説明

車両の衝撃吸収構造

【課題】 フロアトンネル上に設けられた衝撃吸収部材支持ブラケットの強度を高め、衝撃吸収部材支持ブラケットに支持された衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を確保する。
【解決手段】 左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケット15に衝撃吸収部材16を支持したので、車両の側面衝突時にフロントシートを衝撃吸収部材16に干渉させて衝突エネルギーを吸収することができる。衝撃吸収部材16の逆U字状の内面に結合された前壁23aの下部を衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁21aの上部に結合したので、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁21aが側面衝突の荷重を剪断方向に受けることになり、これにより衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁21aの側面衝突に対する強度を高め、衝撃吸収部材16の横方向への倒れを防止して衝撃吸収効果を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシートを前記衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる車両の衝撃吸収構造は、下記特許文献1により公知である。
【0003】
このものは、車両のフロアトンネルの上面に台座部(衝撃吸収部材支持ブラケット)および衝撃吸収体(衝撃吸収部材)を2段重ねで配置し、側面衝突時にシートが干渉する上側の衝撃吸収体を下側の台座部よりも高強度にすることで、全体の重量を低減しながら衝撃吸収効果を高めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、かかる車両の衝撃吸収構造では、衝撃吸収部材支持ブラケットおよび衝撃吸収部材の直前にハンドブレーキ装置が設けられているため、そのブレーキレバーから後輪に向かって延びるブレーキケーブルが衝撃吸収部材支持ブラケットと干渉することになる。この場合、衝撃吸収部材支持ブラケットにブレーキケーブルを通過させる開口を形成すると該衝撃吸収部材支持ブラケットの強度が低下してしまい、せっかく衝撃吸収部材を高強度にしても、衝撃吸収部材支持ブラケットおよび衝撃吸収部材のトータルの衝撃吸収能力が不足してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、フロアトンネル上に設けられた衝撃吸収部材支持ブラケットの強度を高め、衝撃吸収部材支持ブラケットに支持された衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシートを前記衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両に衝撃吸収構造において、前記衝撃吸収部材は少なくとも上壁および左右の側壁により形成される逆U字状の内面に結合された前壁を備え、前記前壁の下部は前記衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁の上部に結合されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記衝撃吸収部材の左右の側壁から垂下する脚部が、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁に重ね合わされて固定されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁は上方に向かって相互に接近するように傾斜しており、前記衝撃吸収部材は前記前壁の下部と前記脚部との間に溝が形成され、前記溝が前記衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁に係合した状態で前記脚部が前記衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁の外面に支持されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁とハンドブレーキ支持ブラケットとは前記フロアトンネルに共締めされることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの後壁は、前記ハンドブレーキ支持ブラケットに支持されたハンドブレーキ装置のブレーキケーブルをメンテナンスするための点検窓を備えることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0012】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁および後壁が接続する部分には、前記ブレーキケーブルが通過する切欠きが形成されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0013】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、前記衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁はU字状の開口を備え、前記前壁の少なくとも左右一方の側部において、前記開口の端縁には鈍角に屈曲する補強用のビード部が形成されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持したので、車両の側面衝突時にフロントシートを衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収することができる。衝撃吸収部材の逆U字状の内面に結合された前壁の下部を衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁の上部に結合したので、衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁が側面衝突の荷重を剪断方向に受けることになり、衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁の側面衝突に対する強度を高め、衝撃吸収部材の横方向への倒れを防止して衝撃吸収効果を向上させることができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、衝撃吸収部材の左右の側壁から垂下する脚部を衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁に重ね合わせて固定するので、衝撃吸収部材を衝撃吸収部材支持ブラケットに強固に一体化して衝撃吸収効果を高めることができる。
【0016】
また請求項3の構成によれば、衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁を上方に向かって相互に接近するように傾斜させ、衝撃吸収部材の前壁の下部と脚部との間に溝を形成し、前記溝を衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁に係合させた状態で脚部を衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁の外面に支持するので、衝撃吸収部材支持ブラケットに対する衝撃吸収部材の位置決めを容易かつ精度良く行うことができる。
【0017】
また請求項4の構成によれば、衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁とハンドブレーキ支持ブラケットとをフロアトンネルに共締めするので、それらを別々にフロアトンネルに締結する場合に比べて締結部材の数を削減することができる。
【0018】
また請求項5の構成によれば、衝撃吸収部材支持ブラケットの後壁にブレーキケーブルをメンテナンスするための点検窓を設けたので、衝撃吸収部材支持ブラケットを取り外すことなくブレーキケーブルをメンテナンスすることができる。
【0019】
また請求項6の構成によれば、衝撃吸収部材支持ブラケットの左右の側壁および後壁が接続する部分にブレーキケーブルが通過する切欠きを形成したので、ブレーキケーブルを衝撃吸収部材支持ブラケットと干渉しないように配置することができる。
【0020】
また請求項7の構成によれば、衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁はU字状の開口を備えるため、側面衝突の衝突荷重が入力したときの強度が低下する虞があるが、前壁の少なくとも左右一方の側部において、開口の端縁に鈍角に屈曲する補強用のビード部を形成したことにより、衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁の側面衝突に対する強度を更に高め、衝撃吸収部材の横方向への倒れを防止して衝撃吸収効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動車のフロントシート部の側面図。(第1の実施の形態)
【図2】図1の2部拡大図。(第1の実施の形態)
【図3】衝撃吸収部材の分解斜視図。(第1の実施の形態)
【図4】図2の4−4線断面図。(第1の実施の形態)
【図5】図2の5−5線断面図。(第1の実施の形態)
【図6】衝撃吸収部材支持ブラケットの分解斜視図。(第2の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、左右のフロントシート11,11の間にフロアパネル12から上方に突出して車体前後方向に延びるフロアトンネル13が配置されており、フロアトンネル13の上面はひじ掛け14aを有するセンターコンソール14で覆われる。センターコンソール14の内部であってひじ掛け14aの下方位置には、フロアトンネル13の上面に固定された衝撃吸収部材支持ブラケット15と、その衝撃吸収部材支持ブラケット15の上面に固定された衝撃吸収部材16とが配置される。また衝撃吸収部材支持ブラケット15の前方のフロアトンネル13の上面にハンドブレーキ支持ブラケット17が固定されており、ハンドブレーキ支持ブラケット17の上面に固定されたハンドブレーキ装置18のレバー部18aがセンターコンソール14の開口部を貫通して車室内に突出する。ハンドブレーキ装置18のレバー部18aに一端を結合されたブレーキケーブル19,19が、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁およびフロアトンネル13の上壁を貫通し、フロアトンネル13の内部を経て後輪の駐車ブレーキに接続される。
【0024】
図2〜図5から明らかなように、衝撃吸収部材支持ブラケット15は前部ブラケット21および後部ブラケット22で構成される。板金プレス製の前部ブラケット21は車体左右方向に延びる板状の前壁21aを備えており、前壁21aの上縁に上向きに開放するU字状の開口21bが形成されるとともに、前壁21aの下縁が前方に折り曲げられて取付部21cが形成される。また前部ブラケット21の上部の左右両側に2個のボルト孔21d,21dが形成されるとともに、取付部21cの左右両側に2個のボルト孔21e,21eが形成される。
【0025】
板金プレス製の後部ブラケット22は左右の側壁22a,22aおよび後壁22bを有して平面視でコ字状を成しており、側壁22a,22aの前縁が左右方向外側に折り曲げられて取付部22c,22cが形成され、それらの取付部22c,22cの上部にボルト孔22d,22dが形成される。また側壁22a,22aの下縁の前部が左右方向外側に折り曲げられて取付部22e,22eが形成されるとともに、側壁22a,22aの下縁の後部に上向きに凹む切欠き22f,22fが形成される。更に後壁22bの下縁が後向きに折り曲げられて二つの取付部22g,22gが形成され、かつ後壁22bの中央部に円形の点検窓22hが形成される。
【0026】
衝撃吸収部材16は、前部部材23、左右の側部部材24,24および後部部材25で構成される。板金プレス製の前部部材23は車体左右方向に延びる板状の前壁23aを備えており、その左右の側縁に前方に折り曲げられた取付部23b,23bを備えるとともに、その上縁に前方に折り曲げられた取付部23cを備える。左側の側部部材24は水平方向に延びる上壁24aと、前後方向に延びる側壁24bと、側壁24bの下端から左右方向内向きに延びた後に下向きに延びる脚部24cと、脚部24cの上部前端から垂下するブラケット24dとを備えており、脚部24cおよびブラケット24dにはそれぞれボルト孔24e,24fが形成される。右側の側部部材24は上述した左側の側部部材24と実質的に左右対称な形状である。
【0027】
後部部材25は、左右方向に延びる後壁25aと、後壁25aの下縁から前方に向かって水平に延びる下壁25bと、下壁25bの左右の側縁から下向きに延びる一対の脚部25c,25cとを備える。後壁25aの上縁および左右両側縁は後向きに折り曲げられて取付部25d;25e,25eが形成される。下壁25bには2個の円形の肉抜き孔25f,25fが形成されるとともに、下壁25bの前縁は下向きに折り曲げられて取付部25gが形成され、かつ左右の脚部25c,25cにはそれぞれボルト孔25h,25hが形成される。
【0028】
衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aと後部ブラケット22の側壁22a,22aの取付部22c,22cとを溶接W1した後、前部ブラケット21の前壁21aの取付部21cと、後部ブラケット22の側壁22a,22aの取付部22e,22eと、後部ブラケット22の後壁22bの取付部22g,22gとがフロアトンネル13の上面に溶接W2される。そしてハンドブレーキ支持ブラケット17の後端が前部ブラケット21の前壁21aの取付部21cの上面に重ね合わされ、ハンドブレーキ支持ブラケット17の後端と、前壁21aの取付部21cのボルト孔21e,21eと、フロアトンネル13とを貫通した2本のボルト26,26をウエルドナット27,27に螺合することで、前部ブラケット21およびハンドブレーキ支持ブラケット17が共締めされる。上記共締め構造を採用することで、前部ブラケット21およびハンドブレーキ支持ブラケット17を別個にフロアトンネル13に締結する場合に比べて、締結部材の数を削減するとともに、前部ブラケット21の支持強度を高めることができる。
【0029】
このようにして組み立てられた衝撃吸収部材支持ブラケット15を前後方向から見ると、後部ブラケット22の側壁22a,22aは下部から上部に向かって間隔がハ字状に狭まっている。
【0030】
衝撃吸収部材16は、前部部材23の前壁23aの取付部23b,23b;23cと、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aの前端と、左右の側部部材24,24の側壁24b,24bの前端とが溶接W3され、後部部材25の後壁25aの取付部25d;25e,25eと、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aの後端と、左右の側部部材24,24の側壁24b,24bの後端とが溶接W4され、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aどうしが溶接W5され、後部部材25の下壁25bの取付部25gが前部部材23の前壁23aの上部後面に溶接W6されて組み立てられる。この状態で、左右の側部部材24,24の脚部24c,24cの左右方向内側に後部部材25の脚部25c,25cが重ね合わされ、右側の脚部24c,25cおよび左側の脚部24c,25cは前後方向から見ると下部から上部に向かって間隔がハ字状に狭まっている。
【0031】
このようにして組み立てられた衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15の上に重ね合わせると、衝撃吸収部材16の左右の脚部24c,25c;24c,25cの左右方向内面が、衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22のハ字状に傾斜する側壁22a,22aの左右方向外側面に当接する。この状態で、衝撃吸収部材16の左右の脚部24c,25c;24c,25cのボルト孔24e,25h;24e,25hと、衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22の側壁22a,22aとを貫通する2本のボルト28,28がウエルドナット29,29に螺合する。また衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22のボルト孔22d,22dと、前部ブラケット21のボルト孔21d,21dと、衝撃吸収部材16の左右の側部部材24,24のブラケット24d,24dと、衝撃吸収部材16の前部部材23とを貫通する2本のボルト30,30がウエルドナット31,31に螺合する。
【0032】
衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15の上部に組付けるとき、衝撃吸収部材16の重ね合わされた前壁23aおよび左右のブラケット24d,24dの後面と、左右の脚部24c,24cの前縁との間に溝α(図2参照)が形成されており、この溝αを衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aの上縁に上方から係合させるとともに、衝撃吸収部材16のハ字状に下開きになった左右の脚部24c,25c;24c,25cの内面を衝撃吸収部材支持ブラケット15のハ字状に下開きになった左右の側壁22a,22aの外面に重ね合わせることで、衝撃吸収部材支持ブラケット15に対して衝撃吸収部材16を容易に位置決めすることができる。
【0033】
このようにしてフロアトンネル13の上面に衝撃吸収部材支持ブラケット15および衝撃吸収部材16が上下2段に固定された状態で、それらの左右両側面および上面がセンターコンソール14(図1参照)で覆われる。そして一端がブラケット32を介してハンドブレーキ支持ブラケット17の上面に固定されたブレーキケーブル19,19のアウターチューブ19a,19aの他端は、前部ブラケット21の開口21bを通過して衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部に導かれ、そこからフロアトンネル13の上面に形成されてグロメット33,33で覆われた2個の開口13a,13aを通過して後輪側に延出し、一端がハンドブレーキ装置18のレバー部18aに接続されたインナーケーブル19b,19bが前記アウターチューブ19a,19aの内部に摺動自在に嵌合する。
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0035】
車両の側面衝突によりフロントシート11が車体内向きに移動すると、そのシートクッションの内側面がセンターコンソール14を介して衝撃吸収部材16の側面に衝突し、フロントシート11の内部のシートフレームから衝撃吸収部材16に荷重が作用するが、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aが剪断方向の荷重を受け止めるので、強度の高い衝撃吸収部材16がフロントシート11から伝達される衝突エネルギーを吸収し、フロントシート11の車体内向きの移動を阻止して乗員の生存空間を確保することができる。特に、衝撃吸収部材16は、前壁23a、後壁25a、上壁24a,24a、下壁25bおよび左右の側壁24b,24bを有する完全なボックス構造であるため、その強度が極めて高くなって充分な衝撃吸収効果を得ることができる。
【0036】
フロアトンネル13の上面にハンドブレーキ装置18および衝撃吸収部材支持ブラケット15が前後に隣接して配置されているため、ハンドブレーキ装置18から後方に延びるブレーキケーブル19,19が衝撃吸収部材支持ブラケット15と干渉してレイアウトが困難になる問題がある。しかしながら、本実施の形態によれば、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aに形成した開口21bと、フロアトンネル13の上面に形成した開口13a,13aとを通してブレーキケーブル19,19をレイアウトすることで上記問題を解決することができる。
【0037】
一方、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aに開口21bを形成すると、その開口21bを形成したことにより前部ブラケット21の強度が大幅に低下してしまい、車両の側面衝突時に衝撃吸収部材支持ブラケット15が容易に変形してしまうことで、せっかく高強度に構成した衝撃吸収部材16が充分な衝撃吸収効果を発揮できなくなる虞がある。
【0038】
しかしながら本実施の形態によれば、前部ブラケット21の前壁21aのU字状の開口21bの上端開放部が衝撃吸収部材16の前部部材23の下端により閉塞されており、かつ衝撃吸収部材16の前部部材23は逆U字状に形成された上壁24a,24aおよび左右の側壁24b,24bに接続されて補強されているため、開口21bを形成したことによる前部ブラケット21の強度低下を充分に補い、衝撃吸収部材支持ブラケット15および衝撃吸収部材16を合わせたトータルの強度を高めて衝撃吸収効果を高めることができる。
【0039】
更に、衝撃吸収部材16の左右の側壁24b,24bから垂下する左右の脚部24c,24cを衝撃吸収部材支持ブラケット15の左右の側壁22a,22aに重ね合わせて固定するので、衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15に強固に一体化して衝撃吸収効果を更に高めることができる。
【0040】
また衝撃吸収部材支持ブラケット15の後壁22bには点検窓22hが形成されているため、この点検窓22hを通して衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部に配置されたブレーキケーブル19,19のメンテナンスを容易に行うことができる。更にまた、ブレーキケーブル19,19は衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部で二股に分かれてフロアトンネル13の2個の開口13a,13aに導かれるが、このとき前記開口13a,13aの近くの衝撃吸収部材支持ブラケット15の左右の側壁22a,22aに切欠き22f,22fが形成されているため、二股になったブレーキケーブル19,19が衝撃吸収部材支持ブラケット15と干渉するのを防止することができる。
【0041】
次に、図6に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0042】
第2の実施の形態は、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の形状に特徴を有するものであり、その前壁21aに形成されたU字状の開口21bに沿って段差を設けることで、補強用のビード部21fが形成される。このビード部21fは、前部ブラケット21の左側の側部においてU字状の開口21bから若干離れるように変位しており、これによりU字状のビード部21fの左側の角部の成す角度が90°よりも増加して鈍角になっている。
【0043】
その結果、車体左側からの側面衝突の衝突荷重が衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21に入力したとき、U字状の開口21bを形成したことによる前壁21aの強度低下を、左側の角部が鈍角を成すように設けた補強用のビード部21fにより補い、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁21aの側面衝突に対する強度を更に高め、衝撃吸収部材15の横方向への倒れを防止して衝撃吸収効果を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、実施の形態では衝撃吸収部材16は、前壁23a、後壁25a、上壁24a,24a、下壁25bおよび左右の側壁24b,24bを有する完全なボックス構造になっているが、前記下壁25bは省略することも可能である。つまり、衝撃吸収部材16の左右方向断面は、上壁24a,24aおよび左右の側壁24b,24bを有して下向きに開放する逆U字状断面であれば良い。
【符号の説明】
【0046】
11 フロントシート
13 フロアトンネル
15 衝撃吸収部材支持ブラケット
16 衝撃吸収部材
17 ハンドブレーキ支持ブラケット
18 ハンドブレーキ装置
19 ブレーキケーブル
21a 衝撃吸収部材支持ブラケットの前壁
21b 開口
21f 補強ビード部
22a 衝撃吸収部材支持ブラケットの側壁
22b 衝撃吸収部材支持ブラケットの後壁
22f 切欠き
22h 点検窓
23a 衝撃吸収部材の前壁
24a 衝撃吸収部材の上壁
24b 衝撃吸収部材の側壁
24c 脚部
α 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のフロントシート(11)に挟まれたフロアトンネル(13)上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケット(15)に衝撃吸収部材(16)を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシート(11)を前記衝撃吸収部材(16)に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両に衝撃吸収構造において、
前記衝撃吸収部材(16)は少なくとも上壁(24a)および左右の側壁(24b)により形成される逆U字状の内面に結合された前壁(23a)を備え、前記前壁(23a)の下部は前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の前壁(21a)の上部に結合されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材(16)の左右の側壁(24b)から垂下する脚部(24c)が、前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の左右の側壁(24b)に重ね合わされて固定されることを特徴とする、請求項1に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の左右の側壁(22a)は上方に向かって相互に接近するように傾斜しており、前記衝撃吸収部材(16)は前記前壁(23a)の下部と前記脚部(24c)との間に溝(α)が形成され、前記溝(α)が前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の前壁(21a)に係合した状態で前記脚部(24c)が前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の左右の側壁(22a)の外面に支持されることを特徴とする、請求項2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の前壁(21a)とハンドブレーキ支持ブラケット(17)とは前記フロアトンネル(13)に共締めされることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の後壁(22b)は、前記ハンドブレーキ支持ブラケット(17)に支持されたハンドブレーキ装置(18)のブレーキケーブル(19)をメンテナンスするための点検窓(22h)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の左右の側壁(22a)および後壁(22b)が接続する部分には、前記ブレーキケーブル(19)が通過する切欠き(22f)が形成されることを特徴とする、請求項5に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)の前壁(21a)はU字状の開口(21b)を備え、前記前壁(21a)の少なくとも左右一方の側部において、前記開口(21b)の端縁には鈍角に屈曲する補強用のビード部(21f)が形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−102115(P2011−102115A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87609(P2010−87609)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】