説明

超音波溶着方法、超音波溶着機および包装機

【課題】ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋などを製造することができる超音波溶着方法などを提供する。
【解決手段】超音波溶着方法では、被溶着物とホーン15aとの間および被溶着物とアンビル15bとの間の少なくとも一方の間に緩衝材Cが挟まれながら被溶着物が超音波溶着される。なお、緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着されてもよいし、被溶着物に脱着可能に付着されてもよいし、繰出機構から繰り出されるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着方法、超音波溶着機および包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「超音波溶着機により包装フィルムを超音波溶着して袋を作製する技術」が提案されている(例えば、特開平10−45114号公報、特開平9−2430号公報および特開平9−323708号公報など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−45114号公報
【特許文献2】特開平9−2430号公報
【特許文献3】特開平9−323708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、技術の進歩やコスト低減などの理由から包装フィルムが薄膜化されている。例えば、最近、60μmの包装フィルムが袋などの製造に利用されている。そして、このように薄い包装フィルムが通常の超音波溶着機により超音波溶着されると、溶着箇所の溶着強度が不均一になる傾向がある。これは、おそらくホーンとアンビルとの端面精度や、ホーンとアンビルとの噛み合わせ精度が低く、包装フィルムに均一な圧力が付与されていないことに起因するものと考えられる。したがって、上記精度を改善すれば、溶着箇所の溶着強度を均一にすることができるものと期待される。
【0005】
しかし、上記精度の改善には、ホーンやアンビルの精密加工や精密位置合わせなどが必要となり、多額のコストが必要となることが想定される。また、そのようにホーンやアンビルの精密加工や精密位置合わせをうまく実現することができたとしても、超音波溶着操作を繰り返す度にその精度が狂ってくることが容易に想定される。そうすると、ホーンやアンビルの精密加工や精密位置合わせが度々必要となり、袋の生産性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
本発明の課題は、ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋などを製造することができる超音波溶着方法および超音波溶着機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る超音波溶着方法は、ホーンおよびアンビルを有する超音波溶着機を用いて被溶着物を超音波溶着する超音波溶着方法である。なお、ここにいう「ホーン」とは振動側の金具であり、「アンビル」とは、その受け金具である。そして、この超音波溶着方法では、被溶着物とホーンとの間および被溶着物とアンビルとの間の少なくとも一方の間に緩衝材が挟まれながらホーンとアンビルとにより被溶着物が超音波溶着される。なお、ここにいう「緩衝材」は、特に限定されないが、例えば、紙や、木製シート、フッ素樹脂シート、シリコーンシート、ポリイミドシートなど、溶着対象物の超音波溶着時に溶着対象物に溶着しないような素材であるのが好ましい。また、確かでないが、この緩衝材は圧力および超音波の両方を緩衝する作用があると想定される。また、ここにいう「被溶着物」とは、例えば、包装フィルムなどである。
【0008】
このように被溶着物とホーンとの間および被溶着物とアンビルとの間の少なくとも一方の間に緩衝材が挟まれると、ホーンとアンビルとの端面精度や、ホーンとアンビルとの噛み合わせ精度が低くても、被溶着物に適度に均一な圧力を付与しながら被溶着物を超音波溶着して袋などを製造することができる。このため、この超音波溶着方法では、ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋などを製造することができる。
第2発明に係る超音波溶着方法は、第1発明に係る超音波溶着方法であって、緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に装着される。
このため、この超音波溶着方法では、緩衝材の使用量を必要最小限にすることができる。
【0009】
第3発明に係る超音波溶着方法は、第2発明に係る超音波溶着方法であって、緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される。
このため、この超音波溶着方法では、緩衝材が繰り返し使用により劣化する場合であっても、緩衝材を容易に交換することができる。
第4発明に係る超音波溶着方法は、第1発明に係る超音波溶着方法であって、緩衝材は、被溶着物に脱着可能に付着されている。
このため、この超音波溶着方法では、常に新たな緩衝材が使用されることになる。したがって、この超音波溶着方法では、緩衝材の劣化を考慮せずに済む。
【0010】
第5発明に係る超音波溶着機は、ホーン、アンビル及び緩衝材を備える。アンビルは、ホーンに対向するように設けられる。緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に装着される。
【0011】
このため、この超音波溶着機では、ホーンとアンビルとの端面精度や、ホーンとアンビルとの噛み合わせ精度が低くても、被溶着物に適度に均一な圧力を付与しながら被溶着物を超音波溶着して袋などを製造することができる。したがって、この超音波溶着機では、ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋などを製造することができる。
また、この超音波溶着機では、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に緩衝材が装着されるため、緩衝材の使用量を必要最小限にすることができる。
第6発明に係る超音波溶着機は、第5発明に係る超音波溶着機であって、緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される。
このため、この超音波溶着機では、緩衝材が繰り返し使用により劣化する場合であっても、緩衝材を容易に交換することができる。
【0012】
第7発明に係る包装機は、フィルム繰出部および超音波溶着機構を備える。フィルム繰出部は、フィルムを繰り出す。超音波溶着機構は、ホーン、アンビル及び緩衝材を有する。アンビルは、ホーンに対向するように設けられる。緩衝材は、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に装着される。そして、この超音波溶着機構は、ホーンとアンビルとによりフィルムを超音波溶着して袋を作製する。
【0013】
このため、この包装機では、ホーンとアンビルとの端面精度や、ホーンとアンビルとの噛み合わせ精度が低くても、被溶着物に適度に均一な圧力を付与しながら被溶着物を超音波溶着して袋を製造することができる。したがって、この包装機では、ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋を製造することができる。
また、この包装機では、ホーンおよびアンビルの少なくとも一方の先端に緩衝材が装着されるため、緩衝材の使用量を必要最小限にすることができる。
【0014】
第8発明に係る包装機は、第7発明に係る包装機であって、溶着機構は、縦溶着機構および横溶着機構を有する。縦溶着機構は、第1ホーン、第1アンビル及び第1緩衝材を有する。第1アンビルは、第1ホーンに対向するように設けられる。第1緩衝材は、第1ホーンおよび第1アンビルの少なくとも一方の先端に装着される。そして、この縦溶着機構は、第1ホーンと第1アンビルとによりフィルムの幅方向の両端部を超音波溶着して筒状フィルムを連続的に作製する。横溶着機構は、第2ホーン、第2アンビル及び第2緩衝材を有する。第2アンビルは、第2ホーンに対向するように設けられる。第2緩衝材は、第2ホーンおよび第2アンビルの少なくとも一方の先端に装着される。そして、この横溶着機構は、第2ホーンと第2アンビルとにより筒状フィルムの軸方向に交差する方向に沿って筒状フィルムを超音波溶着して袋を作製する。
【0015】
このため、この包装機では、縦溶着機構により連続的に筒状フィルムを作製しつつ商品をその筒状フィルムに投入し、横溶着機構により密閉袋を作製すると共に次の商品を受けるための受け底を筒状フィルムに形成することができる。
【0016】
第9発明に係る包装機は、第8発明に係る包装機であって、第1緩衝材は、第1ホーンおよび第1アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される。また、第2緩衝材は、第2ホーンおよび第2アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される。
このため、この超音波溶着機では、緩衝材が繰り返し使用により劣化する場合であっても、緩衝材を容易に交換することができる。
【0017】
第10発明に係る包装機は、フィルム繰出部、超音波溶着機構および緩衝材駆動機構を備える。フィルム繰出部は、フィルムを繰り出す。超音波溶着機構は、ホーン及びアンビルを有する。アンビルは、ホーンに対向するように設けられる。そして、この超音波溶着機構は、ホーンとアンビルとによりフィルムを超音波溶着して袋を作製する。緩衝材駆動機構は、緩衝材および駆動部を有する。緩衝材は、フィルムとホーンとの間およびフィルムとアンビルとの間の少なくとも一方の間に一部が挿入されるように配置される。駆動部は、フィルムとホーンとの間およびフィルムとアンビルとの間の少なくとも一方の間を緩衝材が通過するように緩衝材を駆動させる。なお、緩衝材は、連続駆動されてもよいし、間欠駆動されてもよい。また、緩衝材の駆動速度は超音波溶着時間を加味して決定する必要がある。また、緩衝材は、フィルムとホーンとの間およびフィルムとアンビルとの間に隙間が生じたときに駆動されるのが好ましい。また、緩衝材は、シート状であってもよいし、無端ベルト状であってもよい。
【0018】
この包装機では、この超音波溶着機構がフィルムを超音波溶着して袋を連続的に作製している間であってフィルムとホーンとの間およびフィルムとアンビルとの間に隙間が生じたとき等に、緩衝材駆動機構が緩衝材を駆動させる。このため、この包装機では、一定の期間、常に新たな緩衝材が使用されることになる。したがって、この包装機では、一定の期間、緩衝材の劣化を考慮せずに済む。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る超音波溶着方法、超音波溶着機および包装機では、ホーンやアンビルの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄い溶着フィルムからでも安定した溶着強度を示す袋などを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の主要機構の概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の縦シール機構を構成するホーン及びアンビルの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の縦シール機構のII-II断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の横シール機構の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る製袋包装機の横シール機構を構成するホーン及びアンビルの斜視図である。
【図7】変形例(C)に係る製袋包装機の主要機構の概略斜視図である。
【図8】変形例(E)に係る製袋包装機の主要機構の概略斜視図である。
【図9】本発明の実施例1に係る剥離試験の剥離強度データである。
【図10】本発明の比較例1に係る剥離試験の剥離強度データである。
【図11】本発明の実施例1に係る試験片の部分断面写真である。
【図12】本発明の比較例1に係る試験片の部分断面写真である。
【図13】本発明の実施例1に係る試験片の製造方法を示す図である。
【図14】本発明の実施例1に係る剥離試験機の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る製袋包装機3は、図1に示されるように、主に、フィルム供給ユニット6、製袋包装ユニット5および制御装置(図示せず)から構成されている。以下、これらのユニット5,6について詳述する。
<製袋包装機の構成ユニット>
1.フィルム供給ユニット
【0022】
フィルム供給ユニット6は、製袋包装ユニット5の成形基材13に対して帯状のフィルムFを供給するユニットである。このフィルム供給ユニット6には、フィルムFが巻かれたフィルムロール(図示せず)がセットされている。そして、このフィルムロールからフィルムFが繰り出される。
【0023】
このフィルムFは、フィルムロールを回転させる送出モータ(図示せず)の作動により送り出され、後述する製袋包装ユニット5のプルダウンベルト機構14の作動により製袋包装ユニット5側に引っ張られる。なお、このとき、フィルムFは、複数のローラ(図示せず)に掛け渡され、テンションローラ(図示せず)によって所定の張力がかかった状態で搬送される。なお、送出モータやプルダウンベルト機構14の動作は、制御装置によって制御される。
2.製袋包装ユニット
【0024】
製袋包装ユニット5は、図2に示されるように、主に、成形基材13、プルダウンベルト機構14、縦シール機構15および横シール機構16から構成されている。以下、これらの構成要素13,14,15,16について詳述する。
(1)成形基材
【0025】
成形基材13は、フィルム供給ユニット6から供給されるフィルムFを筒状に成形するためのものであって、主に、チューブ13a及びフォーマ13bから構成されている。
【0026】
チューブ13aは、上端及び下端のいずれもが開口している円筒形状の部材である。そして、このチューブ13aには、図2に示されるように、計量機2(図1参照)で計量された所定量の被包装物P(例えば、ポテトチップス等)が投入される。なお、投入された被包装物Pは、チューブ13a内を通ってチューブ13aの下端から、封止前の袋B内へと排出される。
【0027】
フォーマ13bは、図2に示されるように、フィルムFがチューブ13aにおいて筒状に成形されるようにフィルムFをガイドする形状とされており(図2参照)、チューブ13aの上端近傍にチューブ13aを取り囲むように配置されている。
【0028】
そして、この成形基材13により、フィルムFは、フォーマ13bの上側の表面上を滑りながら、フォーマ13bとチューブ13aとの間へと送り込まれ、筒状に丸められる。その結果、フィルムFは、チューブ13aの前側で端部同士が重なり合う。なお、以下、フィルムFの端部同士の重なり部分F2を「重なり部分」と称する。
なお、チューブ13aやフォーマ13bは、製造する袋Bの大きさに応じて取り替えることができる。
(2)プルダウンベルト機構
【0029】
プルダウンベルト機構14は、筒状となったフィルムF(以下、筒状フィルムFmという。)を吸着して下方に搬送するための機構であって、図2に示されるように、チューブ13aを挟んで左右両側に設けられる。
【0030】
このプルダウンベルト機構14は、図2に示されるように、主に、駆動ローラ14a、従動ローラ14b及び環状ベルト14cから構成されており、チューブ13aを取り巻く筒状フィルムFmを下側へと搬送する。なお、本実施形態において、駆動ローラ14aは上側に配置され、従動ローラ14bは下側に配されている。そして、駆動ローラ14aと従動ローラ14bとに跨って環状ベルト14cが架けられている。
【0031】
そして、このプルダウンベルト機構14では、吸着機能を有する環状ベルト14cを駆動ローラ14aおよび従動ローラ14bによって循環させ、筒状フィルムFmを下方に送る。
(3)縦シール機構
【0032】
縦シール機構15は、筒状フィルムFmの重なり部分F2を超音波溶着するための機構であって、図3及び図4に示されるように、主に、ホーン15a、アンビル15b、超音波発生器(図示せず)及びスライド基板(図示せず)から構成される。
【0033】
ホーン15aは、略柱状の金属成形体であって、基端側に超音波発生器が取り付けられており、超音波発生器により超音波振動する。なお、このホーン15aの先端には、緩衝材として紙Cが両面テープで付されている。
【0034】
アンビル15bは、円柱状の金属成形体であって、側面がホーン15aの先端面に対向するように配置されている。なお、本実施の形態において、このアンビル15bは、スライド基板に回転自在に取り付けられており、スライド基板がスライドすることにより、ホーン15aに接触するまで直進移動することができるようになっている。なお、スライド基板は、エアシリンダや油圧シリンダ等によりスライドされる。また、アンビル15bの回転軸は、円柱軸に一致する。また、このアンビル15bの側面には、緩衝材として紙Cが両面テープで付されている。
【0035】
なお、この縦シール機構15では、ホーン15a付与される超音波の振幅や、ホーン15aに対するアンビル15bの押し付け圧力などが制御装置によって制御される。
(4)横シール機構
【0036】
横シール機構16は、筒状フィルムFmを横方向にシールして袋Bの上下を封止するための機構であって、図2及び図5に示されるように、主に、第1横シール部16A及び第2横シール部16Bから構成されており、チューブ13bの下端よりも下側に配置されている。
【0037】
第1横シール部16Aは図5に示されるように主に軸16c、ホーン51a、超音波発生器(図示せず)及び連結部16bから構成されており、第2横シール部16Bは図5に示されるように主に軸16c、アンビル51b及び連結部16bから構成されている。
軸16cは、柱状の部材であって、図示しない駆動機構によって自転および前後移動が可能となっている。
【0038】
ホーン51aは、図6に示されるように、側面から突起する突起部を有する略柱状の金属成形体であって、突起部の裏側に超音波発生器が取り付けられており、超音波発生器により超音波振動する。なお、このホーン51aの先端には、緩衝材として紙Cが両面テープで付されている。
【0039】
アンビル51bは、図6に示されるように、略柱状の金属成形体であって、ホーン51aの突起部に嵌合する凹部を側面に有する。なお、このアンビル51bの凹部の底面には、緩衝材として紙Cが両面テープで付されている。
【0040】
そして、ホーン51a及びアンビル51bは、図5及び図6に示されるように、前後に並んで配置されており、図5中の符号r2で示される位置において、縦シール機構15を通過した筒状フィルムFmを前側と後側とから挟み込んで筒状フィルムFmを横方向に超音波溶着する。本実施の形態では、このようにして被包装物Pが詰め込まれた袋Bの上側が封止される。なお、ここで、横方向とは、左側または右側へと向かう方向である。
【0041】
連結部16bは、第1横シール部16Aにおいてホーン51aと軸16cとを連結しており、第2横シール部16Bにおいてアンビル51bと軸16cとを連結している。
【0042】
そして、この横シール機構16では、ホーン51a及びアンビル51bは所定の位置r1から互いに反対側へと円弧軌道T2を描きながら所定の位置r2まで移動する。なお、所定の位置r2は、チューブ13aの下端よりも下側にある。その後、ホーン51a及びアンビル51bは、筒状フィルムFmを超音波溶着しながら、直線軌道T1に沿って所定の位置r1まで移動する。このとき、横方向にシールされた筒状フィルムFmが下側に移動させられる。そして、ホーン51a及びアンビル51bは、所定の位置r1を通過すると、互いに離間して筒状フィルムFmを開放する。その後、溶着箇所は、アンビル51bに取り付けられたカッターにより、縦方向中央付近で切断される。この横シール機構16の一連の動作により、袋Bが作製される。
【0043】
なお、直線軌道T1は、横シール部16A,16Bに属する軸16cがそれぞれ自転しながら互いに反対側へ移動することで形成される。また、円弧軌道T2は、軸16cの自転のみで形成される。
3.制御装置
【0044】
制御装置は、計量機2の制御および製袋包装機3の制御を行うものであって、CPU、ROM、RAMなどから構成されている。この制御装置は、操作スイッチ類7やタッチパネル式ディスプレイ8(図1参照)から入力される入力値に従って、フィルム供給ユニット6の送出モータや製袋包装ユニット5の各機構の駆動部分などを制御する。また、制御装置は、計量機2および製袋包装機3に設置されている各種センサから必要な情報を取り込み、その情報を各種制御において利用する。
<実施例>
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
図13に示されるように、ホーン151aとフィルムF11との間、アンビル151bとフィルムF12との間に紙Cを挟んだ状態で、ホーン151aとアンビル151bとによりフィルムF11とフィルムF12とを超音波溶着させて試験片を作製した。なお、本実施例では、図13に示されるように、アンビル151bが5本歯を有する形状をしている。このため、フィルムF11とフィルムF12とは、長手方向に5箇所で超音波溶着されることになる。また、本実施例においてフィルムF11,F12の厚みはそれぞれ60μmであり、紙Cの厚みは100〜120μmであった。
そして、図14に示されるように、この試験片を引張試験機20にセットして試験片の剥離強度(溶着強度)を測定した。
【0046】
なお、引張試験機20は、図14に示されるように、主に、クロスヘッド24、ロードセル23、カップラー22、上側チャック21b及び下側チャック21aから構成されている。本実施例では、下側チャック21aに試験片の下側のフィルムF12を把持させ、上側チャック21bに試験片の上側のフィルムF11を把持させた後、クロスヘッド24を一定速度で上昇させ、その間に試験片にかかる荷重をロードセル23で計測した。なお、図14中の符号MPはフィルムF11,F12の溶着箇所を示している。
【0047】
なお、本実施例では、3つの試験片それぞれについて剥離試験(<試験条件>試験片の幅:15mm,剥離速度(クロスヘッドの上昇スピード:300mm/min,最大剥離強度50N)を行った。その結果を図9に示す。図9に示されるように、3つの試験片の剥離強度は、非常に均一なものとなっている。また、試験片の部分断面写真を図11に示す。図11から明らかなように、本実施例の試験片の溶着箇所は、非常に滑らかな形状となっている。
(比較例1)
紙Cを差し込まなかったこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製して剥離試験を行った。
【0048】
なお、本比較例では、4つの試験片それぞれについて剥離試験を行った。その結果を図10に示す。実施例1の剥離試験結果と比較すると、4つの試験片の剥離強度にはかなりバラツキがあった。また、試験片の部分断面写真を図12に示す。図12から明らかなように、本比較例の試験片の溶着箇所は、実施例1の試験片の溶着箇所に比べて、非常に薄くなっている。これは、比較例の試験片作製に当たり、圧力が特定の溶着箇所に集中していたことを示すものである。
<製袋包装機の特徴>
(1)
【0049】
本発明の実施の形態に係る製袋包装機3では、縦シール機構15および横シール機構16においてホーン15a,51a及びアンビル15b,51bに緩衝材として紙Cが付され、フィルムF及び筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着される。このため、この製袋包装機3では、ホーン15a,51aとアンビル15b,51bとの端面精度や、ホーン15a,51aとアンビル15b,51bとの噛み合わせ精度が低くても、フィルムF及び筒状フィルムFmに適度に均一な圧力を付与しながらフィルムF及び筒状フィルムFmを超音波溶着して袋Bを製造することができる。したがって、この製袋包装機3では、ホーン15a,51aやアンビル15b,51bの精密加工や精密な位置合わせを必要とすることなく、薄いフィルムF,Fmからでも安定した剥離強度(溶着強度)を示す袋Bを製造することができる。
(2)
【0050】
本発明の実施の形態に係る製袋包装機3では、縦シール機構15および横シール機構16において両面テープでホーン15a,51a及びアンビル15b,51bに紙Cが付されている。このため、この製袋包装機3では、繰り返し使用により紙Cが劣化したとしても紙Cを容易に交換することができる。
<変形例>
(A)
【0051】
先の実施の形態に係る製袋包装機3では縦シール機構15のホーン15a及びアンビル15bとして図3に示されるような形状のホーン及びアンビルが採用され、横シール機構16のホーン51a及びアンビル51bとして図6に示されるような形状のホーン及びアンビルが採用されたが、ホーン及びアンビルの形状は特に限定されることなく、作製する袋Bの形状に応じて適宜変更してもかまわない。
(B)
【0052】
先の実施の形態では緩衝材として紙Cが採用されたが、緩衝材として木製シート、フッ素樹脂シート、シリコーンシート、ポリイミドシートなどが採用されてもかまわない。なお、緩衝材は超音波溶着時においてフィルムFや筒状フィルムFmに溶着しないような素材であるのが好ましい。
(C)
【0053】
先の実施の形態に係る製袋包装機3では縦シール機構15および横シール機構16においてホーン15a,51a及びアンビル15b,51bに緩衝材として紙Cが付され、フィルムF及び筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着されたが、図7に示されるように、紙CがフィルムFの下側に繰り出されることによって、フィルムF及び筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着されるようにしてもかまわない。なお、かかる場合、紙ロールをセットした紙供給ユニットをフィルム供給ユニット6の下方に配置するのが簡便である。
(D)
【0054】
先の実施の形態に係る製袋包装機3では縦シール機構15および横シール機構16においてホーン15a,51a及びアンビル15b,51bに緩衝材として紙Cが付され、フィルムF及び筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着されたが、フィルムFに予め脱着可能に紙Cを付してロール状にしておき、それを製袋包装ユニット5に送るようにしてもかまわない。なお、かかる場合、紙Cが下になりフィルムFが上になるようにして製袋包装ユニット5に紙C及びフィルムFを供給する必要がある。
(E)
【0055】
先の実施の形態に係る製袋包装機3では横シール機構16においてホーン51a及びアンビル51bに緩衝材として紙Cが付され、筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着されたが、図8に示されるように、緩衝材繰出機構17を設け、ホーン51aと筒状フィルムFmとの間、アンビル51bと筒状フィルムFmとの間に紙Cを繰り出すようにしてもかまわない。なお、本変形例において、緩衝材繰出機構17は主に緩衝材ロール17a及び引出ロール17bから構成されており、引出ロール17bには、図示しない駆動モータが取り付けられている。そして、駆動モータは、紙が劣化するタイミングで(制御装置で信号送信時間間隔を設定しておく)引出ロール17bを駆動させて、緩衝材ロール17aから紙Cを引き出す。なお、かかる場合、カッターは、紙Cを切断しないように、横シール機構16の下流側に設けられることになる。
【0056】
また、縦シール機構15においても、上記と同様にして、ホーン15aとフィルムFとの間、アンビル15bとフィルムFとの間に紙Cを繰り出すようにしてもかまわない。
(F)
【0057】
先の実施の形態では紙Cが両面テープによりホーン15a,51aやアンビル15b,51bに付されたが、紙Cはクリップ等の別の手段でホーン15a,51aやアンビル15b,51bに装着されてもかまわない。
(G)
【0058】
先の実施の形態に係る製袋包装機3では縦シール機構15および横シール機構16においてホーン15a,51a及びアンビル15b,51bに緩衝材として紙Cが付され、フィルムF及び筒状フィルムFmが紙Cを介して超音波溶着されたが、ホーン15a,51a及びアンビル15b,51bのいずれか一方に紙Cが付されてもかまわない。
【符号の説明】
【0059】
2 計量機
3 製袋包装機(包装機)
5 製袋包装ユニット
6 フィルム供給ユニット(フィルム繰出部)
7 操作スイッチ類
8 タッチパネル式ディスプレイ
13 成形基材
13a チューブ
13b フォーマ
14 プルダウンベルト機構
14a 駆動ローラ
14b 従動ローラ
14c 環状ベルト
15 縦シール機構(縦溶着機構)
15a ホーン
15b アンビル
16 横シール機構(横溶着機構)
16A 第1横シール部
16B 第2横シール部
16b 連結部
16c 軸
17 緩衝材繰出機構
17a 緩衝材ロール
17b 引出ロール
51a ホーン
51b アンビル
B 袋
C 紙(緩衝材)
F フィルム(被溶着物)
F2 重なり部分
Fm 筒状フィルム
P 被包装物
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る超音波溶着方法は、ホーンとアンビルとの端面精度や、ホーンとアンビルとの噛み合わせ精度が低くても、被溶着物に適度に均一な圧力を付与しながら被溶着物を超音波溶着して袋などを製造することができるという特徴を有しており、特に従来よりも極めて薄い被溶着物の溶着について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーンおよびアンビルを有する超音波溶着機を用いて被溶着物を超音波溶着する超音波溶着方法であって、前記被溶着物と前記ホーンとの間および前記被溶着物と前記アンビルとの間の少なくとも一方に緩衝材を挟みながら前記ホーンと前記アンビルとにより前記被溶着物を超音波溶着する超音波溶着方法。
【請求項2】
前記緩衝材は、前記ホーンおよび前記アンビルの少なくとも一方の先端に装着される
請求項1に記載の超音波溶着方法。
【請求項3】
前記緩衝材は、前記ホーンおよび前記アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される
請求項2に記載の超音波溶着方法。
【請求項4】
前記緩衝材は、前記被溶着物に脱着可能に付着されている
請求項1に記載の超音波溶着方法。
【請求項5】
ホーンと、
前記ホーンに対向するように設けられるアンビルと、
前記ホーンおよび前記アンビルの少なくとも一方の先端に装着される緩衝材と
を備える超音波溶着機。
【請求項6】
前記緩衝材は、前記ホーンおよび前記アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される
請求項5に記載の超音波溶着機。
【請求項7】
フィルムを繰り出すフィルム繰出部と、
ホーンと、前記ホーンに対向するように設けられるアンビルと、前記ホーンおよび前記アンビルの少なくとも一方の先端に装着される緩衝材とを有し、前記ホーンと前記アンビルとにより前記フィルムを超音波溶着して袋を作製する超音波溶着機構と
を備える包装機。
【請求項8】
前記超音波溶着機構は、
第1ホーンと、前記第1ホーンに対向するように設けられる第1アンビルと、前記第1ホーンおよび前記第1アンビルの少なくとも一方の先端に装着される第1緩衝材とを有し、前記第1ホーンと前記第1アンビルとにより前記フィルムの幅方向の両端部を超音波溶着して筒状フィルムを連続的に作製する縦溶着機構と、
第2ホーンと、前記第2ホーンに対向するように設けられる第2アンビルと、前記第2ホーンおよび前記第2アンビルの少なくとも一方の先端に装着される第2緩衝材とを有し、前記第2ホーンと前記第2アンビルとにより前記筒状フィルムの軸方向に交差する方向に沿って前記筒状フィルムを超音波溶着して袋を作製する横溶着機構と
を有する
請求項7に記載の包装機。
【請求項9】
前記第1緩衝材は、前記第1ホーンおよび前記第1アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着され、
前記第2緩衝材は、前記第2ホーンおよび前記第2アンビルの少なくとも一方の先端に着脱可能に装着される
請求項8に記載の包装機。
【請求項10】
フィルムを繰り出すフィルム繰出部と、
ホーンと、前記ホーンに対向するように設けられるアンビルとを有し、前記ホーンと前記アンビルとにより前記フィルムを超音波溶着して袋を作製する超音波溶着機構と、
前記フィルムと前記ホーンとの間および前記フィルムと前記アンビルとの間の少なくとも一方の間に一部が挿入されるように配置される緩衝材と、前記フィルムと前記ホーンとの間および前記フィルムと前記アンビルとの間の少なくとも一方の間を前記緩衝材が通過するように前記緩衝材を駆動させる駆動部とを有する緩衝材駆動機構と
を備える包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−63002(P2011−63002A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218081(P2009−218081)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】