説明

車両の後輪操舵制御装置

【課題】指示トー角への実トー角の追従性を向上させる車両の後輪操舵制御装置を提供する。
【解決手段】車両の左右後輪の指示トー角を設定する指示トー角設定手段119と、車両の運動状態量を検出する状態量検出手段17と、を備え、指示トー角と検出された実トー角との偏差に基づき操作量を算出し、この操作量に基づいて車両の左右後輪に設けられたアクチュエータ11を作動させることによってトー角を変化させる後輪操舵制御装置である。本装置は、偏差を積分する積分手段124と、前記アクチュエータの制御特性に起因した前記指示トー角、前記実トー角、もしくは前記偏差の変動に応じて前記積分手段の偏差の積分量を減少させる指令を行うリセット指令手段120とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車(以下、単に車両と記す)のトー角を、車両の挙動に応じて制御することにより車両の走行安定性を改善するために構成された後輪操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、走行安定性の向上などを目的として車体の挙動を制御する各種の車両挙動制御装置が搭載されている。例えば、左右の後輪のトー角を個別に制御して旋回性能や走行安定性を向上させる後輪トー角制御(以下「RTC」:Rear Toe Control と称す)を行うもの(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
RTCは、車速や前輪舵角、制動状態等の車両の運動状態に応じて後輪をトー角制御するとともに、トー角を、それぞれ車速や、前輪舵角に応じて段階的に変化させている。かかる技術によれば、低速走行時に車両の回頭性を高めるとともに高速走行時に走行安定性を高め、旋回時の車体の尻振りおよび制動時の走行安定性低下の効果的な防止が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3179271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RTCを搭載した車両では、舵角センサや車速等から算出された指示トー角に検出された実トー角を追従させる制御が実行される。一般的には指示トー角と実トー角との偏差に基づいて比例(P)フィードバック制御が実行され、後輪操舵をするためのアクチュエータを動作させる入力電圧が決定される。この入力電圧によってアクチュエータが操作されて、後輪操舵が実行される。P制御では制御系に定常的偏差が残る。そこで、RTCのフィードバック制御に積分(I)制御を取り入れたフィードバックPI制御を適用すれば、この定常的偏差を解消することができると考えられる。
【0006】
しかしながら、I制御は積分時間の影響によってある程度時間が経過しないと働かないため、RTCの挙動、変動によっては、このときの偏差の積分量が、過大なオーバーシュートや、追従性の低下の原因となっていた。
【0007】
例えば、車両が旋回方向を変えてステアリングの切り返しが行われ、フィードバック制御の偏差の符号が変わるとき、I制御による偏差の積分量のためにRTCの追従性が悪くなり、操舵の応答性を劣化させるおそれがある。また、アクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化によって大きな偏差が発生したときも、I制御による偏差の積分量のために過大なオーバーシュートを生じさせるおそれがある。さらに、指示トー角の変化速度が高いときには、瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなり、その後、通常の状態に戻る際にもI制御による偏差の積分量のために過大なオーバーシュートを生じさせるおそれがある。
【0008】
本発明は前記背景を鑑みてなされたもので、指示トー角への実トー角の追従性を向上させ、過大なオーバーシュートとなることを抑制する車両の後輪操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の左右後輪の指示トー角を設定する指示トー角設定手段と、前記車両の運動状態量を検出する状態量検出手段と、を備え、前記指示トー角と検出された実トー角との偏差に基づき操作量を算出し、この操作量に基づいて車両の左右後輪に設けられたアクチュエータを作動させることによってトー角を変化させる後輪操舵制御装置である。本装置は、前記偏差を積分する積分手段と、前記指示トー角、前記実トー角、もしくは前記偏差の変動に応じて前記積分手段の偏差の積分量を減少させる指令を行うリセット指令手段とを備えている。なお、ここでいうリセット指令手段のリセットとは、偏差の積分量をゼロにする場合に限定されず、偏差の積分量が減少することも含むものとしている。
【0010】
前記構成によれば、過大なオーバーシュートや、追従性の低下の原因となる指示トー角、実トー角、もしくは偏差の変動発生を条件として、偏差の積分量を減少させることによって、指示トー角への実トー角の追従性を向上させ、過大なオーバーシュートとなることを抑制することができる。なお、偏差の積分量を減少させる手段は、系の特性に応じた手段を適用することができ、特に限定されない。
【0011】
前記構成において、前記積分手段は、前記偏差の積分量をリセットするように構成することができる。この構成によれば、積分手段が偏差の積分量をリセットすることによって、指示トー角への実トー角の追従性を向上させ、過大なオーバーシュートとなることを抑制することができる。
【0012】
前記構成において、前記状態量検出手段は、所定周期で前記偏差の正負符号を検出し、前記リセット指令手段は、検出された前記偏差の今回値の正負符号と、この今回値の一周期前に検出された前回値の正負符号とが異なるとき、前記積分手段に前記指令を行うように構成することができる。
【0013】
前記構成によれば、乗員がステアリングを切り返した否かを、偏差の今回値の正負符号と前回値の正負符号とを比較することによって判断し、ステアリング切り返し時に偏差の積分量を減少させる、もしくは偏差の積分量をリセットすることができるため、指示トー角への実トー角の追従性を向上させることができる。
【0014】
前記構成において、前記状態量検出手段は、所定周期で前記実トー角を検出し、前記リセット指令手段は、検出された前記実トー角の今回値と、この今回値の一周期前に検出された前回値との差が所定のしきい値以上であるとき、前記積分手段に前記指令を行うように構成することができる。
【0015】
前記構成によれば、アクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化が生じているか否かを判定して、偏差の積分量を減少させる、もしくは偏差の積分量をリセットすることができるため、過大なオーバーシュートとなることを抑制することができる。
【0016】
前記構成において、前記指示トー角設定手段は、所定周期で前記指示トー角を設定し、前記リセット指令手段は設定された前記指示トー角の今回値と、この今回値の一周期前に検出された前回値との差が所定のしきい値以上であるとき、前記積分手段に前記指令を行うように構成することができる。
【0017】
前記構成によれば、指示トー角の変化速度が高いときに瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなるか否かを判定して、偏差の積分量を減少させる、もしくは偏差の積分量をリセットすることができるため、過大なオーバーシュートとなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、指示トー角への実トー角の追従性を向上させ、過大なオーバーシュートとなることを抑制する車両の後輪操舵制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる4輪自動車の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる制御装置要部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるステアリング切り返しを条件としてリセット制御するフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかるアクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化を条件としてリセット制御するフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態にかかる指示トー角の変化速度が高いときに瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなることを条件としてリセット制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる後輪操舵制御装置を車両に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。説明にあたり、車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤや電動アクチュエータ等については、それぞれ数字の符号に左右を示す添字LまたはRを付して、例えば、後輪5L(左)、後輪5R(右)と記すとともに、総称する場合には、例えば、後輪5と記す。
【0021】
図1は実施形態に係る後輪操舵制御装置10を適用した自動車Vの概略構成図である。車両Vは、タイヤ2L,2Rが装着された前輪3L,3Rと、タイヤ4L,4Rが装着された後輪5L,5Rとを備えており、これら前輪3L,3Rおよび後輪5L,5Rが、左右のフロントサスペンション6L,6Rおよびリヤサスペンション7L,7Rによってそれぞれ車体1に懸架されている。
【0022】
また、車両Vには、ステアリングホイール8の操舵により、ラックアンドピニオン機構を介して左右の前輪3L,3Rを直接転舵する前輪操舵装置9と、左右のリヤサスペンション7L,7Rに対して設けられた左右のアクチュエータ11L,11Rを伸縮駆動することにより、後輪5L,5Rのトー角を個別に変化させる後輪トー角制御装置10L,10Rとが備わっている。なお、アクチュエータ11L,11Rは電動アクチュエータを適用することができる。
【0023】
車両Vには、各種システムを統括制御するECU(Electronic Control Unit)12の他、車速センサ13や、前輪舵角センサ14、ヨーレートセンサ15、横加速度センサ16の他、図示しない種々のセンサが設置されており、各センサの検出信号はECU12に入力して車両の制御に供される。なお、舵角センサ14はステアリングホイール8の操舵量を検出しており、その検出値から前輪3の転舵角が算出される。横加速度センサ16は車両の左右方向に作用する加速度を検出する。ここで、これらのセンサおよび後記するトー角センサ等は、車両の挙動にかかる車両状態量を検出する状態量検出手段を構成している。
【0024】
ECU12は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されており、通信回線を介して各センサ13〜16等や、アクチュエータ11と接続されている。ECU12は、各センサ13〜16等の検出結果に基づいて後輪トー角を算出し、各アクチュエータ11L,11Rの変位量を決定した上で後輪5のトー角制御を行う。
【0025】
各アクチュエータ11L,11Rには、出力ロッドのストローク位置を検出するトー角センサ17L,17Rがそれぞれ設置されている。トー角センサ17L,17Rの信号がECU12に入力することで、各アクチュエータ11L,11Rのフィードバック制御が行われる。これにより、各アクチュエータ11L,11Rは、ECU12によって決定された所定量だけ伸縮動し、後輪5L,5Rのトー角を正確に変化させる。
【0026】
このように構成された車両Vによれば、左右のアクチュエータ11L,11Rを同時に対称的に変位させることにより、両後輪5L,5Rのトーイン/トーアウトを適宜な条件の下に自由に制御することができる他、左右のアクチュエータ11L,11Rの一方を伸ばして他方を縮めれば、両後輪5L,5Rを左右に転舵することも可能である。例えば、車両Vは、各種センサによって把握される車両の運動状態に基づき、加速時に後輪5をトーアウトに、制動時に後輪5をトーインに変化させ、高速旋回走行時に後輪5を前輪舵角と同相に、低速旋回走行時に後輪5を前輪舵角と逆相にトー角制御(転舵)して、操縦性を高めるべく後輪トー角制御を行う。
【0027】
図2は本実施形態における車両の制御装置要部の機能ブロック図である。本実施形態の後輪操舵制御装置は、ECU12によって実現できる。ECU12は、一種のコンピュータであり、演算を実行するプロセッサ(CPU)、各種データを一時記憶する記憶領域およびプロセッサによる演算の作業領域を提供するランダム・アクセス・メモリ(RAM)、プロセッサが実行するプログラムおよび演算に使用する各種のデータが予め格納されている読み出し専用メモリ(ROM)、およびプロセッサによる演算の結果およびエンジン系統の各部から得られたデータのうち保存しておくものを格納する書き換え可能な不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは、システム停止後も常時電圧供給されるバックアップ機能付きRAMで実現することができる。
【0028】
なお、図2では本実施形態にかかる要部を示しており、例えば、特許文献1に開示される、車両の左右後輪の指示トー角を設定する指示トー角設定手段と、前記車両の運動状態量を検出する状態量検出手段と、を備え、前記指示トー角と検出された実トー角との偏差に基づいて車両の左右後輪のトー角を変化させる後輪操舵制御装置の一般的な構成については説明を省略する場合がある。
【0029】
図2を参照すると、ECU12の指示トー角設定部119は、例えば、入力インタフェース(図示せず)を介して、状態量検出部118となる横加速度センサ16や筒内圧センサ(図示せず)等から車両の運動状態量を取得し、エンジントルクの推定、トランスミッションのギヤ比等に基づいて左右後輪5L,5Rの駆動力の推定を行い、この後輪駆動力の推定結果と横加速度センサ16の検出結果とから、指示トー角θTDを算出する。なお、図2では、左後輪5Lもしくは右後輪5Rの一方を代表として示しているため左右を表す添字L,Rは付していない。
【0030】
算出された指示トー角θTDから、アクチュエータ11に配設されたトー角センサ17によって検知され、入力インタフェース(図示せず)を介して、ECU12に送出された実トー角θTRが減算されて偏差eが算出される。偏差eはFB制御器125に入力され、FB制御器125はこの偏差を解消する向きにアクチュエータ11を駆動するために偏差に比例した駆動信号を出力インタフェース(図示せず)を介して発生する。これらが一般的な比例制御による後輪操舵制御装置のFB制御要部の構成となっている。
【0031】
本実施形態では、フィードバック制御による偏差への追従性を向上させるために、積分器124が設けられて、偏差に基づき積分項ICが算出される。この積分項ICは、FB制御器125が出力した操作量uに加算されることによって、偏差を低減する修正操作量ucがアクチュエータへ送出される。このようにRTCのフィードバック制御に積分(I)制御を取り入れたフィードバックPI制御を適用して、偏差の積分量をリセット制御して、この定常的偏差を解消する構成としている。ここで、リセット制御とは、偏差の積分量をゼロにする場合に限定されず、偏差の積分量が減少することも含むものとしている。
【0032】
さらに、本実施形態は、ステアリング切り返し時に対応するリセット制御を行う第1リセット部121と、アクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化に対応するリセット制御を行う第2リセット部122と、指示トー角の変化速度が高いときに瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなることに対応するリセット制御を行う第3リセット部123と、から構成されるリセット制御器(リセット指令手段)120を備えている。
【0033】
第1リセット部121、第2リセット部122、第3リセット部123は、図示しない入力インタフェースを介して各リセット部121,122,123に入力されたデータに基づき、リセットが適用されるべきか否かを判断し、リセットする必要があるときは、その旨の信号を積分器(積分手段)124に送出する。積分器124は、この信号を受けて、偏差eに基づき算出される積分項ICをリセットする。なおリセット制御器120のプロセスの詳細については後記するが、これらのプロセスはECU12のメモリにプログラムとして格納することができ、所定の処理インターバル(例えば、10msを一周期とする)をもって繰り返し実行されるように構成することができる。
【0034】
まず、ステアリング切り返し時に対応するリセット制御を行う第1リセット部121のプロセスについて図2および図3を参照して説明する。第1リセット部121は、指示トー角θTDと実トー角θTRとの偏差eを取得し(ステップS101)、偏差eの正負符号Meを取得する(ステップS102)。ここで正負符号Meとは、+(プラス)もしくは−(マイナス)である。この正負符号MeはECU12のメモリに記憶され、取得された今回値であるMeと一周期前の処理インターバルで取得された前回値Mepが次のステップで用いられる。
【0035】
次のステップでは、今回値Meと前回値Mepとが異なるか否かが判定される(ステップS103)。正負符号が異なる場合は、ステアリングの切り返しが行われたと推定される(ステップS103:YES)。かかる状況においてアクチュエータは伸張から圧縮もしくは圧縮から伸張という反転する作動となり、反転時に偏差の符号の変化に伴うI制御による偏差の積分量のためにRTCの追従性が悪くなるおそれがある。そこで、第1リセット部121は、リセットする旨の信号を積分器124に送出する(ステップS104)。積分器124は、かかる信号を受けて積分項ICをリセットする(ステップS105)。なお、今回値Meと前回値Mepとが同じ符号と判定された場合は(ステップS103:NO)、リセットは実行されず、本プロセスは終了される。
【0036】
次に、アクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化に対応するリセット制御を行う第2リセット部122のプロセスについて図2および図4を参照して説明する。第2リセット部122は、トー角センサ17が検出した実トー角θTRの信号を入力インタフェースを介して取得する(ステップS201)。この実トー角θTRはECU12のメモリに記憶され、取得された今回値であるθTRと一周期前の処理インターバルで取得された前回値θTRpが次のステップで用いられる。
【0037】
次のステップでは実トー角の今回値θTRから前回値θTRpが減算され、差dθTRが算出される(ステップS202)。算出された差dθTRは所定のしきい値dθTRthと比較される(ステップS203)。ここで所定のしきい値dθTRthは、アクチュエータ作動時の静止摩擦から動摩擦への変化を判定するものであり、変化が生じていても絶対量が小さければ後輪操舵制御への影響は少ないためにしきい値が設けられている。
【0038】
差dθTRが所定のしきい値dθTRthと同じか、または大きい場合(ステップS203:YES)、第2リセット部122は、リセットする旨の信号を積分器124に送出する(ステップS204)。積分器124は、かかる信号を受けて積分項ICをリセットする(ステップS205)。なお、差dθTRが所定のしきい値dθTRthより小さい場合は(ステップS203:NO)、リセットは実行されず、本プロセスは終了される。
【0039】
次に、指示トー角の変化速度が高いときに瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなることに対応するリセット制御を行う第3リセット部123のプロセスについて図2および図5を参照して説明する。第3リセット部123は、ECU12が算出した指示トー角θTDを取得する(ステップS301)。この指示トー角θTDはECU12のメモリに記憶され、取得された今回値であるθTDと一周期前の処理インターバルで取得された前回値θTDpが次のステップで用いられる。
【0040】
次のステップでは指示トー角の今回値θTDから前回値θTDpが減算され、差dθTDが算出される(ステップS302)。算出された差dθTDは所定のしきい値dθTDthと比較される(ステップS303)。ここで所定のしきい値dθTRthは、指示トー角の変化速度が高いときに瞬間的に指示トー角と実トー角との偏差が大きくなることに伴うI制御による偏差の積分量のために過大なオーバーシュートとなるか否かを判定するものであり、変化が生じていても絶対量が小さければ後輪操舵制御への影響は少ないためにしきい値が設けられている。
【0041】
差dθTDが所定のしきい値dθTDthと同じか、または大きい場合(ステップS303:YES)、第3リセット部123は、リセットする旨の信号を積分器124に送出する(ステップS304)。積分器124は、かかる信号を受けて積分項ICをリセットする(ステップS305)。なお、差dθTDが所定のしきい値dθTDthより小さい場合は(ステップS303:NO)、リセットは実行されず、本プロセスは終了される。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
V 自動車
1 車体
3 前輪
5 後輪
10 後輪トー角制御装置
11 アクチュエータ
12 ECU
16 横加速度センサ
17 トー角センサ
119 指示トー角設定部
120 リセット制御器
121 第1リセット部
122 第2リセット部
123 第3リセット部
124 積分器
125 FB制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右後輪の指示トー角を設定する指示トー角設定手段と、前記車両の運動状態量を検出する状態量検出手段と、を備え、前記指示トー角と検出された実トー角との偏差に基づき操作量を算出し、この操作量に基づいて車両の左右後輪に設けられたアクチュエータを作動させることによってトー角を変化させる後輪操舵制御装置であって、
前記偏差を積分する積分手段と、
前記指示トー角、前記実トー角、もしくは前記偏差の変動に応じて前記積分手段の偏差の積分量を減少させる指令を行うリセット指令手段とを備えることを特徴とする後輪操舵制御装置。
【請求項2】
前記積分手段は、前記偏差の積分量をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の後輪操舵制御装置。
【請求項3】
前記状態量検出手段は、所定周期で前記偏差の正負符号を検出し、
前記リセット指令手段は、検出された前記偏差の今回値の正負符号と、この今回値の一周期前に検出された前回値の正負符号とが異なるとき、前記積分手段に前記指令を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後輪操舵制御装置。
【請求項4】
前記状態量検出手段は、所定周期で前記実トー角を検出し、
前記リセット指令手段は、検出された前記実トー角の今回値と、この今回値の一周期前に検出された前回値との差が所定のしきい値以上であるとき、前記積分手段に前記指令を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後輪操舵制御装置。
【請求項5】
前記指示トー角設定手段は、所定周期で前記指示トー角を設定し、
前記リセット指令手段は設定された前記指示トー角の今回値と、この今回値の一周期前に検出された前回値との差が所定のしきい値以上であるとき、前記積分手段に前記指令を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後輪操舵制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−254272(P2010−254272A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190213(P2009−190213)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】