説明

超音波振動子、それを用いた超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置

【課題】電極層間で生じる多重反射、音圧劣化を軽減し、高画質・高精細な診断画像を得ることができる超音波振動子を提供する。また、それを用いた超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】圧電層と電極層が交互に厚さ方向にそれぞれ三層以上積層された超音波振動子であって、当該圧電層は有機非導電性高分子材料により構成されており、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が前記有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする超音波振動子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極層間で生じる多重反射、音圧劣化を軽減し、高画質・高精細な診断画像を得ることができる超音波振動子、それを用いた超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホン、スピーカー用の振動板等の音響機器、各種熱センサー、圧力センサー、赤外線検出器等の測定機器、超音波探蝕子、遺伝子やタンパク等の変異を高感度に検出する振動センサー等、熱や機械刺激を電気エネルギーに変換するために用いることができる圧電性や焦電性を持つ有機圧電材料は知られている。
【0003】
圧焦電体としては、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、所謂無機圧電材料が広く利用されている。しかしながら、これら無機材質の圧電材料は弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの特徴を持っている。
【0004】
一方で、ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す。)、ポリシアノビニリデン(以下「PVDCN」と略す。)等の有機圧電材料も開発されている(例えば特許文献1参照)。この有機圧電材料は薄膜化、大面積化等の加工性に優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用を考えたときに高感度な検出を可能とする特徴を持っている。
【0005】
従来、無機圧電材料が当業界では一般的であり、電極材料として金属を用いることは音響特性の面から考えても、大きな欠点はなかった。
【0006】
しかしながら、近年、高解像・高精細画像に基づく高レベルの診断を可能とする超音波医用画像診断装置能の研究開発が、各種無機材料と有機材料の併用をするという観点からの研究開発を含めて、精力的に行われている。それに必要な高周波・高調波を利用しうる有機圧電材料では、広帯域で、材料としての音響インピーダンスは生体に近く、音の通りが良いというメリットはあるものの、電極として音響インピーダンスが大きい金属材料を用いると、圧電層と電極の界面での音の反射が無視できず、パルスが長くなる、すなわち距離分解能が低下する原因となる。このような理由により、従来、有機圧電材料のメリットを活かすことはできていない(例えば特許文献2〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−216422号公報
【特許文献2】特開平8−205290号公報
【特許文献3】特開2001−276060号公報
【特許文献4】特開2002−232995号公報
【特許文献5】特開2008−272438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、電極層間で生じる多重反射、音圧劣化を軽減し、高画質・高精細な診断画像を得ることができる超音波振動子を提供することである。また、それを用いた超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.圧電層と電極層が交互に厚さ方向にそれぞれ三層以上積層された超音波振動子であって、当該圧電層は有機非導電性高分子材料により構成されており、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が前記有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする超音波振動子。
【0011】
2.前記有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が、1.5×10〜1.0×10(kg/m・s)の範囲内にあることを特徴とする前記第1項に記載の超音波振動子。
【0012】
3.前記第1項又は第2項に記載の超音波振動子を用いたことを特徴とする超音波探触子。
【0013】
4.前記第1項又は第2項に記載の超音波振動子を用いた超音波探触子を具備していることを特徴とする超音波医用画像診断装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、電極層間で生じる多重反射、音圧劣化を軽減し、高画質・高精細な診断画像を得ることができる超音波振動子を提供することができる。また、それを用いた超音波探触子及び超音波医用画像診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】超音波医用画像診断装置の外観構成を示す概要図
【図2】超音波医用画像診断装置の電気的な構成を示すブロック図
【図3】超音波医用画像診断装置の超音波探触子の構成を示す概要図
【図4】H−NMRシグナルを示す図
【図5】超音波振動子の基本的構成例の概要図
【図6】超音波探触子の駆動に用いたパルスの例を示す図
【図7】超音波探触子が受信したパルスの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の超音波振動子は、圧電層と電極層が交互に厚さ方向にそれぞれ三層以上積層された超音波振動子であって、当該圧電層は有機非導電性高分子材料により構成されており、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が前記有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の平均厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0017】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が、1.5×10〜1.0×10(kg/m・s)の範囲内にあることが好ましい。
【0018】
本発明の超音波振動子は、超音波探触子、及び超音波医用画像診断装置に好適に用いることができる。
【0019】
以下、本発明とその構成要素、及び発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0020】
(超音波振動子)
本発明の超音波振動子は、圧電層と電極層が交互に厚さ方向にそれぞれ三層以上積層された超音波振動子であって、当該圧電層は有機非導電性高分子材料により構成されており、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が前記有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の厚さが接触している圧電層の厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする。
【0021】
当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0022】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる圧電層(「圧電体層」「圧電膜」、「圧電体膜」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0023】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する、又は、その口径に属する振動子とは別の複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0024】
(圧電層)
本発明に係る圧電層は、少なくとも下記の有機非導電性高分子材料を構成材料として含有することを特徴とする。
【0025】
当該圧電層の層厚は、5〜200μmの範囲内にあることが好ましい。また、有機高分子材料の含有量は、80〜100質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0026】
当該圧電層の形成方法は、塗布によって膜を形成する方法、蒸着(蒸着重合)によって膜を形成する方法等が好ましい。塗布方法として、例えば、スピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、メルトプレス法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。蒸着(蒸着重合)方法としては、数百Pa以下程度の真空度で単一、または複数の蒸発源よりモノマーを蒸発させ、基板上に付着、反応させることで膜が得られる。場合によっては基板の温調を必要とすることもある。
【0027】
なお、圧電性向上のため、圧電層の作製中、特に乾燥中に電場もしくは磁場を印加し、分子配向させることもある。
【0028】
(有機高分子圧電材料)
本発明の超音波振動子を構成する有機高分子圧電材料としては、有機非導電性高分子材料を用いることができる。なお、本願において「有機非導電性高分子材料」とは、後述するシート抵抗値が、23℃、20%RHにおいて、1000Ω/□以上である有機電性高分子材料をいう。
【0029】
例えば、フッ化ビニリデン(VDF)の重合体であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいはVDFと、例えば、3フッ化エチレン(TrFE)の共重合体であるポリフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン(P(VDF−TrFE))のようなPVDF共重合体、シアン化ビニリデン(VDCN)の重合体であるポリシアン化ビニリデン(PVDCN)、あるいはシアン化ビニリデン系共重合体あるはナイロン9、ナイロン11などの奇数ナイロンや、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、あるいはポリ乳酸や、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレアなどが挙げられる。良好な圧電特性、加工性、入手容易性等の観点から、高分子の有機圧電材料、特にVDFを主成分として含有する高分子材料であることが好ましい。
【0030】
具体的には、大きい双極子モーメントをもつCF基を有する、VDFの単独重合体又はVDFを主成分とする共重合体であることが好ましい。なお、共重合体における第二組成分としては、テトラフルオロエチレン(TeFE)、トリフルオロエチレン(3フッ化エチレンTrFE)、ヘキサフルオロプロパン、クロロフルオロエチレン等を用いることができる。
【0031】
例えば、P(VDF−TrFE)の場合、共重合比によって厚さ方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、VDFの共重合比が60〜99mol%であること、さらには、65〜85mol%であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、上記範囲において共重合比を変化させ、当該電気機械結合定数が、0.25以上であるように調整することが好ましい。
【0033】
なお、VDFを65〜85mol%にして、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルコキシエチレン、パーフルオロヘキサエチレン等を15〜35mol%にしたポリマーは、送信用無機圧電素子と受信用有機圧電素子との組み合わせにおいて、送信基本波を抑制して、高調波受信の感度を高めることができる。
【0034】
上記有機圧電材料は、セラミックスからなる無機圧電材料に比べ、薄膜化できることからより高周波の送受信に対応した振動子にすることができる点が特徴である。
【0035】
本発明においては、当該有機圧電材料は、厚さ共振周波数における比誘電率が4〜50であることを特徴とするが、比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有するCF基やCN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び後述する分極処理によって行うことができる。
【0036】
なお、本発明の振動子を構成する有機圧電材料は、複数の高分子材料を積層させた構成とすることもできる。この場合、積層する高分子材料としては、上記の高分子材料の他に下記の比誘電率の比較的低い高分子材料を併用することができる。
【0037】
なお、下記の例示において、括弧内の数値は、高分子材料(樹脂)の比誘電率を示す。例えば、メタクリル酸メチル樹脂(3.0)、アクリルニトリル樹脂(4.0)、アセテート樹脂(3.4)、アニリン樹脂(3.5)、アニリンホルムアルデヒド樹脂(4.0)、アミノアルキル樹脂(4.0)、アルキッド樹脂(5.0)、ナイロン−6−6(3.4)、エチレン樹脂(2.2)、エポキシ樹脂(2.5)、塩化ビニル樹脂(3.3)、塩化ビニリデン樹脂(3.0)、尿素ホルムアルデヒド樹脂(7.0)、ポリアセタール樹脂(3.6)、ポリウレタン(5.0)、ポリエステル樹脂(2.8)、ポリエチレン(低圧)(2.3)、ポリエチレンテレフタレート(2.9)、ポリカーポネート樹脂(2.9)、メラミン樹脂(5.1)、メラミンホルムアルデヒド樹脂(8.0)、酢酸セルロース(3.2)、酢酸ビニル樹脂(2.7)、スチレン樹脂(2.3)、スチレンブタジエンゴム(3.0)、スチロール樹脂(2.4)、フッ化エチレン樹脂(2.0)等を用いることができる。
【0038】
なお、上記比誘電率の低い高分子材料は、圧電特性を調整するため、或いは有機圧電材料の物理的強度を付与するため等の種々の目的に応じて適切なものを選択することが好ましい。
【0039】
(電極層)
本発明に係る電極層は、少なくとも下記の有機導電性高分子を構成材料として含有することを特徴とする。また、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする。
【0040】
本発明において、有機導電性高分子の含有量は、80〜100%にあることが好ましい。
【0041】
また、本願においては、本発明に用いることができる有機導電性高分子の導電性をシート抵抗値で表すと、例えば、23℃、20%RHにおいて、300Ω/□以下であることが好ましく、50〜200の範囲内にあることが好ましい。
【0042】
なお、シート抵抗Rは、三次元の導電性を表す場合、一般に下記式で表される。
【0043】
R=ρ×L/S=ρ×L/Wt
ただし、ρは抵抗率で、Sは試料の断面積、Lは試料の長さである。試料の断面積は、試料の幅Wと試料の厚さtで表される。
【0044】
本願に記載したシート抵抗は、シート抵抗測定器(商品名:ロレスタ、三菱化学株式会社製)によって測定して得られた値である。
【0045】
本願において、前記所定のシート抵抗値の範囲になるように、後述する有機導電性高分子の種類と成膜後の電気伝導性に応じてその厚さを決めることを要する。
【0046】
本発明においては、当該有機導電性高分子の音響インピーダンスが、1.5×10〜1.0×10kg/m・sの範囲内であることが好ましい。
【0047】
本願においては、音響インピーダンスを次のように算出する。すなわち、測定する材料の密度ρを求め、超音波測定器を用い、一方のセンサーから発振された音波を他方のセンサーが受振するまでの伝播時間tと、両センサーの距離Hとから、下記の式に従い、音響インピーダンスを算出する。
ν=H/t
Ζ=ρν
(ただし、νは音速、Hは両センサーの距離、tは伝播時間、Ζは音響インピーダンス、ρは密度である。)
なお、本発明に係る実施例においては、超音波の音速は、JIS Z2353−2003に従い、超音波工業(株)製シングアラウンド式音速測定装置を用いて、一定温度(25℃)下で測定し、音響インピーダンスを以下の式に従い導いた。
【0048】
音響インピーダンス(Z:×10kg/m・sec)=密度(ρ:×10kg/m)×音速(C:×10m/sec)
当該音響インピーダンスを上記所定の範囲内にするには、後述する有機導電性高分子の種類と成膜の厚さを適切な範囲に決めることを要する。
【0049】
(有機導電性高分子)
本発明においては、有機導電性高分子として、例えば溶剤や水などの溶媒に可溶なポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテンまたはポリエチレンジオキシチオフェンの誘導体などが利用できる。
【0050】
特に、一般式(EC1)で表されるポリエチレンジオキシチオフェンを用いることが好ましい。なお、下記構造式において、nは、20〜100000の範囲内にあることが好ましい。
【0051】
【化1】

【0052】
本発明において用いるドーパントとしては、特開2008−130938号公報に記載されている有機プロトン酸やその塩が好ましい。
【0053】
また、さらに導電性を向上させる目的で混合して用いることができる材料としては、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、Agワイヤー、Agファイバー、Agフィラーのような金属などを混合しても良い。
【0054】
本発明において、好ましく用いられる有機導電性高分子の具体例としては、下記の例等が挙げられる。
【0055】
(非水溶性有機導電性高分子の例)
【0056】
【化2】

【0057】
(水溶性有機導電性高分子の例)
【0058】
【化3】

【0059】
(有機圧電材料の作製方法)
本発明に係る有機圧電材料は、上記高分子材料を主たる構成成分として有する室温以上、融点から10℃低い温度以下の温度において、延伸可能なフィルム状であり、張力を一定の範囲に保ちながら熱処理され、続いて室温まで冷却される間に二段階目の延伸をして作製することができる。
【0060】
本発明に係るフッ化ビニリデン(VDF)を含む有機圧電材料を振動子とする場合、フィルム状に形成し、ついで電気信号を入力するための表面電極を形成する。本発明は、表面に形成した電極を介して電場を厚さ方向にかけ、圧迫しながら分極することを特徴とするが、表面に電極を形成せずに、圧迫部材の材料に接触する面に電圧をかけられる電極を設置し、同様に圧迫しながら材料の厚さ方向に電場をかけながら分極することでも効果は同じである。
【0061】
フィルム形成は、溶融法、流延法など一般的な方法を用いることができる。PVDFトリフルオロエチレン共重合体の場合、フィルム状にしたのみで自発分極をもつ結晶型を有することが知られているが、さらに特性を上げるには、分子配列を揃える処理を加えることが有用である。手段としては、延伸製膜、アニール処理、分極処理などが挙げられる。
【0062】
延伸製膜の方法については、種々の公知の方法を採用することができる。例えば、上記高分子材料をエチルメチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する。当該延伸は、所定形状の有機圧電材料が破壊されない程度に一軸・二軸方向に延伸することができる。延伸倍率は2〜10倍、好ましくは2〜6倍である。
【0063】
なお、P(VDF−TrFE)及び/又はP(VDF−TeFE)において、230℃における溶融流動速度(Melt Flow Rate)が0.03g/min以下である。より好ましくは、0.02g/min以下、更に好ましくは、0.01g/min以下である高分子圧電体を使用すると高感度な圧電体の薄膜が得られる。
【0064】
一般にフィルム状の材料を熱処理する場合、フィルム面内に効率的かつ均一に熱を与えるためにチャック、クリップなどで端部を支持して所定温度付近下に置くことが好ましい。この際に、フィルム面にヒートプレート等の熱源を直接触れるような形態で熱を与えることは、加熱の際に収縮する材料の場合、平面性を損なうので好ましくない。むしろ加熱の際の熱収縮に対し、わずかに弛緩処理を行うことの方が平面性に対しては効果がある。ここでいう弛緩処理とは、熱処理およびその終了後室温まで冷却される過程でフィルムにかかる収縮ないしは膨張しようとする力に追従しながら、フィルム両端の応力を変化させることである。弛緩処理は、フィルムが弛むことで平面性が保てなくなったり、応力が大きくなって破断したりしない限り、応力を緩和させるように縮めても、さらに張力をかける方向に延伸しない程度に広げても良い。本発明においては、延伸した方向をプラスと定めた場合、長さにして10%程度、フィルムが冷却中に伸びる場合は、たるみに追従するように最大でも10%程度、二段階目の延伸を行う。フィルムをピンと張った状態にする、たるみをなくす程度に延伸チャックを稼動させることを本発明では二段階目の延伸と呼ぶことにする。それ以上の処理は、冷却中の延伸となりフィルム破断のおそれがある。
【0065】
本発明の有機圧電材料の熱処理としては、フィルム面内に効率的かつ均一に熱を与えるためにチャック、クリップなどで端部を支持して、フィルムの融点よりも10℃低い温度を上限とした温度付近下に置くことが好ましい。VDFを主成分とする有機圧電材料の場合、融点が150〜180℃にあることから、110〜140℃の温度で熱処理をすることが好ましい。また、その時間は、30分以上行うことで効果が発現し長ければ長いほど結晶成長が促進するが時間とともに飽和することから、現実的には10時間程度、長くとも一昼夜程度である。この間もフィルムの平面性を維持するために一定の張力がフィルムかかるようにしておくことが好ましい。熱処理中の張力は、仕上がりの平面性の観点から0.1〜500kPaの範囲内が好ましく、より好ましくは出来る限り小さい応力が好ましい。熱処理中のフィルムは柔らかく、張力がこの値よりも大きくなると、さらに延びてしまうため、熱処理の効果が失われてしまうだけでなく、破断が起こるおそれがある。
【0066】
(分極処理)
本発明の有機圧電材料は、有機圧電材料の両面に電極が設置された有機圧電材料であって、当該電極が設置された後に、絶縁部材による圧迫下、分極処理が施されたことを特徴とする。なお、本願において、「絶縁部材による圧迫下、分極処理が施された」とは、両面に電極が設置された有機圧電材料に接触させた絶縁部材を介して押圧した状態において、分極処理が施されたことをいう。
【0067】
圧電材料は、電場応答に対して変形応答をする特性を持っている材料である。これは分極処理中における電場によっても変形応答する。すなわち、材料に分極処理を施すことで圧電材料としての特性を付与するその最中にも電場によって変形することであり、しばしば分極処理後に変形して初期の形状を保たないことがある。本発明ではその分極中の変形を抑制するための圧迫をしつつ、分極処理を行うことで、より変形の少ない、好ましくは分極処理前後での平面性が保たれ、かつ高い圧電特性を有する有機圧電材料を得ることを目的とする。ここで、押圧力、すなわち、押圧する圧力の程度としては、少なくとも0.98MPa(10kg/cm)以上、9.8MPa(100kg/cm)以下であることが好ましい。0.98MPa(10kg/cm)以上とすることで変形を抑えることができ、9.8Ma(100kg/cm)以下とすることで厚さ方向の変形の発生を防止したり、初期の厚さを保つことができ、もしくは分極処理の印加電流が短絡することを防止できて好ましい。
【0068】
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の直流電圧印加処理若しくは交流電圧印加処理等の電圧印加処理の方法が適用され得る。
【0069】
さらに、圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0070】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0071】
(超音波受信用振動子)
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる超音波受信用圧電材料を有する振動子であって、それを構成する該圧電材料が、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電膜を用いた態様であることが好ましい。
【0072】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電膜は、厚さ共振周波数における比誘電率が4〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有するCF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0073】
なお、本発明の受信用振動子は、複数の有機高分子膜を積層させた構成とすることもでき、本発明においては該有機高分子膜を三枚以上積層することが好ましい。なお積層振動子の各層の配線方法は、電気的に直列接続でも並列接続でも構わないが、システムとのインピーダンス整合の観点から、好ましくは並列接続である。
【0074】
積層する上で用いる接着剤としては、下記の市販のエポキシ接着剤を用いることができる。
【0075】
市販のエポキシ接着剤の具体例としては、スリーエム カンパニー製のDP−420、DP−460、DP−460EG、セメダイン社製のエクセルエポ、EP001、EP008、EP330、EP331、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製のアラルダイト スタンダード、アラルダイト ラピッド、システムスリー社製のシステムスリーエポキシ、ゲルマジック、スリーボンド社製の2087L(高強度二液性エポキシ配合樹脂)、2082C(常温硬化型二液性エポキシ樹脂高せん断接着力タイプ)、2081D(軟質塩ビ用接着剤エポキシ系)、コニシ社製のEセットL、コトロニクス社製デュラルコ4525IP、7050、NM25、4461IP等を挙げることができる。
【0076】
各電極層の結線方法としては、接触する電極層は短絡して一層の電極層とみなし、並列接続の場合は、例えば、最下層の電極層から一層おきに電気的に導通させる。導通させる方法としては、例えば最下層の電極層から順に側面部分に左右対称に電極を出し、側面を導電性ペーストで導通させる、側面に導電性材料を蒸着する、などが考えられる。この際、左右対称に出した電極が短絡することがないように、電極層のパターンを表裏で異なるものにするなど工夫が必要である。
【0077】
(超音波送信用振動子)
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用圧電材料を有する振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性・耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0078】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0079】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0080】
無機材料としては、水晶、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛[Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、タンタル酸ニオブ酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、メタニオブ酸鉛(PbNb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム[(Ba,Sr)TiO]や、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PTの他に、ZnO、AlNなどの薄膜など、を用いることができる。尚、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0081】
なお、本発明においては、超音波受信用振動子が超音波送信用振動子を兼ねる場合も含む。
【0082】
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波画像診断装置の主要構成部品であって、超音波を発生するとともに、超音波ビームを送受信する機能を有するものである。当該超音波探触子の内部の構成は、種々の態様を採り得るが、一般的構成としては、先端(被検体である生体に接する面)部分から「音響レンズ」、「音響整合層」、「超音波振動子(素子)」、「バッキング」という順に並置された態様の構成を採り得る。
【0083】
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0084】
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
【0085】
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0086】
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明の超音波受信用振動子を配置することができる。
【0087】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明の超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明の超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置及び生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、5〜200μmであることが好ましい。
【0088】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0089】
(音響整合層)
超音波振動子と生体組織の音響インピーダンスの差が大きいために境界面での反射が大きくなり、自由振動が長く続いてしまう。これを補正するために振動子と生体組織との間に両者の中間的な音響インピーダンスを持つ整合層を入れることにより、反射が軽減され自由振動がすみやかに集束し、探触子で送受信される超音波パルス幅が短くなり、生体内に超音波が効果的に伝搬される。
【0090】
音響整合層に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(たとえばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、カーボングラファイト、コッパーグラファイト、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABC樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6,PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に充填剤として亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものを用いることができる。
【0091】
音響整合層は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが好ましくは2層以上である。音響整合層の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定める必要がある。これを満たさない場合、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動してしまう。結果、残響時間の増加、反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こしてしまい好ましくない。このような音響整合層の総厚さとしては、概ね30〜500μmの範囲で用いられる。
【0092】
(バッキング層)
本発明においては、超音波振動子の背面に配置し、後方への超音波の伝搬を抑制することを目的としてバッキング層を備えることも好ましい。これにより、パルス幅を短くすることができる。バッキング層は、圧電素子を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。バッキング層に用いられるバッキング材としては、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した材料、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0093】
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料およびまたはエポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電体や圧電体を含むプローブヘッドの形状に応じて、適宜選択することができる。
【0094】
ゴム系複合材としては、ゴム成分および充填剤を含有する物が好ましく、JIS K6253に準拠したスプリング硬さ試験機(デュロメータ硬さ)におけるタイプAデュロメータでA70からタイプDデュロメータでD70までの硬さを有するものであり、さらに、必要に応じて各種の他の配合剤を添加することもできる。ゴム成分としては、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴムなどが好ましい。より好ましくは、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴムなどが挙げられる。本発明のゴム成分は、加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーなどのゴム成分の1種を単独で使用してもよいが、ブレンドゴムのように2種以上のゴム成分をブレンドしたブレンドゴムを用いてもよい。ゴム成分に添加される充填剤としては、通常使用されているものから比重の大きいものに至るまでその配合量と共に様々な形で選ぶことが出来る。たとえば、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、フェライト、アルミナ、三酸化タングステン、酸化イットリビウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、ハードクレイ、ケイソウ土などのクレイ類、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩類、ガラス粉末などやタングステン、モリブデン等の各種の金属系微粉末類、ガラスバルーン、ポリマーバルーン等の各種バルーン類が挙げられる。これらの充填剤は、種々の比率で添加することができるが、好ましくはゴム成分100質量部に対して50〜3000質量部、より好ましくは100〜2000質量部、または300〜1500質量部程度が好ましい。また、これらの充填剤は1種または2種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0095】
ゴム系複合材料には、さらに他の配合剤を必要に応じて添加することができ、このような配合剤としては、加硫剤、架橋剤、硬化剤、それらの助剤類、劣化防止剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。たとえば、カーボンブラック、二酸化ケイ素、プロセスオイル、イオウ(加硫剤)、ジクミルパーオキサイド(Dicup、架橋剤)、ステアリン酸などを配合することができる。これらの配合剤は必要に応じて使用されるものであるが、その使用量は、一般にゴム成分100質量部に対しそれぞれ1〜100質量部程度であるが全体的バランスや特性によって適宜変更することもできる。
【0096】
エポキシ樹脂複合剤としては、エポキシ樹脂成分および充填剤を含有するのが好ましく、さらに必要に応じて各種の配合剤を添加することもできる。エポキシ樹脂成分としては、たとえばビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、レゾールノボラックタイプ、フェノール変性ノボラックタイプ等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン構造含有タイプ、アントラセン構造含有タイプ、フルオレン構造含有タイプ等の多環芳香族型エポキシ樹脂、水添脂環型エポキシ樹脂、液晶性エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明のエポキシ樹脂成分は単独で用いても良いが、ブレンド樹脂のように2種類以上のエポキシ樹脂成分を混合して用いても良い。
【0097】
エポキシ成分に添加される充填剤としては、上記ゴム成分に混合する充填剤と同様のものから、上記ゴム系複合剤を粉砕しさく作製した複合粒子までいずれも好ましく使用することができる。複合粒子としては、たとえばシリコーンゴム中にフェライトを充填したものを、粉砕器にて粉砕し200μm程度の粒径にしたものが挙げることができる。
【0098】
エポキシ樹脂複合剤を使用する際にはさらに架橋剤を添加する必要があり、たとえばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン、ポリアミド樹脂、ピペリジン、NN−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール等の2級および3級アミン等、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート等のイミダゾール類、液状ポリメルカプタン、ポリスルフィド、無水フタル酸、無視トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物が挙げることができる。
【0099】
バッキング材の厚さは、概ね1〜10mmが好ましく、特に1〜5mmであることが好ましい。
【0100】
(音響レンズ)
本発明に係る音響レンズは、屈折を利用して超音波ビームを集束し分解能を向上するために配置されている。本発明においては、当該音響レンズの被検体表面に近い領域に、励起光を照射することにより発光する物質すなわち発光物質が添加されていることを特徴とする。
【0101】
当該音響レンズは、超音波を収束するとともに、生体とよく密着して生体の音響インピーダンス(密度×音速;1.4×10〜1.6×10kg/m・sec)と整合させ、超音波の反射を少なくしうること、レンズ自体の超音波減衰量が小さいことが必要条件とされている。
【0102】
すなわち、超音波ビームを集束するため人体と接触する部分に、従来ゴム等の高分子材料をベースにして作られた音響レンズが設けられている。ここに用いられるレンズ材料としては、その音速が人体のそれより十分小さくて、減衰が少なく、又、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものが望まれる。レンズ材が、音速が人体のそれより十分小さければ、レンズ形状を凸状となすことができ、診断を行う際に滑りが良くなり、安全に行えるし、また、減衰が少なくなれば、感度良く超音波の送受信が行え、さらに、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近いものであれば、反射が小さくなり、換言すれば、透過率が大きくなるので、同様に超音波の送受信感度が良くなるからである。
【0103】
本発明において、音響レンズを構成する素材としては、従来公知のシリコンゴム、フッ素シリコンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のホモポリマー、エチレンとプロピレンとを共重合させてなるエチレン−プロピレン共重合体ゴム等の共重合体ゴム等を用いることができる。これらのうち、シリコン系ゴムを用いることが好ましい。
【0104】
本発明に使用されるシリコン系ゴムとしては、シリコンゴム、フッ素シリコンゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、シリコンゴムを使用することが好ましい。シリコンゴムとは、Si−O結合からなる分子骨格を有し、そのSi原子に複数の有機基が主結合したオルガノポリシロキサンをいい、通常は、その主成分はメチルポリシロキサンで、全体の有機基のうち90%以上はメチル基である。メチル基に代えて水素原子、フェニル基、ビニル基、アリル基等を導入したものも使用することができる。当該シリコンゴムは、例えば、高重合度のオルガノポリシロキサンに過酸化ベンゾイルなどの硬化剤(加硫剤)を混練し、加熱加硫し硬化させることにより得ることができる。必要に応じてシリカ、ナイロン粉末等の有機又は無機充填剤、硫黄、酸化亜鉛等の加硫助剤等を添加してもよい。
【0105】
本発明に使用されるブタジエン系ゴムとしては、ブタジエン単独又はブタジエンを主体としこれに少量のスチロール又はアクリロニトリルが共重合した共重合ゴム等が挙げられる。就中、レンズ材の特性上、ブタジエンゴムを使用することが好ましい。ブタジエンゴムとは、共役二重結合を有するブタジエンの重合により得られる合成ゴムをいう。ブタジエンゴムは、共役二重結合を有するブタジエン単独が1,4又は1.2重合することにより得ることができる。ブタジエンゴムは、硫黄等により加硫させたものが使用できる。
【0106】
本発明に係る音響レンズにおいては、シリコン系ゴムとブタジエン系ゴムとを混合し加硫硬化させることにより得ることができる。例えば、シリコンゴムとブタジエンゴムとを適宜割合で、混練ロールにより、混合し、過酸化ベンゾイルなどの加硫剤を添加し、加熱加硫し架橋(硬化)させることにより得ることができる。その際に、加硫助剤として、酸化亜鉛を添加することが好ましい。酸化亜鉛は、レンズ特性を落とさずに、加硫促進を促し、加硫時間を短縮できる。他に、着色剤や音響レンズの特性を損なわない範囲内で他の添加剤を添加してもよい。シリコン系ゴムとブタジエン系ゴムとの混合割合は、その音響インピーダンスが人体に近似しているとともに、その音速が人体より小さく、減衰が少ないものを得るには、通常、1:1が好ましいが、当該混合割合は適宜変更可能である。
【0107】
シリコーンゴムは、市販品として入手することができ、たとえば信越化学社製、KE742U、KE752U、KE931U、KE941U、KE951U、KE961U、KE850U、KE555U、KE575U等や、モメンティブパフォーマンスマテリアル社製のTSE221−3U、TE221−4U、TSE2233U、XE20−523−4U、TSE27−4U、TSE260−3U、TSE−260−4Uやダウコーニング東レ社製のSH35U、SH55UA、SH831U、SE6749U、SE1120USE4704Uなどを用いることができる。
【0108】
なお、本発明においては、上記シリコン系ゴム等のゴム素材をベース(主成分)として、音速調整、密度調整等の目的に応じ、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの無機充填剤や、ナイロンなどの有機樹脂等を配合することもできる。
【0109】
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波医用画像診断装置(「超音波診断装置」ともいう。)に用いることができる。
【0110】
図1は、実施形態にかかる超音波診断装置の外観構成を示す概要図である。図2は、実施形態にかかる超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、実施形態にかかる超音波診断装置の超音波探触子の構成を示す概要図である。
【0111】
超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、図略の生体等の被検体Hに対して超音波信号(以下「第1超音波信号」とも称す。)を送信すると共に、被検体Hで反射した超音波信号の反射波(以下「第2超音波信号」とも称す。)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体Hに対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体H内からの第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体H内の内部状態を超音波画像として医用画像に画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。超音波診断装置本体1には、超音波探触子2を使用しない時に、超音波探触子2を保持させておく超音波探触子フォルダ4が備えられている。
【0112】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、信号処理部14と、画像処理部15と、表示部16と、制御部17と、記憶部19と、電圧制御手段18と、を備えて構成されている。
【0113】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体Hの個人情報等のデータを入力するものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
【0114】
送信部12は、制御部17の制御に従って、後述する第1圧電部と前記第2圧電部とを駆動する電気信号の送信信号を生成する機能を有する回路である。送信部12は、超音波探触子2内の第1圧電部と第2圧電部とへ、電圧制御手段18とケーブル3を介して送信信号を供給し、超音波探触子2に第1超音波信号を発生させる。送信部12は、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成される。
【0115】
受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14へ出力する。受信部13は、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器、および、この増幅器で増幅された受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換器等を備えて構成される。
【0116】
信号処理部14は、制御部17の制御に従って、受信部13からの電気信号に、所定の信号処理を施す回路であり、その信号処理した反射受信信号を画像処理部15へ出力する。
【0117】
画像処理部15は、制御部17の制御に従って、信号処理部14で信号処理された反射受信信号に基づいて、例えばハーモニックイメージング技術等を用いて被検体H内の内部状態の超音波画像を生成する回路である。例えば、反射受信信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、第2超音波信号の振幅強度に対応したBモード信号を生成する。
【0118】
記憶部19はRAMやROMで構成され、制御部17に用いられるプログラムが記録され、また、表示部16で表示する各種画像のテンプレートが記録されている。
【0119】
電圧制御手段18は、制御部17の制御に従って、送信部12からの電気信号の送信信号を、第1圧電部と第2圧電部とに対して、どのように印加するか制御する機能を有する。
【0120】
表示部16は、制御部17の制御に従って、画像処理部15で生成された超音波画像を表示する装置である。表示部16は、例えば、CRTディスプレイ、LCD、ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0121】
制御部17は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、受信部13、信号処理部14、画像処理部15、電圧制御手段18、及び記憶部19を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
【0122】
一方、超音波探触子2は、振動部30を備える。振動部30は、図略の生体等の被検体Hに対して第1超音波信号を送信すると共に、被検体Hからの第2超音波信号を受信する。振動部30は、例えば、図3に示すように、音響制動部材31と、圧電部32と、音響整合層33と、音響レンズ34とを備えて構成される。
【0123】
音響制動部材31は、超音波を吸収する材料から構成された平板状の部材であり、圧電部32から音響制動部材31方向へ放射される超音波を吸収するものである。
【0124】
圧電部32は、第1圧電部321と第2圧電部322とを備える。第1圧電部321、及び第2圧電部322は、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換するものである。
【0125】
第1圧電部321においては、超音波信号を送受信する方向に沿って互いに同一方向に分極処理が施された複数の圧電素子(第1圧電素子)が、並列配置されている。第1圧電部321の両面には電極が形成されている。
【0126】
第2圧電部322においては、第1圧電部321の分極方向に対して反対方向に分極処理が施された複数の圧電素子(第2圧電素子)が並列配置されている。第2圧電部322の両面には電極が形成されている。
【0127】
本実施形態においては、第1圧電部321と第2圧電部322とは積層配置されており、接触している部分の電極は共有化されている。
【0128】
圧電部32は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信の電気信号を第1超音波信号へ変換して第1超音波信号を送信すると共に、受信した第2超音波信号を電気信号へ変換してこの電気信号(受信信号)を、ケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体Hに当接されることによって圧電部32で生成された第1超音波信号が被検体H内へ送信され、被検体H内からの第2超音波信号が圧電部32で受信される。
【0129】
第1圧電部321と第2圧電部322とは同一の材料で形成されていてもよい、異なる材料で形成されていてもよい。異なる材料で形成されている場合には、各々の音響インピーダンスが異なる場合が多いので、第1圧電部321と第2圧電部322の間に図示しない中間層を設けても良い。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0131】
(有機圧電材料P(VDF−TrFE)の合成)
内容積14Lのステンレス製の耐圧オートクレーブに、フッ化ビニリデン(VDF;シグマアルドリッチ社製)70部(3000g)、3フッ化エチレン(TrFE;シグマアルドリッチ社製)30部、純水210部、メチルセルロース(東京化成社製)0.1部、ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業社製)0.2部、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート(日油株式会社製)0.61部を仕込み、25℃で重合を開始した。3時間に酢酸エチル3.0部を添加し、重合反応を継続した。その後オートクレーブの内圧が25kg/cmに低下した時点で、未反応物を回収し、重合物の脱水、水洗を順に3回繰り返したあと、減圧乾燥を行った。収率は26%であった。
【0132】
得られたP(VDF−TrFE)について評価を行った。重量平均分子量は255000、分散(分子量分布)は2.4であった。
【0133】
なお、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した。測定条件は以下の通りである。
【0134】
溶媒 :30mMLiBr in N−メチルピロリドン
装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :1.0g/L
注入量 :40μl
流量 :0.5ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0135】
組成については、H−NMRにより決定した。得られたP(VDF−TrFE)の3質量%重ジメチルスルホキシド溶液を調製し、サンプル管に入れ、NMR(核磁気共鳴)装置(Varian 400−MR、Varian社製)にて400MHzの周波数で解析した。得られたデータ(図4参照)の解析から、5.3−6.0ppm付近に現れるTrFEに特有のプロトンのシグナルと、2.3−3.3ppm付近に現れるVDFに特有のプロトンのシグナルとの比より、VDF/TrFE=3/1と決定した。
【0136】
また、同様にして、VDFのホモポリマーPVDFも重合した。GPC評価から重量平均分子量200000、分散2.1であった。
【0137】
得られたP(VDF−TrFE)をメチルエチルケトン(関東化学社製)を溶媒とし、乾燥膜厚45±1μmとなるようにガラス板に塗布し、60℃で30分間乾燥し、その後剥離して有機圧電膜を作製した。
【0138】
その後、上記で得た有機圧電膜を酸素プラズマ処理した。装置はプラズマ処理装置09106002(ARIOS社製)を用い、酸素圧力28Pa、出力300Wで5分間処理を行った。この処理により、有機圧電膜の平均厚さを40μmとした。
【0139】
次いで、図5に示すような電極配置になるように各層の電極層を表1記載の電極材料(前記導電性高分子No.1〜3及び金)で形成した後、有機圧電膜の両端部を除く部分に30kgf/cmの圧力が均一に加わるようアクリル製の板で挟みこみ、有機圧電膜の厚さ方向に電圧が印加されるように、有機圧電膜の一方の電極層をグランドに、他方をファンクションジェネレータ(20MHz Function/Arbitary Waveform Generator 33220A;Agilent Technology(株)製)とパワーアンプ(AC/DC AMPLIFIER HVA4321;nF社製)に接続し、0.1HzのSin波印加条件下、20秒おきに100Vずつ昇圧し、最大100MV/mの電場を印加しポーリング処理を施した。その後、有機圧電膜3枚に、エポキシ接着剤DP−460(住友3M社製)を用いて各層間に塗布し、30kgf/cmの圧力で厚さ方向に均一に加圧した後、50℃4時間硬化させた。
【0140】
積層後、ダイシングにより5.1mm×60mmのサイズに切り出し、側面電極を形成し超音波振動子1〜10を作製した。
【0141】
次に定法に従って、各超音波振動子の背面側に電極がパターンニングされたFPC、3mmバッキング層(エポキシ樹脂にシリコンゴムTSE2233U(モーメンティブ社製)とフェライト微粒子を添加し、混練し、硬化させたもの)を順に接着し、超音波射出側に音響インピーダンスが2.5×10kg/m・sである、厚さが150μmであるエポキシ製の音響整合層を接着した。その後、長手方向に0.15mmピッチで30μmの厚みを有するブレードでダイシングを行った。その後パリレン処理にて3μm程度の絶縁層を設け、音響整合層の上にレンズを接着した。その後FPCにコネクタを接続し、ケースに収め超音波探触子1〜10を作製した。
【0142】
なお、超音波振動子7、8では、金電極を形成した有機圧電膜に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの1%(溶媒:メタノールと酢酸ナトリウム水溶液(20℃でpH4)を質量比3:1で混合)混合溶液中に5分浸漬し、乾燥後水洗し、再度乾燥させ、以降は同じプロセスにてエポキシ接着剤DP−460(住友3M社製)で積層接着し、加工を行い、超音波探触子7、8を作製した。
【0143】
(超音波探触子の評価)
作製した超音波探触子に、パルサーレシーバー(PANAMETRICS−NDT MODEL 5900PR、オリンパス社製)とオシロスコープ(TPS5032、Tektronix社製)を接続し、図1に示したような超音波医用画像診断装置の代用装置を作製した。超音波探触子を脱気した水の中に入れ、超音波放射面側に金属製の反射板を配置した。超音波探触子の駆動には、図6に記載のパルスを用い、受信した超音波は、電気信号に変換され、オシロスコープでその電圧波形を確認した。超音波探触子と反射板とのアライメントは、電圧波形のRMSが最大となる座標で決定した。アライメントのあと、超音波の送受信を行い、得られたパルスの最大振幅と、本パルスの絶対値の包絡線から算出した−20dBにおけるパルス長を求め(図7参照)、その結果を表1に示した。
【0144】
なお、音響インピーダンスは、超音波の音速を、JIS Z2353−2003に従い、超音波工業(株)製シングアラウンド式音速測定装置を用いて、25℃下で測定し、下記式に従い導いた。
【0145】
音響インピーダンス(Z:×10kg/m・sec)=密度(ρ:×10kg/m)×音速(C:×10m/sec)
【0146】
【表1】

【0147】
表1に示した結果より、有機導電性高分子材料の音響インピーダンスが有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス同等以下であれば、受信感度は高く、パルス長も短い。したがって、距離分解能、コントラストの向上が得られ、画像診断価値が上がることが分かる。なお、電極層の厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25%より小さい場合は、十分な導電性を得ることができず、評価できなかった。また、5%を超える場合は、共振周波数の低下を招き、解像度が低下し好ましくないことが分かった。
【符号の説明】
【0148】
1 超音波医用画像診断装置本体
2 超音波探触子
3 ケーブル
4 超音波探触子フォルダ
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 信号処理部
15 画像処理部
16 表示部
17 制御部
18 電圧制御手段
19 記憶部
30 振動部
31 音響制動部材
32 圧電部
33 音響整合層
34 音響レンズ
321 第1圧電部
322 第2圧電部
H 被検体
100 超音波振動子
101A,101B 電極層
102 電圧層
103A,103B 側面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電層と電極層が交互に厚さ方向にそれぞれ三層以上積層された超音波振動子であって、当該圧電層は有機非導電性高分子材料により構成されており、当該電極層は有機導電性高分子材料により構成されており、当該有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が前記有機非導電性高分子材料の音響インピーダンス値以下であり、かつ当該電極層の厚さが接触している圧電層の平均厚さの0.25〜5%の範囲内にあることを特徴とする超音波振動子。
【請求項2】
前記有機導電性高分子材料の音響インピーダンス値が、1.5×10〜1.0×10(kg/m・s)の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波振動子を用いたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の超音波振動子を用いた超音波探触子を具備していることを特徴とする超音波医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155573(P2011−155573A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16612(P2010−16612)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】