説明

車両の車体前部構造

【課題】車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供する。
【解決手段】ラジエタ42と、このラジエタを収容するシュラウド枠部38と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャ10と、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材34と、この衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材50と、を備えた車両の車体前部構造であって、足払い部材は、シュラウド枠部の下部と、バンパフェイシャの下部との間に配置され、所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、エンジンにおける燃焼用の空気を送給するための吸気ダクトの一部72が所定の上下幅の足払い部材の断面において延びるように足払い部材に一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体前部構造に係り、特に、足払い部材を有する車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、バンパ内には、車両の歩行者への衝突の際に歩行者の脚部への衝撃力をやわらげる衝撃吸収部材が設けられている。一方、近年、車両の歩行者への衝突の際における歩行者の頭部への衝撃をよりやわらげるため、上述した衝撃吸収部材の下方で歩行者の脚部を衝突時に前方に払うための所謂足払い部材を設けたものが知られている(特許文献1)。つまり、脚部を前方に払われた歩行者は、およそバンパを中心に回転し、頭部がボンネットに衝突し、歩行者の頭部への衝撃をボンネットで吸収するようにしているのである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−010424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両の他車などへの衝突時における衝突安全性の向上が要望され、また、デザイン面ではフロントオーバーハングの短縮化が要望されており、そのため、エンジンルーム内でのエンジンなどのレイアウト、或いは、フレーム部材のレイアウトが制約を受けることが多くなってきている。また、排ガス規制による触媒の大型化によるエンジンルーム内のレイアウトの制約を受けることもある。
【0005】
ここで、フロントサイドフレームより車幅方向内方側は、エンジン本体の他、エアコンコンプレッサ、バッテリ、吸気ダクト、ECUなどの補機類が多く、上述した制約下で、それらを如何に配置するかが設計上の難点となることが多い。つまり、エンジンや補機類などでスペースが埋め尽くされ、余分なスペースが無いことが多い。特に、過給機付きエンジンや排気量の大きいエンジンなどでは、そのような問題が顕著である。特に、吸気ダクトを配設にくくなり、それに伴い、その他の機器のレイアウトが制約を受けることが問題となっている。
【0006】
本発明者らは、そのような問題を抱えつつ、フレーム部材やエンジンや補機類などを如何に配置するかを考えた場合、ラジエタとバンパとの間には、通常、何らかの空間、或いは、上述した衝撃吸収部材や足払い部材などがあり、それらの占める領域を有効に活用し得る可能性があることに着目した。一方、ラジエタの前に何かしらの機器を置くとエンジンの冷却効率が下がることになる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明による車両の車体前部構造によれば、ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、足払い部材は、シュラウド枠部の下部と、バンパフェイシャの下部との間で所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、エンジンに燃焼用の空気を送給するための吸気ダクトの一部がその足払い部材の所定の上下幅の断面において延びるようにその足払い部材に一体的に設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、吸気ダクトの一部が所定の上下幅の足払い部材の断面において延びるように足払い部材に一体的に設けられている。従って、その一体的に設けられた吸気ダクトの分、従来であれば吸気ダクトを配設していた車体前部、特にエンジンルームにおけるスペースを削減し、他の補機類などの配設効率を高めたり、路面側に補機類が突出したりすることを防止することが出来る。また、吸気ダクトが足払い部材の所定上下幅の断面において延びるようにしているので、ラジエタへの導風を阻害することが無い。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材は、その後縁部がシュラウド枠部の下縁部に結合されると共にその前縁部がバンパフェイシャの下縁部に沿って延び、それによりシュラウド枠部の下縁部とバンパフェイシャの下縁部との間に延在するように板状に形成され、さらに、この足払い部材には、上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、吸気ダクトは、足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる。
このように構成された本発明においては、吸気ダクトは、足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びるので、リブ部の他、吸気ダクトによる足払い部材の剛性の確保が可能である。
【0010】
上記の目的を達成するために本発明による車両の車体前部構造によれば、左右一対のフロントサイドフレームと、これらのフレーム間に配置されるエンジン本体と、このエンジン本体に取り付けられる過給機と、この過給機で圧縮された空気をエンジン本体に導く吸気ダクトと、一対のフロントサイドフレームより車幅方向外方側に設けられたインタークーラと、ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなしラジエタへの走行風導入開口部を有するバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、足払い部材は、平面視で、シュラウド枠部の下縁部とバンパフェイシャの下縁部との間を覆い且つ所定の上下幅を有するように板状に形成され、吸気ダクトは、過給機から降下し、一対のフロントサイドフレームのいずれか一方に沿って車体前方側に向かって延び、足払い部材に一体的に設けられて車幅方向左右いずれかの一方側から他方側に向けて車幅方向に延び、一対のフロントサイドフレームの他方の下方を通過してインタークーラに接続され、このインタークーラの出口から一対のフロントサイドフレームの他方の下方を再び通過し、さらに、上昇してエンジン本体に接続されることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、補機類で密度の高い車体前部の空間を避けて吸気ダクトを配設することが出来る。そして、従来であれば吸気ダクトを配設していた車体前部、特にエンジンルームにおけるスペースを削減し、他の補機類などの配設効率を高めたり、路面側に補機類が突出したりすることを防止することが出来る。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材は、シュラウド枠部の下縁部とバンパフェイシャの下縁部との間で平らに延びるように形成され、その後縁部がシュラウド枠部の下縁部に結合されると共にその前縁部がバンパフェイシャの下縁部に沿って延び、さらに、この足払い部材には、上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、吸気ダクトは、足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる。
このように構成された本発明においては、吸気ダクトは、足払い部材のリブ部と一体的に設けられるので、リブ部の他、吸気ダクトによる足払い部材の剛性の確保が可能である。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及び吸気ダクトは樹脂製であり、吸気ダクトは複数のリブと一体成型されている。
このように構成された本発明においては、樹脂の一体成型によりリブ及び吸気ダクトが成型されているので、効率よく足払い部材を形成することが出来る。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及び吸気ダクトは金属製であり、吸気ダクトはリブ部の複数のリブと一体的に設けられている。
このように構成された本発明においては、金属製の複数のリブ及び吸気ダクトが一体的に設けられているので、樹脂製のものよりも吸気ダクトの熱を複数のリブに伝達し易くなり、それにより、足払い部材を冷却器として用いて吸気を冷却することが出来る。それに伴い、従来の熱交換機の小型化や廃止などが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、本発明の一実施形態による車体前部の全体構造を説明する。図1は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に外装の構造を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に内部の構造を示す斜視図である。
図1に示すように、車両1は、エンジンルームを覆うボンネット2と、その左右両側で車輪4を囲むように延びるフロントフェンダ6と、ボンネット2及びフロントフェンダ6の前方に配置され、フロントフェンダ6とはパーティングライン8で区切られて設けられているフロントバンパフェイシャ10とを備える。このフロントバンパフェイシャ10には、空気をエンジンルームに導入するための中央開口部12及び側方開口部14が形成されている。
【0016】
次に、図2では、このフロントバンパフェイシャ10を取り外し、そのフロントバンパフェイシャ10、ボンネット2及びフロントフェンダ6の図示を仮想線で示した状態での車体前部構造を示す。
図2に示すように、車体前部には、車幅方向の左右両側でそれぞれ車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム20と、このフロントサイドフレーム20において、その前方端部に設けられたクラッシュカン22と、フロントサイドフレーム20の上方に設けられたエプロンレインフォースメント24とが備えられている。
【0017】
一対のフロントサイドフレーム20の車幅方向内方側には、エンジン26やトランスミッション28等のエンジン構造体、及び、バッテリ等の補機類30が配置されている。さらに、フロントサイドフレーム20及びエプロンレインフォースメント24に隣接して、フロントサスペンション(図示せず)のばねやダンパ等を支持するサスタワー31が形成されている。
一対のフロントサイドフレーム20の前方側の端部(クラッシュカン22の前方側の端部)には、車幅方向に延び、平面視で弧状に延びるバンパレインフォースメント32と、このバンパレインフォースメント32の前方側に取り付けられ、同じく車幅方向に弧状に延びる、EA(衝突エネルギ吸収)部材34、即ち、歩行者の脚部等を保護するための衝撃吸収部材34が設けられている。
【0018】
さらに、一対のフロントサイドフレーム20の車幅方向内方側には、樹脂製のシュラウド枠部材38が設けられている。このシュラウド枠部材38は、フロントサイドフレーム20及びエプロンレインフォースメント24にブラケット36を介して取り付けられている。このシュラウド枠部材38には、クーラコンデンサ40やラジエタ42等(図3等参照)の冷却系装置、側方エアガイド板46、及び、足払い部材50が取り付けられている。また、フロントサイドフレーム20の車幅方向外方側にはインタークーラ48が設けられている。
【0019】
これらのシュラウド枠部材38、冷却系装置、側方エアガイド板46、インタークーラ48及び足払い部材50の構造及び配置について、図2乃至図5により説明する。図3は、図1において、フロントサイドフレーム20を含むように水平方向に切断し、上方から見た断面を示す車両前部構造の断面図であり、図4は、図3のIV-IV線に沿って見た断面図であり、図5は、図3のV-V線に沿って見た断面図である。
【0020】
先ず、図3に示すように、一対のフロントサイドフレーム20及びクラッシュカン22が、それぞれ車体前後方向に延びており、それらの先端部を連結するように、バンパレインフォースメント32が弧状に延びて取り付けられている。図4及び図5に示すように、バンパレインフォースメント32は閉断面を有し、その前方側の側面にエネルギ吸収部材34が取り付けられている。そして、図4及び図5に示すように、これらのバンパレインフォースメント32及びエネルギ吸収部材34を覆うように、バンパレインカバー35が設けられている。図1及び図2に示すように、バンパレインカバー35は、中央開口部12内で目視可能に車幅方向に延びており、ここに、ライセンスプレート(図示せず)を取付可能となっている。なお、このバンパレインカバー35は、中央開口部12にバンパフェイシャ10と一体成形されていても、別体として、バンパフェイシャ10或いはバンパレインフォースメント32及びエネルギ吸収部材34に取り付けるようにしても良い。
【0021】
次に、図3に示すように、エンジン26及びトランスミッション28のすぐ前方には、後方側から順に、ラジエタファン43、ラジエタ42、クーラコンデンサ40などのエンジン冷却用装置が設けられている。また、ラジエタファン43の周囲には、ラジエタファン43用の吸込みファンカバー45が設けられている。これらのラジエタ42やファンカバー45等の冷却系装置は、詳細な取付構造の説明は省略するが、図3乃至図5に示すように、シュラウド枠部材38に収容されると共に支持されて取り付けられている。
【0022】
図2乃至図5に示すように、シュラウド枠部材38には、その中央部に大きな開口部38aが形成されており、フロントバンパフェイシャ10の中央開口部12からの導入空気が確実にラジエタ42等に当たるようにしている。さらに、その開口部38aの周囲の枠部分で、ラジエタ42等を確実に保持するように全体が一体成形されている。本実施形態では、このシュラウド枠部材38をフロントサイドフレーム20に固定するためのブラケット36も、このシュラウド枠部材38と一体成型されている。
【0023】
次に、図2及び図3に示すように、側方エアガイド板46は、その後縁部がシュラウド枠部材38に取付られ、その取付部から車体前方に向けて延びている。この側方エアガイド板46は、バンパレインフォースメント32、エネルギ吸収部材34、バンパレインカバー35などと干渉しないように、一部が断面コ字状に切り欠かれて形成されている。この側方エアガイド板46は、中央開口部12から導入した空気が、車幅方向外方に逃げるのを防止して、導入空気のほとんどがラジエタ42等を通るようにして、エンジン冷却用装置の冷却効率を高めるためのものである。
また、図4に示すように、シュラウド枠部材38の上方の部分38bは、バンパフェイシャ10と共に仕切り板となっており、側方エアガイド板46と同様に、中央開口部12から導入した空気が、車体上方側に逃げるのを防止するようになっている。
【0024】
次に、図2及び図3に示すように、吸気の空気を冷却するためのインタークーラ48は、フロントサイドフレーム20及びクラッシュカン22にブラケット(図示せず)を介して固定されている。このインタークーラ48は、タイヤハウス49の前方側で且つフロントサイドフレーム20等の車幅方向外方に配置されている。このインタークーラ48には、主に、上述したフロントバンパフェイシャ10の側方開口部14からの導入空気が当たるようになっている。
【0025】
次に、図2、図4及び図5に示すように、シュラウド枠部材38の下縁部38cには、板状の足払い部材50が取り付けられている。この足払い部材50は、上述したエネルギ吸収部材34よりも下方に設けられ、そして、シュラウド枠部材38への取付部から車体前方側に向けて延びている。この足払い部材50は、側面視で、その断面が所定の上下幅を有して板状に延びている。詳細には後述するように、この足払い部材50は、上面部から下方に向けて複数のリブ54が設けられて、所定の剛性を保ちつつ、且つ、衝撃も吸収するようになっている。このように設けられた足払い部材50は、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその乗員の脚部を上方に払うようになっている。また、このような足払い部材50により、側方エアガイド板46と同様に、中央開口部12から導入した空気が、車体下方側に逃げるのを防止するようになっている。
【0026】
図2及び図7に示すように、足払い部材50の後縁部52cは、車幅方向にほぼ真っ直ぐに伸びている。ここで、図7は、足払い部材を下方且つ斜め前方から見た斜視図である。そして、ほぼ真っ直ぐ延びることで、シュラウド枠部材38の平らな前面に沿って延びるようにしている。足払い部材50の後縁部52cは、その車幅方向のほぼ全面にわたってシュラウド枠部材38に密着し、シュラウド枠部材38に取り付けられるようになっている。ここで、図6に示すように、足払い部材50のシュラウド枠部材38への取付部では、シュラウド枠部材38の下縁部38cと、足払い部材50のフランジ部50fとが、ボルト及びナット39により互いに固定されるようになっている。図6は、足払い部材とシュラウド枠部材との連結構造の一例を示す図である。
【0027】
図4及び図5に示すように、足払い部材50の上面部52は、側面視で、車体後方側からほぼ平らに延びる平面部52aと、車体前方側の湾曲した湾曲部52bを有している。図7に示すように、足払い部材50には、足払い部材50の上面部52から下方に向けて延びる複数のリブ54が上面部52と一体成型により形成されている。このように、本実施形態では、足払い部材50は、樹脂の一体成型で形成されている。複数のリブ54は、車幅方向に所定の間隔で設けられ、車体前後方向に延びている。そして、複数のリブ54は、後述する吸気ダクト72と共に、歩行者の衝突時にその衝突エネルギを吸収し且つ脚部を払うように所定の剛性を得るようになっている。なお、足払い部材50に形成された吸気ダクト(第4吸気ダクト)72については後述する。
【0028】
図4乃至図7に示すように、上面部52の湾曲部52bは、上面部52の前縁とリブ54の前縁とが車体前後方向に互いに一致する位置(上面部52の前縁部52d)まで湾曲して延びている。
次に、図2及び図7に示すように、足払い部材50の前縁部52dは、車幅方向に弧状に延びている。この弧状の形状は、フロントバンパフェイシャ10と同様の形状であり、フロントバンパフェイシャ10の内方側の側面に沿って延びている。本実施形態では、この前縁部52dは、フロントバンパフェイシャ10に取り付けられておらず、フロントバンパフェイシャ10とは所定の間隔を有している。なお、足払い部材50の前縁部52dを、何らかの方法でフロントバンパフェイシャ10に取り付けても良い。
なお、図2及び図5に示すように、シュラウド枠部材38の上縁部38dには、エンジンの吸気用の空気を取り入れる吸気用開口部38eが形成されている。
【0029】
次に、主に図8及び図9により、本発明の一実施形態による車体前部構造の吸気系の構造を説明する。図8は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す斜視図であり、図9は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す平面図である。
図8及び図9に示すように、吸気系の構造として、先ず、空気を外部から取り入れる吸気口60が形成されている。この吸気口60は、図10に示すように、上述したシュラウド枠部材38の吸気用開口部38eのすぐ後方側に配置されており、空気を効率的に吸入することが出来るようになっている。図10は、シュラウド枠部材38の開口部と吸気ダクトの開口部との位置関係を示す断面図である。
【0030】
吸気系構造は、また、この吸気口60から後方に延びると共に車幅方向左側に向けて湾曲し、そして、車幅方向の車体左側に向けて延びる第1吸気ダクト62を備える。この第1吸気ダクト62は、エアクリーナボックス64に接続されている。このエアクリーナボックス64には、第2吸気ダクト66が接続されている。吸気口60か吸入された空気は、第1吸気ダクト62及びエアクリーナボックス64を通った後、この第2吸気ダクト66を通る。
第2吸気ダクト66は、過給機68に接続されており、第2吸気ダクト66を通った空気が、過給機68のコンプレッサー68a(図15参照)によって加圧される。この過給機68には、第3吸気ダクト70が接続されており、加圧された空気がこの第3吸気ダクト70を通る。
【0031】
ここで、本発明の実施形態では、エンジンルームのレイアウトの制約、例えば、吸気ダクトを通す空間が少なくダクトの断面積を有効に確保出来ないことや、ダクトと他の機器との干渉が問題となること、さらに、エンジンの熱害が問題となること等に鑑み、吸気ダクトの配置を従来とは異なるものとしている。これについて具体的に説明する。
つまり、上述した図7に示すように、足払い部材50には吸気ダクト(第4吸気ダクト)72が設けられている。図7に示すように、この第4吸気ダクト72は、車体前後方向に延びる複数のリブ54と一体的に構成されている。上述したように、足払い部材50は樹脂の一体成型品であり、この第4吸気ダクト72も一体に形成されている。
【0032】
この断面を図11に示す。図11は、図7のXI-XI線に沿って見た足払い部材の断面図である。図7及び図11に示すように、第4吸気ダクト72は、リブ54を貫通して延びている。なお、変形例として、図12(a)に示すように、吸気ダクト72’の断面を矩形状に形成してもよく、また、図12(b)に示すように、吸気ダクト72’がリブの断面内に完全に収まるように形成しても良い。
【0033】
また、図13に示すように、予め、足払い部材50の上面部52’、及び、それぞれ孔73’を開けたリブ54’を形成しておき、それらの孔73’にパイプ72’を通すようにしても良い。このような構成は、主に、足払い部材50をアルミ合金などの金属で作成し、その孔73’に同じくアルミ合金等のパイプ72’を通して、溶接などにより固定するときに有効である。このような金属製の場合、吸気ダクト72’内を流れる空気の熱が足払い部材50’に伝達し易くなり、結果的に足払い部材50’にて吸気用の空気を冷却することが出来る(冷却器として用いることが出来る)。なお、樹脂製であっても、リブ54’とパイプ72’とを別々に作製し、その後、リブ54’の孔にパイプ72’を取り付けるように構成しても良い。
【0034】
本発明の実施形態では、過給機68から延びる第3吸気ダクト70を、上述した足払い部材50の第4吸気ダクト72の車幅方向右側の端部に接続している。そして、足払い部材50の第4吸気ダクト72の車幅方向左側の端部には、第5吸気ダクト74が接続されている。
これらの構成により、過給機68で加圧された空気は、第3ダクト70の後に、足払い部材50に形成された第4ダクト72を通ってから、第5ダクト74を通るようになっている。このようにして、板状の足払い部材50の内方の空間を有効に利用して、エンジンルームのレイアウトの制約を受けずに、ダクトを配置することが出来る。なお、過給機68を通る前の吸気ダクトをこのように構成しても良く、或いは、インタークーラ48を通った後の吸気ダクトをこのように構成しても良い。つまり、吸気ダクトのいずれかの一部を上述したように足払い部材50に形成すれば、エンジンルームのレイアウトの制約を受けずに配管し易くなる。
【0035】
第5吸気ダクト74は、インタークーラ48に接続されており、このインタークーラ48には、第6吸気ダクト76が接続されている。空気は、第5吸気ダクト74からインタークーラ48を経て冷却され、その後、第6吸気ダクト76に導かれる。そして、第6吸気ダクト76は、エンジン26の吸気ポート(図示せず)に接続されている。
【0036】
次に、主に図8、図14乃至図17により、各吸気ダクト62、66、70、72、74、76と、エアクリーナボックス64、過給機68、足払い部材50、インタークーラ48及びエンジン26等との配置関係について説明する。図14は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を示す平面図であり、図15は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を斜め後方から見た状態を示す斜視図であり、図16は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を車体下方から見た状態を示す底面図であり、図17は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を車体左側から見た状態を示す側面図である。
【0037】
先ず、図4及び図14に示すように、第1吸気ダクト62は、シュラウド枠部材38の後方且つ下方で車幅方向に延びている。そして、車体後方側に湾曲して、エアクリーナボックス64の前面部に接続されている。
図14、図15及び図17に示すように、第2吸気ダクト66は、このエアクリーナボックス64の上面部に接続され、車幅方向内方に向けて延びた後、エンジン26の側方を車体後方に向けてエンジン26を通り過ぎるまで延びる。第2吸気ダクト66は、その後、エンジン26に設けられた過給機68の上方を通って車幅方向に延び、そして、エンジン26の後方側を下方に延び、そして、再び車幅方向に湾曲して、過給機68のコンプレッサー68aに接続される。なお、図15に特に示されているように、過給機68のタービン68bからは、排気管69が後方に向けて延びている。なお、図15には、ダッシュパネル100、フロアパネル102を仮想線で示している。
【0038】
図14乃至図16に示すように、第3吸気ダクト70は、過給機68のコンプレッサー68aから上方に向けて延び、その後、エンジン26の後方側を車幅方向外方に向けて延び、そして、フロントサイドフレーム20の内方側の空間において下方に延びている。第3吸気ダクト70は、さらに、エンジン26の側方で車体前方に向けて延び、その後下方に延びている。そして、図8、図14及び図16に示すように、第3吸気ダクト70は、フロントサイドフレーム20に沿ってフロントサイドフレーム20の下方を車体前方に向けて延びている。その第3吸気ダクト70は、フロントサイドフレーム20の前方端部の一部であるクラッシュカン22及びシュラウド枠部材38の下方の部分まで来ると、車幅方向外方に延びるように湾曲し、その後、U字状を描いて車幅方向内方に向くように延びる。そして、足払い部材50の車体右側の側面において、第4吸気ダクト72に接続される。
【0039】
図7、図8、図14及び図16に示すように、第4吸気ダクト72は、上述したように、板状に延びる足払い部材50の内方を車幅方向に真っ直ぐ延びて貫通している。この第4吸気ダクト72の足払い部材50の車体右側の側面には、第5吸気ダクト74が接続されている。
図8、図14、図16及び図17に示すように、第5吸気ダクト74は、フロントサイドフレーム20の前方端部の一部であるクラッシュカン22及びシュラウド枠部材38の下方において、車幅方向外方に延びた後、U字状に湾曲して車幅方向内方に向けて延び、その後、再びU字状に湾曲して車幅方向外方に向けて延び、インタークーラ48の車幅方向内方の側面に接続されている。
図8、図14及び図16に示すように、インタークーラ48の後方側の側面に接続された第6吸気ダクト76は、車幅方向内方に延びてエンジン26の前方側からエンジン26に接続され、吸気ポート(図示せず)に至るようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に外装の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に内部の構造を示す斜視図である。
【図3】図1において、フロントサイドフレームを含むように水平方向に切断し、上方から見た断面を示す車両前部構造の断面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿って見た断面図である。
【図6】足払い部材とシュラウド枠部材との連結構造の一例を示す図である。
【図7】足払い部材を下方且つ右斜め前方から見た斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す平面図である。
【図10】シュラウド枠部材38の開口部と吸気ダクトの開口部との位置関係を示す断面図である。
【図11】図7のXI-XI線に沿って見た足払い部材の断面図である。
【図12】足払い部材の断面形状の変形例を示す断面図である。
【図13】足払い部材を主に金属製の部材で作製する場合の足払い部材の変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を示す平面図である。
【図15】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を斜め後方から見た状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を車体下方から見た状態を示す底面図である。
【図17】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気ダクトなどの構造を車体左側から見た状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
10 フロントバンパフェイシャ
20 フロントサイドフレーム
26 エンジン
32 バンパレインフォースメント
34 衝突エネルギ吸収部材
38 シュラウド枠部材
38a 開口部
38e 吸気用開口部
42 ラジエタ
48 インタークーラ
50 足払い部材
52 足払い部材の上面部
54 足払い部材のリブ
60 吸気口
62 第1吸気ダクト
64 エアクリーナボックス
66 第2吸気ダクト
68 過給機
70 第3吸気ダクト
72 足払い部材に設けられた第4吸気ダクト
74 第5吸気ダクト
76 第6吸気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように上記衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、
上記足払い部材は、上記シュラウド枠部の下部と、上記バンパフェイシャの下部との間で所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、
エンジンに燃焼用の空気を送給するための吸気ダクトの一部が、その足払い部材の上記所定の上下幅の断面において延びるようにその足払い部材に一体的に設けられていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
上記足払い部材は、その後縁部が上記シュラウド枠部の下縁部に結合されると共にその前縁部が上記バンパフェイシャの下縁部に沿って延び、それにより上記シュラウド枠部の下縁部と上記バンパフェイシャの下縁部との間に延在するように板状に形成され、さらに、この足払い部材には、上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、上記吸気ダクトは、上記足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる請求項1に記載の車両の車体前部構造。
【請求項3】
左右一対のフロントサイドフレームと、これらのフレーム間に配置されるエンジン本体と、このエンジン本体に取り付けられる過給機と、この過給機で圧縮された空気を上記エンジン本体に導く吸気ダクトと、上記一対のフロントサイドフレームより車幅方向外方側に設けられたインタークーラと、ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなし上記ラジエタへの走行風導入開口部を有するバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように上記衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、
上記足払い部材は、平面視で、上記シュラウド枠部の下縁部と上記バンパフェイシャの下縁部との間を覆い且つ所定の上下幅を有するように板状に形成され、
上記吸気ダクトは、上記過給機から降下し、上記一対のフロントサイドフレームのいずれか一方に沿って車体前方側に向かって延び、上記足払い部材に一体的に設けられて車幅方向左右いずれかの一方側から他方側に向けて車幅方向に延び、上記一対のフロントサイドフレームの他方の下方を通過して上記インタークーラに接続され、このインタークーラの出口から上記一対のフロントサイドフレームの他方の下方を再び通過し、さらに、上昇して上記エンジン本体に接続されることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項4】
上記足払い部材は、上記シュラウド枠部の下縁部と上記バンパフェイシャの下縁部との間で平らに延びるように形成され、その後縁部が上記シュラウド枠部の下縁部に結合されると共にその前縁部が上記バンパフェイシャの下縁部に沿って延び、さらに、この足払い部材には、上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、上記吸気ダクトは、上記足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる請求項3に記載の車両の車体前部構造。
【請求項5】
上記足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及び上記吸気ダクトは樹脂製であり、上記吸気ダクトは上記複数のリブと一体成型されている請求項2又は請求項4に記載の車両の車体前部構造。
【請求項6】
上記足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及び上記吸気ダクトは金属製であり、上記吸気ダクトは上記リブ部の複数のリブと一体的に設けられている請求項2又は請求項4に記載の車両の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−137591(P2008−137591A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328196(P2006−328196)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】