式の超音波トランスデューサアレイの設計値は次の通りである。
配列方法:フレネル配置、配線方法:共通配線
素子の平面サイズ:
配線34に接続された素子31、及び、
配線905に接続された素子901(C列):
幅W=2.88mm、長さX=0.12mm
配線35に接続された素子32、及び、
配線906に接続された2つの素子902(L1列、R1列):
幅W=0.57×2mm、長さX=0.12mm
配線36に接続された素子33、及び、
配線907に接続された2つの素子903(L2列、R2列):
幅W=0.43×2mm、長さX=0.12mm
エレベーション方向の素子間隔:39μm
アジマス方向の配列ピッチ:P0=0.15mm(素子間隔30μm)
【0068】
また、各素子901〜903の比誘電率εは3600である。図17の(a)においては、各素子901〜903の厚さが0.36mmであり、この値及び各素子のサイズから、共振周波数5MHzにおいて、共通の配線に接続されている素子の合成電気インピーダンスZ901'〜Z903'は次の通りとなる。
素子901:Z901'=326Ω
2つの素子902:Z902'=824Ω
2つの素子903:Z903'=1092Ω
【0069】
一方、本実施形態においては、共通の配線に接続されている素子の合成電気インピーダンスZ31〜Z33が、駆動信号生成装置の出力インピーダンス(30Ω)とケーブルのインピーダンス(94Ω)との幾何平均である約53Ωになるべく近くなるように、各素子31〜33の層数N31〜N33が決定されている。
【0070】
その結果、各配線に接続されている素子の合成電気インピーダンスZ31〜Z33は、次のようになる。
配線34に接続された素子31(C列):N31=3
31=Z901'/3≒36.2Ω
配線35に接続された2つの素子32(L1列、R1列):N32=4
32=Z902'/4≒51.5Ω
配線36に接続された2つの素子33(L2列、R1列):N33=5
33=Z903'/5≒43.7Ω
【0071】
実施例3として、図6に示す本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの特性を、上記の装置条件の下でシミュレートした。また、比較例2として、図16及び図17の(a)に示す従来の超音波トランスデューサアレイの特性を、同じ装置条件の下でシミュレートした。それにより、図7に示す送受信特性が得られた。
【0072】
図7より明らかなように、比較例2においては、配線905〜907ごとの合成電気インピーダンスのバラツキが大きい(最大で、100×(Z903'−Z901')/Z903'≒70.1%)。また、C列の素子901による送信音響エネルギーの影響が支配的となっており、L1列及びR1列の素子902、並びに、L2列及びR2列の素子903が有効に機能していない。即ち、超音波トランスデューサアレイの開口全体を有効に活用させることができていない。そのため、ダイナミックフォーカシングによって所望の深度に焦点を形成することができなくなり、分解能が低下してしまう。
【0073】
それに対して、実施例3においては、各素子の層数を調節することにより、配線35〜37ごとの合成電気インピーダンス(即ち、電気容量の和)を実質的に揃えることができた(最大で、100×(Z32−Z31)/Z32≒29.7%)。配線ごとの電気インピーダンスを送信回路の出力インピーダンスに近づけたので、送信音響エネルギーの大きさ自体を大幅に向上させることが可能である。また、素子31〜33間における送信音響エネルギーは、ほぼ同一となった。
【0074】
一方、受信感度については、受信感度の値そのものは比較例2よりも改善されているものの、素子ごとのバラツキが若干残っている。そのため、本実施形態においても、第1の実施形態におけるのと同様に、受信感度のバラツキを補正する手段を装置側又は超音波用探触子側に設けることが望ましい。列の間におけるゲインの比は、概ね層数の比として良く、さらに微調整しても良い。例えば、C列、L1列及びR1列、L2列及びR2列に対応するゲインG、G、Gを、3:4.47:5.28となるように設定することにより、全ての列においてほぼ一定となるように、受信感度を補正することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、送信音響エネルギー及び受信感度のバラツキを低減すると共に、それらの値を向上させることができる。従って、開口全体を有効に作用させることができるので、精度の良いダイナミックフォーカシングを行うことが可能になる。従って、分解能の高い良質な超音波画像を生成することが可能になる。また、本実施形態によれば、中心の列に対して対象に配置された素子を共通配線に接続することにより、配線数を削減することができるので、超音波用探触子の小型化や、ケーブルの細径化や、低コスト化を図ることが可能になる。
【0076】
次に、本発明の第4の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイについて、図8を参照しながら説明する。図8の(a)は、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイがバッキング層の上に配置されている様子を示す側面図であり、図8の(b)は、その平面図であり、図8の(c)は、図8の(b)に示す超音波トランスデューサの一部を拡大して示す平面図である。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、L2列、L1列、C列、R1列、R2列の5列に配置された3種類の素子41〜43を含んでいる。また、図8の(a)に示すように、C列の素子41は配線44に接続されており、L1列及びL2列の素子42は配線45に接続されており、L2列及びR2列の素子43は配線46に接続されている。なお、本実施形態における素子の配列方法(フレネル配置)や、配線方法(共通配線)や、配列ピッチについては、図6に示すものと同様である。
【0078】
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、図6に示す超音波トランスデューサアレイに対して、各素子の長さ(アジマス方向におけるサイズ)を変更したものである。即ち、本実施形態においては、素子41〜43の超音波送受信面の面積をそれぞれS41〜S43(長さ×幅)とし、それらの層数をそれぞれN41〜N43とし、同じ配線に接続されている素子の数をM41〜M43とする場合に、S41:S42:S43=1/(N41・M41):1/(N42・M42):1/(N43・M43)となるように、素子の長さX〜Xを調節している。それにより、フレネル配置(エレベーション方向における素子サイズ及び素子間隔)を維持したまま、配線ごとに素子の合成電気インピーダンスZ41〜Z43のバラツキ(即ち、電気容量の和のバラツキ)をさらに低減することが可能になる。
【0079】
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの具体的な設計値は、以下の通りである。
配線44に接続された素子41(C列):N41=3
幅W=2.88mm、長さX'=0.085mm
41=51.1Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ41の値は、図6に示す素子31の電気インピーダンスZ31の約X/X'倍に相当する。
配線45に接続された2つの素子42(R1列、L1列):N42=4
幅W=0.57mm、長さX'=0.120mm
42=51.5Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ42の値は、図6に示す配線35に接続されている素子32の合成電気インピーダンスZ32の約X/X'倍に相当する。
配線46に接続された2つの素子43(L2列、R2列):N43=5
幅W=0.43mm、長さX'=0.102mm
43=51.4Ω(共振周波数5MHz)
この電気インピーダンスZ43の値は、図6に示す配線36に接続されている素子33の合成電気インピーダンスZ33の約X/X'倍に相当する。
【0080】
実施例4として、上記の超音波トランスデューサアレイの特性を、実施例3及び比較例2と同じ装置条件の下でシミュレートした。それにより、図7に示す結果が得られた。
図7に示すように、各素子の層数に加えて、素子の長さを調節することにより、配線44〜46ごとの合成電気インピーダンス(即ち、電気容量の和)を実質的に揃えることができた(バラツキは最大で、100×(Z41−Z42)/Z42≒0.8%)。また、素子41〜43間における送信音響エネルギーのバラツキをさらに低減することができた。なお、素子41及び43については、素子の長さを実施例3における素子31及び33よりも小さくしたために、送信音響エネルギーが若干低下している。しかしながら、各組の素子の電気インピーダンスと送信回路の出力インピーダンスとのマッチングとの整合が良好なので、依然として比較例2よりも大幅に高い値を維持することができた。
【0081】
一方、受信感度については、素子ごとのバラツキが若干残っている。そのため、本実施形態においても、第1の実施形態におけるものと同様に、受信感度のバラツキを補正する手段を装置側又は超音波用探触子側に設けることが望ましい。列の間におけるゲインの比は、概ね層数の比として良い。例えば、C列、L1列及びR1列、L2列及びR2列に対応するゲインG、G、Gを、3:4:5となるように設定することにより、全ての列においてほぼ一定となるように、受信感度を補正することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、配線ごとに素子の合成電気インピーダンスが揃うように素子の層数及び長さを調整することにより、送信音響エネルギー及び受信感度のバラツキを更に低減することができる。また、各配線における素子の合成電気インピーダンスを、装置側の電気インピーダンスに揃えることにより、送信音響エネルギー及び受信感度を更に向上させることが可能になる。
【0083】
次に、本発明の第5の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイについて、図9を参照しながら説明する。
本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、図5に示す超音波トランスデューサアレイに対して、素子の配置を変更したものである。即ち、素子21が配置されているC列と、素子22が配置されているL1列及びR1列と、素子23が配置されているL2列及びR2列とにおいて、アジマス方向における素子の間隔を0.03mmに統一している。この素子間隔0.03mmは、素子21〜23の長さX〜Xを含めた素子の配列ピッチP〜Pが、最大でも送信超音波の波長の半分以下(例えば、150μm以下)になるように設計されている。
なお、各素子21〜23のサイズ及び層数や、エレベーション方向における配置(フレネル配置)や、配線方法(独立配線)については、第2の実施形態におけるものと同様である。
【0084】
具体的には、図9の(c)に示すように、中央のC列には、152個(チャンネル)の素子21が、配列ピッチP=0.125μm(素子21の長さ0.095μm+素子間隔0.03mm)で配置されている。また、L1列及びR1列には、128個(チャンネル)の素子22が、配列ピッチP=0.15mm(素子22の長さ0.12mm+素子間隔0.03mm)で配置されている。さらに、L2列及びR2列には、132個(チャンネル)の素子23が、配列ピッチP=0.146mm(素子13の長さ0.116mm+素子間隔0.03mm)で配置されている。
【0085】
このような超音波トランスデューサアレイを用いて超音波を送信する際には、所定の範囲に含まれる素子21〜23を、同時に用いられる1組の駆動素子として設定し、それらの素子の間に所定の遅延時間を設けて素子を駆動する。それにより、所望の深度に焦点を有する超音波ビームを所望の方向に送信することができる。例えば、図9の(c)の破線に示すように、第N回の送信時には、L2列及びR2列の第3〜5行に含まれる素子23と、L1列及びR1列の第3〜5行に含まれる素子22と、C列の第3〜6行に含まれる素子21とが、駆動素子として設定される。また、その次の送信を行う際には、前回設定された駆動素子の組に対して、素子が完全にずれるように今回の駆動素子の組を設定しても良いし、図9の(c)の一点鎖線に示すように、一部の素子が重複するように今回の駆動素子の組を設定しても良い。
【0086】
このように、本実施形態によれば、C列、L2列、R2列の各列において、同じ素子間隔で素子を配列することにより、超音波トランスデューサアレイの全面積に対する素子の充填比率を向上させることができる。それにより、超音波の送受信感度及び分解能が向上するので、超音波診断装置において生成される超音波画像の画質を向上させることが可能になる。
なお、本発明の第4の実施形態において説明した超音波トランスデューサアレイを、素子41〜43の間隔が各列で同じになるように変形しても良い。
【0087】
次に、本発明の一実施形態に係る超音波内視鏡について、図10及び図11を参照しながら説明する。ここで、上記の第1〜第5の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイは、被検体に当接して用いられる超音波用探触子(図2参照)だけでなく、被検体の内部に挿入して用いられる内視鏡にも適用することができる。
【0088】
図10は、超音波内視鏡の外観を示す模式図である。図10に示すように、超音波内視鏡100は、挿入部101と、操作部102と、接続コード103と、ユニバーサルコード104とを含んでいる。
超音波内視鏡100の挿入部101は、被検体の体内に挿入することができるように、可撓性を有する材料によって形成された細長い管となっている。操作部102は、挿入部101の基端に設けられており、接続コード103を介して超音波診断装置本体に接続されていると共に、ユニバーサルコード104を介して光源装置に接続されている。
【0089】
図11は、図10に示す挿入部101の先端部分を拡大して示す模式図である。図11の(a)は、挿入部101の先端部分を側面から見た様子を示しており、図11の(b)は、それを上面から見た様子を示している。
図11に示すように、挿入部101の先端部分には、超音波トランスデューサアレイ110と、観察窓111と、照明窓112と、処置具挿通口113と、ノズル孔114とが設けられている。また、処置具挿通口113には、穿刺針106が配置されている。
【0090】
超音波トランスデューサアレイ110は、コンベックス型の多列アレイであり、湾曲した面上に配置された5列の素子を含んでいる。素子の配置方法(フレネル配置等)や、素子のサイズ及び層数や、配線方法(独立配線又は共通配線)については、第1〜第5の実施形態において説明したいずれの超音波トランスデューサアレイにおけるものを適用しても良い。また、図11の(b)に示すように、上面から見た場合に、エレベーション方向が処置具挿通口113に配置される処置具(例えば、穿刺針106)の挿通方向と直交するように、超音波トランスデューサアレイ110を配置することが望ましい。それにより、処置具のエレベーション方向における先端位置を検出できるようになる。さらに、超音波トランスデューサアレイ110の超音波送信面上には音響整合層が配置され、超音波トランスデューサアレイ110の超音波送信面とは反対側の面にはバッキング層が配置される。さらに、音響整合層の上層に、必要に応じて音響レンズを配置しても良い。
【0091】
観察窓111には、対物レンズが装着されており、この対物レンズの結像位置には、イメージガイドの入力端又はCCDカメラ等の固体撮像素子が配置されている。これらは、観察光学系を構成する。また、照明窓112には、光源装置からライトガイドを介して供給される照明光を出射させるための照明用レンズが装着されている。これらは、照明光学系を構成する。
【0092】
処置具挿通口113は、操作部102に設けられた処置具挿入口105(図10)から挿入された処置具等を導出させる孔である。この孔から穿刺針106や鉗子等の処置具を突出させ、操作部102においてこれを操作することにより、被検体の体腔内において種々の処置が行われる。さらに、ノズル孔114は、観察窓111及び観察窓112を洗浄するための液体(水等)を噴射するために設けられている。
【0093】
このような超音波内視鏡に、本発明の第1〜第5の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの内のいずれかを適用することにより、関心領域について、画質の良い3次元画像をリアルタイムに取得することが可能になる。そのような超音波画像を参照することにより、施術者(医師等)は、処置具(例えば、穿刺針106)と患部との相対位置を正確に把握できるようになる。それにより、例えば、穿刺針106が湾曲したり、挿通方向が本来の方向からずれた場合においても、施術者は、確実且つ容易に処置を行うことが可能になる。
【0094】
ここで、図11には、超音波トランスデューサアレイ110として、コンベックス型の多列アレイが示されているが、多列アレイをアジマス方向にさらに湾曲させた円筒状(ラジアル型)の多列アレイや、アジマス方向に加えてエレベーション方向にも湾曲させた球面状のアレイを、超音波内視鏡に適用しても良い。
【0095】
以上説明した本発明の実施形態においては、多列アレイのエレベーション方向における素子の配列方法として、フレネル配置を採用しているが、例えば、MIAE(Minimum Integrated Absolute time-delay Error)配置のように、それ以外の配列方法を採用しても良い。また、列の数(エレベーション方向に配置される素子の数)や、行数(アジマス方向に配置される素子の数)や、超音波トランスデューサアレイ全体の幅及び長さについても、任意に設計することが可能である。即ち、超音波送受信面の面積が異なる複数種類の素子を1つの超音波トランスデューサアレイに配置する場合であれば、本発明を適用することが可能である。
【0096】
具体的には、素子の配置がエレベーション方向の中心について対称である多列アレイだけでなく、図12に示すように、複数種類の素子201〜203が左右非対称に配置された超音波トランスデューサアレイに本発明を適用しても良い。
【0097】
また、素子が配置される列の数についても5列に限定されることはなく、少なくとも2列以上の多列アレイであれば、本発明を適用することができる。さらに、上記の実施形態においては、エレベーション方向における配列ピッチを送信超音波の波長以上の長さにしているが、送信超音波の波長以下でも構わない。
【0098】
一方、素子の形状についても、矩形状に限らず、任意の形状を用いても良い。例えば、図13に示すように、楕円状の素子211〜213を多列に配置しても良い。または、図14に示すように、多角形(例えば、六角形)状の素子221及び222を多列に配置しても良い。さらに、図15に示すように、円環状の素子231〜233を同心円状に並べても良いし、複数の素子を円環状となるように配置しても良い。或いは、1つの超音波トランスデューサアレイに配置される複数種類の素子の形状が互いに異なっていても構わない。いずれの場合においても、超音波送受信面の面積が異なる複数種類の素子の間において、それらの電気インピーダンスが実質的に揃うように各素子の層数を設計することにより、送信音響エネルギーのバラツキや受信感度のバラツキを低減することが可能になる。
【0099】
また、本実施形態においては、最大で2つの素子が共通配線されているが、3つ以上の素子を共通配線しても構わない。その場合にも、超音波送受信面の総面積に応じて、配線ごとの合成電気インピーダンスが実質的に揃うように、各素子の層数を決定すれば良い。さらに、図6及び図8においてはフレネル配置としているため、独立に配線されている素子(例えば、素子31)の超音波送受信面の面積は、共通配線されている2つの素子(例えば、素子32)の超音波送受信面の総面積よりも大きくなっている。しかしながら、素子の配列方法はフレネル配置に限定されないため、独立に配線されている素子の超音波送受信面の面積が、共通配線されている複数の素子の超音波送受信面の総面積よりも小さくなる場合がある。そのような場合においても、超音波送受信面の面積が小さい方の素子の層数を多くし、超音波送受信面の総面積が大きい方の素子群の層数を少なくすることにより、配線ごとの合成電気インピーダンスを実質的に揃えることができる。
【0100】
加えて、超音波トランスデューサアレイにおける素子の配置面については、図1に示すような平面であっても良いし、図11に示すようなコンベックス面(凸面)であっても良いし、コンケーブ面(凹面)や球面やそれ以外の任意の曲面であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、超音波の送信及び受信を行う超音波トランスデューサアレイ、並びに、それを含む超音波用探触子及び超音波内視鏡、さらに、そのような超音波用探触子又は超音波内視鏡を用いることより超音波画像を生成する超音波診断装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る超音波用探触子及び超音波診断装置の構成を示す図である。
【図3】積層構造を有する超音波トランスデューサを示す一部断面斜視図である。
【図4】比較例1並びに実施例1及び2のシミュレーション結果を示す表である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの構成を示す図である。
【図7】比較例2並びに実施例3及び4のシミュレーション結果を示す表である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの構成を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイの構成を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る超音波内視鏡の構成を示す模式図である。
【図11】図10に示す挿入部の先端部分を拡大して示す図である。
【図12】複数種類の素子が左右非対称に配置された超音波トランスデューサアレイの例を示す平面図である。
【図13】複数種類の楕円状の素子が配置された超音波トランスデューサアレイの例を示す平面図である。
【図14】複数種類の多角形の素子が配置された超音波トランスデューサアレイの例を示す平面図である。
【図15】複数種類の円環状の素子が配置された超音波トランスデューサアレイの例を示す平面図である。
【図16】フレネル配置された従来の超音波トランスデューサアレイを示す平面図である。
【図17】多列アレイの配線方法を示す側面図である。
【符号の説明】
【0103】
1、110 超音波トランスデューサアレイ
1a 充填材
2、900 バッキング層
3 音響整合層
4 音響レンズ
5 筐体
6 ケーブル
10、910 圧電体
10a 下部電極
10b、10c 内部電極
10d 上部電極
10e、10f 側面電極
11〜13、21〜23、31〜33、41〜43、201〜203、211〜213、222〜223、231〜233、901〜903 超音波トランスデューサ素子
14、24、34〜36、44〜46、904〜907 配線
100 超音波内視鏡
101 挿入部
102 操作部
103 接続コード
104 ユニバーサルコード
105 処置具挿入口
106 穿刺針
111 観察窓
112 照明窓
113 処置具挿通口
114 ノズル孔
911、912 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波送受信面の面積が互いに異なっていると共に、全体の厚さが互いに実質的に等しい少なくとも2種類の複数の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイであって、
第1の超音波トランスデューサと、
層数が前記第1の超音波トランスデューサの層数よりも多く、且つ、超音波送受信面の面積が第1の超音波トランスデューサの超音波送受信面の面積よりも小さい第2の超音波トランスデューサと、
を具備する超音波トランスデューサアレイ。
【請求項2】
前記第1の超音波トランスデューサの電気インピーダンスと、前記第2の超音波トランスデューサの電気インピーダンスとが、互いに実質的に等しい、請求項1記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項3】
前記第1の超音波トランスデューサの層数をN、超音波送受信面の面積をSとし、前記第2の超音波トランスデューサの層数をN、超音波送受信面の面積をSとする場合に、S:S=1/N:1/Nである、請求項2記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項4】
全体の厚さが互いに実質的に等しい少なくとも2種類の複数の超音波トランスデューサが配置されている超音波トランスデューサアレイであって、
1つ、又は、共通の配線に接続された複数の第1の超音波トランスデューサと、
1つ、又は、共通の配線に接続された複数の第2の超音波トランスデューサであって、層数が前記1つ又は複数の第1の超音波トランスデューサの層数よりも多く、且つ、超音波送受信面の総面積が、前記1つ又は複数の第1の超音波トランスデューサの超音波送受信面の総面積よりも小さい前記1つ又は複数の第2の超音波トランスデューサと、
を具備する超音波トランスデューサアレイ。
【請求項5】
前記1つ又は複数の第1の超音波トランスデューサの総電気容量と、前記1つ又は複数の第2の超音波トランスデューサの総電気容量とが、互いに実質的に等しい、請求項4記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項6】
前記1つ又は複数の第1の超音波トランスデューサの層数をN、超音波送受信面の総面積をS、各配線に接続されている前記1つ又は複数の第1の超音波トランスデューサの数をM個とし、前記1つ又は複数の第2の超音波トランスデューサの層数をN、超音波送受信面の総面積をS、各配線に接続されている前記1つ又は複数の第2の超音波トランスデューサの数をM個とする場合に、S:S=1/(N・M):1/(N・M)である、請求項4又は5記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
複数の第1の超音波トランスデューサが1次元的に配列された第1の素子列と、
複数の第2の超音波トランスデューサが1次元的に配列された第2の素子列と、
を有し、前記第1の素子列と前記第2の素子列とが、互いに平行に並べられている、
請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項8】
前記複数の第1及び第2の超音波トランスデューサの各々が、矩形の超音波送受信面を有する、請求項7記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項9】
各素子列における超音波トランスデューサの配列方向に直交する向きにおいて、内側の素子列に配置されている超音波トランスデューサの幅よりも、外側の素子列に配置されている超音波トランスデューサの幅が小さい、請求項7又は8記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項10】
前記第1の素子列における前記複数の第1の超音波トランスデューサの配列ピッチと、前記第2の素子列における前記複数の第2の超音波トランスデューサの配列ピッチとが、互いに等しい、請求項7〜9のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項11】
前記第1の素子列における前記複数の第1の超音波トランスデューサの間隔と、前記第2の素子列における前記複数の第2の超音波トランスデューサの間隔とが、互いに等しい、請求項7〜9のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項12】
各素子列における超音波トランスデューサの配列方向に直交する向きにおいて、外側の素子列に配置されている超音波トランスデューサの密度よりも、内側の素子列に配置されている超音波トランスデューサの密度が高い、請求項11記載の超音波トランスデューサアレイ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイと、
前記超音波トランスデューサアレイの超音波送信面側に配置された音響整合層と、
前記超音波トランスデューサアレイの前記超音波送信面とは反対側に配置されたバッキング層と、
を具備する超音波用探触子。
【請求項14】
被検体の体内に挿入して用いられる超音波内視鏡であって、
可撓性を有する材料によって形成され、被検体の体内に挿入して使用される挿入部と、
前記挿入部の先端部に設けられた請求項1〜12のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイと、
を具備する超音波内視鏡。
【請求項15】
被検体の体内に挿入して用いられる超音波内視鏡であって、
可撓性を有する材料によって形成され、被検体の体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の内部を通り、前記挿入部の先端部に設けられた開口から被検体の体内に挿通される処置具と、
前記挿入部の先端部に設けられた請求項7〜12のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイであって、各素子列における複数の超音波トランスデューサが、前記処置具の先端の位置を検出できるように配置された前記超音波トランスデューサアレイと、
を具備する超音波内視鏡。
【請求項16】
請求項13記載の超音波用探触子、又は、請求項14若しくは15記載の超音波内視鏡と、
前記第1及び第2の超音波トランスデューサにそれぞれ供給される複数の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記第1及び第2の超音波トランスデューサからそれぞれ出力される複数の受信信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部によって処理された複数の受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項17】
前記信号処理部が、前記第1の超音波トランスデューサから出力された受信信号と、前記第2の超音波トランスデューサから出力された受信信号とについて、受信信号のレベル差を補正する補正手段を有する、請求項16記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記補正手段が、前記第1及び第2の超音波トランスデューサからそれぞれ出力された受信信号を前置増幅する複数のプリアンプであって、各々に、前記第1及び第2の超音波トランスデューサの層数及び/又は超音波送受信面の面積に応じたゲインが設定されている前記複数のプリアンプを含む、請求項17記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記補正手段が、前記第1及び第2の超音波トランスデューサから出力され、前置増幅された受信信号のレベルを調整する複数の可変利得回路であって、各々に、前記第1及び第2の超音波トランスデューサの層数及び/又は超音波送受信面の面積に応じたゲインが設定されている前記複数の可変利得回路を含む、請求項17記載の超音波診断装置。
【請求項20】
前記補正手段が、前記第1及び第2の超音波トランスデューサから出力され、前置増幅され、A/D変換された受信信号に演算処理を施す手段であって、前記第1及び第2の超音波トランスデューサの層数及び/又は超音波送受信面の面積に応じた補正率で各受信信号のレベルを補正する前記手段を含む、請求項17記載の超音波診断装置。
【請求項21】
前記第1の超音波トランスデューサの層数をNとし、前記第2の超音波トランスデューサの層数をNとする場合に、前記補正手段が、前記第1の超音波トランスデューサから出力された受信信号と、前記第2の超音波トランスデューサから出力された受信信号とを、ゲイン又は補正率の比がN:Nとなるように補正する、請求項17〜20のいずれか1記載の超音波診断装置。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイと、
前記超音波トランスデューサアレイの超音波送信面側に配置された音響整合層と、
前記超音波トランスデューサアレイの前記超音波送信面とは反対側に配置されたバッキング層と、
前記第1の超音波トランスデューサから出力された受信信号と、前記第2の超音波トランスデューサから出力された受信信号とについて、受信信号のレベル差を補正する補正手段と、
を具備する超音波用探触子。
【請求項23】
被検体の体内に挿入して用いられる超音波内視鏡であって、
可撓性を有する材料によって形成され、被検体の体内に挿入して使用される挿入部と、
前記挿入部の先端部に設けられた請求項1〜12のいずれか1項記載の超音波トランスデューサアレイと、
前記第1の超音波トランスデューサから出力された受信信号と、前記第2の超音波トランスデューサから出力された受信信号とについて、受信信号のレベル差を補正する補正手段と、
を具備する超音波内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−5996(P2008−5996A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178482(P2006−178482)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】