説明

車両の後部車体構造

【課題】本発明は、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けた車両の後部車体構造において、後輪懸架装置から入力される入力荷重を確実に支持し、その荷重を分散伝達することで支持剛性を高めて、後輪懸架装置の取付け部の剛性を高めることができる車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】取付け部7近傍とリアピラー4を連結ガセット10で連結して、フロアパネル1と連結ガセット10をフロアガセット20で連結して、そのフロアガセット20を、取付け部7近傍において連結ガセット10と締結固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部車体構造に関し、特に、後輪懸架装置の一部を取付けるホイールハウス近傍の剛性向上を図る後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後輪懸架装置の一部が取付けられるホイールハウスの内倒れ等を抑制して、車体剛性のみならずサスペンション支持剛性を高め、操安性を向上する車体構造が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、バックドアの開口縁部とホイールハウス頂部とを、車両前後方向に延びる連結部材によって連結することにより、後輪懸架装置の支持剛性を高めると共に、バックドア開口の剛性低下を抑制する車体構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両上下方向に延びる補強部材を、ホイールハウスからフロアパネルにかけて設置することで、後輪懸架装置の取り付け剛性を高める車体構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−199855号公報
【特許文献2】特開平11−348826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の走行性能や、懸架装置形式、さらには車両のレイアウト等の要請により、後輪懸架装置の一部(例えばダンパー)を、ホイールハウスの頂部ではなく、車両前後方向の何れかにオフセットして、ホイールハウスの下部に取付ける場合がある。
【0007】
この場合には、ホイールハウスの頂部ではない下部位置に、後輪懸架装置の一部からの入力荷重が作用するため、従来の車体構造では、充分に入力荷重を分散して支持することができないという問題が生じる。
【0008】
前述の特許文献1の車体構造によると、連結部材の取付け位置(頂部)と後輪懸架装置の一部の取付け位置が大きく離間してしまうため、ホイールハウスの内倒れを十分に抑制することができない。
【0009】
また、前述の特許文献2の車体構造によると、単に、上下方向に延びる一本の補強部材で支持しているだけなので、入力荷重を分散させにくく、後輪懸架装置の支持剛性が不足するという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けた車両の後部車体構造において、後輪懸架装置から入力される入力荷重を確実に支持し、その荷重を分散伝達することで支持剛性を高めて、後輪懸架装置の取付け部の剛性を高めることができる車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の車両の後部車体構造は、車両の後輪を収容すべく、車室内方側に膨出形成したホイールハウスと、該ホイールハウスの頂部より下方位置で後輪懸架装置の一部を固定する取付け部とを備えた車両の後部車体構造であって、前記取付け部近傍と車両後方側の車体側壁又は車体後壁とを車両前後方向に延びて連結する連結ガセットと、前記取付け部の車幅方向内方且つ下方に位置する車体フロアと前記連結ガセットとを連結するフロアガセットとを備え、該フロアガセットを、前記取付け部近傍において前記連結ガセットと結合したものである。
【0012】
上記構成によれば、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けた車両の後部車体構造において、連結ガセットとフロアガセットとを設け、両ガセットを取付け部近傍において結合することにより、連結ガセットとフロアガセットに、それぞれ確実に後輪懸架装置からの入力荷重を、伝達することになる。
このため、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けたものであっても、連結ガセットとフロアガセットを通じて入力荷重を有効に車体側壁と車体フロア、又は車体後壁と車体フロアに分散して伝達することができるため、取付け部の支持剛性を高めることができる。
【0013】
なお、ここで、後輪懸架装置の一部とは、ダンパーやサスペンションリンク、コイルスプリング等が含まれる。特に、ダンパーの場合には、取付け部が後輪のバンプ位置からオフセットした位置に設定されることから、上下方向荷重のみならず、車両前後方向荷重、車幅方向荷重も入力されるが、こうしたあらゆる方向の入力荷重の分散をより効果的に行なうことができ、取付け部の支持剛性を高めることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記フロアガセットを、前記連結ガセットに対して、上下方向又は車幅方向に離間した少なくとも2つの連結点で連結し、該2つの連結点の間に前記取付け部が位置するように設定したものである。
上記構成によれば、連結ガセットとフロアガセットは、後輪懸架装置の取付け部を跨ぐように上下方向又は車幅方向に離間した、少なくとも2つの連結点により、連結されることになる。
このため、取付け部を挟むような形で、両ガセットが連結されて、後輪懸架装置の一部のあらゆる方向の入力荷重を、より効果的に連結ガセットとフロアガセットに伝達することができ、連結ガセットとフロアガセットによる取付け部の変位抑制をより良く行なうことができる。
よって、連結ガセットとフロアガセットによる取付け部の支持剛性向上をより高めることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記2つの連結点の連結方向が、互いに異なる方向となるように設定したものである。
上記構成によれば、2つの連結点の連結方向が異なるため、ある特定方向の入力荷重が作用しても、連結ガセットとフロアガセットの連結力が低下することはない。
よって、取付け部に、例えば、捩れ方向の入力荷重が作用しても、連結ガセットとフロアガセットの連結力が弱まることはなく、取付け部の支持剛性を、確実に高めることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記フロアガセットを、車体フロアと連結ガセットを連結するメインフロアガセットと、該メインフロアガセットと連結ガセットを連結するサブフロアガセットとで構成したものである。
上記構成によれば、フロアガセットをメインフロアガセットとサブフロアガセットの二部品で構成するため、サブフロアガセットに別の機能を持たせる場合など、フロアガセットが複雑な形状となる場合でも、プレス成形を各ガセットごとに行なうことができ、成形を容易に行なうことができ、生産コストを低減できる。
また、フロアガセットをメインフロアガセットとサブフロアガセットと別体に構成したことで、車種や仕向け地等により、サブフロアガセットの有無又は変更を容易に行なうことができ、様々な車種でメインフロアガセットの共通化を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記サブフロアガセットに、荷室フックを設けたものである。
上記構成によれば、サブフロアガセットに荷室フックを設けたことで、荷室フック専用のブラケットを設けることなく、サブフロアガセットを利用して荷室フックを設定できる。
また、メインフロアガセットと別体のサブフロアガセットに荷室フックを設けたことで、メインフロアガセットの形状を変更することなく、荷室形状等に合わせた最適な位置に荷室フックを設定することもできる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記連結ガセットの延設方向が、前記後輪懸架装置の一部の主たる荷重入力に略一致したものである。
上記構成によれば、後輪懸架装置の一部からの主たる荷重入力方向に対して、連結ガセットが突っ張るような位置関係で設置されることになる。
このため、後輪懸架装置の一部からの入力荷重を確実に連結ガセットに伝達することができ、取付け部の変位を確実に抑えることができる。
よって、車体剛性を向上できるとともに、取付け部の支持剛性を高めることができ、車両の操安性も向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けたものであっても、入力荷重を有効に車体側壁と車体フロア、又は車体後壁と車体フロアに分散して伝達することができ、取付け部の支持剛性を高めることができる。
【0020】
よって、ホイールハウスの下部に後輪懸架装置の一部の取付け部を設けた車両の後部車体構造において、後輪懸架装置から入力される入力荷重を確実に支持し、その荷重を分散伝達することで支持剛性を高めて、後輪懸架装置の取付け部の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1〜図8により、まず、第一実施形態について説明する。図1は本発明の後部車体構造を採用した車両の後部荷室をバックドア開口付近から見た後方斜視図、図2は後部荷室の側壁部を車両内方から見た側面図、図3は後部荷室の側壁部を車両後方から見た背面図である。なお、各図は、荷室内面を構成するトリム部材や、車両側部のアウタパネルを装着する前の状態を示している。
【0022】
この後部荷室Tの車体構造は、図1に示すように、車両前後方向且つ車幅方向に略水平面状に広がるフロアパネル1と、車両側部で車両前後方向且つ上下方向に延びるサイドパネル2と、そのサイドパネル2の下部で、車両内方側に膨出して内部に後輪(図示せず)を収容するホイールハウス3と、車両後端で車両後端側壁を構成して、上部を車両前方側に傾斜させたリアピラー4とを有している。なお、図1〜図3は、車両右側の側壁部を中心に図示しているが、車両左側も同様である。
【0023】
前述のフロアパネル1は、車両後端部から車両前方側にわたり、ほぼ平坦に形成しており、荷室フロアのみならず車室フロアも構成している。そして、その上方に図示しない後部シートを設置している。また、このフロアパネル1の側方下部には、図2又は図3に示すように、車両前後方向に延びるリアサイドフレーム5を接合している。
【0024】
前述のサイドパネル2には、図2に示すように、上下方向に延びるサイドピラー2aを設ける共に、その後方に開口2bを形成している。
【0025】
また、前述のホイールハウス3は、後輪形状に合わせて略半円状に車体内方に膨出したホイールハウスインナ31と、図3に示すように車体外方に膨出したホイールハウスアウタ32によって構成されており、その内部には、後輪と後輪懸架装置(以下、リアサスペンション装置)の一部を収容している。
【0026】
図2に示すように、このホイールハウスインナ31の頂部3aの車両後方側の下部には、リアサスペンション装置の一部である、リアサスペンションダンパー6(以下、リアダンパー)を取付ける取付け部7を設定している。このリアダンパー6は、封入オイルの流動抵抗により後輪からの衝撃を緩和する筒型ショックアブソーバ構造により構成しており、基本的には、後輪側に固定するシリンダと車体側に固定するピストンによって構成している。なお、図2では、シリンダ側の外筒61とピストン側のピストンロッド62のみを示している。
【0027】
また、フロアパネル1の下部には、コイルスプリング8を設置し、前述のリアサイドフレーム5によって、スプリングシート81を介してコイルスプリング8上部を支持している。
【0028】
なお、具体的には図示しないが、リアサスペンション装置は、複数のリンクで後輪を支持するマルチリンクサスペンションで構成している。
【0029】
前述のように、リアダンパー6の取付け部7をホイールハウスインナ31の車両後方側下部に設定しているのは、ホイールハウス3の頂部3a及び前部3bの突出量を抑えて、できるだけ車室空間を確保し、車室内の居住性を高めるためである。
【0030】
しかし、この位置にリアダンパー6の取付け部7を設定した場合には、図2に示すように、リアダンパー6の上部を、車両後方側に傾斜してレイアウトしなければならない。このように、リアダンパー6を車両後方側に傾斜してレイアウトした場合には、取付け部7にリアダンパー6から車両後方側に傾斜した上下方向の突き上げ荷重が入力されるため、ホイールハウス3には、頂部3aに取付けた場合と異なる方向の入力荷重が作用することになる。
【0031】
そこで、本実施形態では、その取付け部7近傍のホイールハウスインナ31と前述の車両前方側に傾斜させたリアピラー4との間に、上下方向且つ車両後方側傾斜して延びる連結ガセット10を配置し、取付け部7に作用する入力荷重をリアピラー4の車体内方(車両前方側)側面4aに伝達するように構成している。
【0032】
さらに、本実施形態では、連結ガセット10の下部とフロアパネル1との間に車幅方向内方側に延びるフロアガセット20をも配置し、連結ガセット10に対して入力される入力荷重を、フロアパネル1にも伝達して、取付け部7に作用する入力荷重の分散を図っている。
【0033】
次に、この連結ガセット10とフロアガセット20の詳細構造を、図4〜図8に示す各断面図及び平面図を利用して説明する。図4は図3のA−A線矢視断面図、図5は図3のB−B線矢視断面図、図6は図3のC−C線断面を含めた平面図、図7は図3のD−D線矢視断面図、図8は図2のE−E線矢視断面図である。
【0034】
前述の連結ガセット10は、図4に示すように、上部ガセット11と下部ガセット12の二部品を接合フランジ10aで接合することで構成している。このうち、上部ガセット11は、リアピラー4に接合される上部接合フランジ13を設けて、リアピラー4に強固に接合されている。
【0035】
このリアピラー4は、ピラーインナ41とピラーアウタ42とによって構成され、図示しない接合フランジで接合することで閉断面を形成し、連結ガセット10からの伝達荷重を確実に支持できるように構成している。
【0036】
また、下部ガセット12は、下部接合フランジ14を設けて、前述のホイールハウス3の取付け部7近傍の車両後方側下部に、強固に接合されている。この下部接合フランジ14は、図8にも示すように、ホイールハウスインナ31の上面31aの車幅方向の全面にわたって接合されている。
【0037】
また、この連結ガセット10の延設傾斜角度αは、途中湾曲しながらも、図4に示すように、リアダンパー6の傾斜角度βと略一致するように設定している。これにより、連結ガセット10は、リアダンパー6の主な入力荷重を、直接且つ確実にリアピラー4に伝達できる。
【0038】
これら連結ガセット10の上部ガセット11と下部ガセット12は、図2に示すように、外方端にサイドパネル2に接合される接合フランジ11a,12aと、内方端に車両前方側に折れ曲がる折り曲げフランジ11b,12bを形成したことで、上下方向の剛性を高めて、確実にリアダンパー6からの上下方向の入力荷重をリアピラー4に伝達するように構成している。また、接合フランジ11a,12aで、共にサイドパネル2に接合したことで、サイドパネル2に対しても、リアダンパー6からの入力荷重を伝達でき、取付け部7に作用する入力荷重を有効に分散している。
【0039】
また、下部ガセット12の中間部には、図1に示すように、上下2つの開口15,16を設けて、下部ガセット12の軽量化も図っている。
【0040】
一方、前述のフロアガセット20は、図3に示すようなフロアパネル1と連結ガセット10の下部(下部ガセット12)とを連結する三ヶ月状のメインフロアガセット21と、このメインフロアガセット21と連結ガセット10の中間部とを連結する略L字状のサブフロアガセット22との二部品を接合することによって構成している。
【0041】
このうち、メインフロアガセット21には、下端部に車幅方向に延びるフロア締結フランジ23と、上端部に上下方向に延びるガセット締結フランジ24を設け、それぞれを締結部材(ウェルドナットWと締結ボルトY、及びスタッドボルトXと締結ナットZ)によって、フロアパネル1と連結ガセット10に強固に締結固定している(図5参照)。特にフロア締結フランジ23については、図3に示すように、リアサイドフレーム5内に締結部材(ウェルドナットWと締結ボルトY)が位置するように締結している。
【0042】
また、サブフロアガセット22は、下端部にメインフロアガセット21に接合されるガセット接合フランジ25と、車両外方側に連結ガセット10の中間部に締結固定されるガセット締結フランジ26とを設け、ガセット接合フランジ25でメインフロアガセット21と一体となるように接合されて、ガセット締結フランジ26によって、連結ガセット10中間部に締結部材(スタッドボルトVと締結ナットU)を介して強固に締結固定されている(図4参照)。
【0043】
なお、フロアガセット20の組付けは、予めメインフロアガセット21とサブフロアガセット22をガセット接合フランジ25で接合した後に、一体となったメインフロアガセット21とサブフロアガセット22(フロアガセット20)を、フロアパネル1と連結ガセット10に、それぞれ締結部材で締結固定することで行なう。
【0044】
前述のメインフロアガセット21は、図3に示すように、上縁部21aを凹むように湾曲形成して、荷室T内への突出量(フロアパネル1上方への突出量)をできるだけ抑えるように構成しており、この実施形態のように、ホイールハウスインナ31よりもメインフロアガセット21の方が車幅方向内方側に大きく突出するものであったしても、荷室Tへの影響を極力少なくできる。
【0045】
また、このメインフロアガセット21の上縁部21aにも、図6に示すように、車両前方側に折れ曲がる折り曲げフランジ21bを形成することで、メインフロアガセット21の剛性を高め、連結ガセット10側からの荷重(ホイールハウスの内倒れ方向の荷重)を適切にフロアパネル1に伝達できるように構成している。
【0046】
前述のサブフロアガセット22は、図3に示すように、その中央に、荷室T内に荷物を固定するカーゴフック50を設置している。このカーゴフック50は、図7に示すように、矩形のベースケース51とベースケース51下端に回転支点を備えたU字状のフック部材52とを備え、背面の位置決めボス53と締結部材54(図7では、ウェルドナット54aのみを開示)によって、サブフロアガセット22に締結固定されている。
【0047】
また、このサブフロアガセット22には、図3に示すように、ガセット接合フランジ25とガセット締結フランジ26との間にそれぞれ折り曲げ部22a,22bを形成している。この折り曲げ部22a,22bを設けることで、サブフロアガセット22自体の剛性を高め、連結ガセット10の中間部とメインフロアガセット21の間の結合強度を高めている。
【0048】
このように、構成されるフロアガセット20と連結ガセット10は、図3等に示すように複数の締結ポイントによって締結される。具体的には、上下方向に離間した下部のメインフロアガセット21の締結部二点S1,S2(図5参照)と、上部のサブフロアガセット22の締結部一点M1との三点に締結ポイントを設定している。
【0049】
これら各締結部S1,S2,M1は、図2に示すように、上下方向において、リアダンパー6の取付け部7を跨ぐような位置関係に設定している(締結部S1と締結部M1の高さ位置を一点鎖線Hで示す)。これにより、取付け部7に作用する上下方向荷重に対して、上下方向に長い支持スパンを持って、支持剛性を確保することができ、フロアガセット20と連結ガセット10とに適切に入力荷重を伝達することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、取付け部7を基準として各締結部S1,S2,M1の支持スパンを規定したが、必ずしも、取付け部7を基準としなくてもよく、上下方向に長い支持スパンであれば、同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、この各締結部S1,S2,M1は、図6に示すように、車幅方向においても、リアダンパー6の取付け部7を跨ぐような位置関係に設定している(締結部S1と締結部M1の車幅方向位置を一点鎖線Lで示す)。これにより、取付け部7に作用する車幅方向の荷重(内倒れ荷重)に対しても、車幅方向に長い支持スパンを持って支持剛性を確保でき、フロアガセット20と連結ガセット10とに適切に入力荷重を伝達することができる。
【0052】
さらに、この各締結部S1,S2,M1の締結方向についても、サブフロアガセット22の締結部M1が車両前後方向軸Lから第一角度γ(約15°)程、傾斜して締結されるのに対し、メインフロアガセット21の締結部S1が車両前後方向軸Lから第二角度δ(約55°)程、傾斜して締結されるように設定している。これにより、捩れ方向の荷重など特定方向の荷重入力があった場合でも、締結部材の締結力が弱まることがなく、確実に取付け部7の支持剛性を確保することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、水平方向の締結方向について、各締結部S1,S2,M1とも傾斜角なく締結しているが、締結部材の締結力をさらに確実に確保するため、水平方向の締結方向についても一方を傾斜角を持って締結するか、又は双方を異なる傾斜角で締結するようにしてもよい。
【0054】
次に、以上のように構成した本実施形態の作用効果について詳述する。
この実施形態の後部車体構造は、後輪を収容すべく、車室内方側に膨出形成したホイールハウス3と、そのホイールハウス3の頂部3aより下方位置でリアダンパー6を固定する取付け部7とを備えた車両の後部車体構造であって、その取付け部7近傍と車両後方側のリアピラー4とを連結する連結ガセット10と、フロアパネル1と連結ガセット10とを連結するフロアガセット20とを備え、そのフロアガセット20を、取付け部7近傍において連結ガセット10と締結固定したものである。
【0055】
上記構成によれば、連結ガセット10とフロアガセット20とを取付け部7近傍において締結することで、連結ガセット10とフロアガセット20に、リアダンパー6からの入力荷重をそれぞれ確実に伝達することになる。
このため、ホイールハウス3の下部にリアダンパー6の取付け部7を設けたものであっても、連結ガセット10とフロアガセット20を通じて入力荷重を適切にリアピラー4とフロアパネル1、さらにはサイドパネル2に分散して伝達することができるため、取付け部7の支持剛性を高めることができる。
【0056】
よって、ホイールハウス3の下部にリアダンパー6の取付け部7を設けた車両の後部車体構造において、リアダンパー6から入力される入力荷重を確実に支持し、その入力荷重を分散伝達することで支持剛性を高めて、リアダンパー6の取付け部7の剛性を高めることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、リアダンパー6の取付け部7で説明したが、本発明のリアサスペンション装置の取付け部は、これに限定されるものではなく、サスペンションリンクの取付け部や、コイルスプリングの取付け部であってもよい。
また、ホイールハウス3への連結ガセット10の接合位置においても、本実施形態のように車両後方側に限定されるものではなく、取付け部7の近傍であれば、取付け部7の車両前方側であってもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、連結ガセット10とフロアガセット20を締結部材によって結合したが、本発明の結合方法は、これに限定されるものではなく、例えば、溶接固定や嵌合固定等であってもよい。
【0059】
また、この実施形態では、フロアガセット20を、連結ガセット10に対して、上下方向且つ車幅方向に離間した少なくとも2つの締結部S1,M1で連結し、その2つの締結部S1,M1の間にリアダンパー6の取付け部7が位置するように設定している。
このため、連結ガセット10とフロアガセット20は、リアダンパー6の取付け部7を跨ぐように上下方向且つ車幅方向に離間した、少なくとも2つの締結部S1,M1により、連結されることになる。
よって、リアダンパー6からのあらゆる方向の入力荷重を、より効果的に連結ガセット10とフロアガセット20に伝達することができ、連結ガセット10とフロアガセット20による取付け部7の変位抑制をより良く行なうことができ、連結ガセット10とフロアガセット20による取付け部7の支持剛性をより高めることができる。
なお、本実施形態では、上下方向及び車幅方向、いずれにも離間して締結部S1,M1等を設定したが、いずれか一方向のみで離間するように設定してもよい。
【0060】
また、この実施形態では、メインフロアガセット21の締結部S1とサブフロアガセット22の締結部M1の締結方向を、互いに異なる方向に設定している。
これにより、連結ガセット10とフロアガセット20の2つの締結部S1,M1の締結方向が異なるため、ある特定の方向から入力荷重が作用しても、一気に、連結ガセット10とフロアガセット20の締結力が低下することはない。
よって、取付け部7に、捩れ方向の入力荷重が作用しても、連結ガセット10とフロアガセット20の締結力が弱まることはなく、確実に、取付け部7の支持剛性を高めることができる。
【0061】
また、この実施形態では、フロアガセット20を、フロアパネル1と連結ガセット10を連結するメインフロアガセット21と、そのメインフロアガセット21と連結ガセット10を連結するサブフロアガセット22とで構成している。
これにより、フロアガセット20がメインフロアガセット21とサブフロアガセット22の二部品で構成されるため、サブフロアガセット22をカーゴフックブラケットとしても機能を持たせる場合に、プレス成形を各ガセットごとに行なうことができ、成形を容易に行なえ生産コストを低減できる。
また、フロアガセット20をメインフロアガセット21とサブフロアガセット22と別体に構成したことで、車種や仕向け地等により、サブフロアガセット22の有無又は変更を、容易に行なうことができ、様々な車種で、メインフロアガセット21の共通化を図ることができる。
【0062】
例えば、図9に示す他の実施形態のように、サブフロアガセット22にカーゴフックを設けないタイプの後部車体構造を採用する場合であっても、メインフロアガセット21の「型」形状を変更することなく、同一形状のメインフロアガセット21をそのまま使用することができ、部品の共通化を図ることができる。
【0063】
なお、この図9は、後述するように、図1に対応する後方斜視図であり、第一実施形態とはサブフロアガセット22のみが異なるだけである。
【0064】
また、第一実施形態では、サブフロアガセット22にカーゴフック50を設けている。
これにより、カーゴフック専用のブラケットを設けることなく、サブフロアガセット22を利用して、荷室T内にカーゴフック50を設定することができる。
また、メインフロアガセット21とは別体のサブフロアガセット22にカーゴフック50を設けたため、メインフロアガセット21の形状を変更することなく、荷室T形状等に合わせた最適な位置にカーゴフック50を設定することもできる。
【0065】
また、この実施形態では、連結ガセット10の延設傾斜角度αを、リアダンパー6傾斜角度βと、略一致するように設定している。
これにより、リアダンパー6の主な荷重入力方向に対して、連結ガセット10が突っ張るような位置関係で設置されることになり、リアダンパー6の主な入力荷重を確実に連結ガセット10に伝達することができ、取付け部7の変位を確実に抑えることができる。
よって、車体剛性を向上できるとともに、取付け部7の支持剛性を高めることができ、車両の操安性も向上することができる。
【0066】
さらに、この実施形態では、連結ガセット10とフロアガセット20を、共に鉛直方向に延びるように設定している(図2参照)。
これにより、連結ガセット10とフロアガセット20の間の締結部S1,S2,M1に、屈曲等による応力集中も生じることなく、安定して且つ確実に取付け部7からの入力荷重を、リアピラー4やフロアパネル1等に分散することができる。
【0067】
次に、図9、図10に示す他の実施形態について説明する。図9が前述したサブフロアガセット22からカーゴフックを除去した第二実施形態についての後方斜視図、図10がサブフロアガセット22の締結部も二点とした第三実施形態についての後方斜視図である。なお、これらの図は、前述の図1と対応する後方斜視図であり、同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図9に示す第二実施形態は、サブフロアガセット122からカーゴフックを除去してフロアガセット20を構成したものである。
【0069】
この実施形態によれば、サブフロアガセット122に荷物を固定することがないため、荷物を固定した際の荷重が作用せず、常に一定の支持剛性が得られる。よって、取付け部7の支持剛性が荷物の有無によって変化することがなく、常時安定した車体剛性とサスペンション性能を得ることができる。
【0070】
一方、図10に示す第三実施形態は、サブフロアガセット222の締結部をM1,M2の二点に増加させて、サブフロアガセット222の締結部M1,M2の締結強度を高めたものである。
【0071】
フロアガセット20を設ける構造では、図3に示すように、組付け性等の問題により、サブフロアガセット22の締結部M1に横長の切欠部100を設ける必要があり、必然的に締結力が低下する。
しかし、本実施形態のように、サブフロアガセット222に締結部M1,M2を2点設定することで、こうした切欠部100による剛性低下を補うことができ、サブフロアガセット222の締結部M1,M2の締結強度を高めて、取付け部7の支持剛性をさらに高めることができる。
【0072】
なお、その他の作用効果については、いずれの実施形態も、前述の第一実施形態と同様である。
【0073】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の後輪懸架装置の一部は、リアダンパー6に対応し、
以下、同様に、
車体フロアは、フロアパネル1に対応し、
連結点は、締結部S1,S2,M1,M2に対応し、
荷室フックは、カーゴフック50に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両の後部車体構造に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第一実施形態の車両後部をバックドア開口近傍から見た後方斜視図。
【図2】後部荷室の側壁部を車両内方から見た側面図。
【図3】後部荷室の側壁部を車両後方から見た背面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】図3のB−B線矢視断面図。
【図6】図3のC−C線断面を含めた平面図。
【図7】図3のD−D線矢視断面図。
【図8】図2のE−E線矢視断面図。
【図9】図1に対応する第二実施形態の後方斜視図。
【図10】図1に対応する第三実施形態の後方斜視図。
【符号の説明】
【0075】
1…フロアパネル(車体フロア)
3…ホイールハウス
3a…頂部
4…リアピラー
6…リアダンパー(後輪懸架装置の一部)
7…取付け部
10…連結ガセット
20…フロアガセット
21…メインフロアガセット
22,122,222…サブフロアガセット
50…カーゴフック(荷室フック)
S1,S2,M1,M2…締結部(連結点)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後輪を収容すべく、車室内方側に膨出形成したホイールハウスと、該ホイールハウスの頂部より下方位置で後輪懸架装置の一部を固定する取付け部とを備えた車両の後部車体構造であって、
前記取付け部近傍と車両後方側の車体側壁又は車体後壁とを車両前後方向に延びて連結する連結ガセットと、
前記取付け部の車幅方向内方且つ下方に位置する車体フロアと前記連結ガセットとを連結するフロアガセットとを備え、
該フロアガセットを、前記取付け部近傍において前記連結ガセットと結合した
車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記フロアガセットを、前記連結ガセットに対して、上下方向又は車幅方向に離間した少なくとも2つの連結点で連結し、
該2つの連結点の間に前記取付け部が位置するように設定した
請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記2つの連結点の連結方向が、互いに異なる方向となるように設定した
請求項2記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記フロアガセットを、車体フロアと連結ガセットを連結するメインフロアガセットと、該メインフロアガセットと連結ガセットを連結するサブフロアガセットとで構成した
請求項2又は3記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記サブフロアガセットに、荷室フックを設けた
請求項4記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
前記連結ガセットの延設方向が、前記後輪懸架装置の一部の主たる荷重入力方向に略一致した
請求項1〜5いずれか一項記載の車両の後部車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−161152(P2007−161152A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361876(P2005−361876)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】