説明

超音波送受波器

【課題】従来の実施の形態に関わる超音波送受波器においてはバックセンサやコーナーセンサ等に用いる際1次振動モードの周波数を変更したり外径を変更する等した複数種のセンサを用いなければならなかった。
【解決手段】超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面に1本の連続した溝を設け、またはその周りに複数の溝を2重以上になるように設け、あるいは薄肉部を設けてそれらの全体ないしは一部を覆うように圧電素子を貼り合わせる。さらには内部をくりぬいた圧電素子を有底筒状ケースに貼り合わせ、そのくりぬき部にもう一枚の圧電素子を貼り合わせる。これらにより1次振動モードに相当する共振モードを複数発生させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の実施の形態に関わる超音波送受波器において、超音波送受波器を車のバンパー等に埋め込み設置し、車周辺の障害物を検出しようとした場合、超音波送受波器にパルスバースト電気信号を入力することにより、超音波送受波器からその入力パルスバースト電気信号に応じた超音波信号が発振され、発振された超音波信号は障害物に到達し、障害物に当たった超音波信号はその障害物で反射され、その反射された超音波信号の一部が同じ超音波送受波器に戻ってくる。超音波送受波器はその反射信号を受信することによって障害物を検出している。この際、超音波送受波器の1次振動モードを使用して超音波の送受信を行っていた。このためコーナーセンサとして比較的近距離の検知を行う用途においては40〜50kHz付近に1次振動モードを持つφ14mmなどの小型のものを使用するが、これをバックセンサなどの長距離検知の目的で使用する場合には指向性が広く路面検知による誤検知が発生する。そのためバックセンサ等の長距離検知用途の超音波送受波器としては1次振動モードの周波数を変更したり外径を大きくしたものを用いていた。逆にこれをコーナセンサなどの近距離図検知の用途に使用する際には指向性が狭すぎて検知範囲が十分にとれないという問題が発生するため従来の実施の形態に関わる超音波送受波器においては、1次振動モードの周波数を変更したり外径を変更する等した複数種のセンサを用いなければならなかった。
図4に従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を示す。図4において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を形成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード5a及び、有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。入出力リード5a及び5bはコネクタ付きワイヤーリード6にそれぞれはんだ付けする。圧電素子1の上面にシリコン発泡体等から成る吸音材3を載置して、更に、その上からシリコン材、ウレタン材等の弾性体から成る封止剤4を有底筒状ケース2内に充填し構成する。
【非特許文献1】谷腰欣司著 「超音波とその使い方−超音波送受波器・超音波モータ」 日刊工業新聞 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コーナーセンサ、バックセンサ等に2種類の超音波送受波器を用いることなく1種類のセンサでどちらにも使用可能な超音波送受波器を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を形成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面に1本の連続した溝を設け、その溝部分を覆うように圧電素子を貼り合わせる。または有底筒状ケースの圧電素子接着面に複数の溝を2重以上になるように設け、その溝部分の全体ないしは一部を覆うように圧電素子を貼り合わせる。あるいは有底筒状ケースの圧電素子接着面に薄肉部を設け、その薄肉溝部を覆うように圧電素子を貼り合わせる。さらには内部をくりぬいた圧電素子を有底筒状ケースに貼り合わせ、そのくりぬき部に、くりぬき部よりも小さく且つくりぬき部に接触しないような形状の圧電素子を挿入し、有底筒状ケースに貼り合わせる。これらにより1次振動モードに相当する共振モードを複数発生させ、それぞれの共振周波数で超音波送受波器を駆動させることが可能になる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって複数の1次振動モードに相当する共振モードをもつ超音波送受波器によりコーナーセンサ、バックセンサなどに2種類の超音波送受波器を用いることなく1種類のセンサでどちらにも使用可能な超音波送受波器が供給可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
バックセンサやコーナーセンサ等に用いる際、1種類の超音波送受波器を車のバンパー等に埋め込み設置し、使用目的に応じた共振周波数で駆動させ障害物を検知する。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の請求項1の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図を表す。図1において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に1本の連続した溝7aを設け、その溝部分を覆うように圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を形成する。
図2は本発明の請求項2の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図である。図2において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に設ける溝7を2重以上になるように複数設ける。ここでは溝7a、7bとする。その溝7aを覆うように圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を形成する。
これらにおいて有低筒状ケース2に設ける溝7aの外周部寸法は図1に示すように圧電素子外周寸法より小さくするのが望ましい。
図5a及び図5bは本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図を表す。有低筒状ケース2に設ける溝7aおよび7bは図5aに示すようにリング状としてもよいし、途中で分断されたものであっても同様の効果を有するものであり本件の発明に含まれる。また図5bに示すように有底筒状ケースに設ける溝を単一の部品や材質のみで形成せず、有底筒状ケースに薄肉部を設け、その上に別の板8を接着するなどして複数の部品で形成してもよい。
図3は本発明の請求項4の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図および縦断面図を表す。図3において中央をくりぬいた圧電素子9を有底筒状ケースに貼り合わせ、圧電素子のくりぬき部にもう一枚の圧電素子10を有底筒状ケースに貼り合わせユニモルフ振動子を形成する。また有底筒状ケースに設けられた溝7aがない場合でも同様の効果を有する。
図6aは本発明の請求項1及び請求項2の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図6aにおいて、有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を形成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード5a及び、有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。入出力リード5a及び5bはコネクタ付きワイヤーリード6にそれぞれはんだ付けする。圧電素子1の上面にシリコン発泡体等から成る吸音材3を載置して、更に、その上からシリコン材、ウレタン材等の弾性体から成る封止剤4を有底筒状ケース2内に充填し構成する。図6bは本発明の請求項4の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図6bにおいて、有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子9及び圧電素子10を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を形成する。圧電素子9の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード5a、圧電素子10の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード5c又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付け等して取り出す。圧電素子9および10の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に圧電素子9と入出力リード5a、圧電素子10と入出力リード5c及び有底筒状ケース2と入出力リード5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面にシリコン発泡体等から成る吸音材3を載置して、更に、その上からシリコン材、ウレタン材等の弾性体から成る封止剤4を有底筒状ケース2内に充填し構成する。入出力リード5aと5bを用いて圧電素子9を、入出力リード5cと5bを用いて圧電素子10をそれぞれ駆動させる。
図7は本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器および従来の実施の形態に関わる超音波送受波器のインピーダンス特性を表す。図7に示すように従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の場合、1次振動モードは単一であるが本発明の超音波送受波器の場合複数の1次振動モードに相当する共振周波数が観察され、その周波数で超音波送受波器を駆動させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0008】
本発明は、車のバックセンサのみならず、防滴型超音波送受波器が利用されている様々な分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の請求項1の実施の形態に関わる超音波送受波器の有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図
【図2】本発明の請求項2の実施の形態に関わる超音波送受波器の有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図
【図3】本発明の請求項4の実施の形態に関わる超音波送受波器の有底筒状ケースの概略上面図及び縦断面図
【図4】従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図5】a本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図 b本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器における有低筒状ケースの概略上面図及び縦断面図
【図6】a本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図 b本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図7】本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器および従来の実施の形態に関わる超音波送受波器のインピーダンス特性
【符号の説明】
【0010】
1 圧電素子
2 有底筒状ケース
3 吸音材
4 封止剤
5a 入出力リード
5b 入出力リード
6 コネクタ付きワイヤーリード
7a 有低筒状ケースの底面内部に設けた溝
7b 有低筒状ケースの底面内部に設けた溝
8 有底筒状ケースの薄肉部に固定する板
9 中央をくりぬいた圧電素子
10 圧電素子9のくりぬき部に接着されたもう一枚の圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を形成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器において、有底筒状ケースの圧電素子接着面に1本の連続した溝を設け、その溝部分を覆うように圧電素子を貼り合わせたことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項2】
有底筒状ケースの圧電素子接着面に複数の溝を2重以上になるように設け、その溝部分の全体ないしは一部を覆うように圧電素子を貼り合わせたことを特徴とする請求項1に記載の超音波送受波器。
【請求項3】
有底筒状ケースの圧電素子接着面に設ける凹部が、溝ではなく薄肉部であることを特徴とする請求項1に記載の超音波送受波器。
【請求項4】
内部をくりぬいた圧電素子を有底筒状ケースに貼り合わせ、そのくりぬき部に、くりぬき部よりも小さく且つくりぬき部に接触しないような形状の圧電素子を挿入し、有底筒状ケースに貼り合わせたことを特徴とする請求項1に記載の超音波送受波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−55458(P2009−55458A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221522(P2007−221522)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】