説明

車両の電力変換装置およびそれを備える車両

【課題】車両の衝突等が発生した場合に、電力変換装置内に設けられるコンデンサの残留電荷を速やかに放電させるとともに確実かつ十分に放電させる車両の電力変換装置を提供する。
【解決手段】放電制御部30は、衝突検知部60により車両100の衝突が検知されたとき、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御を実行する。バックアップ電源装置40は、電力変換装置の筐体50内に設けられ、筐体50の外部から放電制御部30へ動作電力を供給する電源線の異常時に、放電制御部30へ動作電力を供給する。バックアップ電源装置40は、正極線PL2および負極線NLに接続され、正極線PL2から受ける電力を電圧変換して放電制御部30へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電力変換装置およびそれを備える車両に関し、特に、電力変換装置内に設けられるコンデンサの残留電荷を放電させる放電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−141158号公報(特許文献1)は、車両の衝突が検知されたときに、インバータに設けられる平滑コンデンサを放電させるための制御装置を開示する。この車両には、バッテリと、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータによって駆動されるモータジェネレータとが搭載され、インバータには、高電圧の平滑コンデンサが設けられる。そして、加速度センサからの信号に基づいて車両の衝突が検知されると、モータジェネレータをゼロトルク状態で駆動するようにインバータが制御される。
【0003】
これにより、インバータおよびモータジェネレータを用いて、モータジェネレータにトルクを発生させることなくコンデンサの残留電荷を速やかに放電させることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−141158号公報
【特許文献2】特開2008−6996号公報
【特許文献3】特開2004−23926号公報
【特許文献4】特開2004−201439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、車両の衝突等が発生した場合には、電力変換装置内に設けられるコンデンサの残留電荷を速やかに放電させる必要がある。しかしながら、衝突の状況によっては、放電の制御を実行する制御装置へ動作電力を供給する電源線が断線することも想定される。電力変換装置の筐体の外部から内部へ動作電力を供給する電源線が断線すると、放電制御を実行できず、コンデンサの残留電荷を速やかに放電させることができない。そして、コンデンサの残留電荷の放電は、速やか且つ十分に行なわれる必要がある。
【0006】
また、衝突の状況によっては、電源線だけでなく、放電制御を実行する制御装置へ衝突を通知する通信線が断線することも想定され、通信線の断線時にも確実に放電が実施される必要がある。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、車両の衝突等が発生した場合に、電力変換装置内に設けられるコンデンサの残留電荷を速やかに放電させるとともに確実かつ十分に放電させる車両の電力変換装置およびそれを備える車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、車両の電力変換装置は、インバータと、電力母線と、コンデンサと、放電制御部と、バックアップ電源装置とを備える。車両は、電力変換装置へ電力を供給する直流電源と、車両の衝突を検知するための衝突検知部とを含む。電力母線は、インバータに接続される。コンデンサは、電力母線に接続される。放電制御部は、衝突検知部により車両の衝突が検知されたとき、コンデンサの残留電荷を放電させる放電制御を実行する。バックアップ電源装置は、電力変換装置の筐体内に設けられ、筐体の外部から放電制御部へ動作電力を供給する電源線の異常時に、放電制御部へ動作電力を供給する。バックアップ電源装置は、電力母線に接続され、電力母線から受ける電力を電圧変換して放電制御部へ出力するように構成される。
【0009】
好ましくは、筐体の外部から放電制御部へ衝突検知部の検知結果を通知する通信線の異常および上記電源線の異常が検知されると、放電制御部は、バックアップ電源装置から動作電力を受けて放電制御を実行する。
【0010】
好ましくは、電力変換装置は、昇圧装置をさらに備える。昇圧装置は、電力母線に接続され、電力母線の電圧を直流電源の電圧以上に昇圧する。昇圧装置は、電力用半導体スイッチング素子とリアクトルとを含む昇圧チョッパ回路によって構成される。放電制御部は、放電制御の実行時、電力用半導体スイッチング素子をオン/オフ駆動することによって、電力用半導体スイッチング素子およびリアクトルにより残留電荷を消費させる。
【0011】
好ましくは、放電制御部は、放電制御の実行時、予め定められた一定のスイッチング周波数およびデューティー比で電力用半導体スイッチング素子をオン/オフ駆動する。
【0012】
好ましくは、放電制御部は、昇圧装置およびインバータを駆動するための制御装置である。
【0013】
好ましくは、バックアップ電源装置は、トランスを含み、電力母線から受ける電力をトランスにより降圧して放電制御部へ出力する。
【0014】
また、この発明によれば、車両は、上述したいずれかの電力変換装置と、電力変換装置のインバータによって駆動される電動機とを備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、電力変換装置の筐体内にバックアップ電源装置が設けられる。バックアップ電源装置は、電力母線に接続され、筐体の外部から放電制御部へ動作電力を供給する電源線の異常時に、電力母線から受ける電力を電圧変換して放電制御部へ出力する。これにより、車両の衝突等により電源線に異常が発生しても(たとえば断線)、バックアップ電源装置から放電制御部へ十分に動作電力が供給され、放電制御部により放電制御が実行される。
【0016】
したがって、この発明によれば、車両の衝突等が発生した場合に、電力変換装置内に設けられるコンデンサの残留電荷を速やかに放電させるとともに確実かつ十分に放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図2】図1に示す電力変換装置の回路構成を示した図である。
【図3】図2に示すMG−ECUの機能ブロック図である。
【図4】実施の形態2による電力変換装置の回路構成を示した図である。
【図5】図4に示す駆動装置の機能ブロック図である。
【図6】バックアップ電源装置の他の構成を示した図である。
【図7】放電機構の他の構成を説明するための車両の全体ブロック図である。
【図8】放電機構のさらに他の構成を説明するための車両の全体ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置を搭載した車両の全体ブロック図である。図1を参照して、車両100は、直流電源B1と、システムメインリレーSMRと、昇圧コンバータ10と、インバータ20と、モータジェネレータMGと、正極線PL1,PL2と、負極線NLと、コンデンサC1,C2とを備える。また、車両100は、放電制御部30と、バックアップ電源装置40と、衝突検知部60と、補機電源B2と、ダイオード70とをさらに備える。
【0020】
昇圧コンバータ10、インバータ20、正極線PL1,PL2、負極線NL、コンデンサC1,C2、放電制御部30およびバックアップ電源装置40は、電力変換装置を構成し、筐体50内に格納される。
【0021】
直流電源B1は、再充電可能な蓄電装置であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池によって構成される。直流電源B1は、走行用の電力を蓄えており、システムメインリレーSMRがオンされているとき、電力変換装置の昇圧コンバータ10へ電力を供給する。また、車両の制動時には、モータジェネレータMGによって発電された電力を電力変換装置から受けて充電される。なお、直流電源B1として、大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0022】
システムメインリレーSMRは、直流電源B1と電力変換装置との間に設けられ、図示しないスタートスイッチ等がオンされると、正極線PL1および負極線NLに直流電源B1を電気的に接続する。また、衝突検知部60(後述)により車両100の衝突が検知されると、システムメインリレーSMRはオフされ、正極線PL1および負極線NLから直流電源B1が電気的に切離される。
【0023】
正極線PL1および負極線NLは、システムメインリレーSMRと昇圧コンバータ10との間に配線される。コンデンサC1は、正極線PL1と負極線NLとの間に接続され、正極線PL1および負極線NL間の電圧変動を平滑化する。
【0024】
昇圧コンバータ10は、正極線PL2および負極線NL間の電圧を、正極線PL1および負極線NL間の電圧(すなわち、直流電源B1の電圧)以上に昇圧する。また、この実施の形態1においては、衝突検知部60により車両100の衝突が検知されると、昇圧コンバータ10は、放電制御部30から受ける駆動信号に基づいて、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電装置として動作する。
【0025】
正極線PL2および負極線NLは、昇圧コンバータ10とインバータ20との間に配線される。コンデンサC2は、正極線PL2と負極線NLとの間に接続され、正極線PL2および負極線NL間の電圧変動を平滑化する。
【0026】
インバータ20は、正極線PL2から直流電力を受けてモータジェネレータMGを駆動する。また、車両の制動時には、インバータ20は、モータジェネレータMGを回生モードで駆動し、モータジェネレータMGによって発電された電力を正極線PL2へ出力する。なお、インバータ20は、たとえば、三相分のスイッチング素子を含むブリッジ回路から成る。モータジェネレータMGは、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える三相交流回転電機である。モータジェネレータMGは、インバータ20によって駆動され、車両の駆動トルクを発生する。
【0027】
放電制御部30は、筐体50の外部に設けられる衝突検知部60から通信線を介して衝突検知の結果を示す信号を受ける。そして、放電制御部30は、通信線を介して受ける信号により車両100の衝突検知が示されると、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御を実行する。具体的には、放電制御部30は、昇圧コンバータ10を放電装置として動作させるための駆動信号を生成して昇圧コンバータ10へ出力する。
【0028】
放電制御部30は、通常は、筐体50の外部に設けられる補機電源B2から動作電力を受ける。一方、車両100の衝突等により補機電源B2から放電制御部30への電源線に異常(断線や電圧低下など)が発生すると、筐体50の内部に設けられるバックアップ電源装置40から放電制御部30へ動作電力が供給される。
【0029】
バックアップ電源装置40は、筐体50内に設けられ、昇圧コンバータ10とインバータ20との間の正極線PL2および負極線NLに電気的に接続される。そして、バックアップ電源装置40は、車両100の衝突等により補機電源B2から放電制御部30への電源線に異常が発生した場合、正極線PL2から受ける電力を電圧変換して放電制御部30へ動作電力を供給する。
【0030】
筐体50は、昇圧コンバータ10、インバータ20、正極線PL1,PL2、負極線NL、コンデンサC1,C2、放電制御部30およびバックアップ電源装置40を格納するケースである。
【0031】
衝突検知部60は、筐体50の外部に設けられる。衝突検知部60は、加速度センサ等によって車両100の衝突を検知し、その検知結果を示す信号を通信線を介して放電制御部30へ送信する。また、衝突検知部60は、車両100の衝突を検知すると、システムメインリレーSMRをオフにする。
【0032】
補機電源B2も、筐体50の外部に設けられる。補機電源B2は、再充電可能な蓄電装置であり、たとえば、鉛蓄電池によって構成される。補機電源B2は、車両100に搭載される各種補機や制御装置へ補機電力を供給する。そして、補機電源B2は、ダイオード70を介して筐体50内の放電制御部30へ動作電力を供給する。
【0033】
ダイオード70は、補機電源B2にアノードが接続され、放電制御部30とバックアップ電源装置40との間の電力線にカソードが接続される。このダイオード70は、バックアップ電源装置40から補機電源B2へ電力が流れるのを防止するために設けられる。
【0034】
この車両100においては、衝突検知部60により車両100の衝突が検知されると、電力変換装置の放電制御部30へ通信線を介してその旨が通知されるとともに、システムメインリレーSMRがオフされる。放電制御部30は、車両100の衝突が検知されたことの通知を通信線を介して衝突検知部60から受けると、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御を実行する。すなわち、この実施の形態1では、放電制御部30は、昇圧コンバータ10のスイッチング素子(後述)をオン/オフ駆動するための駆動信号を生成して昇圧コンバータ10へ出力する。
【0035】
放電制御部30は、通常は、電力変換装置の筐体50外部の補機電源B2から動作電力を受ける。しかしながら、車両100の衝突等により補機電源B2からの電源線に異常(断線や電圧低下など)が発生すると、放電制御部30が動作不能となってしまう。そこで、この実施の形態1では、補機電源B2からの電源線の異常に備えて、電力変換装置の筐体50内にバックアップ電源装置40が備えられる。
【0036】
バックアップ電源装置40は、正極線PL2および負極線NLに接続され、昇圧コンバータ10による昇圧後の電圧を駆動電圧とする。昇圧コンバータ10による昇圧後の電圧は、電力変換装置内における最高電圧であるので、バックアップ電源装置40を正極線PL1および負極線NLに接続して非昇圧電圧を駆動電圧とする場合よりも十分に動作電圧を放電制御部30へ供給することができる。
【0037】
また、車両100の衝突等により、補機電源B2からの電源線だけでなく、衝突検知部60から放電制御部30への通信線にも異常が発生し得る。そこで、この実施の形態1では、補機電源B2からの電源線の異常が検知され、かつ、衝突検知部60から放電制御部30への通信線の異常(断線や電圧低下など)も検知された場合、放電制御部30は、バックアップ電源装置40から動作電力を受けて放電制御を実行する。これにより、筐体50の外部から筐体50内へ導入される電源線および通信線の全てに異常(断線等)が発生して電力変換装置が電気的に孤立した状態になった場合においても、電力変換装置内のコンデンサC1,C2を放電させる放電制御が実行される。
【0038】
図2は、図1に示した電力変換装置の回路構成を示した図である。図2を参照して、昇圧コンバータ10は、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する。)202,204と、ダイオード206,208と、リアクトル210とを含む。スイッチング素子202,204は、正極線PL2と負極線NLとの間に直列に接続される。ダイオード206,208は、それぞれスイッチング素子202,204に逆並列に接続される。リアクトル210は、スイッチング素子202,204の接続ノードと正極線PL1との間に接続される。すなわち、昇圧コンバータ10は、いわゆる昇圧チョッパ回路から成る。
【0039】
なお、上記のスイッチング素子202,204として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等を用いることができる。
【0040】
昇圧コンバータ10は、図1に示した放電制御部30の機能を含むMG−ECU(Electronic Control Unit)110(後述)からの駆動信号PWCに基づいて、正極線PL2および負極線NL間の電圧(以下「システム電圧」とも称する。)を直流電源B1の出力電圧以上に昇圧する。システム電圧が目標電圧よりも低い場合、スイッチング素子204のオンデューティーを大きくすることにより正極線PL1から正極線PL2へ電流を流すことができ、システム電圧を上昇させることができる。一方、システム電圧が目標電圧よりも高い場合、スイッチング素子202のオンデューティーを大きくすることにより正極線PL2から正極線PL1へ電流を流すことができ、システム電圧を低下させることができる。
【0041】
コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電装置としてMG−ECU110により昇圧コンバータ10が駆動される場合、システムメインリレーSMRがオフされた状態でスイッチング素子202,204がそれぞれオン,オフされると、コンデンサC2からスイッチング素子202およびリアクトル210へ電流が流れることにより、電荷が消費される。次いで、スイッチング素子202,204がそれぞれオフ,オンされると、コンデンサC1からリアクトル210およびスイッチング素子204を介して電流が流れることにより、電荷が消費される。このように、システムメインリレーSMRがオフされた状態でスイッチング素子202,204をオン/オフ駆動することにより、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電することができる。
【0042】
バックアップ電源装置40は、一次コイル222と、二次コイル224と、スイッチング素子226と、デューティー制御部228と、キャパシタ230と、ダイオード232とを含む。
【0043】
一次コイル222およびスイッチング素子226は、正極線PL2と負極線NLとの間に直列に接続される。二次コイル224は、一次コイル222とともにトランスを構成し、補機電源B2からの電源線にカソードが接続されるダイオード232のアノードに接続される。デューティー制御部228は、補機電源B2からの電源線に接続され、デューティー制御部228への電力線にキャパシタ230が設けられる。キャパシタ230は、補機電源B2からの電源線の異常時にデューティー制御部228を初期駆動するのに十分な小容量のものである。
【0044】
このバックアップ電源装置40においては、デューティー制御部228によりスイッチング素子226がオン/オフ駆動され、一次コイル222および二次コイル224により構成されるトランスによって、正極線PL2から受ける電力が降圧される。そして、二次コイル224の出力は、ダイオード232によって整流され、図1に示した放電制御部30の機能を含むMG−ECU110へ供給される。
【0045】
なお、デューティー制御部228の動作電力は、補機電源B2からの電源線の異常発生直後は、キャパシタ230から供給され、二次コイル224に電圧が発生した後は、ダイオード232から供給される。
【0046】
MG−ECU110は、昇圧コンバータ10およびインバータ20を駆動するための制御装置である。車両100の走行時、MG−ECU110は、昇圧コンバータ10およびモータジェネレータMGをそれぞれ駆動するための駆動信号PWC,PWIを生成し、その生成された駆動信号PWC,PWIをそれぞれ昇圧コンバータ10およびインバータ20へ出力する。
【0047】
また、MG−ECU110は、図1に示した放電制御部30として動作する。すなわち、MG−ECU110は、車両100の衝突の検知結果を示す信号を通信線を介して衝突検知部60から受けると、昇圧コンバータ10を駆動することによって、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御を実行する。
【0048】
また、MG−ECU110は、補機電源B2からの電源線および衝突検知部60からの通信線の異常を検知する。そして、これら電源線および通信線の異常が検知されると、MG−ECU110は、バックアップ電源装置40から動作電力の供給を受けて、昇圧コンバータ10を駆動することにより上記放電制御を実行する。
【0049】
図3は、図2に示したMG−ECU110の機能ブロック図である。図3を参照して、MG−ECU110は、インバータ制御部112と、コンバータ制御部114と、電源線異常検知部116と、通信線異常検知部118とを含む。インバータ制御部112は、モータジェネレータMG(図2)のトルク指令値や電流検出値、回転角検出値、正極線PL2の電圧検出値等に基づいて、モータジェネレータMGを駆動するための駆動信号PWIを生成し、その生成された駆動信号PWIをインバータ20へ出力する。なお、トルク指令値は、図示されない外部ECUによって算出され、各検出値は、図示されない各種センサによって検出される。
【0050】
コンバータ制御部114は、トルク指令値や、正極線PL1,PL2の各々の電圧検出値等に基づいて、昇圧コンバータ10を駆動するための駆動信号PWCを生成し、その生成された駆動信号PWCを昇圧コンバータ10へ出力する。なお、上記各電圧検出値は、図示されない電圧センサによって検出される。
【0051】
また、コンバータ制御部114は、車両100の衝突が検知された旨の通知を衝突検知部60(図2)から受けると、放電装置として昇圧コンバータ10を動作させるための駆動信号PWCを生成して昇圧コンバータ10へ出力する。
【0052】
さらに、コンバータ制御部114は、補機電源B2(図2)からの電源線の異常検知結果を示す信号を電源線異常検知部116から受け、衝突検知部60からの通信線の異常検知結果を示す信号を通信線異常検知部118から受ける。そして、コンバータ制御部114は、電源線および通信線の異常が検知された旨の通知をそれぞれ電源線異常検知部116および通信線異常検知部118から受けると、放電装置として昇圧コンバータ10を動作させるための駆動信号PWCを生成して昇圧コンバータ10へ出力する。
【0053】
電源線異常検知部116は、補機電源B2からの電源線の異常を検知する。たとえば、補機電源B2からの電源線の電圧が所定値よりも低下すると、電源線異常検知部116は、補機電源B2からの電源線が異常であると検知する。そして、電源線異常検知部116は、補機電源B2からの電源線の異常検知結果をコンバータ制御部114へ出力する。
【0054】
通信線異常検知部118は、衝突検知部60からの通信線の異常を検知する。たとえば、衝突検知部60からの通信線の電圧が所定値よりも低下すると、通信線異常検知部118は、衝突検知部60からの通信線が異常であると検知する。そして、通信線異常検知部118は、衝突検知部60からの通信線の異常検知結果をコンバータ制御部114へ出力する。
【0055】
なお、コンバータ制御部114、電源線異常検知部116および通信線異常検知部118によって、図1に示した放電制御部30が構成される。
【0056】
以上のように、この実施の形態1においては、電力変換装置の筐体50内にバックアップ電源装置40が設けられる。バックアップ電源装置40は、昇圧コンバータ10により昇圧された正極線PL2(および負極線NL)に接続され、筐体50の外部から放電制御部30へ動作電力を供給する電源線の異常時に、正極線PL2から受ける電力をトランスを用いて降圧して放電制御部30へ出力する。これにより、車両100の衝突等により電源線に異常が発生しても(たとえば断線)、バックアップ電源装置40から放電制御部30へ動作電力が供給され、放電制御部30により放電制御が実行される。したがって、この実施の形態1によれば、車両100の衝突等が発生した場合に、電力変換装置内に設けられるコンデンサC1,C2の残留電荷を確実かつ速やかに放電させることができる。
【0057】
また、この実施の形態1においては、バックアップ電源装置40は、昇圧コンバータ10により昇圧された正極線PL2(および負極線NL)に接続される。そして、昇圧コンバータ10による昇圧後の電圧が駆動電圧とされるので、バックアップ電源装置40を正極線PL1(および負極線NL)に接続して非昇圧電圧を駆動電圧とする場合よりも十分に動作電圧を放電制御部30へ供給することができる。したがって、この実施の形態1によれば、車両100の衝突等が発生した場合に、電力変換装置内に設けられるコンデンサC1,C2の残留電荷を十分に放電させることができる。
【0058】
さらに、この実施の形態1によれば、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電装置として昇圧コンバータ10が用いられるので、放電回路を別途設ける必要がない。
【0059】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、昇圧コンバータ10およびインバータ20を駆動するMG−ECU110が、昇圧コンバータ10を放電装置として用いる放電制御を実行するものとした。この実施の形態2では、放電制御時に昇圧コンバータ10を放電装置として駆動するための駆動装置がMG−ECUとは別に設けられる。これにより、放電制御時にバックアップ電源装置40が供給する電力を最小限に抑えることができ、バックアップ電源装置40を小型化できる。
【0060】
図4は、実施の形態2による電力変換装置の回路構成を示した図である。図4を参照して、この電力変換装置は、図2に示した実施の形態1における電力変換装置の構成において、駆動装置120をさらに含み、MG−ECU110に代えてMG−ECU110Aを含む。
【0061】
駆動装置120は、車両100の衝突の検知結果を示す信号を通信線を介して衝突検知部60から受けると、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御を実行する。具体的には、駆動装置120は、衝突検知を示す信号を衝突検知部60から受けると、駆動信号PWCを生成して昇圧コンバータ10へ出力する。
【0062】
ここで、駆動装置120は、予め定められた一定のスイッチング周波数およびデューティー比で昇圧コンバータ10のスイッチング素子202,204をオン/オフ駆動するように駆動信号PWCを生成する。これにより、駆動装置120の回路構成を簡素化することができる。
【0063】
また、駆動装置120は、補機電源B2からの電源線および衝突検知部60からの通信線の異常を検知し、これら電源線および通信線の異常が検知されると、バックアップ電源装置40から動作電力の供給を受けて、昇圧コンバータ10を駆動することにより上記放電制御を実行する。
【0064】
MG−ECU110Aは、図2に示した実施の形態1におけるMG−ECU110の構成において、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御の機能を省いた構成から成る。なお、この実施の形態2における車両100Aのその他の構成は、実施の形態1における車両100と同じである。
【0065】
なお、上記においては、駆動装置120は、衝突検知を示す信号を衝突検知部60から受けるものとしたが、MG−ECU110Aを介して上記信号を受けてもよい。また、上記においては、補機電源B2からの電源線および衝突検知部60からの通信線の異常を駆動装置120が検知するものとしたが、MG−ECU110Aにおいて異常を検知し、その検知結果を駆動装置120へ通知してもよい。
【0066】
図5は、図4に示した駆動装置120の機能ブロック図である。図5を参照して、駆動装置120は、コンバータ制御部114Aと、電源線異常検知部116と、通信線異常検知部118とを含む。
【0067】
コンバータ制御部114Aは、図3に示したコンバータ制御部114の機能のうち、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させる放電制御に関する機能のみを有する。すなわち、放電制御の実行時以外(通常の走行時など)においては、コンバータ制御部114Aは、昇圧コンバータ10を駆動するための駆動信号PWCを生成しない。
【0068】
なお、電源線異常検知部116および通信線異常検知部118の機能については、図3において説明したので繰返さない。
【0069】
以上のように、この実施の形態2においては、放電制御時に昇圧コンバータ10を放電装置として駆動するための駆動装置120がMG−ECU110Aとは別に設けられる。したがって、この実施の形態2によれば、放電制御時にバックアップ電源装置40が供給する電力を最小限に抑えることができ、バックアップ電源装置40を小型化できる。
【0070】
なお、上記の実施の形態1,2においては、バックアップ電源装置40は、昇圧コンバータ10による昇圧後の電圧を駆動電圧とし、トランスおよびスイッチング素子を含むスイッチングレギュレータによって構成されるものとしたが、バックアップ電源装置40の構成は、このような構成に限られるものではない。
【0071】
図6は、バックアップ電源装置の他の構成を示した図である。図6を参照して、バックアップ電源装置40Aは、入力端子302と、出力端子304と、スイッチング素子306と、参照電圧生成部308と、差動アンプ310と、抵抗素子312,314とを含む。このバックアップ電源装置40Aは、入力端子302および出力端子304間にスイッチング素子306が接続され、出力電圧に応じてスイッチング素子306を制御する、いわゆるシリーズレギュレータによって構成される。
【0072】
また、上記の実施の形態1,2においては、放電制御の実行時、放電制御部により昇圧コンバータ10のスイッチング素子をオン/オフ駆動することによって、昇圧コンバータ10を用いてコンデンサC1,C2の残留電荷を放電させるものとしたが、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させるための放電機構は、昇圧コンバータ10に限られるものではない。
【0073】
図7は、放電機構の他の構成を説明するための車両の全体ブロック図である。図7を参照して、この車両100Bは、図1に示した車両100の構成において、放電回路80をさらに備え、放電制御部30に代えて放電制御部30Aを備える。
【0074】
放電回路80は、スイッチング素子82と、抵抗素子84とを含む。スイッチング素子82および抵抗素子84は、正極線PL2と負極線NLとの間に直列に接続される。そして、放電制御の実行時、放電制御部30Aによりスイッチング素子82が制御され、コンデンサC2の残留電荷が放電回路80において消費されるとともに、コンデンサC1の残留電荷も昇圧コンバータ10を介して放電回路80へ流れることによって消費される。
【0075】
放電制御部30Aは、放電制御の実行時、放電回路80のスイッチング素子82を駆動するための駆動信号を生成し、その生成された駆動信号をスイッチング素子82へ出力する。放電制御部30Aのその他の構成は、放電制御の実行時に昇圧コンバータ10に代えて放電回路80を駆動する点を除いて、図1に示した放電制御部30の構成と同じである。
【0076】
また、図8は、放電機構のさらに他の構成を説明するための車両の全体ブロック図である。図8を参照して、この車両100Cは、図1に示した車両100の構成において、放電制御部30に代えて放電制御部30Bを備える。
【0077】
放電制御部30Bは、放電制御の実行時、インバータ20を放電装置として駆動するための駆動信号を生成し、その生成された駆動信号をインバータ20へ出力する。一例として、モータジェネレータMGが回転しないように機械ブレーキ等をかけたうえで、インバータ20の任意の相における上下アームのいずれか一方のスイッチング素子を完全オン状態にし、かつ、他方のスイッチング素子を半オン状態でスイッチングさせることで、コンデンサC1,C2の残留電荷を消費させることができる。または、d軸電流のみが流れるようにインバータ20を駆動することによって、モータジェネレータMGに回転トルクを発生させることなく、インバータ20のスイッチング素子およびモータジェネレータMGのコイルを用いてコンデンサC1,C2の残留電荷を消費させることも可能である。
【0078】
なお、放電制御部30Bのその他の構成は、放電制御の実行時に昇圧コンバータ10に代えてインバータ20を駆動する点を除いて、図1に示した放電制御部30の構成と同じである。
【0079】
なお、上記の各実施の形態において、車両100(100A〜100C)は、モータジェネレータMGを唯一の走行用動力源とする電気自動車であってもよいし、走行用動力源としてエンジンをさらに搭載したハイブリッド車両であってもよく、さらには、直流電源B1に加えて燃料電池をさらに搭載した燃料電池車であってもよい。
【0080】
なお、上記において、正極線PL2は、この発明における「電力母線」の一実施例に対応し、昇圧コンバータ10は、この発明における「昇圧装置」の一実施例に対応する。
【0081】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10 昇圧コンバータ、20 インバータ、30,30A,30B 放電制御部、40,40A,40B バックアップ電源装置、50 筐体、60 衝突検知部、70,206,208,232 ダイオード、80 放電回路、82,202,204,226,306 スイッチング素子、84,312,314 抵抗素子、100,100A〜100C 車両、110,110A MG−ECU、112 インバータ制御部、114,114A コンバータ制御部、116 電源線異常検知部、118 通信線異常検知部、120駆動装置、210 リアクトル、222 一次コイル、224 二次コイル、228 デューティー制御部、230 キャパシタ、302 入力端子、304 出力端子、308 参照電圧生成部、310 差動アンプ、B1 直流電源、SMR システムメインリレー、PL1,PL2 正極線、NL 負極線、C1,C2 コンデンサ、MG モータジェネレータ、B2 補機電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電力変換装置であって、
前記車両は、
前記電力変換装置へ電力を供給する直流電源と、
前記車両の衝突を検知するための衝突検知部とを含み、
前記電力変換装置は、
インバータと、
前記インバータに接続される電力母線と、
前記電力母線に接続されるコンデンサと、
前記衝突検知部により前記車両の衝突が検知されたとき、前記コンデンサの残留電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御部と、
当該電力変換装置の筐体内に設けられ、前記筐体の外部から前記放電制御部へ動作電力を供給する電源線の異常時に、前記放電制御部へ動作電力を供給するバックアップ電源装置とを備え、
前記バックアップ電源装置は、前記電力母線に接続され、前記電力母線から受ける電力を電圧変換して前記放電制御部へ出力するように構成される、車両の電力変換装置。
【請求項2】
前記筐体の外部から前記放電制御部へ前記衝突検知部の検知結果を通知する通信線の異常および前記電源線の異常が検知されると、前記放電制御部は、前記バックアップ電源装置から動作電力を受けて前記放電制御を実行する、請求項1に記載の車両の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力母線に接続され、前記電力母線の電圧を前記直流電源の電圧以上に昇圧する昇圧装置をさらに備え、
前記昇圧装置は、電力用半導体スイッチング素子とリアクトルとを含む昇圧チョッパ回路によって構成され、
前記放電制御部は、前記放電制御の実行時、前記電力用半導体スイッチング素子をオン/オフ駆動することによって、前記電力用半導体スイッチング素子および前記リアクトルにより前記残留電荷を消費させる、請求項1または請求項2に記載の車両の電力変換装置。
【請求項4】
前記放電制御部は、前記放電制御の実行時、予め定められた一定のスイッチング周波数およびデューティー比で前記電力用半導体スイッチング素子をオン/オフ駆動する、請求項3に記載の車両の電力変換装置。
【請求項5】
前記放電制御部は、前記昇圧装置および前記インバータを駆動するための制御装置である、請求項3に記載の車両の電力変換装置。
【請求項6】
前記バックアップ電源装置は、トランスを含み、前記電力母線から受ける電力を前記トランスにより降圧して前記放電制御部へ出力する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両の電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置のインバータによって駆動される電動機とを備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−259517(P2011−259517A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129002(P2010−129002)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】