説明

車両の後部車体構造

【課題】本発明は、後輪を内部に収容するホイールハウスを備えた車両の後部車体構造において、ホイールハウス下端縁部の剛性を高め、車体の捻れ剛性を高め、車両の操安性を向上する車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの下方に連結プレート部材5を配置して、連結プレート部材5の上端に上方に突出する突出接合フランジ5aを形成し、この突出接合フランジ5aをホイールハウスインナ2の後方下端縁部2bに接合することで、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bを補強している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部車体構造に関し、特に、車両後部に設けられるホイールハウスの下端縁部の剛性向上を図る車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後輪等を内部に収容するホイールハウスには、後輪懸架装置の一部が取付けられることから、強固なリアサイドフレームを利用して補強を行なうことが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、ホイールハウス中央の内方下端部とリアサイドフレームとの間に補強パネル部材を設け、ホイールハウスの内倒れ等を防止する構造が提案されている。
【0004】
もっとも、この特許文献1のホイールハウス構造では、その下端縁部を外方端部で車両外側端に位置するサイドパネルに接合しているだけに過ぎない。
【特許文献1】特開2002−205665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両の操安性を向上するため、車体の捻り剛性を高めることが要求されるようになっている。
【0006】
この観点から、従来のホイールハウス構造を見てみると、ホイールハウスの下端縁部の内方端部と外方端部とで、それぞれリアサイドフレームとサイドパネルに固定されているものの、車幅方向に延びる下端縁部では、全く車体に固定されていないため、ホイールハウスの下端縁部が容易に変形してしまい、車体のコーナー部に位置するホイールハウス部分で捻れが生じ、車体の捻れ剛性を高めることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、後輪を内部に収容するホイールハウスを備えた車両の後部車体構造において、ホイールハウス下端縁部の剛性を高め、車体の捻れ剛性を高め、車両の操安性を向上する車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の後部車体構造は、車両前後方向に延びるサイドフレームと、該サイドフレームの車幅方向外方位置に配置され車両内方側に膨出するホイールハウスと、該ホイールハウスの車幅方向外方位置に配置され車体側壁を形成するサイドパネルとを備える車両の後部車体構造であって、前記ホイールハウスの下端には、車幅方向に延びる下端縁部を有し、前記サイドフレームと前記サイドパネルとの間に、車幅方向に延びて該サイドフレームと該サイドパネルとを連結するプレート部材を設け、該プレート部材を前記ホイールハウスの下端縁部に結合したものである。
上記構成によれば、車幅方向に延びてサイドフレームとサイドパネルを連結するプレート部材で、車幅方向に延びるホイールハウスの下端縁部を補強することになる。
このため、ホイールハウスの車幅方向に延びる下端縁部は、プレート部材によって、車体側部材に固定されることになり、高い剛性を得ることができる。
特に、車両後方側の下端縁部をプレート部材で固定した場合には、車体のコーナー部である外方後端部のホイールハウス部分で捻れが生じないため、車体の捻れ剛性を確実に向上することができる。
【0009】
また、車両の側突に際しても、ホイールハウスの下端縁部が車幅方向に延びるプレート部材で固定されているため、ホイールハウス下端縁部の車幅方向剛性が高まり、車両の側突性能も高めることができる。
【0010】
なお、プレート部材は、車幅方向に延びてサイドフレームとサイドパネルとを連結するものであれば、プレート形状やプレート向き等について限定されない。
また、プレート部材とホイールハウス下端縁部の結合構造も、溶接固定が望ましいが、締結固定や嵌合固定であっても良い。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記ホイールハウスの下端縁部の近傍に、後輪を懸架する後輪懸架装置の一部を取付ける取付け部を設けたものである。
上記構成によれば、後輪懸架装置の一部の取付け部を、車両のレイアウト要請や懸架装置の形式により、ホイールハウスの下端縁部の近傍、例えば、車両後方側端部等に設けた場合でも、ホイールハウス下端縁部が車幅方向に延びるプレート部材で補強されているため、取付け部に作用する後輪懸架装置の一部からの入力荷重は、サイドフレームやサイドパネルに分散伝達されて、ホイールハウスが容易に変位することがなくなる。
よって、後輪懸架装置の一部の取付け部が変位することによる車両の操安性の悪化を防止することができる。
なお、この後輪懸架装置の一部としては、ダンパーやコイルスプリング、サスペンションリンク等が考えられる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記プレート部材と前記サイドフレームとの間の結合を、該サイドフレームの側面と下面で行なったものである。
上記構成によれば、プレート部材は、サイドフレームの側面と下面の二面に対して結合される。
このため、荷重の集中しやすいプレート部材とサイドフレームの結合部の結合強度を高めることができ、プレート部材に入力される荷重をサイドフレームの側面と下面の二面に分散することができる。
よって、プレート部材の補強機能をさらに高めることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記プレート部材を、メインプレートとサブブラケットで構成し、該サブブラケットによってサイドフレームの側面と下面に結合したものである。
上記構成によれば、プレート部材は、メインプレートとサブブラケットの二部品で構成され、このうちサブブラケットによってサイドフレームの側面と下面に結合されることになる。
よって、サイドフレームの側面と下面、それにサイドパネルとホイールハウス下端縁部に結合されることで複雑な形状とならざるを得ないプレート部材を二部品で構成することができ、プレス成形性を向上して、プレート部材の成形性を確保することができる。また、サブブラケットでサイドフレームの二面に接合することで、プレート部材とサイドフレームの結合強度を高めることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記プレート部材の車両前後方向位置に、水平面状に延びるフロアパネルを設け、該フロアパネルを前記プレート部材に結合したものである。
上記構成によれば、プレート部材は、車両前後方向位置に位置するフロアパネルに対しても結合されることになる。
このため、プレート部材は、フロアパネルにも入力荷重を分散して伝達できるため、さらにプレート部材による剛性向上を図ることができる。
よって、プレート部材の補強機能をさらに高めることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記プレート部材のサイドパネル側端部を、前記サイドパネルと前記フロアパネルで挟持して結合したものである。
上記構成によれば、プレート部材のサイドパネル側端部が、サイドパネルとフロアパネルで挟持されて結合されることで、強固に結合されることになる。
このため、荷重の集中しやすいプレート部材のサイドパネルの結合部の結合強度を高めることができ、プレート部材の剛性をより高めることができる。
よって、プレート部材の補強機能をさらに高めることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記プレート部材の上下方向高さを、前記サイドフレームの上下方向高さと略一致するように設定したものである。
上記構成によれば、プレート部材の上下方向高さがサイドフレームの上下方向高さに略一致するため、プレート部材の車両下方への突出を抑えつつ、プレート部材の剛性を最大限得ることができる。
また、車両の側突に際しても、高さ位置が一致することから、プレート部材がサイドフレームに上下方向均等に当接して変形するため、プレート部材によって、有効に衝突荷重を吸収できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ホイールハウスの車幅方向に延びる下端縁部は、プレート部材によって、車体側部材に固定されることになり、高い剛性を得ることができる。
【0018】
よって、後輪を内部に収容するホイールハウスを備えた車両の後部車体構造において、ホイールハウス下端縁部の剛性を高め、車体の捻れ剛性を高め、車両の操安性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1〜図11により、第一実施形態について説明する。図1は車両後部のホイールハウス内部を前方斜め下方から見た下方斜視図、図2は車両後部のホイールハウス近傍をサイドアウタパネルを透過させた状態での側面図、図3は図2のA−A線で切断した状態の車両前方からの正面図である。なお、図面では、車両の右側側部のみを示しているが、車両の左側側部も同様に構成している。
【0020】
この実施形態の車両の後部車体構造は、図1に示すように、車両後部で車両前後方向に延びる一対のリアサイドフレーム1(図面では右側のみ開示)と、その車幅方向外方側で後輪(図示せず)形状に応じて半円状に車両内方側に膨出形成されたホイールハウスインナ2と、図3に示すように、さらに車幅方向外方側で上下方向に延びて、車体側壁を形成し車両外方側に膨出形成されたホイールハウスアウタ3aを下部に一体成形したサイドパネル3と、リアサイドフレーム1の上方で車幅方向内方側に向かって水平面状に拡がるメインフロアパネル4と、リアサイドフレーム1とサイドパネル3の間で車幅方向に延びてリアサイドフレーム1とサイドパネル3とを連結する連結プレート部材5とを備える。
【0021】
その他、図2、図3に示すように、ホイールハウスインナ2と車両後方のリアピラー6との間には、車内側で上下方向に延びる連結ガセット7を設置して、その下部には、連結ガセット7とメインフロアパネル4を連結するフロアガセット8を設置している。また、後述するようにホイールハウスインナ2の車両後方側には、水平面状に拡がるサイドフロアパネル9を設置している(図6参照)。
【0022】
前述のリアサイドフレーム1は、車両前後方向に延びる逆ハット断面のメンバー部材で形成され、車両後部の車体構造の主骨格を構成して、車両後部の剛性を高めている。
【0023】
前述のホイールハウスインナ2は、内部に後輪と後輪懸架装置S(以下、リアサスペンション装置。図1、2で破線で示す。)を収容するように、車両内方側に膨出するように形成され、このうち、車両後方側位置には、リアサスペンション装置Sの一部であるダンパー10(以下、リアダンパー)の上部を取り付けるための取付け部11を設けている。
【0024】
この取付け部11は、ホイールハウスインナ2の車両後方側の一部に下方側に窪む平坦な凹み部2aを形成し、その凹み部2aの中央にリアダンパー10の上部を差し込み固定する固定穴11aを形成することで構成している(図4参照)。
【0025】
この取付け部11を、ホイールハウスインナ2の車両後方側に設けているのは、ホイールハウスインナ2の頂部や車両前方で、リアダンパー10が上方に突出するのを防いで、車室空間をできるだけ確保し、車室内の居住性を向上するためである。
【0026】
しかし、この取付け部11を車両後方側に設けたため、ホイールハウスインナ2の取付け部11には、リアダンパー10からの入力荷重が車両後方側に傾斜して入力されることになり、ホイールハウスインナ2には、従来と異なった入力荷重が生じることになる。
【0027】
このため、本実施形態では、メインフロアパネル4上方の車内側に、前述のように連結ガゼット7とフロアガセット8を設けることで、取付け部11に作用する入力荷重をリアピラー6とメインフロアパネル4等に分散伝達して、取付け部11に作用する入力荷重を緩和することでホイールハウスインナ2を補強している。
【0028】
また、メインフロアパネル4下方では、前述の連結プレート部材5を設けることで、補強を行なっている。具体的には、図3に示すように、ホイールハウスインナ2の後方の下端縁部2bの下方に連結プレート部材5を配置して、連結プレート部材5の上端に上方に突出する突出接合フランジ5aを形成し、この突出接合フランジ5aをホイールハウスインナ2の下端縁部2bに接合することで、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bを補強している。
【0029】
ところで、リアダンパー10の取付け部の設定が通常のようにホイールハウスの頂部であったとしても、車体の捻れ剛性を向上して車両の操安性を向上したいという要求がある。この要求に応えるためには、車体のコーナー部に位置するホイールハウスインナ2の下端縁部2bの剛性を高め、ホイールハウス部分での捻れを抑制することが望まれる。こうした要求に対しても、本実施形態のように連結プレート部材5を設けることホイールハウス部分での捻れを抑制することができる。
【0030】
この連結プレート部材付近の詳細な車体構造について、図4〜図11により説明する。図4は連結プレート部材付近の車体構造の車両前方側からの詳細斜視図、図5は連結プレート部材付近の車体構造の車両後方側からの下方詳細斜視図、図6は別の角度からの下方詳細斜視図、図7は車両後方部のフロアパネルを除去してリアサイドフレームを透過させた状態での車幅方向内方側からの上方斜視図、図8はリアサイドフレームを透過させた状態での車幅方向内方側からの下方斜視図、図9は図2のB−B線矢視断面図、図10は図3のC−C線矢視断面図、図11は図3のD−D線矢視断面図である。
【0031】
図4、図5に示すように、連結プレート部材5は、車両前方側に位置する平板状の横長略台形形状のプレート体51と、その車両後方側に位置する三片部を有する異形のブラケット体52の二部品で構成している。
【0032】
まず、プレート体51は、図7に示すように、その外端部にサイドパネル接合フランジ51aを車両後方側に折り曲げて形成して、下端部に折り曲げフランジ51bを形成し、さらに上端部には、前述した突出接合フランジ5aを形成している。このうち、サイドパネル接合フランジ51aを、サイドパネル3の車両内方側面に接合することで、プレート体51をサイドパネル3に結合している。
【0033】
また、このプレート体51は、折り曲げフランジ51bを車幅方向に延びるように形成したことで、車幅方向の剛性を高めている。
【0034】
一方、ブラケット体52は、図5に示すように、内端部にフレーム側面接合フランジ52aを車両後方側に折り曲げ形成して、下端部にフレーム下面接合フランジ52bを車両後方側に折り曲げ形成し、さらに、上端部にフロア接合フランジ52cを車両後方側に折り曲げ形成することで三片部を構成している。このうち、フレーム側面接合フランジ52aとフレーム下面接合フランジ52bをリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bに接合することで、ブラケット体52をリアサイドフレーム1に結合している。
【0035】
このように形成されたブラケット体52とプレート体51を二部品重ね合わせて接合することで、連結プレート部材5を構成して、リアサイドフレーム1とサイドパネル3を車幅方向に延びて連結するように構成している。
【0036】
そして、この車幅方向に延びる連結プレート部材5を、前述の突出接合フランジ5aを介して、ホイールハウスインナ2の後方の下端縁部2bに接合固定することで、ホイールハウスの下端縁部2aの補強を行っている。
【0037】
また、連結プレート部材5は、図3に示すように、その上下方向高さhを、リアサイドフレーム1の上下方向高さHと略一致する高さに設定している。これにより、連結プレート部材5をリアサイドフレーム1より下方に突出させることなく、連結プレート部材5の剛性を最大限確保している。
【0038】
また、連結プレート部材5の車両後方位置には、図6に示すように、水平面状に拡がるサイドフロアパネル9を設けている。このサイドフロアパネル9は、ホイールハウスインナ2の車両後方位置のフロア面を構成するように、ホイールハウスインナ2よりも車両後方位置に設置されている。またその前端部には下方に折り曲げた前端接合フランジ9aを形成し、その外端部には下方に折り曲げた外端接合フランジ9bを形成している。
【0039】
前述の連結プレート部材5のブラケット体52は、図6に示すように、サイドフロアパネル9にも、フロア接合フランジ52cを介して接合されている。このため、連結プレート部材5は、より強固に固定され、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの補強を行うことができる。また、リアダンパー10の取付け部11から入力されたサスペンション荷重を、リアサイドフレーム1とサイドパネル3だけでなく、サイドフロアパネル9にも分散して伝達することができる。
【0040】
また、この連結プレート部材5の各接合部分は、より接合強度を高めるように、以下のように構成されている。
まず、連結プレート部材5とリアサイドフレーム1との接合部分では、図7、図8に示すように、フレーム側面接合フランジ52aとフレーム下面接合フランジ52bでリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bの二面に接合している。これにより、リアサイドフレーム1の車外側側面1aだけでなく、下面1bにも接合されるため、荷重の集中しやすいリアサイドフレーム1との結合部分において、上下方向の接合強度が高まり、確実に連結プレート部材5を接合固定しておくことができる。
【0041】
また、各接合フランジ52a,52bの接合エリア(ハッチングで示す)も、できるだけ広い範囲でリアサイドフレーム1と接合されるように、フレーム側面接合フランジ52aでは、上下及び車両前後方向に広い接合エリアを、また、フレーム下面接合フランジ52bでは、車両前後方向に長い接合エリアを設定している。これにより、さらに、リアサイドフレーム1に対する連結プレート部材5の接合強度を高めることができる。
【0042】
一方、連結プレート部材5とサイドパネル3との接合部分では、図9に示すように、サイドパネル接合フランジ51aを、サイドフロアパネル9の外端接合フランジ9bとサイドパネル3とで挟持した状態で接合している。これにより、荷重の集中しやすいサイドパネル3の接合部分において、連結プレート部材5のサイドパネル接合フランジ51aが、その両面をサイドフロアパネル9とサイドパネル3とによって強固に接合されることになり、確実に連結プレート部材5が接合固定されることになる。
よって、サイドパネルとの接合部分においても、連結プレート部材を強固に接合固定しておくことができる。
【0043】
加えて、連結プレート部材5とサイドフロアパネル9との結合部分においても、接合強度を高める構成を採用している。具体的には、車幅方向内方位置において、図10に示すように、ブラケット体52のフロア接合フランジ52cをサイドフロアパネル9に接合して、車幅方向外方位置においては、図11に示すように、サイドフロアパネル9の前端接合フランジ9aをプレート体51に接合することで、連結プレート部材のほぼ全域で連結プレート部材5をサイドフロアパネル9に接合している。これにより、連結プレート部材5は、サイドフロアパネル9に対しても確実に接合されることになり、より確実にその位置を固定することができる。
【0044】
なお、図10に示すように、サイドフロアパネル9の前端部には、上方に折り曲げ形成した前端上方接合フランジ9cを形成している。この前端上方接合フランジ9cは、前述の前端接合フランジ9aとは、逆方向に折り曲げ形成することにより構成している。
【0045】
この前端上方接合フランジ9cについても、ホイールハウスインナ2の後方下端縁部2bに接合している。これにより、ホイールハウスインナ2の車幅方向に延びる下端縁部2bは、サイドフロアパネル9にも直接接合されることになり、よりホイールハウスの下端縁部2bの剛性を高めることができる。
【0046】
なお、図示はしないが、本実施形態のホイールハウスインナ2も、ホイールハウスインナ2の車幅方向内方端を、リアサイドフレーム1に接合してホイールハウスの剛性を確保している。
【0047】
次に、以上のように構成した本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の車両の後部車体構造は、車両前後方向に延びるリアサイドフレーム1と、そのリアサイドフレーム1の車幅方向外方位置に配置され車両内方側に膨出するホイールハウスインナ2と、そのホイールハウスインナ2の車幅方向外方位置に配置され車体側壁を形成するサイドパネル3とを備える車体構造であって、ホイールハウスインナ2の下端に車幅方向に延びる下端縁部2bを有し、リアサイドフレーム1とサイドパネル3との間に、車幅方向に延びてリアサイドフレーム1とサイドパネル3とを連結する連結プレート部材5を設け、その連結プレート部材5をホイールハウスインナ2の下端縁部2bに接合したものである。
【0048】
この構成によれば、車幅方向に延びてリアサイドフレーム1とサイドパネル3を連結する連結プレート部材5で、車幅方向に延びるホイールハウスインナ2の下端縁部2bを補強することになる。
このため、ホイールハウスインナ2の車幅方向に延びる下端縁部2bは、連結プレート部材5によって、車体側部材に固定されることになり、高い剛性を得ることができる。
よって、後輪を内部に収容するホイールハウスを備えた車両の後部車体構造において、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの剛性を高め、車体の捻れ剛性を高め、車両の操安性を向上することができる。
特に、車両後方側の下端縁部2bを連結プレート部材5で固定したことで、車体のコーナー部である外方後端部のホイールハウス部分で捻れが生じないため、車体の捻れ剛性を確実に向上することができる。
【0049】
また、車両の側突の際にも、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bが車幅方向に延びる連結プレート部材5で固定されているため、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの車幅方向剛性が高まり、車両の側突性能も高めることができる。
【0050】
なお、本実施形態の連結プレート部材5は、上下方向に延びるように設置されているが、車幅方向に延びてリアサイドフレーム1とサイドパネル3とを連結するものであれば、例えば、連結プレート部材を水平方向に延びるように設置してもよい。
また、本実施形態の連結プレート部材5は、ホイールハウスの車両後方側に設置したもので説明したが、これに限定されるものではなく、車両前方側に設置したものであってもよい。
【0051】
さらに、連結プレート部材5とホイールハウスインナ2の下端縁部2bの結合構造も、本実施形態のように溶接固定に限定されるものではなく、ボルトとナットによる締結固定や嵌合固定であっても良い。
【0052】
また、この実施形態では、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの近傍に、リアダンバーを取付ける取付け部11を設けている。
このため、リアダンパー10の取付け部11を、車両のレイアウト要請によりホイールハウスインナ2の車両後方側に設けても、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bが連結プレート部材5で補強されていることから、取付け部11に作用するリアダンパー10からの入力荷重が、リアサイドフレーム1やサイドパネル3に分散伝達されて、ホイールハウスが容易に変位することがなくなる。
よって、リアダンパー10の取付け部11が変位することによる車両の操安性の悪化も防止することができる。
なお、リアダンパー10の取付け部11以外にも、コイルスプリングやサスペンションリンク等の取付け部を、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの近傍に設定してもよい。
【0053】
また、この実施形態では、連結プレート部材5とリアサイドフレーム1との間の結合を、そのリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bで行なっている。
このため、荷重の集中しやすい連結プレート部材5とリアサイドフレーム1の結合部の結合強度を高めることができ、連結プレート部材5に入力される荷重をリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bの二面に分散して伝達することができる。
よって、連結プレート部材5の補強機能をさらに高めることができる。
【0054】
また、この実施形態では、連結プレート部材5を、プレート体51とブラケット体52で構成し、そのブラケット体52によってリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bに結合している。
これにより、連結プレート部材5は、プレート体51とブラケット体52の二部品で構成され、このうち、ブラケット体52によってリアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1bに結合されることになる。
このため、リアサイドフレーム1の車外側側面1aと下面1b、それにサイドパネル3とホイールハウスインナ2の下端縁部2bに結合されることで複雑な形状とならざるを得ない連結プレート部材5を二部品で構成することで、プレス成形を容易に行なうことができ、連結プレート部材5の成形性を確保することができる。また、ブラケット体52でリアサイドフレーム1の二面に接合することで、連結プレート部材5とリアサイドフレーム1の結合強度も高めることができる。
【0055】
また、この実施形態では、連結プレート部材5の車両後方位置に、水平面状に延びるサイドフロアパネル9を設け、そのサイドフロアパネル9を連結プレート部材5に結合している。
このため、連結プレート部材5は、車両後方位置に位置するサイドフロアパネル9に対しても結合されることになり、サイドフロアパネル9にも入力荷重を分散して伝達できるため、さらにホイールハウスインナ2の下端縁部2bの剛性向上を図ることができる。
【0056】
また、この実施形態では、連結プレート部材5のサイドパネル接合フランジ51aを、サイドパネル3とサイドフロアパネル9で挟持して結合している。
これにより、連結プレート部材5が、サイドパネル3とサイドフロアパネル9で挟持されて結合されることになるため、荷重の集中しやすい連結プレート部材5のサイドパネル3側の結合部の結合強度を高めることができ、ホイールハウスインナ2の下端縁部2bの剛性をより高めることができる。
【0057】
また、この実施形態では、連結プレート部材5の上下方向高さhを、リアサイドフレーム1の上下方向高さHと略一致するように設定している。
これにより、連結プレート部材5の上下方向高さhがリアサイドフレーム1の上下方向高さHに略一致するため、連結プレート部材5の車両下方への突出を抑えつつ、連結プレート部材5の剛性を最大限得ることができる。
また、車両の側突時の際にも、高さ位置が一致することから、連結プレート部材5がリアサイドフレーム1に上下方向均等に当接して変形するため、連結プレート部材5によって、有効に衝突荷重を吸収できる。
【0058】
次に、第二実施形態について、図12で説明する。なお、この図は第一実施形態の図5に対応する下方詳細斜視図であり、同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
この実施形態は、連結プレート部材5のブラケット体152を、リアサイドフレーム1側に延びるフレーム側面接合フランジ152aとフレーム下面接合フランジ152bの二片部を有する形状で形成し、サイドフロアパネル9側への接合フランジを形成しないもので構成したものである。
【0060】
このように、ブラケット体152を構成したことにより、プレス成形が容易となり、連結プレート部材5の成形性を高めることができる。また、サイドフロアパネル9との間の接合関係(位置関係)をさほど考慮しなくてもよいため、連結プレート部材5を接合する際の組立作業も容易に行うことができる。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0061】
なお、その他の実施形態として、具体的には図示はしないが、連結プレート部材自体を二部品ではなく、一部品で構成することが考えられる。この場合には、接合フランジの形状等、連結プレート部材の形状がプレス成形等により制限されるが、連結プレート部材自体の部品点数を削減することができ、また軽量化も図るといった効果を得ることができる。
【0062】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明のサイドフレームは、実施形態のリアサイドフレーム1に対応し、
以下、同様に、
ホイールハウスは、ホイールハウスインナ2に対応し、
プレート部材は、連結プレート部材5に対応し、
後輪懸架装置の一部は、リアダンパー10に対応し、
メインプレートは、プレート体51に対応し、
サブブラケットは、ブラケット体52、152に対応し、
フロアパネルは、サイドフロアパネル9に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両の後部車体構造に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第一実施形態の車両後部のホイールハウス内部を前方斜め下方から見た下方斜視図。
【図2】車両後部のホイールハウス近傍をサイドアウタパネルを透過させた状態での側面図。
【図3】図2のA−A線で切断した状態の車両前方からの正面図。
【図4】連結プレート部材付近の車体構造の車両前方側からの詳細斜視図。
【図5】連結プレート部材付近の車体構造の車両後方側からの下方詳細斜視図。
【図6】連結プレート部材付近の車体構造の別の角度からの下方詳細斜視図。
【図7】車両後方部のフロアパネルを除去してリアサイドフレームを透過させた状態での車幅方向内方側からの上方斜視図。
【図8】リアサイドフレームを透過させた状態での車幅方向内方側からの下方斜視図。
【図9】図2のB−B線矢視断面図。
【図10】図3のC−C線矢視断面図。
【図11】図3のD−D線矢視断面図。
【図12】図5に対応する第二実施形態の下方詳細斜視図。
【符号の説明】
【0064】
1…リアサイドフレーム(サイドフレーム)
2…ホイールハウスインナ(ホイールハウス)
2b…下端縁部
3…サイドパネル
5…連結プレート部材(プレート部材)
5a…突出接合フランジ
9…サイドフロアパネル
10…リアダンパー(後輪懸架装置の一部)
11…取付け部
51…プレート体(メインプレート)
52,152…ブラケット体(サブブラケット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるサイドフレームと、該サイドフレームの車幅方向外方位置に配置され車両内方側に膨出するホイールハウスと、該ホイールハウスの車幅方向外方位置に配置され車体側壁を形成するサイドパネルとを備える車両の後部車体構造であって、
前記ホイールハウスの下端には、車幅方向に延びる下端縁部を有し、
前記サイドフレームと前記サイドパネルとの間に、車幅方向に延びて該サイドフレームと該サイドパネルとを連結するプレート部材を設け、
該プレート部材を前記ホイールハウスの下端縁部に結合した
車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記ホイールハウスの下端縁部の近傍に、後輪を懸架する後輪懸架装置の一部を取付ける取付け部を設けた
請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記プレート部材と前記サイドフレームとの間の結合を、該サイドフレームの側面と下面で行なった
請求項2記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記プレート部材を、メインプレートとサブブラケットで構成し、
該サブブラケットによってサイドフレームの側面と下面に結合した
請求項3記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記プレート部材の車両前後方向位置に、水平面状に延びるフロアパネルを設け、
該フロアパネルを前記プレート部材に結合した
請求項1〜4何れか一項記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
前記プレート部材のサイドパネル側端部を、前記サイドパネルと前記フロアパネルの間で挟持して結合した
請求項5記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
前記プレート部材の上下方向高さを、前記サイドフレームの上下方向高さと略一致するように設定した
請求項1〜6何れか一項記載の車両の後部車体構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−168712(P2007−168712A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372128(P2005−372128)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】