説明

車両の下部車体構造

【課題】
フロアパネルに、上方に段上げされたキックアップ部を形成し、キックアップ部の下方に燃料タンクを配設すると共に、タンク下面部をフロアパネルの最下面高さよりも低く延出し、燃料タンク前方のフロアパネルにはタンクへの走行風を整流するエアデフレクタを設けることで、燃料タンクの容量拡大と、燃料タンク周りの空力性能の向上との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】
フロアパネル2と、フロアパネル2後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、一対のリヤフレーム間に燃料タンク13が配設された車両の下部車体構造であって、フロアパネル2には上方に段上げされたキックアップ部5が形成され、キックアップ部5の下方に燃料タンク13が配設されると共に、燃料タンク13の下面部がフロアパネル2の最下面高さより低く延出され、フロアパネル2の燃料タンク13の前方には、該燃料タンク13への走行風xを整流するエアデフレクタ14が設けられた
ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロアパネルの後方に左右一対で車幅方向に所定間隔を隔てて車両の前後方向に延びるリヤフレームを備え、左右一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設されたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の下部車体構造としては図16に示す構造が一般的であった。
すなわち、フロアパネル100には、後方が上方に段上げされたキックアップ部101を介してリヤフロア102を連接し、キックアップ部101の上部背面と、リヤフロア102の前部下部との位置に車幅方向に延びるリヤクロスメンバ103を設け、このリヤクロスメンバ103の後方に燃料タンク104を配設する一方、リヤフロア102の上方にはリヤシート105を配設したものである。
【0003】
図16に示すように、キックアップ部101の背面側にリヤクロスメンバ103と干渉しなりように上述の燃料タンク104を配設すると、隙間106が形成され、形状が複雑化するので、この部分に走行風が入ると、該走行風が乱れ、渦流の発生により空気抵抗に悪影響を及ぼす問題点があった。
【0004】
ところで、特許文献1には、キックアップ部の上部背面にリヤクロスメンバを設け、その後方において左右一対のリヤサイドフレーム間に燃料タンクを配設したものが開示されているが、図16で示した従来構造と同様にして、走行風が乱れて空気抵抗に悪影響を及ぼす問題点があった。
【0005】
また、特許文献2には、キックアップ部に燃料タンクを配設したものが開示されているが、燃料タンク周りの空力性能向上を示唆する技術思想は何等開示されていない。
さらに、特許文献3には、キックアップ部の背面形状に沿うように燃料タンクを加工して、該燃料タンクをキックアップ部背面に沿設したものが開示されているが、このように構成すると燃料タンクの構造が複雑化するので、実現性が低下する問題点があるうえ、この特許文献3においても、燃料タンク周りの空力性能向上を示唆する点については何等開示されていない。
【特許文献1】特開平5−50952号公報
【特許文献2】実開平5−71083号公報
【特許文献3】特開平5−155258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、フロアパネルに、上方に段上げされたキックアップ部を形成し、このキックアップ部の下方に燃料タンクを配設すると共に、該タンク下面部をフロアパネルの最下面高さよりも低く延出し、燃料タンク前方のフロアパネルには該タンクへの走行風を整流するエアデフレクタを設けることで、燃料タンクの容量拡大と、燃料タンク周りの空力性能の向上との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の下部車体構造は、フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、該キックアップ部の下方に燃料タンクが配設されると共に、該燃料タンクの下面部が上記フロアパネルの最下面高さより低く延出され、上記フロアパネルの燃料タンクの前方には、燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタが設けられたものである。
【0008】
上記構成によれば、燃料タンクの容量拡大と、燃料タンク周りの空力性能の向上との両立を図ることができる。
つまり、上述のキックアップ部に燃料タンクを配設すると、隙間の形成により形状が複雑化し、この部分に走行風が入り込むと、走行風が乱れ、渦流の発生により空気抵抗に悪影響を及ぼすが、上述の燃料タンク前方のフロアパネルには該燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタを設けたので、燃料タンク周りの空力性能の向上を図ることができる。
【0009】
またキックアップ部の下方に配設した燃料タンクの下面部を、フロアパネルの最下面高さよりも低くなるように延出したので、燃料タンクの容量拡大を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記一対のリヤフレームの前端部間を、車幅方向に延びて両者を接続するクロスメンバを設け、該クロスメンバを整流形状に成形して該クロスメンバにて上記エアデフレクタを形成したものである。
【0011】
上記構成によれば、クロスメンバにてエアデフレクタを構成するので、部品点数の低減および組付け工数の削減を図ることができ、車体の剛性向上と空力性能の向上との両立を図ることができる。
【0012】
またクロスメンバがキックアップ部の上部背面に存在する従来構造のものと比較して、キックアップ部の後退設定が可能となり、この分、車室内の拡大を図って、居住性向上を図ることができると共に、燃料タンクを前方へ拡張することも可能となるので、燃料タンクの容量拡大を図ることができる。
【0013】
この発明による車両の下部車体構造は、また、フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、該キックアップ部の下方に上記燃料タンクが配設され、上記フロアパネルの下方に配設されたクロスメンバを整流形状に成形して、上記燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタが形成されたものである。
【0014】
上記構成によれば、フロアパネルの下方にはクロスメンバにて構成されるエアデフレクタを設けたので、このエアデフレクタにて燃料タンクへの走行風を整流して、燃料タンク周りの空力性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、クロスメンバを整流形状に成形してエアデフレクタを形成するので、部品点数の低減と組付け工数の削減とを図ることができると共に、クロスメンバにて車体の剛性を確保することができる。
【0016】
しかも、上述のクロスメンバはフロアパネル下方で、かつ燃料タンクへの走行風を整流する位置すなわち燃料タンクよりも上流側に位置するので、クロスメンバがキックアップ部の上部背面に存在する従来構造のものと比較して、キックアップ部の後退設定が可能となり、この分、車室内の拡大を図って、居住性向上を図ることができると共に、燃料タンクを前方へ拡張することも可能となるので、燃料タンクの容量拡大を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバは左右一対のリヤフレームの前端部間を車幅方向に延びて両者を接続するものである。
上記構成によれば、クロスメンバで車体の剛性を確保することができると共に、エアデフレクタそれ自体の剛性をも確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記燃料タンクの側方の上記フロアパネルの下方には、車両の前後方向に延びる排気管が配設され、該排気管と上記フロアパネルとの間には、上記燃料タンクの一部を延長して配設したものである。
【0019】
上記構成によれば、排気管のレイアウトを確保しつつ、上述の燃料タンクの一部延長構造により、該燃料タンクの容量をさらに拡大することができる。
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバの車幅方向中間部は、上記フロアパネルに沿って車両の前後方向に延びるフロアフレームの後端部と接続されたものである。
【0020】
上記構成によれば、クロスメンバとフロアフレーム(何れも車体剛性部材)との接続構造により、その相乗効果にてフロアフレームの剛性向上と、クロスメンバの剛性向上とを図ることができ、また車両衝突時の荷重の分散も図れ、耐衝突性能の向上をも図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバには排気管の配設部に対応して凹部が形成されたものである。
上記構成によれば、車体の剛性確保と、燃料タンクの容量拡大との両立を図ることに加えて、上記凹部の形成により排気管レイアウトの容易化を達成することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、フロアパネルに、上方に段上げされたキックアップ部を形成し、このキックアップ部の下方に燃料タンクを配設すると共に、該タンク下面部をフロアパネルの最下面高さよりも低く延出し、燃料タンク前方のフロアパネルには該タンクへの走行風を整流するエアデフレクタを設けたので、燃料タンクの容量拡大と、燃料タンク周りの空力性能の向上との両立を図ることができる
効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
燃料タンクの容量拡大と、燃料タンク周りの空力性能の向上との両立を図るという目的を、フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、該キックアップ部の下方に上記燃料タンクが配設されると共に、該燃料タンクの下面部が上記フロアパネルの最下面高さより低く延出され、上記フロアパネルの燃料タンクの前方には、燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタが設けられるという構成にて実現した。
【実施例】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部車体構造を示し、図1は車体構造を示す斜視図、図2はその平面図、図3は図2のA−A線矢視断面図、図4は要部の拡大側面図、図5は底面図であって、図1〜図5において、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)1を設け、このダッシュロアパネル1の下部後端には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル2を連設し、このフロアパネル2の中央部には車室内方へ突出し、かつ車両の前後方向に延びるトンネル部3を一体または一体的に形成している。
【0024】
また上述のフロアパネル2の左右両側部には、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル4,4を接合固定している。このサイドシル4はサイドシルインナと、サイドシルアウタとサイドシルレインフォースメントとを接合して構成され、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えたものである。
【0025】
さらに、上述のフロアパネル2には、その後方が上方に段上げされたキックアップ部5を形成し、このキックアップ部5の上端部には、該上端部から後方に向けて延びるリヤフロア6(フロアパネル2の一部)が連設され、このリヤフロア6の後部略中間には下方に段下げ形成されたスペアタイヤパンク7を設けている。
【0026】
ここで、上述のキックアップ部5の形成により、後席乗員の足元スペースをかせぐように形成している。
ところで、フロアパネル2の上部には図1〜図3に示すように、トンネル部3を跨いで左右のサイドシル4,4まで車幅方向に延びる車体剛性部材としてのクロスメンバ(いわゆるNo.2クロスメンバ)8を設けると共に、このクロスメンバ8に対して車両後方に離間した位置には、トンネル部3と直交して該トンネル部3とサイドシル4との間を車幅方向に連結する左右一対のクロスメンバ9,9(いわゆるNo.2.5クロスメンバで、車体剛性部材)を設け、フロアパネル2と各クロスメンバ8,9との間には車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0027】
一方、図5に示すようにフロアパネル2の下部において、側部のサイドシル4と中央部のトンネル部3との中間には、フロアパネル2に沿って車両の前後方向に延びる車体剛性部材としての左右一対のフロアフレーム10,10を設けている。このフロアフレーム10はフロアパネル2の下面に接合固定されたもので、フロアパネル2とフロアフレーム10との間には車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。このフロアフレーム10の後端はキックアップ部5の近傍まで延設されている。また、このフロアフレーム10の前端部には車体剛性部材としてのフロントサイドフレーム11(フロントフレーム)が連続して設けられている。
【0028】
また上述のリヤフロア6には、図5に示すように左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのリヤサイドフレーム12,12(リヤフレーム)が設けられている。このリヤサイドフレーム12はリヤフロア6の下面に接合固定されたもので、リヤフロア6とリヤサイドフレーム12との間には車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。
【0029】
そして、図4に示すように、キックアップ部5の背面側下方(後方)とリヤフロア6の前部下方とに位置し、かつ左右一対のリヤサイドフレーム12,12間に位置するように燃料タンク13が配設されている。
【0030】
図6に要部を拡大平面図にて示すように、フロアパネル2の下面に接合され、かつフロアパネル2に沿って車両の前後方向に延びるフロアフレーム10の後端部10aと、リヤフロア6の下面に接合され、かつ所定間隔を保って車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム12の前端部12aとは、車幅方向にオフセットすると共に、車両の前後方向にオーバラップするように構成されている。
【0031】
上述の左右一対のリヤサイドフレーム12,12の前端部12a,12a相互間を車幅方向に延びて両者12,12を接続する車体剛性部材としてのリヤクロスメンバ14(No.3クロスメンバ)を設け、図4、図5に示すように、このリヤクロスメンバ14を上述の燃料タンク13前方のフロアパネル2の下方に配設している。詳しくは、該リヤクロスメンバ14は図4に示すようにキックアップ部5の直前部においてフロアパネル2の下方に配設されたものである。
【0032】
このリヤクロスメンバ14は燃料タンク13への走行風xを整流するエアデフレクタを構成するものである。ここで図4に示すように燃料タンク13の下面部はフロアパネル2の最下面高さよりも距離L1だけで低位置に延出され、エアデフレクタを構成するところのリヤクロスメンバ14は、燃料タンク13の下面部よりも距離L2だけ低い位置に延びるように設けられていて、この構造により、燃料タンク13の容量拡大と、燃料タンク13周りの空力性能の向上との両立を図るように構成している。つまり、走行風xがキックアップ部5背面側の複雑形状部位に入り込まないように構成したものである。
【0033】
図7はリヤクロスメンバ14の斜視図、図8は図7のB-B線に沿う矢視断面図であって、図6〜図8に示すように、このリヤクロスメンバ14は該メンバ14それ自体の剛性向上を図る目的で車幅方向に連続する凹凸形状を有するように形成されると共に、トンネル部3側部のフロアパネル2下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14a,14b,14c,14dと、フロアフレーム10の後端部10a下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14e・・・と、リヤサイドフレーム12の前端部12a下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14f・・・とを備え、これらの各取付座14a〜14fにはそれぞれ取付け孔15,16,17が形成されている。
【0034】
図7、図8に示すようにトンネル部3側部のフロアパネル2下面に対する左右一対の取付け座14a,14b間、14c,14d間には、リヤクロスメンバ14のトップデッキ面に対して下方に窪む凹部18が形成され、この凹部18に対応して排気管19が配設されている。
【0035】
つまり、リヤクロスメンバ14の排気管19の配設部に対応して上述の凹部18が形成されたものである。
またフロアフレーム10の後端部10a下面に対する上述の取付け座14eは、リヤクロスメンバ14のトップデッキ面に対して凹設された低位置に形成されると共に、左右の取付け座14e,14e間におけるリヤクロスメンバ14のボトムデッキは凹凸を有さない略フラットな形状に構成されている。
【0036】
さらに、リヤサイドフレーム12の前端部12a下面に対する取付け座14fは、リヤクロスメンバ14の主体部に対して若干後方に後退した位置に形成されている。
図9は図6のC-C線に相当す部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の複数の取付け孔15,15に対応して、トンネル部3側部のフロアパネル2上面には予め複数のナット20,20が溶接固定され、このナット20に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト21を用いて、取付け座14a,14b,14c,14dがフロアパネル2に着脱可能に取付けられる。
【0037】
図10は図6のD−D線に相当する部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の複数の取付け孔16,16に対応して、フロアフレーム10の後端部10aには予め複数のナット22,22が溶接固定され、このナット22に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト23を用いて、取付け座14eがフロアフレーム10の後端部10aに着脱可能に取付けられる。
【0038】
図11は図6のE−E線に相当する部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の複数の取付け孔17,17に対応して、リヤサイドフレーム12の前端部12aには予め複数のナット24,24が溶接固定され、このナット24に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト25を用いて、取付け座14fがリヤサイドフレーム12の前端部12aに着脱可能に取付けられる。
【0039】
このようにして上述のリヤクロスメンバ14は、図12にも示すように、メンテナンス性を考慮して、トンネル部3側部のフロアパネル2と、フロアフレーム10の後端部10aと、リヤサイドフレーム12の前端部12aとに複数のボルト21,23,25(この実施例では合計12本のボルト)を用いて着脱可能に取付けられるものである。
【0040】
しかも、上述のリヤクロスメンバ14は図9に断面図で示すように、その前面部はフロアパネル2の下面から後方に向けて斜め下方に延びる前高後低状の整流部14gを有するように整流形状に成形されていて、このリヤクロスメンバ14で燃料タンク13への走行風xを整流するところのエアデフレクタを構成すると共に、該リヤクロスメンバ14は燃料タンク13を保護する燃料タンクガード部をも兼ねるように構成されている。
【0041】
ところで、図5、図13に示すように、前述の燃料タンク13の側方のリヤフロア6の下方には、車両の前後方向に延びる排気管19が配設され、この排気管19とリヤフロア6との間には燃料タンク13の一部を延長して配設している。つまり、図13、図14に示すように、燃料タンク13には、略L字状に屈曲して配設される排気管19の上部と、リヤフロア6の下部との間に位置するように延長部13aが一体形成され、この延長部13aの形成により、燃料タンク13の容量をさらにの拡大するように構成している。
【0042】
ここで、上述の排気管19の下流側は図5、図13に示すように、サイレンサ26を介してテールパイプ27に接続される一方、排気管19の上流側は図1、図3、図5に示すようにトンネル部3の車外側に位置するキャタリスト28,29を介して、エンジンのエキゾーストマニボルトに接続されている。
【0043】
なお、図4において燃料タンク13の上部には凹部13bが形成され、これに対応してリヤフロア6にも凹部6bが形成されているが、図15に示すように、これらの各凹部13b,6bを省略して、この分、燃料タンク13の容量拡大を図るように構成してもよい。
【0044】
また、図5においてクロスメンバ8(いわゆるNo.2クロスメンバ)と対応する部位のトンネル部3の開放下端部には下部トンネルメンバ30が設けられている。さらに、キックアップ部5に近接するリヤフロア6上方にはリヤシート31が設けられている。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0045】
このように、上記実施例の車両の下部車体構造は、フロアパネル2と、該フロアパネル2後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム12,12とを備え、上記一対のリヤサイドフレーム12,12間に燃料タンク13が配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネル2には上方に段上げされたキックアップ部5が形成され、該キックアップ部5の下方に上記燃料タンク13が配設され、該燃料タンク13の下面部が上記フロアパネル2の最下面高さより低く延出(図4のL1参照)され、上記フロアパネル2の燃料タンク13の前方には、燃料タンク13への走行風xを整流するエアデフレクタ(リヤクロスメンバ14参照)が設けられたものである。
【0046】
この構成によれば、燃料タンク13の容量拡大と、燃料タンク13周りの空力性能の向上との両立を図ることができる。
つまり、上述のキックアップ部5に燃料タンク13を配設すると、隙間の形成により形状が複雑化し、この部分に走行風が入り込むと、走行風が乱れ、渦流の発生により空気抵抗に悪影響を及ぼすが、上述の燃料タンク13前方のフロアパネル2には該燃料タンク13への走行風xを整流するエアデフレクタ(リヤクロスメンバ14参照)を設けたので、燃料タンク13周りの空力性能の向上を図ることができる。
【0047】
またキックアップ部5の下方に配設した燃料タンク13の下面部を、フロアパネル2の最下面高さよりも距離L1だけ低くなるように延出したので、燃料タンク13の容量拡大を図ることができる。
さらに、上記一対のリヤサイドフレーム12,12の前端部相互間を、車幅方向に延びて両者12,12を接続するリヤクロスメンバ14を設け、このリヤクロスメンバ14を整流形状に成形して該リヤクロスメンバ14にて上記エアデフレクタを形成したものである。
【0048】
この構成によれば、リヤクロスメンバ14にてエアデフレクタを構成するので、部品点数の低減および組付け工数の削減を図ることができ、車体の剛性向上を空力性能の向上との両立を図ることができる。
またリヤクロスメンバがキックアップ部の上部背面に存在する従来構造のものと比較して、キックアップ部5の後退設定が可能となり、この分、車室内の拡大を図って、居住性向上を図ることができると共に、燃料タンク13を前方へ拡張することも可能となるので、燃料タンク13のさらなる容量拡大を図ることができる。
【0049】
さらに上記実施例の車両の下部車体構造はまた、フロアパネル2と、該フロアパネル2後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム12,12とを備え、上記一対のリヤサイドフレーム12,12間に燃料タンク13が配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネル2には上方に段上げされたキックアップ部5が形成され、該キックアップ部5の下方に上記燃料タンクが13配設され、上記フロアパネル2の下方に配設されたリヤクロスメンバ14を整流形状に成形して、上記燃料タンク13への走行風を整流するエアデフレクタが形成されたものである。
【0050】
この構成によれば、フロアパネル2の下方にはリヤクロスメンバ14にて構成されるエアデフレクタを設けたので、このエアデフレクタにて燃料タンク13への走行風xを整流して、燃料タンク13周りの空力性能の向上を図ることができる。
【0051】
また、リヤクロスメンバ14を整流形状に成形し、このリヤクロスメンバ14を用いてエアデフレクタを形成するので、部品点数の低減と組付け工数の削減とを図ることができると共に、リヤクロスメンバ14にて車体の剛性を確保することができる。
【0052】
しかも、上述のリヤクロスメンバ14はフロアパネル12下方で、かつ燃料タンク13への走行風xを整流する位置すなわち燃料タンク13よりも上流側に位置するので、リヤクロスメンバがキックアップ部の上部背面に存在する従来構造のものと比較して、キックアップ部5の後退設定が可能となり、この分、車室内の拡大を図って、居住性向上を図ることができると共に、燃料タンク13を前方へ拡張することも可能となるので、燃料タンク13の容量拡大を図ることができる。
【0053】
また、上記リヤクロスメンバ14は左右一対のリヤサイドフレーム12,12の前端部間を車幅方向に延びて両者12,12を接続するものである。
この構成によれば、リヤクロスメンバ14で車体の剛性を確保することができると共に、エアデフレクタそれ自体の剛性をも確保することができる。
【0054】
さらに、上記燃料タンク13の側方の上記フロアパネル(リヤフロア6参照)の下方には、車両の前後方向に延びる排気管19が配設され、該排気管19と上記フロアパネル(リヤフロア6参照)との間には、上記燃料タンク13の一部を延長(延長部13a参照)して配設したものである。
【0055】
この構成によれば、排気管19のレイアウトを確保しつつ、上述の燃料タンク13の一部延長構造により、該燃料タンク13の容量をさらに拡大することができる。
しかも、上記リヤクロスメンバ14の車幅方向中間部は、上記フロアパネル2に沿って車両の前後方向に延びるフロアフレーム10の後端部10aと接続されたものである。
【0056】
この構成によれば、リヤクロスメンバ14とフロアフレーム10(何れも車体剛性部材)との接続構造により、その相乗効果にてフロアフレーム10の剛性向上と、リヤクロスメンバ14の剛性向上とを図ることができ、また車両衝突時の荷重の分散も図れ、耐衝突性能の向上をも図ることができる。
【0057】
加えて、上記リヤクロスメンバ14には排気管19の配設部に対応して凹部18が形成されたものである。
この構成によれば、車体の剛性確保と、燃料タンク13の容量拡大との両立を図ることに加えて、上記凹部18の形成により排気管レイアウトの容易化を達成することができる。
【0058】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤフレームは、実施例のリヤサイドフレーム12に対応し、
以下同様に、
エアデフレクタは、リヤクロスメンバ14に対応し、
クロスメンバは、リヤクロスメンバ14に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1のA−A線矢視断面図。
【図4】図3の要部拡大側面図。
【図5】車両の下部車体構造を示す底面図。
【図6】リヤクロスメンバの平面図。
【図7】リヤクロスメンバの斜視図。
【図8】図7のB−B線矢視断面図。
【図9】図6のC−C線に相当する部位の断面図。
【図10】図6のD−D線に相当する部位の断面図。
【図11】図6のE−E線に相当する部位の断面図。
【図12】リヤクロスメンバの拡大側面図。
【図13】排気管および燃料タンクの斜視図。
【図14】燃料タンクの正面図。
【図15】車両の下部車体構造の他の実施例を示す側面図。
【図16】従来の車両の下部車体構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0060】
2…フロアパネル
5…キックアップ部
6…リヤフロア
10…フロアフレーム
12…リヤサイドフレーム(リヤフレーム)
13…燃料タンク
14…リヤクロスメンバ(エアデフレクタ)
18…凹部
19…排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、
上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、
該キックアップ部の下方に燃料タンクが配設されると共に、該燃料タンクの下面部が上記フロアパネルの最下面高さより低く延出され、
上記フロアパネルの燃料タンクの前方には、該燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタが設けられた
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記一対のリヤフレームの前端部間を、車幅方向に延びて両者を接続するクロスメンバを設け、
該クロスメンバを整流形状に成形して該クロスメンバにて上記エアデフレクタを形成した
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、
上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、
該キックアップ部の下方に上記燃料タンクが配設され、
上記フロアパネルの下方に配設されたクロスメンバを整流形状に成形して、上記燃料タンクへの走行風を整流するエアデフレクタが形成された
車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記クロスメンバは左右一対のリヤフレームの前端部間を車幅方向に延びて両者を接続する
請求項3記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記燃料タンクの側方の上記フロアパネルの下方には、車両の前後方向に延びる排気管が配設され、
該排気管と上記フロアパネルとの間には、上記燃料タンクの一部を延長して配設した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記クロスメンバの車幅方向中間部は、上記フロアパネルに沿って車両の前後方向に延びるフロアフレームの後端部と接続された
請求項2〜5の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記クロスメンバには排気管の配設部に対応して凹部が形成された
請求項5記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−21635(P2006−21635A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201295(P2004−201295)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】