説明

車両における懸架装置

【課題】車両の走行時に、車輪側から車体に与えられようとする振動が効果的に緩和されるようにすると共に、異音が生じないようにする。
【解決手段】車両における懸架装置は、車体2の一部2aの下方域で上、下揺動A,B可能となるよう車体2に枢支されると共に車輪3を支持するサスペンションアーム8と、サスペンションアーム8の上面の一部分20が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面23とされる突出部21と、車体2の一部2aと座面23との間に介設されて上下方向にコイル中心線27が延びるコイルスプリング28と、座面23とコイルスプリング28の下端部との間に介設される弾性シート29とを備える。弾性シート29の一部をサスペンションアーム8の揺動中心線33側に向けて延出し、延出部34を突出部21に隣接するサスペンションアーム8の上面の他部分35に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を支持して車体に枢支されるサスペンションアームと車体との間にコイルスプリングを介設すると共に、上記サスペンションアームとコイルスプリングとの間に弾性シートを介設した車両における懸架装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両における懸架装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両における懸架装置は、車体の一部の下方域で一端部側が上、下揺動可能となるよう他端部がこの車体に枢支されると共に車輪を支持するサスペンションアームと、このサスペンションアームの上面の一部分が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面とされる突出部と、上記車体の一部と上記座面との間に介設されて上下方向にコイル中心線が延びるコイルスプリングと、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に介設される弾性シートとを備えている。そして、上記コイルスプリングは上記サスペンションアーム上で車体からの負荷を支持する。また、通常、上記車体とサスペンションアームとには緩衝器が架設される。
【0003】
上記の場合、一般に、サスペンションアームの上面には小さい凹凸部があったり傾斜部があったりする。このため、上記サスペンションアームの上面をその形状にしたままで、このサスペンションアームの上面に上記コイルスプリングの下端部を安定して支持させることは容易でない。そこで、上記したようにサスペンションアームの上面の一部分が上方に向けて突出させられ、その突出部に上記コイルスプリングの下端部を支持する上記座面が形成される。
【0004】
車両の走行時に、走行路面から上記車輪を介し車体に衝撃力が与えられようとする場合には、上記緩衝器が上記衝撃力を受けて伸縮動作を繰り返すことにより、この緩衝器が減衰力を生じる。また、これと共に上記コイルスプリングが上記衝撃力を受けてその長手方向で弾性的に伸縮動作を繰り返し、かつ、上記車輪とサスペンションアームとが上、下揺動を繰り返す。そして、これらの作用により上記車輪側から車体に与えられようとする衝撃力が緩和される。
【0005】
また、車両の走行時に、車輪側から車体に振動が与えられようとする場合には、主に、上記弾性シートが上記振動により弾性変形を繰り返す。そして、この弾性シートの作用により、上記車輪側から車体に与えられようとする振動も緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57−65107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の走行時に、車輪側から車体に向かう衝撃力により上記車輪とサスペンションアームとが大きく上方揺動(以下、これを「バウンド」という)する場合、一般に、コイルスプリングの周方向の各部分のうち、上記サスペンションアームの揺動中心線に近い側の部分よりも、この揺動中心線から遠い側の部分の方がその長手方向でより大きく圧縮される。このため、車体の側面視で、上記コイルスプリングは、そのコイル中心線が上記揺動中心線側に向かって凸の円弧形状となるよう弾性的に湾曲しがちとなり、かつ、このコイルスプリングの弾性的な反発力が大きくなる。
【0008】
よって、上記「バウンド」時には、上記コイルスプリングは全体として上記揺動中心線側に移動しがちとなる。すると、このコイルスプリングの下端部により、上記弾性シートが上記座面の所定位置から上記揺動中心線側に向かうよう押動されて、上記弾性シートにおける上記揺動中心線側の部分が上記座面から上記揺動中心線側に向かってずれ落ちる傾向となる。そして、この場合には、前記した車輪側から車体に与えられようとする振動を緩和するという弾性シートの作用が阻害されることとなって、好ましくない。
【0009】
また、上記したように、コイル中心線が上記揺動中心線側に向かって凸の円弧形状となるよう上記コイルスプリングが弾性的に湾曲すると共に、上記弾性シートにおける上記揺動中心線側の部分が上記座面からずれ落ちる場合には、上記コイルスプリングの下端部の周方向の各部分のうち、上記揺動中心線から遠い側の部分と、この部分に対応する上記弾性シートの部分とは共に上記座面から浮き上がりがちとなる。このため、その後に、上記車輪とサスペンションアームとが下方揺動(以下、これを「リバウンド」という)して、上記コイルスプリングの下端部と弾性シートとが上記座面に対し原位置に戻る際には、これら弾性シートと座面との間で互いの打音に基づく異音が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車輪を支持して車体に枢支されるサスペンションアームと車体との間にコイルスプリングを介設すると共に、上記サスペンションアームとコイルスプリングとの間に弾性シートを介設した車両における懸架装置において、車両の走行時に、車輪側から車体に与えられようとする振動が上記弾性シートによって効果的に緩和されるようにすると共に、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に異音が生じないようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、車体2の一部2aの下方域で上、下揺動A,B可能となるようこの車体2に枢支されると共に車輪3を支持するサスペンションアーム8と、このサスペンションアーム8の上面の一部分20が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面23とされる突出部21と、上記車体2の一部2aと上記座面23との間に介設されて上下方向にコイル中心線27が延びるコイルスプリング28と、上記座面23とコイルスプリング28の下端部との間に介設される弾性シート29とを備えた車両における懸架装置において、
上記弾性シート29の一部を上記サスペンションアーム8の揺動中心線33側に向けて延出し、この延出部34を上記突出部21に隣接する上記サスペンションアーム8の上面の他部分35に当接させたことを特徴とする車両における懸架装置である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、車体の一部の下方域で上、下揺動可能となるようこの車体に枢支されると共に車輪を支持するサスペンションアームと、このサスペンションアームの上面の一部分が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面とされる突出部と、上記車体の一部と上記座面との間に介設されて上下方向にコイル中心線が延びるコイルスプリングと、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に介設される弾性シートとを備えた車両における懸架装置において、
上記弾性シートの一部を上記サスペンションアームの揺動中心線側に向けて延出し、この延出部を上記突出部に隣接する上記サスペンションアームの上面の他部分に当接させている。
【0015】
このため、車両の走行時、車輪側から車体に向かう衝撃力により上記コイルスプリングが弾性的に伸縮動作し、この際、このコイルスプリングの下端部に押動されて上記弾性シートが上記座面から上記揺動中心線側に向かってずれ落ちようとしても、上記弾性シートから延出して上記サスペンションアームの上面の他部分に当接する延出部により、上記座面からの弾性シートのずれ落ちは防止される。
【0016】
よって、車両の走行時に、上記コイルスプリングが弾性的に伸縮動作するとしても、上記弾性シートは上記座面の所定位置に保持されることから、第1に、車両の走行時に、車輪側から車体に与えられようとする振動は上記弾性シートによって効果的に緩和されると共に、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に異音が生じることは防止される。
【0017】
また、第2に、上記したように弾性シートが座面の所定位置に保持される分、上記座面に対しての上記弾性シートの摺動量は小さく抑制される。このため、この弾性シートが上記座面への摺動により無用に消耗させられることは防止され、これは、上記弾性シートの寿命上有益である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】懸架装置の側面簡略部分断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】懸架装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両における懸架装置に関し、車輪を支持して車体に枢支されるサスペンションアームと車体との間にコイルスプリングを介設すると共に、上記サスペンションアームとコイルスプリングとの間に弾性シートを介設した車両における懸架装置において、車両の走行時に、車輪側から車体に与えられようとする振動が上記弾性シートによって効果的に緩和されるようにすると共に、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に異音が生じないようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車両における懸架装置は、車体の一部の下方域で上、下揺動可能となるようこの車体に枢支されると共に車輪を支持するサスペンションアームと、このサスペンションアームの上面の一部分が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面とされる突出部と、上記車体の一部と上記座面との間に介設されて上下方向にコイル中心線が延びるコイルスプリングと、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に介設される弾性シートとを備える。上記弾性シートの一部を上記サスペンションアームの揺動中心線側に向けて延出し、この延出部を上記突出部に隣接する上記サスペンションアームの上面の他部分に当接させている。
【実施例】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0022】
図において、符号1は自動車で例示される車両である。また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0023】
上記車両1は、車体2と、この車体2の後部に左右の後車輪3を懸架する後懸架装置4を備えている。また、この懸架装置4は、車体2の左右各一部2aの下方域で、ほぼ水平な前後方向に延びる左右一対のサスペンションアーム8,8と、車体2の幅方向に延び、これらサスペンションアーム8,8を互いに連結させる連結メンバ9とを備えている。
【0024】
上記各サスペンションアーム8は、それぞれその一端部側である後端部側が上記車体2の各一部2aの下方域で、上、下揺動A,B可能となるよう他端部である前端部が枢支軸10により上記車体2に枢支されている。つまり、上記各サスペンションアーム8は、トレーリングアーム式とされている。そして、上記各サスペンションアーム8の後端部(揺動端部)にそれぞれ上記車輪3支持用の車軸11が支持されている。
【0025】
上記車体2と各サスペンションアーム8の揺動端部(後端部)には、それぞれ上、下枢支軸14,15により油圧シリンダ式の緩衝器16が架設されている。
【0026】
上記各サスペンションアーム8は板金製で、全体として閉断面構造(箱形状)とされている。これら各サスペンションアーム8の揺動端部における上面板19が上方に向かい膨出させられて、このサスペンションアーム8の上面の一部分20が上方に突出させられ、これにより、この一部分20に円錐台形状の突出部21が形成されている。この突出部21の軸心22上で、この突出部21の突出面には車体2の平面視で円環形状の座面23が形成されている。また、上記突出部21の軸心22上で、上記座面23で囲まれた部分が上方に膨出されて円錐台形状の嵌合凸部24が形成されている。一方、上記座面23の上方における上記車体2の一部2aの下面には、他の座面25が形成されている。
【0027】
上記突出部21の軸心22上で、上記車体2の一部2aの座面25と上記座面23との間に、上下方向にコイル中心線27が延びる金属製のコイルスプリング28が介設されている。このコイルスプリング28は前記緩衝器16とは別体に設けられている。このコイルスプリング28のコイル中心線27は、このコイルスプリング28の自由状態で直線的に延びることとされている。
【0028】
また、上記座面23とコイルスプリング28の下端部との間に車体2の平面視で円環形状でゴム製の弾性シート29が介設され、この弾性シート29は上記嵌合凸部24に密嵌状に外嵌している。上記弾性シート29の上面には、上記コイルスプリング28の下端部を構成する円環形状のスプリング材30を嵌入させる嵌入溝31が上記軸心22上に形成されている。
【0029】
上記嵌入溝31には、上記スプリング材30の巻き始め端30aからこのスプリング材30のほぼ0.6巻分が嵌入されて、このスプリング材30のほぼ0.6巻分が上記弾性シート29を介し上記突出部21の座面23に支持されている。また、上記スプリング材30の巻き始め端30aは、上記枢支軸10に、より近い位置(スプリング材30の前端部)に配置されている。
【0030】
上記弾性シート29の一部が上記サスペンションアーム8の揺動中心線33側(前方)に向けて延出し、この延出部34は上記突出部21の上記揺動中心線33側の側面(外周面)と、上記突出部21に隣接する上記サスペンションアーム8の上面の他部分35とに当接させられている。具体的には、上記揺動中心線33は上記枢支軸10の軸心に相当して車体2の幅方向に延び、上記延出部34は、車体2の平面視で、上記弾性シート29から上記揺動中心線33にほぼ直交する方向に延出している。
【0031】
また、上記突出部21の上記揺動中心線33側(前方)近傍における上記サスペンションアーム8の上面の更に他部分には、上方に向かって突出する他の突出部38が上記上面板19の上方への膨出により形成されている。上記他の突出部38は、車体2に対しサスペンションアーム8を組み付けるときの治具の取付用として用いられるものである。そして、上記突出部21から上記揺動中心線33側に向かう方向と、上記コイルスプリング28のコイル中心線27の周方向とで、上記他の突出部38に対し、上記延出部34の延出端縁が当接させられている。なお、図2中二点鎖線で示すように、上記他の突出部38に加え、もしくは、この他の突出部38に代えて、更に他の突出部39に上記延出部34を当接させてもよい。
【0032】
図1において、上下方向における上記サスペンションアーム8の位置は、車両1の通常走行時の状態を示している。この場合、車体2の側面視(図1)で、上記コイルスプリング28は、そのコイル中心線27が上記サスペンションアーム8の揺動中心線33から離れる方向(後方)に向かって凸の円弧形状となるよう弾性的に湾曲することとされている。そして、この姿勢で、上記コイルスプリング28は上記サスペンションアーム8上で車体2からの負荷を支持している。
【0033】
車両1の走行時に、走行路面から上記車輪3を介し車体2に衝撃力が与えられようとする場合には、上記緩衝器16が上記衝撃力を受けて伸縮動作を繰り返すことにより、この緩衝器16が減衰力を生じる。また、これと共に上記コイルスプリング28が上記衝撃力を受けてその長手方向で弾性的に伸縮動作を繰り返し、かつ、上記車輪3とサスペンションアーム8とが上、下揺動を繰り返す。そして、これらの作用により上記車輪3側から車体2に与えられようとする衝撃力が緩和される。
【0034】
また、車両1の走行時に、車輪3側から車体2に振動が与えられようとする場合には、上記サスペンションアーム8とコイルスプリング28の下端部との間に挟み付けられている上記弾性シート29が、主に、上記振動により弾性変形を繰り返す。そして、この弾性シート29の作用により、上記車輪3側から車体2に与えられようとする振動も緩和される。
【0035】
また、上記したように、コイルスプリング28が衝撃力を受けてその長手方向で弾性的に伸縮動作を繰り返す場合、この衝撃力は、上記サスペンションアーム8から上記弾性シート29を介し、主に上記コイルスプリング28の下端部を構成するスプリング材30の巻き始め端30aを通しこのコイルスプリング28に与えられる。
【0036】
ここで、前記したように、スプリング材30の巻き始め端30aは、上記枢支軸10(揺動中心線33)に、より近い側に配置されていて、この枢支軸10の軸方向で、上記スプリング材30のほぼ中央に配置されている。
【0037】
このため、上記コイルスプリング28に与えられる衝撃力は、上記巻き始め端30aを通し上記枢支軸10の軸方向で上記コイルスプリング28のほぼ中央に与えられることから、上記衝撃力が上記枢支軸10の軸方向に向かう分力として上記コイルスプリング28に与えられる、ということが防止される。よって、上記コイルスプリング28が上記枢支軸10の軸方向に振れるということが防止されて、上記コイルスプリング28には安定した伸縮動作が確保される。
【0038】
また、車両1の走行時に、車輪3側から車体2に向かう衝撃力により上記車輪3とサスペンションアーム8とが大きく上方揺動A(「バウンド」)する場合、コイルスプリング28の周方向の各部分のうち、上記サスペンションアーム8の揺動中心線33に近い側の部分(前部)よりも、この揺動中心線33から遠い側の部分(後部)の方がその長手方向でより大きく圧縮される。このため、車体2の側面視(図1)で、上記コイルスプリング28は、そのコイル中心線27が上記揺動中心線33側に向かって凸の円弧形状となるよう弾性的に湾曲しがちとなり、かつ、このコイルスプリング28の弾性的な反発力が大きくなる。
【0039】
よって、上記「バウンド」時には、上記コイルスプリング28は全体として上記揺動中心線33側に移動しがちとなる。すると、このコイルスプリング28の下端部により、上記弾性シート29が上記座面23の所定位置から上記揺動中心線33側に向かうよう押動されて、上記弾性シート29における上記揺動中心線33側の部分が上記座面23から上記揺動中心線33側に向かってずれ落ちる傾向となる。そして、この場合には、前記した車輪3側から車体2に与えられようとする振動を緩和するという弾性シート29の作用が阻害されることとなって、好ましくない。
【0040】
また、上記したように、コイル中心線27が上記揺動中心線33側に向かって凸の円弧形状となるよう上記コイルスプリング28が弾性的に湾曲すると共に、上記弾性シート29における上記揺動中心線33側の部分(前部)が上記座面23からずれ落ちる場合には、上記コイルスプリング28の下端部の周方向の各部分のうち、上記揺動中心線33から遠い側の部分(後部)と、この部分に対応する上記弾性シート29の部分(後部)とは共に上記座面23から浮き上がりがちとなる。このため、その後に、上記車輪3とサスペンションアーム8とが下方揺動B(「リバウンド」)して、上記コイルスプリング28の下端部と弾性シート29とが上記座面23に対し原位置に戻る際には、これら弾性シート29と座面23との間で互いの打音に基づく異音が生じるおそれがある。
【0041】
しかし、前記したように、弾性シート29の一部をサスペンションアーム8の揺動中心線33側に向けて延出し、この延出部34を突出部21に隣接する上記サスペンションアーム8の上面の他部分35に当接させている。
【0042】
このため、車両1の走行時に、上記したように、車輪3側から車体2に向かう衝撃力によりコイルスプリング28が弾性的に伸縮動作し、この際、このコイルスプリング28の下端部に押動されて上記弾性シート29が上記座面23から上記揺動中心線33側に向かってずれ落ちようとしても、上記弾性シート29から延出して上記サスペンションアーム8の上面の他部分35に当接する延出部34により、上記座面23からの弾性シート29のずれ落ちは防止される。
【0043】
しかも、上記延出部34は、上記突出部21から上記揺動中心線33側に向かう方向で、上記他の突出部38に当接させられている。このため、上記座面23からの弾性シート29のずれ落ちは、より確実に防止される。
【0044】
よって、車両1の走行時に、上記コイルスプリング28が弾性的に伸縮動作するとしても、上記弾性シート29は上記座面23の所定位置に保持されることから、第1に、車両1の走行時に、車輪3側から車体2に与えられようとする振動は上記弾性シート29によって効果的に緩和されると共に、上記座面23とコイルスプリング28の下端部との間に異音が生じることは防止される。
【0045】
また、第2に、上記したように弾性シート29が座面23の所定位置に保持される分、上記座面23に対しての上記弾性シート29の摺動量は小さく抑制される。このため、この弾性シート29が上記座面23への摺動により無用に消耗させられることは防止され、これは、上記弾性シート29の寿命上有益である。
【0046】
また、上記「バウンド」により上記コイルスプリング28がその長手方向で弾性的に収縮させられる時、このコイルスプリング28は径方向に拡大しがちとなり、その分、このコイルスプリング28のスプリング材30はこのコイルスプリング28のコイル中心線27回りで一方向に回転する。この際、このコイルスプリング28の下端部のスプリング材30が回転したとすると、これに連動して上記弾性シート29も上記コイル中心線27回りで一方向に回転しようとする。
【0047】
ここで、前記したように、上記コイルスプリング28のコイル中心線27の周方向で、上記他の突出部38に対し、上記弾性シート29の延出部34が当接させられている。このため、この当接により、上記したコイル中心線27回りの一方向への上記弾性シート29の回転を阻止させてやれば、上記座面23に対しての上記弾性シート29の摺動量を更に小さく抑制でき、これは、この弾性シート29の寿命上、更に有益である。
【0048】
なお、以上は図示の例によるが、サスペンションアーム8は、緩衝器16とコイルスプリング28とが互いに別体であれば、リーディングアーム式であってもよく、3リンク式であってもよい。また、上記各他の突出部38,39は、ワイヤハーネスをクランプするためのものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
2 車体
2a 一部
3 車輪
4 懸架装置
8 サスペンションアーム
10 枢支軸
16 緩衝器
19 上面板
20 一部分
21 突出部
22 軸心
23 座面
24 嵌合凸部
27 コイル中心線
28 コイルスプリング
29 弾性シート
30 スプリング材
30a 巻き始め端
31 嵌入溝
33 揺動中心線
34 延出部
35 他部分
38 突出部
39 突出部
A 上方揺動
B 下方揺動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部の下方域で上、下揺動可能となるようこの車体に枢支されると共に車輪を支持するサスペンションアームと、このサスペンションアームの上面の一部分が上方に向かって突出させられ、その突出面が座面とされる突出部と、上記車体の一部と上記座面との間に介設されて上下方向にコイル中心線が延びるコイルスプリングと、上記座面とコイルスプリングの下端部との間に介設される弾性シートとを備えた車両における懸架装置において、
上記弾性シートの一部を上記サスペンションアームの揺動中心線側に向けて延出し、この延出部を上記突出部に隣接する上記サスペンションアームの上面の他部分に当接させたことを特徴とする車両における懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−280351(P2010−280351A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137182(P2009−137182)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】